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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175535
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】弾性リング組付装置
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/02 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
B23P19/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093389
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 康浩
(72)【発明者】
【氏名】祖父江 真一朗
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 健一
【テーマコード(参考)】
3C030
【Fターム(参考)】
3C030BB11
3C030BB14
3C030BC02
3C030BC19
(57)【要約】
【課題】弾性リングを拡径させてワーク頭部の指定位置まで自動により組付けする弾性リング組付装置を提供する。
【解決手段】 ワーク5を固定し該ワークを一体に回転可能な受治具8を備える。ワークの上方で、チャック爪30がマスクばね1の把持を解除すると、ガイドピン20の外壁でマスクばね1を案内して保持爪21に重力落下させる。ガイドピン20を把持及び昇降可能な保持爪21が開動作すると、ガイドピン20の外壁で案内されたマスクはね1は、ワーク5の先端球状部9に自由落下し当接する。芯出部材23の内壁に摺動する円筒状の組付部材23が下降し、マスクばね1を軸心線方向に押圧すると、マスクばね1の内径を拡大しつつワーク5の上端にマスクばね1を仮固定する。これにより、ガイドピン20でマスクばね1を水平な姿勢に規制し、組付部材22でマスクばね1の芯出し確保とワーク5への押し出し圧入を両立する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性リングを柱状のワークの先端に仮固定する弾性リング組付装置であって、
ワーク(5)の一端を仮固定し該ワークを一体に回転可能な受治具(8)と、
ワークの上方で、ワークの他端に仮固定するための弾性リング(1)を把持可能なチャック爪(30)と、
前記チャック爪解除時に弾性リングを外壁で案内して重力落下可能なガイドピン(20)と、
前記ガイドピンを把持可能及び昇降可能な保持爪(21)と、
ワーク上端に案内される弾性リングを軸心線方向に押圧可能であって押圧時に弾性リングの内径を拡大しつつワーク上端に弾性リングを仮固定する円筒状の組付部材(22)と、
前記組付部材の内部で軸方向に摺動可能であり、ワークと前記ガイドピンとの芯出可能であり、内部にエア通路(28)を有する芯出部材(23)と、
前記エア通路を経由して前記ガイドピンを吸引可能な吸引手段(14)とを備えた弾性リング組付装置。
【請求項2】
前記ガイドピンは、下端にワークの先端に位置決め可能な凹部(26)を有し、上端に前記芯出部材の位置決め部(24)に係合可能な位置決め部(25)を有する請求項1記載の弾性リング組付装置。
【請求項3】
前記ガイドピンは、円柱状であり、常態時の弾性リングの内径よりも小さな外径を有する、請求項1記載の弾性リング組付装置。
【請求項4】
柱状のワークの先端に環状の内径可変可能な弾性リングを仮固定する弾性リング組付方法であって、
受治具(8)に位置決めされるワーク(5)を軸心周りに回転する工程と、
前記ワーク先端に芯出ししたガイドピン(20)を装着する工程と、
前記ガイドピンに沿って重力落下する弾性リング(1)を前記ガイドピンにより前記ワーク先端に案内する工程と、
ワーク回転時にワーク先端に組付部材(22)が弾性リングを押圧し、弾性リングの内径を大きくしつつワークの先端に弾性リングを仮固定する工程と、
ワーク先端への弾性リングの仮固定後に前記組付部材が弾性リングの押圧を解除する工程とを含む、弾性リング組付方法。
【請求項5】
重力落下する弾性リングを途中で停止する工程と、
その後に再び弾性リングを重力落下する工程と、
その後に前記組付部材の内部にガイドピンを案内し相対軸移動する前記組付部材が周方向の端面(221)で弾性リングに接触する工程とを含む請求項4記載の弾性リング組付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱状のワークに弾性リングを組み付ける弾性リング組付装置及び組付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の燃焼制御等に用いられるガスセンサ素子の製造工程において、素子(ワーク)の検知電極部を副資材のマスクばねで保護した状態で、ワークの非検知電極部に絶縁層を溶射する工程がある。
ガスセンサ素子の非検知電極部に絶縁層を溶射して形成する前工程において、素子(ワーク)の検知電極部に絶縁層を溶射しないよう保護するため副資材のマスクばね(弾性リング)を組み付ける。
【0003】
柱状のワークに弾性リングを組み付ける装置としては、例えば、特許文献1に記載された弾性リング組付装置および組付方法が知られている。
この特許文献1の開示では、弾性リングが組み付けられるピン(ワーク相当)におけるリング装着溝の形成部位の外形に略連続できる先端形状を成す案内部材を有し、この案内部材ないしピンに沿って回転しながら往復移動できるフィンガを有する。案内部材に嵌合した弾性リングは、案内部材をピンに連続させた状態で回転移動するフィンガに押されて案内部材からピンへと移行し、ピンに沿って内径が拡張されつつリング装着溝に組み付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-88275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1には、ピン(ワーク相当)に弾性リングを押圧する際にフィンガを軸方向移動し弾性リングを押圧するに際し、ピン(ワーク相当)の軸心線に対するフィンガの軸心線の芯出しをする構成は開示されていない。
この文献1には、フィンガが周方向の複数個所で弾性リングに当接する開示はあるが、しかし、フィンガが周方向に端面で弾性リングに当接する構成の開示はない。
【0006】
本発明は、上述に鑑みてなされたものであり、その目的は、弾性リングを拡径させてワーク頭部の指定位置まで自動により組付け可能な弾性リング組付装置及び弾性リング組付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の弾性リング組付装置は、弾性リング(1)を柱状のワーク(5)の先端に仮固定する弾性リング組付装置であって、
ワークの一端を仮固定し該ワークを一体に回転可能な受治具(8)と、
ワークの上方で、ワークの他端に仮固定するための弾性リングを把持可能なチャック爪(30)と、
前記チャック爪解除時に弾性リングを外壁で案内して重力落下可能なガイドピン(20)と、
前記ガイドピンを把持可能及び昇降可能な保持爪(21)と、
ワーク上端に案内される弾性リングを軸心線方向に押圧可能であって押圧時に弾性リングの内径を拡大しつつワーク上端に弾性リングを仮固定する円筒状の組付部材(17)と、
前記組付部材の内部で軸方向に摺動可能であり、ワークと前記ガイドピンとの芯出可能であり、内部にエア通路(28)を有する芯出部材(23)と、
前記エア通路を経由して前記ガイドピンを吸引可能な吸引手段(14)とを備えた構成を採用する。
【0008】
本発明の弾性リング組付方法は、柱状のワークの先端に環状の内径可変可能な弾性リングを仮固定する弾性リング組付方法であって、
受治具(8)に位置決めされるワーク(5)を軸心周りに回転する工程と、
前記ワーク先端に芯出ししたガイドピン(20)を装着する工程と、
前記ガイドピンに沿って重力落下する弾性リング(1)を前記ガイドピンにより前記ワーク先端に案内する工程と、
ワーク回転時にワーク先端に組付部材(22)が弾性リングを押圧し、弾性リングの内径を大きくしつつワークの先端に弾性リングを仮固定する工程と、
ワーク先端への弾性リングの仮固定後に前記組付部材が弾性リングの押圧を解除する工程とを含む。
【0009】
本発明の弾性リング組付装置によると、副資材の弾性リングをガイドピンで素子との芯出しをし、組付部材で水平な姿勢に保ったまま弾性リングをワークの先端球状脚部に押し付け、弾性リングの内径を拡径させながらワークとの摩擦抵抗を軽減させ、ワークの所定位置まで弾性リングを移し替えることができる。
【0010】
本発明の弾性リング組付装置及び弾性リング組付方法によると、ガイドピンで弾性リングを水平な姿勢に規制し、組付部材で弾性リングの芯出し確保とワークへの押し出し圧入を両立する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る弾性リング組付装置を示す正面図、
図2】本実施形態のガイドピンの吸引動作を示す部分断面図、
図3】本実施形態の組付装置の動作の過程を示す部分断面図、
図4】本実施形態の組付装置の動作の過程を示す部分断面図、
図5】本実施形態の組付装置の芯出し動作の過程を示す部分断面図、
図6】本実施形態の組付装置の動作の過程を示す部分断面図、
図7】本実施形態の組付装置の動作の過程を示す部分断面図、
図8】本実施形態に用いた弾性リングを示す斜視図、
図9】本実施形態の組付装置の動作を示す部分断面正面図、
図10】本実施形態のワークと弾性リングの仮固定の過程を示す部分断面図、
図11】比較形態のワークと弾性リングの仮固定の過程を示す部分断面図、
図12】比較形態のワークと弾性リングの仮固定の過程を示す部分断面図、
図13】比較形態のワークと弾性リングの仮固定の過程を示す部分断面図、
図14】比較形態のワークと弾性リングの仮固定の過程を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、複数の実施形態による弾性リング組付装置及び弾性リング組付方法を図面に基づき説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0013】
(第1実施形態)
本発明の第一実施形態について図1から図10に基づいて説明する。
【0014】
発明の第1実施形態による弾性リング組付装置は、ガスセンサなどの素子の電極部に弾性リングに相当するマスクばねを仮組み付けする装置である。ここに素子をワークと称する。
ここに図9に示すように、ワーク5の脚部6に組み付けるマスクばね1は、環状の内径変更可能な弾性部材からなり、ワーク5の脚部6の先端外周壁9に仮固定する。
【0015】
弾性リングに相当するマスクばね1は、リング状に巻かれる弾性部材からなり、図8に示すように、周方向に一周以上に巻かれる円筒部2と、円筒部2の軸方向両端から円錐形状に軸心線に沿って離れる方向へ拡開する拡開部3、4とからなり、周方向に閉じている。巻状のマスクばね1は、弾性変形可能で、リングの内径は図8中の矢印に示す拡径方向に可変である。マスクばね1に例えば内圧が作用すると内径が大きくなる。
【0016】
素子に相当するワーク5にマスクばね1を組み付けるとき、図9に示すように、ワーク5は、センターピン7により支持され、受治具8に仮固定される状態から、本実施形態の弾性リング組付装置によって、脚部6の先端球形部9にマスクばね1が仮固定(仮組付)される。
【0017】
ワーク5を仮固定と固定解除に切り替え可能な受治具8は、センターピン7によって支持されるワーク5と一体に回転可能である。
マスクばね1は、図3Aから図3Bに示すように、ガイドピン20の外周壁面で内径を規制されて保持爪21の上にセット可能であり、保持爪21を開くとワーク5の先端球状部9に水平にセットできるようになっている。
【0018】
ワーク5の先端球形部9にマスクばね1が組付けられるとき、図10に示すように、ワーク5の回転方向は、ばね巻方向と反対方向に回転される。これによりワーク5の先端球形部9に接触するマスクばね1は、図4Dに示す組付部材22の端面221が矢印39方向へ拡開部4を下方に押すと、拡開部3が先端球形部9に接触ばね巻力を緩める方向に、つまりマスクばね1のばね内径が拡大する方向に変形し、組付部材22による押圧力を低減できる。
【0019】
次に、本実施形態の弾性リング組付装置について、図1から図7に基づいて説明する。
装置本体10のブラケット11に固定されるサーボスライダ12は、矢印27方向にブラケット13を上下動する。ブラケット13に取り付けられる吸引手段14は、組付ユニット36のスプリング16を経由して組付部材17を上下動する。
一方、装置本体10の上下ユニット34は、受治具8に図9に示すセンターピン7を経由して仮固定されるワーク5に対し、ワーク5の脚部6の先端球状部9にガイドピン20を通してマスクばね1を芯出ししながら案内する装置である。
【0020】
弾性リング組付装置は、図3A、B、C、図4D、E、Fの順に動作するのであるが、その構成について説明する。
上下ユニット34を構成するチャック爪30は、ワーク5の上方で マスクばね1を把持可能であり、上下動可能である。チャック爪30は、ガイドピン20の上端からマスクばね1を挿通し、挿通後にマスクばね1の把持を解除することができる。
【0021】
上下ユニット34を構成する保持爪21は、上端面にマスクばね1を載置可能で上下動することができる。保持爪21を開くと、ガイドピン20に沿ってマスクばね1を自由落下させる。
一対の保持爪21は、ガイドピン20の外周面を把持可能であり、ガイドピン20の凹部26がワーク5の先端球状部9に係止され、ガイドピン20の外周面を把持すると、芯だしする。
【0022】
組付ユニット36を構成する芯出部材23は、図2に示すように、下端に円錐台状に窪むテーパ面24を有する。このテーパ面24にガイドピン20の上端の円錐台部25が係合可能になっている。芯出部材23とワーク5の先端球状部9にて、ガイドピン20を垂直な姿勢に保持するようにしている。
【0023】
芯出部材23は、基本形が円柱状であり、下端に、ガイドピン20の先端の円錐台部25を案内する円錐形のテーパ状内壁面24を有している。芯出部材23は、軸方向に吸引装置のエアを通すエア通路28を有する。
【0024】
組付ユニット36を構成する組付部材22は、図2に示すように、円筒状の形状をしており、ワーク5の真上に移動可能である。この組付部材22は、芯出部材23の外壁に対し内壁が軸方向に摺動可能な関係にある。これにより、組付部材22の下降時に組付部材22の下端がマスクばね1を押圧するとき、押圧方向の芯出しが確保されている。
【0025】
組付部材22は、円筒形状をしており、内部の芯出部材23の及びガイドピン20を挿通可能である。組付部材22の下降時に組付部材22の下端の端面221とマスクばね1との周方向の環状面接触によりマスクばね1をワーク5の先端球状部9に押し付けると、マスクばね1を拡径させながらワーク5の脚部6に仮組付けする。
【0026】
上下ユニット34を構成するガイドピン20は、円柱状の形状をし、上端が円錐台状の形状をした円錐台部25を有し、下端がワーク5の先端球状部9に周方向に係止するように円錐台状の凹部26を有している。またガイドピン20は、外周面がマスクばね1を軸方向に挿通することが可能である。さらに、ガイドピン20は、一対の保持爪21により把持可能である。
【0027】
ガイドピン20は、保持爪21により把持され又は芯出部材23とワーク5にて芯出しされて垂直な姿勢に保持するようにしている。
【0028】
上下ユニット34は、チャック爪30、保持爪21、ガイドピン20とから構成される。組付ユニット36は、芯出部材23と組付部材22から構成される。
吸引手段14は、芯出部材23のエア通路28のエアを吸引し、芯出部材23のテーパ状内壁面24にガイドピン20の円錐台部25を吸着し、ガイドピン20を引き上げる装置である。
【0029】
また、マスクばね1はガイドピン20の外径で内径を規制して保持爪21の上にセットして、保持爪21を開くとマスクばね1をワーク5の先端球状部9に水平にセットできるようになっている。
さらに、組付部材22を下降させるとマスクばね1をワーク5(素子相当)に押し付けマスクばね1を拡径させながら素子に移し替えできる構成である。
【0030】
マスクばね1は、実際にはばね巻き力にばらつきがある。マスクばね1を仮組するため、マスクばね1のばね巻き力に打ち勝つ組付部材22の押圧力に設定し、組付部材22によりマスクばね1を押圧して拡径させながら仮組する。
【0031】
次に、本発明の弾性リング組付装置の作動について、図3A、B、C、図4D、E、F
に基づいて説明する。
【0032】
図3Aに示すように、受治具8に仮固定したワーク5を所定位置に搬送し、位置決めする。上下ユニット34のワーク5の上方でチャック爪30はマスクばね1の外壁を把持する。チャック爪30が開動作すると、マスクばね1の内壁は、ガイドピン20に案内されて重量により自由落下し、保持爪21の上面に当接する。
【0033】
図3Bに示すように、次に保持爪21を下降すると、ガイドピン20の凹部26の円錐状テーパ面が先端球状部9に当接する。
【0034】
図3Cに示すように、次に組付ユニット36の芯出部材23と組付部材22を一体に下降し、芯出部材23とガイドピン20とを係合し芯出しする。
その後、保持爪21を開き、マスクばね1を芯出ししながら自由落下させワーク5の先端球状部9に芯出し載置する。
【0035】
図4Dに示すように、次に組付部材22を下降し、組付部材22の下端をマスクばね1に当接し、マスクばね1の内径を拡径し、マスクばね1を脚部6に移し替える。
【0036】
図4Eに示すように、次いで、組付部材22を上昇する。その後、上下ユニット34の保持爪21を閉じてガイドピン20の外壁を把持し、吸引手段14を作動させ、ガイドピン20の円錐台部25を芯出部材23の凹部26に吸着し、組付部材22と芯出部材23を上昇する。組付部材22と芯出部材23の上昇とともにガイドピン20を原位置に戻す。
【0037】
図4Fに示すように、次に、吸引手段14の動作を停止し、ガイドピン20から組付部材22と芯出部材23を切り離し、上昇させる。
【0038】
本実施形態の弾性リング組付装置によると、ガイドピン20は保持爪21により把持され、芯出部材23とワーク5にて芯出しされ、ガイドピン20を垂直な姿勢に保持するようになっている。これにより、ワーク5とガイドピン20に芯ズレや傾きが生じることが無い。このため、マスクばね1を水平な姿勢で拡径させながらワーク5の脚部6へ移し替えでき、ワーク5の先端球状部9にかかる押圧力を軽減できることからワーク5(素子の電極部相当)にダメージを与えずに仮組できる。
【0039】
本実施形態の弾性リング組付装置によると、マスクばね1の内径をガイドピン20の外径で規制して保持爪21の上にセットできる構造であるので、ガイドピン20の外径が急速に摩耗せず、マスクばね1を安定して水平な姿勢に規制し、ワーク5の先端球状部9に引っ掛かりなく案内して移し替えすることができる。
【0040】
本実施形態の弾性リング組付装置によると、組付部材22の下端におけるリング状の端面(全周均一な平面)221がマスクばね1を押圧し、マスクばね1を先端球状部9に嵌合させる構成になっているので、マスクばね1が傾くことなく水平な姿勢を保ったままワーク5に押圧されて拡径しながら組付けられる。
【0041】
本実施形態の弾性リング組付装置によると、直状のガイドピン20により軸方向にマスクばね1を案内することで、マスクばね1は水平に規制された姿勢でワーク5(素子相当)の脚部6に直接的に押圧されて拡径するようにしたので、マスクばね1を拡径させながら移し替えするときにもマスクばね1が傾くことが無く、しかも脚部6の先端球状部9の上にガイドピン20の自重を作用するだけなので、マスクばね1とワーク5の先端球状部9との摩擦抵抗を軽減でき、マスクばね1の巻き端部がワーク5の脚部6に食い込む不具合も無しに、ガイドピン20によるワーク5へのダメージを最小にすることができる。
【0042】
本実施形態の弾性リング組付装置によると、ワーク5と受治具8を一体に回転させる回転機能を有する。これにより、マスクばね1を仮組するときに、ワーク5をばね巻き方向と反対の方向に回転させることで、ワーク5に接触するマスクばね1のばね巻き力を緩める作用があり、マスクばね1を拡径するための押圧力を低減できる。この結果、マスクばね1のばね巻き力が不均一であっても、押圧力を小さな設定にしてワーク5への移し替えをすることができるので、ワーク5の脚部6に過大な押圧力を加える懸念が無く、ワーク5の破損を低減することができる。
【0043】
ワークに対するマスクばね嵌合時にワークとマスクばねとの隙間で、マスクばねの内巻き側の端部がワークの先端球状部の外面に食い込みやすい問題は解決された。
本実施形態の弾性リング組付装置によると、ワーク5を固定し該ワークを一体に回転可能な受治具8を備える。ワークの上方で、チャック爪30がマスクばね1の把持を解除すると、ガイドピン20の外壁でマスクばね1を案内して保持爪21に重力落下させる。ガイドピン20を把持及び昇降可能な保持爪21が開動作すると、ガイドピン20の外壁で案内されたマスクばね1は、ワーク5の先端球状部9に自由落下し当接する。芯出部材23の外壁に摺動する円筒状の組付部材22が下降し、マスクばね1を軸心線方向に押圧すると、マスクばね1の内径を拡大しつつワーク5の上端にマスクばね1を仮固定する。これにより、ガイドピン20でマスクばね1を水平な姿勢に規制し、組付部材22でマスクばね1の芯出し確保とワーク5への押し出し圧入を両立する。
【0044】
上記実勢形態の組付工程の後工程には、弾性リングの仮組の拡径後の内径に合わせた寸法からなる図示しない押圧部材でマスクばねを素子の所定位置まで押圧して定寸圧入する本組付工程が設けられている。
【0045】
(比較形態)
次に、本実施形態と複数の比較形態とを、図11から図14を参照しながら対比して説明する。
第1比較形態を図11に示す。第1比較形態は、外径がワークに近づく方向に大きくなるテーパピン50を図示しない上下ユニットの動作によって下降し、ワーク5の先端球状部9に当接する。次いでテーパピン50の外周壁にマスクばね51を案内し、ワーク5の先端球状部9にマスクばね51を係合する。チャック爪60をマスクばね51に押圧し、チャック爪60でマスクばね51をワーク5の先端球状部9に押し当てる。
【0046】
第1比較形態によると、マスクばね15の内径をテーパピン50のテーパ部に接触させて拡径する構造であるため、テーパピン50の外径部が急速に摩耗しやすい。また外径部が細ったテーパピンであると、マスクばねの拡径ができないため、マスクばねがワークの脚部6の先端球状部9に引っ掛かかり、マスクばねを脚部6へ移し替えできない不具合が発生する。
【0047】
このとき、チャック爪60による軸方向の押圧が不十分となり、マスクばね51の拡径が不十分になる傾向にある。マスクばね51の拡径が不十分となると、仮組位置まで移し替えすることが困難になる。
【0048】
第2比較形態は、図12に示すように、V字状に両側から挟み込む2個のチャック爪60をテーパピン50のテーパ部に接触させ、マスクばね51を拡径させながら、ワーク5の先端球状部9へ移し替えする構成になっている(第1比較形態も同様)。
第2比較形態によると、分割された2個のチャック爪60の隙間にマスクばね51が逃げ込みやすい。
【0049】
すると、マスクばね51が傾きやすいし、押圧方向である軸方向の芯出しが不十分となる。したがって、マスクばねの移し替え不良が生じやすい。
【0050】
第3比較形態は、図13に示すように、ワーク5の脚部6に対しテーパピン50の軸中心線54が軸中心線55に芯ずれδを発生した場合、チャック爪60を押圧すると、過剰な押圧力を生じ、ワークの割れ59や破損が生じやすい。したがって、マスクばねの移し替え不良が生じやすい。
【0051】
第4比較形態は、図14に示すように、ワーク5の軸中心線55が軸中心線56に示す傾きθをテーパピン50が生ずると、チャック爪60でマスクばね51を押圧するとき、マスクばね51が傾き、ワーク5の頭部に過大な押圧力をかけるため、ワーク5に割れや破損59が発生しやすい。したがって、マスクばねの移し替え不良が生じ不良品を発生しやすい。
【0052】
さらに、上記第1から第4比較形態のいずれの比較形態においても、テーパピンを用いてマスクばねの仮組付(仮圧入)を行っているが、マスクばね51をテーパピン50で拡径させながら移し替えするとき、マスクばね51がテーパピンとワーク5の先端球状部9との隙間で傾きやすいので、マスクばね51の内巻き側の端部が素子の頭部の先端球状部9の外面に食い込みやすい様態となり、マスクばねと素子の摩擦抵抗が更に大きくなり、ワークの割れや破損が発生しやすい。
【0053】
このように、第1から第4比較形態による装置では、マスクばねの仮組付工程(仮圧入工程)の自動化が難しいため、現状はマスクばねの仮組付工程を人作業に切替えて対応していることから、マスクばねの仮組作業に多くの時間がかかっており生産効率が著しく低下していた。
【0054】
本発明の弾性リング組付装置は、前記ガイドピンは、下端にワークの先端に位置決め可能な凹部(26)を有し、上端に前記芯出部材の位置決め部(24)に係合可能な位置決め部(25)を有する。これにより、ガイドピンは、芯出部材23とワーク5とにより芯出しされる。したがって、ガイドピンを垂直に保持する。
【0055】
本発明の弾性リング組付装置は、前記ガイドピンは、円柱状であり、常態時の弾性リングの内径よりも小さな外径を有する。したがって弾性リングをガイドピンの外壁で案内しながら自由落下させられる。
【0056】
本発明の弾性リング組付方法は、上述した弾性リング組付方法の工程に加えて、重力落下する弾性リングを途中で停止する工程と、
その後に再び弾性リングを重力落下する工程と、
その後に前記組付部材の内部にガイドピンを案内し相対軸移動する前記組付部材が周方向の端面(221)で弾性リングに接触する工程とを含むことができる。
【0057】
(その他の実施形態)
本発明では、上述したマスクばねに相当する弾性リングの形状は、前述した実施形態の形状に限定されるものでない。
なお、上述した実施形態は、ワークに相当する素子の検知電極部へのマスクばねの仮組付行程までの装置について説明した。
【0058】
上述した実施形態は、ワークに相当する素子の検知電極部にマスクばねを仮組付けする工程について説明した。この工程の後工程は、図示しないマスクばね本圧入工程であって、マスクばねをパンチで押圧して素子の組付位置まで圧入する。
以上、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 マスクばね(弾性リング)
5 ワーク(素子)
6 脚部、
8 受治具、
9 先端球状部、
10 装置本体、
14 吸引手段、
20 ガイドピン
21 保持爪、
22 組付部材、
23 芯出部材、
24 テーパ状内壁面(位置決め部)、
25 円錐台部(位置決め部)、
26 凹部(位置決め部)、
30 チャック爪、
34 上下ユニット、
36 組付ユニット。
図1
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