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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175557
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】急速混和槽
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/52 20230101AFI20241211BHJP
   B01F 27/112 20220101ALI20241211BHJP
   B01F 35/53 20220101ALI20241211BHJP
   B01F 27/90 20220101ALI20241211BHJP
【FI】
C02F1/52 Z
B01F27/112
B01F35/53
B01F27/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093429
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】390014074
【氏名又は名称】前澤工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129067
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 能章
(74)【代理人】
【識別番号】100139516
【弁理士】
【氏名又は名称】藤浪 一郎
(72)【発明者】
【氏名】田名部 直勝
【テーマコード(参考)】
4D015
4G037
4G078
【Fターム(参考)】
4D015BA28
4D015BB05
4D015CA14
4D015DA04
4D015DC02
4D015EA02
4D015EA06
4D015EA32
4G037EA04
4G078AA02
4G078AA13
4G078BA05
4G078CA06
4G078CA07
4G078CA08
4G078DA01
4G078EA10
(57)【要約】
【課題】原水と薬品を効率よく攪拌させることができる急速混和槽を提供することを課題とする。
【解決手段】混和槽20に流入された原水と該原水に添加された薬品とを急速に攪拌する攪拌機22を備えた急速混和槽1において、混和槽20に配設した攪拌機22の攪拌翼22bと、混和槽20内の上部に設置され、攪拌翼22bの上方に原水を導く原水流入樋11と、原水流入樋11から流下する原水を攪拌翼22bに向けてガイドするスカート部23と、原水流入樋11から流下する原水に薬品を添加する薬品供給管21aと、を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
混和槽に流入された原水と該原水に添加された薬品とを急速に攪拌する攪拌機を備えた急速混和槽において、
前記混和槽に配設した前記攪拌機の攪拌翼と、
前記混和槽の上部に設置され、前記攪拌翼の上方に原水を導く原水流入樋と、
前記原水流入樋から流下する前記原水を前記攪拌翼に向けてガイドするスカート部と、
前記原水流入樋から流下する前記原水に薬品を添加する薬品供給管と、を備えることを特徴とする急速混和槽。
【請求項2】
前記スカート部は、筒状で一端を前記原水流入樋の開口部に配設されると共に、他端を前記攪拌翼の近方に延設され、
前記攪拌翼は、前記開口部内と前記スカート部内に位置する回転軸の先端に配設されていることを特徴とする請求項1記載の急速混和槽。
【請求項3】
前記スカート部には、外周面から内周面へ貫通する貫通孔が多数形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の急速混和槽。
【請求項4】
前記スカート部には、外周面から内周面へ貫通する上下方向のスリットが複数形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の急速混和槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は浄水施設に係り、特に浄水処理設備の急速混和槽に関する。
【背景技術】
【0002】
急速混和槽には、原水に添加された凝集剤などの薬品を急速に攪拌するため、攪拌機が設置されている。この攪拌機は、混和槽の中央に攪拌翼を配置し、その攪拌翼により混和槽の中央から壁側へ流れる方向に水流が形成され、混和槽の側壁に衝突した水流は反射して上部から攪拌翼の中央に戻ってくる一連の循環流が形成される。原水の流入は、急速混和槽の下部から流入させる方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-131058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
原水を急速混和槽の下部から流入させる場合には、薬品を原水の流入管に注入するため、流入管内でスケールが発生する。流入管でスケールが発生すると流入配管の閉塞を引き起こすという問題がある。また、原水を急速混和槽の上方から流入させる方法もあるが、この場合には越流堰を用いて原水を混和槽内に流入させるため、原水が混和槽内の側壁に沿って流れ、短絡流となる場合があり、原水と薬品を効率的に攪拌することができないといった問題がある。
【0005】
このような課題を踏まえ、本発明は、原水と薬品とを効率よく攪拌させることができる急速混和槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、混和槽に流入された原水と該原水に添加された薬品とを急速に攪拌する攪拌機を備えた急速混和槽において、前記混和槽に配設した前記攪拌機の攪拌翼と、前記混和槽の上部に設置され、前記攪拌翼の上方に原水を導く原水流入樋と、前記原水流入樋から流下する前記原水を前記攪拌翼に向けてガイドするスカート部と、前記原水流入樋から流下する前記原水に薬品を添加する薬品供給管と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、原水流入樋により原水が攪拌翼の上方に導かれ流下し、その流下する原水に薬品が添加されると共にスカート部により原水が攪拌翼に向けてガイドされることになる。これにより、原水と薬品が攪拌翼に導入され直接攪拌されるので、攪拌効率を向上させることができる。
【0008】
前記スカート部は、筒状で一端を前記原水流入樋の開口部に配設されると共に、他端を前記攪拌翼の近方に延設され、前記攪拌翼は、前記開口部内と前記スカート部内に位置する回転軸の先端に配設されていることが好ましい。
【0009】
本発明によれば、スカート部が攪拌翼の近方に延設され、しかも攪拌翼がスカート部内に位置する回転軸の先端に配設されているので、原水と薬品が攪拌翼の中心に流れ、攪拌効率をさらに向上させることができる。
【0010】
前記スカート部には、外周面から内周面へ貫通する貫通孔が多数形成されていることが好ましい。また、前記スカート部には、外周面から内周面へ貫通する上下方向のスリットが複数形成されていることが好ましい。
【0011】
本発明によれば、スカート部の貫通孔又はスリットにより、攪拌翼に戻る混和槽の循環流の一部がスカート部内に流れるので、攪拌効率をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の急速混和槽によれば、原水と薬品が攪拌翼に導入されるので、短絡流を防止でき、原水と薬品を効率よく攪拌させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る浄水処理設備を示す簡略構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る急速混和槽を示す平面図である。
図3】スカート部を示す斜視図である。
図4】混和槽を示す側面図である。
図5】スカート部の変形例を示す斜視図である。
図6】スカート部の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0015】
本発明の実施形態に係る急速混和槽について説明する。図1は、浄水施設の一例である浄水処理設備100に急速混和槽1(急速混和池とも言う)を適用した例を示す簡略構成図である。浄水処理設備100は、図示しない沈砂池と、着水井10(設備によっては、原水槽とも言う)と、急速混和槽1(混和槽20)と、図示しないフロック形成池、沈殿池及びろ過地等を含んで構成されている。
【0016】
河川等の水源から取得した原水は、沈砂池に貯留され、比較的に大きい砂等が原水から除去される。その原水は、着水井10、混和槽20、フロック形成池、沈殿池、ろ過池の順番で浄化処理される。浄化された処理水は、消毒された後に、水道水として各家庭、施設へと供給される。
【0017】
図1に示すように、急速混和槽1は、混和槽20に流入された原水とその原水に添加された薬品とを急速に攪拌する攪拌機22を備えている。また、混和槽20に原水を供給する着水井10、攪拌機22により攪拌された原水を混和槽20から排出する流路30、そその流路30からフロック形成池に原水を配るゲート室40がある。
【0018】
急速混和槽1は、混和槽20に配設した攪拌機22の攪拌翼22bと、混和槽20の上部に設置され、攪拌翼22bの上方に原水を導く原水流入樋11と、原水流入樋11から流下する原水を攪拌翼22bに向けてガイドするスカート部23と、原水流入樋11から流下する原水に薬品を添加する薬品供給管21aと、を備えている。
【0019】
また、スカート部23は、筒状で一端を原水流入樋11の開口部26cに配設されると共に、他端を攪拌翼22bの近方に延設されており、攪拌翼22bは、原水流入樋11の開口部26c内とスカート部23内に位置する回転軸22aの先端に配設されている。
【0020】
図1及び図2に示すように、混和槽20は、着水井10から流入した原水と薬品供給部21から供給された薬品(例えば、凝集剤)とを攪拌することで、マイクロフロックを形成する部位である。混和槽20は、コンクリート等で形成された躯体構造物である。混和槽20と着水井10とを隔てる側壁には、着水井10と原水流入樋11とに連通する開口が設けられ、その開口に設けた越流堰により越流して着水井10の原水が原水流入樋11に流入する。また、凝集剤としては、例えば、ポリ塩化アルミニウム(PAC)等を用いることができる。
【0021】
薬品供給管21aは、薬品供給部21に接続されており、薬品供給管21aの出口(薬品が供給される位置)は、上方から見てスカート部23内であり、かつ、攪拌翼22bと重なる位置に配設されている。換言すると、薬品供給部21の薬品供給管21aは、薬品を攪拌翼22bに向かって滴下するように配置されている。つまり、薬品供給管21aから滴下された薬品は、スカート部23内を流下する原水に添加される。
【0022】
原水流入樋11は、着水井10から混和槽20へと原水を流下させる流路であり、着水井10の上部端から、混和槽20の上部中央にかけて延設している。図2に示すように、原水流入樋11は、着水井10と混和槽20の間に配置されるエントランス部12と、混和槽20の上部に配置され、幅の広い幅広部13と、幅広部13に連続して形成され、下流側に向かうにつれて徐々に幅が狭くなる中間部14と、中間部14に連続して形成され、幅広部13よりも幅が狭く形成された幅狭部15と、を備えている。原水流入樋11は、エントランス部12が躯体に支持され、幅狭部15の先端部が躯体に設けられた支持材27により支持されている。
【0023】
図2に示すように、幅広部13には、幅広部13の両側から上方に向けて立設する一対の側板部13a,13bが形成されている。中間部14には中間部14の両側から上方に向けて立設する一対の側板部14a,14bが形成されている。幅狭部15の両側及び、下流側の端部には上方に向けて立設する側板部15a,15b,15cが形成されている。幅狭部15には、プレート部26を介してスカート部23の一端が取付けられる開口部26cが形成されている。開口部26cは攪拌機22に対応する位置に設けられており、攪拌機22の攪拌翼22bの上方に配置されている。また、幅狭部15には、大開口16が形成されている。大開口16は、攪拌機22対応する位置に設けられており、攪拌機22の攪拌翼22bの上方に配置されている。この大開口16は、攪拌機22の攪拌翼22bを混和槽20内に搬入したり、メンテナンスするためのものである。
【0024】
図2図3及び図4に示すように、プレート部26は、原水流入樋11の幅狭部15に載置される板状部材であり、原水流入樋11の構成要素の一つである。プレート部26は、本体部26aと、複数のボルト締め孔26bと、開口部26cと、リブ26d,26eと、を備えている。本体部26aは矩形板状を呈し、外縁部には複数のボルト締め孔26bが形成されている。本体部26aは、原水流入樋11の幅狭部15に形成された大開口16よりも大きく形成されている。
【0025】
本体部26aの中心部には上下方向に貫通する円形の開口部26cが形成されている。リブ26dは、本体部26aに立設するとともに、開口部26cから四方に延設された板状部材である。リブ26eは、本体部26aの四隅に立設する板状部材である。リブ26d,26eはプレート部26を補強する部位である。
【0026】
図3及び図4に示すように、スカート部23は円筒形状のガイド部材であり、金属材料によって形成されている。スカート部23は、開口部26cの周囲から攪拌翼22bに向けて延設されている。スカート部23は、例えばプレート部26に溶接によって固定され、一体形成されている。
【0027】
原水流入樋11にプレート部26を固定する場合には、原水流入樋11の大開口16の上方からスカート部23を挿通させつつ、プレート部26を幅狭部15に載置する。ボルト締め孔26bにボルトを挿通し、原水流入樋11の幅狭部15に対してボルト締めをすることで、プレート部26が幅狭部15に固定される。これにより、原水は開口部26cからスカート部23を介して混和槽20へと流れる構成となっている。開口部26cはプレート部26に形成されているがプレート部26を設けなくてよい場合には、原水流入樋11に形成しても良い。
【0028】
図4に示すように、攪拌機22は、回転軸22aと、攪拌翼22bとを備えている。回転軸22aは軸状の部材であり、回転駆動装置によって回転可能になっている。回転軸22aは、スカート部23内の軸方向に沿ってほぼ中央に配置されている。攪拌翼22bは、回転軸22aの先端に取り付けられる複数の板状部材によって構成されている。回転軸22aの回転により攪拌翼22bを回転させることで、混和槽20内の原水を攪拌することができる。
【0029】
攪拌機22によって、混和槽20内に循環流(図1の矢印参照)を形成することができる。つまり、混和槽20の中央から側壁側へ流れる方向に水流が形成され、混和槽20の側壁に衝突した原水は反射し、混和槽20の上部から攪拌翼22bに戻ってくる循環流となる。
【0030】
以上説明した急速混和槽1によれば、着水井10の原水が原水流入樋11を流れて、混和槽20の上方から混和槽20へと流下する。その際に原水は、スカート部23の内部に沿って流れ、混和槽20の中央に設置された攪拌機22の攪拌翼22bへ向かって流れることになる。また、薬品は、薬品供給部21から薬品供給管21aを介してスカート部23の内部に添加される。これにより、原水と薬品が攪拌翼22bに直接導入され攪拌されるので、側壁に沿って流れる短絡流を防止でき、原水と薬品を効率よく攪拌させることができる。
【0031】
また、原水流入樋11を設けているため、原水を混和槽20の中央側で流下させることができる。また、下流側に向けて幅を狭くすることにより原水が集まるようになっている。これにより、原水をスカート部23に効率よく導くことができる。また、スカート部23が円筒状に形成され、開口部26cから攪拌翼22bの近方に延設されているため、原水をより効率的に攪拌翼22bに向けて流下させることができる。
【0032】
また、プレート部26にスカート部23を設け、プレート部26を原水流入樋11にポルト等により着脱可能に設置したことにより、原水流入樋11を撤去しなくても大開口16を開閉することができ、攪拌翼22b等のメンテナンスが可能となる。
【0033】
また、攪拌翼22bは、原水流入樋11の開口部26c内とスカート部23内に位置する回転軸22aの先端に配設されているため、スカート部23内を流下する原水は、攪拌翼22bの中央に導入されることになる。これにより、上方から攪拌翼22bに戻ってくる混和槽20内の循環流を促進あるいは阻害することがない。しかもスカート部23から導入される原水と薬品は、混和槽20内の循環流により攪拌翼22bの中央から混和槽20の側壁側に流れるので、攪拌翼22bに接触する時間が長くなり、原水と薬品を効率よく攪拌させることができる。
【0034】
<変形例>
次にスカート部の変形例について説明する。
図5に示すように、スカート部23Aには、外周面から内周面へ貫通する貫通孔25Aが多数形成されている。また、図6に示すように、スカート部23Bには、外周面から内周面へ貫通する上下方向のスリット25Bが複数形成されている
【0035】
このような変形例によれば、混和槽20内の循環流により中央側に戻ってきた原水がスカート部の貫通孔25A又はスリット25Bを介してスカート部23A,23B内に入り、導入された原水と合流するため、より効率的に攪拌することができる。戻ってきた原水の流量は、貫通孔25Aやスリット25Bの大きさや形状で調整することができる。
【0036】
以上本発明の実施形態について説明したが、発明の趣旨に反しない範囲において、適宜設計変更が可能である。例えば、スカート部は、円筒形状としたが、角筒形状や複数のパイプを束ねた形状であってもよい。また、スカート部を半円状に形成し、斜め上から原水を導入してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 急速混和槽
10 着水井
11 原水流入樋
16 大開口
20 混和槽
21 薬品供給部
21a 薬品供給管
22 攪拌機
22a 回転軸
22b 攪拌翼
23 スカート部
26c 開口部
30 流路
40 ゲート室
100 浄水処理設備
図1
図2
図3
図4
図5
図6