(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175571
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】センタレス研削方法及びセンタレス研削装置
(51)【国際特許分類】
B24B 5/18 20060101AFI20241211BHJP
B24B 5/24 20060101ALI20241211BHJP
B24B 5/30 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
B24B5/18 A
B24B5/24
B24B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093456
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000167222
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトマシンシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松原 航輝
(72)【発明者】
【氏名】吉山 俊次
【テーマコード(参考)】
3C043
【Fターム(参考)】
3C043AA08
3C043AA12
3C043AA13
3C043AA14
3C043CC03
3C043DD01
3C043DD03
3C043DD05
(57)【要約】
【課題】弾性変形を許容する棒状のワークの先端部に、振れ精度の悪化を招くことなく、連続する複数のテーパ面を可能な限り細く研削加工する。
【解決手段】センタレス研削方法は、第2テーパ面102よりも大径のテーパ形状に対応した径位置に砥石車2を配置する工程と、第2の調整車4によって支持された状態でワーク100を前進させることで、第1テーパ面101を仕上げ加工する工程と、第2テーパ面102の仕上げ形状に対応した径位置に砥石車2を配置する工程と、第2の調整車4によって支持された状態でワーク100を再び前進させることで、境界部103から第2テーパ面102にかけて仕上げ加工する工程と、を備える。第2の調整車4の外周面41は、第2テーパ面102に対応するように傾斜しているとともに、少なくとも第1テーパ面101を仕上げ加工するときに、第2テーパ面102の仕上げ形状に対応した径位置に配置される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性変形を許容する棒状のワークの先端部に、該ワークの軸方向に沿って先細りの第1テーパ面と、該第1テーパ面よりも小さなテーパ角を有するように傾斜した第2テーパ面と、を前記軸方向の先端側から基端側に向かって連続させたテーパ形状を加工するためのセンタレス研削方法であって、
前記第1及び第2テーパ面の各々に対応するように傾斜した砥面を有する砥石車を、前記軸方向に直交する径方向において、前記第1テーパ面の仕上げ形状に対応すると同時に、前記第2テーパ面よりも大径のテーパ形状に対応した第1の径位置に配置する工程と、
前記ワークを上方に変位させる摩擦力を付与するように回転する調整車によって支持された状態で、該ワークを前記軸方向に前進させることで、回転する前記砥石車によって前記第1テーパ面を仕上げ加工する工程と、
前記ワークを前記軸方向に後退させた後、前記砥石車を前記径方向に移動させることで、該径方向において、前記砥石車を、前記第2テーパ面の仕上げ形状に対応した第2の径位置に配置する工程と、
前記調整車によって支持された状態で前記ワークを前記軸方向に再び前進させることで、回転する前記砥石車により、前記第1テーパ面と前記第2テーパ面とが交差する境界部から前記第2テーパ面にかけて仕上げ加工する工程と、を備え、
前記調整車の外周面は、前記第2テーパ面に対応するように傾斜しているとともに、前記テーパ形状の加工に際し、前記砥面の反対側から前記先端部を回転支持し、
少なくとも前記第1テーパ面を仕上げ加工するときに、前記外周面を、前記砥面よりも前記径方向の内側に配置する
ことを特徴とするセンタレス研削方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたセンタレス研削方法において、
前記境界部から前記第2テーパ面にかけて仕上げ加工する工程を、前記砥石車における前記第1テーパ面に対応した前記砥面と、仕上げ加工済みの前記第1テーパ面と、を前記軸方向に離間させた状態で行う
ことを特徴とするセンタレス研削方法。
【請求項3】
請求項1に記載されたセンタレス研削方法において、
前記ワークの基軸部を、前記軸方向に沿って延びるブレードによって下方から支持し、
前記ブレードは、前記ワークを平面視したときに、該ワークにおいて前記第1テーパ面が加工される部位とは重なり合わないように配置される
ことを特徴とするセンタレス研削方法。
【請求項4】
請求項1に記載されたセンタレス研削方法において、
前記ワークの中心軸、前記砥石車の回転軸、及び前記調整車の回転軸は、前記中心軸を横断する断面視において、同一直線上に配置される
ことを特徴とするセンタレス研削方法。
【請求項5】
請求項1に記載されたセンタレス研削方法において、
少なくとも前記第1テーパ面を仕上げ加工するときに、前記外周面を、前記径方向において、前記第2テーパ面の仕上げ形状に対応した径位置に配置する
ことを特徴とするセンタレス研削方法。
【請求項6】
弾性変形を許容する棒状のワークの先端部に、該ワークの軸方向に沿って先細りの第1テーパ面と、該第1テーパ面よりも小さなテーパ角を有するように傾斜した第2テーパ面と、を前記軸方向の先端側から基端側に向かって連続させたテーパ形状を加工するためのセンタレス研削装置であって、
前記第1及び第2テーパ面の各々に対応するように傾斜した砥面を有する砥石車と、
前記ワークを上方に変位させる摩擦力を付与するように回転する調整車と、
前記ワークを前記軸方向に沿って移動させる移動機構と、
前記砥石車、前記調整車及び前記移動機構の動作を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記砥石車を、前記軸方向に直交する径方向において、前記第1テーパ面の仕上げ形状に対応すると同時に、前記第2テーパ面よりも大径のテーパ形状に対応した第1の径位置に配置する工程と、
前記調整車によって支持された状態で前記ワークを前記軸方向に前進させることで、回転する前記砥石車によって前記第1テーパ面を仕上げ加工する工程と、
前記ワークを前記軸方向に後退させた後、前記砥石車を前記径方向に移動させることで、該径方向において、前記砥石車を、前記第2テーパ面の仕上げ形状に対応した第2の径位置に配置する工程と、
前記調整車によって支持された状態で前記ワークを前記軸方向に再び前進させることで、回転する前記砥石車により、前記第1テーパ面と前記第2テーパ面とが交差する境界部から前記第2テーパ面にかけて仕上げ加工する工程と、を実行し、
前記調整車の外周面は、前記第2テーパ面に対応するように傾斜するとともに、前記テーパ形状の加工に際し、前記砥面の反対側から前記先端部を回転支持し、
少なくとも前記第1テーパ面を仕上げ加工するときに、前記外周面は、前記砥面よりも前記径方向の内側に配置される
ことを特徴とするセンタレス研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、センタレス研削方法及びセンタレス研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、センタレス研削方法の一例として、マイクロドリルのような棒状ワークの研削に適した、プッシュスルーフィード研削方法が開示されている。具体的に、特許文献1に開示されている方法は、ワークの基軸部を調整車に押しつけて支持することにより、そのワークを強制的に回転させながら、砥石車に向けて軸方向へ送り込む。この研削方法では、ワークの先端軸部の最終形状に対応したプロフィールを有する砥石車が用いられるようになっている。
【0003】
また、下記特許文献2には、センタレス研削方法の別例が開示されている。具体的に、特許文献2に開示されている方法は、連続する複数のテーパ面を有する工作物を研削対象としたものであって、複数のテーパ面の各々に対応したプロフィールを有する砥石車と、該砥石車の反対側から工作物を回転支持する調整車と、を用いるように構成されている。
【0004】
前記特許文献2によると、1段目研削においては、複数のテーパ面の全てを同時に研削加工するとともに、2段目研削においては、砥石車を工作物に対して軸方向に所定量だけ相対的に移動させた後、複数のテーパ面のうち1段目研削で仕上げていない第2番目以降のテーパ面を研削加工する。このような方法を用いることで、複数のテーパ面を順番に仕上げていくことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-219135号公報
【特許文献2】特開2014-133296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者らは、弾性変形を許容する棒状のワークの先端部に、前記特許文献2の如きセンタレス研削方法によって、複数のテーパ面を仕上げ加工することを検討した。その結果、本願発明者らは、各テーパ面を可能な限り細く加工する(小径に加工する)ためには、従来のセンタレス研削方法では不都合であることを新たに見出した。
【0007】
すなわち、センタレス研削方法の場合、研削対象となるワークは、通常であれば、ブレードによって下方から支持されることになる。しかしながら、ブレードの薄厚化には限界があるため、各テーパ面を可能な限り細く加工するためには、少なくともワークの先端部については、ブレードによって下方から支持することができない。
【0008】
また、一般的なセンタレス研削方法の場合、いわゆるセンターハイト(砥石車の中心軸と調整車の中心軸を結んだ直線に対する、鉛直方向におけるワークの中心軸の高さ)はプラスとなる。この場合、ワークの先端部は、砥石車及び調整車によって下方から支持されることになる。しかしながら、各テーパ面を細くするほど、砥石車と調整車とが接近することになる。また、センターハイトを低くするほど、砥石車と調整車とを離間させることができる。そのため、砥石車と調整車との接触をさけるためには、各テーパ面を細くするにしたがって、センターハイトをより低く設定する必要がある。したがって、各テーパ面を可能な限り細くするためには、センターハイトをゼロ付近に設定する必要がある。センターハイトをゼロ付近に設定した場合、砥石車及び調整車は、ワークを下方から支持することができないと考えられてきた。
【0009】
このように、各テーパ面を可能な限り細くしようとした場合、各テーパ面が加工されるワークの先端部は、ブレード、砥石車及び調整車による下方からの支持を失うことになる。このことは、特に弾性変形を許容するワークを研削対象としたときに、不都合を招く要因となる。
【0010】
つまり、弾性変形を許容するワークの場合、その先端部を研削加工しようとしたときに、たわみ(弾性変形)によって下方向に逃げる可能性がある。下方向への“逃げ”は、通常のセンタレス研削方法であれば、前述のようにブレード、砥石車及び調整車が下方から支持することによって防がれるところ、それらの支持を失った状態では、最早防ぐことはできないと考えられてきた。このような逃げは、研削加工に際して振れ精度の悪化を招くため不都合である。
【0011】
本開示は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、弾性変形を許容する棒状のワークの先端部に、振れ精度の悪化を招くことなく、連続する複数のテーパ面を可能な限り細く研削加工することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の第1の態様は、弾性変形を許容する棒状のワークの先端部に、該ワークの軸方向に沿って先細りの第1テーパ面と、該第1テーパ面よりも小さなテーパ角を有するように傾斜した第2テーパ面と、を前記軸方向の先端側から基端側に向かって連続させたテーパ形状を加工するためのセンタレス研削方法に係る。このセンタレス研削方法は、前記第1及び第2テーパ面の各々に対応するように傾斜した砥面を有する砥石車を、前記軸方向に直交する径方向において、前記第1テーパ面の仕上げ形状に対応すると同時に、前記第2テーパ面よりも大径のテーパ形状に対応した第1の径位置に配置する工程と、前記ワークを上方に変位させる摩擦力を付与するように回転する調整車によって支持された状態で、該ワークを前記軸方向に前進させることで、回転する前記砥石車によって前記第1テーパ面を仕上げ加工する工程と、前記ワークを前記軸方向に後退させた後、前記砥石車を前記径方向に移動させることで、該径方向において、前記砥石車を、前記第2テーパ面の仕上げ形状に対応した第2の径位置に配置する工程と、前記調整車によって支持された状態で前記ワークを前記軸方向に再び前進させることで、回転する前記砥石車により、前記第1テーパ面と前記第2テーパ面とが交差する境界部から前記第2テーパ面にかけて仕上げ加工する工程と、を備える。
【0013】
そして、前記第1の態様によれば、前記調整車の外周面は、前記第2テーパ面に対応するように傾斜しているとともに、前記テーパ形状の加工に際し、前記砥面の反対側から前記先端部を回転支持し、前記センタレス研削方法は、少なくとも前記第1テーパ面を仕上げ加工するときに、前記外周面を、前記砥面よりも前記径方向の内側に配置する。
【0014】
前記第1の態様によると、第1テーパ面は、第2テーパ面よりも先端側に位置する。そのため、第1テーパ面は、第2テーパ面よりもたわみ変形が懸念される。したがって、第1テーパ面を可能な限り細くしようとしたときに、前述のような“逃げ”の発生が、より一層懸念されることになる。そこで、第1テーパ面の仕上げ加工に際し、砥石車については、第1テーパ面の仕上げ加工に適した第1の径位置(第2テーパ面よりも大径のテーパ径状に対応した径位置)に配置する一方、調整車については、砥石車よりも径方向の内側に配置する。
【0015】
このように配置することと、前記第1の態様のように設定された調整車の回転方向とを考慮すると、ワークには、調整車に乗り上げさせるような摩擦力が付与されることになる。
【0016】
そうした摩擦力が付与されることで、ワークの先端部は、センターハイトをゼロ又はゼロ付近に設定したとしても、調整車によって下方から持ち上げるように支持することができ、センターハイトをプラスに設定したものとみなすことができる。その結果、下方向への“逃げ”の発生を抑制することができるため、振れ精度の悪化を招くことなく、連続する複数のテーパ面を可能な限り細く研削加工することが可能になる。
【0017】
さらに、前記第1の態様によると、下方向への“逃げ”の発生が抑制されることで、ワークの送り速度を相対的に早く設定することができるようになる。そのため、前記第1の態様は、サイクルタイムの短縮にも資する。
【0018】
また、本開示の第2の態様によれば、前記センタレス研削方法は、前記境界部から前記第2テーパ面にかけて仕上げ加工する工程を、前記砥石車における前記第1テーパ面に対応した前記砥面と、仕上げ加工済みの前記第1テーパ面と、を前記軸方向に離間させた状態で行う、としてもよい。
【0019】
前記第2の態様によると、境界部から第2テーパ面にかけて仕上げ加工する際に、第1テーパ面を仕上げ加工された状態に保持することができる。このことは、研削精度の向上に資する。
【0020】
また、本開示の第3の態様によれば、前記センタレス研削方法は、前記ワークの基軸部を、前記軸方向に沿って延びるブレードによって下方から支持し、前記ブレードは、前記ワークを平面視したときに、該ワークにおいて前記第1テーパ面が加工される部位とは重なり合わないように配置される、としてもよい。
【0021】
前記第3の態様によると、前記第1テーパ面が加工される部位の下方には、ブレードが配置されない。言い換えると、当該部位の真下に、ブレードが配置されないようになっている。ブレードを配置しない分だけ、第1テーパ面を可能な限り細くすることが可能になる。
【0022】
また、本開示の第4の態様によれば、前記ワークの中心軸、前記砥石車の回転軸、及び前記調整車の回転軸は、前記中心軸を横断する断面視において、同一直線上に配置される、としてもよい。
【0023】
前記第4の態様によると、センターハイトは、ゼロ又は実質的にゼロに設定される。センターハイトをゼロ付近に設定したことで、砥石車と調整車を径方向に接近させることができ、第1テーパ面を可能な限り細くすることが可能になる。
【0024】
また、本開示の第5の態様によれば、前記センタレス研削方法は、少なくとも前記第1テーパ面を仕上げ加工するときに、前記外周面を、前記径方向において、前記第2テーパ面の仕上げ形状に対応した径位置に配置する、としてもよい。
【0025】
前記第5の態様によると、第1テーパ面の仕上げ加工に際し、外周面は、砥石車よりも径方向の内側に位置することになる。これにより、ワークの先端部を、調整車によって下方から持ち上げるように支持することができる。
【0026】
また、本開示の第6の態様によれば、弾性変形を許容する棒状のワークの先端部に、該ワークの軸方向に沿って先細りの第1テーパ面と、該第1テーパ面よりも小さなテーパ角を有するように傾斜した第2テーパ面と、を前記軸方向の先端側から基端側に向かって連続させたテーパ形状を加工するためのセンタレス研削装置に係る。このセンタレス研削装置は、前記第1及び第2テーパ面の各々に対応するように傾斜した砥面を有する砥石車と、前記ワークを上方に変位させる摩擦力を付与するように回転する調整車と、前記ワークを前記軸方向に沿って移動させる移動機構と、前記砥石車、前記調整車及び前記移動機構の動作を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記砥石車を、前記軸方向に直交する径方向において、前記第1テーパ面の仕上げ形状に対応すると同時に、前記第2テーパ面よりも大径のテーパ形状に対応した第1の径位置に配置する工程と、前記調整車によって支持された状態で前記ワークを前記軸方向に前進させることで、回転する前記砥石車によって前記第1テーパ面を仕上げ加工する工程と、前記ワークを前記軸方向に後退させた後、前記砥石車を前記径方向に移動させることで、該径方向において、前記砥石車を、前記第2テーパ面の仕上げ形状に対応した第2の径位置に配置する工程と、前記調整車によって支持された状態で前記ワークを前記軸方向に再び前進させることで、回転する前記砥石車により、前記第1テーパ面と前記第2テーパ面とが交差する境界部から前記第2テーパ面にかけて仕上げ加工する工程と、を実行する。
【0027】
そして、前記第6の態様によれば、前記調整車の外周面は、前記第2テーパ面に対応するように傾斜するとともに、前記テーパ形状の加工に際し、前記砥面の反対側から前記先端部を回転支持し、少なくとも前記第1テーパ面を仕上げ加工するときに、前記外周面は、前記砥面よりも前記径方向の内側に配置される。
【0028】
前記第6の態様によると、弾性変形を許容する棒状のワークの先端部に、振れ精度の悪化を招くことなく、連続する複数のテーパ面を可能な限り細く研削加工することができる。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、本開示によれば、弾性変形を許容する棒状のワークの先端部に、振れ精度の悪化を招くことなく、連続する複数のテーパ面を可能な限り細く研削加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】テーパ形状の加工前後のワークを例示する図である。
【
図2】センタレス研削装置を例示する平面図である。
【
図5】センタレス研削方法を例示するフローチャートである。
【
図6A】第1配置工程を説明するための平面図である。
【
図6B】第1研削工程を説明するための平面図である。
【
図6D】第2配置工程を説明するための平面図である。
【
図6E】第2研削工程を説明するための平面図である。
【
図7】各工程におけるワークの先端形状を説明するための平面図である。
【
図8】センタレス研削装置の構成を例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は例示である。
【0032】
図1は、テーパ形状の加工前後のワーク100を例示する図である。また、
図2はセンタレス研削装置1を例示する平面図であり、
図3は
図2のA-A断面図であり、
図4は
図2のB-B断面図である。そして、
図8は、センタレス研削装置1の構成を例示するブロック図である。
【0033】
図1に示すように、本実施形態では、棒状のワーク100が研削対象とされる。このワーク100は、弾性変形を許容する。例えば、ワーク100は、弾性を有する金属製の棒状部材としてもよい。
【0034】
以下、ワーク100の中心軸Owに沿った方向(例えば、
図1及び
図2の紙面上下方向)を「ワーク100の軸方向」又は単に「軸方向」とし、その軸方向の一端側(例えば、
図1及び
図2の紙面上側)を「軸方向の先端側」又は単に「先端側」とし、その軸方向の他端側(例えば、
図1及び
図2の紙面下側)を「軸方向の基端側」又は単に「基端側」とする。なお、
図2に示すように、
図3のA-A断面、及び
図4のB-B断面は、いずれもワーク100を基端側から先端側に向かって見た断面に相当する。
【0035】
同様に、ワーク100の中心軸Ow及び前記軸方向に直交する方向(例えば、
図1及び
図2の紙面左右方向)を「ワーク100の径方向」又は単に「径方向」とし、その径方向に沿って中心軸Owに向かう一側を「径方向の内側」又は単に「内側」とし、その径方向に沿って中心軸Owから離れる他側を「径方向の外側」又は単に「外側」とする。
【0036】
その他、以下の記載における「上」及び「下」とは、それぞれ、鉛直方向に沿った「上」及び「下」をいう。
【0037】
ここで
図1に戻ると、同図に示すように、棒状のワーク100の先端部100aに、連続した複数のテーパ面101,102を含んだテーパ形状が研削加工されるようになっている。このテーパ形状は、
図1の囲み部に示すように、第1テーパ面101と、第2テーパ面102と、を前記軸方向の先端側から基端側に向かって連続させたものである。
【0038】
ここで、第1テーパ面101は、軸方向に沿って先細りのテーパ面である。第1テーパ面101は、先端側に頂点が配置された円錐形状を有している。第2テーパ面102は、軸方向に沿って先細りのテーパ面である。第2テーパ面102は、先端側に頂面が配置された円錐台形状を有している。第2テーパ面102の先端部と、第1テーパ面101の基端部とが連続している。
【0039】
また、第2テーパ面102は、第1テーパ面101よりも小さなテーパ角を有するように傾斜している。つまり、第1テーパ面101のテーパ角をθ1とし、第2テーパ面102のテーパ角をθ2とすると、θ1>θ2の関係が成立する。
【0040】
また、θ1>θ2の関係が成立することから、第1テーパ面101と第2テーパ面102とが交差する境界部103は、所望の寸法通りに仕上げ加工された状態では、いわゆるエッジが立つように、径方向の外側に向かって突出することになる。
【0041】
また、ワークWの全長Lwに対する、その先端部100aの長さLtの比(=Lt/Lw)は、例えば1/2以下、詳しくは1/3以上かつ1/2以下に設定されるようになっている。全長Lwは、例えば10mm以上かつ80mm以下としてもよい。
【0042】
また、ワークWの直径φAに対する、テーパ形状の仕上がり径(特に、境界部103における直径)φBの比(=φB/φA)は、例えば1/4以下、詳しくは10/100以上かつ15/100以下に設定されるようになっている。直径φAは、例えば0.5mm以上かつ1.5mm以下としてもよい。
【0043】
センタレス研削装置1は、棒状のワーク100の先端部100aに、前述した第1及び第2テーパ面101,102を含んだテーパ形状を加工するための装置である。このセンタレス研削装置1は、いわゆるセンタレス研削加工による研削加工を行うことができる。
【0044】
センタレス研削加工を実現すべく、本実施形態に係るセンタレス研削装置1は、砥石車2と、第1の調整車3と、第2の調整車(調整車)4と、ブレード5と、押さえローラ6と、送り装置(移動機構)7と、ガイド8と、砥石移動装置9と、制御装置10と、を備えている。
【0045】
砥石車2は、先端側に向かって緩やかに拡径させた略円柱形状を有しており、制御装置10からの制御信号に基づいて回転駆動される。回転する砥石車2によって、ワーク100の先端部100aを研削することができる。その際、砥石車2は、ワーク100に対し、該ワーク100を下方に変位させる摩擦力を付与するように回転する(
図3~
図4の矢印R1を参照)。
【0046】
ここで、砥石車2の回転軸(以下、これを「第1回転軸」という)O1は、軸方向に沿って延びている。この第1回転軸O1は、ワーク100の中心軸Owと平行である。
【0047】
また、砥石車2は、第1及び第2テーパ面101,102の各々に対応するように傾斜した砥面21を有している。この砥面21は、砥石車2の外周面によって構成されており、ワーク100の先端部100aに対して側方(
図2~
図4の紙面左方)から接触し、これを研削する。
【0048】
詳しくは、砥面21は、少なくとも、第1砥面21aと、第2砥面21bと、を有している。第1砥面21aは、第1テーパ面101、特に第1テーパ面101の仕上げ形状に対応したプロフィールを有している。第2砥面21bは、第2テーパ面102、特に第2テーパ面102の仕上げ形状に対応したプロフィールを有している。
【0049】
また、砥石車2の外周面のうち、砥面21よりも先端側に位置する外周面には、逃がし形状22が構成されている。この逃がし形状22は、ワーク100及び第2の調整車4の双方に対して離間するように配置される。
【0050】
第1の調整車3は、略円柱形状を有しており、制御装置10からの制御信号に基づいて回転駆動される。回転する第1の調整車3の外周面31によって、ワーク100の基軸部(ワーク100において、先端部100aよりも基端側に位置する部分であって、いわゆるシャンク部)100bを、回転させながら支持することができる。
【0051】
具体的に、第1の調整車3は、摩擦係数の高いラバー製とすることができる。例えば、第1の調整車3は、砥粒をラバーで結合したラバー砥石としてもよい。
【0052】
ここで、第1の調整車3の回転軸は、軸方向に沿って延びている。この回転軸は、ワーク100の中心軸Ow及び第1回転軸O1に対し、平面視で平行に延びている。また、第1の調整車3の回転軸は、後述の第2回転軸O2と同様に、基端側(
図2の紙面下側)が若干低くなるように、水平面(
図2の紙面に平行な平面)に対して若干傾斜している。これにより、以下の如き推力が発揮される。
【0053】
詳しくは、第1の調整車3を回転させつつ、その外周面31を基軸部100bに接触させると、水平面に対する回転軸の傾斜角に応じて、基軸部100bに推力が付与される。この推力は、軸方向において、送り装置7の送り方向(
図2の紙面上方)に対して逆方向(
図2の紙面下方)となるように設定されている。
【0054】
第2の調整車4は、その軸方向中央部を拡径させた略円柱形状を有しており、制御装置10からの制御信号に基づいて回転駆動される。回転する第2の調整車4の外周面41によって、ワーク100の先端部100aを、回転させながら支持することができる。第2の調整車4を設けることで、砥石車2が及ぼす研削負荷(法線力)によるワーク100の逃げを抑制することができる。また、第2の調整車4は、ワーク100に対し、これを上方に変位させる摩擦力を付与するように回転する(
図3~
図4の矢印R2を参照)。
【0055】
具体的に、第2の調整車4は、ラバー製とすることができる。第2の調整車4は、第1の調整車3よりも砥粒の粒径が小さくなるようにすればよい。一般に、砥粒の粒径が小さくなるほど、ワーク100への砥粒の食い込みが小さくなる。この場合、ワーク100への食い込みが小さくなる分、スリップ(滑り)が生じ易くなると考えられる。ワーク100の先端部100aを受ける第2の調整車4を滑り易くすることで、ワーク100のねじれを抑制することができる。
【0056】
ここで、第2の調整車4の回転軸(以下、これを「第2回転軸」という)O2は、軸方向に沿って延びている。この第2回転軸O2は、前記中心軸Ow、第1回転軸O1、及び第1の調整車3の回転軸に対し、平面視で平行に延びている。また、第2回転軸O2は、基端側(
図2の紙面下側)が若干低くなるように、水平面(
図2の紙面に平行な平面)に対して若干傾斜している。
【0057】
また、
図2~
図3に示すように、ワーク100の中心軸Ow、第1回転軸O1、及び第2回転軸O2は、中心軸Owを横断する断面視において、同一直線上に配置されている。さらに、中心軸Ow、第1回転軸O1、及び第2回転軸O2は、前記断面視において、上下方向において同じ高さ位置に配置されている。ここで、第1回転軸O1と第2回転軸O2を結んだ直線L1は、水平面に沿って延びている。すなわち、いわゆるセンターハイト(直線L1に対する、上下方向におけるワーク100の中心軸Owの高さ)は、本実施形態ではゼロ又は実質的にゼロに設定されている。
【0058】
また、第2の調整車4の回転方向は、
図3及び
図4に示す横断面上では、砥石車2及び第1の調整車3の回転方向と同じである。具体的に、ワーク100の中心軸Owに直交し、かつ、該ワーク100を基端側から先端側に向かって見た断面(
図3のA-A断面、及び
図4のB-B断面)を見たときに、第2の調整車4の回転方向(
図3~
図4の矢印R2)は、砥石車2の回転方向(
図3~
図4の矢印R1)と同様に、本実施形態では時計回り方向となっている。さらに、この断面視において、ワーク100の回転方向(
図3~
図4の矢印Rw)は、本実施系では反時計回り方向となっている。
【0059】
また、第2の調整車4の外周面41は、第2テーパ面102に対応するように傾斜している。この外周面41は、前記テーパ形状の加工に際し、砥石車2の砥面21の反対側からワーク100の先端部100aを回転支持(回転させながら支持)するようになっている。より詳細には、外周面41は、ワーク100の先端部100aに対し、側方かつ砥面21の反対側(
図2~
図4の紙面右方)から接触し、これを回転させながら支持する。
【0060】
また、第2の調整車4の外周面41よりも先端側に位置する外周面には、逃がし形状42が構成されている。この逃がし形状42は、ワーク100及び砥石車2の双方に対して離間するように配置される。
【0061】
ブレード5は、
図2~
図4に示すように、第1の調整車3とともに、ワーク100の基軸部100bを支持する。特に、本実施形態に係るブレード5は、軸方向に沿って延びており、基軸部100bを下方から支持するように構成されている。すなわち、第2の調整車4がワーク100に付与する摩擦力は、ワーク100及びブレード5を、上下方向において互いに離間させる方向に作用することになる。
【0062】
また、
図2と、
図4の2点鎖線とから見て取れるように、このブレード5は、ワーク100を平面視したときに、該ワーク100において第1テーパ面101が加工される部位(言い換えると、第1砥面21aに向かい合う部位)とは重なり合わないように配置されている。つまり、ワーク100の先端部100aのうち、少なくとも第1テーパ面101が加工される部位の真下には、ブレード5が配置されないようになっている。また、先端部100aと基軸部100bとの境界部(第2テーパ面102が加工される部位の基端部)の真下には、ブレード5の先端部が位置するようになっている。なお、ワークの先端部100aにおいて、第1テーパ面101が加工される部位と、第2テーパ面102が加工される部位は、双方とも、ブレード5によって下方から支持されないようになっている。
【0063】
押さえローラ6は、側方からワーク100を押さえ込むことで、該ワーク100を第1の調整車3に押しつけて支持する。具体的に、本実施形態に係る押さえローラ6は、ワーク100の側面に、第1の調整車3の反対側(
図2の紙面左側)から押し付けられるように構成されている。
【0064】
送り装置7は、ワーク100を軸方向に沿って移動させる移動機構であって、軸方向の基端側からワーク100を押し出すことで、該ワーク100を軸方向の先端側に送り込む。具体的に、本実施形態に係る送り装置7は、第1の調整車3がワーク100に及ぼす推力の反対方向(基端側から先端側へ向かう方向)へと、ワーク100を押し出すように構成されている。
【0065】
ガイド8は、軸方向に沿って延びており、軸方向に沿ったワーク100の移動を案内する。
図2に示す例では、ワーク100を挟持するような2本1組の部材によってガイド8が構成されている。
【0066】
砥石移動装置9は、
図2の両矢印Cに示すように、砥石車2を径方向に沿って移動させる。具体的に、本実施形態に係る砥石移動装置9は、例えば
図3~
図4に示すように、砥石車2を下方から支持する砥石台によって構成されている。なお、砥石台によって砥石移動装置9を構成することは、必須ではない。
【0067】
制御装置10は、CPU、メモリ及び入出力バスを有しており、例えばCNC装置によって構成されている。この制御装置10は、
図8に示すように、砥石車2、第1の調整車3、第2の調整車4、押さえローラ6、送り装置7、及び砥石移動装置9と電気的に接続されている。制御装置10は、揮発性及び/又は不揮発性の記憶装置11に予め設定された数値制御データ、及び/又は、操作盤12を介して入力された数値制御データに基づいて、砥石車2、第1の調整車3、第2の調整車4、押さえローラ6、送り装置7、及び砥石移動装置9の動作を制御する。
【0068】
ところで、後述の
図6A~
図6Eに拡大して示すように、第1砥面21aと第2砥面21bとのつなぎ目21cには、摩耗によるアールだれが生じ得る。そのため、砥面21のプロフィールをワーク100に転写するだけでは、そのアールだれも転写されてしまう可能性がある。このような可能性は、
図1に示す境界部103のエッジを立たせるには不都合である。
【0069】
さらに、従来知られたセンタレス研削方法では、弾性変形を許容する棒状のワーク100の先端部100aに、
図1に示したような連続する複数のテーパ面を可能な限り細く研削加工しようとしたときに、当該先端部100aの逃げに起因した振れ精度の悪化が懸念される。
【0070】
本願発明者らは、センタレス研削方法の構成等に工夫を凝らすことで、前述の如き課題を克服するに至った。以下、本実施形態に係る工夫点について、詳細に説明する。
【0071】
図5は、センタレス研削方法を例示するフローチャートである。また、
図6A~
図6Eは、それぞれ、本実施形態に係るセンタレス研削方法を説明するための平面図である。具体的に、
図6Aは第1配置工程を説明するための平面図であり、
図6Bは第1研削工程を説明するための平面図であり、
図6Cは後退工程を説明するための平面図であり、
図6Dは第2配置工程を説明するための平面図であり、
図6Eは第2研削工程を説明するための平面図である。そして、
図7は、各工程におけるワーク100の先端形状を説明するための平面図である。
図6A~
図6Eに示す各工程は、制御装置10が実行する。
【0072】
まず、制御装置10は、
図5のステップS1及び
図6Aに示す第1配置工程を実行する。この第1配置工程は、前述のように定義された径方向において、砥石車2を第1の径位置P1に配置する工程である。ここで、第1の径位置P1とは、第1テーパ面101の仕上げ形状(特に、最終的な仕上げ形状)に対応すると同時に、第2テーパ面102、特に第2テーパ面102の仕上げ形状よりも大径のテーパ形状に対応するように設定された径位置をいう。
【0073】
なお、ここでいう「径位置」とは、径方向における、中心軸Owに対する第1回転軸O1の相対位置をいうが、そうした定義には限定されない。例えば、径方向における、第2回転軸O2に対する第1回転軸O1の相対位置を「径位置」とみなしてもよい。このことは、後述の第2の径位置P2についても同様である。
【0074】
続いて、制御装置10は、第1配置工程が完了した後に、
図5のステップS2及び
図6Bに示す第1研削工程を実行する。この第1研削工程は、
図6Bの矢印D1に示すように、ワーク100を軸方向に前進(先端側への移動)させることで、回転する砥石車2によって第1テーパ面101を仕上げ加工する工程である。ここで、ワーク100の前進は、第1及び第2の調整車3,4によって支持された状態で行われるようになっている。この前進は、送り装置7の動作を制御することで行うことができる。また、本実施形態に係る第1研削工程は、回転する砥石車2によって、第1テーパ面101を仕上げ加工すると同時に、第2テーパ面102を粗加工する。後者の粗加工は、第2テーパ面102を、その仕上げ径よりも大径に加工するものである。
【0075】
第1研削工程を実行することで、
図7(a)の斜線に示した領域Waが、ワーク100の先端部100aから削り取られる。しかしながら、この第1研削工程は、砥石車2を第1の径位置P1に配置した状態で行わるようになっている。そのため、
図7(b)に示すように、ワークの100の先端部100aには、第1テーパ面101こそ最終形状に加工されるものの、境界部103及び第2テーパ面102に対応する部位については、それぞれ、仮の形状103’,102’が転写されることになる。
【0076】
ここで、仮の境界部103’は、
図6A等に示したつなぎ目21cが転写されたものであり、アールだれが生じた形状となる。仮の第2テーパ面102’は、第2テーパ面102と同角度で傾斜した母線を有するものの、第2テーパ面102よりも大径(第2テーパ面102よりも太い)テーパ形状である。
【0077】
すなわち、仮の仕上がり径(特に、仮の境界部103’における直径)φCは、前述した所望の仕上がり径φBよりも大きい。所望の仕上がり径φBに対する仮の仕上がり径φCの比(=φB/φC)は、例えば80/100以下、詳しくは60/100以上かつ80/100以下に設定されるようになっている。
【0078】
続いて、制御装置10は、第1研削工程が完了した後に、
図5のステップS3及び
図6Cに示す後退工程を実行する。この後退工程は、
図6Cの矢印D2に示すように、ワーク100を軸方向に後退(基端側への移動)させることで、回転する砥石車2から、ワーク100を離間させる工程である。ここで、ワーク100の後退は、送り装置7を基端側へ移動させるとともに、第1の調整車3からワーク100へと前記推力を付与することで行うことができる。
【0079】
続いて、制御装置10は、後退工程が完了した後に、
図5のステップS4及び
図6Dに示す第2配置工程を実行する。この第2配置工程は、
図6Dの矢印D3に示すように、砥石車2を径方向(特に、径方向の外側から内側)に移動させることで、該径方向において、砥石車2を第2の径位置P2に配置する工程である。ここで、第2の径位置P2とは、第1テーパ面101よりも小径のテーパ形状に対応すると同時に、第2テーパ面102の仕上げ形状(特に、最終的な仕上げ形状)に対応するように設定された径位置をいう。また、この第2配置工程における砥石車2の移動量は、仮の仕上がり径φCから所望の仕上がり径φBを減算した値(=φC-φB)となるように設定されている。このように移動量を設定することで、後述の第2研削工程に際し、所望の仕上がり径φBを実現することができる。
【0080】
続いて、制御装置10は、第2配置工程が完了した後に、
図5のステップS5及び
図6Eに示す第2研削工程を実行する。この第2研削工程は、
図6Eの矢印D4に示すように、ワーク100を軸方向に再び前進させることで、回転する砥石車2により、境界部103から第2テーパ面102にかけて仕上げ加工する工程である。制御装置10は、この第2研削工程を、第1砥面21aと、仕上げ加工済みの第1テーパ面101と、を離間させた状態で行う。ここで、ワーク100の前進は、第1及び第2の調整車3,4によって支持された状態で行われるようになっている。この前進は、送り装置7の動作を制御することで行うことができる。
【0081】
第2研削工程を実行することで、
図7(b)の斜線に示した領域Wbが、仮の境界部103’、及び仮の第2テーパ面102’から削り取られる。この第2研削工程は、砥石車2を、第2の径位置P2に配置した状態で行われるようになっている。
【0082】
また、
図6Eに示すように、第2の径位置P2において、第1テーパ面101と第1砥面21aとの間には、軸方向に隙間E1が存している。そのため、
図7(c)に示すように、第1テーパ面101については、第1砥面21aによって削り取られずに保持される一方、仮の第2テーパ面102’については、第2砥面21bによって削り取られた結果、最終的な仕上げ形状に対応した第2テーパ面102に加工されることになる。
【0083】
また、仮の境界部103’についても、つなぎ目21cではなく、第2砥面21bによって削り取られることになる。その結果、
図7(c)に示すように、仮の境界部103’は、そのエッジを立たせた所望の境界部103に加工されることになる。
【0084】
そして、本実施形態に係るセンタレス研削方法及びセンタレス研削装置1は、少なくとも第1テーパ面101を仕上げ加工するとき(つまり、少なくとも第1研削工程を行うとき)に、第2の調整車4の外周面41を、砥石車2の砥面21よりも径方向の内側に配置する。
【0085】
具体的に、本実施形態に係るセンタレス研削方法及びセンタレス研削装置1は、前記外周面41を、径方向において、第2テーパ面102の仕上げ形状に対応した第3の径位置(径位置)P3に配置する。なお、外周面41を第3の径位置P3に配置することは、必須ではない。例えば、第1の調整車3と第2の調整車4を別々のスピンドルにするとともに、両調整車3,4のうち第2の調整車4のみを径方向に移動させることで、外周面41を第3の径位置P3に配置させずとも、該外周面41を砥面21よりも径方向の内側に配置することが可能になる。
【0086】
特に、
図6A~
図6Eの各図に示す例では、第2の調整車4は、第1配置工程、第1研削工程、後退工程、第2配置工程及び第2研削工程の各々に際し、第3の径位置P3に保持されるように構成されている。
【0087】
ところで、弾性変形を許容するワーク100の場合、その先端部100aを研削加工しようとしたときに、たわみ(弾性変形)によって下方向に逃げる可能性がある。下方向への“逃げ”は、通常のセンタレス研削方法であれば、ブレード5、砥石車2及び第2の調整車4が、ワーク100を下方から支持することによって防がれる。しかしながら、
図2~
図4に示したように、砥石車2及び第2の調整車4がワーク100の側方に配置されておりかつブレード5による下方からの支持を失った状態では、そうした“逃げ”は、最早防ぐことはできないと考えられてきた。この“逃げ”は、研削加工に際して振れ精度の悪化を招くため不都合である。
【0088】
これに対し、前記実施形態によると、第1研削工程によって仕上げ加工される第1テーパ面101は、第2テーパ面102よりも先端側に位置する。そのため、第1テーパ面101は、第2テーパ面102よりもたわみ変形が懸念される。したがって、第1テーパ面101を可能な限り細くしようとしたときに、前述のような“逃げ”の発生が、より一層懸念されることになる。そこで、
図6A~
図6Cに例示したように、第1テーパ面101の仕上げ加工に際し、砥石車2については、第1テーパ面101の仕上げ加工に適した第1の径位置(第2テーパ面102よりも大径のテーパ径状に対応した径位置)P1に配置する一方、第2の調整車4については、第2テーパ面102の仕上げ形状に対応した第3の径位置P3に配置する。
【0089】
このように配置することで、第1テーパ面101の仕上げ加工に際し、第2の調整車4は、砥石車2よりも径方向の内側に位置することになる。そのことに加えて、
図4の矢印R2に示した第2の調整車4の回転方向とを考慮すると、ワーク100には、第2の調整車4に乗り上げさせるような摩擦力が付与されることになる。
【0090】
そうした摩擦力が付与されることで、ワーク100の先端部100aは、センターハイトをゼロ又はゼロ付近に設定したとしても、第2の調整車4によって下方から持ち上げるように支持することができ、センターハイトをプラスに設定したものとみなすことができる。その結果、下方向への“逃げ”の発生を抑制することができるため、振れ精度の悪化を招くことなく、連続する複数のテーパ面を可能な限り細く研削加工することが可能になる。
【0091】
さらに、前記実施形態によると、下方向への“逃げ”の発生が抑制されることで、ワーク100の送り速度を相対的に早く設定することができるようになる。このことは、サイクルタイムの短縮にも資する。
【0092】
さらに、前記実施形態によると、
図6Bに示すように、第1テーパ面101の略全域が、第1砥面21aによって一度に研削される一方、
図6Eに示すように、第2テーパ面102の略全域が、第2砥面21bによって一度に研削されるようになっている。このように構成することで、砥石幅(特に、軸方向の砥石幅)が狭い砥石を用いた従来のプッシュスルーフィード研削(マイクロドリル式の研削)に比べ、面粗度を低くすることができる。
【0093】
また、
図6Eに例示したように、第2研削工程の実行に際し、第1砥面21aと、仕上げ加工済みの前記第1テーパ面101と、を軸方向に離間させることで、第2研削工程を行ったときに、第1テーパ面101を仕上げ加工された状態に保持することができる。このことは、研削精度の向上に資する。
【0094】
また、
図4等に例示したように、ワーク100における第1テーパ面101が加工される部位の下方(真下)には、ブレード5が配置されない。ブレード5を配置しない分だけ、第1テーパ面101を可能な限り細くすることが可能になる。
【0095】
また、
図4等の直線L1に例示したように、ワーク100の中心軸Ow、第1回転軸O1、及び第2回転軸O2は、中心軸Owを横断する断面視において、同一直線上に配置される。これにより、センターハイトは、ゼロ又は実質的にゼロに設定される。センターハイトをゼロ付近に設定したことで、砥石車2と第2の調整車4を径方向に接近させることができ、第1テーパ面101を可能な限り細くすることが可能になる。
【符号の説明】
【0096】
1 センタレス研削装置
2 砥石車
21 砥面
21a 第1砥面
21b 第2砥面
3 第1の調整車
4 第2の調整車(調整車)
41 外周面
5 ブレード
7 送り装置(移動機構)
10 制御装置
100 ワーク
100a ワークの先端部
100b ワークの基軸部
101 第1テーパ面
102 第2テーパ面
103 境界部
L1 直線
P1 第1の径位置
P2 第2の径位置
P3 第3の径位置(径位置)
Ow ワークの中心軸
O1 第1回転軸(砥石の回転軸)
O2 第2回転軸(調整車の回転軸)