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  • 特開-柱梁接合構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175566
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】柱梁接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20241211BHJP
   E04B 1/30 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
E04B1/58 508P
E04B1/30 E
E04B1/58 505P
E04B1/30 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093449
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】100098246
【弁理士】
【氏名又は名称】砂場 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100208269
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 雅士
(72)【発明者】
【氏名】古谷 祐希
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆之
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AA13
2E125AB01
2E125AB12
2E125AC01
2E125AC15
2E125AG43
2E125AG45
2E125BB02
2E125BD01
2E125CA06
(57)【要約】
【課題】 施工性が優れ、複合構造梁の材端鉄筋コンクリート梁に生じるせん断力を低減させる柱梁接合構造を提供する。
【解決手段】 梁の一方向を材端鉄筋コンクリート梁中央部鉄骨梁30、他方向を直交鉄骨梁20とし、直交鉄骨梁20が梁交差部40を貫通するように架設された二方向の梁20,30が交差する鉄筋コンクリート柱10上の梁交差部40において、材端鉄筋コンクリート梁中央部鉄骨梁30の埋設鉄骨梁31の端部が梁交差部40内まで延設され、梁交差部40内で埋設鉄骨梁31の端部と直交鉄骨梁20とが接合金物を介して接合された構成からなる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁の一方向を材端鉄筋コンクリート梁中央部鉄骨梁、他方向を直交鉄骨梁とし、鉄筋コンクリート柱上の梁交差部で二方向の梁が交差する柱梁接合構造において、
前記直交鉄骨梁が前記梁交差部を貫通して架設され、
前記材端鉄筋コンクリート梁中央部鉄骨梁の埋設鉄骨梁の端部が前記梁交差部内まで延設され、
前記梁交差部内で前記埋設鉄骨梁の端部と前記直交鉄骨梁とが接合金物を介して接合された、
ことを特徴とする柱梁接合構造。
【請求項2】
梁の一方向を材端鉄筋コンクリート梁中央部鉄骨梁、他方向を直交鉄骨梁とし、鉄筋コンクリート柱上の梁交差部で二方向の梁が交差する柱梁接合構造において、
前記直交鉄骨梁が前記梁交差部を貫通して架設され、
前記梁交差部の表面で前記材端鉄筋コンクリート梁中央部鉄骨梁の埋設鉄骨梁の端部と前記直交鉄骨梁とが接合金物を介して接合された、
ことを特徴とする柱梁接合構造。
【請求項3】
前記埋設鉄骨の端部と前記直交鉄骨梁とが接合プレートを介して高力ボルト接合された請求項1または請求項2に記載の柱梁接合構造。
【請求項4】
前記埋設鉄骨梁は、ウェブのみが前記梁交差部内に延設された請求項1に記載の柱梁接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は柱梁接合構造に係り、鉄筋コンクリート柱上の梁交差部で直交する梁の一方向を材端鉄筋コンクリート梁中央部鉄骨梁、他方向を鉄骨梁とした、梁と鉄筋コンクリート柱との柱梁接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鉄筋コンクリート造梁より広い室内空間を提供することができる構造形式として、材端鉄筋コンクリート梁中央部鉄骨梁(本明細書において、以下単に複合構造梁と記す。)が知られている(特許文献1)。複合構造梁は、梁スパンの中央部を自重の軽い鉄骨梁とし、鉄筋コンクリート柱との接合部(柱梁接合部)となる梁材端部を鉄筋コンクリート造とする構造形式からなる。複合構造梁の材端部では、梁スパン中央部の鉄骨梁が材端部の鉄筋コンクリート梁の柱近傍まで延在するように埋め込まれ、鉄骨から鉄筋コンクリートへと力の伝達が確実に行われるように、材端部の鉄筋コンクリートの梁断面、鉄骨梁の必要埋め込み長さ等の設計諸元が決定される。
【0003】
鉄筋コンクリート柱と接合される材端鉄筋コンクリート梁の柱側材端部が合理的に機能するための構造形式として、材端鉄筋コンクリート梁に埋め込まれた鉄骨梁の材端部の上下フランジに溶接等によりアンカー筋を取り付け、このアンカー筋を介して柱梁接合部を挟んで相対位置に設けられた鉄骨梁の端部とを接続する構成が提案されている(特許文献2)。このアンカー筋が鉄骨梁に作用する曲げモーメントの一部を負担することで材端鉄筋コンクリート梁の負担曲げモーメントの勾配が緩やかになり、材端鉄筋コンクリート梁に生じるせん断力を小さくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-35928号公報
【特許文献2】特開2001-173155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献2に示したように、複合構造梁に組み込まれる鉄骨梁の材端部のフランジにアンカー筋を溶接して取り付けるようにした場合において、鉄筋コンクリート柱を梁交差部として一方向を複合構造梁、直交する他方向を鉄骨梁とすることがある。このアンカー筋を高強度にすることでより合理的に材端鉄筋コンクリート梁の設計を行うことが可能になる。しかし、高強度鉄筋は炭素当量が多いため、溶接箇所において溶接割れ等が生じたりして溶接性が悪い。このため鉄筋の高強度化にも制約がある。
【0006】
また、従来例として図4各図、図5に示した複合構造梁130の鉄骨梁131のフランジに応力伝達用のアンカー筋150を取り付けた柱梁接合構造100の場合、梁交差部140において複合構造梁130の鉄骨梁131の梁せいより直交する鉄骨梁120の梁せいの方が大きく設計されている。このため、鉄筋コンクリート柱110で直交する鉄骨梁120,131の上フランジ面を揃えるように配置すると、複合構造梁130の鉄骨梁131の下フランジから延在するアンカー筋150が直交する鉄骨梁120のウェブ120w部分と干渉し、アンカー筋150をそのままでは配筋できない。この問題を回避するために、たとえば図5に示したように、鉄骨梁120のウェブ120wに貫通孔をあけてアンカー筋150を貫通させて取り付けて対応している。この場合、鉄骨梁120のウェブ120wに複数の貫通孔を設ける必要があるため、鉄骨梁120の耐力欠損が生じるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消し、複合構造梁と直交する鉄骨梁において耐力欠損を生じさせることなく、材端鉄筋コンクリート梁部分に生じるせん断力を低減するように設計された柱梁接合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の柱梁接合構造は、梁の一方向を材端鉄筋コンクリート梁中央部鉄骨梁、他方向を直交鉄骨梁とし、鉄筋コンクリート柱上の梁交差部で二方向の梁が交差する柱梁接合構造において、前記直交鉄骨梁が前記梁交差部を貫通して架設され、前記材端鉄筋コンクリート梁中央部鉄骨梁の埋設鉄骨梁の端部が前記梁交差部内まで延設され、前記梁交差部内で前記埋設鉄骨梁の端部と前記直交鉄骨梁とが接合金物を介して接合されたことを特徴とする。
【0009】
他の発明としての柱梁接合構造は、梁の一方向を材端鉄筋コンクリート梁中央部鉄骨梁、他方向を直交鉄骨梁とし、鉄筋コンクリート柱上の梁交差部で二方向の梁が交差する柱梁接合構造において、前記直交鉄骨梁が前記梁交差部を貫通して架設され、前記梁交差部の表面で前記材端鉄筋コンクリート梁中央部鉄骨梁の埋設鉄骨梁の端部と前記直交鉄骨梁とが接合金物を介して接合されたことを特徴とする。
【0010】
上述の発明において、前記埋設鉄骨の端部と前記直交鉄骨梁とが接合プレートを介して高力ボルト接合されることが好ましい。
【0011】
また、前記埋設鉄骨梁は、ウェブのみが前記梁交差部内に延設されることがことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複合構造梁の鉄骨梁の端部曲げモーメントの一部を、直交する鉄骨梁を介して材軸方向に連続する柱梁接合部の対面側の複合構造梁の鉄骨梁に伝達することにより、直交する鉄骨梁に耐力欠損を生じさせることなく複合構造梁の材端鉄筋コンクリート梁に生じるせん断力を低減させるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】直交する梁の一方向を材端鉄筋コンクリート梁中央部鉄骨梁(複合構造梁)、他方向を鉄骨梁とした、本発明の柱梁接合構造の一実施形態の構成を示した断面平面図(a)、同断面立面図(b)。
図2図1中に丸で囲まれた柱梁接合部の構成を拡大して示した断面平面図(a)、同断面立面図(b)。
図3】本発明の柱梁接合構造の他の実施形態を拡大して示した断面立面図。
図4】直交する梁の一方向を複合構造梁、他方向を鉄骨梁とした、従来の柱梁接合構造の構成例を示した部分平面図(a)、同部分立面図(b)。
図5】従来例において、複合構造梁の鉄骨梁に取り付けられたアンカー筋が、直交する鉄骨梁を貫通して設置された状態を示した部分断面立面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の柱梁接合構造の構成について添付図面を参照して説明する。
図1(a)は、直交する梁の一方向を、材端鉄筋コンクリート梁中央部鉄骨梁(複合構造梁)、他方向を鉄骨梁とした、本発明の柱梁接合構造1の実施形態の平面架構断面(Ia-Ia)を部分的に示している。図1(b)は、図1(a)の断面位置の参照元となる立面を示している。図2(a)、(b)は、それぞれ図1各図の楕円形で示した部分を拡大して示している。柱梁接合構造1は、鉄筋コンクリート柱10と、鉄筋コンクリート柱10上部を貫通するように架設された鉄骨梁20と、鉄骨梁20と直交方向に架設された複合構造梁30とから構成されている。鉄筋コンクリート柱10上部位置には、鉄骨梁20が貫通する位置および複合構造梁30の長軸方向端部とが交差する梁交差部40が鉄筋コンクリート柱10と同平面形状、寸法で構築されている。なお、本明細書では、梁交差部40を柱梁接合部と同義に扱っている。
【0015】
鉄筋コンクリート柱10(以下、柱10とする。)は、本実施形態では1050mm×1050mmの断面を有する、現場打ちされた鉄筋コンクリート製の柱体である。図2(a)、(b)に示すように、柱体11の上端から突出する柱主筋12は、柱内を貫通する鉄骨梁20と干渉しない平面位置に配筋されている。帯筋13は、鉄骨梁20の設置高さ及び鉄骨梁31の終端部が埋め込まれる範囲を外して配筋されている。
【0016】
鉄骨梁20は、図2(a)、(b)に示すように、本実施形態ではH形鋼(梁せい、梁幅:900mm×300mm)であり、柱10の柱体11上の梁交差部40を貫通するように複合構造梁30と直交方向に架設されている。複合構造梁30は、図1図2各図に示すように、梁長手方向の中央部が鉄骨梁31(梁せい、梁幅:800mm×300mm)で、両端部が材端鉄筋コンクリート梁33(梁せい、梁幅:1200mm×600mm)で構成されている。
【0017】
複合構造梁30は、鉄骨梁20に対して直交して鉄筋コンクリート柱10間に架設され、梁長手方向の中央部を構成するH形鋼の鉄骨梁31と、鉄骨梁31の梁端部を覆うようにして柱体11の上端部(梁交差部40)に接合された矩形断面の材端鉄筋コンクリート梁33との複合構造体である。
【0018】
鉄骨梁31は、鉄筋コンクリート柱10を挟んで梁方向に架設され、その長軸方向端部32は、柱体11上の梁交差部40位置で、梁交差部40内に所定長さ分埋め込まれ、直交する鉄骨梁20のウェブ20w部分と、後述する接合金物を介してボルト接合され、鉄骨梁20、柱10と一体的に接合され、柱梁接合構造1が構成されている。
【0019】
材端鉄筋コンクリート梁33は、柱体11の上端部(梁交差部40)、鉄骨梁31の長軸方向端部32、柱体11を挟んで架設された他の鉄骨梁31の長軸方向端部32と一体的に覆う矩形断面のコンクリート梁として構築され、コンクリート梁内の上下端には所定被りを確保して梁長軸方向に延びる上端筋34、下端筋35が配筋されている。上端筋34、下端筋35の端部には、定着金物36が取り付けられている。材端鉄筋コンクリート梁33の上端筋34,下端筋35を包含するようにあばら筋37が所定間隔で配筋されている。また、あばら筋37は定着金物36の近傍で密に配筋されている。材端鉄筋コンクリート梁33の梁長さは、コンクリート梁内に埋め込まれた鉄骨梁31の梁せいの1.5~3倍の長さであることが好ましい。
【0020】
図2(a)、(b)に示すように、柱梁接合構造1では、柱体11上の梁交差部40において、複合構造梁30の鉄骨梁31の長軸方向端部(以下、終端部と記す。)が鉄骨梁20と直交するように接合されている。本実施形態において、鉄骨梁31の終端部は、梁交差部40を貫通する鉄骨梁20の近傍まで柱体11内に埋め込まれている。この鉄骨梁31のウェブ31wの終端部と対向する位置の鉄骨梁20のウェブ20w部分には、鉄骨梁31のウェブ31wの板厚と同じ板厚のガセットプレート25が溶接接合されている。さらに、ガセットプレート25と鉄骨梁31のウェブ20wとの間にはスプライスプレート26が両側面から宛がわれ、スプライスプレート26を介して8本の高力ボルト27によって鉄骨梁31と鉄骨梁20とがボルト接合されている。
【0021】
以上に述べたように、本発明の柱梁接合構造1では、複合構造梁30の鉄骨梁31の端部曲げモーメントの一部を、材軸方向に連続する柱梁接合部の対面側の複合構造梁30の鉄骨梁31に伝達させることで、材端鉄筋コンクリート梁33に生じるせん断力を確実に低減することができる。また、接合に用いる高力ボルト27の本数を増減させることで梁材軸方向に連続する柱梁接合部の対面側の複合構造梁30の鉄骨梁31に伝達させる曲げモーメントを制御することができる。さらに、従来技術で問題となっていた、梁せいの大きな鉄骨梁20に鉄骨梁31を接合する際に、鉄骨梁20のウェブ20wにアンカー筋(たとえば図5中、符号150)を貫通させる必要がないため、梁の耐力欠損を防止することができる。加えて、鉄骨梁31のフランジにアンカー筋を溶接しないため、溶接箇所での梁部材の品質低下も生じない。
【0022】
図3(a)、(b)は、柱梁接合構造の他の実施形態として、上述した梁交差部40を貫通する鉄骨梁20と、複合構造梁の鉄骨梁31の終端部との接合構造を示している。図2各図の実施形態で鉄骨梁31の終端部が柱体11上の梁交差部40内に位置する鉄骨梁20の近傍まで埋め込まれていたのに対して、本実施形態では、梁交差部40内へ鉄骨梁31の梁全体を埋め込まないので、梁交差部40内部へのコンクリート打設作業の施工性を高めることができる。
【0023】
図3(a)は、複合構造梁30に埋め込まれた鉄骨梁31の終端部の上下フランジの端部を複合構造梁30の端部に合わせ、さらに鉄骨梁31のウェブ31wを同図に示したように、梁交差部40内の鉄骨梁20の近傍まで延長した構造例を示している。この構造例の場合には、梁交差部40内に鉄骨梁31の上下フランジがないため、高力ボルト27によるボルト接合の施工性が向上し、また梁交差部40でのコンクリートの充填性を高めることができる。
【0024】
図3(b)は、複合構造梁30に埋め込まれた鉄骨梁31の終端部を複合構造梁30の端部に合わせるとともに、梁交差部40内を貫通する鉄骨梁20に取り付けられるガセットプレート25を梁交差部40の外面近傍まで延長する大きな形状に設計し、柱梁接合面位置でガセットプレート25と鉄骨梁31のウェブ31wとを高力ボルト27でボルト接合するようにした構造例を示している。この構造例の場合には、梁交差部40での複合構造梁の鉄骨梁31と鉄骨梁20との接合作業が梁交差部40の表面位置で行えるので、鉄骨梁20,31の接合作業の容易化を図ることができる。
【0025】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に示した範囲内での種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲内で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0026】
1 柱梁接合構造
10 鉄筋コンクリート柱
11 柱体
20,31 鉄骨梁
22 材端鉄筋コンクリート梁
25 ガセットプレート
26 スプライスプレート
27 高力ボルト
30 複合構造梁
33 鉄筋コンクリート梁
40 梁交差部
図1
図2
図3
図4
図5