(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175545
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】ガス遮断器用操作装置の誤操作防止具および点検方法。
(51)【国際特許分類】
H01H 33/46 20060101AFI20241211BHJP
H01H 33/28 20060101ALI20241211BHJP
H02B 3/00 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
H01H33/46 A
H01H33/28 A
H02B3/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093408
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】福安 剛史
【テーマコード(参考)】
5G028
【Fターム(参考)】
5G028AA03
5G028AA16
(57)【要約】
【課題】点検または修理作業中における、ガス遮断器用操作装置の誤操作を防止する。
【解決手段】ガス遮断器用操作装置(1)の誤操作防止具(7)は、投入ばね(11)を蓄勢する操作ハンドル(24)を取付ける第1取付部(23)に着脱可能に装着される第1部材(71)と、投入ばねと連結される主軸(12)の回転を規制するロック部材(32)が備えられた回転軸(18)を取付ける第2取付部(161)に着脱可能に装着される第2部材(72)とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入ばねを蓄勢する操作ハンドルが取付けられる第1取付部の少なくとも一部を覆うように、前記第1取付部に着脱可能に装着される第1部材と、
前記投入ばねと連結される主軸の回転を規制するロック部材が備えられた回転軸を取付ける第2取付部の少なくとも一部を覆うように、前記第2取付部に着脱可能に装着される第2部材と、を備え、
前記第2部材は、前記第1部材と連結される、ガス遮断器用操作装置の誤操作防止具。
【請求項2】
ガス遮断器用操作装置の所定の位置に固定されると共に、前記第1部材および前記第2部材と連結され、前記第1部材および前記第2部材の落下を防止する落下防止部材をさらに備える、請求項1に記載の誤操作防止具。
【請求項3】
前記第1部材と前記落下防止部材とを連結する第1連結部材、および、前記第1部材と前記第2部材とを連結する第2連結部材をさらに備える、請求項2に記載の誤操作防止具。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の誤操作防止具を用いたガス遮断器用操作装置の点検方法であって、
点検作業の開始の際に、前記第1部材および前記第2部材を、それぞれ前記第1取付部および前記第2取付部に装着する第1工程と、
前記点検作業の終了の際に、前記第1部材および前記第2部材を、それぞれ前記第1取付部および前記第2取付部から取外す第2工程とを含む、ガス遮断器用操作装置の点検方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス遮断器用操作装置の誤操作防止具および点検方法に関する。
【背景技術】
【0002】
変電所等で使用されるガス遮断器用操作装置について、点検作業を容易にするための種々の技術が知られている。例えば、下記の特許文献1には、点検作業の際に、投入ばねを容易に取外すことができる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来技術は、ガス遮断器用操作装置の点検または修理作業中に、作業中であることを知らない作業者が、誤ってガス遮断器用操作装置を操作してしまうという問題が生じる。
【0005】
本発明の一態様は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、点検または修理作業中における、ガス遮断器用操作装置の誤操作を防止することができる誤操作防止具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るガス遮断器用操作装置の誤操作防止具は、投入ばねを蓄勢する操作ハンドルが取付けられる第1取付部の少なくとも一部を覆うように、前記第1取付部に着脱可能に装着される第1部材と、前記投入ばねと連結される主軸の回転を規制するロック部材が備えられた回転軸を取付ける第2取付部の少なくとも一部を覆うように、前記第2取付部に着脱可能に装着される第2部材と、を備え、前記第2部材は、前記第1部材と連結される。
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るガス遮断器用操作装置の点検方法は、上記構成の誤操作防止具を用いたガス遮断器用操作装置の点検方法であって、点検作業の開始の際に、前記第1部材および前記第2部材を、それぞれ前記第1取付部および前記第2取付部に装着する第1工程と、前記点検作業の終了の際に、前記第1部材および前記第2部材を、それぞれ前記第1取付部および前記第2取付部から取外す第2工程とを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、点検または修理作業中における、ガス遮断器用操作装置の誤操作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る誤操作防止具を装着した状態の一例を示す斜視図である。
【
図2】ガス遮断器用操作装置の要部の一例を示す斜視図である。
【
図5】ハッカ軸の取付け構造の一例を説明する模式図である。
【
図6】
図1に示す誤操作防止具の正面図、平面図、および底面図である。
【
図7】カバーの正面図、斜視図、および断面図である。
【
図9】誤操作防止具を用いたガス遮断器用操作装置の点検方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について(以下「本実施形態」とも表記する)、図面を参照して説明する。なお、以下では、本発明に係る誤操作防止具7を、ガス遮断器の電動ばね操作装置に使用する例に基づいて説明する。
【0011】
<ガス遮断器用操作装置1の概略>
始めに、本発明の実施形態に係る誤操作防止具7についての理解を容易にするために、ガス遮断器用操作装置1について概略的に説明する。
【0012】
ガス遮断器は、電力の安全供給および安定供給のために、変電所等に設置される装置であり、工事および落雷等の影響による系統故障時に、電流を瞬時に遮断する機能を備える。ガス遮断器の操作装置は、電動により蓄勢されたばねの弾性力により、投入状態または遮断状態を切換える電動ばね方式のガス遮断器用操作装置が用いられる。ここで、投入状態とは、後述する遮断部60の動作によって、電流が流れている状態を示し、遮断状態とは、電流が流れていない状態を示す。
【0013】
図2は、ガス遮断器用操作装置1の要部の一例を示す斜視図である。
図2に示すように、ガス遮断器用操作装置1は、ばね蓄勢機構10、投入および遮断操作機構30、リンク機構50、および遮断部60を備える。
【0014】
(蓄勢動作)
ばね蓄勢機構10は、投入ばね11、主軸12、モータ13、第1減速機構14、第2減速機構15、およびラチェット機構20を備える。主軸12には、ローラ310を備える投入カム31が取付けられている。
【0015】
投入ばね11は、一対の投入ばね11a、11bを備え、それぞれ主軸12の両端部に連結して配置される。なお、投入ばね11a、11bを互いに区別せず、総称する目的で記載するときは、投入ばね11と記載する。
【0016】
投入ばね11は、上述したように、モータ13によって蓄勢され、蓄勢された投入ばね11の弾性力により、遮断部60を投入状態に切換える。
【0017】
ここで、投入ばね11の蓄勢動作について簡単に説明する。まず、モータ13が回転すると、モータ13の回転力は、第1減速機構14によって減速され、往復回転力として後述するラチェット機構20に伝達される。ラチェット機構20に伝達された往復回転力は、ラチェット機構20により一方向の回転力に変換され、第2減速機構15に伝達される。第2減速機構15に伝達された回転力は、第2減速機構15によってさらに減速され、主軸12に伝達される。主軸12に伝達された回転力は、主軸12を回転させ、主軸12の両端部と投入ばね11a,11bとを連結するリンク機構12Aを、主軸12を中心として回転させ、投入ばね11a,11bを蓄勢する。
【0018】
このときの主軸12およびリンク機構12Aの回転方向は、投入ばね11a、11bの内、投入ばね11a側を見た場合の左回り(以降、回転方向は、投入ばね11a側を見た場合の回転方向を示す)である。
【0019】
リンク機構12Aの左回転を規制する部材(不図示)により、主軸12およびリンク機構12Aが右回転すると、主軸12に取付けられた投入カム31のローラ310と、後述する投入ハッカ32(ロック部材)とが互いに係合する。これにより、主軸12の回転は停止し、蓄勢動作は完了する。
【0020】
ラチェット機構20は、爪車21、爪部(不図示)、および、操作ハンドル取付部23(第1取付部)を備える。爪部は、回転方向の内、一方向については爪車21に回転力を伝達するが、他方の一方向については、爪車21に回転力を伝達しないで空回りさせる。
【0021】
操作ハンドル取付部23には、手動で投入ばね11を蓄勢するときに使用する手動操作ハンドル24(操作ハンドル)を取付けることができる。
【0022】
手動で投入ばね11を蓄勢する場合、作業者は、まず手動操作ハンドル24を操作ハンドル取付部23に取付けて、複数回、上下に動かす。ラチェット機構20は手動操作ハンドル24の往復回転力を一方向の回転力に変換し、第2減速機構15を介して、主軸12に伝達する。これにより作業者は手動によって、投入ばね11を蓄勢することができる。
【0023】
本実施形態の誤操作防止具7は、この手動操作ハンドル24の誤操作による投入ばね11の誤蓄勢を防止するために使用される。誤操作防止具7を手動操作ハンドル24の替わりに、操作ハンドル取付部23に装着することで、ガス遮断器用操作装置1の点検中等に、不用意に投入ばね11を誤蓄勢してしまうのを防ぐことができる。誤操作防止具7の詳細については後述する。
【0024】
(投入および遮断操作機構30)
投入および遮断操作機構30は、ガス遮断器の投入操作をする際に動作する機構であり、投入カム31、投入ハッカ32、投入ロック部33、投入ソレノイド34、および手動投入ボタン(不図示)を備える。投入および遮断操作機構30の投入動作の詳細については後述する。
【0025】
また、投入および遮断操作機構30は、ガス遮断器の遮断操作をする際にも動作する機構であり、さらに引外し自由機構41、レバー42、遮断ハッカ43、遮断ロック部44、遮断ソレノイド45、および手動遮断ボタン(不図示)を備える。投入および遮断操作機構30の遮断動作の詳細については後述する。
【0026】
リンク機構50は、リンク51、52、53、54等(
図3および
図4参照)で構成され、投入ばね11および遮断ばね63の弾性力により生じた動力を、遮断部60に伝達する。
【0027】
(遮断部60)
遮断部60は、可動接点61および固定接点62を備える。可動接点61を移動させ、固定接点62と接触させることによって投入状態となり、可動接点61と固定接点62との間に電流が流れる。一方、六フッ化硫黄(SF6)等の絶縁ガスを噴射するとともに、可動接点61を移動させ、固定接点62から離反させることによって遮断状態となり、可動接点61と固定接点62との間の電流は遮断される。可動接点61の移動は、投入ばね11および遮断ばね63の放勢による弾性力を利用して瞬時に行われる。
【0028】
(投入動作)
図3は、ガス遮断器用操作装置1の投入動作を説明する模式図である。
図3の符号300Aで示す図は遮断状態を示す模式図、符号300Bで示す図は投入動作を説明する模式図である。
【0029】
符号300Aおよび符号300Bで示すように、蓄勢された投入ばね11(投入ばね11bは図示を省略)の弾性力は、上述したように、投入カム31のローラ310と投入ハッカ32との係合部36で受止められている。投入ハッカ32は、遮断ハッカ43とともに、ハッカ軸18(回転軸)に取付けられ、ハッカ軸18はフレーム16,17に固定されている(
図2参照)。
【0030】
投入ハッカ32の下部は、投入ロック部33と係合しているため、係合部36に弾性力が掛かっても、投入ハッカ32は回転することなく停止している。
【0031】
ここで、投入ソレノイド34が励磁され、押圧ピン340が投入ロック部33を押圧し、投入ロック部33を右回りに回転させると、投入ロック部33と投入ハッカ32との係合が解除され、投入ハッカ32はハッカ軸18を中心として右回りに回転する。これにより、係合部36の係合が解除され、投入カム31は主軸12と共に右回りに回転する。
【0032】
このとき、投入カム31のローラ310は、リンク51を押圧しながら回転するため、リンク51は、投入カム31に連動して、回転軸51aを中心として左回りに回転する。リンク51が回転すると、リンク51と連結されたリンク52も、回転軸52aを中心として右回りに回転し、リンク52と連結されたリンク53は、回転軸53aを中心として左回りに回転する。これにより、リンク53と連結する可動接点61は、固定接点62へ向かって移動し、可動接点61は固定接点62と接触し投入状態となる。
【0033】
また、リンク52と連結するリンク54が、回転軸54aを中心として右回りに回転することにより、遮断ばね63を蓄勢し次の遮断動作に備える。なお、手動投入ボタンを押すことで、手動により投入することも可能である。
【0034】
(遮断動作)
図4は、ガス遮断器用操作装置1の遮断動作を説明する模式図である。
図4の符号400Aで示す図は投入状態を示す模式図、符号400Bで示す図は遮断動作を説明する模式図である。
【0035】
符号400Aおよび符号400Bで示すように、蓄勢された遮断ばね63の弾性力は、遮断ハッカ43と遮断ロック部44との係合部によって受止めてられている。遮断ハッカ43の下部は、遮断ロック部44と係合し、上部は、遮断ハッカ43のピン431とレバー42とが嵌合している。
【0036】
ここで、遮断ソレノイド45が励磁され、押圧ピン450が遮断ロック部44を押圧し、遮断ロック部44を左回りに回転させると、遮断ロック部44と遮断ハッカ43との係合が解除され、遮断ハッカ43は、ハッカ軸18を中心として左回りに回転する。これにより、遮断ハッカ43とレバー42との係合も解除され、引外し自由機構41は主軸12を中心に右回りに回転する。これにより、リンク51は回転軸51aを中心として右回りに回転し、リンク51と連結されたリンク52も、回転軸52aを中心として左回りに回転する。
【0037】
このとき、リンク52と連結されたリンク54は、回転軸54aを中心として左回りに回転し、リンク54と連結する遮断ばね63が放勢される。また、リンク52と連結されたリンク53は、回転軸53aを中心として右回りに回転し、リンク53と連結する可動接点61が、固定接点62から離反し遮断状態となる。なお、手動遮断ボタンを押すことで、手動により遮断することも可能である。
【0038】
(ハッカ軸18の取付構造)
ガス遮断器用操作装置1の点検の際には、各種部品について、埃等の除去、グリースの塗布、摺動面の摩耗状態のチェック、劣化した部品の取換え等のメンテナンスを行う。
【0039】
投入ハッカ32、遮断ハッカ43、およびこれらの付属部品等(以降「ハッカ機構」と称す)は、分解を伴う点検が必要なとき、ハッカ軸18から取外して点検される。ハッカ軸18は、両端分がそれぞれフレーム16,17に固定される。ハッカ軸18の投入ばね11b側の端部18bは、フレーム17に形成される貫通孔である、第2ハッカ軸差込口171に挿通される(
図2参照)。
【0040】
ハッカ軸18の投入ばね11a側の端部18aは、フレーム16に形成される第1ハッカ軸差込口161(第2取付部)に挿入され、固定される。以下に、ハッカ軸18の端部18aの取付構造を、
図5を参照して詳細に説明する。
【0041】
図5は、ハッカ軸18の取付構造の一例を説明する模式図である。ハッカ軸18は、上述したように、投入ばね11と連結する主軸12の回転を規制して、投入ばね11の弾性力を保持する投入ハッカ32、および遮断ハッカ43が取付けられる。
【0042】
図5に示すように、ハッカ軸18の端部18aは、フレーム16の第1ハッカ軸差込口161に挿通される。第1ハッカ軸差込口161は、フレーム16に形成される貫通孔である。
【0043】
ハッカ軸18の端部18aには、周方向全周にわたって溝181が形成されており、溝181に差込片182が嵌入された状態で、固定ボルト183によりフレーム16に固定される。差込片182は、溝181とほぼ同じ幅の厚みを有する板である。これにより、ハッカ軸18は位置決めされ、フレーム16,17から抜けないように固定される。
【0044】
ハッカ機構をハッカ軸18から取外して点検する場合、まず固定ボルト183を緩め、溝181に嵌入する差込片182を溝181から取外し、端部18aを第1ハッカ軸差込口161から引き抜き、ハッカ軸18をフレーム17側にスライドさせる。これにより、ハッカ機構をハッカ軸18から取外して点検することができる。このとき、第1ハッカ軸差込口161には、ハッカ軸18の端部18aが挿入されていないため、第1ハッカ軸差込口161はフレーム16の表面に露出している。
【0045】
以上、ガス遮断器用操作装置1の構造および動作等について説明したが、これは本発明に係る誤操作防止具7の理解のために説明した一例であって、これに限定されない。他の構造および動作等を備えるガス遮断器用操作装置1についても、誤操作防止具7を使用することができる。
【0046】
<誤操作防止具7>
次に、本発明に係る誤操作防止具7について、図面を参照して詳細に説明する。誤操作防止具7は、上述したように、ガス遮断器用操作装置1の点検または修理作業中に、誤って投入ばね11が蓄勢されるのを防止するために、ガス遮断器用操作装置1に装着される。
【0047】
図1は、誤操作防止具7を装着した状態のガス遮断器用操作装置1の斜視図である。
図6は、誤操作防止具7の正面図、平面図、および底面図の一例である。
【0048】
図1および
図6に示すように、誤操作防止具7は、カバー71(第1部材)、挿入栓72(第2部材)、落下防止フック73(落下防止部材)、第1チェーン74(第1連結部材)、および第2チェーン75(第2連結部材)を備える。
【0049】
カバー71は、投入ばね11を蓄勢する手動操作ハンドル24が取付けられる操作ハンドル取付部23の少なくとも一部を覆うように、操作ハンドル取付部23に着脱可能に装着される。
【0050】
点検の際、手動操作ハンドル24は取外されているものの、操作ハンドル取付部23は、容易に視認できる位置にあり、いつでも手動操作ハンドル24を取付けて操作できる状態にある。カバー71を手動操作ハンドル24の替わりに操作ハンドル取付部23に装着することで、作業者が、手動操作ハンドル24を操作ハンドル取付部23に取付けることができない状況を作り出すことができる。
【0051】
仮に、ガス遮断器用操作装置1が点検中であることを知らない作業者が、点検が終了したと誤認して、手動で投入ばね11を蓄勢しようとした場合、まず、操作ハンドル取付部23に手動操作ハンドル24を取付けようとする。このとき、作業者は、操作ハンドル取付部23にカバー71が装着されていることに気づき、ガス遮断器用操作装置1が点検中であることを知ることができる。これにより、ガス遮断器用操作装置1の点検中に、不用意に投入ばね11が蓄勢されてしまい、ガス遮断器用操作装置1に不具合が発生してしまうのを防ぐことができる。カバー71の構成については、後述する。
【0052】
挿入栓72は、ハッカ軸18を取付ける第1ハッカ軸差込口161の少なくとも一部を覆うように、第1ハッカ軸差込口161も着脱可能に装着される。
【0053】
上述したように、ハッカ機構をハッカ軸18から取外して点検する場合、ハッカ軸18をフレーム17側にスライドさせる。これにより、第1ハッカ軸差込口161には、ハッカ軸18の端部18aが挿入されていないため、第1ハッカ軸差込口161は、フレーム16の表面に露出している。このため、露出した第1ハッカ軸差込口161に、端部18aの替わりに、挿入栓72を差し込むことができる。
【0054】
挿入栓72を、ハッカ軸18の替わりに第1ハッカ軸差込口161に装着することで、作業者が、ハッカ軸18を第1ハッカ軸差込口161に取付けることができない状況を作り出すことができる。
【0055】
仮に、ガス遮断器用操作装置1が点検中であることを知らない作業者が、ガス遮断器用操作装置1を操作しようとした場合、第1ハッカ軸差込口161に、挿入栓72が差し込まれていることに気づき、ハッカ機構が点検中であることを知ることができる。これにより、ガス遮断器用操作装置1の点検中に、不用意に投入ばね11が蓄勢されてしまい、ガス遮断器用操作装置1に不具合が発生してしまうのを防ぐことができる。挿入栓72の構成については、後述する。
【0056】
落下防止フック73は、ガス遮断器用操作装置1の所定の位置に固定されると共に、カバー71および挿入栓72と連結され、カバー71および挿入栓72の落下を防止する。所定の位置とは、例えば、ラチェット機構20の筐体であり、落下防止フック73を、ラチェット機構20の筐体等に引っ掛けて、誤操作防止具7をラチェット機構20に固定することができる。所定の位置は、落下防止フック73を固定することができる位置であればよく、特に限定されない。
【0057】
落下防止フック73およびカバー71は、第1チェーン74によって互いに連結され、カバー71および挿入栓72は、第2チェーン75によって互いに連結される。
【0058】
仮に、カバー71または挿入栓72が、操作ハンドル取付部23または第1ハッカ軸差込口161から外れて床に落下してしまった場合、作業員が点検中であることに気づかず、投入ばね11を誤蓄勢してしまう可能性がある。また、落下したカバー71または挿入栓72が破損してしまう可能性がある。
【0059】
カバー71および挿入栓72と連結される落下防止フック73が、ラチェット機構20の筐体等に固定されているため、カバー71および挿入栓72のうち少なくとも何れかが外れても、誤操作防止具7全体が床に落下してしまうのを防ぐことができる。このため、作業員が点検中であることに気づくことができ、投入ばね11の誤蓄勢、および、誤操作防止具7の破損を防止することができる。落下防止フック73の構成については、後述する。
【0060】
また、カバー71および挿入栓72は、第2チェーン75によって、互いに連結されているため、ハッカ機構の点検中のみであっても、挿入栓72だけでなくカバー71も装着することになる。カバー71も装着することにより、挿入栓72だけでは作業者が点検中であることに気づかなかった場合でも、カバー71は、点検後に操作される手動操作ハンドル24の取付位置に装着されるため、作業者の誤蓄勢をより確実に防ぐことができる。
【0061】
(カバー71)
図7は、カバー71の正面図、斜視図、および断面図である。符号700Aで示す図は正面図、符号700Bで示す図は斜視図、符号700Cで示す図は、切断線Y-Yで切った断面図である。
【0062】
図7に示すように、カバー71は大略的に円柱形状に形成され、内部に操作ハンドル取付部23が挿入される収容空間711が形成される。カバー71は、カバー71の一方の端面側に開口部712を有し、開口部712から操作ハンドル取付部23が挿入される。カバー71は、操作ハンドル取付部23を覆うように操作ハンドル取付部23に被せられる。カバー71の他方の端面側には、第1チェーン74および第2チェーン75が取付けられる固定ねじ713が螺着される。
【0063】
カバー71は、これに限らず、操作ハンドル取付部23に装着することで、手動操作ハンドル24が取付けられない構造であればよく、特に限定されない。例えば、角柱形状であってもよいし、操作ハンドル取付部23に嵌め込むリング形状等であってもよい。
【0064】
また、カバー71は、例えば金属で構成されるが、これに限らず、樹脂、ゴム等の弾性部材で構成されてもよい。
【0065】
カバー71は、例えば、黄色等の目立つ色彩で着色されてもよい。これにより、作業者がカバー71を視認しやすくなり、より効果的に誤蓄勢を防ぐことができる。
【0066】
(挿入栓72)
図8は、挿入栓72の正面図および斜視図である。符号800Aで示す図は正面図、符号800Bで示す図は斜視図である。
【0067】
図8に示すように、挿入栓72は、下部721、上部722、および第2チェーン75が取付けられる固定ねじ723を備える。下部721は、第1ハッカ軸差込口161に嵌め込む際に、フレーム16内に挿入される部分であり、上部722は、下部721より径が大きく、第1ハッカ軸差込口161から露出する部分である。
【0068】
挿入栓72は、これに限らず、第1ハッカ軸差込口161に装着することで、ハッカ軸18が取付けられない構造であればよく、特に限定されない。例えば、第1ハッカ軸差込口161を覆う円板形状であってもよい。
【0069】
また、挿入栓72は、例えば、ゴム等の弾性部材で構成されるが、これに限らず、樹脂または金属で構成されてもよい。また、カバー71と同様に、例えば、黄色等の目立つ色彩で彩色されてもよい。
【0070】
なお、ハッカ機構の分解を伴わない点検の場合、挿入栓72は、第1ハッカ軸差込口161に挿入しなくてもよい。この場合、カバー71を操作ハンドル取付部23に装着し、落下防止フック73で固定する。
【0071】
(落下防止フック73)
図5に示すように、落下防止フック73は、略S字形状に構成される。これにより、落下防止フック73を、例えば、ラチェット機構20の筐体等に引っ掛けて、誤操作防止具7を着脱可能にガス遮断器用操作装置1に固定することができる。
【0072】
落下防止フック73は、これに限定されず、例えば、落下防止フック73を固定する所定のフレームの厚さに応じた略コの字形状に形成され、当該フレームに嵌め込んで固定してもよい。
【0073】
(第1チェーン74および第2チェーン75)
第1チェーン74および第2チェーン75は、例えば、1本のチェーンで構成され、一方の端部が落下防止フック73に固定され、他方の端部が挿入栓72に固定され、略中央部がカバー71に固定されている。落下防止フック73とカバー71とを連結する部分が、第1チェーン74であり、カバー71と挿入栓72とを連結する部分が第2チェーン75である。これに限らず、第1チェーン74と第2チェーン75とを別個のチェーンで構成してもよい。
【0074】
また、落下防止フック73、カバー71、挿入栓72の順で連結される例について説明したが、連結される順番は、適宜変更してもよい。また、第1チェーン74および第2チェーン75は、金属製の鎖で構成されるが、これに限らず、可撓性を有するワイヤ、樹脂製の紐等であってもよく、特に限定されない。
【0075】
<点検方法>
図9は、誤操作防止具7を用いたガス遮断器用操作装置1の点検方法を説明するフローチャートである。
図9を参照して、誤操作防止具7を用いたガス遮断器用操作装置1の点検方法を説明する。
【0076】
図9に示すように、作業者は、点検または修理作業の開始の際に、カバー71および挿入栓72を、それぞれ操作ハンドル取付部23および第1ハッカ軸差込口161に装着する(S1:第1工程)。
【0077】
作業者は、カバー71および挿入栓72を装着後、ガス遮断器用操作装置1の点検または修理作業を開始する(S2)。
【0078】
点検または修理作業の終了の際に、作業者は、カバー71および挿入栓72を、それぞれ操作ハンドル取付部23および第1ハッカ軸差込口161から取外す(S3:第2工程)。作業者は、点検または修理作業を終了する(S4)。
【0079】
<まとめ>
本発明の態様1に係るガス遮断器用操作装置1の誤操作防止具7は、投入ばね11を蓄勢する手動操作ハンドル24が取付けられる操作ハンドル取付部23の少なくとも一部を覆うように、操作ハンドル取付部23に着脱可能に装着されるカバー71と、
投入ばね11と連結される主軸12の回転を規制する投入ハッカ32が備えられたハッカ軸18を取付ける第1ハッカ軸差込口161の少なくとも一部を覆うように、第1ハッカ軸差込口161に着脱可能に装着される挿入栓72と、を備え、挿入栓72は、カバー71と連結される。
【0080】
上記構成によれば、点検の際、手動操作ハンドル24は取外されているものの、操作ハンドル取付部23は、容易に視認できる位置にあり、いつでも手動操作ハンドル24を取付けて操作できる状態にある。カバー71を操作ハンドル取付部23に装着し、第1ハッカ軸差込口161に挿入栓72を装着することにより、作業者が、手動操作ハンドル24やハッカ軸18を取付けることができない状況を作り出すことができる。
【0081】
これにより、作業者は、操作ハンドル取付部23にカバー71が装着されており、第1ハッカ軸差込口161に、挿入栓72が差し込まれていることに気づき、ガス遮断器用操作装置1が点検中であることを知ることができる。このため、ガス遮断器用操作装置1の点検中に、不用意に投入ばね11が蓄勢されてしまい、ガス遮断器用操作装置1に不具合が発生してしまうのを防ぐことができる。
【0082】
本発明の態様2に係るガス遮断器用操作装置1の誤操作防止具7は、上記態様1において、ガス遮断器用操作装置1の所定の位置に固定されると共に、カバー71および挿入栓72と連結され、カバー71および挿入栓72の落下を防止する落下防止フック73をさらに備えてもよい。
【0083】
上記構成によれば、カバー71および挿入栓72と連結される落下防止フック73が、所定位置に固定されているため、カバー71および挿入栓72のうち少なくとも何れかが外れても、誤操作防止具7全体が床に落下してしまうのを防ぐことができる。このため、作業員が点検中であることに気づくことができ、投入ばね11の誤蓄勢、および、誤操作防止具7の破損を防止することができる。
【0084】
本発明の態様3に係るガス遮断器用操作装置1の誤操作防止具7は、上記態様2において、カバー71と落下防止フック73とを連結する第1チェーン74、および、カバー71と挿入栓72とを連結する第2チェーン75をさらに備えてもよい。
【0085】
上記構成によれば、カバー71および挿入栓72は、第2チェーン75によって、互いに連結されているため、ハッカ機構の点検中のみであっても、挿入栓72だけでなくカバー71も装着することになる。カバー71は手動操作ハンドル24の替わりに装着されるため、作業者が気づきやすく、誤操作防止具7全体の落下防止を防ぐことができるとともに、誤蓄勢をより確実に防ぐことができる。
【0086】
本発明の態様4に係るガス遮断器用操作装置1の点検方法は、上記態様1から3のいずれかに係る誤操作防止具7を用いたガス遮断器用操作装置1の点検方法であって、点検作業の開始の際に、カバー71および挿入栓72を、それぞれ操作ハンドル取付部23および第1ハッカ軸差込口161に装着する第1工程と、前記点検作業の終了の際に、カバー71および挿入栓72を、それぞれ操作ハンドル取付部23および第1ハッカ軸差込口161から取外す第2工程とを含んでもよい。上記構成によれば、態様1と同様の効果を奏する。
【0087】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0088】
1 ガス遮断器用操作装置
7 誤操作防止具
11 投入ばね
12 主軸
18 ハッカ軸(回転軸)
23 操作ハンドル取付部(第1取付部)
24 手動操作ハンドル(操作ハンドル)
32 投入ハッカ(ロック部材)
71 カバー(第1部材)
72 挿入栓(第2部材)
73 落下防止フック(落下防止部材)
74 第1チェーン(第1連結部材)
75 第2チェーン(第2連結部材)
161 第1ハッカ軸差込口(第2取付部)