特開 2024-175581 報知装置及び交通情報提供装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024175581

(43)【公開日】2024-12-18

(54)【発明の名称】報知装置及び交通情報提供装置

(51)【国際特許分類】

   G08G 1/16 20060101AFI20241211BHJP

【ＦＩ】

G08G1/16 A

【審査請求】未請求

【請求項の数】10

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2023093475

(22)【出願日】2023-06-06

(71)【出願人】

【識別番号】000006633

【氏名又は名称】京セラ株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100147485

【弁理士】

【氏名又は名称】杉村 憲司

(74)【代理人】

【識別番号】230118913

【弁護士】

【氏名又は名称】杉村 光嗣

(74)【代理人】

【識別番号】100132045

【弁理士】

【氏名又は名称】坪内 伸

(74)【代理人】

【識別番号】100180655

【弁理士】

【氏名又は名称】鈴木 俊樹

(72)【発明者】

【氏名】杉江 正峻

【テーマコード（参考）】

5H181

【Ｆターム（参考）】

5H181AA01

5H181AA21

5H181BB04

5H181CC02

5H181CC04

5H181DD09

5H181LL01

5H181LL07

5H181LL08

(57)【要約】

【課題】危険性の高い対象についての適切な報知を可能にする報知装置及び交通情報提供装置が提供される。
【解決手段】報知装置（１０）は、車両に搭載される報知装置であって、交通情報提供装置（５）から交通情報を取得し、交通情報に基づいて、所定期間内に、交通規約に違反することによって車両の通行の障害となり得る対象について報知を行う制御部を備える。報知装置（１０）は、制御部が、車両の搭乗者の死角に存在する通行の障害となり得る対象について報知を行ってよい。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

車両に搭載される報知装置であって、
交通情報提供装置から交通情報を取得し、前記交通情報に基づいて、所定期間内に、交通規約に違反することによって前記車両の通行の障害となり得る対象について報知を行う制御部を備える、報知装置。

【請求項2】

前記制御部は、前記車両の搭乗者の死角に存在する前記通行の障害となり得る対象について報知を行う、請求項１に記載の報知装置。

【請求項3】

前記制御部は、前記車両の搭乗者の死角に存在する前記通行の障害となり得る対象について報知を行う場合に、前記搭乗者が視認可能で前記車両の通行の障害となり得る対象について報知を行う場合と比べて、報知の内容及びタイミングの少なくとも１つを変更する、請求項１に記載の報知装置。

【請求項4】

前記車両の搭乗者の視線を検出する視線検出装置を有し、
前記制御部は、前記搭乗者の視線に基づき前記搭乗者が認識したと判断した前記対象については前記報知を行わない、請求項１に記載の報知装置。

【請求項5】

前記制御部は、前記所定期間内に、交通規約に違反していない対象について報知を行わない、請求項１又は２に記載の報知装置。

【請求項6】

前記制御部は、前記所定期間内に、交通規約に違反していない対象について報知を行わない、請求項３に記載の報知装置。

【請求項7】

前記制御部は、前記交通情報が含む交通標識、信号機の状態及び対象の移動状態に基づいて、対象が前記所定期間内に交通規約に違反するかを判定する、請求項１に記載の報知装置。

【請求項8】

前記制御部は、前記所定期間内に、交通規約に違反していない対象について報知を行わない、請求項７に記載の報知装置。

【請求項9】

路上の車両、物体及び人を含む対象を検出する検出装置と、
検出された対象のそれぞれについて、少なくとも位置の座標及び移動状態の情報を含む交通情報を報知装置に出力する制御部と、を備える、交通情報提供装置。

【請求項10】

歩行者に所持される報知装置であって、
交通情報提供装置から交通情報を取得し、前記交通情報に基づいて、所定期間内に、交通規約に違反することによって前記歩行者の通行の障害となり得る対象について報知を行う制御部を備える、報知装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本開示は、報知装置及び交通情報提供装置に関する。

【背景技術】

【0002】

近年、路側に路上観察装置を設置して、車両及び歩行者などを検出して、接近車両などに対して危険を通知する安全運転支援システムの開発が進められている。例えば特許文献１は、見通しの悪い交差点又は横断歩道における歩行者の接近を運転者に的確に報知することにより、安全運行を確保することができるシステムを開示する。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開平１１－２３２５６８号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

ここで、歩行者の多い交差点などで、全ての歩行者の存在を報知すると、運転者にとって煩わしいことがある。また、危険性の低い対象についての大量の報知に埋もれることによって、本当に危険性の高い対象についての報知が気付かれないおそれがある。

【0005】

かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、危険性の高い対象についての適切な報知を可能にする報知装置及び交通情報提供装置を提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0006】

（１）本開示の一実施形態に係る報知装置は、
車両に搭載される報知装置であって、
交通情報提供装置から交通情報を取得し、前記交通情報に基づいて、所定期間内に、交通規約に違反することによって前記車両の通行の障害となり得る対象について報知を行う制御部を備える。

【0007】

（２）本開示の一実施形態として、（１）において、
前記制御部は、前記車両の搭乗者の死角に存在する前記通行の障害となり得る対象について報知を行う。

【0008】

（３）本開示の一実施形態として、（１）において、
前記制御部は、前記車両の搭乗者の死角に存在する前記通行の障害となり得る対象について報知を行う場合に、前記搭乗者が視認可能で前記車両の通行の障害となり得る対象について報知を行う場合と比べて、報知の内容及びタイミングの少なくとも１つを変更する。

【0009】

（４）本開示の一実施形態として、（１）において、
前記車両の搭乗者の視線を検出する視線検出装置を有し、
前記制御部は、前記搭乗者の視線に基づき前記搭乗者が認識したと判断した前記対象については前記報知を行わない。

【0010】

（５）本開示の一実施形態として、（１）又は（２）において、
前記制御部は、前記所定期間内に、交通規約に違反していない対象について報知を行わない。

【0011】

（６）本開示の一実施形態として、（３）において、
前記制御部は、前記所定期間内に、交通規約に違反していない対象について報知を行わない。

【0012】

（７）本開示の一実施形態として、（１）において、
前記制御部は、前記交通情報が含む交通標識、信号機の状態及び対象の移動状態に基づいて、対象が前記所定期間内に交通規約に違反するかを判定する。

【0013】

（８）本開示の一実施形態として、（７）において、
前記制御部は、前記所定期間内に、交通規約に違反していない対象について報知を行わない。

【0014】

（９）本開示の一実施形態に係る交通情報提供装置は、
路上の車両、物体及び人を含む対象を検出する検出装置と、
検出された対象のそれぞれについて、少なくとも位置の座標及び移動状態の情報を含む交通情報を報知装置に出力する制御部と、を備える。

【0015】

（１０）本開示の一実施形態に係る報知装置は、
歩行者に所持される報知装置であって、
交通情報提供装置から交通情報を取得し、前記交通情報に基づいて、所定期間内に、交通規約に違反することによって前記歩行者の通行の障害となり得る対象について報知を行う制御部を備える。

【発明の効果】

【0016】

本開示によれば、危険性の高い対象についての適切な報知を可能にする報知装置及び交通情報提供装置を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【0017】

【図1】図１は、本開示の一実施形態に係る報知装置、交通情報提供装置を備える通信システムの構成例を示す図である。

【図2】図２は、本開示の一実施形態に係る交通情報提供装置の機能ブロック図の一例である。

【図3】図３は、本開示の一実施形態に係る報知装置の機能ブロック図の一例である。

【図4】図４は、車両の搭乗者の死角に存在する通行の障害となり得る対象の例を示す図である。

【図5】図５は、通信システムで実行される処理の例を示すフローチャートである。

【発明を実施するための形態】

【0018】

以下、図面を参照して本開示の一実施形態に係る報知装置１０（図１参照）及び交通情報提供装置５（図１参照）が説明される。各図中、同一又は相当する部分には、同一符号が付されている。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。

【0019】

（通信システム）
図１は、一実施形態に係る交通情報提供装置５、報知装置１０を備える通信システム１の構成例を示す。交通情報提供装置５は、図１の例において路上観察装置であるが、車両６に搭載される運転支援装置によって実現されてよい。路上観察装置は、具体例として路側機又は監視カメラ装置などである。以下において、交通情報提供装置５は、複数の道路７（車道）が交差する交差点の近くに配置される路側機であるとして説明する。通信システム１は、交通情報を提供する交通情報提供システムである。通信システム１は、具体例として高度道路交通システム（ＩＴＳ：Ｉｎｔｅｌｌｉｇｅｎｔ Ｔｒａｎｓｐｏｒｔ Ｓｙｓｔｅｍｓ）の安全運転支援通信システムであってよい。

【0020】

交通情報提供装置５は、路上の車両６、物体及び人などを観察する装置である。物体は例えば交通標識、信号機４、ガードレールなどの設置物を含む。ここで、交通情報提供装置５によって観察される路上の車両６、物体及び人などは、以下において「対象」と称されることがある。交通情報提供装置５は、交差点以外の路側に配置されてよい。交通情報提供装置５の詳細については後述する。

【0021】

道路７を走る自動車などの車両６は、報知装置１０を搭載してよい。報知装置１０は、運転支援装置の一例であって、走行において危険性のある対象を検知した場合に運転者にその存在を報知する装置である。報知は、表示（画像）又は音によって運転者に知らせることを意味する。報知の手法は、表示又は音に限定されず、例えば振動又はフラッシュによって行われてよい。報知には、警告を発することが含まれる。報知装置１０の詳細については後述する。車両６は、車載検出装置を搭載してよい。車載検出装置は、周囲の車両６、物体及び人などを検出する装置であって、交通情報提供装置５として機能してよい。つまり、交通情報提供装置５は本実施形態のように路側機であってよいが、これに限定されず、監視カメラ装置、車載検出装置又はこれらの組み合わせで構成されてよい。通信システム１では、交通情報提供装置５と、車両６に搭載された装置とが、互いに無線通信を行うことが可能である。また、複数の車両６は、車両６に搭載された装置の通信機能を用いて、互いに無線通信を行うことが可能であってよい。通信システム１では、さらに、歩行者９が所持する電子機器を含んで無線通信を行うことが可能であってよい。電子機器は、例えば、スマートフォンなどの携帯端末装置である。

【0022】

交通情報提供装置５は、車両６の運転者の安全運転を支援するための交通情報（安全運転支援情報）を、車両６に通知することが可能である。交通情報は、例えば信号機４の状態に関する情報、道路規制に関する情報、交通情報提供装置５が配置されている交差点の交通標識及び形状（道路７の形状）などを含んでよい。信号機４の状態に関する情報は、例えば信号機４の点灯の状態を含む。また、交通情報提供装置５は、近くの車両６及び歩行者９を検知する。交通情報提供装置５は、例えば横断歩道３を渡る歩行者９を検知することができる。交通情報提供装置５は、例えば交差点に近づく車両６を検知することができる。交通情報提供装置５は、検知した対象（車両６及び歩行者９など）に関する情報を、交通情報に含めて車両６に通知することが可能である。検知した対象に関する情報は、対象の移動状態を含んでよい。交通情報提供装置５は、公知の手法（例えばディープラーニングによる物体認識）によって対象を識別して、識別コードを車両６に通知してよい。識別コードは、例えば車両６、歩行者９、設置物などのそれぞれに割り当てられる記号、文字、数字又はこれらの組み合わせであってよい。つまり、交通情報提供装置５は、識別した対象の種類を識別コードによって車両６に通知してよい。また、交通情報提供装置５は、識別した対象の位置の座標を交通情報に含めて車両６に通知してよい。また、交通情報提供装置５は、例えば得られた撮影画像から対象の移動履歴を抽出して、移動の方向及び速度を示すベクトルを算出してよい。交通情報提供装置５は、算出したベクトルに基づいて対象の将来の位置を予測してよいし、算出したベクトルを対象の移動状態として交通情報に含めて車両６に通知してよい。また、交通情報提供装置５は、車両６に通知する交通情報に、他の車両６から通知される情報も含めることが可能である。また、上記のように、交通情報提供装置５は、これらの情報を歩行者９が所持するスマートフォン等の電子機器に通知することが可能であってよい。

【0023】

車両６は車両情報を交通情報提供装置５又は他の車両６に送信してよい。車両情報は、例えば、車両６の位置、速度、ウィンカーに関する情報などを含み得る。車両６は、搭載している報知装置１０によって、交通情報提供装置５などから通知される各種情報を受け取ることができる。報知装置１０は、具体例としてカーナビゲーションシステム又はドライブレコーダなどであってよい。報知装置１０は、交通情報提供装置５から通知される情報に基づいて、警告などの報知を運転者に行うことによって、運転者の安全運転を支援することができる。ここで、車両６が上記の車載検出装置を備える場合に、検出結果を交通情報として他の車両６に送信してよい。

【0024】

このように、通信システム１は、車両６の運転者の安全運転を支援する。ここで、車両６は、自動車に限定されない。例えば、車両６は、自動二輪車、バス、路面電車、自転車を含み得る。

【0025】

（交通情報提供装置の機能ブロック図）
図２は、本実施形態に係る交通情報提供装置５の機能ブロック図である。交通情報提供装置５は、検出装置５０と、通信部と、記憶部と、制御部と、を備える。交通情報提供装置５の通信部、記憶部、制御部は、報知装置１０の構成要素と区別するために、以下の説明において、それぞれ提供側通信部５１、提供側記憶部５２、提供側制御部５３と称される。検出装置５０は複数であってよい。複数の検出装置５０はそれぞれが独立に動作可能であってよい。

【0026】

検出装置５０は路上の車両６、物体及び人（歩行者９）を含む対象を検出する。検出装置５０はセンサを含んで構成される。検出装置５０は、例えばイメージセンサを含んで構成される可視光カメラであってよい。また、検出装置５０は、赤外線センサを含んで構成される赤外線カメラであってよい。

【0027】

ここで、検出装置５０が含むセンサは、イメージセンサ及び赤外線センサに限定されない。検出装置５０が含むセンサは、例えば３Ｄレーザースキャナなどを含み得る。検出装置５０は、センサが検出した撮影画像などを提供側制御部５３に出力する。

【0028】

提供側通信部５１は、提供側制御部５３によって制御されて車両６と無線通信を行う。提供側通信部５１は、通信回路と、アンテナとで構成されてよい。アンテナは例えば無指向性のアンテナであってよい。提供側通信部５１は、例えばＩＴＳに割り当てられている７００ＭＨｚ帯を使用して無線通信を行ってよい。また、提供側通信部５１は、例えば無線ＬＡＮ（Ｌｏｃａｌ Ａｒｅａ Ｎｅｔｗｏｒｋ）を用いて無線通信を行ってよい。

【0029】

提供側通信部５１は、アンテナで受信した信号に対して増幅処理などの各種処理を行い、処理後の受信信号を提供側制御部５３に出力する。また、提供側制御部５３は、情報を含む送信信号を提供側通信部５１に出力してよい。提供側通信部５１は、提供側制御部５３から入力される送信信号に対して増幅処理などの各種処理を行って、処理後の送信信号をアンテナから無線送信してよい。

【0030】

提供側記憶部５２は、各種の情報を記憶するメモリとしての機能を有してよい。提供側記憶部５２は、例えば提供側制御部５３において実行されるプログラム、及び、提供側制御部５３において実行された処理の結果などを記憶してよい。また、提供側記憶部５２は、提供側制御部５３のワークメモリとして機能してよい。提供側記憶部５２は、例えばＲＯＭ及びＲＡＭなどの半導体メモリ等により構成することができるが、これに限定されず、任意の記憶装置とすることができる。提供側記憶部５２は、例えば、小型のハードディスクドライブ及びＳＳＤ（Ｓｏｌｉｄ Ｓｔａｔｅ Ｄｒｉｖｅ）などを含んでよい。

【0031】

提供側制御部５３は、交通情報提供装置５の動作を制御する。提供側制御部５３は、１つ以上のプロセッサを含んでよい。プロセッサは、アクセス可能なメモリ（例えば提供側記憶部５２）からプログラムをロードして、交通情報提供装置５の各種の機能を実現させてよい。プロセッサは、特定のプログラムを読み込ませて特定の機能を実行する汎用のプロセッサ、及び特定の処理に特化した専用のプロセッサの少なくともいずれかを含んでよい。専用のプロセッサは、特定用途向けＩＣ（ＡＳＩＣ：Ａｐｐｌｉｃａｔｉｏｎ Ｓｐｅｃｉｆｉｃ Ｉｎｔｅｇｒａｔｅｄ Ｃｉｒｃｕｉｔ）を含んでよい。プロセッサは、プログラマブルロジックデバイス（ＰＬＤ：Ｐｒｏｇｒａｍｍａｂｌｅ Ｌｏｇｉｃ Ｄｅｖｉｃｅ）を含んでよい。ＰＬＤは、ＦＰＧＡ（Ｆｉｅｌｄ－Ｐｒｏｇｒａｍｍａｂｌｅ Ｇａｔｅ Ａｒｒａｙ）を含んでよい。提供側制御部５３は、１つ又は複数のプロセッサが協働するＳｏＣ（Ｓｙｓｔｅｍ－ｏｎ－ａ－Ｃｈｉｐ）及びＳｉＰ（Ｓｙｓｔｅｍ Ｉｎ ａ Ｐａｃｋａｇｅ）の少なくともいずれかを含んでよい。

【0032】

本実施形態において、提供側制御部５３は、検出された対象のそれぞれについて、少なくとも位置の座標及び移動状態の情報を含む交通情報を、車両６の報知装置１０に出力する。

【0033】

（報知装置の機能ブロック図）
図３は、本実施形態に係る報知装置１０の機能ブロック図である。報知装置１０は、通信部１１と、記憶部１２と、制御部１３と、報知部１４と、を備える。

【0034】

通信部１１は、制御部１３によって制御されて提供側通信部５１及び他の車両６と無線通信を行う。通信部１１は、通信回路と、アンテナとで構成されてよい。アンテナは例えば無指向性のアンテナであってよい。通信部１１は、例えばＩＴＳに割り当てられている７００ＭＨｚ帯を使用して無線通信を行ってよい。また、通信部１１は、例えば無線ＬＡＮを用いて無線通信を行ってよい。

【0035】

通信部１１は、アンテナで受信した信号に対して増幅処理などの各種処理を行い、処理後の受信信号を制御部１３に出力する。また、制御部１３は、情報を含む送信信号を通信部１１に出力してよい。通信部１１は、制御部１３から入力される送信信号に対して増幅処理などの各種処理を行って、処理後の送信信号をアンテナから無線送信してよい。

【0036】

記憶部１２は、各種の情報を記憶するメモリとしての機能を有してよい。記憶部１２は、例えば制御部１３において実行されるプログラム、及び、制御部１３において実行された処理の結果などを記憶してよい。また、記憶部１２は、制御部１３のワークメモリとして機能してよい。記憶部１２は、例えばＲＯＭ及びＲＡＭなどの半導体メモリ等により構成することができるが、これに限定されず、任意の記憶装置とすることができる。記憶部１２は、例えば、小型のハードディスクドライブ及びＳＳＤなどを含んでよい。

【0037】

制御部１３は、報知装置１０の動作を制御する。制御部１３は、１つ以上のプロセッサを含んでよい。プロセッサは、アクセス可能なメモリ（例えば記憶部１２）からプログラムをロードして、報知装置１０の各種の機能を実現させてよい。プロセッサは、特定のプログラムを読み込ませて特定の機能を実行する汎用のプロセッサ、及び特定の処理に特化した専用のプロセッサの少なくともいずれかを含んでよい。専用のプロセッサは、特定用途向けＩＣを含んでよい。プロセッサは、プログラマブルロジックデバイスを含んでよい。ＰＬＤは、ＦＰＧＡを含んでよい。制御部１３は、１つ又は複数のプロセッサが協働するＳｏＣ及びＳｉＰの少なくともいずれかを含んでよい。

【0038】

本実施形態において、制御部１３は、通信部１１を介して交通情報提供装置５から交通情報を取得し、交通情報に基づいて、所定期間内に、交通規約に違反することによって車両６（自車）の通行の障害となり得る対象について報知を行う。また、制御部１３は、報知装置１０が搭載されている車両６（自車）の位置、速度などの走行状態を示す情報を、例えばＥＣＵ（Ｅｌｅｃｔｒｏｎｉｃ Ｃｏｎｔｒｏｌ Ｕｎｉｔ）などから取得する。

【0039】

報知部１４は、運転者への報知に用いられる機器である。報知は、例えば走行において危険性のある対象を検知した場合にその存在を運転者に知らせる警告などである。報知部１４は、例えば警告画像を表示するディスプレイであってよいし、警告を音声で知らせるスピーカーであってよいし、ディスプレイ及びスピーカーであってよい。

【0040】

（報知方法）
通信システム１では、例えば図４に示すような危険性の高い対象について、運転者の注意を引くように報知することができる。時刻ｔがｔ_０の時に、左車線を時速３０ｋｍ／ｈで車両６（第１車両）が走行している。このとき、第１車両は横断歩道３の２０ｍ手前の位置にいる。歩行者９が時速４．２ｋｍ／ｈで左方向に移動しているが、右車線に車両６（第２車両）が停止しているため、第１車両から見て歩行者９は死角にいる。このとき、歩行者９は交通ルール（交通規約）を順守していると言える。時刻ｔがｔ_１の時に、第１車両の進行方向の信号が青に変わり、第１車両は時速３０ｋｍ／ｈのまま進む。ｔ_１は一例としてｔ_０の２秒後である。このとき、歩行者９は交通ルール（交通規約）に違反しており、時速４．２ｋｍ／ｈのままで左方向に移動する。第１車両は横断歩道３の４ｍ手前の位置まで移動している。そのため、第１車両が歩行者９を認識してからブレーキをかけても、第１車両と歩行者９とが衝突するおそれがある。ここで、第１車両にとって死角にいる対象であっても、交通情報提供装置５はその対象を検出することができる。通信システム１では、交通情報提供装置５と報知装置１０とが連携し、所定期間内において対象が通行の障害となり得るかを予測する。つまり、本実施形態に係る報知装置１０は、交通情報提供装置５から交通情報を取得して、交通情報に基づいて衝突のおそれがあるかについて、現在だけでなく所定期間の先まで予測する。そのため、死角にいるような歩行者９についても運転者への報知を行うことができる。ここで、所定期間は特定の時間に限定されるものでなく、例えば対象が歩行者９である場合に、歩行者９が横断歩道３を渡りきるまでの時間に基づいて決定されてよい。また、所定期間は、歩行者９が横断歩道３を渡りきる前であっても、安全とされる地点に到達するまでの時間に基づいて決定されてよい。また、所定期間は信号機４の信号が変化するまでの時間に基づいて決定されてよい。所定期間は一例として５秒であってよい。ここで、図４の例では、歩行者９が車両６の直近の横断歩道を横断する場合を説明したが、これに限られず、歩行者９が車両６から見て交差点の奥側にある横断歩道を横断している場合にも衝突の恐れがあるかについて予測し、報知が行われてよい。また、報知の対象は横断歩道を横断する歩行者に限られない。例えば、横断歩道のない道路を横断しようとしている歩行者について、衝突の恐れがあるかについて予測し、報知が行われてよい。また、報知の対象は歩行者に限られず、車両６と衝突の恐れのある他の車両であってよい。例えば、交差道路を走行する他の車両が青信号のうちに当該交差点の通過を完了できない可能性がある場合に、車両６と衝突の恐れがあるかについて予測、報知が行われてよい。

【0041】

ここで、車両６と歩行者９とが衝突する可能性の判定に、車両６の進行予定の経路の情報が用いられてよい。例えば、所定期間内に交通規約に違反することになると判定される歩行者９が、２つ先の交差点の横断歩道を横断しているとする。このとき、車両６が当該交差点の手前の交差点を直進しない（すなわち、右折又は左折を行う）ことが予定されている場合、当該歩行者９についての報知を行う必要は無い。車両６の進行予定の経路は、例えば車両６に搭載されたカーナビゲーションシステムに設定された経路情報、車両６のウィンカーの点灯状態の情報などに基づいて取得してよい。

【0042】

また、車両６と歩行者９とが衝突する可能性があると判定した場合、制御部１３は車両６に搭載されたドライブレコーダを起動させて、歩行者９が映る映像の記録を行ってよい。車両６と歩行者９とが衝突することなく、車両６が横断歩道を通過することが出来た場合には、制御部１３は当該映像の記録を削除してよい。

【0043】

図５は、通信システム１で実行される、運転者への報知を実行するための処理例を示すフローチャートである。以下において、報知装置１０の制御部１３が判定処理（具体的には後述するステップＳ２、Ｓ３、Ｓ４、Ｓ５及びＳ８）を実行するとして説明するが、判定処理の少なくとも一部は提供側制御部５３によって実行されてよい。例えば対象が死角にいるかの判定結果も含む交通情報が、交通情報提供装置５から報知装置１０に出力されてよい。つまり、図５に示される処理は、制御部１３と提供側制御部５３とで適宜分担して実行されればよい。ただし、報知の実行（後述するステップＳ６及びＳ７）については、報知装置１０の制御部１３が実行する。

【0044】

制御部１３は、交通情報を取得する（ステップＳ１）。交通情報は、検出された対象のそれぞれについての位置の座標及び移動状態の情報を少なくとも含む。上記のように、対象は路上の車両６、物体及び人などを含む。詳細に述べると、交通情報は、交通情報提供装置５が配置された場所の周囲を走行する車両６の位置、進行方向、速度を含んでよい。交通情報は、交通情報提供装置５が配置された場所の近傍の横断歩道３を通行する歩行者９の位置、進行方向、速度を含んでよい。交通情報に含まれる対象の進行方向及び速度は、交通情報提供装置５によって算出されたベクトルであってよい。また、交通情報は、交通情報提供装置５が配置された場所における信号機４の点灯の状態及び信号が変わるまでの時間を含んでよい。信号機４の信号が変わるまでの時間に基づいて、対象が通行の障害となり得るかを予測する範囲である所定期間が決定されてよい。また、交通情報は、交通標識を含んでよい。また、交通情報は、上記の識別コードを含んでよい。制御部１３は、識別コードに基づいて対象が歩行者９であるか、車両６であるかなどを識別し、報知の内容に含めたり、報知のタイミングの調整を行ったりしてよい。具体的には、歩行者９に比べて速度が速い車両６については、報知のタイミングを早めに報知するように調整してよい。

【0045】

制御部１３は、現時点において、対象が交通規約に違反している場合に（ステップＳ２のＹｅｓ）、ステップＳ４の処理に進む。制御部１３は、現時点において、対象が交通規約に違反していない場合に（ステップＳ２のＮｏ）、ステップＳ３の処理に進む。交通規約の違反は、例えば信号が赤であるにも関わらず歩行者９が横断歩道３を通行していることなどである。

【0046】

制御部１３は、所定期間内に、対象が交通規約に違反する場合に（ステップＳ３のＹｅｓ）、ステップＳ４の処理に進む。制御部１３は、所定期間内に、対象が交通規約に違反しない場合に（ステップＳ３のＮｏ）、ステップＳ８の処理に進む。制御部１３は、交通標識、信号機４の信号が変わるまでの時間、対象の位置の座標及びベクトルなどに基づいて、所定期間内に対象が所定期間内に交通規約に違反するかを判定してよい。例えば制御部１３は、歩行者９側の信号機４が赤に変わるまでに歩行者９が横断歩道３を渡りきらないと予測する場合に、歩行者９が所定期間内に交通規約に違反すると判定してよい。また、例えば制御部１３は、歩行者９の進行方向から、所定期間の後に横断歩道３以外の道路７を通行すると予測する場合に、歩行者９が所定期間内に交通規約に違反すると判定してよい。具体的には、歩行者９が横断歩道のない道路を渡ろうとしていると判定した場合に、歩行者９が所定期間内に交通規約に違反すると判定してよい。

【0047】

制御部１３は、対象が通行の障害となり得る場合に（ステップＳ４のＹｅｓ）、ステップＳ５の処理に進む。制御部１３は、対象が通行の障害となり得ない場合に（ステップＳ４のＮｏ）、ステップＳ８の処理に進む。制御部１３は、交通情報として得られる対象のベクトルに基づいて、対象の将来の位置を予測してよい。制御部１３は、自車の位置、速度などから自車の将来の位置も予測して、所定期間内に対象が通行の障害となり得るかを判定してよい。ここで、制御部１３は、所定期間内に交通規約に違反していない対象について報知を行わない。そのため、危険性の低い対象についての大量の報知に埋もれることによって、本当に危険性の高い対象についての報知が気付かれないという従来技術の問題を解消することができる。

【0048】

制御部１３は、対象が死角にいる場合に（ステップＳ５のＹｅｓ）、すなわち車両６の搭乗者（特に運転者）から見えていない場合に、第１の報知を実行して（ステップＳ６）、ステップＳ８の処理に進む。制御部１３は、対象が死角にいない場合に（ステップＳ５のＮｏ）、すなわち車両６の搭乗者（特に運転者）から見えている場合に、第２の報知を実行して（ステップＳ７）、ステップＳ８の処理に進む。制御部１３は、車両６の搭乗者の死角に存在する通行の障害となり得る対象について報知を行う場合に、搭乗者が視認可能で車両６の通行の障害となり得る対象について報知を行う場合と比べて、報知の内容及びタイミングの少なくとも１つを変更する。例えば第１の報知は、第２の報知に比べて、より運転者の注意が向くような内容であってよい。具体的には、報知部１４がスピーカーを含む場合には、第１の報知の場合の警告音は、第２の報知の場合と比べて大音量であってよい。また、報知部１４がディスプレイを含む場合には、第１の報知の場合の警告表示は、第２の報知の場合と比べて大きく表示してよい。また、運転者が対象に対応する時間を確保できるように、例えば第１の報知は、第２の報知に比べて、早いタイミングで行われてよい。

【0049】

制御部１３は、全ての対象のそれぞれについて上記の判定を行い、全ての対象を判定した場合に（ステップＳ８のＹｅｓ）、一連の処理を終了する。制御部１３は、全ての対象を判定していない場合に（ステップＳ８のＮｏ）、すなわち判定していない対象が残っている場合に、ステップＳ１に戻って未判定の対象についての処理を実行する。

【0050】

以上のように、本実施形態に係る報知装置１０及び交通情報提供装置５は、上記の構成によって、危険性の高い対象についての適切な報知を可能にする。通常、運転者は交通ルールを守らない歩行者９などの存在を想定しにくい。本実施形態に係る報知装置１０及び交通情報提供装置５は、交通ルールを守らない歩行者９などについての適切な警告を可能にするため、安全運転に寄与できる。また、交通ルールを守っている歩行者９などについての報知は行われないため、危険性の高い対象に運転者の注意を向けることができる。

【0051】

ここで、本実施形態に係る報知装置１０は、対象が交通規約に違反しない場合には報知を行わないものとしたが、報知装置１０が搭載される車種又は状態によっては、対象が交通規約を順守する場合であっても、通行の障害となり得るとして報知を行ってよい。具体的には、車両６が、救急車、警察車両又は消防車などの緊急車両であって、緊急走行をする場合に交通規約を順守する対象についても報知が行われてよい。例えば、報知装置１０を、車両６が緊急走行をしているか否かの状態を設定可能に構成し、制御部１３は車両６の当該状態に基づいて、報知の有無を決定してよい。

【0052】

また、本実施形態に係る報知装置１０は、当該報知装置１０を登載した車両の運転者によって視認されている対象について報知をしなくてよい。例えば、車両６に視線の認識する視線検出装置を登載し、当該装置が認識した運転者の視線に基づいて、運転者が認識したと判断された対象について報知を行わなくてよい。既に運転者に認識された対象については報知を行わないことで、運転者のわずらわしさを軽減することができる。

【0053】

本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形及び修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。本開示は、これらに実質的に相当するプログラム、プログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものであり、本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。

【符号の説明】

【0054】

１ 通信システム
３ 横断歩道
４ 信号機
５ 交通情報提供装置
６ 車両
７ 道路
９ 歩行者
１０ 報知装置
１１ 通信部
１２ 記憶部
１３ 制御部
１４ 報知部
５０ 検出装置
５１ 提供側通信部
５２ 提供側記憶部
５３ 提供側制御部

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】