(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175536
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】糸巻取装置
(51)【国際特許分類】
B65H 63/024 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
B65H63/024
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093391
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】村山 賢一
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 雄帆
(72)【発明者】
【氏名】木村 收
【テーマコード(参考)】
3F115
【Fターム(参考)】
3F115CA18
3F115CA21
3F115CB02
3F115CB08
3F115CF21
(57)【要約】
【課題】画一的な減速制御を行った場合よりも生産量を改善することができる糸巻取装置を提供する。
【解決手段】巻取ユニット3は、予め設定された巻取速度で糸を巻き取るように巻取装置14を制御するユニット制御部10と、糸Yのテンションを所定範囲内に調整するテンション調整装置25と、糸Yの存在を確認することにより糸切れを検出する糸監視装置28と、を備える。ユニット制御部10は、テンション調整装置25が糸Yのテンションを所定範囲内に調整することが不可能である所定状態になっており、かつ、糸監視装置28によって糸切れが検出された後に、巻取速度よりも遅い速度で糸を巻き取る低速巻取制御を行う。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給糸ボビンから糸を解舒してパッケージに巻き取る巻取部を備えた糸巻取装置であって、
予め設定された巻取速度で前記糸を巻き取るように前記巻取部を制御する巻取制御部と、
前記糸のテンションを所定範囲内に調整するテンション調整装置と、
前記給糸ボビンから解舒された前記糸が前記パッケージに到達するまでの糸道に配置され、前記糸の存在を確認することにより糸切れを検出する糸検出センサーと、を備え、
前記巻取制御部は、前記テンション調整装置が前記糸のテンションを所定範囲内に調整することが不可能である所定状態になっており、かつ、前記糸検出センサーによって糸切れが検出された後に、前記巻取速度よりも遅い速度で前記糸を巻き取る低速巻取制御を行う、糸巻取装置。
【請求項2】
前記テンション調整装置は、前記給糸ボビンから解舒される前記糸のバルーンの大きさを下降しながら規制するバルーン規制装置を有し、
前記巻取制御部は、前記バルーン規制装置が移動範囲の最下端に達している状態を前記所定状態として認識する、請求項1に記載の糸巻取装置。
【請求項3】
前記テンション調整装置は、前記糸を屈曲させて前記糸にテンションを付与するゲート式のテンション付与装置を有し、
前記巻取制御部は、前記テンション付与装置が制御上の全開状態となっている状態を前記所定状態として認識する、請求項1に記載の糸巻取装置。
【請求項4】
前記テンション調整装置は、前記糸を屈曲させて前記糸にテンションを付与するゲート式のテンション付与装置と、前記糸のテンションを測定するテンション測定装置とを有し、
前記巻取制御部は、前記テンション測定装置により測定されたテンションが所定範囲を超えた状態を、前記テンション調整装置が前記所定状態になっていると認識する、請求項1に記載の糸巻取装置。
【請求項5】
前記テンション調整装置は、前記糸のテンションを測定するテンション測定装置と、前記テンション測定装置によるテンション測定履歴を記憶する記憶部とを有し、
前記巻取制御部は、前記記憶部に記憶された破断波形と同一か又は前記破断波形に類似するテンション変動を検出した場合に、前記テンション調整装置が前記所定状態になっていると認識する、請求項1に記載の糸巻取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給糸ボビンから解舒された糸にテンサーでテンションを与えながら、糸をパッケージに巻き取る糸巻取装置が知られている。例えば特許文献1に記載された装置では、バルーンコントローラが、ボビンから解舒された糸のバルーンを制御する。給糸ボビンのチェース部を検出する光電センサーが設けられており、バルーンコントローラはチェース部の位置が下がるのにつれて下降する。バルーンコントローラが下降限界に達した後、テンサーから糸への圧力が減少させられる。このとき、巻取ドラムを回転駆動するモータの回転速度も低下させられる。このような速度制御機能により、給糸ボビンにおける糸の残量が少なくなったときでも、糸切れを発生させずに糸をパッケージに巻き取ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の技術では、速度制御機能が適用されることにより、糸の残量が少なくなったときに巻取速度が低下させられる。画一的な減速制御を行った場合、全体的な生産量が制約を受けてしまう。例えば、給糸ボビンの品質が良ければ、減速を必要としない場合もあり得るが、従来は減速不要なボビンの存在(又はその可能性)が考慮されていなかった。
【0005】
本発明は、画一的な減速制御を行った場合よりも生産量を改善することができる糸巻取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、給糸ボビンから糸を解舒してパッケージに巻き取る巻取部を備えた糸巻取装置であって、予め設定された巻取速度で糸を巻き取るように巻取部を制御する巻取制御部と、糸のテンションを所定範囲内に調整するテンション調整装置と、給糸ボビンから解舒された糸がパッケージに到達するまでの糸道に配置され、糸の存在を確認することにより糸切れを検出する糸検出センサーと、を備え、巻取制御部は、テンション調整装置が糸のテンションを所定範囲内に調整することが不可能である所定状態になっており、かつ、糸検出センサーによって糸切れが検出された後に、巻取速度よりも遅い速度で糸を巻き取る低速巻取制御を行う。
【0007】
この糸巻取装置によれば、テンション調整装置が糸のテンションを所定範囲内に調整することが不可能である所定状態になっていることが、低速巻取制御に移行する条件となる。この所定状態が成立しており、さらに糸切れが検出された後にのみ、低速巻取制御が行われるので、糸切れが検出されない限りは設定された一定の巻取速度で巻取制御が行われる。例えば給糸ボビンの品質が良ければ、糸が一度も切れずに巻取りが完了する場合もある。糸が一度も切れなかったという事実は、その給糸ボビンにおいて減速は不要であったことを意味する。このように、テンション調整における所定状態と糸切れの二つの条件が成立したときのみに低速巻取制御が行われるので、減速不要な給糸ボビンに対しては、減速巻取制御は行われない。これにより、画一的な減速制御を行った場合よりも生産量を改善することができる。
【0008】
テンション調整装置は、給糸ボビンから解舒される糸のバルーンの大きさを下降しながら規制するバルーン規制装置を有し、巻取制御部は、バルーン規制装置が移動範囲の最下端に達している状態を所定状態として認識してもよい。バルーン規制装置が移動範囲の最下端に達しているとき、糸のテンションに起因する糸切れが生じる可能性が比較的高い。この判断(制御)によれば、再度の糸切れを防止するという観点でより望ましいタイミングにて、低速巻取制御が行われる。
【0009】
テンション調整装置は、糸を屈曲させて糸にテンションを付与するゲート式のテンション付与装置を有し、巻取制御部は、テンション付与装置が制御上の全開状態となっている状態を所定状態として認識してもよい。テンション付与装置が制御上の全開状態となっているとき、糸のテンションに起因する糸切れが生じる可能性が比較的高い。この判断(制御)によれば、再度の糸切れを防止するという観点でより望ましいタイミングにて、低速巻取制御が行われる。
【0010】
テンション調整装置は、糸を屈曲させて糸にテンションを付与するゲート式のテンション付与装置と、糸のテンションを測定するテンション測定装置とを有し、巻取制御部は、テンション測定装置により測定されたテンションが所定範囲を超えた状態を、テンション調整装置が所定状態になっていると認識してもよい。テンション付与装置による調整に関わらずテンション測定装置により測定されたテンションが所定範囲を超えているとき、糸のテンションに起因する糸切れが生じる可能性が比較的高い。この判断(制御)によれば、再度の糸切れを防止するという観点でより望ましいタイミングにて、低速巻取制御が行われる。
【0011】
テンション調整装置は、糸のテンションを測定するテンション測定装置と、テンション測定装置によるテンション測定履歴を記憶する記憶部とを有し、巻取制御部は、記憶部に記憶された破断波形と同一か又は破断波形に類似するテンション変動を検出した場合に、テンション調整装置が所定状態になっていると認識してもよい。破断波形と同一か又は破断波形に類似するテンション変動を検出したとき、糸のテンションに起因する糸切れが生じる可能性が比較的高い。この判断(制御)によれば、再度の糸切れを防止するという観点でより望ましいタイミングにて、低速巻取制御が行われる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、画一的な減速制御を行った場合よりも生産量を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る糸巻取装置を備えた自動ワインダの正面図である。
【
図3】
図3は、バルーン規制装置のガイド筒周りの側断面図である。
【
図4】
図4は、巻取制御部による巻取制御のフロー図である。
【
図5】
図5(a)及び
図5(b)は、巻取完了まで通常巻取制御を行った場合のテンション及び巻取速度の時間的変化の一例を示す図である。
【
図6】
図6(a)及び
図6(b)は、途中で糸切れが生じて低速巻取制御を行った場合のテンション及び巻取速度の時間的変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
図1に示されるように、自動ワインダ(糸巻取機)1は、並べて配置された複数の巻取ユニット(糸巻取装置)3と、機台制御装置5と、玉揚装置7と、を備えている。
【0016】
機台制御装置5は、複数の巻取ユニット3それぞれと通信可能である。自動ワインダ1のオペレータは、機台制御装置5を適宜操作することにより、複数の巻取ユニット3を一括して管理できる。機台制御装置5には、表示画面5aと、入力キー5bと、が設けられている。表示画面5aは、巻取ユニット3の設定内容及び/又は状態に関する情報等を表示することができる。オペレータが入力キー5bを用いて適宜の操作を行うことにより、巻取ユニット3の設定作業が行われる。
【0017】
複数の巻取ユニット3のそれぞれは、給糸ボビン(ボビン)SBから糸Yを解舒しつつ、糸Yを綾振りしながら巻取ボビンWBに巻き取る。このようにして、巻取ユニット3は、パッケージPを形成する。糸Yには、芯糸が含まれていてもよい。芯糸は、例えば、モノフィラメント糸等である。
【0018】
玉揚装置7は、複数の巻取ユニット3のそれぞれにおいてパッケージPが満巻(規定量の糸が巻き取られた状態)となった際に、当該巻取ユニット3の位置まで走行し、満巻パッケージを巻取ユニット3から取り外すと共に、空の巻取ボビンWBを巻取ユニット3にセットする。
【0019】
次に、
図2を参照して、巻取ユニット3の構成について説明する。
図2に示されるように、複数の巻取ユニット3のそれぞれは、ユニット制御部10と、給糸装置(給糸部)12と、巻取装置(巻取部)14と、を備えている。
【0020】
ユニット制御部10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)等のメモリと、を備えている。メモリには、巻取ユニット3の各構成を制御するためのプログラムが記憶される。プロセッサは、メモリに記憶されたプログラムを実行する。ユニット制御部10は、ハードウェアとソフトウェアとの協働により、巻取ユニット3の各構成を制御する。ユニット制御部10は、機台制御装置5と通信可能に構成されている。これにより、自動ワインダ1が備えた複数の巻取ユニット3の動作を、機台制御装置5において集中的に管理することができる。
【0021】
給糸装置12は、搬送トレイに載せられた給糸ボビンSBを所定の位置で支持する支持機構である。給糸ボビンSBから糸Yが解舒され、給糸ボビンSBから上方に向けて糸Yが引き出される。これにより、給糸装置12は、糸Yを供給する。給糸装置12は、搬送トレイ式に限られず、例えばマガジン式であってもよい。
【0022】
巻取装置14は、給糸ボビンSBから糸Yを解舒してパッケージPに巻き取る。巻取装置14は、クレードル16と、巻取ドラム18と、を備えている。クレードル16は、一対の回転支持部(図示しない)を有している。クレードル16は、回転支持部で巻取ボビンWBを挟み込むことにより、当該巻取ボビンWB(又はパッケージP)を回転可能に支持する。クレードル16は、支持しているパッケージPを巻取ドラム18に接触させる状態と、パッケージPを巻取ドラム18から離した状態と、に切替可能である。
【0023】
巻取ドラム18は、パッケージPの表面で糸Yをトラバースさせると共にパッケージPを回転させる。巻取ドラム18は、ドラム駆動モータ(図示しない)によって回転駆動される。パッケージPの外周面を巻取ドラム18に接触させた状態で、当該巻取ドラム18を回転駆動することにより、パッケージPを従動回転させる。また、巻取ドラム18の外周面には、螺旋状の綾振溝が形成されている。給糸ボビンSBから解舒された糸Yは、綾振溝によって一定の幅でトラバースされながらパッケージPの表面に巻き取られる。これにより、一定の巻幅を有するパッケージPを形成することができる。
【0024】
複数の巻取ユニット3のそれぞれは、給糸装置12と巻取装置14との間の糸走行経路中に、給糸装置12側から順に、バルーン規制装置20と、テンション付与装置22と、テンション測定装置24と、糸継装置26と、糸監視装置28と、ワックス付与装置30と、を備えている。糸継装置26の近傍には、第1捕捉案内装置32と、第2捕捉案内装置34と、が配置されている。これらの装置は、給糸ボビンSBから解舒された糸YがパッケージPに到達するまでの糸道に配置されている。
【0025】
バルーン規制装置20は、給糸ボビンSBの芯管に被さるように配置されるガイド筒50を備えている。ガイド筒50は、略筒状であり、給糸ボビンSBの糸層上部に形成された糸Yのバルーンに接触するように配置されている。バルーンとは、給糸ボビンSBから解舒される糸Yが遠心力に振り回されている部分のことである。このバルーンに対してガイド筒50を接触させることにより、当該バルーンの部分の糸Yに接触して、糸Yが過度に振り回されることを防止する。これにより、当該糸Yを給糸ボビンSBから適切に解舒できる。
【0026】
テンション付与装置22は、走行する糸Yを屈曲させて糸Yに所定のテンションを付与する。テンション付与装置22は、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置するゲート式である。可動側の櫛歯は、櫛歯同士が噛み合わせ状態となるように付勢されている。テンション付与装置22は、噛み合わせ状態の櫛歯の間を屈曲させながら糸Yを通過させることにより、当該糸Yに対してテンションを付与する。テンション付与装置22の動作は、ユニット制御部10により制御される。テンション付与装置22は、制御上、全開状態となることができる。すなわち、テンション付与装置22は、糸巻取中において、糸Yの走行方向から見て櫛歯同士が若干重なる状態となることができる(このとき糸が若干屈曲する)。この状態において、櫛歯が完全に全開となる訳ではないが、上記の櫛歯同士が若干重なる状態が、「制御上の全開状態」と呼ばれる。なお、テンション付与装置22は、糸継ぎ時などにおいて第2捕捉案内装置34が糸Yをテンション付与装置22に導入する際、完全な全開状態となって糸Yを受け入れる。
【0027】
テンション測定装置24は、給糸装置12と巻取装置14との間において、走行する糸Yのテンション(張力)を測定する。テンション測定装置24は、糸Yのテンションの測定値を示すテンション測定信号をユニット制御部10に出力する。
【0028】
糸継装置26は、給糸装置12と巻取装置14との間で糸Yが何らかの理由により分断状態となったときに、給糸装置12側の糸Y(下糸)と、巻取装置14側の糸Y(上糸)と、を糸継ぎする。本実施形態において、糸継装置26は、圧縮空気により発生させた旋回空気流によって糸端同士を撚り合わせるスプライサ装置として構成されている。
【0029】
糸監視装置28は、糸道を走行する糸Yの状態を監視して、監視した情報に基づいて糸欠陥の有無を検出する。糸監視装置28は、糸欠陥として、例えば、糸Yの太さ異常及び/又は糸Yに含有されている異物を検出する。また、糸監視装置28は、糸切れ、すなわち糸道における糸Yの有無等も検出する。糸監視装置28は、上記糸道に配置され、糸Yの存在を確認することにより糸切れを検出する糸検出センサーである。糸監視装置28の近傍には、糸Yを切断するためのカッタ29が設けられている。カッタ29は、糸監視装置28により作動させられる。
【0030】
ワックス付与装置30は、巻取装置14と糸監視装置28との間に配置されている。ワックス付与装置30は、糸監視装置28から巻取装置14に向けて走行する糸Yにワックスを付与する。
【0031】
次に、バルーン規制装置20の構成の詳細について説明する。
図3に示されるように、バルーン規制装置20は、給糸装置12によって起立した状態で支持された給糸ボビンSBの上方において、給糸ボビンSBからの糸Yの解舒を補助する。バルーン規制装置20は、給糸ボビンSBから解舒される糸Yにより形成されるバルーンの大きさを制御し、糸Yに適切なテンションを付与する。
【0032】
具体的には、バルーン規制装置20は、ガイド筒50と、固定筒54と、昇降機構56と、を備えている。固定筒54は、上下端が開口する略円筒形状の部材である。固定筒54は、ホルダー58を介して巻取ユニット3のフレームに固定されている。固定筒54の下端部には、糸ガイド55が設けられる。
【0033】
ガイド筒50は、上下端が開口する略筒形状の部材である。ガイド筒50は、ホルダー57を介して昇降機構56に支持されている。ガイド筒50の上部の内側には、固定筒54の下部が挿入されている。ガイド筒50は、昇降機構56によって昇降させられることによって、給糸ボビンSBの上部に被せられる。給糸ボビンSBの中心軸線と、固定筒54及びガイド筒50の中心軸線とは一致している。給糸ボビンSBから解舒された糸Yは、ガイド筒50の内部空間を通過する。
【0034】
また、バルーン規制装置20は、給糸ボビンSBのチェース部Tの高さを検出するセンサーを備えている。チェース部Tの位置は、糸Yが解舒されることによって降下する。昇降機構56は、センサーによって検出されたチェース部Tの高さに応じて、ガイド筒50を降下させる。これにより、ガイド筒50は、給糸ボビンSBからの糸Yの解舒に応じて降下可能(移動可能)となっている。
【0035】
固定筒54は、固定された状態でバルーンの拡がりを規制する。ガイド筒50は、給糸ボビンSBからの糸Yの解舒に追随して移動して、バルーンの拡がりを規制する。このように、固定筒54及びガイド筒50は、バルーンの拡がりを規制することによって、糸Yの解舒を補助する。バルーン規制装置20は、糸解舒補助装置である。バルーン規制装置20は、給糸ボビンSBから解舒される糸Yのバルーンの大きさを下降しながら規制する。ガイド筒50は、例えば、円筒形状の第1筒部51と、テーパ形状の第2筒部52と、を備えている。
【0036】
続いて、
図2~
図6を参照して、自動ワインダ1及び巻取ユニット3における糸Yの巻取制御について説明する。ユニット制御部10は、巻取装置14(詳細にはドラム駆動モータ)を制御することで、巻取速度が一定となるよう又は変化するように、巻取速度を制御する。ユニット制御部10は、予め設定された巻取速度で糸Yを巻き取るように巻取装置14を制御する巻取制御部として機能する。ユニット制御部10は、基本的に、予め設定された一定の巻取速度で糸Yを巻き取る通常巻取制御を行う。ユニット制御部10は、特定の条件が成立した場合には、予め設定された低速(上記一定の巻取速度よりも遅い速度)で糸Yを巻き取る低速巻取制御を行う。
【0037】
図2及び
図3に示されるように、巻取ユニット3は、糸Yのテンションを所定の範囲内に調整するテンション調整装置25を備える。ユニット制御部10は、テンション調整装置25におけるテンション調整の状態と、糸監視装置28による糸切れの検出とに基づいて、上記の通常巻取制御又は低速巻取制御を行う。以下、いくつかの制御例について説明する。上記したバルーン規制装置20、テンション付与装置22、及びテンション測定装置24の一部(少なくとも何れか一つ)が、テンション調整装置25を構成してもよいし、これらの3つの装置全てがテンション調整装置25を構成してもよい。制御例に応じて、巻取制御に用いられるテンション調整装置25の具体的構成が適宜に選ばれる。
【0038】
第1制御例では、バルーン規制装置20によってテンション調整装置25が構成される。バルーン規制装置20のガイド筒50は、ある時点で、それ以上は降下できない位置すなわち移動範囲の最下端に達する。バルーン規制装置20は、ガイド筒50が移動範囲の最下端に達している状態を検出する。
【0039】
第1制御例を含む何れの制御例においても、ユニット制御部10は、テンション調整装置25が糸Yのテンションを所定範囲内に調整することが不可能である所定状態(テンション調整不可能状態)になっていることを検出する。テンション調整装置25がこの所定状態を検出することが、ユニット制御部10において低速巻取制御に移行するための第1条件である。第1制御例では、ユニット制御部10は、バルーン規制装置20のガイド筒50が移動範囲の最下端に達している状態を上記所定状態として認識する。そして、糸監視装置28によって糸切れが検出されることが、ユニット制御部10において低速巻取制御に移行するための第2条件である。
【0040】
図4を参照して、第1制御例に基づく巻取制御の手順(巻取方法)について説明する。まず、新規の給糸ボビンSBが給糸装置12に供給され、巻取りが開始される(ステップS01)。ユニット制御部10は、バルーン規制装置20(テンション調整装置25)におけるテンション調整状態を監視する(ステップS02)。ユニット制御部10は、テンション調整装置25が所定状態(テンション調整不可能状態)になっているかどうかを監視する。巻取りを継続する間において、糸切れが発生する場合がある。ユニット制御部10は、糸切れが発生したか否かを判断する(ステップS03)。糸切れが発生しない限り(ステップS03:NO)、ユニット制御部10は通常巻取制御を行う(ステップS04)。
【0041】
例えば、
図5(b)に示されるように、一度も糸切れが発生しなければ、巻取開始時間t
0から巻取完了時間t
2に至るまで、巻取速度は一定の速度V
aに保たれる。なお、
図5(a)に示されるように、巻取完了時間t
2よりも幾らか前の(早い)所定時間t
1は、テンション調整装置25が所定状態となった時間を意味する。所定時間t
1は、給糸ボビンSBの残糸量が、給糸ボビン解舒開始時の3割程度となるタイミングに設定してもよい。この所定時間t
1までは糸YのテンションT
aはほぼ一定であるが、所定時間t
1以降は、糸Yのテンションは上昇する傾向にある。(なお、一定のテンションT
aは一例に過ぎない。)
【0042】
糸切れが発生した場合(ステップS03:YES)、ユニット制御部10は、テンション調整不可能条件が満たされているか否かを判断する(ステップS05)。通常巻取制御を行う(ステップS04)。テンション調整装置25が所定状態になっていない場合(ステップS05:NO)であれば、第2条件は成立しているが第1条件が成立していないので、ユニット制御部10は通常巻取制御を行う(ステップS04)。テンション調整装置25が所定状態になっている場合(ステップS05:YES)であれば、第1条件と第2条件の両方が成立しているので、ユニット制御部10は低速巻取制御を行う(ステップS06)。
【0043】
例えば、
図6(a)及び
図6(b)に示されるように、テンション調整装置25が所定状態となった所定時間t
1以降のある時間t
3において糸切れが発生した場合、テンションは一時的にゼロになる。その後、巻取りが再開されるが、巻取速度は速度V
aよりも遅い速度V
bとされる。速度V
aに対する速度V
bの比は、適宜に設定されてもよい。速度V
aに対する速度V
bの比が、糸の種類及び/又は太さなどに基づいて設定されてもよい。ユニット制御部10は、速度V
a及び速度V
bを予め記憶してもよいが、糸切れが発生した際の状況に応じて速度V
bを算出してもよい。
【0044】
ユニット制御部10は、巻取りを継続する間(巻取りが完了するまで)、ステップS03及びステップS05の判断を繰り返す。ステップS05の判断は、ステップS03よりも前に行われてもよい。以上の一連の巻取制御により、ある巻取ユニット3では一定の速度Vaで最後まで(給糸ボビンSBが空になるまで)巻取制御が行われ、別の巻取ユニット3では、途中、糸切れが発生して低速巻取制御が行われる。またある特定の巻取ユニット3においても、ある給糸ボビンSBの場合には最後まで巻取制御が行われ、別の給糸ボビンSBの場合に、途中、糸切れが発生して低速巻取制御が行われる。なお、早いタイミングで糸切れが発生し、その後、一定の速度Vaで最後まで巻取制御が行われる場合もある。
【0045】
本実施形態の糸巻取装置によれば、テンション調整装置25が糸Yのテンションを所定範囲内に調整することが不可能である所定状態になっていることが、低速巻取制御に移行する条件となる。この所定状態が成立しており、さらに糸切れが検出された後にのみ、低速巻取制御が行われるので、糸切れが検出されない限りは設定された一定の巻取速度で巻取制御が行われる(
図5参照)。例えば給糸ボビンSBの品質が良ければ、糸Yが一度も切れずに巻取りが完了する場合もある。糸Yが一度も切れなかったという事実は、その給糸ボビンにおいて減速は不要であったことを意味する。このように、テンション調整における所定状態と糸切れの二つの条件が成立したときのみに低速巻取制御が行われるので、減速不要な給糸ボビンSBに対しては、減速巻取制御は行われない。これにより、画一的な減速制御を行った場合よりも生産量を改善することができる。
【0046】
第1制御例では、ユニット制御部10は、バルーン規制装置20が移動範囲の最下端に達している状態を所定状態として認識する。バルーン規制装置20が移動範囲の最下端に達しているとき、糸Yのテンションに起因する糸切れが生じる可能性が比較的高い。この判断(制御)によれば、再度の糸切れを防止するという観点でより望ましいタイミングにて、低速巻取制御が行われる。
【0047】
第2制御例について説明すると、テンション付与装置22によってテンション調整装置25が構成される。ユニット制御部10は、テンション付与装置22が制御上の全開状態となっている状態を所定状態として認識する。テンション付与装置22が制御上の全開状態となっているとき、テンション付与装置22による制御域を超えている。よって、糸Yのテンションに起因する糸切れが生じる可能性が比較的高い。この判断(制御)によれば、再度の糸切れを防止するという観点でより望ましいタイミングにて、低速巻取制御が行われる。
【0048】
第3制御例について説明すると、テンション付与装置22及びテンション測定装置24によってテンション調整装置25が構成される。ユニット制御部10は、テンション付与装置22による調整に関わらずテンション測定装置24により測定されたテンションが所定範囲を超えた状態を、テンション調整装置25が所定状態になっていると認識する。テンション付与装置22による調整に関わらずテンション測定装置24により測定されたテンションが所定範囲を超えているとき、テンション値が上限に到達している。よって、糸Yのテンションに起因する糸切れが生じる可能性が比較的高い。この判断(制御)によれば、再度の糸切れを防止するという観点でより望ましいタイミングにて、低速巻取制御が行われる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、テンション調整装置は、テンション測定装置24と、テンション測定装置24によるテンション測定履歴を記憶する記憶部とを有してもよい。そして、ユニット制御部10は、記憶部に記憶された破断波形と同一か又は破断波形に類似するテンション変動を検出した場合に、テンション調整装置が所定状態になっていると認識してもよい。この場合、破断波形は、自動ワインダ1に属する全ての巻取ユニット3に関する情報が集約された情報であってもよい。破断波形と同一か又は破断波形に類似するテンション変動を検出したとき、糸Yのテンションに起因する糸切れが生じる可能性が比較的高い。この判断(制御)によれば、再度の糸切れを防止するという観点でより望ましいタイミングにて、低速巻取制御が行われる。
【0050】
上記実施形態では糸監視装置28が糸検出センサーとして機能した。この態様に限らず、テンション測定装置24が、糸Yの存在を確認することにより糸切れを検出する糸検出センサーとして機能してもよい。その場合、テンション測定装置24は、糸Yのテンションが検出不可能(テンションゼロ)であることを検出すると、糸切れ信号をユニット制御部10に出力する。
【0051】
以上に記載された実施形態及び種々の変形例の少なくとも一部は、任意に組み合わせられてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…自動ワインダ(糸巻取機)、3…巻取ユニット(糸巻取装置)、10…ユニット制御部(巻取制御部)、12…給糸装置(給糸部)、14…巻取装置(巻取部)、20…バルーン規制装置、22…テンション付与装置、24…テンション測定装置、28…糸監視装置(糸検出センサー)、SB…給糸ボビン。