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  • 特開-駆動回路及びモータ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175543
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】駆動回路及びモータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/06 20060101AFI20241211BHJP
   H02P 29/02 20160101ALI20241211BHJP
【FI】
H02M7/06 H
H02P29/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093405
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸田 学
【テーマコード(参考)】
5H006
5H501
【Fターム(参考)】
5H006BB05
5H006CB00
5H006CC08
5H006DC05
5H006FA00
5H006GA04
5H501CC05
5H501HA01
5H501HA05
5H501HB07
5H501LL23
5H501MM03
(57)【要約】
【課題】コンデンサの放電に必要な抵抗の大型化の抑制と、より短い放電時間と、を両立できる駆動回路等を提供する。
【解決手段】駆動回路1は、交流電流を整流する整流回路11と、負荷70と整流回路11とを接続する正極伝送路12と負極伝送路13との間で負荷70と並列に接続されるコンデンサ20及び放電部30と、放電部30と負極伝送路13との間に介在する分岐路41の導通と非導通とを切り替え可能に設けられたスイッチ40と、スイッチ40の動作を制御する制御部50と、を備える。放電部30は、直列に接続された放電用抵抗31と放電用抵抗32を有する。分岐路41は、接続部33と負極伝送路13とを接続する。制御部50は、電圧検出回路51が検出した電圧と閾値との関係に応じてスイッチ40の動作を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電流を整流する整流回路と、
前記整流回路によって整流された電力を消費する負荷と前記整流回路とを接続する正極伝送路と負極伝送路との間で前記負荷と並列に接続されるコンデンサと、
前記正極伝送路と前記負極伝送路との間で前記負荷及び前記コンデンサと並列に接続される放電部と、
前記放電部と前記負極伝送路との間に介在する分岐路の導通と非導通とを切り替え可能に設けられたスイッチと、
前記スイッチの動作を制御する制御部と、を備え、
前記放電部は、直列に接続された複数の放電用抵抗を有し、
前記分岐路は、前記複数の放電用抵抗同士の接続部と前記負極伝送路とを接続し、
前記制御部は、前記正極伝送路と前記負極伝送路との間の電圧を検出する電圧検出回路を有し、前記電圧検出回路が検出した電圧と、電圧の閾値と、の関係に応じて前記スイッチの動作を制御する、
駆動回路。
【請求項2】
前記制御部は、前記交流電流の供給が停止されている状態で前記コンデンサからの放電によって前記正極伝送路と前記負極伝送路との間に印加される電圧が前記閾値を上回る場合に前記分岐路を非導通状態にするように前記スイッチを動作させ、それ以外の場合に前記分岐路を導通状態にするように前記スイッチを動作させる、
請求項1に記載の駆動回路。
【請求項3】
前記制御部は、前記電圧検出回路の出力に応じて動作するスイッチ駆動回路と、前記電圧検出回路と前記スイッチ駆動回路との間に介在して前記電圧検出回路の出力にヒステリシスを与えるシュミットトリガと、を有し、
前記電圧検出回路は、検出した電圧が前記閾値を上回る場合に、前記分岐路を非導通状態にするように前記スイッチを動作させるための出力を生じる、
請求項2に記載の駆動回路。
【請求項4】
前記負荷は、電動機である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の駆動回路。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の駆動回路と、
前記負荷としての電動機と、を備える、
モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、駆動回路及びモータに関する。
【背景技術】
【0002】
サーボドライバ回路での平滑にコンデンサが利用される構成において、コンデンサの放電を行うために抵抗を設け、コンデンサの電流経路に対する抵抗の接続を切り替え可能にした構成が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-007534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンデンサの放電を行うための抵抗は、コンデンサの容量に応じた定格電力及び電気抵抗値を有する必要がある。ここで、単に放電時間を短縮しようとすると、抵抗の定格電力を単に大きくする必要がある。定格電力がより大きい抵抗は大きさも大きくなるため、そのような大きな抵抗をサーボドライバ回路に収めなければならないという設計上の制約がより大きくなる。また、電気抵抗値をより高くすることでより低い電気抵抗値の抵抗に比して大きさの小さい抵抗を採用できるが、放電時間が長大化するという問題がある。
【0005】
本開示は、コンデンサの放電に必要な抵抗の大型化の抑制と、より短い放電時間と、を両立できる駆動回路及びモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本開示の駆動回路は、交流電流を整流する整流回路と、前記整流回路によって整流された電力を消費する負荷と前記整流回路とを接続する正極伝送路と負極伝送路との間で前記負荷と並列に接続されるコンデンサと、前記正極伝送路と前記負極伝送路との間で前記負荷及び前記コンデンサと並列に接続される放電部と、前記放電部と前記負極伝送路との間に介在する分岐路の導通と非導通とを切り替え可能に設けられたスイッチと、前記スイッチの動作を制御する制御部と、を備え、前記放電部は、直列に接続された複数の放電用抵抗を有し、前記分岐路は、前記複数の放電用抵抗同士の接続部と前記負極伝送路とを接続し、前記制御部は、前記正極伝送路と前記負極伝送路との間の電圧を検出する電圧検出回路を有し、前記電圧検出回路が検出した電圧と、電圧の閾値と、の関係に応じて前記スイッチの動作を制御する。
【0007】
従って、コンデンサからの放電電圧が相対的に高い期間に複数の放電用抵抗の全てにコンデンサからの放電による電流が流れるようにし、放電電圧が相対的に低い期間に複数の放電用抵抗の一部に電流が流れるようにするようにスイッチの動作を制御することで、個々の放電用抵抗をより小さくし、かつ、コンデンサの放電時間をより短くできる。このように、本開示の駆動回路によれば、コンデンサの放電に必要な抵抗の大型化の抑制と、より短い放電時間と、を両立できる。
【0008】
本開示の駆動回路では、前記制御部は、前記交流電流の供給が停止されている状態で前記コンデンサからの放電によって前記正極伝送路と前記負極伝送路との間に印加される電圧が前記閾値を上回る場合に前記分岐路を非導通状態にするように前記スイッチを動作させ、それ以外の場合に前記分岐路を導通状態にするように前記スイッチを動作させる。
【0009】
従って、コンデンサからの放電による電流を複数の放電用抵抗の全て又は一部に流す制御の切り替えを、コンデンサからの放電による電圧の高低と閾値との関係に基づいてより明確に行えるので、より確実により高精度な放電制御を実現できる。
【0010】
本開示の駆動回路では、前記制御部は、前記電圧検出回路の出力に応じて動作するスイッチ駆動回路と、前記電圧検出回路と前記スイッチ駆動回路との間に介在して前記電圧検出回路の出力にヒステリシスを与えるシュミットトリガと、を有し、前記電圧検出回路は、検出した電圧が前記閾値を上回る場合に、前記分岐路を非導通状態にするように前記スイッチを動作させるための出力を生じさせる。
【0011】
従って、シュミットトリガが電圧検出回路の出力にヒステリシスを与えることで、電圧検出回路に検出される電圧が閾値付近である期間にスイッチが開閉を繰り返す可能性をより確実に抑制できる。従って、より高精度な放電制御を実現できる。
【0012】
本開示の駆動回路では、前記負荷は、電動機である。
【0013】
従って、電動機を駆動させるための電力供給に用いられる駆動回路において、コンデンサの放電に必要な抵抗の大型化の抑制と、より短い放電時間と、を両立できる。
【0014】
上記の目的を達成するための本開示のモータは、請求項1から3のいずれか一項に記載の駆動回路と、前記負荷としての電動機と、を備える。
【0015】
従って、コンデンサからの放電電圧が相対的に高い期間に複数の放電用抵抗の全てにコンデンサからの放電による電流が流れるようにし、放電電圧が相対的に低い期間に複数の放電用抵抗の一部に電流が流れるようにするようにスイッチの動作を制御することで、個々の放電用抵抗をより小さくし、かつ、コンデンサの放電時間をより短くできる。このように、本開示のモータによれば、コンデンサの放電に必要な抵抗の大型化の抑制と、より短い放電時間と、を両立できる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、コンデンサの放電に必要な抵抗の大型化の抑制と、より短い放電時間と、を両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、モータの構成を示すブロック図である。
図2図2は、AC電源からの電力供給の停止後に電圧検出回路によって検出される電圧と電圧検出回路の出力との関係を例示的に示す概略的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示はこれに限定されない。以下で説明する各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0019】
図1は、モータ100の構成を示すブロック図である。モータ100は、駆動回路1と、負荷70と、を備える。駆動回路1は、AC電源60から供給される交流電力を整流及び平滑して負荷70に供給する電力変換回路として機能する。AC電源60は、交流電源である。負荷70は、例えば電動機であるが、これに限られるものでなく、平滑された直流電流を利用する他の電力機器であってよい。負荷70が電動機である場合、モータ100は、交流電動機であるといえる。負荷70は、インバータを含んでいてもよい。
【0020】
駆動回路1は、整流回路11、コンデンサ20、放電部30、スイッチ40及び制御部50を備える。
【0021】
整流回路11は、AC電源60が出力する交流の電力を整流する。整流回路11によって整流された電流が流れる伝送路のうち、負荷70の正極(+)側に接続される伝送路を正極伝送路12とし、負荷70の負極(-)側に接続される伝送路を負極伝送路13とする。
【0022】
コンデンサ20は、正極伝送路12と負極伝送路13に対して負荷70と並列に接続されている。コンデンサ20は、整流回路11から負荷70に供給される電力で生じうる電流及び電圧のゆらぎ(脈流)をより直流に近い状態に平滑化する。図1に示す例では、1つのコンデンサ20が図示されているが、コンデンサ20は複数設けられてもよい。コンデンサ20は、例えばアルミ電解コンデンサであるが、平滑に利用可能な他のコンデンサであってもよい。実施形態では、図1に示すコンデンサ20は、整流回路11と負荷70との間の閉回路において、放電部30よりも整流回路11側に設けられている。
【0023】
放電部30は、放電用抵抗31と、放電用抵抗32と、を有する。放電用抵抗31及び放電用抵抗32は、電気抵抗として機能する抵抗器である。放電用抵抗31と放電用抵抗32とが直列に接続されることで、放電部30が構成されている。放電部30全体は、正極伝送路12と負極伝送路13に対して負荷70及びコンデンサ20と並列に接続されている。図1に示す放電部30は、整流回路11と負荷70との間の閉回路において、コンデンサ20よりも負荷70側かつ制御部50よりも整流回路11側に設けられている。
【0024】
放電部30は、AC電源60による電力供給の停止後に、コンデンサ20からの放電を促進させて速やかに整流回路11と負荷70との間の閉回路の電圧を下げることを目的とした、いわゆる放電用抵抗として機能するよう設けられている。放電用抵抗31及び放電用抵抗32の定格電力は、モータ100の設計に応じて予め定められている。
【0025】
スイッチ40は、放電用抵抗31に対して直列かつ放電用抵抗32に対して並列に接続された分岐路41を開閉可能に設けられたスイッチである。図1では、分岐路41による開閉路の一端が放電用抵抗31と放電用抵抗32との間の接続部33に接続され、分岐路41による開閉路の他端が負極伝送路13に接続されている。以下の説明では、分岐路41が開いた状態を、非導通(Open)状態とする。分岐路41が閉じた状態を、導通(Close)状態とする。
【0026】
実施形態では、スイッチ40は、ノーマリークローズのスイッチである。すなわち、スイッチ40は、外部から駆動信号が入力されない限り、分岐路41を導通(Close)状態にするよう設けられている。駆動信号が入力されると、スイッチ40は、分岐路41を非導通(Open)状態にする。
【0027】
制御部50は、分岐路41の開閉制御を行う。制御部50は、電圧検出回路51と、シュミットトリガ52と、スイッチ駆動回路53と、を有する。図1に示す制御部50は、整流回路11と負荷70との間の閉回路において、コンデンサ20及び放電部30よりも負荷70側に設けられている。図1に示すコンデンサ20、放電部30、スイッチ40及び制御部50の位置関係はあくまで一例であってこれに限られるものでなく、適宜変更可能である。
【0028】
電圧検出回路51は、正極伝送路12の電位と負極伝送路13の電位との電位差による電圧を検出し、検出された電圧に応じた出力を行う。モータ100では、負荷70の動作中、整流回路11を介してAC電源60から供給され、正極伝送路12によって平滑された電力が負荷70に供給される。このような負荷70の動作中に生じる正極伝送路12の電位と負極伝送路13の電位との電位差による電圧が生じている間、電圧検出回路51は、スイッチ駆動回路53に駆動信号を出力させない。実施形態では、スイッチ駆動回路53に駆動信号を出力させない場合、電圧検出回路51は、特段の出力を行わないロウ(L:Low)状態であるものとする。
【0029】
一方、AC電源60からの電力供給が停止すると、正極伝送路12の電位と負極伝送路13の電位との電位差による電圧が、負荷70の動作中とは異なる電圧になる。具体的には、コンデンサ20に蓄積された電荷に対応した電位差が正極伝送路12の電位と負極伝送路13の電位との電位差に反映される。電圧検出回路51は、AC電源60による電力供給の停止直後、すなわち、コンデンサ20に蓄積された電荷に対応した電位差が正極伝送路12の電位と負極伝送路13の電位との電位差に反映された直後の電圧が検出された場合、スイッチ駆動回路53に駆動信号を出力させる。実施形態では、スイッチ駆動回路53に駆動信号を出力させる場合、電圧検出回路51は、出力を行うハイ(H:High)状態であるものとする。
【0030】
電圧検出回路51からの出力は、シュミットトリガ52を介してスイッチ駆動回路53に伝送される。スイッチ駆動回路53は、電圧検出回路51及びシュミットトリガ52の制御下でスイッチ40の駆動信号を出力する。シュミットトリガ52は、電圧検出回路51とスイッチ駆動回路53との間に設けられ、電圧検出回路51の出力にヒステリシスを持たせるように動作する。具体的には、電圧検出回路51によって検出される電圧が、ハイ(H)状態とロウ(L)状態との切り替えの閾値Th(図2参照)付近になると、ハイ(H)状態とロウ(L)状態とが頻繁に切り替わることがありうる。シュミットトリガ52は、このような頻繁な切り替わりが生じた場合にある程度ハイ(H)状態が継続しているものとみなす出力を生じさせる。電圧検出回路51がハイ(H)状態であるとみなせるものとしてシュミットトリガ52が動作する間、スイッチ駆動回路53は、駆動信号を出力する。
【0031】
図2は、AC電源60からの電力供給の停止後に電圧検出回路51によって検出される電圧と電圧検出回路51の出力との関係を例示的に示す概略的なグラフである。図2に示すグラフの縦軸は、電圧検出回路51によって検出される電圧、すなわち、正極伝送路12の電位と負極伝送路13の電位との電位差による電圧を示す。図2に示すグラフの横軸は、AC電源60からの電力供給の停止後の経過時間を示す。
【0032】
AC電源60による電力供給の停止直後、上述したように、電圧検出回路51はハイ(H)である。すなわち、スイッチ駆動回路53から駆動信号が出力され、図1に示す分岐路41は非導通(Open)状態になる。従って、電圧検出回路51がハイ(H)であるとシュミットトリガ52によってみなされる間、コンデンサ20からの電流は、放電用抵抗31及び放電用抵抗32を通ることで放電される。これによって、曲線V11で示すように、時間経過に伴い電圧検出回路51によって検出される電圧が降下する。
【0033】
実施形態では、電圧検出回路51によって検出される電圧が閾値Th以下になると、電圧検出回路51がロウ(L)状態に移行する。これによって、スイッチ駆動回路53からの駆動信号の出力が生じなくなり、図1に示す分岐路41は導通(Close)状態になる。従って、電圧検出回路51がロウ(L)状態に移行した後、コンデンサ20からの電流は、放電用抵抗31と分岐路41を通り、放電用抵抗32を通らない。これによって、曲線V12で示すように、時間経過に伴い電圧検出回路51によって検出される電圧がさらに降下する。従って、コンデンサ20の放電開始から放電完了までの電圧降下は、曲線V11と曲線V12との連続によるグラフV1が示す通りになる。
【0034】
実施形態におけるコンデンサ20の放電時間T1は、曲線V11の継続時間と曲線V12の継続時間との合計である。また、図2では、スイッチ40及び制御部50がない場合、すなわち、コンデンサ20からの放電が常に放電用抵抗31と放電用抵抗32との直列経路を利用してしまう場合の電圧降下を仮想曲線V2として示している。電圧降下の経過が仮想曲線V2に従う場合のコンデンサ20の放電時間T2は、放電時間T1に比して長い。このように、実施形態では、放電用抵抗31と放電用抵抗32を合わせた定格電力の放電用抵抗が単に設けられた場合に比して、コンデンサ20の放電時間をより短縮できる。
【0035】
コンデンサ20の放電を行うための放電用抵抗は、コンデンサ20の容量に応じた定格電力を満たす必要がある。ここで、定格電力をより大きくすることで、放電時間をより短くできるが、単純に定格電力をより大きくしようとすると、放電用抵抗の大きさがより大きくなり、モータ100のようなモータの構成全体の大型化を招く一因となりうる。一方、放電用抵抗の大きさをより小さくしようとすると、放電用抵抗の電気抵抗値がより大きくなる。放電用抵抗の電気抵抗値が大きいほど、コンデンサ20の放電時間が長くなる。
【0036】
そこで、実施形態のように、放電用抵抗31と放電用抵抗32のように複数の放電用抵抗を直列に設け、その一部を経由しない分岐路を分岐路41のように設けることで、モータ100の大型化の抑制と、より短いコンデンサ20の放電時間T1と、の両立を実現できる。すなわち、閾値Thを境として、複数の放電用抵抗の全てを用いてコンデンサ20の放電を行う期間と、複数の放電用抵抗の一部を用いてコンデンサ20の放電を行う期間と、を生じさせることで、モータ100の大型化の抑制と、より短いコンデンサ20の放電時間T1と、の両立を実現できる。
【0037】
なお、モータ100の電力設計について一例を示すと、AC電源60の出力が100ボルト、整流回路11による整流後の出力電圧が140ボルトから150ボルトの間(100×√2)、放電用抵抗31及び放電用抵抗32の定格電力が10ワットである。放電用抵抗31及び放電用抵抗32の電気抵抗値は、想定される放電時間T1に応じて適宜定められればよい。ここに記載した数値はあくまで一例であってこれに限られるものでなく、適宜変更可能である。
【0038】
以上、実施形態によれば、モータ100は、駆動回路1と負荷70とを備える。駆動回路1は、交流電流を整流する整流回路11と、整流回路11によって整流された電力を消費する負荷70と整流回路11とを接続する正極伝送路12と負極伝送路13との間で負荷70と並列に接続されるコンデンサ20と、正極伝送路12と負極伝送路13との間で負荷70及びコンデンサ20と並列に接続される放電部30と、放電部30と負極伝送路13との間に介在する分岐路41の導通と非導通とを切り替え可能に設けられたスイッチ40と、スイッチ40の動作を制御する制御部50と、を備える。放電部30は、直列に接続された複数の放電用抵抗(例えば、放電用抵抗31及び放電用抵抗32)を有する。分岐路41は、当該複数の放電用抵抗同士の接続部(例えば、接続部33)と負極伝送路13とを接続する。制御部50は、正極伝送路12と負極伝送路13との間の電圧を検出する電圧検出回路51を有し、電圧検出回路51が検出した電圧と、電圧の閾値(例えば、閾値Th)と、の関係に応じてスイッチ40の動作を制御する。
【0039】
従って、コンデンサ20からの放電電圧が相対的に高い期間に複数の放電用抵抗の全てにコンデンサ20からの放電による電流が流れるようにし、放電電圧が相対的に低い期間に複数の放電用抵抗の一部に電流が流れるようにするようにスイッチ40の動作を制御することで、個々の放電用抵抗をより小さくし、かつ、コンデンサ20の放電時間をより短くできる。このように、本開示の駆動回路1及びモータ100によれば、コンデンサ20の放電に必要な放電用抵抗の大型化の抑制と、より短い放電時間と、を両立できる。
【0040】
また、制御部50は、AC電源60のように交流電流を供給する電源からの交流電流の供給が停止されている状態で、コンデンサ20からの放電によって正極伝送路12と負極伝送路13との間に印加される電圧が閾値(例えば、閾値Th)を上回る場合に分岐路41を非導通(Open)状態にするようにスイッチ40を動作させ、それ以外の場合に分岐路41を導通(Close)状態にするようにスイッチ40を動作させる。
【0041】
従って、コンデンサ20からの放電による電流を複数の放電用抵抗の全て又は一部に流す制御の切り替えを、コンデンサ20からの放電による電圧の高低と閾値との関係に基づいてより明確に行えるので、より確実により高精度な放電制御を実現できる。
【0042】
また、制御部50は、電圧検出回路51の出力に応じて動作するスイッチ駆動回路53と、電圧検出回路51とスイッチ駆動回路53との間に介在して電圧検出回路51の出力にヒステリシスを与えるシュミットトリガ52と、を有する。電圧検出回路51は、検出した電圧が閾値(例えば、閾値Th)を上回る場合に、分岐路41を非導通(Open)状態にするようにスイッチ40を動作させるための出力を生じる。
【0043】
従って、シュミットトリガ52が電圧検出回路51の出力にヒステリシスを与えることで、電圧検出回路51に検出される電圧が閾値付近である期間にスイッチ40が開閉を繰り返す可能性をより確実に抑制できる。従って、より高精度な放電制御を実現できる。
【0044】
また、実施形態において、負荷70は、電動機である。
【0045】
従って、電動機を駆動させるための電力供給に用いられる駆動回路1において、コンデンサ20の放電に必要な抵抗の大型化の抑制と、より短い放電時間と、を両立できる。
【0046】
さらに、実施形態によれば、閾値Thと検出された電圧との関係で単純に出力の有無が切り替わる電圧検出回路51によってスイッチ40の制御を行えるので、コンデンサ20の放電制御に関する構成をより単純化できる。
【0047】
なお、図1に示す例では、放電部30が放電用抵抗31と放電用抵抗32の計2つの放電用抵抗を有しているが、放電部30が有する放電用抵抗は3つ以上であってもよい。スイッチ40は、コンデンサ20からの放電電流が複数の放電用抵抗の全てを経由する伝送路と複数の放電用抵抗の一部を経由する伝送路とを切り替え可能に設けられればよい。係る複数の放電用抵抗の一部は、1つの放電用抵抗であってもよいし、複数の放電用抵抗の全てではない2つ以上の放電用抵抗を含んでいてもよい。また、閾値Thを複数段階設け、シュミットトリガ52及びスイッチ駆動回路53を複数設けてもよい。この場合、電圧検出回路51が検出する電圧の降下の進行に応じてコンデンサ20からの放電電流が流れる放電用抵抗の数を段階的に減少させるように制御部50が構成される。
【0048】
また、閾値Thは、例えばコンデンサ20からの放電電圧の想定される最高値と最低値(0ボルト)との間の中間値であってもよいし、最高値と最低値との間の値であって中間値とは異なる値であってもよい。また、放電部30に設けられる複数の放電用抵抗は全て同じ定格電力及び抵抗値であってもよいし、一部の放電用抵抗が他の一部の放電用抵抗とは異なる定格電力、抵抗値のものであってもよい。放電部30に設けられる複数の放電用抵抗と閾値Thとの関係は、駆動回路1及びモータ100の設計に応じて適宜定められてよい。
【符号の説明】
【0049】
1 駆動回路
11 整流回路
12 正極伝送路
13 負極伝送路
20 コンデンサ
30 放電部
31,32 放電用抵抗
33 接続部
40 スイッチ
41 分岐路
50 制御部
51 電圧検出回路
52 シュミットトリガ
53 スイッチ駆動回路
100 モータ
図1
図2