(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175553
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】生体情報測定装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/02 20060101AFI20241211BHJP
A61B 5/022 20060101ALI20241211BHJP
A61B 5/256 20210101ALI20241211BHJP
A61B 5/33 20210101ALI20241211BHJP
A61B 5/332 20210101ALI20241211BHJP
【FI】
A61B5/02 D
A61B5/022 300F
A61B5/256 220
A61B5/33 200
A61B5/332
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093422
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】久保 大
(72)【発明者】
【氏名】東狐 義秀
(72)【発明者】
【氏名】岡西 孝晃
【テーマコード(参考)】
4C017
4C127
【Fターム(参考)】
4C017AA08
4C017AA19
4C017AB02
4C017AC03
4C017AD14
4C017EE01
4C017EE15
4C017FF08
4C017FF17
4C127AA02
4C127BB03
4C127LL13
(57)【要約】
【課題】カフの膨張時でもセンサと皮膚とが安定して接触し、精度よく生体情報を測定し得る技術を提供する。
【解決手段】人体の血圧を測定するためのカフを含む血圧測定手段と、前記血圧とは異なる生体情報を測定する生体情報測定手段と、前記人体の腕部の外周に巻かれて固定され、内周側に設けられた前記カフを前記腕部の前記外周に配置するベルト部と、装着状態において前記腕部に接触する側に位置する底部を含む本体部と、前記底部に設けられ、前記腕部に接触して前記生体情報を測定するためのセンサと、を備え、前記ベルト部の延長方向に複数の前記カフが設けられ、前記センサは、前記カフの最膨張部に向け、前記腕部の中心部を通って作用する力のベクトルを合成した合成ベクトルの延長線上の前記底部の位置であって、前記カフの膨張による前記センサの前記腕部に対する接触状態の変化を抑制し得る、前記底部の変化抑制位置に配置された生体情報測定装置。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の血圧を測定するためのカフを含む血圧測定手段と、
前記血圧とは異なる生体情報を測定する生体情報測定手段と、
前記人体の腕部の外周に巻かれて固定され、内周側に設けられた前記カフを前記腕部の前記外周に配置するベルト部と、
装着状態において前記腕部に接触する側に位置する底部を含む本体部と、
前記底部に設けられ、前記腕部に接触して前記生体情報を測定するためのセンサと、
を備え、
前記本体部に対して、前記ベルト部の延長方向の両側に複数の前記カフが設けられ、
前記センサは、
それぞれの前記カフが膨張したときに、径方向に最も膨張する部位である、それぞれの前記カフの最膨張部に向け、前記腕部の中心部を通って作用する力のベクトルを合成した合成ベクトルの延長線上の前記底部の位置であって、前記カフの膨張による前記センサの前記腕部に対する接触状態の変化を抑制し得る、前記底部の変化抑制位置に配置されたことを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項2】
前記センサは、2以上のセンサ部を含み、該センサ部は、前記ベルト部の延長方向に直交する方向に並んで配置されていることを特徴とする請求項1に記載の生体情報測定装置。
【請求項3】
複数の前記カフの周方向の長さが略等しく、前記変化抑制位置が、複数の前記カフの膨張時に前記腕部の前記外周において、複数の前記カフが重なる部位の中央部に対向することを特徴とする請求項1に記載の生体情報測定装置。
【請求項4】
複数の前記カフの長さが略等しく、前記装着状態において、複数の前記カフの周方向端部の間に周方向に間隙が形成され、
前記変化抑制位置は、複数の前記カフの膨張時に前記腕部の前記外周において、前記間隙の中央部に対向することを特徴とする請求項1に記載の生体情報測定装置。
【請求項5】
人体の血圧を測定するためのカフを含む血圧測定手段と、
前記血圧とは異なる生体情報を測定する生体情報測定手段と、
前記人体の腕部の外周に巻かれて固定され、内周側に設けられた前記カフを前記腕部の前記外周に配置するベルト部と、
装着状態において前記腕部に接触する側に位置する底部を含む本体部と、
前記底部に設けられ、前記腕部に接触して前記生体情報を測定するためのセンサと、
を備え、
前記カフは、前記本体部に対して、前記ベルト部の延長方向に一つ設けられ、
前記センサが配置される、前記カフの膨張による前記センサの前記腕部に対する接触状態の変化を抑制し得る、前記底部の変化抑制位置は、前記カフの膨張時に前記腕部の前記外周において、前記カフが径方向に最も膨張する部位である最膨張部に対向することを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項6】
前記センサは、2以上のセンサ部を含み、該センサ部は、前記ベルト部の延長方向に直交する方向に並んで配置されていることを特徴とする請求項5に記載の生体情報測定装置。
【請求項7】
人体の血圧を測定するためのカフを含む血圧測定手段と、
前記血圧とは異なる生体情報を測定する生体情報測定手段と、
前記人体の腕部の外周に巻かれて固定され、内周側に設けられた前記カフを前記腕部の
前記外周に配置するベルト部と、
装着状態において前記腕部に接触する側に位置する底部を含む本体部と、
前記底部に設けられ、前記腕部に接触して前記生体情報を測定するためのセンサと、
を備え、
前記カフは、前記本体部に対して、前記ベルト部の延長方向に一つ設けられ、
前記センサは、
前記底部の位置であって、前記カフが膨張したときに、該位置から該カフが径方向に最も膨張する部位である最膨張部に向けて作用する力のベクトルが、想定される最も細い前記腕部の中心部を通ることとなる、前記カフの膨張による前記センサの前記腕部に対する接触状態の変化を抑制し得る、前記底部の第1変化抑制位置と、
前記底部の他の位置であって、前記カフが膨張したときに、前記最膨張部に向けて作用する力のベクトルが、想定される最も太い前記腕部の中心部を通ることとなる、前記カフの膨張による前記センサの前記腕部に対する接触状態の変化を抑制し得る、前記底部の第2変化抑制位置と、
の間に配置されたことを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項8】
人体の血圧を測定するためのカフを含む血圧測定手段と、
前記血圧とは異なる生体情報を測定する生体情報測定手段と、
前記人体の腕部の外周に巻かれて固定され、内周側に設けられた前記カフを前記腕部の前記外周に配置するベルト部と、
装着状態において前記腕部に接触する側に位置する底部を含む本体部と、
前記底部に設けられ、前記腕部に接触して前記生体情報を測定するためのセンサと、
を備え、
前記センサは、2以上のセンサ部を含み、該センサ部は、前記ベルト部の延長方向に直交する方向に並んで配置されていることを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項9】
前記センサ部は、前記ベルト部の延長方向に直交する方向から見て、少なくとも一部が重なっていることを特徴とする請求項8に記載の生体情報測定装置。
【請求項10】
人体の血圧を測定するためのカフを含む血圧測定手段と、
前記血圧とは異なる生体情報を測定する生体情報測定手段と、
前記人体の腕部の外周に巻かれて固定され、内周側に設けられた前記カフを前記腕部の前記外周に配置するベルト部と、
装着状態において前記腕部に接触する側に位置する底部を含む本体部と、
前記底部に設けられ、前記腕部に接触して前記生体情報を測定するためのセンサと、
を備え、
前記本体部に対して、前記ベルト部の延長方向の両側に、周方向の長さが略等しい複数の前記カフが設けられ、
前記センサは、前記腕部の前記外周において、複数の前記カフが重なる部位の中央部に対向することを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項11】
人体の血圧を測定するためのカフを含む血圧測定手段と、
前記血圧とは異なる生体情報を測定する生体情報測定手段と、
前記人体の腕部の外周に巻かれて固定され、内周側に設けられた前記カフを前記腕部の前記外周に配置するベルト部と、
装着状態において前記腕部に接触する側に位置する底部を含む本体部と、
前記底部に設けられ、前記腕部に接触して前記生体情報を測定するためのセンサと、
を備え、
前記本体部に対して、前記ベルト部の延長方向の両側に周方向の長さが略等しい複数の前記カフが設けられ、
前記装着状態において、複数の前記カフの周方向端部の間に周方向に間隙が形成され、
前記センサは、前記腕部の前記外周において、前記間隙の中央部に対向することを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項12】
人体の血圧を測定するためのカフを含む血圧測定手段と、
前記血圧とは異なる生体情報を測定する生体情報測定手段と、
前記人体の腕部の外周に巻かれて固定され、内周側に設けられた前記カフを前記腕部の前記外周に配置するベルト部と、
装着状態において前記腕部に接触する側に位置する底部を含む本体部と、
前記底部に設けられ、前記腕部に接触して前記生体情報を測定するためのセンサと、
を備え、
前記カフは、前記本体部に対して、前記ベルト部の延長方向に一つ設けられ、
前記センサは、前記カフの膨張時に前記腕部の前記外周において、前記カフが径方向に最も大きく膨張する最膨張部に対向することを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項13】
前記生体情報測定手段は、前記人体の心電波形を測定し、
前記センサは、前記心電波形を検出する電極であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の生体情報測定装置。
【請求項14】
前記電極は、前記ベルト部の延長方向に直交する方向に対して線対称となる形状を有することを特徴とする請求項13に記載の生体情報測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体に装着して用いる生体情報測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、血圧値、心電波形などの個人の身体・健康に関する情報(以下、生体情報ともいう)を、個人が自ら日常的に測定機器によって測定し、当該測定結果を健康管理に活用することが一般的に行われるようになってきている。このことから、携帯性を重視した機器の需要が高まっており、手首に装着する携帯型測定装置が提案されている(例えば、特許文献1など)。
【0003】
特許文献1には、人体の手首に装着する血圧測定可能な携帯型心電計測装置が開示されている。ここでは、ベルトによって手首に巻かれ手の甲側に位置する本体部の裏面に、心電計測のための電極を周方向に2つ配置している。このような構成の携帯型心電計測装置では、血圧測定と同時に心電信号を測定する場合に、手首に巻かれたカフが加圧され膨張することにより、本体部が傾くため、電極と皮膚との接触面積が変動し、心電信号の精度が悪くなることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国出願公開114680852号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来の技術に鑑み、本発明は、カフの膨張時でもセンサと皮膚とが安定して接触し、精度よく生体情報を測定し得る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明は、
人体の血圧を測定するためのカフを含む血圧測定手段と、
前記血圧とは異なる生体情報を測定する生体情報測定手段と、
前記人体の腕部の外周に巻かれて固定され、内周側に設けられた前記カフを前記腕部の前記外周に配置するベルト部と、
装着状態において前記腕部に接触する側に位置する底部を含む本体部と、
前記底部に設けられ、前記腕部に接触して前記生体情報を測定するためのセンサと、
を備え、
前記本体部に対して前記ベルト部の延長方向の両側に複数の前記カフが設けられ、
前記センサは、
それぞれの前記カフが膨張したときに、径方向に最も膨張する部位である、それぞれの前記カフの最膨張部に向け、前記腕部の中心部を通って作用する力のベクトルを合成した合成ベクトルの延長線上の前記底部の位置であって、前記カフの膨張による前記センサの前記腕部に対する接触状態の変化を抑制し得る、前記底部の変化抑制位置に配置されたことを特徴とする生体情報測定装置である。
【0007】
これによれば、血圧測定時にカフが膨張する場合でも、センサと腕部との接触状態の変化が抑制されるので、カフの膨張時でもセンサと皮膚とが安定して接触し、精度よく生体情報を測定することができる。
ここで、接触状態は、センサの、腕部に対する角度及び位置の少なくともいずれかを含
む。
【0008】
また、本発明において、
前記センサは、2以上のセンサ部を含み、該センサ部は、前記ベルト部の延長方向に直交する方向に並んで配置されていてもよい。
【0009】
これによれば、カフの膨張時に、ベルト部の延長方向に直交する方向に対する回転方向の力が作用するが、センサ部は、この方向に並んで配置されているので、接触状態の変化が抑制される。
【0010】
また、本発明において、
複数の前記カフの周方向の長さが略等しく、前記変化抑制位置が、複数の前記カフの膨張時に前記腕部の前記外周において、複数の前記カフが重なる部位の中央部に対向するようにしてもよい。
【0011】
これによれば、複数のカフの周方向の長さが略等しい場合には、複数のカフの膨張時に、複数のカフが重なる部位の中央部で、複数のカフを合わせた径方向への膨張が最も大きくなるので、この位置に、腕部の外周において対向する位置に配置されたセンサに対して、腕部の該周方向に直交する方向の軸を中心とする回転方向の力が小さくなるので、センサの腕部への接触状態の変化が抑制される。
ここで、腕部の外周において「対向」するとは、腕部の中心部を挟んで、変化抑制位置と、複数のカフが重なる部位の中央部とが、腕部の中心部を通る同一直線上に位置することである。また、複数のカフの周方向の長さが略等しい場合とは、複数のカフの周方向の長さが完全に等しい場合に限らず、複数のカフの周方向の長さが製造誤差等により若干異なる場合も含み、実質的な意味において、複数のカフの周方向の長さが等しい場合という趣旨である。
【0012】
また、本発明において、
複数の前記カフの長さが略等しく、前記装着状態において、複数の前記カフの周方向端部の間に周方向に間隙が形成され、
前記変化抑制位置は、複数の前記カフの膨張時に前記腕部の前記外周において、前記間隙の中央部に対向するようにしてもよい。
【0013】
これによれば、複数のカフの周方向の長さが略等しい場合には、複数のカフの膨張時に、複数のカフの周方向の端部間に形成された間隙の中央部に、腕部の外周において対向する位置に配置されたセンサに対して、腕部の該周方向に直交する方向の軸を中心とする回転方向の力が小さくなるので、センサの腕部への接触状態の変化が抑制される。
ここで、腕部の外周において「対向」するとは、腕部の中心部を挟んで、変化抑制位置と、周方向の端部間の間隙の中央部とが、腕部の中心部を通る同一直線上に位置することである。また、複数のカフの周方向の長さが略等しい場合とは、複数のカフの周方向の長さが完全に等しい場合に限らず、複数のカフの周方向の長さが製造誤差等により若干異なる場合も含み、実質的な意味において、複数のカフの周方向の長さが等しい場合という趣旨である。
【0014】
また、本発明は、
人体の血圧を測定するためのカフを含む血圧測定手段と、
前記血圧とは異なる生体情報を測定する生体情報測定手段と、
前記人体の腕部の外周に巻かれて固定され、内周側に設けられた前記カフを前記腕部の前記外周に配置するベルト部と、
装着状態において前記腕部に接触する側に位置する底部を含む本体部と、
前記底部に設けられ、前記腕部に接触して前記生体情報を測定するためのセンサと、
を備え、
前記カフは、前記本体部に対して、前記ベルト部の延長方向に一つ設けられ、
前記センサが配置される、前記カフの膨張による前記センサの前記腕部に対する接触状態の変化を抑制し得る、前記底部の変化抑制位置は、前記カフの膨張時に前記腕部の前記外周において、前記カフが径方向に最も膨張する部位である最膨張部に対向することを特徴とする生体情報測定装置である。
【0015】
これによれば、カフが、本体部に対して、ベルト部の延長方向に一つ設けられた構成では、カフの膨張時に腕部の外周において、カフが径方向に最も膨張する部位である最膨張部に対向する位置に配置されたセンサに対して、腕部の該周方向に直交する方向の軸を中心とする回転方向の力が小さくなるので、センサの腕部への接触状態の変化が抑制される。
ここで、腕部の外周において「対向」するとは、腕部の中心部を挟んで、変化抑制位置とカフの最膨張部とが、腕部の中心部を通る同一直線上に位置することである。
【0016】
また、本発明において、
前記センサは、2以上のセンサ部を含み、該センサ部は、前記ベルト部の延長方向に直交する方向に並んで配置されていてもよい。
【0017】
これによれば、カフの膨張時に、ベルト部の延長方向に直交する方向に対する回転方向の力が作用するが、センサ部は、この方向に並んで配置されているので、接触状態の変化が抑制される。
【0018】
また、本発明は、
人体の血圧を測定するためのカフを含む血圧測定手段と、
前記血圧とは異なる生体情報を測定する生体情報測定手段と、
前記人体の腕部の外周に巻かれて固定され、内周側に設けられた前記カフを前記腕部の前記外周に配置するベルト部と、
装着状態において前記腕部に接触する側に位置する底部を含む本体部と、
前記底部に設けられ、前記腕部に接触して前記生体情報を測定するためのセンサと、
を備え、
前記カフは、前記本体部に対して、前記ベルト部の延長方向に一つ設けられ、
前記センサは、
前記底部の位置であって、前記カフが膨張したときに、該位置から該カフが径方向に最も膨張する部位である最膨張部に向けて作用する力のベクトルが、想定される最も細い前記腕部の中心部を通ることとなる、前記カフの膨張による前記センサの前記腕部に対する接触状態の変化を抑制し得る、前記底部の第1変化抑制位置と、
前記底部の他の位置であって、前記カフが膨張したときに、前記最膨張部に向けて作用する力のベクトルが、想定される最も太い前記腕部の中心部を通ることとなる、前記カフの膨張による前記センサの前記腕部に対する接触状態の変化を抑制し得る、前記底部の第2変化抑制位置と、
の間に配置されたことを特徴とする生体情報測定装置である。
【0019】
これによれば、カフが、本体部に対して、ベルト部の延長方向に一つ設けられた構成において、本体部の底部の位置であって、カフが膨張したときに、該位置から該カフが径方向に最も膨張する部位である最膨張部に向けて作用する力のベクトルが、想定される最も細い腕部の中心部を通ることとなる、カフの膨張によるセンサの腕部に対する接触状態の変化を抑制し得る、底部の第1変化抑制位置と、底部の他の位置であって、カフが膨張したときに、最膨張部に向けて作用する力のベクトルが、想定される最も太い腕部の中心部
を通ることとなる、カフの膨張によるセンサの腕部に対する接触状態の変化を抑制し得る、底部の第2変化抑制位置と、の間にセンサが配置されるので、生体情報測定装置を装着する人の腕部の太さに関わらず、センサと腕部との接触状態の変化が抑制されるので、カフの膨張時でもセンサと皮膚とが安定して接触し、精度よく生体情報を測定することができる。
【0020】
人体の血圧を測定するためのカフを含む血圧測定手段と、
前記血圧とは異なる生体情報を測定する生体情報測定手段と、
前記人体の腕部の外周に巻かれて固定され、内周側に設けられた前記カフを前記腕部の前記外周に配置するベルト部と、
装着状態において前記腕部に接触する側に位置する底部を含む本体部と、
前記底部に設けられ、前記腕部に接触して前記生体情報を測定するためのセンサと、
を備え、
前記センサは、2以上のセンサ部を含み、該センサ部は、前記ベルト部の延長方向に直交する方向に並んで配置されていることを特徴とする生体情報測定装置。
【0021】
これによれば、カフの膨張時に、ベルト部の延長方向に直交する方向に対する回転方向の力が作用するが、センサ部は、この方向に並んで配置されているので、接触状態の変化が抑制される。
【0022】
また、本発明において、
前記センサ部は、前記ベルト部の延長方向に直交する方向から見て、少なくとも一部が重なっているようにしてもよい。
【0023】
これによれば、カフの膨張時に、ベルト部の延長方向に直交する方向に対する回転方向の力が作用するが、センサ部は、ベルト部の延長方向に直交する方向から見て、少なくとも一部が重なっているように配置されているので、接触状態の変化が抑制される。
【0024】
また、本発明は、
人体の血圧を測定するためのカフを含む血圧測定手段と、
前記血圧とは異なる生体情報を測定する生体情報測定手段と、
前記人体の腕部の外周に巻かれて固定され、内周側に設けられた前記カフを前記腕部の前記外周に配置するベルト部と、
装着状態において前記腕部に接触する側に位置する底部を含む本体部と、
前記底部に設けられ、前記腕部に接触して前記生体情報を測定するためのセンサと、
を備え、
前記本体部に対して、前記ベルト部の延長方向の両側に、周方向の長さが略等しい複数の前記カフが設けられ、
前記センサは、前記腕部の前記外周において、複数の前記カフが重なる部位の中央部に対向することを特徴とする生体情報測定装置である。
【0025】
これによれば、本体部に対して、ベルト部の延長方向の両側に、周方向の長さが略等しい複数のカフが設けられた構成において、複数のカフが重なる部位の中央部で径方向への膨張が最も大きくなるので、この部位に、腕部の外周において対向する位置に配置されたセンサに対して、腕部の該周方向に直交する方向の軸を中心とする回転方向の力が小さくなる。これにより、カフの膨張時におけるセンサの腕部への接触状態の変化が抑制される。
ここで、腕部の外周において「対向」するとは、腕部の中心部を挟んで、センサと、複数のカフが重なる部位の中央部とが、腕部の中心部を通る同一直線上に位置することである。また、周方向の長さが略等しいとは、複数のカフの周方向の長さが完全に等しい場合
に限らず、複数のカフの周方向の長さが製造誤差等により若干異なる場合も含み、実質的な意味において、複数のカフの周方向の長さが等しいという趣旨である。
【0026】
また、本発明は、
人体の血圧を測定するためのカフを含む血圧測定手段と、
前記血圧とは異なる生体情報を測定する生体情報測定手段と、
前記人体の腕部の外周に巻かれて固定され、内周側に設けられた前記カフを前記腕部の前記外周に配置するベルト部と、
装着状態において前記腕部に接触する側に位置する底部を含む本体部と、
前記底部に設けられ、前記腕部に接触して前記生体情報を測定するためのセンサと、
を備え、
前記本体部に対して、前記ベルト部の延長方向の両側に、周方向の長さが略等しい複数の前記カフが設けられ、
前記装着状態において、複数の前記カフの周方向端部の間に周方向に間隙が形成され、
前記センサは、前記腕部の前記外周において、前記間隙の中央部に対向することを特徴とする生体情報測定装置である。
【0027】
これによれば、複数のカフの周方向の端部間に形成された間隙の中央部に、腕部の外周において対向する位置に配置されたセンサに対して、腕部の該周方向に直交する方向の軸を中心とする回転方向の力が小さくなるので、センサの腕部への接触状態の変化が抑制される。
ここで、腕部の外周において「対向」するとは、腕部の中心部を挟んで、センサと、周方向の端部間の間隙の中央部とが、腕部の中心部を通る同一直線上に位置することである。また、周方向の長さが略等しいとは、複数のカフの周方向の長さが完全に等しい場合に限らず、複数のカフの周方向の長さが製造誤差等により若干異なる場合も含み、実質的な意味において、複数のカフの周方向の長さが等しいという趣旨である。
【0028】
また、本発明は、
人体の血圧を測定するためのカフを含む血圧測定手段と、
前記血圧とは異なる生体情報を測定する生体情報測定手段と、
前記人体の腕部の外周に巻かれて固定され、内周側に設けられた前記カフを前記腕部の前記外周に配置するベルト部と、
装着状態において前記腕部に接触する側に位置する底部を含む本体部と、
前記底部に設けられ、前記腕部に接触して前記生体情報を測定するためのセンサと、
を備え、
前記カフは、前記本体部に対して、前記ベルト部の延長方向に一つ設けられ、
前記センサは、前記カフの膨張時に前記腕部の前記外周において、前記カフが径方向に最も大きく膨張する最膨張部に対向することを特徴とする生体情報測定装置である。
【0029】
これによれば、カフが、本体部に対して、ベルト部の延長方向に一つ設けられた構成では、カフの膨張時に腕部の外周において、カフが径方向に最も大きく膨張する最膨張部に対向する位置に配置されたセンサに対して、腕部の該周方向に直交する方向の軸を中心とする回転方向の力が小さくなるので、センサの腕部への接触状態の変化が抑制される。
ここで、腕部の外周において「対向」するとは、腕部の中心部を挟んで、センサとカフの最膨張部とが、腕部の中心部を通る同一直線上に位置することである。
【0030】
また、本発明において、
前記生体情報測定手段は、前記人体の心電波形を測定し、
前記センサは、前記心電波形を検出する電極であるようにしてもよい。
【0031】
これによれば、血圧測定時にカフが膨張する場合でも、電極と腕部との接触状態の変化が抑制されるので、カフの膨張時でも電極と皮膚とが安定して接触し、精度よく心電波形を測定することができる。
【0032】
また、本発明において、
前記電極は、前記ベルト部の延長方向に直交する方向に対して線対称となる形状を有するようにしてもよい。
【0033】
これによれば、カフの膨張時に、ベルト部の延長方向に直交する方向の軸に対する回転方向の力が作用しても、電極と腕部との接触状態の変化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、カフの膨張時でもセンサと皮膚とが安定して接触し、精度よく生体情報を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、本発明の実施例に係る生体情報測定装置の概略を示す外観斜視図である。
【
図2】
図2は、実施例に係る生体情報測定装置の概略を示す側面図である。
【
図3】
図3は、実施例に係る生体情報測定装置を手首に装着した際の配置関係を示す説明図である
【
図4】
図4は、実施例に係る生体情報測定装置の本体部を底部側から見た際の外観図である。
【
図5】
図5は、実施例に係る生体情報測定装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6(A),(B)は、実施例1に係るバイタルセンサの配置を説明する図である。
【
図7】
図7(A),(B)は、実施例1に係るバイタルセンサの配置の詳細を説明する図である。
【
図8】
図8(A),(B)は、実施例2に係るバイタルセンサの配置を説明する図である。
【
図9】
図9(A),(B)は、実施例3に係るバイタルセンサの配置を説明する図である。
【
図10】
図10(A)~(C)は、実施例4に係る電極の形状及び電極間の距離を説明する図である。
【
図11】
図11(A)~(E)は、実施例5に係る電極の配置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。
【0037】
<実施例1>
以下に、本発明の実施形態の一例について説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0038】
(装置構成)
図1は、本実施例に係る生体情報測定装置1の構成の概略を示す外観斜視図である。また、
図2は、本実施例に係る生体情報測定装置1の構成の概略を示す側面図である。
図1、
図2に示すように、生体情報測定装置1は概略、本体部10と、ベルト部20を有する
腕時計型のウェアラブル装置であり、人体の手首Tに装着した状態で脈波(脈拍)、血圧値、心電波形などの生体情報を測定することができる。
図3に、本実施例に係る生体情報測定装置1を手首Tに装着した際の手首Tと生体情報測定装置1の各構成との配置関係を示す。
【0039】
図1及び
図2に示すように、本体部10は、本体筐体11及び後述するカフカバー16を含んで構成される。本体筐体11には、ディスプレイ12(例えば有機ELディスプレイなど)、操作ボタン131及び132、ラグ14などが設けられるとともに、後述する各種センサが収容されるセンサ収容部15が設けられている。なお、本実施例においてはディスプレイ12が形成される側を本体筐体11の表面とし、センサ収容部15が形成される側を本体筐体11の底部13とする。なお、本実施例において、操作ボタン131及び132は導体で形成されており、心電波形測定のための電極としても機能する。
【0040】
図4に、本体部10を底部13側から見た状態の外観図を示す。
図4に示す通り、本体筐体11の底部13には透光性を有する樹脂カバーで覆われた中央部分の領域と、その外周に相当するカフカバー16で覆われた領域とが存在する。センサ収容部15は平面視で本体筐体11の中央部分の領域に位置し、底部13において透光性を有する樹脂カバーで覆われるとともに、
図2及び
図3に示すように、装着状態においてカフカバー16よりも手首T側に突出するように形成されている。
【0041】
また、本体筐体11の底部13には、第1電極133及び第2電極134が、人体との接触面を露出するように設けられている。第1電極133、第2電極134はいずれかが心電波形測定時のGND電極として機能する。心電波形を測定する際には、生体情報測定装置1を装着して、第1電極133、第2電極134の接触面を装着部分の皮膚表面に接触させるとともに、生体情報測定装置1を装着していない側の手指で操作ボタン131、132に触れることで、I誘導での心電波形測定を行うことができる。
【0042】
また、本体筐体11の底部13にはその他、充電端子192が設けられている。給電側機器の接続端子と充電端子192を接続することにより、充電池(
図4では図示せず)に充電を行うことができる。
【0043】
ベルト部20は、生体情報測定装置1を手首Tに固定するためのベルト21及び面ファスナ25の他、手首Tにある動脈を圧迫するための第1押圧カフ22及び第2押圧カフ23、圧脈波を検出するためのセンシングカフ24を含んで構成される。なお、各カフ22、23、24と本体筐体11との接続部分はカフカバー16によって覆われている。カフカバー16は、各カフ22、23、24と本体筐体11との接続部分を保護するとともに、各カフ22、23、24を本体筐体11に固定する機能も有している。第1押圧カフ22は本体部10に対して周方向の一方に設けられ、第2押圧カフ23は本体部10に対して周方向の他方に設けられている。ベルト21が本発明のベルト部に相当し、第1押圧カフ22及び第2押圧カフ23が、本発明の複数のカフに相当する。また、手首Tが本発明の腕部に相当する。
【0044】
また、制御基板17は、図示しないCPUなどのプロセッサ、RAMなどのメモリなどが実装されており、生体情報測定装置1全体の制御を司る。
【0045】
なお、本実施例においては、第1LED111は緑色の照射光を照射し、第2LED113は緑色の他に、赤色及び/又は赤外線を照射する。
【0046】
一方、第1センサ基板101には、図示しないが、コンデンサ、アンプ回路、A/D(Analog-to-Digital)変換回路などが実装されている。
【0047】
(装置の機能構成)
次に、生体情報測定装置1の機能構成について説明する。
図5は、生体情報測定装置1の機能構成を示すブロック図である。
図5に示すように、本実施例に係る生体情報測定装置1は、脈波測定部110、血中酸素飽和度(SpO2)測定部120、血圧測定部130、心電波形測定部140、表示部150、操作部160、通信部170、記憶部180、電源部190、の各機能部を有している。これらの機能部は、制御基板17のプロセッサがメモリからプログラムを読み出して実行することによって、生体情報測定装置1の各構成を制御することによって実現される。
【0048】
脈波測定部110は、第1LED111、第2LED113、第1PD112を含んで構成され、いわゆる光電脈波法で脈波を測定し、脈拍を算出する。具体的には、第1LED111、第2LED113から緑色光を照射させて生体内で反射した反射光を第1PD112で受光することにより、心臓の拍動に伴って変化する血流量(血管の容量変化)を検出して脈波を測定する。脈波は本発明の生体情報に相当し、脈波測定部110は、本発明の生体情報測定手段に相当する。また、第1LED111、第2LED113、第1PD112は、本発明のセンサ及びセンサ部に相当する。
【0049】
SpO2測定部120は、第2LED113及び第2PD121を含んで構成され、第2LED113から照射された赤色光或いは赤外線の反射光を第2PD121で受光することにより、反射光の強度から血中酸素飽和度を測定する。血中酸素飽和度は本発明の生体情報に相当し、SpO2測定部120は、本発明の生体情報測定手段に相当する。また、第2LED113及び第2PD121は、本発明のセンサ及びセンサ部に相当する。
【0050】
血圧測定部130は、図示しない圧電ポンプ、弁、圧力センサ及び流路板と、第1押圧カフ22、第2押圧カフ23、センシングカフ24を含んで構成され、いわゆるオシロメトリック法により血圧を測定する。オシロメトリック法による血圧測定については周知の技術であるため詳細な説明は省略する。血圧測定部130は、本発明の血圧測定手段に相当する。
【0051】
心電波形測定部140は、操作ボタン131、132、本体筐体11の底部13に設けられる第1電極133、第2電極134、及び心電波形計測回路(図示せず)を含んで構成され、いわゆるI誘導の方式で、心電波形を測定する。具体的には、装着状態において一方の腕の手首Tに接触する第1電極133、第2電極134と、電極として機能する操作ボタン131又は132に触れた他方の手の指との電位差に基づいて、心電波形を測定する。心電波形測定部140は、本発明の生体情報測定手段に相当する。また、操作ボタン131、132、第1電極133及び第2電極134は本発明のセンサ及びセンサ部に相当する。
【0052】
表示部150は、ディスプレイ12を含んで構成され、生体情報の測定結果やメニュー画面などの各種の情報を表示する。操作部160は、操作ボタン131及び132を含んで構成され、これらを介してユーザーの入力操作を受け付ける。通信部170は、無線通信用のアンテナ(図示せず)を含み、例えばBLE通信により、情報処理端末などの他の電子機器と情報通信を行う。なお、有線通信のための端子を備えていてもよい。
【0053】
記憶部180は、RAM(Random Access Memory)などの主記憶装置(図示せず)を含んで構成され、アプリケーションプログラム、測定された生体情報などの各種の情報を記憶する。また、RAMに加えて、例えばフラッシュメモリなどの長期記憶媒体を備えていてもよい。電源部190は、充電池、充電端子192を含んで構成され、生体情報測定装置1を構成する各部への電力供給源として機能する。
【0054】
(バイタルセンサの配置)
以下に、本実施例に係る生体情報測定装置1の本体部10の底部13におけるバイタルセンサ30の配置について説明する。
バイタルセンサ30は、生体情報測定装置1の装着時に、人体の手首Tに接触し、生体情報を測定するためのセンサを示す。例えば、
図4で説明した、心電波形を測定するための第1電極133及び第2電極134が該当するが、これに限られない。
図6では、バイタルセンサ30として1つのみ表示しているが、これはバイタルセンサ30を模式的に示すものであり、上述の第1電極133及び第2電極134ように2つのバイタルセンサを含んでもよいし、バイタルセンサ30が複数のバイタルセンサから構成される場合に、その数は限定されない。ここでは、バイタルセンサ30が、本発明のセンサに相当する。
【0055】
図6(A)は、底部13側から見た生体情報測定装置1の構成を模式的に示す図である。ここでは、生体情報測定装置1は、
図1~
図4で説明したように、本体部10のベルト部20の延長方向(
図4に示すY方向、以下、長手方向ともいう。)における底部13のほぼ中央部に、ベルト部20の延長方向とは直交する方向(
図4に示すX方向、以下、短手方向ともいう。)に延びる矩形状のバイタルセンサ30が配置されている。
【0056】
生体情報測定装置1における、底部13のこの位置13a(
図6(A)において破線で示した位置)の技術的意義を、
図7(A)を参照して説明する。ここで説明する生体情報測定装置1を手首Tに装着した状態で、本体部10とは手首Tを挟んで対向する手首Tの内側において、第1押圧カフ22と第2押圧カフ23が重なっている。
【0057】
加圧時に第1押圧カフ22が径方向に最も大きく膨張する部位である最膨張部22e、同様に第2押圧カフ23が径方向に最も大きく膨張する部位である最膨張部23eが、それぞれ
図7(A)に示す位置であるとする。このとき、第1押圧カフ22の膨張によって、ベルト部20を介して本体部10に作用する力を、手首Tの中心部C通り最膨張部22eに向かうベクトルV22で示し、第2押圧カフ23の膨張によって、ベルト部20を介して本体部10に作用する力を、手首Tの中心部Cを通り最膨張部23eに向かうベクトルV23で示す。このとき、加圧時において、第1押圧カフ22及び第2押圧カフ23の膨張によって本体部10に作用する力は、
図7(B)に示すように、ベクトルV22とベクトルV23を合成した合成ベクトルVT1で表すことができる。この合成ベクトルVT1も、手首Tの中心部Cを通るベクトルである。第1押圧カフ22及び第2押圧カフ23の膨張によって本体部10に作用する力を表す合成ベクトルVT1の延長線ELと、本体部10の底部13とが交わる位置にバイタルセンサ30を設けることにより、加圧時の第1押圧カフ22及び第2押圧カフ23の膨張によりバイタルセンサ30に作用する力による、X方向の軸回りの回転モーメントが生じるとしても最も小さくすることができる。これにより、第1押圧カフ22と第2押圧カフ23が膨張しても、バイタルセンサ30のX方向の軸回りの回転が抑制されるので、血圧測定とバイタルセンサ30による生体情報の測定を同時に並行して行っても、バイタルセンサ30の手首Tに対する接触状態の変化が抑制され、バイタルセンサ30と手首Tの接触面積の変化が抑制されるので、精度のよい測定が可能となる。また、手首Tの中心部Cは、例えば、腕の方向でとった手首Tの断面を円や楕円で近似した場合の中心であるが、これに限られない。ここでは、合成ベクトルVTの延長線ELと、本体部10の底部13とが交わる位置が、本発明の変化抑制位置に相当する。
【0058】
図6(A)及び(B)に示す生体情報測定装置1は、第1押圧カフ22の周方向の長さと第2押圧カフ23の周方向の長さが略等しい場合の例を示す。このような構成では、上述のベクトルV22とベクトルV23が、第1押圧カフ22と第2押圧カフ23が重なる部位の中央部200と、手首Tの中心部Cとを結ぶ直線に対して対称となるため、
図6(
B)に示すように、合成ベクトルVT1は、第1押圧カフ22と第2押圧カフ23が重なる部位の中央部200と、手首Tの中心部Cとを結ぶ直線に重なる。
図7(B)に示した合成ベクトルVT1の延長線ELと底部13とが交わる位置が、
図6(A)に示す位置13aである。上述のように、この位置13aは、第1押圧カフ22と第2押圧カフ23が重なる部位の中央部200と、手首Tの中心部Cとを結ぶ直線上にある、すなわち、位置13aは、手首Tの外周において、第1押圧カフ22と第2押圧カフ23が重なる部位の中央部200に対向している。これにより、第1押圧カフ22と第2押圧カフ23が膨張しても、バイタルセンサ30のX方向の軸回りの回転が抑制されるので、血圧測定とバイタルセンサ30による生体情報の測定を同時に並行して行っても、バイタルセンサ30の手首Tに対する接触状態の変化が抑制され、バイタルセンサ30と手首Tの接触面積の変化が抑制されるので、精度のよい測定が可能となる。ここでは、位置13aが本発明の変化抑制位置に相当し、中央部200が本発明の複数のカフが重なる部位の中央部に相当する。また、第1押圧カフ22の周方向の長さと第2押圧カフ23の周方向の長さが略等しい場合とは、周方向の長さが完全に等しい場合に限らず、周方向の長さが製造誤差等により若干異なる場合も含み、実質的な意味において、周方向の長さが等しい場合という趣旨である。
【0059】
<実施例2>
以下に、実施例2に係る生体情報測定装置1-2について説明する。生体情報測定装置1-2は、第1押圧カフ22の周方向の長さと第2押圧カフ23の周方向の長さは略等しいが、以下に説明するようにそれらの長さが、実施例1に係る生体情報測定装置1と異なる点を除いて、共通の構成を有する。実施例1と共通の構成については、共通の符号を用いて詳細な説明は省略する。なお、ここでも、周方向の長さが略等しいとは、周方向の長さが完全に等しい場合に限らず、周方向の長さが製造誤差等により若干異なる場合も含み、実質的な意味において、周方向の長さが等しい場合という趣旨である。
【0060】
図8(A)に示すように生体情報測定装置1-2は、第1押圧カフ22に対応する第1押圧カフ221と、第2押圧カフ23に対応する第2押圧カフ231を備える。
図8(B)に示すように、生体情報測定装置1-2をベルト部20によって手首Tに固定した装着状態で、手首Tの外周に回された第1押圧カフ221と第2押圧カフ231とは、重なる部分を有さず、第1押圧カフ221の周方向端部221aと第2押圧カフ231の周方向端部231aとの間には、手首Tの外周にカフが存在しない間隙210が存在する。ここでは、バイタルセンサ30が底部13に配置された位置13bは、この間隙210の中央部210aに手首Tを挟んで対向する位置である。間隙210が本発明の間隙に相当する。また、位置13bが本発明の変化抑制位置に相当する。
【0061】
血圧測定時に、手首Tの中心部C通り第1押圧カフ221の最膨張部に向かうベクトルと、手首Tの中心部Cを通り第2押圧カフ231の最膨張部に向かうベクトルとの合成ベクトルVT2は、間隙210の中央部210aと、手首Tの中心部Cとを結ぶ直線に重なる。そして、この合成ベクトルVT2の延長線と底部13とが交わる位置が、ここでは、位置13bとなる。この位置13bは、間隙210の中央部210aと、手首Tの中心部Cとを結ぶ直線上にある、すなわち、位置13bは、手首Tの外周において、第1押圧カフ221の周方向端部221aと第2押圧カフ231の周方向端部231aとの間に周方向に形成された間隙210の中央部210aに対向している。これにより、第1押圧カフ221と第2押圧カフ231が膨張しても、バイタルセンサ30のX方向の軸回りの回転が抑制されるので、血圧測定とバイタルセンサ30による生体情報の測定を同時に並行して行っても、バイタルセンサ30の手首Tに対する接触状態の変化が抑制され、バイタルセンサ30と手首Tの接触面積の変化が抑制され、精度のよい測定が可能となる。
【0062】
<実施例3>
以下に、実施例3に係る生体情報測定装置1-3について説明する。生体情報測定装置1-3は、以下に説明するように本体部10に対して一つの押圧カフ222のみを備える点を除き実施例1に係る生体情報測定装置1と共通の構成を有する。実施例1と共通の構成については、共通の符号を用いて詳細な説明は省略する。
【0063】
図9(A)に示すように生体情報測定装置1-3は、第1押圧カフ22に対応する押圧カフ222を備えるが、第2押圧カフ23に対応する押圧カフを有しない。
図9(B)に示すように、生体情報測定装置1-3をベルト部20によって手首Tに固定した状態で、手首Tの外周に回された押圧カフ222の膨張によって、手首Tの外周の一部のみが押圧される。このとき、押圧カフ222が外径方向に最も膨張する部位が最膨張部220である。ここでは、バイタルセンサ30が底部13に配置された位置13cは、この最膨張部220に手首Tを挟んで対向する位置である。血圧測定時に、押圧カフ222が膨張するとき、最膨張部220において押圧カフ222が最も外径側に膨張するので、押圧カフ222及びベルト部20によって、本体部10に対して、手首Tの中心部Cを通る矢印方向のベクトルVFで示される力が作用する。このベクトルVFの延長線と、本体部10の底部13とが交わる位置が、位置13cである。バイタルセンサ30は、底部13において、この最膨張部220に手首Tを挟んで対向する位置13cに配置されているので、X方向の軸回りの回転モーメントが生じるとしても最も小さくなる。このため、押圧カフ222が膨張しても、バイタルセンサ30のX方向の軸回りの回転が抑制されるので、血圧測定とバイタルセンサ30による生体情報の測定を同時に並行して行っても、バイタルセンサ30の手首Tに対する接触状態の変化が抑制され、バイタルセンサ30と手首Tの接触面積の変化が抑制されるので、精度のよい測定が可能となる。ここでは、位置13cが本発明の変化抑制位置に相当する。
【0064】
ここで、生体情報測定装置1-3を使用する人の手首Tの太さにより、押圧カフ222の最膨張部220と、手首Tの中心部Cとの相対的な位置関係は変化する。このため、生体情報測定装置1を使用する人の手首Tの大きさによって、手首Tの中心部Cを通り最膨張部220に向かう力のベクトルVFの延長線と、本体部10の底部13とが交わる位置も変化する。
図9(A)では、手首Tが最も細い人が生体情報測定装置1-3を装着したと想定した場合に、最膨張部220に対向する位置を位置13dで示し、手首Tが最も太い人が装着したと想定した場合に、最膨張部220に対向する位置を位置13eで示した。従って、バイタルセンサ30は、位置13dと位置13eとの間の領域に配置することにより、押圧カフ222が膨張しても、バイタルセンサ30のX方向の軸回りの回転が抑制されるので、手首Tのさまざまな太さの人が血圧測定とバイタルセンサ30による生体情報の測定を同時に並行して行っても、バイタルセンサ30の手首Tに対する接触状態の変化が抑制され、バイタルセンサ30と手首Tの接触面積の変化が抑制されるので、精度のよい測定が可能となる。ここでは、位置13dが本発明の第1変化抑制位置に相当し、位置13eが本発明の第2変化抑制位置に相当する。
【0065】
<実施例4>
以下に実施例4に係る生体情報測定装置1-4について説明する。生体情報測定装置1-4は、バイタルセンサ30の例としての電極の形状を特定の形状としたものである。生体情報測定装置1-4は、電極の形状を除く全体構成は、実施例1、2及び3に係る生体情報測定装置1、1-2、1-3のいずれの構成も適用することができるので、電極以外の構成については、これらの実施例と共通する構成については共通する符号を用いて詳細な説明は省略する。
【0066】
図10(A)は、バイタルセンサ30の例としての電極の形状例を示す。
図10(A)に示す1点鎖線は
図4に示したX軸である。電極301~303は好ましい形状の電極である。電極301は円形状であり、電極302は4つの角を丸めた正方形状、いずれもX
軸方向に対して線対称な形状をなす。電極303及び電極304はともに台形状であるが、電極303はX軸方向に対して線対称であるのに対して、電極304はX軸に直交する方向(Y軸方向)に線対称となる形状である。血圧測定時のカフの膨張により、本体部10には、X軸方向を中心とした回転方向の力が作用するので、電極301~303のようにX軸方向に線対称な形状であれば、本体部10の回転時における手首Tと電極との接触面積の変化や、手首対する電極の押圧の変化をより抑制することができるので、血圧測定と電極301~303を用いた心電波形の測定を同時に並行して行っても、電極301~303の手首Tに対する姿勢の変化がより抑制され、電極301~303と手首Tの接触面積や押圧の変化が抑制され、精度のよい測定が可能となる。ここでは、1つの電極について説明しているが、バイタルセンサ30を構成する電極の数は適宜設定できる。
【0067】
図10(B)は電極の大きさの例を示す。
図10(B)に示された略矩形の電極311及び電極312は、電極の大きさを模式的に表したもので、具体的には、電極301~303のような形状をなすものである。電極311は、X軸方向の大きさが、X軸に直交する方向の大きさに比べて大きい。このような大きさであれば、本体部10の回転時における手首Tと電極との接触面積の変化や、手首対する電極の押圧の変化を抑制することができるので、血圧測定と電極311を用いた心電波形の測定を同時に並行して行っても、電極311の手首Tに対する姿勢の変化が抑制され、電極311と手首Tの接触面積や押圧の変化がより抑制され、より精度のよい測定が可能となる。X軸の周りに例えば、電極311としては、X軸に直交する方向の幅を12~13mmとすることができる。
これに対して、電極312のように、X軸方向の大きさに比べ、X軸に直交する方向の大きさを大きくすることも考えられる。ただし、本体部10のX軸回りの回転による手首Tと電極との接触面積の変化や、手首対する電極の押圧の変化を抑制するためには、電極311のような大きさが望ましい。
【0068】
図10(C)は、電極を複数備える場合の間隔について説明する図である。
図10(C)に示す略正方形の電極321及び電極322は、2つの電極間の距離を説明するための例であり、具体的な形状や大きさは、
図10(A)及び(B)で説明したとおりである。このように、X軸方向に並べて配置された電極321及び電極322のX軸方向の距離Dは、例えば40mm以下であることが望ましい。電極321及び電極322の距離Dが、この程度の距離であれば、血圧測定時における手首Tとの接触状態が一様となるので、血圧測定と同時により精度のよい心電波形の測定が可能となる。一方、電極321及び電極322の距離Dが広すぎると、血圧測定時における手首Tとの接触状態が一様でなくなるので、心電波形の測定の精度に影響を与える可能性がある。
【0069】
<実施例5>
以下に実施例5に係る生体情報測定装置1-5について説明する。生体情報測定装置1-5は、底部13において電極を特定の位置に配置するものである。実施例1~3において説明したように底部13に対して望ましい位置が存在するが、その位置での電極の位置の自由度はあるので、電極の数や配置に対して種々の構成が可能である。生体情報測定装置1-5は、電極の配置を除く全体構成は、実施例1、2及び3に係る生体情報測定装置1、1-2、1-3のいずれの構成も適用することができるので、電極以外の構成については、これらの実施例と共通する構成については共通する符号を用いて詳細な説明は省略する。
【0070】
図11(A)~(E)に、生体情報測定装置1-5の底部13における電極の配置例を示す。
図4に示したように、X軸方向は、生体情報測定装置1-5を装着した人の肘-手首方向であり、Y軸方向はベルト部20が延びる長手方向である。
【0071】
図11(A)は、X軸に対して線対称な形状の電極331及び電極332をX軸方向に
沿って、Y軸に線対称となるように並べて配置している。これに対して、
図11(B)に示す電極334及び電極335は、X軸に対して線対称な形状の電極331及び電極332をX軸方向に沿って配置しているが、電極334及び電極335は、底部13に対してX方向に偏った位置に配置されている。電極331及び電極332のようにX軸方向に均等に配置する場合に限らず、電極334及び電極335のように底部13に対してX方向に偏って配置しても、本体部10のX軸回りの回転による手首Tと電極との接触面積の変化や、手首対する電極の押圧の変化を抑制することができ、血圧測定と同時に精度良い心電波形の測定が可能である。
【0072】
図11(C)に示す電極356と電極357は、底部13に対してX方向には均等に配置されているが、X軸に対してそれぞれ非対称となるように配置されている。しかし、X方向に見たとき、Y方向の中央部分で重なるように電極356と電極357が配置されている。このような配置でも、本体部10のX軸回りの回転による手首Tと電極との接触面積の変化や、手首対する電極の押圧の変化を抑制することができ、血圧測定と同時に精度良い心電波形の測定が可能である。
【0073】
図11(D)では、電極338は、底部13のX方向及びY方向の中央部に配置されている。これに対して、
図11(E)に示す電極339は、Y方向には底部13の中央部であるが、X方向には底部13の中央部から偏った位置に配置されているこのような配置でも、本体部10のX軸回りの回転による手首Tと電極との接触面積の変化や、手首対する電極の押圧の変化を抑制することができ、血圧測定と同時に精度良い心電波形の測定が可能である。
【符号の説明】
【0074】
1・・・生体情報測定装置
10・・・本体部
13a,13b,13c,13d,13e・・・位置
20・・・ベルト部
22・・・第1押圧カフ
22e・・最膨張部
23・・・第2押圧カフ
23e・・最膨張部
30・・・バイタルセンサ
110・・・脈波測定部
120・・・SpO2測定部
130・・・血圧測定部
140・・・心電波形測定部
133・・・第1電極
134・・・第2電極
T・・・手首