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特開2024-17554梱包シートの製造方法、および梱包シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017554
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】梱包シートの製造方法、および梱包シート
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/4382 20120101AFI20240201BHJP
   D04H 1/541 20120101ALI20240201BHJP
   B65D 65/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
D04H1/4382
D04H1/541
B65D65/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120271
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】矢島 英明
(72)【発明者】
【氏名】大川 裕太
【テーマコード(参考)】
3E086
4L047
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086BA15
3E086BA19
3E086BA29
3E086BB41
3E086BB85
3E086CA15
3E086CA31
3E086CA35
3E086DA08
4L047AA07
4L047AA08
4L047AA27
4L047AA28
4L047AB02
4L047BA09
4L047BB09
(57)【要約】
【課題】内部構造を簡便に制御する梱包シートの製造方法、および該製造方法による梱包シートを提供すること。
【解決手段】梱包シートSの製造方法は、複数の第1繊維23Aと、芯部231および芯部231を被覆する熱可塑性の被覆層232を有する複数の第2繊維23Bと、が混合されたウェブWを作製する堆積工程S12と、ウェブWを加熱して被覆層232を溶融させる加熱工程S13と、被覆層232が溶融した状態にてウェブWを圧縮および冷却して、第2繊維23B同士の接点を被覆層232により結着させる加圧冷却工程S14と、を有することを特徴とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然繊維である複数の第1繊維と、芯部および前記芯部を被覆する熱可塑性の被覆層を有する複数の第2繊維と、が混合された堆積繊維体を作製する堆積工程と、
前記堆積繊維体を加熱して前記被覆層を溶融させる加熱工程と、
前記被覆層が溶融した状態にて前記堆積繊維体を圧縮および冷却して、前記第2繊維同士の接点を前記被覆層により結着させる加圧冷却工程と、を有することを特徴とする梱包シートの製造方法。
【請求項2】
前記堆積工程にて作製した前記堆積繊維体に対して、前記加熱工程から前記加圧冷却工程までを連続的に実施する、請求項1に記載の梱包シートの製造方法。
【請求項3】
前記加圧冷却工程は、一対のロールを用いて、一対の前記ロールの間に前記堆積繊維体を通して実施される、請求項2に記載の梱包シートの製造方法。
【請求項4】
一対の前記ロールは、前記加圧冷却工程において前記堆積繊維体の上方に配置される第1ロールと、前記堆積繊維体の下方に配置される第2ロールと、から成り、
前記第1ロールは、前記第1ロールの温度を調整する第1冷却部と、前記第1冷却部を制御する第1制御部と、を有し、
前記第2ロールは、前記第2ロールの温度を調整する第2冷却部と、前記第2冷却部を制御する第2制御部と、を有し、
前記第1制御部と前記第2制御部とは、第3制御部によって制御される、請求項3に記載の梱包シートの製造方法。
【請求項5】
前記第1制御部は、前記第1ロールの表面温度を測定する第1温度測定部を有し、
前記第2制御部は、前記第2ロールの表面温度を測定する第2温度測定部を有し、
前記第3制御部は、前記堆積繊維体の温度を測定する第3温度測定部を有する、請求項4に記載の梱包シートの製造方法。
【請求項6】
前記加熱工程は、加熱部を用いて実施され、
前記加熱部は、熱源部、熱放射部、および送風部を有し、
前記送風部は、前記熱源部が発生させる熱を、前記熱放射部の前記堆積繊維体まで送風によって搬送する、請求項1に記載の梱包シートの製造方法。
【請求項7】
前記加圧冷却工程を経た前記堆積繊維体の厚さは、前記加圧冷却工程を経る前の前記堆積繊維体の厚さに対して10%以上減少する、請求項1に記載の梱包シートの製造方法。
【請求項8】
前記第1繊維は、セルロース繊維であり、
前記第1繊維の平均繊維長は、10μm以上50mm以下である、請求項1に記載の梱包シートの製造方法。
【請求項9】
前記芯部は、ポリエチレンテレフタレートであり、
前記被覆層は、ポリエチレンであり、
前記第2繊維の平均繊維長は、100μm以上5mm以下である、請求項1に記載の梱包シートの製造方法。
【請求項10】
前記堆積繊維体において、前記第1繊維の含有量に対する前記第2繊維の含有量は、12.0質量%以上40.0質量%以下である、請求項1に記載の梱包シートの製造方法。
【請求項11】
天然繊維である複数の第1繊維と、芯部および前記芯部を被覆する熱可塑性の被覆層を有する複数の第2繊維とを含み、
前記被覆層が加熱により溶融された状態にて、圧縮および冷却されることにより、前記第2繊維同士の接点が前記被覆層により結着されていることを特徴とする梱包シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梱包シートの製造方法、および梱包シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セルロース繊維などの天然繊維と樹脂とを含む梱包シートが知られていた。例えば、特許文献1には、天然繊維および合成樹脂などを含み、厚さ方向において各材料の含有量が変化する板状の繊維基材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-48475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の繊維基材では、内部構造を簡便に制御することが難しいという課題があった。詳しくは、各材料の含有量の比が変化する構造を形成するために、含有量の比が徐々に変わるように各材料を堆積させて繊維集積物を作製している。この方法は、タクトタイムの増加や製造工程の複雑化に繋がり易く、製造コストに影響を及ぼす場合があった。すなわち、内部構造を簡便に制御する梱包シートの製造方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
梱包シートの製造方法は、天然繊維である複数の第1繊維と、芯部および前記芯部を被覆する熱可塑性の被覆層を有する複数の第2繊維と、が混合された堆積繊維体を作製する堆積工程と、前記堆積繊維体を加熱して前記被覆層を溶融させる加熱工程と、前記被覆層が溶融した状態にて前記堆積繊維体を圧縮および冷却して、前記第2繊維同士の接点を前記被覆層により結着させる加圧冷却工程と、を有することを特徴とする。
【0006】
梱包シートは、天然繊維である複数の第1繊維と、芯部および前記芯部を被覆する熱可塑性の被覆層を有する複数の第2繊維とを含み、前記被覆層が加熱により溶融された状態にて、圧縮および冷却されることにより、前記第2繊維同士の接点が前記被覆層により結着されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る梱包シートの模式拡大図。
図2図1における線分A-Aの断面図。
図3図1における線分B-Bの断面図。
図4】梱包シートの内部構造を示す模式断面図。
図5】梱包シートの製造方法を示すフロー図。
図6】梱包シートの製造装置の構成を示す模式図。
図7】ウェブの密度と昇温時間との関係を示すグラフ。
図8】第1ロールおよび第2ロールなどの構成を示すブロック図。
図9】加圧冷却工程の内容を示す模式側面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に述べる実施の形態では、天然繊維などを含む梱包シートSおよびその製造方法を例示し、図面を参照して説明する。以下の各図においては、必要に応じて座標軸であるXYZ軸を付し、矢印が指す方向を+方向とし、+方向と反対の方向を-方向とする。+Z方向を上方、-Z方向を下方ということもある。なお、図6において、-Z方向は鉛直方向と一致する。
【0009】
また、図示の便宜上、各部材の大きさを実際とは異ならせている。梱包シートSの製造装置10において、堆積繊維体であるウェブWや梱包シートSなどの搬送方向の先を下流、搬送方向を遡る側を上流ということもある。ウェブWおよび梱包シートSにおいて、厚さとはZ軸に沿う距離であり、厚さ方向とはZ軸に沿う方向である。
【0010】
1.梱包シート
本実施形態に係る梱包シートSは、後述する梱包シートSの製造方法にて製造される。図1に示すように、梱包シートSは、原料として複数の第1繊維23Aと複数の第2繊維23Bとを含む。複数の第1繊維23Aと複数の第2繊維23Bとは、特定の方向に配向せず、互いに絡み合っている。第1繊維23Aと第2繊維23Bとの接点、および第2繊維23B同士の接点は、第2繊維23Bの後述する被覆層232によって結着されている。第1繊維23Aにおいて、第2繊維23Bとの接点は1個以上である。第2繊維23Bにおいて、第1繊維23Aまたは他の第2繊維23Bとの接点も1個以上である。第1繊維23A同士の接点は結着されないが、該接点は1個以上である。以上のように、梱包シートSでは、複数の第1繊維23Aと複数の第2繊維23Bとが互いに接し合っている。
【0011】
梱包シートSは、上記の構成に由来する柔軟性および強度を備える。梱包シートSの被梱包物としては、例えば、腕時計、ノートパソコン、小型ゲーム機、スマートフォン、プリンター、プロジェクターなどの情報端末機器、精密部品、模型、陶器、磁器、ガラス器、家電製品、および青果などが挙げられる。
【0012】
第1繊維23Aは天然繊維である。本実施形態では、第1繊維23Aとしてセルロース繊維を適用する。セルロース繊維は、植物由来であって、比較的に豊富な天然素材であり、比較的に安価かつ容易に入手することができる。
【0013】
セルロース繊維は、紙、段ボール、パルプ、パルプシート、大鋸屑、鉋屑、および木材などの原料に解繊処理を施すことによって得られる。セルロース繊維は、主としてセルロースで形成されたものであるが、セルロース以外の成分を含んでもよい。セルロース以外の成分としては、例えば、ヘミセルロース、リグニンなどが挙げられる。
【0014】
第1繊維23Aの平均繊維長は、10μm以上50mm以下であることが好ましく、20μm以上5mm以下であることがより好ましい。これによれば、複数の第1繊維23Aおよび複数の第2繊維23Bが絡まり易くなり、梱包シートSの強度などの機械的特性を向上させることができる。第1繊維23Aおよび第2繊維23Bの平均繊維長は、ステープルダイヤグラム法により測定される。
【0015】
図2に示すように、第2繊維23Bは、芯部231および芯部231を被覆する被覆層232を有する。被覆層232は、熱可塑性を備え、後述する梱包シートSの製造工程の加熱によって溶融する。図2では、第1繊維23Aと第2繊維23Bとの接点が、溶融して固化した被覆層232によって結着された状態を示している。
【0016】
芯部231は有機繊維である。有機繊維としては、例えば、上述したセルロース繊維などの天然繊維、およびポリエステル、レーヨンなどの合成繊維が挙げられる。本実施形態では、芯部231としてポリエチレンテレフタレートを適用する。ポリエチレンテレフタレートは、結晶性に由来して比較的に耐熱性が高く、ペットボトルから再利用し易いなどの利点を備える。
【0017】
被覆層232は熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポチエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリスチレン、アクリル樹脂、およびポリ酢酸ビニルなどが挙げられる。本実施形態では、被覆層232としてポリエチレンを適用する。ポリエチレンは、製造段階で平均分子量を容易に変えることが可能であり、融点を比較的自由に設定できる。
【0018】
被覆層232の融点は、芯部231の融点より約20℃低いことが好ましい。これにより、梱包シートSの製造時に、芯部231を溶融させずに、被覆層232を溶融させることが容易になる。被覆層232の融点は、100℃以上200℃以下であることが好ましく、100℃以上150以下であることがより好ましい。被覆層232の融点は、JIS K 0064:1992(化学製品の融点及び溶融範囲測定方法)により測定される。
【0019】
第2繊維23Bの平均繊維長、すなわち芯部231の平均繊維長は、100μm以上50mm以下であることが好ましく、特に1mm程度であることがより好ましい。これによれば、複数の第1繊維23Aに複数の第2繊維23Bが絡まり易くなり、梱包シートSの強度などの機械的特性を向上させることができる。
【0020】
芯部231の直径D1と被覆層232の厚さE1との比は、例えば、0.2以上2.0以下であることが好ましく、0.5以上1.5以下であることがより好ましい。これにより、梱包シートSの製造時の加熱工程において、芯部231の変形を抑えて被覆層232を溶融、固化させることができる。
【0021】
図3に示すように、被覆層232は、第2繊維23B同士の接点も結着させる。第2繊維23B同士の接点は、製造工程の加熱により、溶融して固化した互いの被覆層232によって結着される。上述した第1繊維23Aと第2繊維23Bとの接点、および第2繊維23B同士の接点は、被覆層232によって結着されるため、梱包シートSの形状が維持され易くなる。また、梱包シートSの緩衝性能や強度が向上する。
【0022】
図4に示すように、梱包シートSは+Z方向の主面と-Z方向の主面とが、XY平面に沿うシート状である。梱包シートSの内部は、後述する製造方法に起因して密度傾斜が存在する。詳しくは、+Z方向の主面付近、および-Z方向の主面付近には、比較的に低密度な領域L1が形成されている。上記主面のZ軸に沿う方向の中央には、比較的に高密度な領域L2が形成されている。領域L1と領域L2との間は、領域L1から領域L2に向かって徐々に密度が高くなっている。
【0023】
梱包シートSの内部の密度傾斜は、複数の第1繊維23Aと複数の第2繊維23Bとの間の空隙の多少によるものである。すなわち、領域L1は領域L2に対して、空隙が比較的に多い構造となっている。なお、図4では、密度の高低をグラデーションの濃淡にて表現している。
【0024】
2.梱包シートの製造方法
図5に示すように、本実施形態に係る梱包シートSの製造方法は、混合工程S11、堆積工程S12、加熱工程S13、加圧冷却工程S14、および裁断工程S15を有する。
【0025】
梱包シートSの製造方法では、上流の混合工程S11から下流の裁断工程S15まで、上記の順に各工程を経て梱包シートSが製造される。なお、本発明の梱包シートの製造方法は、堆積工程S12、加熱工程S13、および加圧冷却工程S14を含み、その他の工程は上記に限定されるものではない。また、本発明の梱包シートは、加圧冷却工程S14が完了し、裁断工程S15が未了の状態でロール状に巻き取られて保管、販売されてもよい。
【0026】
梱包シートSの製造方法の具体例について梱包シートSの製造装置10と共に説明する。本実施形態に係る梱包シートSの製造装置10は一例であり、これに限定されない。
【0027】
図6に示すように、製造装置10には、上流から下流に向かって、混合部11、堆積部100、ウェブ搬送部120、加湿部130、加熱部140、加熱冷却部である一対のロール150、裁断部160、および保管部であるトレイ170が備わる。また、製造装置10には、図示を省略するが、上記各構成の稼働を統合的に制御する装置制御部も備わる。
【0028】
混合部11では混合工程S11が行われる。混合部11は、第1繊維23Aおよび第2繊維23Bなどを空気中で混合して混合物を生成する。混合部11は、管状の本体部60、本体部60に接続されるホッパー13,14、供給管61,62、バルブ65,66を含む。
【0029】
ホッパー13は、供給管61を介して本体部60の内部に連通する。供給管61において、バルブ65はホッパー13と本体部60との間に設けられる。ホッパー13は第1繊維23Aを本体部60内へ供給する。バルブ65は、ホッパー13から本体部60に供給される第1繊維23Aの質量を調整する。
【0030】
ホッパー14は、供給管62を介して本体部60の内部に連通する。供給管62において、バルブ66はホッパー14と本体部60との間に設けられる。ホッパー14は、第2繊維23Bを本体部60内へ供給する。バルブ66は、ホッパー14から本体部60に供給される第2繊維23Bの質量を調整する。バルブ65,66により、第1繊維23Aと第2繊維23Bの混合比が調整される。
【0031】
詳しくは、第1繊維23Aと第2繊維23Bとを含む混合物は、後述する堆積部100において堆積繊維体であるウェブWと成る。ウェブWにおいて、第1繊維23Aの含有量に対する第2繊維23Bの含有量は、12.0質量%以上40.0質量%以下であることが好ましく、14.0質量%以上25.0質量%以下であることがより好ましい。これにより、第2繊維23Bの被覆層232の含有量を抑えながら、梱包シートSの強度などの機械的特性を向上させることができる。
【0032】
ここで、第2繊維23Bは、別途公知の装置によって作製されたものがホッパー14へ供給される。また、ホッパー14の上流に加熱混錬機を配置して、加熱混錬機にて作製される第2繊維23Bがホッパー14に供給されてもよい。加熱混錬機では、芯部231に被覆層232が形成される。
【0033】
なお、第1繊維23Aや第2繊維23Bの芯部231として、古紙や古布などに解繊処理を施して作製した繊維を用いてもよい。また、ホッパー13,14の何れかから添加剤も供給して、ウェブWに含有させてもよい。添加剤としては、例えば、着色剤、難燃剤、防虫剤、防カビ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集抑制剤、および離型剤などが挙げられる。
【0034】
第1繊維23Aおよび第2繊維23Bなどは、本体部60内を堆積部100に搬送されながら混合されて混合物と成る。本体部60における混合物生成の促進、および混合物の搬送性向上のために、本体部60に気流を発生させるブロアーなどを配置してもよい。混合物は本体部60を介して堆積部100へ搬送される。そして堆積工程S12へ進む。
【0035】
堆積部100では堆積工程S12が行われる。堆積部100は、混合物を空気中で堆積させて、複数の第1繊維23Aと複数の第2繊維23Bとが混合されたウェブWを作製する。堆積部100はドラム部101を含む。堆積部100は、下方が開放された略箱状であって、内部の上方にドラム部101が配置される。堆積部100は、混合物を本体部60からドラム部101の内部に取り込み、乾式にてメッシュベルト122に堆積させる。
【0036】
堆積部100の下方には、メッシュベルト122およびサクション機構110を含むウェブ搬送部120が配置される。サクション機構110は、Z軸に沿う方向において、メッシュベルト122を挟んでドラム部101と対向する。
【0037】
ドラム部101は、図示しないモーターによって回転駆動される円柱状の篩である。円柱状のドラム部101の側面には、篩の機能を有する網が設けられる。ドラム部101は、篩の網の目開きの大きさより小さい繊維や混合物などの粒子を、内部から外側に通過させる。混合物は、ドラム部101によって絡み合った繊維がほぐされて、堆積部100内の空気中に分散される。
【0038】
第1繊維23Aおよび第2繊維23Bなどが堆積部100内の空気中に分散されて、メッシュベルト122上にランダムに堆積する。そのため、ウェブWでは第1繊維23Aや第2繊維23Bが特定の方向に配向し難くなる。
【0039】
ドラム部101の篩は、混合物中の大きな繊維などを選別する機能を備えなくてもよい。すなわち、ドラム部101は、混合物の繊維をほぐして、混合物の全てを堆積部100の内部に放出してもよい。堆積部100内の空気中に分散された混合物は、重力とサクション機構110の吸引によって、メッシュベルト122の上方に堆積する。
【0040】
ウェブ搬送部120は、メッシュベルト122およびサクション機構110を備える。ウェブ搬送部120は、サクション機構110によって、混合物のメッシュベルト122への堆積を促進させる。また、ウェブ搬送部120は、混合物から形成されるウェブWを、メッシュベルト122の回動により下流へ搬送する。
【0041】
サクション機構110はドラム部101の下方に配置される。サクション機構110は、メッシュベルト122が有する複数の穴を介して、堆積部100内の空気を吸引する。これにより、ドラム部101の外側に放出された混合物は、空気と共に下方に吸引されてメッシュベルト122の上方の面に堆積する。サクション機構110には、ブロアーなどの公知の吸引装置が採用される。
【0042】
メッシュベルト122の複数の穴は、空気を通し、混合物に含まれる第1繊維23Aや第2繊維23Bなどを通し難い。メッシュベルト122は、無端ベルトであって、3つの張架ローラー121によって張り架けられる。
【0043】
メッシュベルト122は、張架ローラー121の自転によって、上方が下流に向かって移動する。換言すれば、メッシュベルト122は、図6において時計回りに回動する。メッシュベルト122が張架ローラー121によって回動されることにより、連続的に混合物が堆積してウェブWが形成される。ウェブWは、空気を比較的に多く含み、柔らかく膨らんでいる。ウェブWは、メッシュベルト122の移動に伴って下流へ搬送される。
【0044】
3つの張架ローラー121のうち、最も+X方向に配置される張架ローラー121の下方には、スクレイパー123が付設される。スクレイパー123は、ウェブWを搬送し終えたメッシュベルト122の表面に接触する。メッシュベルト122は回動しながらスクレイパー123と接触することにより、表面に残留する混合物が除去される。
【0045】
堆積部100の下流には加湿部130が配置される。加湿部130は、メッシュベルト122上のウェブWに水を噴霧して加湿する。これにより、ウェブWに含まれる第1繊維23Aや第2繊維23Bなどの飛散が抑えられる。また、加湿に用いる水に水溶性の添加剤などを含ませて、加湿と並行して添加剤をウェブWに含侵させてもよい。
【0046】
ウェブWはメッシュベルト122によって下流へ搬送され、メッシュベルト122から剥離される。そして、加熱部140の搬送ローラー147によって加熱部140の熱放射部143の内部に引き込まれる。そして加熱工程S13へ進む。
【0047】
加熱工程S13は加熱部140を用いて実施される。加熱部140は、内部に引き込んだウェブWを第2繊維23Bの被覆層232の融点以上に加熱して、被覆層232を溶融させる。加熱部140は、熱源部141、熱放射部143、および送風部145を有する。
【0048】
熱放射部143は、略箱状であって、内部の上方に熱源部141および送風部145を格納する。熱放射部143の下方では、-X方向から+X方向へウェブWが搬送される。
【0049】
熱源部141は、熱放射部143の上方に配置され、送風部145を挟んでウェブWと対向する。熱源部141は熱放射部143内にて下方へ向かって熱を放射する。熱源部141は、例えば、赤外線ヒーターなどの加熱装置である。
【0050】
送風部145は、熱源部141が発生させる熱を、熱放射部143内の下方を移動するウェブWまで送風によって搬送する。ウェブWは、熱放射部143内を搬送されながら非接触で加熱される。そのため、ウェブWにおいて、温度の偏りが発生し難くなり、加熱不足や熱の偏在による劣化などを抑えることができる。なお、搬送ローラー147は無端ベルトであってもよい。
【0051】
加熱部140におけるウェブWの加熱温度は、第1繊維23Aの融点と、第2繊維23Bの芯部231の融点、および被覆層232の融点によって適宜設定される。すなわち、加熱部140にて、ウェブWの温度は、被覆層232の融点以上、第1繊維23Aの融点未満、かつ芯部231の融点未満とする。例えば、芯部231の融点が260℃、および被覆層232の融点が125℃である場合に、ウェブWを190℃に加熱する。
【0052】
ここで、加熱プレス機などを用いて、ウェブWに加熱および加圧を同時に施さないことの長所を述べる。ウェブWは、第1繊維23Aおよび第2繊維23Bなどが混合および堆積されて成る。そのため、加熱部140に到達するウェブWは、加圧されておらず、比較的に空気を多く含み密度が低い状態にある。
【0053】
ウェブWの厚さおよび密度を変えた試料について、赤外線ヒーターの加熱により、25℃から150℃までの到達に要する昇温時間を計測した。その結果を図7に示す。
【0054】
図7に示すように、ウェブWの厚さが10mm厚および20mm厚のいずれであっても、密度が低い方が昇温時間は短くなっている。すなわち、密度が比較的に低い状態でウェブWを加熱することにより、加熱効率が向上して加熱に要するエネルギーを削減することができる。そして加圧冷却工程S14へ進む。
【0055】
図6に戻り、加圧冷却工程S14では、被覆層232が溶融した状態にて、ウェブWを圧縮および冷却する。これにより、第1繊維23Aと第2繊維23Bとの接点、および第2繊維23B同士の接点が被覆層232により結着される。
【0056】
堆積工程S12にて作製されたウェブWに対して、加熱工程S13から加圧冷却工程S14までを連続的に実施する。これにより、被覆層232を溶融させたまま加圧冷却工程S14へ進めることから、被覆層232の溶融状態が維持され易くなる。すなわち、ウェブWの温度が低下し難くなって、加熱工程S13にて加熱に費やされるエネルギーを低減することができる。
【0057】
加圧冷却工程S14は一対のロール150を用いて、一対のロール150の間にウェブWを通す。一対のロール150は、一対の回転式ローラーであって、円筒状の第1ロール151と円筒状の第2ロール152とから成る。加圧冷却工程S14において、第1ロール151はウェブWの上方に配置され、第2ロール152はウェブWの下方に配置される。
【0058】
これによって、ウェブWの上方および下方を向く表面からの冷却と圧縮とが実施される。被覆層232が加熱により溶融された状態にて、圧縮および冷却されることにより、上述した第1繊維23Aと第2繊維23Bとの接点、および第2繊維23B同士の接点が被覆層232により結着される。そのため、例えば、加圧プレス機を用いる場合と比べて、連続的な処理を容易に行うことができる。
【0059】
加圧冷却工程S14を経たウェブWは連続帳票状の梱包シートSと成る。連続帳票状の梱包シートSの厚さは、加圧冷却工程S14を経る前のウェブWの厚さに対して10%以上減少する。すなわち、加圧冷却工程S14にて一対のロール150の間を通過することにより、厚さが10%以上圧縮される。そのため、上述した領域L1と領域L2とをより明確に発現させることができる。一対のロール150の詳細な構成および機能については、後述する。そして裁断工程S15へ進む。
【0060】
裁断部160では裁断工程S15が行われる。裁断部160は、連続帳票状の梱包シートSを所望の形状に裁断する。図示を省略するが、裁断部160は縦刃と横刃とを含む。
【0061】
縦刃は、例えば、連続帳票状の梱包シートSをX軸に沿って切断する。横刃は、例えば、連続帳票状の梱包シートSをY軸に沿って切断する。これにより、略矩形の板状の梱包シートSが製造されてトレイ170に収容される。
【0062】
3.加圧冷却工程
上述した通り、製造装置10の一対のロール150は、第1ロール151および第2ロール152から成る。図8に示すように、第1ロール151は、第1冷却部155と、第1制御部153とを有する。第2ロール152は、第2冷却部156と、第2制御部154とを有する。図示を省略するが、第1制御部153および第2制御部154は、各々、CPU(Central Processing Unit)、システムバス、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを含む。
【0063】
第1冷却部155は第1制御部153と電気的に接続される。第1冷却部155は第1ロール151の温度を調整する。つまり、第1冷却部155は、第1制御部153の制御により、第1ロール151がウェブWと接する表面の温度を常温よりも低くして、上方からウェブWを冷却する。ここで、本明細書において、常温とは15℃から30℃である。
【0064】
第1制御部153は、第1ロール151の上記の表面温度を測定する第1温度測定部157を有する。第1温度測定部157が測定した温度は、第1制御部153にて演算されて、演算結果に応じて第1冷却部155の作動が調節される。これにより、第1ロール151の表面が所望の温度となる。
【0065】
第2冷却部156は第2制御部154と電気的に接続される。第2冷却部156は第2ロール152の温度を調整する。つまり、第2冷却部156は、第2制御部154の制御により、第2ロール152がウェブWと接する表面の温度を常温よりも低くして、下方からウェブWを冷却する。
【0066】
第2制御部154は、第2ロール152の上記の表面温度を測定する第2温度測定部158を有する。第2温度測定部158が測定した温度は、第2制御部154にて演算されて、演算結果に応じて第2冷却部156の作動が調節される。これにより、第2ロール152の表面が所望の温度となる。
【0067】
第1冷却部155および第2冷却部156には、公知の冷却装置が適用可能である。本実施形態では、第1冷却部155および第2冷却部156として、ペルチェ素子を適用する。
【0068】
第1制御部153と第2制御部154とは、製造装置10に対する外部機器200の第3制御部210によって制御される。第3制御部210は、第1制御部153および第2制御部154と電気的に接続される。図示を省略するが、第3制御部210は、第1制御部153および第2制御部154を介して、第1ロール151と第2ロール152とのZ軸に沿う間隙を調整する機能を有する。これにより、ウェブWへの圧縮力が調整される。外部機器200は、例えば、パーソナルコンピューターなどの情報端末機器である。
【0069】
第3制御部210は、加圧冷却工程S14に進むウェブWの温度を測定する第3温度測定部213を有する。なお、第3制御部210は、製造装置10が備える上述した装置制御部に含まれてもよい。
【0070】
第3温度測定部213が測定したウェブWの温度に基づき、第3制御部210は、第1ロール151の表面温度および第2ロール152の表面温度を修正する指示を第1制御部153および第2制御部154に発する。
【0071】
以上によれば、第1ロール151、第2ロール152、およびウェブWの各温度が個別に測定される。そのため、各温度を精密に制御することができる。第1温度測定部157、第2温度測定部158、および第3温度測定部213には、公知の温度計が適用される。例えば、第1温度測定部157および第2温度測定部158には熱電対を適用し、第3温度測定部213には非接触式の温度センサーを適用する。
【0072】
図9に示すように、加熱工程S13で加熱されたウェブWは一対のロール150に至る。ウェブWは、一対のロール150の直前で第3温度測定部213によって温度が測定される。そして、ウェブWは、第1ロール151と第2ロール152との間に引き込まれる。
【0073】
-Y方向からの側面視にて、第1ロール151は反時計回りに回転し、第2ロール152は時計回りに回転する。Z軸に沿う方向において、第1ロール151と第2ロール152との間隙は、ウェブWの厚さよりも狭い。そのため、ウェブWは-Z方向および+Z方向から圧縮される。上記間隙を変えることにより、ウェブWに加わる圧縮力が変化して梱包シートSの厚さが調整される。
【0074】
ウェブWは、第1ロール151および第2ロール152によって圧縮されながら、第1冷却部155および第2冷却部156によって冷却される。詳しくは、第1冷却部155は上方からウェブWを冷却し、第2冷却部156は下方からウェブWを冷却する。
【0075】
一対のロール150に至るウェブWは、加熱工程S13の加熱によって第2繊維23Bの被覆層232が溶融している。この状態でウェブWが一対のロール150の間を進むことにより、ウェブWは上方の表面と下方の表面から温度が徐々に低下する。そのため、ウェブWの上下の表面から内側に向かって被覆層232の固化が進行する。固化が進行すると一対のロール150による圧縮を受け難くなる。すなわち、ウェブWの上下の表面およびその近傍に、比較的に低密度の上述した領域L1が形成される。
【0076】
これに対して、ウェブWの厚さ方向の中央部では、冷却が進み難く被覆層232の固化が進行し難い。そのため、上記中央部では一対のロール150による圧縮を受け易くなり、比較的に高密度の上述した領域L2が形成される。
【0077】
本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0078】
梱包シートSにおいて、内部構造を簡便に制御することができる。詳しくは、被覆層232が溶融した状態で加圧および冷却が施される。そして、ウェブWにおいて、第1冷却部155および第2冷却部156に対して、比較的に近い範囲では被覆層232が冷却されて固化が進行し、比較的に遠い範囲では被覆層232の冷却が進みにくく溶融状態が維持される。そのため、上記近い範囲では加圧による圧縮が進行し難く、内部構造が比較的に低い密度となる。これに対して、上記遠い範囲では加圧による圧縮が進行し易く、内部構造が比較的に高い密度となる。これにより、加圧冷却工程S14を経たウェブW、つまり梱包シートSでは、簡便に高密度の領域L2と低密度の領域L1とを形成することができる。すなわち、内部構造を簡便に制御する梱包シートSの製造方法を提供することができる。
【0079】
加圧冷却工程S14の前に加熱工程S13を実施することから、ウェブWが圧縮されていない、比較的に密度が低い状態で加熱される。そのため、所望の温度までの昇温時間が短縮されて、タクトタイムを低減させることができる。
【0080】
第1ロール151の表面温度と第2ロール152の表面温度とが個別に制御されるため、第1ロール151に近い範囲と、第2ロール152に近い範囲とで密度を変えることができる。また、第3制御部210によって、第1制御部153と第2制御部154とが制御されるため、第1冷却部155および第2冷却部156の温度を統合的に制御することができる。
【0081】
比較的に低密度の領域L1と比較的に高密度の領域L2とを併せ持つ、安価な梱包シートSとすることができる。詳しくは、梱包シートSは、領域L1、領域L2、および領域L1と領域L2との間で密度が徐々に変化する領域を備える。このような構造を有する梱包材を個別に作製して組み合わせる場合と比べて、安価なものとすることができる。
【符号の説明】
【0082】
10…製造装置、23A…第1繊維、23B…第2繊維、140…加熱部、141…熱源部、143…熱放射部、145…送風部、150…一対のロール、151…第1ロール、152…第2ロール、153…第1制御部、154…第2制御部、155…第1冷却部、156…第2冷却部、157…第1温度測定部、158…第2温度測定部、210…第3制御部、213…第3温度測定部、231…芯部、232…被覆層、S…梱包シート、S12…堆積工程、S13…加熱工程、S14…加圧冷却工程、W…堆積繊維体としてのウェブ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9