(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175579
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】建物管理システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/163 20240101AFI20241211BHJP
【FI】
G06Q50/16 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093470
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】521209007
【氏名又は名称】スターツアセットマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(74)【代理人】
【識別番号】100112520
【弁理士】
【氏名又は名称】林 茂則
(72)【発明者】
【氏名】清水 哲志
(72)【発明者】
【氏名】城戸 祐一
(72)【発明者】
【氏名】三上 賢司
(72)【発明者】
【氏名】平出 和也
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC29
5L050CC29
(57)【要約】
【課題】高価なコンピュータ資源を用いることなく、安価なデバイスを用いた簡単な操作で、迅速に修繕やリフォームの見積作成等の建物管理作業を行うことができる建物管理システムを提供する。
【解決手段】建物の部屋の内部を撮像するとともに、部屋内部の3次元データを生成する3次元データ生成機能と、3次元データから部屋内部のオブジェクトを生成するオブジェクト生成機能と、通信機能と、を備えた携帯情報端末から、建物情報を受信する通信部と、通信部が受信した建物情報に含まれる複数の壁オブジェクを組み合わせて、少なくとも単一の部屋を含む建物のホワイトモデルを生成するホワイトモデル生成部と、ホワイトモデルのオブジェクト、建具オブジェクトおよび住設機器オブジェクトから選択された少なくとも1つの対象オブジェクトにBIMデータを割り当てるBIMデータ割当部と、を有する建物管理システム、を提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の部屋の内部を撮像するとともに、撮像点から被撮像物までの距離を測定することで前記部屋の内部の3次元データを生成する3次元データ生成機能と、前記3次元データから、前記部屋の壁の夫々に対応する壁オブジェクト、前記部屋に設置された単一または複数の建具の夫々に対応する建具オブジェクトおよび前記部屋に配置された単一または複数の住設機器の夫々に対応する住設機器オブジェクトから選択された少なくとも1つのオブジェクトを生成するオブジェクト生成機能と、少なくとも単一の前記部屋についての複数の前記壁オブジェクトを含む建物情報を送信する通信機能と、を備えた携帯情報端末から、前記建物情報を受信する通信部と、
前記通信部が受信した前記建物情報に含まれる複数の前記壁オブジェクを組み合わせて、少なくとも単一の前記部屋を含む前記建物のホワイトモデルを生成するホワイトモデル生成部と、
前記ホワイトモデルのオブジェクト、前記建具オブジェクトおよび前記住設機器オブジェクトから選択された少なくとも1つの対象オブジェクトにBIMデータを割り当てるBIMデータ割当部と、を有する
建物管理システム。
【請求項2】
前記ホワイトモデルを構成する壁オブジェクトの少なくとも1つに補正を加えることで前記ホワイトモデルを整形するホワイトモデル整形部、をさらに有する
請求項1に記載の建物管理システム。
【請求項3】
前記ホワイトモデルのオブジェクト、前記建具オブジェクトおよび前記住設機器オブジェクトから選択された少なくとも1つのオブジェクトを表す2次元または3次元のオブジェクト画像を生成するオブジェクト画像生成部、をさらに有し、
前記通信部が、前記オブジェクト画像のデータ、および、前記BIMデータの全部または一部の一覧データを前記携帯情報端末またはその他の情報処理装置に送信する
請求項1に記載の建物管理システム。
【請求項4】
前記通信部が、前記オブジェクト画像に表された少なくとも1つのオブジェクトの指定および当該指定オブジェクトに対応するBIMデータを含む要求を前記携帯情報端末またはその他の情報処理装置から受信し、
前記要求に応答して、前記BIMデータ割当部が、前記指定オブジェクトのBIMデータを、前記要求に含まれるBIMデータに変更または新たに割り当てる
請求項3に記載の建物管理システム。
【請求項5】
前記BIMデータの全部または一部を参照し、前記建物の修繕・リフォーム費用の見積を生成する見積生成部、をさらに有し、
前記通信部が、前記見積のデータを前記携帯情報端末またはその他の情報処理装置に送信する
請求項1に記載の建物管理システム。
【請求項6】
前記ホワイトモデルのオブジェクト、前記建具オブジェクトおよび前記住設機器オブジェクトから選択された少なくとも1つの入力オブジェクトが入力され、推論の結果として、前記入力オブジェクトに応じた単一または複数のBIMデータ候補を出力する推論部、をさらに有し、
前記推論部は、前記入力オブジェクトおよび当該入力オブジェクトに対応する正解情報によって学習させた教師あり学習済みニューラルネットワーク、または、前記入力オブジェクトに対応するBIMデータが適切に分類出力されるよう学習させた教師なし学習済みニューラルネットワークを用いて推論する
請求項1に記載の建物管理システム。
【請求項7】
前記BIMデータ割当部は、前記割当対象オブジェクトを入力とする推論の結果として前記推論部が出力したBIMデータ候補のうち、最も確率が高いBIMデータを自動的に前記割当対象オブジェクトに割り当てる
請求項6に記載の建物管理システム。
【請求項8】
ユーザが使用する前記携帯情報端末またはその他の情報処理装置に、前記割当対象オブジェクトを入力とする推論の結果として前記推論部が出力したBIMデータ候補を送信する通信部、をさらに有し、
前記BIMデータ割当部は、前記通信部が送信した前記BIMデータ候補のうち、前記ユーザの選択操作に応じたBIMデータを前記割当対象オブジェクトに割り当てる
請求項6に記載の建物管理システム。
【請求項9】
前記ホワイトモデルのオブジェクト、前記建具オブジェクトおよび前記住設機器オブジェクトから選択された少なくとも1つの登録オブジェクトに対するグレードを登録するグレード登録部、をさらに有し、
前記BIMデータ割当部は、前記グレード登録部に登録された前記グレードに応じたBIMデータを前記登録オブジェクトに割り当てる
請求項1に記載の建物管理システム。
【請求項10】
前記ホワイトモデルのオブジェクト、前記建具オブジェクトおよび前記住設機器オブジェクトから選択された少なくとも1つの選択オブジェクトに関連するコメント情報を、前記選択オブジェクトに紐付けて保持するコメント情報保持部、をさらに有する
請求項1に記載の建物管理システム。
【請求項11】
前記コメント情報保持部が、前記選択オブジェクトにおける着目点の位置を示す位置情報をさらに保持し、
前記ホワイトモデルのオブジェクト、前記建具オブジェクトおよび前記住設機器オブジェクトから選択されたオブジェクトであって少なくとも前記選択オブジェクトを含む1以上のオブジェクトを表す2次元または3次元のオブジェクト画像を生成するオブジェクト画像生成部と、
前記選択オブジェクトの前記着目点を示す着目点画像を、前記オブジェクト画像に重畳して表示するよう生成する着目点画像生成部、をさらに有し、
前記通信部が、前記着目点画像が重畳された前記オブジェクト画像のデータおよび前記コメント情報を、前記携帯情報端末またはその他の情報処理装置に送信する
請求項10に記載の建物管理システム。
【請求項12】
前記コメント情報保持部が、前記コメント情報に関連する画像データまたは電子データをさらに保持し、
前記通信部が、前記オブジェクトの前記画像データおよび前記コメント情報に加え、前記画像データまたは前記電子データを、前記携帯情報端末またはその他の情報処理装置に送信する
請求項11に記載の建物管理システム。
【請求項13】
前記建物情報が、前記着目点に対応する位置の前記部屋の内部の撮像画像データを含み、
前記コメント情報保持部が、前記着目点に紐付けて、前記撮像画像データをさらに保持し、
前記通信部が、前記着目点画像が重畳された前記オブジェクト画像のデータおよび前記コメント情報に加えて、前記撮像画像データを送信する
請求項11に記載の建物管理システム。
【請求項14】
前記コメント情報保持部が、前記撮像画像データを取得したときの撮影位置および撮影方向を示す撮像情報を保持し、
前記着目点画像生成部が、前記着目点画像を生成するとともに、前記撮影位置および前記撮影方向を、前記オブジェクト画像に重畳して表示するよう生成する
請求項13に記載の建物管理システム。
【請求項15】
前記BIMデータ割当部が割り当てた前記対象オブジェクトの前記BIMデータを利用して、前記対象オブジェクトで構成される前記建物の平面図、立体図またはパース図を生成する図面・パース生成部、をさらに有する
請求項1に記載の建物管理システム。
【請求項16】
建物の部屋の内部を撮像するとともに、撮像点から被撮像物までの距離を測定することで前記部屋の内部の3次元データを生成する3次元データ生成機能と、前記3次元データから、前記部屋の壁の夫々に対応する壁オブジェクト、前記部屋に設置された単一または複数の建具の夫々に対応する建具オブジェクトおよび前記部屋に配置された単一または複数の住設機器の夫々に対応する住設機器オブジェクトから選択された少なくとも1つのオブジェクトを生成するオブジェクト生成機能と、少なくとも単一の前記部屋についての複数の前記壁オブジェクトを含む建物情報を送信する通信機能と、を備えた携帯情報端末から、前記建物情報を受信する通信機能と、
前記通信部が受信した前記建物情報に含まれる複数の前記壁オブジェクを組み合わせて、少なくとも単一の前記部屋を含む前記建物のホワイトモデルを生成するホワイトモデル生成機能と、
前記ホワイトモデルのオブジェクト、前記建具オブジェクトおよび前記住設機器オブジェクトから選択された少なくとも1つの対象オブジェクトにBIMデータを割り当てるBIMデータ割当機能と、
をコンピュータに実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物管理システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特許文献1は、社会インフラなどの構造物に関する業務(特に補修業務や点検業務など)を効率的に行うことを目的とする業務管理支援装置の発明を開示する。当該業務管理支援装置は、構造物を含む対象領域の現実映像を取得可能な撮像手段と、対象領域に対応する3次元形状情報を取得し、3次元形状情報に対して時間経過を伴う仮想作業が行われたことを示す仮想支援情報を生成する支援情報生成手段と、を有し、現実映像と仮想支援情報とがリアルタイムで同期され、表示手段に表示可能に構成される。当該発明によれば、作業の進捗状態などを可視化でき、複数の関係者間の合意形成(コンセンサス)、例えば、構造物の修理・修繕・新規補充などの作業における対象領域や作業内容、作業関連数量の見積などの合意形成が容易になる、とされている。
【0003】
たとえば、特許文献2は、原状回復等の内装工事における内装工事管理システムの発明を開示する。当該内装工事管理システムは、施主から提供された各物件内の図面情報を登録する図面登録手段と、実際に撮影された前記各物件内の撮影写真に基づく撮影情報を登録する写真登録手段と、前記図面登録手段と前記写真登録手段とで登録された図面及び/又は撮影写真に基づいて原状回復作業の決定及び各原状回復作業を行う範囲の寸法を設定し、設定された寸法情報から各原状回復作業に必要として選定された商品の少なくとも商品リスト、数量及び価格を表示した見積書を作成し、所望しない商品については削除して見積書を再作成する見積作成手段と、前記選定された商品と寸法情報とに基づいて原状回復作業スケジュールを作成する工程表作成手段と、を備える。当該発明によれば、工事関係者が集中的、効率的に発注、受注、作業することができ、同時に費用を明確化、低減し得る、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-155553号公報
【特許文献2】特開2020-155124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の業務管理支援装置によれば、仮想支援情報と現実映像がリアルタイムに同期されて表示されるので、作業進捗の把握等に有効であるといえる。しかし、当該文献に記載の発明に、仮想支援情報として3次元形状情報からオブジェクトを生成する旨の発想はあるものの、当該オブジェクトをBIM(Building Information Modeling)データと関連付ける発想はない。すなわち、本文献の業務管理支援装置により撮影され取得される3次元形状は、規格化等されない雑多な形状であり、生成されるオブジェクトも種々雑多なものであって、工事見積等を算出する場合の整理が煩雑になり、また、見積等の正確性にも支障を来す問題がある。また、多種多様なオブジェクトを管理するためにはコンピュータシステムの処理負荷が大きく、良好なシステム使用環境を提供するためには、高価なハードウエア資源を用意しなければならないデメリットがある。
【0006】
また、特許文献2の内装工事管理システムによれば、工事関係者が集中的、効率的に発注、受注、作業することができ、同時に費用を明確化、低減することができる。しかし、当該文献に記載の発明では、作業範囲の寸法設定は登録図面や撮影写真から行われるので、図面作成に手間がかかり、写真から読み取る寸法が正確でない場合がある。また、商品等をオブジェクトとして把握し、当該オブジェクトにBIMデータを関連付ける発想もない。よって、特許文献1の業務管理支援装置と同様に、工事見積等を算出場合の整理が煩雑になり、見積の正確性にも支障を来す問題がある。
【0007】
本願発明の目的は、建物室内の3次元データを簡単な操作で計測し取得するとともに、当該室内の壁、窓、扉、住宅設備等を、個別の属性情報を付与することができるオブジェクトとして取得した後、当該オブジェクトに、属性情報となるBIMデータを割り当てることで、高価なコンピュータ資源を用いることなく、安価なデバイスを用いて簡単な操作で、迅速に見積作成等の建物管理作業を行うことができる建物管理システムを提供することにある。
【0008】
なお、本発明におけるBIMデータは、建築情報のモデリング手法全般に用いる広義のBIMデータではなく、本発明の建物管理システムで利用する建物の保全管理やリフォーム等に関連したデータに限定した、簡易化された3次元データと属性情報をいうものとし、本明細書では、これらを総称してBIMデータと呼称するものとする。本発明におけるBIMデータの属性情報として、たとえば、対応するオブジェクトの共通コード、企業用コード、大・中・細分類、メーカー名、商品名、商品コード、サイズ、材料単価、工事単価、単位、備考、各種コード、付帯する修繕工事、等があげられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、建物の部屋の内部を撮像するとともに、撮像点から被撮像物までの距離を測定することで前記部屋の内部の3次元データを生成する3次元データ生成機能と、前記3次元データから、前記部屋の壁の夫々に対応する壁オブジェクト、前記部屋に設置された単一または複数の建具の夫々に対応する建具オブジェクトおよび前記部屋に配置された単一または複数の住設機器の夫々に対応する住設機器オブジェクトから選択された少なくとも1つのオブジェクトを生成するオブジェクト生成機能と、少なくとも単一の前記部屋についての複数の前記壁オブジェクトを含む建物情報を送信する通信機能と、を備えた携帯情報端末から、前記建物情報を受信する通信部と、前記通信部が受信した前記建物情報に含まれる複数の前記壁オブジェクを組み合わせて、少なくとも単一の前記部屋を含む前記建物のホワイトモデルを生成するホワイトモデル生成部と、前記ホワイトモデルのオブジェクト、前記建具オブジェクトおよび前記住設機器オブジェクトから選択された少なくとも1つの対象オブジェクトにBIMデータを割り当てるBIMデータ割当部と、を有する建物管理システムを提供する。
【0010】
前記ホワイトモデルを構成する壁オブジェクトの少なくとも1つに補正を加えることで前記ホワイトモデルを整形するホワイトモデル整形部、をさらに有してもよい。
【0011】
前記ホワイトモデルのオブジェクト、前記建具オブジェクトおよび前記住設機器オブジェクトから選択された少なくとも1つのオブジェクトを表す2次元または3次元のオブジェクト画像を生成するオブジェクト画像生成部、をさらに有し、前記通信部が、前記オブジェクト画像のデータ、および、前記BIMデータの全部または一部の一覧データを前記携帯情報端末またはその他の情報処理装置に送信してもよい。この場合、前記通信部が、前記オブジェクト画像に表された少なくとも1つのオブジェクトの指定および当該指定オブジェクトに対応するBIMデータを含む要求を前記携帯情報端末またはその他の情報処理装置から受信し、前記要求に応答して、前記BIMデータ割当部が、前記指定オブジェクトのBIMデータを、前記要求に含まれるBIMデータに変更または新たに割り当ててもよい。
【0012】
前記BIMデータの全部または一部を参照し、前記建物の修繕・リフォーム費用の見積を生成する見積生成部、をさらに有し、前記通信部が、前記見積のデータを前記携帯情報端末またはその他の情報処理装置に送信してもよい。
【0013】
前記ホワイトモデルのオブジェクト、前記建具オブジェクトおよび前記住設機器オブジェクトから選択された少なくとも1つの入力オブジェクトが入力され、推論の結果として、前記入力オブジェクトに応じた単一または複数のBIMデータ候補を出力する推論部、をさらに有し、前記推論部は、前記入力オブジェクトおよび当該入力オブジェクトに対応する正解情報によって学習させた教師あり学習済みニューラルネットワーク、または、前記入力オブジェクトに対応するBIMデータが適切に分類出力されるよう学習させた教師なし学習済みニューラルネットワークを用いて推論してもよい。この場合、前記BIMデータ割当部は、前記割当対象オブジェクトを入力とする推論の結果として前記推論部が出力したBIMデータ候補のうち、最も確率が高いBIMデータを自動的に前記割当対象オブジェクトに割り当ててもよい。あるいは、ユーザが使用する前記携帯情報端末またはその他の情報処理装置に、前記割当対象オブジェクトを入力とする推論の結果として前記推論部が出力したBIMデータ候補を送信する通信部、をさらに有し、前記BIMデータ割当部は、前記通信部が送信した前記BIMデータ候補のうち、前記ユーザの選択操作に応じたBIMデータを前記割当対象オブジェクトに割り当ててもよい。
【0014】
前記ホワイトモデルのオブジェクト、前記建具オブジェクトおよび前記住設機器オブジェクトから選択された少なくとも1つの登録オブジェクトに対するグレードを登録するグレード登録部、をさらに有し、前記BIMデータ割当部は、前記グレード登録部に登録された前記グレードに応じたBIMデータを前記登録オブジェクトに割り当ててもよい。
【0015】
前記ホワイトモデルのオブジェクト、前記建具オブジェクトおよび前記住設機器オブジェクトから選択された少なくとも1つの選択オブジェクトに関連するコメント情報を、前記選択オブジェクトに紐付けて保持するコメント情報保持部、をさらに有してもよい。この場合、前記コメント情報保持部が、前記選択オブジェクトにおける着目点の位置を示す位置情報をさらに保持し、前記ホワイトモデルのオブジェクト、前記建具オブジェクトおよび前記住設機器オブジェクトから選択されたオブジェクトであって少なくとも前記選択オブジェクトを含む1以上のオブジェクトを表す2次元または3次元のオブジェクト画像を生成するオブジェクト画像生成部と、前記選択オブジェクトの前記着目点を示す着目点画像を、前記オブジェクト画像に重畳して表示するよう生成する着目点画像生成部、をさらに有し、前記通信部が、前記着目点画像が重畳された前記オブジェクト画像のデータおよび前記コメント情報を、前記携帯情報端末またはその他の情報処理装置に送信してもよい。
【0016】
前記コメント情報保持部は、前記コメント情報に関連する画像データまたは電子データをさらに保持してもよく、この場合、前記通信部は、前記オブジェクトの前記画像データおよび前記コメント情報に加え、前記画像データまたは前記電子データを、前記携帯情報端末またはその他の情報処理装置に送信する。
【0017】
また、前記建物情報が、前記着目点に対応する位置の前記部屋の内部の撮像画像データを含み、前記コメント情報保持部が、前記着目点に紐付けて、前記撮像画像データをさらに保持し、前記通信部が、前記着目点画像が重畳された前記オブジェクト画像のデータおよび前記コメント情報に加えて、前記撮像画像データを送信してもよい。
【0018】
前記コメント情報保持部は、前記撮像画像データを取得したときの撮影位置および撮影方向を示す撮像情報を保持し、前記着目点画像生成部が、前記着目点画像を生成するとともに、前記撮影位置および前記撮影方向を、前記オブジェクト画像に重畳して表示するよう生成してもよい。
【0019】
前記BIMデータ割当部が割り当てた前記対象オブジェクトの前記BIMデータを利用して、前記対象オブジェクトで構成される前記建物の平面図、立体図またはパース図を生成する図面・パース生成部、をさらに有してもよい。
【0020】
本発明の第2の態様においては、建物の部屋の内部を撮像するとともに、撮像点から被撮像物までの距離を測定することで前記部屋の内部の3次元データを生成する3次元データ生成機能と、前記3次元データから、前記部屋の壁の夫々に対応する壁オブジェクト、前記部屋に設置された単一または複数の建具の夫々に対応する建具オブジェクトおよび前記部屋に配置された単一または複数の住設機器の夫々に対応する住設機器オブジェクトから選択された少なくとも1つのオブジェクトを生成するオブジェクト生成機能と、少なくとも単一の前記部屋についての複数の前記壁オブジェクトを含む建物情報を送信する通信機能と、を備えた携帯情報端末から、前記建物情報を受信する通信機能と、前記通信部が受信した前記建物情報に含まれる複数の前記壁オブジェクを組み合わせて、少なくとも単一の前記部屋を含む前記建物のホワイトモデルを生成するホワイトモデル生成機能と、前記ホワイトモデルのオブジェクト、前記建具オブジェクトおよび前記住設機器オブジェクトから選択された少なくとも1つの対象オブジェクトにBIMデータを割り当てるBIMデータ割当機能と、をコンピュータに実現させるためのプログラム、を提供する。
【0021】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】建物管理システム100を利用するネットワークシステム10の一例を示す概念図である。
【
図2】建物管理システム100、携帯情報端末200、情報処理装置300の一例を示す機能ブロック図である。
【
図3】ホワイトモデル整形部106の一例を示す機能ブロック図である。
【
図4】建物管理システム100の動作の一例を示すフロー図である。
【
図5】ホワイトモデル整形処理512の一例を示すフロー図である。
【
図6】BIMデータ割当処理518の一例を示すフロー図である。
【
図7】BIMデータ割当処理518の他の例を示すフロー図である。
【
図8】建物管理システム100の動作の他の例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0024】
図1は、建物管理システム100を利用するネットワークシステム10の一例を示す概念図である。ネットワークシステム10は、建物管理システム100、携帯情報端末200、情報処理装置300、ネットワーク400を有し、建物管理システム100と携帯情報端末200との間、建物管理システム100と情報処理装置300との間はネットワーク400によって接続されている。
【0025】
建物管理システム100は、サーバとして機能する情報処理装置300であり、携帯情報端末200は、たとえばスマートフォン、パッド型コンピュータ等、携帯または持ち運び可能な情報処理装置300である。情報処理装置300は、たとえばデスクトップ型パーソナルコンピュータ、ノート型パーソナルコンピュータ等、一般的な情報処理装置300である。携帯情報端末200、情報処理装置300は、サーバである建物管理システム100に要求(リクエスト)を発し、当該要求に対するサーバからの応答(レスポンス)を処理するクライアントとして機能する。ネットワーク400は、クライアントである携帯情報端末200および情報処理装置300を、サーバである建物管理システム100に接続するデータ通信手段である。ネットワーク400として、たとえば、インターネットプロトコルに従う無線LAN(Local area network)または有線LAN、携帯電話回線網、イーサネット、シリアル通信回線、ブルートゥース(登録商標)無線通信、等が例示できる。
【0026】
建物管理システム100、携帯情報端末200および情報処理装置300のハードウエア構成は、何れも一般的なものであり、たとえば、マザーボード、マザーボード上のシステムバスに接続されたCPU(Central Processing Unit)、キャッシュメモリ、主メモリ、GPU(Graphics Processing Unit)、グラフィックメモリ、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等のマスストレージ装置、キーボードやポインティングデバイス等の入力装置、表示装置やプリンタ等の出力制御装置、等を挙げることができる。これらハードウエアをソフトウエアによって協働させることで、後に説明する機能を建物管理システム100、携帯情報端末200および情報処理装置300に実現させる。
【0027】
図2は、建物管理システム100、携帯情報端末200、情報処理装置300の一例を示す機能ブロック図である。
【0028】
建物管理システム100は、通信部102、ホワイトモデル生成部104、ホワイトモデル整形部106、BIMデータ割当部108、推論部110、グレード登録部112、オブジェクト画像生成部114、見積生成部116、コメント情報保持部118、着目点画像生成部120、記憶部122、制御部124および図面・パース生成部126を有し、携帯情報端末200は、カメラモジュール202、LiDAR(Light Detection And Ranging)モジュール204、3次元データ生成部206、オブジェクト生成部208、通信部210、表示入力部212、記憶部214および制御部216を有する。情報処理装置300は、入力部302、出力部304、表示部306、記憶部308、通信部310および制御部312を有する。
【0029】
カメラモジュール202は、建物の部屋の内部を撮像し、LiDARモジュール204は、撮像点から被撮像物までの距離を測定する。LiDARモジュール204の測定に基づき、3次元データ生成部206は、部屋の内部の3次元データを生成する。オブジェクト生成部208は、3次元データ生成部206で生成した3次元データから、部屋内のオブジェクトを生成する。生成されるオブジェクトとして、部屋の壁の夫々に対応する壁オブジェクト、部屋に設置された単一または複数の建具の夫々に対応する建具オブジェクト、部屋に配置された単一または複数の住設機器の夫々に対応する住設機器オブジェクト、が例示できる。オブジェクト生成部208は、これら例示したオブジェクトの少なくとも1つを生成する。通信部210は、データを送信し受信する。通信部210は、オブジェクト生成部208が生成した少なくとも単一の部屋についての複数の壁オブジェクトを含む建物情報を送信する。
【0030】
表示入力部212は、たとえばタッチパネルを備えた液晶ディスプレイであり、記憶部214は、プログラムやデータを記録する。制御部216は、カメラモジュール202、LiDARモジュール204、3次元データ生成部206、オブジェクト生成部208、通信部210、表示入力部212、記憶部214を制御する。
【0031】
入力部302は、たとえばキーボードやマウス等のポインティングデバイスであり、出力部304は、たとえばプリンタである。表示部306は、たとえば液晶ディスプレイであり、記憶部308は、たとえばHDD等のマスストレージデバイスである。記憶部308には、プログラムやデータが記録される。通信部310は、データを送信し受信する。制御部312は、入力部302、出力部304、表示部306、記憶部308、通信部310を制御する。
【0032】
通信部102は、携帯情報端末200または情報処理装置300との間でデータを送信し受信する。特に、通信部102は、携帯情報端末200から送信された建物情報を受信する。建物情報には、前記した通り、オブジェクト生成部208が生成した少なくとも単一の部屋についての複数の壁オブジェクトを含む。通信部102は、また、オブジェクト画像のデータ、および、BIMデータの全部または一部の一覧データを携帯情報端末200または情報処理装置300に送信する。
【0033】
ホワイトモデル生成部104は、通信部102が受信した建物情報に含まれる複数の壁オブジェクを組み合わせて、少なくとも単一の部屋を含む建物のホワイトモデルを生成する。
【0034】
ホワイトモデル整形部106は、ホワイトモデルを構成する壁オブジェクトの少なくとも1つに補正を加えることでホワイトモデルを整形する。
図3は、ホワイトモデル整形部106の一例を示す機能ブロック図である。たとえば、ホワイトモデル整形部106は、傾き補正150、歪補正152、モジュールピッチ補正154、不要壁削除補正156、小部屋削除補正158、直線化補正160、外周補正162、壁分割補正164、の各補正機能を有する。
【0035】
傾き補正150は、ホワイトモデルを回転して傾きを補正する。歪補正152は、二つの壁オブジェクトをX軸またはY軸に平行な直線になるよう補正する。モジュールピッチ補正154は、各オブジェクトが、グリッド線に沿うよう移動する。不要壁削除補正156は、不要な壁オブジェクトを削除する。小部屋削除補正158は、小部屋を構成する壁オブジェクトを削除する。直線化補正160は、二つの壁オブジェクトを1つにまとめる。外周補正162は、欠落した外周壁を補完する。壁分割補正164は、壁オブジェクトを分割する。
【0036】
BIMデータ割当部108は、ホワイトモデルのオブジェクト、建具オブジェクトおよび住設機器オブジェクトから選択された少なくとも1つの対象オブジェクトにBIMデータを割り当てる。
【0037】
BIMデータの割り当てには、推論部110を用いることができる。推論部110は、ホワイトモデルのオブジェクト、建具オブジェクトおよび住設機器オブジェクトから選択された少なくとも1つの入力オブジェクトが入力され、推論の結果として、入力オブジェクトに応じた単一または複数のBIMデータ候補を出力する。推論部110は、入力オブジェクトおよび当該入力オブジェクトに対応する正解情報によって学習させた教師あり学習済みニューラルネットワークを用いて推論する。あるいは、推論部110は、入力オブジェクトに対応するBIMデータが適切に分類出力されるよう学習させた教師なし学習済みニューラルネットワークを用いて推論する。
【0038】
推論部110を用いた場合の一例として、BIMデータ割当部108は、割当対象オブジェクトを入力とする推論の結果として推論部110が出力したBIMデータ候補のうち、最も確率が高いBIMデータを自動的に割当対象オブジェクトに割り当てることができる。
【0039】
あるいは、推論部110を用いた他の例として、BIMデータ割当部108は、推論の結果としてユーザに示したBIMデータ候補のうち、ユーザの選択に応じたBIMデータを割当対象オブジェクトに割り当てることができる。すなわち、通信部102が、推論部110の推論結果をユーザが使用する携帯情報端末200または情報処理装置300に送信し、BIMデータ割当部108は、通信部102が送信したBIMデータ候補のうち、ユーザの選択操作に応じたBIMデータを割当対象オブジェクトに割り当てる。
【0040】
BIMデータ割当部108は、グレード登録部112に登録されたグレードに応じたBIMデータをオブジェクト(登録オブジェクト)に割り当てることも可能である。グレード登録部112は、ホワイトモデルのオブジェクト、建具オブジェクトおよび住設機器オブジェクトから選択された少なくとも1つの登録オブジェクトに対するグレードを登録する。
【0041】
一旦割り当てたBIMデータを変更する、または、未割当のオブジェクトに新たにBIMデータを割り当てることも可能である。この場合、通信部102は、少なくとも1つのオブジェクトの指定および当該指定オブジェクトに対応するBIMデータを含む要求を携帯情報端末200または情報処理装置300から受信し、当該要求に応答して、BIMデータ割当部108は、指定オブジェクトのBIMデータを、要求に含まれるBIMデータに変更または新たに割り当てる。
【0042】
オブジェクト画像生成部114は、ホワイトモデルのオブジェクト、建具オブジェクトおよび住設機器オブジェクトから選択された少なくとも1つのオブジェクトを表す2次元または3次元のオブジェクト画像を生成する。生成されたオブジェクト画像のデータは、通信部102が、携帯情報端末200または情報処理装置300に送信する。
【0043】
見積生成部116は、BIMデータの全部または一部を参照し、建物の修繕・リフォーム費用の見積を生成する。生成された見積のデータは、通信部102が、携帯情報端末200または情報処理装置300に送信する。
【0044】
コメント情報保持部118は、ホワイトモデルのオブジェクト、建具オブジェクトおよび住設機器オブジェクトから選択された少なくとも1つの選択オブジェクトに関連するコメント情報を、選択オブジェクトに紐付けて保持する。
【0045】
コメント情報保持部118は、選択オブジェクトにおける着目点の位置を示す位置情報をさらに保持することができ、この場合、着目点画像生成部120は、選択オブジェクトの着目点を示す着目点画像を、オブジェクト画像生成部114が生成したオブジェクト画像に重畳して表示するよう生成する。着目点画像が重畳されたオブジェクト画像のデータおよびコメント情報は、通信部102によって携帯情報端末200または情報処理装置300に送信される。
【0046】
コメント情報保持部118は、さらに、コメント情報に関連する画像データまたは電子データを保持することができる、この場合、通信部102は、オブジェクトの画像データおよびコメント情報に加え、画像データまたは電子データを、携帯情報端末200または情報処理装置300に送信する。
【0047】
また、通信部102が受信する建物情報に、着目点に対応する位置の部屋内部の撮像画像データを含む場合、コメント情報保持部118は、着目点に紐付けて当該撮像画像データを保持し、通信部102は、着目点画像が重畳されたオブジェクト画像のデータおよびコメント情報に加えて、当該撮像画像データを携帯情報端末200または情報処理装置300に送信する。
【0048】
コメント情報保持部118は、着目点に紐付けられた撮像画像データを取得したときの撮影位置および撮影方向を示す撮像情報を保持することができ、この場合、着目点画像生成部120は、着目点画像を生成するとともに、撮影位置および撮影方向を、オブジェクト画像に重畳して表示するよう生成する。
【0049】
図面・パース生成部126は、BIMデータ割当部108が割り当てた対象オブジェクトのBIMデータを利用して、対象オブジェクトで構成される建物の平面図、立体図またはパース図を生成する。
【0050】
記憶部122は、たとえばHDD等のマスストレージデバイスであり、プログラムやデータが記録される。特に、記憶部122は、BIMデータおよびオブジェクトの情報を記録する。制御部124は、通信部102、ホワイトモデル生成部104、ホワイトモデル整形部106、BIMデータ割当部108、推論部110、グレード登録部112、オブジェクト画像生成部114、見積生成部116、コメント情報保持部118、着目点画像生成部120、記憶部122、図面・パース生成部126を制御する。
【0051】
図4は、建物管理システム100の動作の一例を示すフロー図である。まず、携帯情報端末200のカメラモジュール202により建物の室内を撮影し、LiDARモジュール204により室内に存在する物の距離を計測する(ステップ500)。LiDARモジュール204による距離計測の結果から、3次元データ生成部206により室内の3次元データ(3Dデータ)を生成する(ステップ502)。さらに、生成した3Dデータから、オブジェクト生成部208により室内のオブジェクトを生成する(ステップ504)。
【0052】
なお、生成されるオブジェクトは、その属性として、何れのカテゴリに分類されるかを示すカテゴリの他、当該オブジェクトの識別情報(UUID:Universally Unique Identifier)、位置情報、高さや幅等のサイズ情報、他のオブジェクトと関連する場合の当該関連するオブジェクトの識別情報、等が含まれるカテゴリ情報を有する。カテゴリとして、たとえば壁、扉、開口、窓、浴槽、ベッド、椅子、食洗器、暖炉、オーブン、冷蔵庫、シンク、ソファー、階段、収納、ストーブ、机、テレビ、トイレ、洗濯乾燥が例示できる。なお、本明細書において、壁、壁の開口等、建物構造のカテゴリに属するオブジェクトを壁オブジェクトと称し、窓、扉等の建具のカテゴリに属するオブジェクトを建具オブジェクトと称し、浴槽、ベッド、椅子、食洗器、暖炉等の住設機器のカテゴリに属するオブジェクトを住設機器オブジェクトと称することとする。
【0053】
生成されたオブジェクト(カテゴリ情報を含む)は建物情報として建物管理システム100に送信され(ステップ506)、建物管理システム100の通信部102は当該建物情報を受信する(ステップ508)。なお、建物情報には、ステップ500で撮影された際の撮像データ、または、別途撮影された画像データを含んでもよい。また、生成されたオブジェクトの建物管理システム100への送信は、オブジェクトの生成と同期してリアルタイムに送信されるものであってもよく、生成されたオブジェクトが一旦記憶部214に記録された後、記憶部214から建物管理システム100に転送されるものであってもよい。
【0054】
ステップ508で通信部102が受信したオブジェクトは、ホワイトモデル生成部104に入力され、ホワイトモデル生成部104によってホワイトモデルが生成される(ステップ510)。ホワイトモデルを生成することで、生成したホワイトモデルに建具に対応する建具オブジェクトや住設機器に対応する住設機器オブジェクトを配置することができ、現実の建物の部屋を構成する室内構造をシミュレートすることができるようになる。
【0055】
ホワイトモデルの生成は、たとえば次のアルゴリズムに従って実行される。すなわち、受信したオブジェクトに含まれる壁オブジェクトを参照し、当該壁オブジェクトのカテゴリ情報に含まれるオブジェクト識別情報(UUID)、位置情報、サイズ情報を使用し、壁オブジェクトの位置情報とサイズ情報に含まれる幅の情報とから、壁オブジェクトの頂点情報を構築し、各壁オブジェクトの頂点が繋がるかを判断する。繋がりのある壁オブジェクトを順次繋げ、繋がった一連の壁オブジェクトの頂点の始点と終点が一致した場合、当該一連の壁オブジェクトで囲まれた空間を部屋と認識する。このような判断および認識の処理を全ての壁オブジェクトに対して実行し、単一または複数の部屋を認識し、部屋を構成するとは判断されなかった壁オブジェクトは壁として認識する。以上のようにして、単一または複数の部屋および壁からなるホワイトモデルが構成される。
【0056】
ただし、ステップ510で生成したホワイトモデルは、本来直線であるべき壁が歪んでいたり、不要な壁を含んでいたり、現実にはあり得ない部屋を構成していたり、本来あるべき壁が無い状態であったりする場合がある。このような不具合は、壁オブジェクトが適切に生成されなかったことによるノイズであり、現実の部屋構造と乖離する。当該乖離が存在したままでは、室内をシミュレートする画像に、壁の歪みや欠落、存在しない壁が表示されたり、また、室内に配置される建具や住設機器が不自然に表示されたりして都合が悪い。さらに、在るべき壁オブジェクトの欠落や不要な壁オブジェクトが存在したままでは、後に割り当てることとなるBIMデータが適切に割り当てられなくなる。よって、現実の部屋構造とホワイトモデルとの乖離を解消すべく、ホワイトモデルの整形を行う(ステップ512)。
【0057】
図5は、ホワイトモデル整形の処理例を示すフロー図である。ホワイトモデルの整形は、ホワイトモデル整形部106で処理され、ホワイトモデルを回転して傾きを補正する傾き補正(ステップ540)、二つの壁オブジェクトをX軸またはY軸に平行な直線になるよう補正する歪補正(ステップ542)、各壁オブジェクトをグリッド線に沿うよう移動するモジュールピッチ補正(ステップ544)、不要な壁オブジェクトを削除する不要壁削除補正(ステップ546)、小部屋を構成する壁オブジェクトを削除する小部屋削除補正(ステップ548)、二つの壁オブジェクトを1つにまとめる直線化補正(ステップ550)、欠落した外周壁を補完する外周補正(ステップ552)、壁オブジェクトを分割する壁分割補正(ステップ554)、の順で処理する。なお、ステップ540からステップ554の補正処理は全て実行する必要はなく、必要に応じて何れかの補正処理を実行すればよい。
【0058】
ホワイトモデルを整形することで、現実の部屋構造とホワイトモデルとの乖離を解消し、ホワイトモデルを構成する壁オブジェクトに、BIMデータを適切に割り当てることができるようになる。
【0059】
次に、建物管理システム100のグレード登録部112が、グレード登録要求を生成しクライアント側に送信する(ステップ514)。なお、ステップ506で携帯情報端末200が建物情報を建物管理システム100送信した後のクライアント側の処理は、携帯情報端末200が引き続き行ってもよく、また、適切なログイン処理の後、携帯情報端末200とは別の情報処理装置300がクラインとして処理を引き継いでもよい。よって、ステップ514のグレード登録要求は、クライアントとして動作する携帯情報端末200または情報処理装置300に送信される。
【0060】
グレード登録要求を受信した携帯情報端末200または情報処理装置300は、グレード登録操作を行い(ステップ516)、グレード登録を受けた建物管理システム100のBIMデータ割当部108は、登録されたグレードに応じたBIMデータを、ホワイトモデルを構成する壁オブジェクト、建具オブジェクト、住設機器オブジェクトに割り当てる(ステップ518)。なお、グレード登録がなかった場合、予め設定したデフォルトのグレードを適用してもよい。
【0061】
なお、BIMデータは、広義には建築物に関する情報のモデリング手法に用いるデータをいうが、本発明におけるBIMデータは、建築情報のモデリング手法全般に用いる広義のBIMデータではなく、建物管理システム100で利用する建物の保全管理やリフォーム等に関連したデータに限定した、簡易化された3次元データと属性情報をいうものとし、これらを総称してBIMデータと呼称する。本発明におけるBIMデータの属性情報として、たとえば、対応するオブジェクトの共通コード、企業用コード、大・中・細分類、メーカー名、商品名、商品コード、サイズ、材料単価、工事単価、単位、備考、各種コード、付帯する修繕工事、等があげられる。
【0062】
ステップ518の段階でのBIMデータの割り当ては、壁オブジェクト、建具オブジェクトおよび住設機器オブジェクトの全てのオブジェクトに対して行う必要はなく、壁オブジェクト、建具オブジェクトまたは住設機器オブジェクトの一部のオブジェクトに対してのみBIMデータを割り当ててもよい。また、全てのオブジェクトに対しBIMデータの割り当てを行わず、ステップ518をパスしてもよい。
【0063】
ステップ518のBIMデータの割り当ては、推論部110による推論結果を適用してもよい。
図6は、BIMデータ割当(ステップ518)の処理の一例を示すフロー図である。ます、BIMデータ割当部108は、BIMデータ割当処理の対象である対象オブジェクトを特定し(ステップ560)、対象オブジェクトを推論部110の学習済みモデルに入力する(ステップ562)。推論部110は、入力された対象オブジェクトに対するBIMデータ候補を推論し(ステップ564)、推論されたBIMデータ候補をBIMデータ割当部108に渡す。BIMデータ割当部108は、BIMデータ候補のうち最大確率を示すBIMデータを対象オブジェクトに割り当てる(ステップ566)。BIMデータ割当部108は、残りの対象オブジェクトがあるかを判断し(ステップ568)、残りがあると判断した場合にはステップ560からの処理を繰り返し、残りがないと判断した場合には処理を終了する(ステップ570)。このような処理を行うことで、対象オブジェクトに対し最も適切と推論されたBIMデータを自動的に割り当てることができ、ユーザ操作による割り当てを省略して、ユーザの利便性を高めることができる。
【0064】
また、ステップ518のBIMデータの割り当ては、推論部110による推論結果を参照したユーザによる選択を適用してもよい。
図7は、BIMデータ割当(ステップ518)の処理の他の例を示すフロー図である。
図6の処理と同様に、対象オブジェクトの特定(ステップ560)、学習済みモデルへの入力(ステップ562)、BIMデータ候補の推論(ステップ564)を行い、推論されたBIMデータ候補を、携帯情報端末200または情報処理装置300に送信する(ステップ572)。BIMデータ候補を受信した携帯情報端末200または情報処理装置300は、BIMデータ候補を表示し(ステップ574)、ユーザは、表示されたBIMデータ候補の中から割り当てるBIMデータを選択する選択操作を行う(ステップ576)。選択結果の情報を受け取ったBIMデータ割当部108は、ユーザによって選択された選択BIMデータを対象オブジェクトに割り当てる(ステップ578)。BIMデータ割当部108は、残りの対象オブジェクトがあるかを判断し(ステップ568)、残りがあると判断した場合にはステップ560からの処理を繰り返し、残りがないと判断した場合には処理を終了する(ステップ570)。このような処理を行うことで、対象オブジェクトに対し適切と推論されたBIMデータ候補の中からユーザの選択に応じたBIMデータを割り当てることができ、ユーザによるBIMデータの割り当て操作を補助して、ユーザの利便性を高めることができる。
【0065】
次に、建物管理システム100のオブジェクト画像生成部が、壁オブジェクト、建具オブジェクトおよび住設機器オブジェクトの全部または一部についてオブジェクト画像を生成する(ステップ520)。オブジェクト画像は3次元画像または2次元画像であり、オブジェクトにBIMデータが割り当てられている場合は、当該BIMデータに関連付けられた商品画像等の画像を当該オブジェクトの画像として生成する。
【0066】
生成されたオブジェクト画像は、BIMデータの一覧データとともに携帯情報端末200または情報処理装置300に送信され(ステップ522)、これを受信した携帯情報端末200または情報処理装置300は、オブジェクト画像をBIMデータの一覧データとともに表示入力部212または表示部306に表示する(ステップ524)。携帯情報端末200または情報処理装置300のユーザは、表示されたオブジェクト画像を参照し、BIMデータの追加・修正の操作を行う(ステップ526)。ステップ526の追加・修正の操作結果は、建物管理システム100に送信され、BIMデータ割当部108は、送信された操作結果を反映させるよう、該当オブジェクトのBIMデータを新たに追加割り当てし、あるいは再割り当てする(ステップ528)。その後ステップ522に戻って処理を繰り返す。
【0067】
ステップ526におけるユーザの追加・修正操作が完了し、ユーザが見積を要求しようとする場合、携帯情報端末200または情報処理装置300は、ユーザの見積要求操作に応答して、建物管理システム100に見積作成を要求する(ステップ530)。当該見積要求を受信した建物管理システム100の見積生成部116は、BIMデータを参照して、見積を生成し、生成した見積のデータを要求元である携帯情報端末200または情報処理装置300に送信する(ステップ532)。見積のデータを受信した携帯情報端末200または情報処理装置300は、これを表示入力部212または表示部306に表示し、または、出力部304に出力する(ステップ534)。
【0068】
なお、建物管理システム100は、ステップ532の見積生成に加えて、図面・パース生成部126により、建物の平面図、立体図またはパース図(以下「図面等」とする。)を生成することができ、生成した図面等を、見積とともにまたは別に、携帯情報端末200または情報処理装置300に送信することができる。この場合、図面等を受信した携帯情報端末200または情報処理装置300は、ステップ534の見積出力の後、図面等を出力する(ステップ536)。
【0069】
上記した建物管理システム100によれば、オブジェクト生成機能を備えた携帯情報端末200を利用して建物の部屋のホワイトモデルを生成するので、建物のリフォーム作業等における現地での寸法測定や既存建物の図面化等の作業を簡略化し、作業時間を大幅に短縮することができる。
【0070】
また、上記した建物管理システム100によれば、生成したホワイトモデルを整形し、壁、建具、住設機器の各オブジェクトに簡易化されたBIMデータをオブジェクトに割り当てるので、BIMデータの商品単価等を参照して簡便に見積書を作成することができる。
【0071】
さらに、上記した建物管理システム100によれば、BIMデータの追加・変更をインタラクティブに行うことができるので、見積書の追加修正作業も容易に行うことができ、作業効率を大幅に向上することができる。加えて、BIMデータへのインタラクティブな追記・変更機能により、建物の保全管理における修繕情報の入力、履歴管理、共有が容易になり、業務効率を高めることができる。
【0072】
また、上記した建物管理システム100では、本発明のBIMデータを簡易化したBIMデータに限定しているので、ハードウエア資源を抑制し、システムの利用価格を低く抑えることができる。
【0073】
なお、上記した建物管理システム100は、見積作成に留まらず、
図8に示すような物件管理に利用することも可能である。すなわち、携帯情報端末200または情報処理装置300が物件の管理要求を発し(ステップ580)、当該要求に応じた建物管理システム100からのオブジェクト画像送信(ステップ582)を受けたオブジェクト画像を表示(ステップ584)すると、携帯情報端末200または情報処理装置300のユーザは、当該表示されたオブジェクトに着目点の位置を指定し、コメントを入力し、撮像画像の選択の各操作を行い(ステップ586)、着目点位置、コメント、撮像画像を建物管理システム100に送信する(ステップ588)。建物管理システム100は、着目点位置、コメント、撮像画像を受信し(ステップ590)、コメント情報保持部118はこれを保持する。コメント情報保持部118は、受信した着目点位置、コメント、撮像画像に係るオブジェクトの着目点位置に着目点画像(たとえばピン画像)を重畳するようオブジェクト画像を生成し、携帯情報端末200または情報処理装置300に送信する(ステップ592)。携帯情報端末200または情報処理装置300は、受信した着目点画像付きのオブジェクト画像をコメントと共に表示する(ステップ594)。これにより、たとえば、物件の壁の汚れや傷等を発見した際に、当該汚れや傷を着目点として記録し、コメントや画像を記録および更新することで、当該着目点を管理することができる。
【0074】
なお、コメント情報保持部118は、着目点位置、コメント、撮像画像の他、撮影位置および撮影方向の情報(撮像情報)を保持することができ、着目点画像付きのオブジェクト画像に、当該撮影位置および撮影方向を重畳表示することができる。また、コメント情報保持部118は、対応すうる選択オブジェクト(BIMデータ)の属性情報として画像データを保持することができ、さらに、紙に印刷したときと同様な形式で閲覧等が可能な電子データを保持することができる。当該画像データや電子データは、コメントと同様に表示し、印刷等出力することができる。
【0075】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0076】
なお、上記した実施の形態は、コンピュータを稼働させるプログラムとして把握することも可能である。すなわち、建物の部屋の内部を撮像するとともに、撮像点から被撮像物までの距離を測定することで部屋の内部の3次元データを生成する3次元データ生成機能と、3次元データから、部屋の壁の夫々に対応する壁オブジェクト、部屋に設置された単一または複数の建具の夫々に対応する建具オブジェクトおよび部屋に配置された単一または複数の住設機器の夫々に対応する住設機器オブジェクトから選択された少なくとも1つのオブジェクトを生成するオブジェクト生成機能と、少なくとも単一の部屋についての複数の壁オブジェクトを含む建物情報を送信する通信機能と、を備えた携帯情報端末200から、建物情報を受信する通信機能と、通信部102が受信した建物情報に含まれる複数の壁オブジェクを組み合わせて、少なくとも単一の部屋を含む建物のホワイトモデルを生成するホワイトモデル生成機能と、ホワイトモデルのオブジェクト、建具オブジェクトおよび住設機器オブジェクトから選択された少なくとも1つの対象オブジェクトにBIMデータを割り当てるBIMデータ割当機能と、をコンピュータに実現させるためのプログラムとして把握することも可能である。
【0077】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラムおよび方法における動作、手順、ステップおよび段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書および図面中の動作フローに関して便宜上「まず」、「次に」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0078】
10…ネットワークシステム、100…建物管理システム、102…通信部、104…ホワイトモデル生成部、106…ホワイトモデル整形部、108…BIMデータ割当部、110…推論部、112…グレード登録部、114…オブジェクト画像生成部、116…見積生成部、118…コメント情報保持部、120…着目点画像生成部、122…記憶部、124…制御部、126…図面・パース生成部、150…傾き補正、152…歪補正、154…モジュールピッチ補正、156…不要壁削除補正、158…小部屋削除補正、160…直線化補正、162…外周補正、164…壁分割補正、200…携帯情報端末、202…カメラモジュール、204…LiDARモジュール、206…3次元データ生成部、208…オブジェクト生成部、210…通信部、212…表示入力部、214…記憶部、216…制御部、300…情報処理装置、302…入力部、304…出力部、306…表示部、308…記憶部、310…通信部、312…制御部、400…ネットワーク。