(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175567
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】被収容部の位置調整方法及び位置調整装置
(51)【国際特許分類】
F16L 55/00 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
F16L55/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093450
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000105556
【氏名又は名称】コスモ工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】亀井 輝男
(57)【要約】
【課題】筐体に収容される被収容部の位置を調整することにより内部流体の漏洩の発生を防止する被収容部の位置調整方法及び位置調整装置を提供すること。
【解決手段】シール部としてのシール材51及び保持部材としての固定ピン52を有する筐体としてのケース体50を、流体管2の分岐部2bを囲むように取付け、該ケース体50内に収容される被収容部としての空気弁3のフランジ31bを固定ピン52により所定位置に保持することでシール材51による密封状態が構成されるように、フランジ31bの位置を調整する方法であって、フランジ31bの上面31fにスペーサ部材としてのスペーサ170を取付ける工程と、固定ピン52の先端52aをスペーサ170に当接させることで、フランジ31bを所定位置に保持する工程と、を少なくとも有する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール部及び保持部材を有する筐体を流体管の所定箇所を囲むように取付け、該筐体内に収容される被収容部を前記保持部材により所定位置に保持することで前記シール部による密封状態が構成されるように、前記被収容部の位置を調整する被収容部の位置調整方法であって、
前記被収容部の上面にスペーサ部材を取付ける工程と、
前記保持部材を前記スペーサ部材に当接させることで、前記被収容部を前記所定位置に保持する工程と、を少なくとも有することを特徴とする被収容部の位置調整方法。
【請求項2】
前記スペーサ部材の厚み寸法は、前記被収容部の所定の基準厚み寸法と前記被収容部の実際の厚み寸法との差寸法であることを特徴とする請求項1に記載の被収容部の位置調整方法。
【請求項3】
前記被収容部は、前記流体管に連通する連通部のフランジ部に接続されており、
前記筐体の前記シール部は、前記被収容部が前記所定位置に保持されたときに前記連通部のフランジ部に当接することを特徴とする請求項1に記載の被収容部の位置調整方法。
【請求項4】
前記筐体に取付けられた位置決め用治具を前記被収容部の上面に当接させた状態で、前記連通部を覆うように前記筐体を密封状に取付ける工程をさらに有することを特徴とする請求項3に記載の被収容部の位置調整方法。
【請求項5】
前記筐体の前記シール部は、前記被収容部が前記所定位置に保持されたときに該被収容部に当接することを特徴とする請求項1に記載の被収容部の位置調整方法。
【請求項6】
前記保持部材は、前記筐体の円筒状部に周方向にわたり複数配置され、内径方向に向けて突出可能であり、
前記スペーサ部材は、前記被収容部の周方向にわたり延設されていることを特徴とする請求項1に記載の被収容部の位置調整方法。
【請求項7】
前記スペーサ部材には、周方向への位置ずれを防止する位置ずれ防止部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の被収容部の位置調整方法。
【請求項8】
前記スペーサ部材は、前記被収容部の上面における少なくとも周縁部に載置される載置部と、該載置部から下方に屈曲して前記被収容部の側周面に沿うように垂下する垂下部と、から形成されることを特徴とする請求項1に記載の被収容部の位置調整方法。
【請求項9】
前記スペーサ部材は、前記被収容部に着脱可能に取付けられることを特徴とする請求項1に記載の被収容部の位置調整方法。
【請求項10】
シール部及び保持部材を有する筐体を流体管の所定箇所を囲むように取付け、該筐体内に収容される被収容部を前記保持部材により所定位置に保持することで前記シール部による密封状態が構成されるように、前記被収容部の位置を調整する被収容部の位置調整装置であって、
前記被収容部の上面にスペーサ部材が取付けられ、
前記保持部材を前記スペーサ部材に当接させることで、前記被収容部が前記所定位置に保持されることを特徴とする被収容部の位置調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管の所定箇所を囲むように取付けられる筐体内に収容される被収容部の位置を調整する被収容部の位置調整方法及び位置調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、水道管等の既設流体管の管路の所定適所から上方に分岐した分岐部(連通部)に設けられた空気弁を交換する場合において、空気弁を覆うように分岐部にケース体(筐体)を取付けるとともに、ケース体の周方向にわたり配設された複数の固定ボルト(保持部材)を径方向に螺挿し、分岐部のフランジ部に接続された空気弁のフランジ部(被収容部)の上面に当接させて該空気弁のフランジ部を所定位置に保持することにより、ケース体の内周面下部に設けられたシール部に分岐部のフランジ部が当接して密封状態が構成されるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、既設流体管の管路の所定箇所に伸縮可撓管継手を設置する場合において、既設流体管の管路の所定箇所を覆うようにケース体(筐体)を取付け、既設流体管を切断装置にて不断流状態で切断した後、ケース体の上部開口から内蓋(被収容部)を挿入するとともに、ケース体の周方向にわたり配設された複数の固定ボルト(保持部材)を径方向に螺挿し、内蓋の上面に当接させて該内蓋を所定位置に保持することにより、ケース体の内周面下部に設けられたシール部に内蓋が当接して密封状態が構成されるものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-49529号公報(第6~7頁、第4~5図)
【特許文献2】特開昭57-51090号公報(第4~6頁、第1~2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1、2に記載の空気弁や内蓋にあっては、固定ボルトとシール部とはケース体に予め設けられており相対位置は変わらないことで、空気弁のフランジ部や内蓋が所定位置からずれた位置に配置されると、固定ボルトが空気弁のフランジ部や内蓋の側面に接触して螺挿できないことがあるため、固定ボルトの先端を先細りテーパ状に形成することである程度の位置ずれに対応できるようにしている。
【0006】
しかし、これら空気弁のフランジ部や内蓋は、生産された年代や呼び径などによって厚み寸法が異なる(特に、空気弁のフランジ部や内蓋の厚み寸法が基準厚み寸法よりも薄い)場合や、寸法誤差等により空気弁のフランジ部や内蓋が所定位置よりも下方に配置された場合、固定ボルトから空気弁のフランジ部や内蓋が離れてしまい、空気弁のフランジ部や内蓋を所定位置に保持することができず、分岐部のフランジ部や内蓋がシール部に当接せず密封状態が構成されないため、内部流体の漏洩が発生する虞があるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、筐体に収容される被収容部の位置を調整することにより内部流体の漏洩の発生を防止する被収容部の位置調整方法及び位置調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の被収容部の位置調整方法は、
シール部及び保持部材を有する筐体を流体管の所定箇所を囲むように取付け、該筐体内に収容される被収容部を前記保持部材により所定位置に保持することで前記シール部による密封状態が構成されるように、前記被収容部の位置を調整する被収容部の位置調整方法であって、
前記被収容部の上面にスペーサ部材を取付ける工程と、
前記保持部材を前記スペーサ部材に当接させることで、前記被収容部を前記所定位置に保持する工程と、を少なくとも有することを特徴としている。
この特徴によれば、被収容部の実際の厚み寸法が基準厚み寸法より小さい場合や、寸法誤差等により被収容部が所定位置よりも下方に配置された場合でも、被収容部に取付けたスペーサ部材に保持部材を当接させることで、被収容部が所定位置に保持されて密封状態が構成されるので、内部流体の漏洩の発生を防止できる。
【0009】
前記スペーサ部材の厚み寸法は、前記被収容部の所定の基準厚み寸法と前記被収容部の実際の厚み寸法との差寸法であることを特徴としている。
この特徴によれば、被収容部の実際の厚み寸法が基準厚み寸法より小さい場合でも、被収容部に取付けたスペーサ部材に保持部材を当接させることで、被収容部を所定位置に保持することができる。
【0010】
前記被収容部は、前記流体管に連通する連通部のフランジ部に接続されており、
前記筐体の前記シール部は、前記被収容部が前記所定位置に保持されたときに前記連通部のフランジ部に当接することを特徴としている。
この特徴によれば、被収容部が保持部材により保持されたときに、筐体のシール部が連通部のフランジ部に当接して密封状態が構成されるため、筐体を連通部に密封状に取付けることができる。
【0011】
前記筐体に取付けられた位置決め用治具を前記被収容部の上面に当接させた状態で、前記連通部を覆うように前記筐体を密封状に取付ける工程をさらに有することを特徴としている。
この特徴によれば、筐体を連通部に取付けるときに、該筐体に取付けた位置決め用治具を被収容部の上面に当接させることで、被収容部を所定位置に簡単に位置決めできるため、被収容部の位置調整が容易になる。
【0012】
前記筐体の前記シール部は、前記被収容部が前記所定位置に保持されたときに該被収容部に当接することを特徴としている。
この特徴によれば、被収容部が保持部材により保持されたときに、筐体のシール部が被収容部に当接して密封状態が構成されるため、被収容部を筐体に密封状に取付けることができる。
【0013】
前記保持部材は、前記筐体の円筒状部に周方向に亘り複数配置され、内径方向に向けて突出可能であり、
前記スペーサ部材は、前記被収容部の周方向に亘り延設されていることを特徴としている。
この特徴によれば、各保持部材をスペーサ部材に確実に当接させることができる。
【0014】
前記スペーサ部材には、周方向への位置ずれを防止する位置ずれ防止部が形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、保持部材が当接したときにスペーサ部材が周方向へ位置ずれすることを防止できる。
【0015】
前記スペーサ部材は、前記被収容部の上面における少なくとも周縁部に載置される載置部と、該載置部から下方に屈曲して前記被収容部の側周面に沿うように垂下する垂下部と、から形成されることを特徴としている。
この特徴によれば、垂下部が被収容部の側周面に沿って配置されることで、載置部の径方向への移動が規制されるので、スペーサ部材を簡単に被収容部に取付けることができる。
【0016】
前記スペーサ部材は、前記被収容部に着脱可能に取付けられることを特徴としている。
この特徴によれば、被収容部が所定位置に保持された後にスペーサ部材を撤去することができるため、スペーサ部材が残留して邪魔になることを防止できる。
【0017】
また、本発明の被収容部の位置調整装置は、
シール部及び保持部材を有する筐体を流体管の所定箇所を囲むように取付け、該筐体内に収容される被収容部を前記保持部材により所定位置に保持することで前記シール部による密封状態が構成されるように、前記被収容部の位置を調整する被収容部の位置調整装置であって、
前記被収容部の上面にスペーサ部材が取付けられ、
前記保持部材を前記スペーサ部材に当接させることで、前記被収容部が前記所定位置に保持されることを特徴としている。
この特徴によれば、被収容部の実際の厚み寸法が基準厚み寸法より小さい場合や、寸法誤差等により被収容部が所定位置よりも下方に配置された場合でも、被収容部に取付けたスペーサ部材に保持部材を当接させることで、被収容部が所定位置に保持されて密封状態が構成されるので、内部流体の漏洩の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施例1における撤去対象となる空気弁及び受け台を示す一部破断正面図である。
【
図2】(a)は空気弁からカバー等を取外す状況を示す一部破断正面図、(b)は取外した後の平面図である。
【
図3】(a)は空気弁に弁吊り金具を取付けた状態を示す一部破断正面図、(b)は同じく平面図、(c)は(b)のA-A断面図である。
【
図4】ジャッキ及びケース体を分岐部に取付けた状態を示す一部破断正面図である。
【
図5】(a)はケース体を分岐部に取付けた状態を示す平面図、(b)はケース体を示す側面図である。
【
図6】位置決め用治具が取付けられたケース体の要部を示す断面図である。
【
図7】(a)は位置決め用治具を示す正面図、(b)は側面図、(c)はアジャスタを示す正面図及び側面図、(d)はスペーサを示す正面図及び側面図、(e),(f)はアジャスタが取付けられた位置決め用治具を示す一部破断側面図である。
【
図8】(a)はフランジにスペーサが取付けられた状態を示す断面図、(b)は固定ピンがスペーサに当接した状態を示す要部拡大断面図である。
【
図9】(a)は旧型空気弁用のスペーサを示す平面図、(b)はスペーサを示す一部破断側面図、(c)は(b)の要部拡大断面図である。
【
図10】作業弁及び水圧ポンプ等を取付けた状態を示す一部破断正面図である。
【
図11】円筒及び挿入ロッドを取付けた状態を示す一部破断正面図である。
【
図12】空気弁を取外した状況を示す一部破断正面図である。
【
図13】置きコマ挿入機を取付けた状態を示す一部破断正面図である。
【
図14】置きコマにより分岐部を密封した状況を示す一部破断正面図である。
【
図15】新型空気弁を円筒内に配設した状況を示す一部破断正面図である。
【
図16】(a)はフランジにスペーサが取付けられた新型空気弁を示す平面図、(b)は(a)の新型空気弁を示す正面図である。
【
図17】新型空気弁を分岐部に取付けた状況を示す一部破断正面図である。
【
図18】新型空気弁から弁吊り金具及びスペーサを取外す状況を示す一部破断正面図である。
【
図19】実施例2において流体管に筐体、作業弁、切除装置が取付けられた状態を示す一部破断正面図である。
【
図20】(a)は筐体上部を示す要部拡大断面図、(b)は弁体を示す要部拡大断面図である。
【
図21】挿入装置により弁体を筐体内に挿入する状態を示す一部破断正面図である。
【
図22】挿入装置により弁体が筐体内に配置された状態を示す一部破断正面図である。
【
図23】(a)は筐体から作業弁及び切除装置が取外された状態を示す断面図、(b)は(a)の筐体を示す平面図である。
【
図24】(a)は筐体上部に本体蓋が取付けられた状態を示す断面図、(b)は変形例としてのスペーサが取付けられた筐体を示す平面図である。
【
図25】本発明の変形例として流体管に筐体、作業弁、切除装置が取付けられた状態を示す一部破断正面図である。
【
図26】(a)は筐体内に弁体が配置された状態を示す要部拡大断面図、(b)は(a)の筐体を示す平面図である。
【
図27】(a)は筐体内に配置された弁体が固定ピンにより保持された状態を示す要部拡大断面図、(b)は(a)の筐体を示す平面図である。
【
図28】(a)は筐体内に配置された弁体が移動プレートにより固定された状態を示す要部拡大断面図、(b)は(a)の筐体を示す平面図である。
【
図29】(a)は筐体からスペーサが取外されて上蓋が取付けられた状態を示す要部拡大断面図、(b)は(a)の筐体を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る被収容部の位置調整方法及び位置調整装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。尚、実施例1では、既設流体管の分岐管部に取付けられた既設で旧型の空気弁を撤去する際及び新型の空気弁を取付ける際に本発明の被収容部の位置調整方法を実施するため、以下においては、空気弁の撤去方法について説明しながら被収容部の位置調整方法及び位置調整装置について説明する。また、
図1の手前側を流体管2の前方、
図1の左側を流体管2の左方、
図1の右側を流体管2の右方として説明する。
【実施例0020】
本発明の実施例1としての被収容部の位置調整方法及び位置調整装置について、
図1~
図18に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施例において、既設の流体管(以下、単に流体管と称する)2に、この流体管2内の余剰空気を排出可能な既設で旧型の空気弁(以下、単に空気弁と称する)3が連結されている。この空気弁3は、流体管2の分岐部2bとの間に補修弁等を介して接続されるタイプの空気弁(図示略)とは異なり、流体管2の分岐部2bに直接に接続されるタイプの空気弁である。
【0021】
流体管2は、例えば、地中に埋設される上水道用のダクタイル鋳鉄製であり、断面視略円形状に形成され、内周面がモルタル層で被覆されている。尚、本発明に係る流体管は、その他鋳鉄、鋼等の金属製、あるいはコンクリート製、塩化ビニール、ポリエチレン若しくはポリオレフィン製等であってもよい。さらに尚、流体管の内周面はモルタル層に限らず、例えばエポキシ樹脂等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により流体管の内周面に被覆してもよい。また、本実施例では流体管内の流体は上水であるが、本実施例の上水に限らず、例えば工業用水や農業用水、下水等の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。
【0022】
図1に示すように、空気弁3は、流体管2の主たる管路を構成する本管部2aから連通状態で上方に向け分岐した分岐部2bのフランジ2cに接続されている。より詳しくは、空気弁3は、分岐部2b内に挿嵌され、六角のボルト・ナット39でフランジ2cに密封状に接続された有底の外筒31と、この外筒31内に密封状に挿嵌され下端が開放された内筒32と、この内筒32内に収容された略真球形状の浮き球からなるフロート弁33と、この内筒32の上端に密封状に挿嵌されフロート弁33を上方から抑える遊動弁体34と、この遊動弁体34の上方に配置され、外筒31の上部にボルト36aを介して固定された上蓋36に螺合され、遊動弁体34を上下方向に位置決めする位置決め部材としてのノックボルト35と、から主として構成されている。また、外筒31のフランジ31b、遊動弁体34、上蓋36及びノックボルト35を上方から被覆するカバー37が、カバー固定部材37aによって内筒32に締結されている。
【0023】
外筒31には径方向に貫通する貫通孔31aが形成されている。また、内筒32にも径方向に貫通する貫通孔32aが形成され、この貫通孔32aは外筒31の貫通孔31aと周方向に位置合わせされているため、管内の流体(水及び余剰空気)が外筒31及び内筒32の内部に導入可能に構成されている。
【0024】
空気弁3の空気排出について説明すると、遊動弁体34の中央にはフロート弁33の中心と略同芯の排気孔としての小孔34aを備えた凸部が下方に突出形成されており、常時は当該凸部が内筒32内で浮力により上方に付勢されるフロート弁33の頂部に接することで、小孔34aは閉塞されている。流体管2の本管部2a内を上水とともに流れる余剰空気が分岐部2b内に進入し、さらに内筒32内に進入すると、この余剰空気によってフロート弁33を一時的に押し下げる。そうすると小孔34aが開放されて余剰空気は外部に排出される。内筒32内の余剰空気が排出されると、フロート弁33は再び上昇して小孔34aを閉塞するように構成されている。
【0025】
また外筒31の下端には副弁38が設けられている。副弁38を構成する小球フロート弁38aは、フロート弁33よりも小径の球体であって、常時は外筒31下端面に形成された小孔31eを浮力によって閉塞しているが、本管部2a内の水位が低下した場合には小球フロート弁38aが下降して小孔31eを開放して、外筒31内の水を下方に排出するように構成されている。
【0026】
[空気弁の撤去方法]
次に、上記した空気弁3の撤去方法について順に説明する。尚、空気弁3の撤去方法において被収容部としてのフランジ31bの位置調整方法について説明する。
【0027】
図1に示すように、流体管2の分岐部2bを管軸方向に挟む本管部2aの外面を清掃し、後述する筐体としてのケース体50、作業弁60及び円筒70(
図11参照)を支持するための受け台4,4をそれぞれ固定する。受け台4は、本実施例では上下方向に2分割されたバンド状で略半円筒の第1分割部材41、第2分割部材42からなり、本管部2aの外面に周方向に沿って外嵌され、締結部材44によって固定される。受け台4の上側を構成する第1分割部材41の上部には、支持脚43で支持され略水平方向に位置決めされた平坦な載置面45aを有する支持板45が設置されており、後述するように受け台4はジャッキ46(
図4参照)が受ける荷重を支持するように構成されている。尚、受け台4の分割数は3以上であってもよい。
【0028】
このように、流体管2の本管部2aに、受け台4,4を取付けることで、流体管2の周囲の掘削地盤等の支持力を頼ったり、ケース体50、作業弁60及び円筒70を流体管2に固定したり、ケース体50、作業弁60及び円筒70を重機で吊ったままで作業する等の必要がなく、流体管2の本管部2aを利用して取付けた受け台4,4により、ケース体50、作業弁60及び円筒70及びその内部流体の荷重を支持することができる。
【0029】
また、第1分割部材41、第2分割部材42からなる分割構造を有する受け台4を、締結部材44によって本管部2aに強固に取付けることができ、本管部2aの周方向に対しても調整ができ、ケース体50、作業弁60及び円筒70の水平状態を維持できる。
【0030】
尚、受け台4を構成する第1分割部材41、第2分割部材42の内周面は、図示しない樹脂材等を介設し若しくは凹凸部を形成する等により摩擦抵抗を高くすると好ましく、このようにすることで、本管部2aの外面に対し滑りを生じることなく安定状態で取付けることができる。
【0031】
次に、
図2に示すように、カバー固定部材37aの締結を解除して、カバー37を取外す。さらにボルト・ナット39を一本ずつ取外し、これに替えて長尺のガイドボルト21を下方から挿入するとともに、このガイドボルト21に高ナット22を締結する。
【0032】
さらに必要に応じてノックボルト35を一旦螺挿して内部のフロート弁33を下方に押圧することで、分岐部2b内の残留空気を外部に逃がして、内部圧力を開放してもよいが、まずはノックボルト35を取外す。このようにすることで、空気弁3の構成部品の全体高さを低く抑えることができる。尚、ノックボルト35は必ずしも取外すものに限られず、取付けた状態のまま図示しないナット若しくは溶接により固定してもよい。あるいは、既設のノックボルト35が一部腐食して回動不能、すなわち自然に固定になっている場合があり、このような場合は、当該ノックボルト35の頭部等の一部は切削してもよい。このようにすることで、空気弁の撤去作業の際にノックボルト35が不測に回転してしまい、遊動弁体34の誤作動を招いて流体漏洩する等の虞を回避できる。
【0033】
次に、
図3に示すように、空気弁3の上部に弁吊り金具25を取付ける。弁吊り金具25は、遊動弁体34及び上蓋36を上方から被覆する被覆部25aと、その上端中央に弁吊り用の挿通孔25bとを備え、上方から挿通した締結ボルト24をカバー固定部材37a用のタップ孔に螺合することで取付けられる。尚、上記で取外したカバー固定部材37aが使用できる場合、再使用してもよい。また、後述するようにケース体50を分岐部2bに取付ける際の位置決めのために、空気弁3のフランジ31bの板厚寸法L1を実測しておく。
【0034】
次に、
図4に示すように、各受け台4,4の載置面45a,45aに上下方向に伸縮可能なジャッキ46,46を設置し、周方向に2分割構造のケース体50を各ジャッキ46,46に荷重を預けながら設置する。ジャッキ46は、受け台4の載置面45aに載置される脚部47と、脚部47上部に設けられて上下に伸縮自在に延出し、上端にケース体50が載置する載置部49を備えた支持部48とから構成されている。尚、ケース体50は、3以上の分割数でもよい。
【0035】
図5に示すように、ケース体50は、該ケース体50を構成する周方向に分割された分割体50a,50b同士の接合端部に設けられた突出片50d,50dを対向させ、ボルト・ナット50eにより締結させることで、略円筒形状となる。
【0036】
図6に示すように、ケース体50の内周面下部には、フランジ2cの外周面に沿って密封状に当接するシール材51が設けられている。シール材51は、断面視略T字形のゴム材等からなり、分割体50a,50bの内周面下部に形成された凹溝50gに凸部を嵌合することにより周方向に取付けられている。
【0037】
また、
図5及び
図8に示すように、ケース体50の外周面下部におけるシール材51よりも上方位置には、外径方向に向けて突出する筒状部101が周方向に向けて複数形成されている。各筒状部101の内部にはネジ孔102が形成されており、該ネジ孔102には、保持部材としての固定ピン52が径方向に密封状に螺合されている。固定ピン52は、筒状部101の外側から工具等により軸周りに回転させることで、該固定ピン52の先端52aを、ケース体50の内部に突出させてフランジ31bの上面31fに当接させたり、筒状部101内に退避させたりできるようになっている。尚、固定ピン52の先端52aは、内径側に向けて先細りテーパ状に形成されている。
【0038】
図4及び
図6に示すように、ケース体50の下端にて内径方向に突出した鍔部50cには、ガイドボルト21の下端を支持する受けボルト59が上下に調整可能に螺合されている。また、鍔部50cに設けられた複数の受けボルト59の間には、複数の支持ボルト53(
図8参照)が上下方向に螺合されており、その上端がフランジ2cの下面を支持するように構成されている。ケース体50の側部には、作業者が外部より治具等を挿通可能な挿通部54と、ケース体50内部を目視確認可能な窓部55が設けられている。また、これら挿通部54及び窓部55の下方には、支持片57,57が略水平に設けられている。
【0039】
[ケース体の取付け]
次に、ケース体50を分岐部2bに取付ける工程について、
図4~
図9に基づいて説明する。
【0040】
まず、分割体50a,50bを、分岐部2bの上部を囲むように径方向に対向して配置した後、突出片50d,50dをボルト・ナット50eにより締結させて円筒形状のケース体50を構成し(
図4及び
図5参照)、分割体50a,50b各々の内周面に取付けられたシール材51を、分岐部2bのフランジ2cの外周面2eに当接させて、ケース体50と分岐部2bとの間を密封状態とする。
【0041】
しかし、フランジ2cの外周面2eはケース体50によって被覆されることで、シール材51の内周面51aの略全面がフランジ2cの外周面2eに当接したか否かをケース体50の外側方から目視確認することはできず、ケース体50の上面開口から見下ろして確認する場合、フランジ2cの外周面2eにシール材51の内周面51aを正確に配置することが困難である。
【0042】
そこで本実施例では、後述する位置決め用治具150をケース体50に取付け、該位置決め用治具150を用いてケース体50に対する空気弁3のフランジ31bの位置を調整することで、フランジ2cの外周面2eにシール材51の内周面51aの略全面を容易に当接させることができるようになっている。以下、この位置決め用治具150について説明する。
【0043】
[位置決め用治具]
図7(a),(b)に示すように、位置決め用治具150は、金属材からなり、ケース体50の上部に取付けられる取付部151と、取付部151の先端から下方に垂下される位置決め部152と、取付部151の上面に固定されたアイナット153と、を主に有している。取付部151におけるアイナット153の下方にはボルト挿通孔151aが形成されている。
【0044】
位置決め部152は、上下方向に延びる金属板からなり、その下端には上下方向を向く長孔154,154が形成されている。位置決め部152の下部には、アジャスタ155がボルト・ナット158により取付けできるようになっている。
図7(c),(d)に示すように、アジャスタ155は、上下方向に延びる垂直片155aと、垂直片155aの下端から側方に屈曲する水平片155bと、水平片155bの先端から上方に屈曲する屈曲片155cと、から側面視略J字形をなす金属材からなり、垂直片155aにはボルト挿通孔156,156が形成されている。
【0045】
アジャスタ155は、
図7(e)に示すように、位置決め部152の側面に垂直片155aを重ねて配置し、長孔154,154及びボルト挿通孔156,156に挿通したボルト・ナット158,158にて締結することで、位置決め部152の下部に一体に取付けられる。そして、長孔154,154に対するボルト・ナット158,158の上下位置を変更することで、取付部151の下面からアジャスタ155の下面までの位置決め寸法L11(上下長さ)を変更できるようになっている。
【0046】
詳しくは、
図7(a)に示すように、アジャスタ155を取付けない場合、取付部151の下面から位置決め部152の下面までの位置決め寸法L10は最小となり、
図7(e)に示すように、ボルト・ナット158,158を長孔154,154の上端に配置した場合や、
図7(f)に示すように、ボルト・ナット158,158を長孔154,154の下端に配置した場合、取付部151の下面からアジャスタ155の下面までの位置決め寸法L11は、位置決め寸法L10より長寸となる(L10<L11)。尚、ボルト・ナット158,158は、長孔154,154における任意の上下位置に配置することができるため、位置決め寸法L11の範囲内において、任意の位置決め寸法に決定することができる。
【0047】
また、
図7(f)に示すように、ボルト・ナット158,158を長孔154,154の上端に配置した場合、位置決め部152の下端と水平片155bとの隙間にスペーサ板157(
図7(d)参照)を配置して、アジャスタ155の位置決め部152側への移動を規制するようにしてもよい。尚、特に詳細な図示はしないが、複数の肉薄のスペーサ板を積み重ねることで隙間の厚みに応じた数のスペーサ板を配置可能としてもよい。
【0048】
このように構成された位置決め用治具150は、
図6に示すように、分割体50a,50bの内部に位置決め部152を配置した状態で、分割体50a,50bの上部に形成されたフランジ50fの上面に取付部151を配置し、フランジ50fに形成されたボルト挿通孔58aに下方から取付けたボルト58を、取付部151のボルト挿通孔151aに挿通してアイナット153に螺挿することで、分割体50a,50bに取付けられる。
【0049】
そして、分割体50a,50bに取付けられた各位置決め用治具150のアイナット153のリングにロープ等を挿通し、クレーン等で分割体50a,50bを吊り上げ、分岐部2bの上部を囲むように径方向に対向して配置する。次いで、突出片50d,50dをボルト・ナット50eにより取付けて円筒形状のケース体50を構成するとともに、該ケース体50を下降させて、位置決め用治具150の下端を空気弁3のフランジ31bの上面31fに載置する。また、各受け台4,4に配置されたジャッキ46,46の載置部49,49上に支持片57,57が載置されるように、ジャッキ46,46の上下長さを調整する。
【0050】
[空気弁のフランジの位置の調整方法]
次に、スペーサ170を用いた空気弁3のフランジ31bのケース体50に対する位置の調整方法について説明する。
【0051】
図6に示すように、シール材51は、分割体50a,50bの内周面に予め形成された凹溝50gに取付けられていることで、ケース体50の上端からシール材51に当接するフランジ2cの上面2fまでの上下寸法L5は、所定の設計値とされている。よって、位置決め用治具150の位置決め部152の位置決め寸法L10を上下寸法L5と同寸とすれば(L5=L10)、分割体50a,50bに取付けた位置決め部152の下端をフランジ2cの上面2fに当接させることで、上方から目視により確認しなくても、フランジ2cの外周面2eにシール材51の内周面51aを略全面に亘り正確に当接させることができる。しかし、フランジ2cの上面2fには空気弁3のフランジ31bが接続されているため、位置決め用治具150の位置決め部152の下端をフランジ2cの上面2fに当接させることができない。
【0052】
そこで本実施例では、位置決め用治具150の位置決め部152の下端を空気弁3のフランジ31bの上面31fに当接させて、空気弁3のフランジ31bを所定位置(
図6に示す位置)に位置決めすることで、フランジ2cの外周面2eにシール材51が当接する。つまり、所定位置とは、外周面2eにシール材51が当接するシール位置にフランジ2cが位置決めされたときに、該フランジ2cに接続された空気弁3のフランジ31bが位置決めされる位置である。
【0053】
この場合、ケース体50の上端からシール材51に当接するフランジ2cの上面2fまでの上下寸法L5から、空気弁3のフランジ31bの板厚寸法L1を減算することで、ケース体50の上端から空気弁3のフランジ31bの上面31fまでの上下寸法L6を決定することができる(L6=L5-L1)。そして、位置決め用治具150の位置決め部152の上下寸法をこの上下寸法L6と同寸にすれば、位置決め部152の下端を空気弁3のフランジ31bの上面31fに当接させることで、空気弁3のフランジ31bを所定位置(
図6に示す位置)に位置決めすることができる。
【0054】
ここで、既設の旧型の空気弁3のフランジ31bは、板厚寸法L1が、当該空気弁3の生産された年代や呼び径などによって異なるものがある。具体的には、現在基準とされている基準板厚寸法L2と同寸のものもあれば(L1=L2)、基準板厚寸法L2よりも短寸または長寸のものがある(L1<L2、L1>L2)。このように、フランジ31bの板厚寸法L1が基準板厚寸法L2よりも短寸または長寸の場合、ケース体50の上端から空気弁3のフランジ31bの上面31fまでの上下寸法L6が変わってしまう。
【0055】
そこで、ケース体50を分岐部2bに取付ける前(例えば、
図3(a)に示す工程など)に、既設の旧型の空気弁3のフランジ31bの板厚寸法L1を実測し、基準板厚寸法L2から実測したフランジ31bの板厚寸法L1を減算した差寸法L3を算出する(L3=L2-L1)。この差寸法L3が「0」の場合(L3=0)、フランジ31bの板厚寸法L1は基準板厚寸法L2と同寸であるため(L1=L2)、上下寸法L6は、位置決め用治具150の位置決め部152の位置決め寸法L10と同一になる(L6=L10)。よって、位置決め用治具150の下部にアジャスタ155を取付けずに、位置決め部152の下端を空気弁3のフランジ31bの上面31fに当接させることで、フランジ31bを所定位置に位置決めすることができる。
【0056】
一方、差寸法L3が「0」より大きい場合(L3>0)、フランジ31bの板厚寸法L1は基準板厚寸法L2よりも短寸(肉薄)であるので(L1<L2)、上下寸法L6は、位置決め用治具150の位置決め部152の位置決め寸法L10に差寸法L3を加算した値となる(L6=L10+L3、
図6参照)。よって、位置決め用治具150の位置決め部152の下部にアジャスタ155を取付け、取付部151の下面からアジャスタ155の下面までの位置決め寸法L11(
図7(e),(f)参照)を上下寸法L6と同寸とすれば(L11=L6)、アジャスタ155の下端を空気弁3のフランジ31bの上面31fに当接させることで、フランジ31bを所定位置に位置決めすることができる。
【0057】
尚、差寸法L3が「0」よりも小さい場合(L3<0)、フランジ31bの板厚寸法L1は基準板厚寸法L2よりも長寸(肉厚)であるので(L1>L2)、上下寸法L6は、位置決め寸法L10よりも短寸となる(L6<L10)。本実施例では、差寸法L3が「0」よりも小さくなる場合がないものとして説明は省略するが、位置決め寸法L10よりも短寸の位置決め部152を有する位置決め用治具(図示略)を用いて対応できるようにしてもよい。
【0058】
位置決め用治具150を用いてフランジ31bを所定位置に位置決めしたら、
図6に示すように、受けボルト59を螺挿してガイドボルト21の下端に当接させるとともに、支持ボルト53(
図8参照)を螺挿してフランジ2cの下面に当接させる。そして、突出片50d,50dをボルト・ナット50eにより締結して分割体50a,50bを固定する。
【0059】
次いで、各位置決め用治具150を取外した後、固定ピン52を螺挿して内径方向に突出させて、先端52aをフランジ31bの上面31fに当接させる。これにより、フランジ31b及びフランジ2cが、固定ピン52と受けボルト59及び支持ボルト53により上下から挟持され、分岐部2bにケース体50が取付けられる。
【0060】
ここで、固定ピン52は、ケース体50におけるシール材51の上方位置に取付けられており、シール材51に対する固定ピン52の位置は予め定められていることで、差寸法L3が「0」の場合(L3=0)、つまり、前述したようにフランジ31bの板厚寸法L1が基準板厚寸法L2と同寸の場合(L1=L2)、固定ピン52の先端52aがフランジ31bの上面31fに当接することで、フランジ31bを所定位置に保持することができる。
【0061】
しかし、差寸法L3が「0」よりも大きい場合(L3>0)、フランジ31bの板厚寸法L1は基準板厚寸法L2よりも短寸(肉薄)であることで(L1<L2)、固定ピン52を内部に突出させても先端52aがフランジ31bの上面31fに当接せずに離間してしまう、若しくは上面31fに押圧されないため、フランジ31bを所定位置に保持することができない。
【0062】
そこで本実施例では、フランジ31bの実際の板厚寸法L1が基準板厚寸法L2よりも肉薄の場合、後述するスペーサ170をフランジ31bに取付け、該スペーサ170に固定ピン52を当接させることで、フランジ2cの外周面2eにシール材51が当接する密封状態で、フランジ31bが所定位置に保持されるように位置調整できるようになっている。以下、このスペーサ170について説明する。
【0063】
[スペーサ]
図9(a),(b)に示すように、スペーサ170は、平面視無端円環状をなす金属材からなり、フランジ31bの上部に載置される上板部171と、上板部171の外端から下方に垂下される側板部172と、を主に有している。上板部171の内縁には、円弧状の位置決め凹部173が所定間隔おきに複数(本実施例では、4個)形成されている。尚、位置決め凹部173は、ガイドボルト21及び高ナット22に対応して形成されている。また、
図9(c)に示すように、上板部171と側板部172との間の角部には傾斜面175が形成されており、固定ピン52の先端52aを上板部171上に向けて案内できるようになっている。
【0064】
また、上板部171の板厚寸法L4は、前述した差寸法L3と同寸とされている(L4=L3)。本実施例では、特に図示しないが、板厚寸法L4が異なる複数種類のスペーサ170が予め用意されており、算出された差寸法L3に応じた板厚寸法L4を有するスペーサ170を選定して、フランジ31bに取付け可能とされている。
【0065】
このように構成されたスペーサ170は、
図8(a)に示すように、ケース体50の上方から該ケース体50内に配置されたフランジ31bの上部に嵌合することで、フランジ31bに取付けられる。取付けられた状態において、環状の上板部171がフランジ31bの上面31fの周縁部に載置されるとともに、環状の側板部172がフランジ31bの外周面に沿って配置されるため、径方向への移動が規制される。また、各位置決め凹部173内に高ナット22の一部が収容されることで(
図9(a)参照)、スペーサ170の周方向の回転が規制される。
【0066】
そして、上板部171が上面31fの周縁部に載置されることで、フランジ31bの周縁部の板厚寸法L1に板厚寸法L4が加わり、フランジ31bの周縁部の板厚寸法が基準板厚寸法L2と同寸となる(L2=L1+L4)。これにより、
図8(b)に示すように、固定ピン52を螺挿して内径方向に突出させることで、固定ピン52の先端52aがフランジ31bの周縁上部に配置されたスペーサ170に当接する。
【0067】
また、固定ピン52の先端52aは先細りテーパ状に形成されるとともに、スペーサ170の周縁部には傾斜面175が形成されていることで、固定ピン52に対するフランジ31b及びスペーサ170の位置が若干上下にずれていても、固定ピン52の内径方向への移動量に応じて先端52aが上板部171の上方にスムーズに案内される。また、固定ピン52は軸回りに回転しながら内径方向に向けて突出することで、先端52aに接触するスペーサ170が周方向に向けて押されるが、各位置決め凹部173内に高ナット22の一部が収容されていることで、各位置決め凹部173が高ナット22に係合し、スペーサ170の周方向への位置ずれが防止される。
【0068】
そして、フランジ2cは受けボルト59及び支持ボルト53により下方から支持されており、固定ピン52の内径方向への移動に応じてフランジ31b及びスペーサ170が下方に向けて押圧されることで、フランジ31b及びフランジ2cが、固定ピン52と受けボルト59及び支持ボルト53とにより上下から挟持され、ケース体50が分岐部2bに固定される。また、ケース体50の上端から空気弁3のフランジ31bの上面31fまでの寸法を実測し、上下寸法L6であることが確認できれば、固定ピン52によりフランジ31bが所定位置に保持され、フランジ2cの外周面2eがシール材51に当接して密封状態となる。
【0069】
また、分岐部2bを管軸方向に挟んで本管部2aのそれぞれに受け台4,4が別個に流体管2の本管部2aの周方向に可動なように取付けられていることで、管軸方向に対し僅かな傾斜が生じた場合でもケース体50等を水平状態に調整できるため、このケース体50、後述する作業弁60、円筒70及びその内部流体の荷重を安定的に支持することができる。
【0070】
次に、
図10に示すように、ケース体50の上端に作業弁60を接続ボルト61により密封状に取付ける。作業弁60は、ケース体50と上下方向に連通する連通部62と、この連通部62を開閉可能に略水平方向にスライドする作業弁体63と、この作業弁体63の開放時に収容する内部を備えた収容部64とから主として構成され、収容部64の端部に作業弁体63をスライド操作するための操作部65が設けられている。次いで、この作業弁体63を閉塞させて、収容部64を介してケース体50内に水圧ポンプ66により流体を充填して、圧力計67を用いて流体管2内と略同圧にして流体圧試験を実施する。尚、このときケース体50の挿通部54には透光性を有する窓部56を密封状に取付けておく。流体圧試験の終了後は、一旦流体をケース体50の外部に排出しておく。
【0071】
次に、
図11に示すように、作業弁60の上端に円筒70を密封状に取付ける。これらケース体50、作業弁60及び円筒70が本発明の筐体を構成している。円筒70は、その上端に上蓋71を密封状に接続されており、この上蓋71の中央に形成された貫通孔を通じて挿入ロッド75のロッド部76が挿入されている。挿入ロッド75は、上下方向に延設されたロッド部76と、円筒70の外部に位置するロッド部76に上端に接続され略水平方向に延設された操作部77と、円筒70の内部に位置するロッド部76下端に設けられた接続部78と、から主として構成されている。
【0072】
次いで円筒70の内部にて、作業弁体63を開放状態とし、挿入ロッド75と弁吊り金具25とを接続する。本実施例の弁吊り金具25は、空気弁3の上部を被覆する被覆部25aと、この被覆部25aに挿通されて空気弁3に締結される締結ボルト24とを備える。より詳しくは、ロッド部76の接続部78に形成された挿通孔と、空気弁3に接続した弁吊り金具25の被覆部25a上端に形成された挿通孔25bとを位置合わせして、両挿通孔に固定ピン26を挿通することで、挿入ロッド75と弁吊り金具25とが接続される。
【0073】
尚、ケース体50の挿通部54を介してケース体50内部での接続作業が可能となる。次に、同様に挿通部54を介してケース体50の内部にてガイドボルト21から高ナット22を取外す。次に、円筒70及びケース体50内に流体を再び充填して、流体管2内と略同圧にしておく。
【0074】
次に、
図5に示した固定ピン52を緩めて径方向外側に退避させ、
図12に示すように、挿入ロッド75を上方に引き上げ、弁吊り金具25とともに空気弁3を円筒70の内部まで移動させる。次いで、作業弁60の作業弁体63を密封状に閉塞して、円筒70から上蓋71及び挿入ロッド75を取外し、既設の空気弁3を回収する。
【0075】
尚、上記した既設の空気弁3は旧型でノックボルト35が上方に立設されており、さらに副弁38がその設置時において本管部2aの流路内に配置される必要があることから、この副弁38を下端に設けた外筒31は分岐部2bの上下寸法よりも長寸に形成されている。したがって、作業弁体63の上方の円筒70は空気弁3を回収するための上下方向のスペースを要する。ここで、上記したように空気弁3から予めノックボルト35を取外しているため、当該空気弁3を収容する円筒70の上下寸法を極力抑えることができる。尚、本実施例の円筒70の上下寸法は、ノックボルト35を取外した空気弁3よりも僅かに長寸であって、ノックボルト35を取付けた状態の空気弁3よりも短寸である。
【0076】
次に、
図13に示すように、円筒70の上部に置きコマ挿入機85を設置する。置きコマ挿入機85は、円筒70の上端開口に連通して接続された収容部73と、この収容部73内に配置される置きコマ80と、収容部73の内外を密封状に貫通して上下方向に延設され、下端に置きコマ80が連結された連結ロッド86と、連結ロッド86の上端に接続され水平方向に延びる操作部87と、から主として構成される。さらに置きコマ80は、円環状の弾性部材81と、この弾性部材81を上下に挟持する挟持部材82,83とを備えている。
【0077】
続いて、円筒70と、作業弁体63によって閉塞されたケース体50との間を同圧用ホース68で連結し、ケース体50から円筒70内に管内流体を導入して内部の圧力を略同圧にする。この管内流体の導入に際し、円筒70内の空気は、収容部73の上部に設けられた排出バルブ74を開放して外部に排出する。ここで、上記したようにケース体50の下方にジャッキ46が設けられていることで、ケース体50、作業弁60、円筒70及びこれらの内部流体の荷重を安定的に支持することができる。
【0078】
次に、
図14に示すように、作業弁体63を全開にしてケース体50及び円筒70の内部を連通状態とし、置きコマ挿入機85の操作部87を操作して置きコマ80を分岐部2bの内部に挿入し、この分岐部2b内を密封する。
【0079】
置きコマ80による分岐部2bの密封について詳しくは、連結ロッドの上端の回動部86aを回転操作すると、連結ロッド86内の図示しない連結軸が回動し、当該連結軸に接続された挟持部材82,83が互いに近づくように移動することで、その間の弾性部材81が上下に挟圧され、外径方向に膨出する。このように膨出した弾性部材81が分岐部2bの内周面に押圧されることで、分岐部2bを密封するようになっている。
【0080】
続いて、排出バルブ74を僅かに開放する等で、置きコマ80による分岐部2bの密封状態を確認した後、窓部56を取外し、挿通部54を介して分岐部2bのフランジ2cに残置された既設のパッキン2dを撤去する。さらに必要に応じてフランジ2cの上面2fを清掃する。このようにして、空気弁3の撤去が終了する。
【0081】
次に、本実施例1では、上記した旧型の空気弁3に換えて、これと同種で補修弁を要さずに分岐弁に直接接続されるタイプの新型の空気弁13(以下、新型空気弁13と称する)を設置する方法及びその装置につき、
図15~
図18を参照して説明する。
【0082】
まず、
図14で既設のパッキン2dの撤去後、再び挿通部54に窓部56を密封状に取付け、置きコマ80の弾性部材81を元の状態に縮径させることで密封状態を解除し、置きコマ80を上方の収容部73内に移動させ、作業弁体63を閉塞する(
図13参照)。次に円筒70から置きコマ挿入機85を取外し、
図15に示すように、これに換えて、新型空気弁13を下端に接続した挿入ロッド75及び上蓋71を円筒70に取付ける。新型空気弁13と挿入ロッド75のロッド部76との間には弁吊り金具27を介設する。ロッド部76の接続部78に形成された挿通孔と、新型空気弁13に接続した弁吊り金具27の挿通孔とを位置合わせして固定ピン26を挿通することで、挿入ロッド75と弁吊り金具27とが接続されている。また、この新型空気弁13を構成する外筒131のフランジ131bの下端面には、パッキン140を仮接着しておく。
【0083】
また、新型空気弁13を接続部78に接続する前に、新型空気弁13の外筒131のフランジ131bの板厚寸法L1(
図16(b)参照)を実測し、基準板厚寸法L2から実測したフランジ131bの板厚寸法L1を減算した差寸法L3が「0」より大きい場合(L3>0)、フランジ131bの板厚寸法L1は基準板厚寸法L2よりも短寸(肉薄)であるので、差寸法L3と同寸の板厚寸法L4を有するスペーサ270を選定し、フランジ131bに予め取付けておく。
【0084】
スペーサ270は、
図16(a),(b)に示すように、平面視円環状をなす金属材からなり、フランジ131bの上部に載置される上板部271と、上板部271の外端から下方に垂下される側板部272と、を主に有している。上板部271の内縁には、円弧状の位置決め凹部273が所定間隔おきに複数(本実施例では、6個)形成されている。尚、位置決め凹部273は、ガイドボルト21及び高ナット22(
図17参照)に対応して形成されている。また、上板部271と側板部272との間の角部には傾斜面275が形成されており、固定ピン52の先端52aを上板部271上に向けて案内できるようになっている。
【0085】
また、上板部271の板厚寸法L4は、前述した差寸法L3と同寸とされている(L4=L3)。本実施例では、新型空気弁13に対応するとともに、板厚寸法L4が異なる複数種類のスペーサ270が予め用意されており、算出された差寸法L3に応じた板厚寸法L4を有するスペーサ270を選定して、フランジ131bに取付け可能とされている。
【0086】
尚、新型空気弁13に対応するスペーサ270は、旧型の空気弁3に対応するスペーサ170と位置決め凹部273の形成位置及び個数が異なるだけで、基本構造は同様であるため、スペーサ170と同様の作用・効果を奏する。また、本実施例では、新型空気弁13に対応するスペーサ270と旧型の空気弁3に対応するスペーサ170とは異なっているが、同じスペーサを旧型の空気弁3と新型空気弁13とに共通に使用するようにしてもよい。
【0087】
続いて、同圧用ホース68を用いてケース体50から円筒70内に管内流体を導入して内部の圧力を略同圧にする。この管内流体の導入に際し、円筒70内の空気は、図示しない排出孔を開放して外部に排出する。ここで、上記したようにケース体50の下方にジャッキ46が設けられていることで、ケース体50、作業弁60、円筒70及びこれらの内部流体の荷重を安定的に支持することができる。
【0088】
次に、作業弁体63を全開にしてケース体50及び円筒70の内部を連通状態とし、挿入ロッド75の操作部77を操作して新型空気弁13を分岐部2bのフランジ2cに設置する。新型空気弁13の設置の際には、分岐部2bのフランジ2cの挿通孔に上方に向け配設されたガイドボルト21が新型空気弁13の外筒131のフランジ131bに形成された挿通孔に挿通されることで、新型空気弁13は挿入ロッド75により降下するにつれ所定の設置位置に向けガイドされる。また、新型空気弁13の設置時には、外筒131のフランジ131bの下面に仮接着されたパッキン140が、当該フランジ131bと分岐部2bのフランジ2cとの間に狭圧され、密封状態が維持される。
【0089】
次に、ケース体50に設けられた固定ピン52を内径方向に螺挿して固定ピン52の先端52aをスペーサ270に当接させて、外筒131のフランジ131bをフランジ2cに向けて押し付けて新型空気弁13を分岐部2bに固定する(
図8(b)参照)。続いて、図示しない排出孔を僅かに開放する等で、新型空気弁13と分岐部2bとの密封状態を確認した後、窓部56を取外し、挿通部54を介してガイドボルト21の上部に高ナット22を螺合させる(
図17参照)。次いで、挿入ロッド75と弁吊り金具27とを接続していた固定ピン26を取外す。
【0090】
このように、空気弁3の撤去後にケース体50、作業弁60及び円筒70内に挿入した挿入ロッド75を利用して、新型空気弁13を取付けることで、空気弁3及び新型空気弁13の交換作業を行うことができる。
【0091】
次に、
図17に示すように、上蓋71、挿入ロッド75、円筒70及び作業弁60をケース体50から取外し、固定ピン52を外径方向に螺挿して緩める。尚、言うまでもないが、上記したように高ナット22がガイドボルト21に螺合しているため、新型空気弁13の密封状態は維持されている。
【0092】
次に、
図18に示すように、ケース体50を分岐部2bから取外すとともに、ジャッキ46,46を撤去するとともに、弁吊り金具27及びスペーサ270を新型空気弁13から取外す。次いで、複数組設けられたガイドボルト21及び高ナット22を一組ずつ取外し、これに換えて六角のボルト・ナット139に交換した後、受け台4,4を撤去する。このようにして、新型空気弁13の設置が終了する。
【0093】
このように、空気弁3が備えるノックボルト35を撤去することで、この空気弁3を密封状に取り囲むケース体50、作業弁60及び円筒70内で干渉することなく簡便且つ密封性を維持した状態で、この空気弁3を撤去することができる。特にノックボルト35を撤去する場合、ケース体50、作業弁60及び円筒70を極小化できるため、これらケース体50、作業弁60、円筒70筐体及びその内部流体の重量を低減することができる。
【0094】
また、空気弁3の撤去のために分岐部2bを密封状に取り囲むケース体50、作業弁60及び円筒70を利用して、新型空気弁13を取付けることで、空気弁3及び新型空気弁13の交換作業を容易に行うことができる。
【0095】
尚、本実施例1では、上記した旧型の空気弁3に換えて、これと同種で補修弁を要さずに分岐部2bに直接接続されるタイプの新型空気弁13を設置する形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、旧型の空気弁3に換えて、これと異なり分岐部2bとの間に補修弁(図示略)の介設を要するタイプの新規空気弁を設置するようにしてもよい。
【0096】
[作用・効果]
以上説明したように、本発明の実施例1としての被収容部の位置調整方法にあっては、シール部としてのシール材51及び保持部材としての固定ピン52を有する筐体としてのケース体50を、流体管2の分岐部2bを囲むように取付け、該ケース体50内に収容される被収容部としての空気弁3のフランジ31bを固定ピン52により所定位置に保持することでシール材51による密封状態が構成されるように、フランジ31bの位置を調整するものであって、フランジ31bの上面31fにスペーサ部材としてのスペーサ170を取付ける工程(
図8(a)参照)と、固定ピン52の先端52aをスペーサ170に当接させることで、フランジ31bを所定位置に保持する工程(
図8(b)参照)と、を少なくとも有する。
【0097】
これによれば、フランジ31bの実測した板厚寸法L1が基準板厚寸法L2より小さい場合でも、フランジ31bに取付けたスペーサ170に固定ピン52を当接させることでフランジ31bが所定位置に保持され、これにより、シール材51とフランジ2cの外周面2eとの密封状態が構成されるので、漏水の発生を防止できる。
【0098】
また、スペーサ170の上板部171の板厚寸法L4は、所定の基準板厚寸法L2とフランジ31bの板厚寸法L1との差寸法L3であることで(L4=L3)、フランジ31bの実際の板厚寸法L1が基準板厚寸法L2より小さい場合でも、フランジ31bの上面31fに取付けたスペーサ170に固定ピン52を当接させることで、フランジ31bを所定位置に保持することができる。尚、本実施例では、スペーサ170の上板部171の板厚寸法L4は差寸法L3と同一とされていたが、差寸法L3と略同一であってもよい。
【0099】
また、フランジ31bは、流体管2に連通する連通部としての分岐部2bのフランジ2cに接続されており、ケース体50のシール材51の内周面51aは、フランジ31bが所定位置に保持されたときに分岐部2bのフランジ2cの外周面2eに当接することで、フランジ31bが固定ピン52により保持されたときに、シール材51の外周面2eが外周面2eに当接して密封状態が構成されるため、ケース体50を分岐部2bに密封状に取付けることができる。
【0100】
また、フランジ31bの位置決め用治具150をケース体50に取付ける工程(
図4及び
図5参照)と、位置決め用治具150の下端をフランジ31bの上面31fに当接させた状態で、分岐部2bを覆うようにケース体50を密封状に取付ける工程(
図5及び
図6参照)と、位置決め用治具150をケース体50から取外す工程(
図8参照)と、をさらに有する。これによれば、ケース体50を分岐部2bに取付けるときに、該ケース体50に取付けた位置決め用治具150をフランジ31bの上面31fに当接させることで、フランジ31bを所定位置に簡単に位置決めできるため、フランジ31bの位置調整が容易になる。
【0101】
また、固定ピン52は、ケース体50の円筒状部に周方向に亘り複数配置され、内径方向に向けて突出可能であり、スペーサ170,270は、フランジ31b,131bの周方向に亘り延設されていることで、各固定ピン52をスペーサ170,270に確実に当接させることができる。
【0102】
また、スペーサ170,270には、周方向への位置ずれを防止する位置ずれ防止部としての位置決め凹部173,273が形成され、該位置決め凹部173,273に高ナット22が配置されていることで、固定ピン52が当接したときにスペーサ170,270が周方向へ位置ずれすることを防止できる。また、新たな部材を設けることなく、フランジ2cとフランジ31bとを接続するガイドボルト21の高ナット22を利用して周方向への位置ずれを防止することができる。尚、ガイドボルト21との当接により位置ずれを防止してもよい。
【0103】
また、スペーサ170,270は、フランジ31b,131bの上面31f,131fにおける少なくとも周縁部に載置される上板部171,271(載置部)と、該上板部171,271から下方に屈曲してフランジ31b,131bの側周面に沿うように垂下する側板部172,272(垂下部)と、から断面視略L字形に形成されている。これによれば、側板部172,272がフランジ31b,131bの側周面に沿って配置されることで、上板部171,271の径方向への移動が規制されるので、固定ピン52を軸回りに回転させながら径方向に進退移動させても位置ずれすることがないので、スペーサ170,270を簡単にフランジ31b,131bに取付けることができる。
【0104】
また、固定ピン52の先端52aは先細りテーパ状に形成されているとともに、スペーサ170,270には傾斜面175,275が形成されていることで、固定ピン52に対するスペーサ170,270の位置が上下に若干ずれていても、固定ピン52を内径方向に螺挿することで、スペーサ170,270をスムーズに下方に押し下げることができるようになっている。
【0105】
また、ケース体50の内周面に対する固定ピン52の突出量が大きくなるにつれて、先端52aにおけるスペーサ170,270との当接位置が前側から後側に変化し、これによりフランジ31b,131bが下方に押し下げられていく。つまり、ケース体50の内周面に対する固定ピン52の突出量を変化させることで、フランジ31b,131bの上下位置を容易に調整することができる。さらに、被収容部としてのフランジ31b,131bが上下方向の所定範囲内に位置している間は固定ピン52の先端52aがスペーサ170,270に常に当接するので、フランジ31b,131bの所定位置として上下方向に若干幅を持たせることができる。
【0106】
また、本発明の実施例1としての被収容部の位置調整装置は、シール部としてのシール材51及び保持部材としての固定ピン52を有する筐体としてのケース体50を、流体管2の分岐部2bを囲むように取付け、該ケース体50内に収容される被収容部としての空気弁3のフランジ31bを固定ピン52により所定位置に保持することでシール材51による密封状態が構成されるように、フランジ31bの位置を調整するものであって、フランジ31bの上面31fにスペーサ部材としてのスペーサ170が取付けられ(
図8(a)参照)、固定ピン52の先端52aをスペーサ170に当接させることで、フランジ31bが所定位置に保持される(
図8(b)参照)。
【0107】
これによれば、フランジ31bの実測した板厚寸法L1が基準板厚寸法L2より小さい場合でも、フランジ31bに取付けたスペーサ170に固定ピン52を当接させることでフランジ31bが所定位置に保持され、これにより、シール材51とフランジ2cの外周面2eとの密封状態が構成されるので、漏水の発生を防止できる。
そして、作業弁335の弁箱335a内から弁体335cを後退させて開放状態とし、切除装置337のカッタ338を下降させて、流体管2の一部を不断流状態で切断する。その後、カッタ338を流体管2の切片(図示略)とともに引き上げ、作業弁335の弁体335cを弁箱335a内に進出させて閉塞状態とし、上水の漏水を防止して不断流状態を保ったまま切除装置337、取付フランジ筒336を作業弁335より取外す。
制流体314は、主部301内を仕切る仕切壁部315と、主部301の上面開口を閉塞する蓋部316と、を主に有する切換弁からなる。尚、制流体314は切換弁に限定されるものではなく、仕切弁、プラグ、バタフライ弁等でもよい。仕切壁部315には、流路を切替え可能な弁体(図示略)が設けられてもよいし、あるいは、流体管2と分岐部302bとにかけて湾曲した側壁が形成されてもよい。また、仕切壁部315の両側面及び底面に亘ってパッキン317が固着されているとともに、蓋部316の外周面316eに形成された凹溝316aにはパッキン318が嵌合されており、これらパッキン317,318は連続するように一体形成若しくは接続されている(図示略)。
よって、制流体314の蓋部316の板厚寸法L21を実測し、基準板厚寸法L22から実測した蓋部316の板厚寸法L21を減算した差寸法L23を算出する(L23=L22-L21)する。そして、この差寸法L23が「0」の場合(L23=0)、蓋部316の板厚寸法L21は基準板厚寸法L22と同寸であるため(L21=L22)、固定ピン352の先端352aを蓋部316の上面316fに当接させることで、蓋部316を所定位置、つまり、シール部351に当接する位置に位置決めすることができる。
このスペーサ370を蓋部316の上面316fに載置した状態で、制流体314を下降させて主部301内に挿入し、主部301内の底部に設けられているシール部360に底面のパッキン317が圧着されるように制流体314が配置される。そして、主部301の上部に周方向に配置されている複数の固定ピン352を内径側に進出させて、制流体314の蓋部316の上部に取付けられたスペーサ370の傾斜面375に当接させることで、蓋部316を下方に押圧して所定位置、つまり、蓋部316の外周面316eがシール部351に当接する位置に調整して保持することができる。
これによれば、蓋部316の実測した板厚寸法L21が基準板厚寸法L22より小さい場合でも、蓋部316に取付けたスペーサ370に固定ピン352を当接させることで蓋部316が所定位置に保持され、これにより、シール部351と蓋部316の外周面316eとの密封状態が構成されるので、漏水の発生を防止できる。
また、スペーサ370の板厚寸法L24は、所定の基準板厚寸法L22と蓋部316の実測した板厚寸法L21との差寸法L23であることで(L24=L23)、蓋部316の実際の板厚寸法L21が基準板厚寸法L22より小さい場合でも、蓋部316の上面316fに取付けたスペーサ370に固定ピン352を当接させることで、蓋部316を所定位置に保持することができる。尚、本実施例では、スペーサ370の板厚寸法L24は差寸法L23と同一とされていたが、差寸法L23と略同一であってもよい。
また、シール部351は、蓋部316が所定位置に保持されたときに該蓋部316のパッキン318に当接することで、蓋部316が固定ピン352により保持されたときに、シール部351がパッキン318に当接して密封状態が構成されるため、蓋部316を筐体300に密封状に取付けることができる。
これによれば、蓋部316の実測した板厚寸法L21が基準板厚寸法L22より小さい場合でも、蓋部316に取付けたスペーサ370に固定ピン352を当接させることで蓋部316が所定位置に保持され、これにより、シール部351と蓋部316の外周面316eとの密封状態が構成されるので、漏水の発生を防止できる。
また、フランジ403の上部には、リング状部421が密封状に接続されており、該リング状部421には、径方向を向くネジ孔422が複数個所に形成されており、各ネジ孔422には、保持部材としての固定ピン452が径方向に密封状に螺合されている。尚、固定ピン452は、実施例2の固定ピン352と略同様に構成されているため、詳細な説明は省略する。
弁体414は、主部401内を仕切る仕切壁部415と、主部401の上面開口を閉塞する蓋部416と、を主に有しており、仕切壁部415には、流路を切替え可能な弁体(図示略)が設けられている。また、仕切壁部415の上部外周面に形成された凹溝415aにはパッキン418が嵌合されている。
蓋部416の上面中央部には小径部416aが突設されており、蓋部416の上面における小径部416aの左右側には、移動プレート430,430が設けられているとともに、移動プレート430,430の間には、固定ピン452の受座としてのスペーサ440が複数個所に設けられている。
スペーサ440は、所定の板厚寸法を有し、固定ボルト441により蓋部416に固定されており、上部外周縁には、外径方向に向けて下側に傾斜する傾斜面475が形成されており、固定ピン452の先端452aを上面に向けて案内できるようになっている。
本変形例においても、しかし、蓋部416の呼び径などによって該蓋部416の板厚寸法L41が基準板厚寸法L42よりも短寸(肉薄)である場合(L41<L42)、固定ピン452を内径側に進出させても弁体414の蓋部416に当接させることができないため、板厚寸法L41が基準板厚寸法L42と同寸となるように所定板厚寸法を有するスペーサ440を取付ければよい。
そして、移動プレート430,430と小径部416aとの間に、固定プレート435,435をボルト436,436により取付け、移動プレート430,430の退避位置への移動を規制することで、弁体414が固定される。
また、スペーサ440は、弁体414の蓋部416に着脱可能に取付けられることで、蓋部416を移動プレート430,430及び固定プレート435,435により所定位置に保持した後に、不要となったスペーサ440を撤去することができるため、スペーサ440が残留して上蓋470の取付けなどの邪魔になることを防止できる。
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
例えば、前記実施例では、筐体に収容される被収容部の一例として、実施例1では旧型の空気弁3のフランジ31bを適用し、実施例2では制流体314の蓋部316を適用し、変形例では弁体414の蓋部416を適用した形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、被収容部は筐体内に収容される部材であれば、上記空気弁や弁体等に限定されるものではなく、上記の他、例えば、補修弁、蓋部材など他の部材を適用してもよい。
また、前記実施例1では、保持部材としての固定ピン52により所定位置に保持される被収容部を構成するフランジ31bを有する部材(空気弁3)と、シール材51に当接する被当接部(外周面2e)を有する部材(分岐部2bのフランジ2c)とが別個の部材とされていたが、実施例2や変形例のように、保持部材としての固定ピン352,452により所定位置に保持される被収容部を構成する蓋部316,416を有する部材と、シール部351や座面451に当接する被当接部(パッキン318,418)を有する部材と、が共通の部材(制流体314や弁体414)にて構成されていてもよい。さらに、実施例2のように、被収容部を構成する蓋部316に被当接部(パッキン318)が設けられていてもよいし、変形例のように、被収容部を構成する蓋部416とは別の部位(仕切壁部415)に被当接部(パッキン418)が設けられていてもよい。
また、前記実施例では、保持部材の一例として、ネジ孔に螺入された固定ピン52,352,452を適用した形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、被収容部に当接して保持可能なものであれば、上記のようなボルトからなるものでなくてもよく、例えば、弾性的に係止可能な係止部材など他の保持部材を適用してもよい。また、固定ピン52,352,452は被収容部の上面に当接可能に設けられていたが、外周面に形成された凹部等に嵌合することで保持できるものでもよく、保持態様も上記のものに限定されるものではない。
また、前記実施例では、スペーサ部材としてのスペーサ170,370,440は金属材にて構成された形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、合成樹脂材等の他の素材にて形成されていてもよい。また、スペーサ170,370のように環状部材でも、スペーサ440のようにブロック状部材でもよく、形状は任意である。
また、前記実施例では、生産された年代や呼び径などによって被収容部としての空気弁3のフランジ31b、蓋部316,416の板厚寸法L4,L24,L41が基準板厚寸法と異なる(特に、空気弁のフランジ部や内蓋の厚み寸法が基準板厚寸法L2,L22,L42よりも薄い)場合に、被収容部の上面にスペーサ部材を取付ける形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、寸法誤差等により被収容部が所定位置よりも下方に配置された場合に、被収容部の上面にスペーサ部材を取付けることで保持部材により所定位置に配置できるようにしてもよい。
また、前記実施例1では、空気弁3のフランジ31bを固定ピン52により所定位置に保持する前に、位置決め用治具150を用いて所定位置に位置決めする形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、必ずしも位置決め用治具150を用いて所定位置に位置決めした後に保持部材により保持するものでなくてもよい。
また、前記実施例1では、空気弁3を流体管2の分岐部2bから撤去した後に、この空気弁3に換えて新型空気弁13を取付けていたが、これに限らず例えば、空気弁3を撤去した分岐部2bのフランジ2cに閉塞板を密封状に取付けてもよいし、消火栓などの流体管用機器を取付けてもよい。また、補修弁を介して新規空気弁を取付けてもよい。
また、前記実施例では、ノックボルト35を有する空気弁3を流体管2の分岐部2bから撤去したが、これに限らず例えば、新型空気弁13のような空気弁を撤去する際に、同様な方法を用いてもよい。