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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017556
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】虚像表示装置及び光学ユニット
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20240201BHJP
   G02B 5/32 20060101ALI20240201BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240201BHJP
   G02B 5/10 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B5/32
G02B5/30
G02B5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120273
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】松本 大輝
(72)【発明者】
【氏名】井出 光隆
【テーマコード(参考)】
2H042
2H149
2H199
2H249
【Fターム(参考)】
2H042DB07
2H042DD05
2H042DE00
2H149AA17
2H149AB01
2H149AB23
2H149BA03
2H149DA04
2H149EA02
2H149FC07
2H149FC08
2H199CA12
2H199CA23
2H199CA24
2H199CA25
2H199CA27
2H199CA29
2H199CA30
2H199CA42
2H199CA45
2H199CA46
2H199CA47
2H199CA48
2H199CA58
2H199CA59
2H199CA60
2H199CA64
2H199CA65
2H199CA68
2H199CA69
2H199CA81
2H199CA87
2H249CA01
2H249CA06
2H249CA09
2H249CA22
(57)【要約】
【課題】表面に画像光が漏れることを抑制すること。
【解決手段】虚像表示装置100は、画像光生成装置である表示素子11と、表示素子11からの画像光MLが入射する投射光学系12と、投射光学系12からの画像光MLを瞳位置PPに向けて部分的に反射する部分透過ミラー123と、を備え、部分透過ミラー123は、反射型偏光子23pを有し、部分透過ミラー123の外側に離間して反射型ホログラム30pが配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像光生成装置と、
前記画像光生成装置からの画像光が入射する投射光学系と、
前記投射光学系からの前記画像光を瞳位置に向けて部分的に反射する部分透過ミラーと、を備え、
前記部分透過ミラーは、反射型偏光子を有し、
前記部分透過ミラーの外側に離間して反射型ホログラムが配置されている虚像表示装置。
【請求項2】
前記反射型偏光子は、基材の内側に設けられた反射型偏光膜である、請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項3】
前記画像光生成装置と前記反射型偏光子との間にバンドパスフィルターが配置されている、請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項4】
前記バンドパスフィルターは、前記画像光生成装置と前記投射光学系との間に配置されている、請求項3に記載の虚像表示装置。
【請求項5】
前記画像光生成装置は、特定方向の偏光を含む画像光を射出し、
前記反射型偏光子は、前記特定方向の偏光を部分的に反射する反射型偏光子であり、
前記反射型偏光子と前記反射型ホログラムとの間にλ/4波長板が配置されている、請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項6】
前記画像光生成装置は、レーザー光源を有し、
前記レーザー光源と前記反射型偏光子との間にλ/4波長板が配置されている、請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項7】
前記部分透過ミラーは、凹面ミラーである、請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項8】
前記反射型ホログラムは、前記部分透過ミラーと略平行に延びる湾曲した部材である、請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項9】
前記投射光学系は、前記画像光を集光する第1光学部材と、前記第1光学部材からの前記画像光を反射する第2光学部材とを含む、請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項10】
前記第2光学部材は、前記画像光が入射する入射部と、入射した前記画像光が前記反射部材に向けて出射する出射部と、前記入射部から入射した前記画像光が前記出射部へ向けて反射される反射部と、を有する、請求項9に記載の虚像表示装置。
【請求項11】
画像光生成装置からの画像光が入射する投射光学系と、
前記投射光学系からの前記画像光を瞳位置に向けて部分的に反射する部分透過ミラーと、を備え、
前記部分透過ミラーは、反射型偏光子を有し、
前記部分透過ミラーの外側に離間して反射型ホログラムが配置されている光学ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、虚像の観察を可能にする虚像表示装置に関し、特に部分透過ミラーを備える虚像表示装置及び光学ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
虚像表示装置として、眼前に光透過性を有する光学部材を配置し、画像光と外界光とを同時に観察可能にするものがある。例えば特許文献1には、半透過反射面を組み込んだプリズム部材と内面反射型の凹面ミラーである集光反射部材とを備えるものが開示されている(特許文献1参照)。この装置では、プリズム部材に入射した画像光をプリズム部材の全反射面で半透過反射面に向けて全反射させて導くとともに、半透過反射面で画像光をプリズム部材の前方に配置された集光反射部材に向けて反射することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-008749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の虚像表示装置では、光学系にレンズを使用した場合に瞳径に光線が入射する領域を拡大すると、レンズを大きくする必要があり、光学系が大型化するという問題がある。また、特許文献1の虚像表示装置では、集光反射部材の外側に画像光が射出されるため、画像光が集光反射部材から外部に漏れてしまい、外部から表示中の画像が見えるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面における虚像表示装置は、画像光生成装置と、画像光生成装置からの画像光が入射する投射光学系と、投射光学系からの画像光を瞳位置に向けて部分的に反射する部分透過ミラーと、を備え、部分透過ミラーは、反射型偏光子を有し、部分透過ミラーの外側に離間して反射型ホログラムが配置されている。
【0006】
本発明の一側面における光学ユニットは、画像光生成装置からの画像光が入射する投射光学系と、投射光学系からの画像光を瞳位置に向けて部分的に反射する部分透過ミラーと、を備え、部分透過ミラーは、反射型偏光子を有し、部分透過ミラーの外側に離間して反射型ホログラムが配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態の虚像表示装置の装着状態を説明する外観斜視図である。
図2】虚像表示装置の構造を説明する側方断面図である。
図3】部分透過ミラー及びカバー部材の周辺を説明する部分拡大断面図である。
図4】部分透過ミラー及びカバー部材の周辺を説明する部分拡大断面図である。
図5】第2実施形態の虚像表示装置の構造を説明する側方断面図である。
図6】第3実施形態の虚像表示装置の構造を説明する側方断面図である。
図7図6の部分透過ミラー及びカバー部材の部分を示す拡大断面図である。
図8】第4実施形態の虚像表示装置を説明する側方断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔第1実施形態〕
以下、図1、2等を参照して、本発明に係る第1実施形態の虚像表示装置について説明する。
【0009】
図1は、ヘッドマウントディスプレイ(以下、HMDとも称する。)200の装着状態を説明する図であり、HMD200は、これを装着する観察者又は装着者USに虚像としての映像を認識させる。図1等において、X、Y、及びZは、直交座標系であり、+X方向は、HMD200又は虚像表示装置100を装着した観察者又は装着者USの両眼EYの並ぶ横方向に対応し、+Y方向は、装着者USにとっての両眼EYの並ぶ横方向に直交する上方向に相当し、+Z方向は、装着者USにとっての前方向又は正面方向に相当する。±Y方向は、鉛直軸又は鉛直方向に平行になっている。
【0010】
HMD200は、右眼用の第1表示装置100Aと、左眼用の第2表示装置100Bと、表示装置100A,100Bを支持するテンプル状の一対の支持装置100Cと、情報端末であるユーザー端末90とを備える。第1表示装置100Aは、単独で虚像表示装置として機能し、上部に配置される表示駆動部102と、メガネレンズ状で眼前を覆うコンバイナー103と、コンバイナー103をその前方から覆う前方コンバイナー104とで構成される。第2表示装置100Bも同様に、単独で虚像表示装置として機能し、上部に配置される表示駆動部102と、メガネレンズ状で眼前を覆うコンバイナー103と、コンバイナー103を覆う前方コンバイナー104とで構成される。一対の前方コンバイナー104を組み合わせたものをカバー部材105と呼ぶ。カバー部材105は、一体の部材であり、表示駆動部102に対して固定されている。支持装置100Cは、装着者USの頭部に装着される装着部材であり、表示駆動部102を介してコンバイナー103及び前方コンバイナー104の上端側を支持している。第1表示装置100Aと第2表示装置100Bとは、光学的に左右を反転させたものであり、第2表示装置100Bについては、詳細な説明を省略する。
【0011】
図2は、第1表示装置100Aの光学的構造を説明する側方断面図である。第1表示装置100Aは、表示素子11とバンドパスフィルター40と結像光学系20とホログラム素子30と表示制御装置88とを備える。結像光学系20は、投射レンズ21と、プリズムミラー22と、シースルーミラー23とを備える。結像光学系20のうち、投射レンズ21とプリズムミラー22とは、画像光生成装置である表示素子11からの画像光MLが入射する投射光学系12として機能し、シースルーミラー23は、上記投射光学系12から出射される画像光MLを瞳位置PP又は眼EYに向けて部分的に反射する部分透過ミラー123として機能する。投射光学系12を構成する投射レンズ21及びプリズムミラー22は、映像光又は画像光MLが入射される第1光学部材及び第2光学部材にそれぞれ対応する。また、表示素子11と投射レンズ21とプリズムミラー22とは、図1に示す表示駆動部102の一部に対応する。投射光学系12を構成する投射レンズ21及びプリズムミラー22は、表示素子11とともに相互にアライメントされた状態でケース51内に固定されている。シースルーミラー23は、図1に示すコンバイナー103、つまり後方コンバイナーに対応する。シースルーミラー23は、外側に凸の外形を有し、その外界側は、別途設けられたホログラム素子30によって部分的に覆われている。ホログラム素子30は、図1に示す前方コンバイナー104に対応する。バンドパスフィルター40は、表示素子11と結像光学系20との間、具体的には、表示素子11と投射レンズ21との間に配置されている。ケース51は、筐体又は支持部材であり、遮光性の材料で形成され、表示素子11を動作させる表示制御装置88を支持している。ケース51は、開口51aを有し、開口51aは、透光板53によって塞がれている。透光板53は、投射光学系12がケース51の外部に向けて画像光MLを射出させることを可能にし、ケース51の内部にゴミや水分が入り込むことを抑制する。
【0012】
第1表示装置100Aにおいて、表示素子11は、自発光型の画像光生成装置である。表示素子11は、例えば有機EL(有機エレクトロルミネッセンス、Organic Electro-Luminescence)ディスプレイであり、2次元の表示面11aにカラーの静止画又は動画を形成する。画像光生成装置である表示素子11は、制御部である表示制御装置88に駆動されて表示動作を行う。表示素子11は、有機ELディスプレイに限らず、無機EL、有機LED、LEDアレイ、レーザーアレイ、量子ドット発光型素子等を用いた表示デバイスに置き換えることができる。表示素子11は、自発光型の画像光生成装置に限らず、LCDその他の光変調素子で構成され、当該光変調素子をバックライトのような光源によって照明することによって画像を形成するものであってもよい。表示素子11として、LCDに代えて、LCOS(Liquid crystal on silicon, LCoSは登録商標)や、デジタル・マイクロミラー・デバイス等を用いることもできる。
【0013】
表示素子11が例えばLCDである場合、表示素子11から出射される画像光MLは、一般に偏光となる。後述するように、本実施形態では、シースルーミラー23の反射型偏光膜23aがS偏光を反射するので、表示素子11から出射される画像光MLをS偏光又はこれを含むものとする必要がある。
【0014】
バンドパスフィルター40は、特定波長の光を透過させるものであり、狭域な透過波長帯域を有する。表示素子11から射出される画像光MLが単色の場合、特定波長の光を効率良く抽出することができる。本実施形態の場合、バンドパスフィルター40は、中心波長が例えば633nmである透過波長帯域を有する。なお、表示素子11から射出させる画像光MLは3色でもよく、この場合、バンドパスフィルター40は3つの透過波長帯域、具体的には、赤、緑、青(RGB)の透過波長帯域を有するものとなる。RGBの透過波長帯域は、例えば625~780nm、500~565nm、及び450~484nmの範囲内で調整される。透過波長帯域の中心波長は、例えば638nm、523nm、及び449nmとなる。
【0015】
結像光学系20は、シースルーミラー23が凹面ミラーであること等に起因して、軸外し光学系OSとなっている。本実施形態の場合、投射レンズ21、プリズムミラー22、及びシースルーミラー23は、非軸対称に配置され、非軸対称な光学面を有する。この結像光学系20では、YZ面に平行な軸外し面内で光軸AXの折り曲げを行うことで、かかる軸外し面に沿って光学要素21,22,23が配列されている。具体的には、YZ面に平行な軸外し面において、投射レンズ21からプリズムミラー22の内反射面22bまでの光路P1と、内反射面22bからシースルーミラー23までの光路P2と、シースルーミラー23から瞳位置PPまでの光路P3とが、Z字状に2段階で折り返される配置となっている。結果的に、シースルーミラー23において光軸AXが交差する中央箇所の法線は、Z方向に対してθ=40~50°程度の角度をなす。この結像光学系20では、光路P1~P3がZ字状に2段階で折り返される配置となっており、光路P1,P3が比較的水平に近いため、第1表示装置100Aを構成する光学要素21,22,23が縦方向に高さ位置を変えて配列されることになり、第1表示装置100Aの横幅の増大を防止することができる。さらに、プリズムミラー22等での反射による光路の折り畳みによって、結像光学系20を上下方向や前後方向に関しても小型化することできる。また、シースルーミラー23の中央箇所の傾斜角θが40~50°であることから、視線に対応する光路P3の傾きが一定とした場合、光路P2のZ軸に対する傾きが70°から90°となり、虚像表示装置100のZ方向の厚みを低減することが容易になる。
【0016】
結像光学系20のうち、投射レンズ21からプリズムミラー22の内反射面22bまでの光路P1は、視点を基準とする後方に向かってやや斜め上方向又はZ方向に平行に近い方向に延びている。内反射面22bからシースルーミラー23までの光路P2は、前方に向かって斜め下方向に延びている。水平面方向(XZ面)を基準とした場合、光路P2の傾斜が光路P1の傾斜よりも大きくなっている。シースルーミラー23から瞳位置PPまでの光路P3は、後方に向かってやや斜め上方向又はZ方向に平行に近い方向に延びている。図示の例では、光軸AXのうち光路P3に対応する部分は、+Z方向に向かって、下向きを負として、-10°程度となっている。つまり、部分透過ミラー123は、光軸AX又は光路P3が所定角度上向き、つまり10°程度上向きとなるように画像光MLを反射する。結果的に、光軸AXのうち光路P3に対応する部分を延長した射出光軸EXは、前方の+Z方向に平行な中心軸HXに対して10°程度下向きに傾いて延びる。これは、人間の視線が水平方向より下側に約10°傾いた若干の伏し目状態で安定するからである。なお、瞳位置PPに対して水平方向に延びる中心軸HXは、第1表示装置100Aを装着した装着者USが直立姿勢でリラックスして正面に向いて水平方向又は水平線を注視した場合を想定したものとなっている。
【0017】
なお、結像光学系20における全体的な光路は、図示のようにZ字となるような3つの光路P1,P2,P3からなるものに限らず、2つ又は4つ以上の光路を含む様々なものに変更することができる。図示の例では、最初の光路P1と最後の光路P3が中間の光路P2に比較して水平に近いが、各光路P1,P2,P3の角度も、虚像表示装置100の用途等を顧慮して様々なものに設定することができる。ただし、最後の光路P3については、一般的には、上記のように視線を考慮した設定とすることが望ましい。部分透過ミラー123の姿勢については、特に光軸AXが通る中央部において、中間の光路P2の角度設定と最後の光路P3との角度設定との影響を受けることになる。
【0018】
結像光学系20のうち、投射レンズ21は、第1レンズ21o、第2レンズ21p、及び第3レンズ21qを含む。投射レンズ21は、表示素子11から射出された画像光MLを受けて、プリズムミラー22に入射させる。投射レンズ21は、表示素子11から射出された画像光MLを平行光束に近い状態に集光する。投射レンズ21を構成する第1レンズ21o、第2レンズ21p、及び第3レンズ21qの光学面すなわち入射面及び出射面は、自由曲面又は非球面であり、YZ面に平行で光軸AXと交差する縦方向に関して、光軸AXを挟んで非対称性を有し、横方向又はX方向に関して光軸AXを挟んで対称性を有する。第1レンズ21o、第2レンズ21p、及び第3レンズ21qは、例えば樹脂で形成されるが、ガラス製とすることもできる。投射レンズ21を構成する第1レンズ21o、第2レンズ21p、及び第3レンズ21qの光学面には、反射防止膜を形成することができる。
【0019】
プリズムミラー22は、ミラーとレンズとを複合させた機能を有する屈折反射機能を有する光学部材であり、投射レンズ21からの画像光MLを屈折させつつ反射する。プリズムミラー22は、入射部に対応する入射面22aと、反射部に対応する内反射面22bと、出射部に対応する出射面22cとを有する。プリズムミラー22は、前方から入射する画像光MLを、入射方向を反転させた方向(プリズムミラー22から見た光源の方向)に対して下方に傾斜した方向に折り返すように射出する。プリズムミラー22を構成する光学面である入射面22aと内反射面22bと出射面22cとは、YZ面に平行で光軸AXと交差する縦方向に関して、光軸AXを挟んで非対称性を有し、横方向又はX方向に関して光軸AXを挟んで対称性を有する。プリズムミラー22の光学面、つまり入射面22aと内反射面22bと出射面22cとは、例えば自由曲面である。入射面22aと内反射面22bと出射面22cとは、自由曲面に限らず、非球面とすることもできる。プリズムミラー22は、例えば樹脂で形成されるが、ガラス製とすることもできる。内反射面22bについては、全反射によって画像光MLを反射するものに限らず、金属膜又は誘電体多層膜からなる反射面とすることもできる。この場合、内反射面22b上に、例えばAl、Agのような金属で形成された単層膜又は多層膜からなる反射膜を蒸着等によって成膜し、或いは金属で形成されたシート状の反射膜を貼り付ける。詳細な図示は省略するが、入射面22a及び出射面22c上には、反射防止膜を形成することができる。
【0020】
シースルーミラー23は、凹の表面ミラーとして機能する湾曲した板状の反射光学部材であり、プリズムミラー22からの画像光MLを反射するとともに外界光OLを部分的に透過させる。シースルーミラー23は、投射光学系12の射出領域に配置されたプリズムミラー22からの画像光MLを瞳位置PPに向けて反射する。シースルーミラー23は、反射面23cと外側面23oとを有する。
【0021】
シースルーミラー23は、画像光MLを部分的に反射し、プリズムミラー22の光射出側に形成された中間像を拡大する。シースルーミラー23は、眼EY又は瞳孔が配置される瞳位置PPを覆うとともに瞳位置PPに向かって凹形状を有し、外界に向かって凸形状を有する凹面ミラーである。瞳位置PP又はその開口PPaは、アイポイント又はアイボックスと呼ばれる。瞳位置PP又は開口PPaは、結像光学系20の射出側における射出瞳EPに相当する。シースルーミラー23は、コリメーターであり、表示面11aの各点から射出された画像光MLの主光線であって、投射光学系12のプリズムミラー22の射出側近傍で結像によって一旦広がった画像光MLの主光線を瞳位置PPに収束させる。シースルーミラー23は、凹面ミラーとして、画像光生成装置である表示素子11に形成され投射光学系12によって再結像された中間像(不図示)を拡大視することを可能にする。より詳細には、シースルーミラー23は、視野レンズと同様に機能し、プリズムミラー22の出射面22cの後段に形成された中間像(不図示)の各点からの画像光MLをコリメートした状態で瞳位置PPに全体として集めるように入射させる。シースルーミラー23は、中間像と瞳位置PPとの間に配置される観点で、画角(眼EYの正面方向に延びる光軸AXを基準として上下左右における視野角を合わせたもの)に相当する有効領域EA以上の広がりを有することが必要となる。シースルーミラー23において、有効領域EAよりも外側に延びる外領域については、結像に直接影響しないので、任意の面形状とすることができるが、メガネレンズ状の外観を確保する観点からは、有効領域EAの外縁の面形状の曲率と同じ、又は当該外縁から連続的に変化するものであることが望ましい。
【0022】
シースルーミラー23は、板状体23bの裏面上に反射型偏光膜23aを形成した構造を有する半透過型のミラー板である。板状体23bの裏面は、眼EY又は瞳位置PP側の面であり、シースルーミラー23の反射面23cに対応する。シースルーミラー23の反射面23cは、YZ面に平行で光軸AXと交差する縦方向に関して、光軸AXを挟んで非対称性を有し、横方向又はX方向に関して光軸AXを挟んで対称性を有する。シースルーミラー23の反射面23cは、例えば自由曲面である。反射面23cは、自由曲面に限らず、非球面とすることもできる。反射面23cは、有効領域EA以上の広がりを有する必要がある。反射面23cが有効領域EAよりも広い外領域に形成されている場合、有効領域EAの背後からの外界像と、上記外領域の背後からの外界像とに関して、見え方の差が生じにくくなる。
【0023】
シースルーミラー23は、画像光MLの特定方向の偏光を反射させ、特定方向と異なる方向の偏光を透過させる。シースルーミラー23の反射型偏光膜23aでは、特定方向の偏光は所定の反射率で反射され、残りの特定方向の偏光は吸収又は透過する。また、反射型偏光膜23aでは、特定方向と異なる方向の偏光は所定の透過率で透過し、残りの特定方向と異なる方向の偏光は吸収又は反射される。シースルーミラー23を透過した特定方向と異なる方向の偏光は、後述するホログラム素子30において反射され、反射された光は、シースルーミラー23を所定の透過率で透過する。また、シースルーミラー23は、ホログラム素子30を透過した外界光OLのうち特定方向と異なる方向の偏光を所定の透過率で透過する。結果的に、画像光MLのうち、シースルーミラー23又はホログラム素子30で反射した一部の光が瞳位置PPに入射する。外界光OLのうち、ホログラム素子30及びシースルーミラー23を透過した一部の光が瞳位置PPに入射する。
【0024】
具体的には、シースルーミラー23の反射面23c又は反射型偏光膜23aは、S偏光を反射する偏光膜によって形成され、反射型偏光子23pとして機能している。反射型偏光膜23aは、その偏光軸が上下方向に設定されている。つまり、反射型偏光膜23aは、反射軸が左右方向に設定されており、左右方向に対応する±X方向を偏光方向とするS偏光を少ない減衰で効率的に反射し、上下方向に対応する±Y方向を偏光方向とするP偏光を殆ど透過させる。反射型偏光膜23aの透過軸は、上下方向つまり±Y方向となっている。これにより、画像光MLのうちS成分が反射されるとともにP成分が透過し、画像光MLに対してハーフミラーのように機能する。一方、外界光OLが後述するホログラム素子30を通過した場合、通過した外界光OLのうちS偏光がシースルーミラー23によって遮断され、通過した外界光OLのうちP偏光がシースルーミラー23を通過する。このため、外界のシースルー視が可能になり、外界像に虚像を重ねることができる。この際、反射型偏光膜23aを支持する板状体23bが数mm程度以下に薄ければ、外界像の倍率変化を小さく抑えることができる。シースルーミラー23の基材である板状体23bは、例えば樹脂で形成されるが、ガラス製とすることもできる。板状体23bは、これを周囲から支持する支持板61と同一の材料で形成され、支持板61と同一の厚みを有する。反射型偏光膜23aは、例えば膜厚を調整した複数の誘電体層からなる誘電体多層膜で形成される。反射型偏光膜23aは、積層によって形成できるが、シート状の反射膜を貼り付けることによっても形成できる。反射型偏光膜23aの積層膜は、板状体23bが曲面であっても形成しやすい。また、シースルーミラー23は、反射型偏光子23pとして、板状体23bの裏面上にアルミ製の薄いマイクロワイヤー層を形成し、反射面23cをワイヤーグリッド面としてもよい。板状体23bの外側面23oには、反射防止膜を形成することができる。
【0025】
以上において、S偏光の反射率はP偏光の反射率よりも大きいため、反射型偏光膜23aとしては、光の利用効率からすれば、S偏光を反射する偏光膜を用いることが好ましい。
【0026】
ホログラム素子30は、光の進行方向を制御する反射型ホログラフィック光学素子であり、回折光学素子に相当する。ホログラム素子30は、所定の角度範囲で入射した光を光学設計上の目的とする方向に回折反射し、所定の角度範囲以外で入射した光を透過する。具体的には、ホログラム素子30は、シースルーミラー23を通過した画像光MLのP偏光を反射し、外界光OLを透過する。このため、シースルーミラー23と併せて外界のシースルー視が可能になり、外界像に虚像を重ねることができる。また、ホログラム素子30は、凹面ミラーと等価の光学素子である。ホログラム素子30は、シースルーミラー23を透過直進した入射光をコリメートするものであり、シースルーミラー23から離間している結果として、縦方向に関して瞳に光線が入射する領域を拡大する。ホログラム素子30は、図示の例ではシースルーミラー23と同様に外界に向かって凸形状を有する。ホログラム素子30は、平面でもよいが、曲面を有することが好ましい。ホログラム素子30は、光の波面を制御することにより、位相を制御することができる。シースルーミラー23に入射する画像光ML、つまり光路P2を進む画像光MLは、シースルーミラー23に対して傾斜して入射する。シースルーミラー23において、光路P2を進む画像光MLは、光路P3に対応する部分を延長した射出光軸EXに対して、所定角度δ傾斜している。結果的に、シースルーミラー23を斜めに透過した画像光MLの特定方向の偏光は、ホログラム素子30に対してシースルーミラー23への入射角と略等しい入射角で傾斜して入射する。これにより、シースルーミラー23とホログラム素子30との間隔に合わせて、画像光MLの下方シフト、つまり下方への瞳拡大を達成できる。
【0027】
ホログラム素子30は、反射層31cと外側面31oとを有する。ホログラム素子30の反射層31cは、YZ面に平行で光軸AXと交差する縦方向に関して、光軸AXを挟んで非対称性を有し、横方向又はX方向に関して光軸AXを挟んで対称性を有する。ホログラム素子30の反射層31cの表面は、例えば自由曲面である。反射層31cの表面は、自由曲面に限らず、非球面とすることもできる。
【0028】
ホログラム素子30は、板状体30bの裏面上に反射型ホログラム膜30aを形成した構造を有する。反射型ホログラム膜30aは、予め記録された干渉縞により光を回折することで、光の進行方向の制御、すなわち、光路制御を実現し、反射型ホログラム30pとして機能する。反射型ホログラム膜30aは、例えば体積ホログラム層であり、所定の干渉パターンを立体的に記録したものである。反射型ホログラム膜30aは、複数の屈折率の回折パターン又は縞を複合したものとなっている。
【0029】
ホログラム素子30は、シースルーミラー23の反射型偏光膜23a又は反射型偏光子23pの外側に離間して配置されている。つまり、虚像表示装置100は、部分透過ミラー123又はシースルーミラー23の外側に、反射型ホログラム30pとして反射型ホログラム膜30aを設けた前方コンバイナー104を備えるものとなっている。ホログラム素子30又は反射型ホログラム30pは、シースルーミラー23と略平行に延びる湾曲した部材である。これにより、シースルーミラー23と反射型ホログラム30pとの間の距離が略同じとなり、シースルーミラー23で反射する画像光MLと反射型ホログラム30pで反射する画像光MLとの位相ずれを調整しやすくなる。図3に示すように、シースルーミラー23とホログラム素子30との間の距離dは、例えば3~5mmである。反射型ホログラム膜30aを支持する板状体30bは、1mm程度以下と薄く、外界像の倍率変化を小さく抑えている。ホログラム素子30の基材である板状体30bは、例えば樹脂で形成される。反射型ホログラム膜30aは、板状体30b上に直接形成することができるが、例えば重クロム酸ゼラチンや銀塩乳剤等のホログラフィック記録材料をフィルム30dに形成して、反射型ホログラム膜30aを形成したフィルム30dを板状体30b上に貼り付けることができる。反射型ホログラム膜30aの厚さは、20μm程度であり、フィルム30dの厚さは100μm程度である。ホログラム素子30の全体の厚さは例えば1.1mm程度となる。反射型ホログラム膜30aの干渉パターンは、例えばレーザー光をスキャンして干渉縞を生成するスキャン露光等の手法を用いて形成する。また、表示素子11がカラー表示の場合には、反射型ホログラム膜30aは、RGBの各光により露光された3種類の反射型ホログラム30pを積層したものとすることができる。また、反射型ホログラム膜30aは、例えば多重露光が可能なフォトポリマー等を用いてもよい。この場合、反射型ホログラム膜30aには、互いに波長の異なる光で露光された干渉縞が含まれる。板状体30bの外側面31oには、反射防止膜を形成することができる。
【0030】
一般に、瞳に光線が入射する領域を拡大するためには、投射光学系12のレンズを大きくする必要がある。本実施形態の虚像表示装置100では、光学系に反射型ホログラム30pを使用することで、レンズのサイズを大きくすることなく、瞳に光線が入射する領域を拡大できる。つまり、瞳に光線が入射する領域について、瞳拡大の領域と同じ大きさにする場合、反射型ホログラム30pを使用することで、投射光学系12の投射レンズ21を小さくすることができる。また、瞳に入射する光線、具体的には、画像光ML及び外界光OLを確保しつつ、反射型偏光子23p及び反射型ホログラム30pにより、外部に漏れる光線を減衰させ、プライバシー性に寄与する。
【0031】
反射型ホログラム30pは、凹面ミラーとして機能する対象である画像光MLに関して反射する光線の帯域が狭い。バンドパスフィルター40を設けることにより、画像光MLの波長が狭帯域となり、シースルーミラー23の反射型偏光子23pを通過した画像光MLの偏光が反射型ホログラム30pで効率的に反射され、プライバシー性をより確保できる。また、外部から瞳に入射する光線については、反射型ホログラム30pで反射する帯域以外の光線は透過するため、シースルー性を確保できる。
【0032】
光路について説明すると、表示素子11からの画像光MLは、バンドパスフィルター40に入射して、特定波長の画像光MLが透過する。バンドパスフィルター40を通過した画像光MLは、投射レンズ21に入射して略コリメートされた状態で投射レンズ21から射出される。投射レンズ21を通過した画像光MLは、プリズムミラー22に入射して入射面22aを屈折されつつ通過し、内反射面22bによって100%に近い高い反射率で反射され、再度出射面22cで屈折される。プリズムミラー22からの画像光MLは、一旦中間像を形成した後、シースルーミラー23に入射し、反射面23cによって90%程度以下の反射率で反射される。図3では、シースルーミラー23に入射する画像光MLにS偏光が含まれ、シースルーミラー23の反射型偏光子23pがS偏光を主に反射する例を挙げている。この場合、反射型偏光子23pでは主にS偏光が反射されP偏光が透過する。シースルーミラー23で反射された画像光MLのS偏光は、装着者USの眼EY又は瞳孔が配置される瞳位置PPに入射する。シースルーミラー23を通過した画像光MLのP偏光はホログラム素子30に入射し、反射層31cによって反射される。ホログラム素子30で反射された画像光MLのP偏光は、シースルーミラー23を外側に進行する場合よりも低い位置で通過し、装着者USの眼EY又は瞳孔が配置される瞳位置PPに入射する。瞳位置PPには、ホログラム素子30、シースルーミラー23、及びその周囲の支持板61を通過した外界光OLも入射する。つまり、第1表示装置100Aを装着した装着者USは、外界像に重ねて、画像光MLによる虚像を観察することができる。図4に示すように、シースルーミラー23の反射型偏光子23pがS偏光を主に反射する場合、外界光OLのうちP偏光がシースルーミラー23を通過する。
【0033】
以下の表1に、第1実施形態の虚像表示装置100を構成する各部材の透過率又は反射率、及び虚像表示装置100の光利用効率の具体例について示す。
〔表1〕
【0034】
表1に示すように、虚像表示装置100において、S偏光の光利用効率は4.5%であり、P偏光の光利用効率は3.85%であり、全体の光利用効率は8.35%である。
【0035】
図2に示す表示制御装置88は、表示制御回路であり、表示素子11に対して画像に対応する駆動信号を出力し表示素子11の表示動作を制御する。表示制御装置88は、例えばIF回路、信号処理回路等を備え、外部から受け取った画像データ又は画像信号に応じて、表示素子11に2次元的な画像表示を行わせる。表示制御装置88は、第1表示装置100Aと第2表示装置100Bとを統括するメイン基板を含むものであってもよい。メイン基板は、図1に示すユーザー端末90との間で通信を行いユーザー端末90から受信した信号に対して信号変換を行うインターフェース機能や、第1表示装置100Aの表示動作と第2表示装置100Bの表示動作とを連携させる統合機能を有するものとすることができる。なお、表示制御装置88やユーザー端末90を備えないHMD200又は虚像表示装置100も虚像表示装置である。
【0036】
以上で説明した虚像表示装置100は、画像光生成装置11と、画像光生成装置11からの画像光MLが入射する投射光学系12と、投射光学系12からの画像光MLを瞳位置PPに向けて部分的に反射する部分透過ミラー123と、を備え、部分透過ミラー123は、反射型偏光子23pを有し、部分透過ミラー123の外側に離間して反射型ホログラム30pが配置されている。
【0037】
上記虚像表示装置100では、部分透過ミラー123の反射型偏光子23pの外側に配置された反射型ホログラム30pにより、縦方向に瞳に光線が入射する領域を拡大することができる。つまり、縦方向の瞳拡大が可能となり、投射光学系12にレンズを設けてもレンズ、具体的には、投射レンズ21を小さくできる。また、反射型ホログラム30pにより、部分透過ミラー123からの射出光を反射型ホログラム30pでフィルタリングすることにより外部に漏れる画像光MLを減衰させることができる。以上により、虚像表示装置100の光学系の厚みを抑えるとともに、瞳に入る画像光ML及び外界光OLを確保しつつ、外部へ漏れる画像光MLを抑制し、プライバシー性を確保することができる。
【0038】
また、外界光OLは反射型ホログラム30pをほぼ透過するため、部分透過ミラー123の表面に外光パターンが映されてキラキラと光って見えてしまうことを抑制することができる。これにより、虚像表示装置100の装着時における外観の違和感を防止しつつ、アイコンタクトを容易にすることができる。
【0039】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態に係る虚像表示装置について説明する。なお、第2実施形態の虚像表示装置は、第1実施形態の虚像表示装置を部分的に変更したものであり、共通部分については説明を省略する。
【0040】
図5に示すように、本実施形態の虚像表示装置100は、第1実施形態の虚像表示装置100とは異なり、バンドパスフィルターを有していない。すなわち、虚像表示装置100は、表示素子11と結像光学系20とホログラム素子30と表示制御装置88とを備える。
【0041】
光路について説明すると、表示素子11からの画像光MLは、投射レンズ21に入射して略コリメートされた状態で投射レンズ21から射出される。投射レンズ21を通過した画像光MLは、プリズムミラー22に入射して入射面22aを屈折されつつ通過し、内反射面22bによって100%に近い高い反射率で反射され、再度出射面22cで屈折される。プリズムミラー22からの画像光MLは、一旦中間像を形成した後、シースルーミラー23に入射し、反射面23cによって90%程度以下の反射率で反射される。画像光MLにS偏光が含まれ、シースルーミラー23の反射型偏光子23pがS偏光を主に反射する場合、反射型偏光子23pでは主にS偏光が反射されP偏光が透過する。シースルーミラー23で反射された画像光MLのS偏光は、装着者USの眼EY又は瞳孔が配置される瞳位置PPに入射する。シースルーミラー23を通過した画像光MLのP偏光はホログラム素子30に入射し、反射層31cによって反射される。ホログラム素子30で反射された画像光MLのP偏光は、シースルーミラー23を通過し、装着者USの眼EY又は瞳孔が配置される瞳位置PPに入射する。瞳位置PPには、ホログラム素子30、シースルーミラー23、及びその周囲の支持板61を通過した外界光OLも入射する。つまり、虚像表示装置100を装着した装着者USは、外界像に重ねて、画像光MLによる虚像を観察することができる。
【0042】
以下の表2に、第2実施形態の虚像表示装置100を構成する各部材の透過率又は反射率、及び虚像表示装置100の光利用効率の具体例について示す。
〔表2〕
【0043】
表2に示すように、虚像表示装置100において、S偏光の光利用効率は45%であり、P偏光の光利用効率は4.05%であり、全体の光利用効率は49.1%である。
【0044】
〔第3実施形態〕
以下、本発明の第3実施形態に係る虚像表示装置について説明する。なお、第3実施形態の虚像表示装置は、第1実施形態の虚像表示装置を部分的に変更したものであり、共通部分については説明を省略する。
【0045】
図6に示すように、本実施形態の虚像表示装置100は、第1実施形態の虚像表示装置100とは異なり、バンドパスフィルターを有していない。虚像表示装置100は、表示素子11と結像光学系20とホログラム素子30と表示制御装置88とを備える。
【0046】
本実施形態の画像光生成装置である表示素子11は、特定方向の偏光、具体的には、S偏光を有する画像光MLを射出するものである。表示素子11は、LCDその他の光変調素子で構成され、当該光変調素子をバックライトのような光源によって照明することによって画像を形成する。表示素子11として、LCDに代えて、LCOS(Liquid crystal on silicon, LCoSは登録商標)を用いることができる。
【0047】
結像光学系20のうち、部分透過ミラー123であるシースルーミラー23は、反射型偏光子23pは、特定方向の偏光を部分に反射する偏光子である。反射型偏光子23pは、特定方向の偏光を、例えば40~60%、好ましくは50%反射する。具体的には、反射型偏光子23pは、50%S偏光反射板である。すなわち、シースルーミラー23の反射面23c又は反射型偏光膜23aは、画像光MLのうちS偏光を50%反射する。また、虚像表示装置100は、シースルーミラー23とホログラム素子30との間に、λ/4波長板70が設けられている。すなわち、50%S偏光反射板として機能する反射型偏光子23pの外界側にλ/4波長板70、そのさらに外界側に反射型ホログラム30pが配置されている。図示では、λ/4波長板70は、反射型偏光子23pや反射型ホログラム30pとは別部材としているが、λ/4波長板70は反射型ホログラム30pに貼り付けてもよい。
【0048】
λ/4波長板70は、位相差をλ/4(90°)与え、直線偏光を円偏光に変換する。λ/4波長板70の主軸は、例えば-X方向と+Y方向との間であって、両方向に対して45°をなす方向に設定されている。この場合、反射型偏光子23pとλ/4波長板70とが円偏光フィルターのように機能する。反射型偏光子23pを通過した画像光MLのS偏光は、λ/4波長板70を通過することで円偏光となる。この円偏光は、ホログラム素子30の反射層31cで反射され、再度λ/4波長板70を通過することでP偏光となる。シースルーミラー23の外側から外界光OLが入射した場合、ホログラム素子30を通過した外界光OLは、λ/4波長板70を通過し、シースルーミラー23の反射型偏光子23pを通過することでP偏光のみとなる。
【0049】
光路について説明すると、表示素子11からの画像光MLは、投射レンズ21に入射して略コリメートされた状態で投射レンズ21から射出される。投射レンズ21を通過した画像光MLは、プリズムミラー22に入射して入射面22aを屈折されつつ通過し、内反射面22bによって100%に近い高い反射率で反射され、再度出射面22cで屈折される。プリズムミラー22からの画像光MLは、一旦中間像を形成した後、シースルーミラー23に入射し、反射面23cによって50%程度の反射率で反射される。図7では、シースルーミラー23に入射する画像光MLがS偏光を有し、シースルーミラー23の反射型偏光子23pがS偏光を50%反射する例を挙げている。この場合、50%のS偏光が反射され、残りのS偏光が透過する。シースルーミラー23で反射された画像光MLのS偏光は、装着者USの眼EY又は瞳孔が配置される瞳位置PPに入射する。シースルーミラー23を通過した画像光MLのS偏光はλ/4波長板70に入射し円偏光の光となる。その後、円偏光はホログラム素子30に入射し、反射層31cによって反射される。ホログラム素子30で反射された円偏光は、再度λ/4波長板70に入射しP偏光となる。λ/4波長板70を通過したP偏光はシースルーミラー23を効率良く通過し、装着者USの眼EY又は瞳孔が配置される瞳位置PPに入射する。瞳位置PPには、ホログラム素子30、シースルーミラー23、及びその周囲の支持板61を通過した外界光OLも入射する。つまり、虚像表示装置100を装着した装着者USは、外界像に重ねて、画像光MLによる虚像を観察することができる。
【0050】
以下の表3に、第3実施形態の虚像表示装置100を構成する各部材の透過率又は反射率、及び虚像表示装置100の光利用効率の具体例について示す。
〔表3〕
【0051】
表3に示すように、虚像表示装置100において、S偏光の光利用効率は50%であり、P偏光の光利用効率は3.5%であり、全体の光利用効率は53.5%である。
【0052】
以上において、表示素子11は、P偏光の光が出射するものとしてもよく、この場合、シースルーミラー23は、反射型偏光子23pとして、50%P偏光反射板となっている。この場合、シースルーミラー23を透過し、反射型ホログラム30pで反射し、再度シースルーミラー23を透過して瞳位置PPに入る光線はS偏光となる。
【0053】
〔第4実施形態〕
以下、本発明の第4実施形態に係る虚像表示装置について説明する。なお、第4実施形態の虚像表示装置は、第1実施形態の虚像表示装置を部分的に変更したものであり、共通部分については説明を省略する。
【0054】
図8に示すように、本実施形態の虚像表示装置100は、第1実施形態の虚像表示装置100とは異なり、バンドパスフィルターを有していない。虚像表示装置100は、表示素子11と結像光学系20とホログラム素子30と表示制御装置88とを備える。
【0055】
本実施形態の画像光生成装置である表示素子11は、レーザー光源13とMEMSミラー14とを有する。表示素子11の光源としてレーザー光源13のような単一波長の光源を使用した場合、反射型ホログラム30pで反射する波長に関して、レーザー光源13の波長と同じものを使用する。これにより、反射型ホログラム30pにおいて、外部に漏れる光線をより減衰させることができる。MEMSミラー14の射出側に、奥行方向に像を拡大させるレンズを設けることが好ましい。なお、MEMSミラー14の代わりにバックライト、デジタル・マイクロミラー・デバイス等を使用してもよい。また、虚像表示装置100は、表示素子11との結像光学系20との間に、λ/4波長板170が設けられている。具体的には、表示素子11のMEMSミラー14と結像光学系20の投射レンズ21との間に、λ/4波長板170が配置されている。
【0056】
また、虚像表示装置100において、部分透過ミラー123であるシースルーミラー23は、第1及び第2実施形態と同様に、反射型偏光子23pとして、S偏光をほとんど反射する、例えば90%S偏光反射板となっている。
【0057】
光路について説明すると、表示素子11において、レーザー光源13から出た画像光MLは、MEMSミラー14により角度を振られ、λ/4波長板170を透過して円偏光となる。画像光MLとしての円偏光は、投射レンズ21に入射して投射レンズ21から射出される。投射レンズ21を通過した画像光MLは、プリズムミラー22に入射して入射面22aを屈折されつつ通過し、内反射面22bによって100%に近い高い反射率で反射され、再度出射面22cで屈折される。プリズムミラー22からの画像光MLは、一旦中間像を形成した後、シースルーミラー23に入射し、反射面23cによって90%程度以下の反射率で反射される。この際、主にS偏光が反射されP偏光が透過する。シースルーミラー23で反射された画像光MLのS偏光は、装着者USの眼EY又は瞳孔が配置される瞳位置PPに入射する。シースルーミラー23を通過した画像光MLのP偏光はホログラム素子30に入射し、反射層31cによって反射される。ホログラム素子30で反射された画像光MLのP偏光は、シースルーミラー23を通過し、装着者USの眼EY又は瞳孔が配置される瞳位置PPに入射する。瞳位置PPには、ホログラム素子30、シースルーミラー23、及びその周囲の支持板61を通過した外界光OLも入射する。つまり、虚像表示装置100を装着した装着者USは、外界像に重ねて、画像光MLによる虚像を観察することができる。
【0058】
以下の表4に、第4実施形態の虚像表示装置100を構成する各部材の透過率又は反射率、及び虚像表示装置100の光利用効率の具体例について示す。
〔表4〕
【0059】
表4に示すように、虚像表示装置100において、S偏光の光利用効率は45%であり、P偏光の光利用効率は38.5%であり、全体の光利用効率は83.5%である。
【0060】
以上の虚像表示装置100では、レーザー光源13の使用波長と反射型ホログラム30pで反射する波長帯域とを合わせることで、反射型ホログラム30pで透過する光線を減らし、光利用効率を上げることができる。
【0061】
〔変形例その他〕
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0062】
シースルーミラー23は、S偏光を反射する反射型偏光子23pに限らず、P偏光を反射する反射型偏光子23pしとしてもよい。この場合、シースルーミラー23において、画像光MLのうちP偏光が反射し、S偏光が透過する。シースルーミラー23を透過し、反射型ホログラム30pで反射し、再度シースルーミラー23を透過して瞳位置PPに入射する光線はS偏光となる。
【0063】
虚像表示装置100は、プリズムミラー22の射出側にレンズを設けてもよい。
【0064】
第1実施形態の虚像表示装置100において、バンドパスフィルター40は、投射光学系12のプリズムミラー22の射出側に設けてもよい。
【0065】
虚像表示装置100は、横方向に非対称な結像光学系を含む構成でもよい。この場合、結像光学系は、例えば投射レンズと導光部材とを有し、画像光は反射されつつ横方向に延びる光路となる。
【0066】
以上では、虚像表示装置100が頭部に装着されて使用されることを前提としたが、上記虚像表示装置100は、頭部に装着せず双眼鏡のようにのぞき込むハンドヘルドディスプレイとしても用いることができる。つまり、本発明において、ヘッドマウントディスプレイには、ハンドヘルドディスプレイも含まれる。
【0067】
具体的な態様における虚像表示装置は、画像光生成装置と、画像光生成装置からの画像光が入射する投射光学系と、投射光学系からの画像光を瞳位置に向けて部分的に反射する部分透過ミラーと、を備え、部分透過ミラーは、反射型偏光子を有し、部分透過ミラーの外側に離間して反射型ホログラムが配置されている。
【0068】
上記虚像表示装置では、部分透過ミラーの反射型偏光子の外側に配置された反射型ホログラムにより、縦方向に瞳に光線が入射する領域を拡大することができる。つまり、縦方向の瞳拡大が可能となり、投射光学系にレンズを設けてもレンズを小さくできる。また、反射型ホログラムにより、部分透過ミラーからの射出光を反射型ホログラムでフィルタリングすることにより外部に漏れる画像光を減衰させることができる。
【0069】
具体的な側面において、反射型偏光子は、基材の内側に設けられた反射型偏光膜である。この場合、部分透過ミラーにおいて、画像光のうち特定方向の偏光を無駄なく反射させることができる。
【0070】
具体的な側面において、画像光生成装置と反射型偏光子との間にバンドパスフィルターが配置されている。この場合、画像光の波長が狭帯域となり、部分透過ミラーの反射型偏光子を通過した画像光の偏光が反射型ホログラムで効率的に反射し、プライバシー性をより確保できる。
【0071】
具体的な側面において、バンドパスフィルターは、画像光生成装置と投射光学系との間に配置されている。この場合、画像光生成装置から射出される画像光が単色の場合、特定波長の光を効率良く抽出することができる。
【0072】
具体的な側面において、画像光生成装置は、特定方向の偏光を含む画像光を射出し、反射型偏光子は、特定方向の偏光を50%する反射型偏光子であり、反射型偏光子と反射型ホログラムとの間にλ/4波長板が配置されている。この場合、反射型偏光子を通過し、反射型ホログラムで反射し、再度反射型偏光子を通過する光路において、λ/4波長板を2回通過した光は、特定方向の偏光以外の偏光に変換されるため、光利用効率を上げることができる。
【0073】
具体的な側面において、画像光生成装置は、レーザー光源を有し、レーザー光源と反射型偏光子との間にλ/4波長板が配置されている。この場合、レーザー光源の使用波長と反射型ホログラムで反射する波長帯域とを合わせることで、反射型ホログラムで透過する光線を減らし、光利用効率を上げることができる。
【0074】
具体的な側面において、部分透過ミラーは、凹面ミラーである。この場合、画像光生成装置に形成された像や投射光学系によって再結像された像を凹面ミラーによって拡大視することができる。
【0075】
具体的な側面において、反射型ホログラムは、部分透過ミラーと略平行に延びる湾曲した部材である。この場合、部分透過ミラーと反射型ホログラムとの間の距離が略同じとなり、部分透過ミラーで反射する画像光と反射型ホログラムで反射する画像光との位相ずれが調整しやすくなる。
【0076】
具体的な側面において、投射光学系は、画像光を集光する第1光学部材と、第1光学部材からの画像光を反射する第2光学部材とを含む。この場合、反射による光路の折り畳みによって光学系を小型化することが容易になる。
【0077】
具体的な側面において、第2光学部材は、画像光が入射する入射部と、入射した画像光が反射部材に向けて出射する出射部と、入射部から入射した画像光が出射部へ向けて反射される反射部と、を有する。
【0078】
具体的な態様における光学ユニットは、画像光生成装置からの画像光が入射する投射光学系と、投射光学系からの画像光を瞳位置に向けて部分的に反射する部分透過ミラーと、を備え、部分透過ミラーは、反射型偏光子を有し、部分透過ミラーの外側に離間して反射型ホログラムが配置されている。
【0079】
上記光学ユニットでは、部分透過ミラーの反射型偏光子の外側に配置された反射型ホログラムにより、縦方向に瞳に光線が入射する領域を拡大することができる。また、反射型ホログラムにより、部分透過ミラーからの射出光を反射型ホログラムでフィルタリングすることにより外部に漏れる画像光を減衰させることができる。
【符号の説明】
【0080】
11…表示素子、12…投射光学系、13…レーザー光源、14…MEMSミラー、20…結像光学系、21…投射レンズ、22…プリズムミラー、22a…入射面、22b…内反射面、22c…出射面、23…シースルーミラー、23a…反射型偏光膜、23c…反射面、23o…外側面、23p…反射型偏光子、30…ホログラム素子、30a…反射型ホログラム膜、30p…反射型ホログラム、31c…反射層、31o…外側面、40…バンドパスフィルター、51…ケース、70,170…λ/4波長板、88…表示制御装置、100…虚像表示装置、100C…支持装置、102…表示駆動部、103…コンバイナー、104…前方コンバイナー、123…部分透過ミラー、AX…光軸、EY…眼、ML…画像光、OL…外界光、OS…軸外し光学系、P1,P2,P3…光路、PP…瞳位置、US…装着者
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