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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175587
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】コンバータ装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
H02M3/155 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093486
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 辰徳
(72)【発明者】
【氏名】季原 健一
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 考生
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA20
5H730AS05
5H730BB13
5H730CC01
5H730DD04
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD31
5H730FD51
5H730FD61
5H730FF09
5H730XX03
5H730XX23
5H730XX35
5H730XX43
(57)【要約】
【課題】DC/DCコンバータのスイッチング素子のスイッチングを停止したときに制御回路が悪影響を受けるのを抑制する。
【解決手段】コンバータ装置において、制御回路には、DC/DCコンバータの出力電圧に関連する電圧が信号線を介して入力され、制御装置は、DC/DCコンバータの停止条件が成立したときには、制御回路にDC/DCコンバータの出力電流を小さくさせ、DC/DCコンバータの出力電流が電流閾値未満に至ると、制御回路にスイッチング素子のスイッチングを停止させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子と、前記スイッチング素子をスイッチング制御する制御回路とを有し、第1蓄電装置が接続された第1電力ラインの電力を降圧して前記第1蓄電装置よりも定格電圧が低い第2蓄電装置が接続された第2電力ラインに供給可能なDC/DCコンバータと、
前記制御回路に指令を出力する制御装置と、
を備えるコンバータ装置であって、
前記制御回路には、前記DC/DCコンバータの出力電圧に関連する電圧が信号線を介して入力され、
前記制御装置は、前記DC/DCコンバータの停止条件が成立したときには、前記制御回路に前記DC/DCコンバータの出力電流を小さくさせ、前記DC/DCコンバータの出力電流が電流閾値未満に至ると、前記制御回路に前記スイッチング素子のスイッチングを停止させる、
コンバータ装置。
【請求項2】
請求項1記載のコンバータ装置であって、
前記制御装置は、前記DC/DCコンバータが出力を開始する前の前記第2蓄電装置の電圧が低いほど小さくなるように前記電流閾値を設定する、
コンバータ装置。
【請求項3】
請求項1記載のコンバータ装置であって、
前記制御装置は、前記停止条件が成立したときの前記DC/DCコンバータの出力電圧に関連する電圧が低いほど小さくなるように前記電流閾値を設定する、
コンバータ装置。
【請求項4】
請求項1記載のコンバータ装置であって、
前記電流閾値は、前記第2電力ラインの前記DC/DCコンバータから前記第2蓄電装置までの配線長が長いほど小さくなるように設定されている、
コンバータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のコンバータ装置としては、スイッチング素子からなる直列回路を複数並列に接続して構成されたコンバータ部と、各直列回路の各スイッチング素子をそれぞれ制御する制御信号を生成する制御信号生成部と、コンバータ部の出力電圧を検出する出力電圧検出回路と、出力電圧の検出結果に基づいて制御部からの制御信号を遮断する遮断信号を出力する遮断信号生成部と、制御信号生成部とコンバータ部との間に設けられると共に遮断信号を受信したときに制御信号を遮断する遮断部とを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。ここで、遮断信号生成部は、直列回路のそれぞれに対して予め設定された遅延時間だけ、直列回路ごとに遮断信号の出力をそれぞれ遅延させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-114094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンバータ部の出力電流は、コンバータ部の後段の負荷状況に依存するため、例えば上記の特許文献1に記載の技術の構成で、高負荷状態で直列回路を遅延させながら停止させると、残りの直列回路に電流が集中し、出力電流は増大する。この状態で残った直列回路を停止させると、残った直列回路に大きなサージ電圧の発生が考えられる。また、コンバータ部の後段にインダクタンス成分が存在する場合、スイッチング停止時のサージ電圧はインダクタンスに比例して大きくなる。例えば高電圧を降圧し12V補機負荷へ電力供給するDC/DCコンバータ(Direct Current to Direct Current converter)においては、出力電流が12V補機負荷状況に依存し、かつDC/DCコンバータと12V補機負荷との間に寄生インダクタンスを有する配線が存在することから、従来技術の効果が小さく、スイッチング回路部に発生する負のサージ電圧を抑制できない。この負のサージ電圧によりDC/DCコンバータの出力電圧に関連する電圧が過度に低下すると、信号線を介して制御回路に過度に低い電圧が入力されることによる、回路内素子や周辺の保護素子の破壊を招くおそれがある。言い換えれば、制御回路が悪影響を受ける可能性がある。
【0005】
本開示のコンバータ装置は、DC/DCコンバータのスイッチング素子のスイッチングを停止したときに制御回路が悪影響を受けるのを抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコンバータ装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示のコンバータ装置は、
スイッチング素子と、前記スイッチング素子をスイッチング制御する制御回路とを有し、第1蓄電装置が接続された第1電力ラインの電力を降圧して前記第1蓄電装置よりも定格電圧が低い第2蓄電装置が接続された第2電力ラインに供給可能なDC/DCコンバータと、
前記制御回路に指令を出力する制御装置と、
を備えるコンバータ装置であって、
前記制御回路には、前記DC/DCコンバータの出力電圧に関連する電圧が信号線を介して入力され、
前記制御装置は、前記DC/DCコンバータの停止条件が成立したときには、前記制御回路に前記DC/DCコンバータの出力電流を小さくさせ、前記DC/DCコンバータの出力電流が電流閾値未満に至ると、前記制御回路に前記スイッチング素子のスイッチングを停止させる、
ことを要旨とする。
【0008】
本開示のコンバータ装置では、制御回路には、DC/DCコンバータの出力電圧に関連する電圧が信号線を介して入力される。そして、制御装置は、DC/DCコンバータの停止条件が成立したときには、制御回路にDC/DCコンバータの出力電流を小さくさせ、DC/DCコンバータの出力電流が電流閾値未満に至ると、制御回路にスイッチング素子のスイッチングを停止させる。これにより、スイッチング素子のスイッチングを停止したときに生じる負のサージ電圧によりDC/DCコンバータの出力電圧に関連する電圧が過度に低下するのを抑制することができる。この結果、信号線を介して制御回路に過度に低い電圧が入力されるのを抑制し、制御回路が悪影響を受けるのを抑制することができる。
【0009】
本開示のコンバータ装置において、前記制御装置は、前記DC/DCコンバータが出力を開始する前の前記第2蓄電装置の電圧が低いほど小さくなるように前記電流閾値を設定するものとしてもよい。また、前記制御装置は、前記停止条件が成立したときの前記DC/DCコンバータの出力電圧に関連する電圧が低いほど小さくなるように前記電流閾値を設定するものとしてもよい。さらに、前記電流閾値は、前記第2電力ラインの前記DC/DCコンバータから前記第2蓄電装置までの配線長が長いほど小さくなるように設定されているものとしてもよい。これらのようにすれば、電流閾値をより適切に設定することができる。この結果、DC/DCコンバータのスイッチング素子のスイッチングを停止したときに制御回路が悪影響を受けるのをより適切に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示のコンバータ装置を備える電気自動車20の概略構成図である。
図2】電子制御ユニット70により実行される処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
図3】スイッチング素子41,42のスイッチング停止の直前の電流Ioと、スイッチング素子41,42のスイッチング停止の直後の接続点P1の電圧Voと、の関係の一例を示す説明図である。
図4】電子制御ユニット70により実行される処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
図5】電気自動車120の概略構成図である。
図6】電子制御ユニット70により実行される処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本開示のコンバータ装置を備える電気自動車20の概略構成図である。図示するように、本開示の電気自動車20は、モータ22と、インバータ24と、第1蓄電装置としての高電圧バッテリ26と、第1電力ラインとしての電力ライン30と、第2蓄電装置としての補機バッテリ32と、第2電力ラインとしての電力ライン34と、DC/DCコンバータ40と、電子制御ユニット70とを備える。本実施形態のコンバータ装置としては、DC/DCコンバータ40と電子制御ユニット70とが該当する。
【0012】
モータ22は、例えば同期発電電動機として構成されており、回転子コアに永久磁石が埋め込まれた回転子と、固定子コアに三相コイルが巻回された固定子とを備える。モータ22の回転子は、駆動輪に連結された駆動軸に固定されている。インバータ24は、複数のスイッチング素子を有し、モータ22の駆動に用いられると共に電力ライン30に接続されている。
【0013】
高電圧バッテリ26は、例えば定格電圧が数百V程度のリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池として構成されている。高電圧バッテリ26の正極端子は、電力ライン(正極ライン)30に接続されており、負極端子は、接地(共通の負極ライン)に接続されている。接地としては、例えば、金属製の車体が用いられる。補機バッテリ32は、例えば定格電圧が12Vの鉛蓄電池として構成されている。補機バッテリ32の正極端子は、電力ライン(正極ライン)34に接続されており、負極端子は、接地(共通の負極ライン)に接続されている。なお、図1中、寄生インダクタンス50は、回路の寄生インダクタンスである。
【0014】
DC/DCコンバータ40は、電力ライン30と電力ライン34とに接続されている。DC/DCコンバータ40は、スイッチング素子41,42と、リアクトル43と、制御回路としての制御IC44と、コンデンサ45と、分圧用抵抗素子46,47とを備える。スイッチング素子41,42としては、例えば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などが用いられる。スイッチング素子41,42には、ダイオードが逆方向に並列に接続されている。スイッチング素子41は、電力ライン30に接続されている。スイッチング素子42は、スイッチング素子41に接続されていると共に接地に接続されている。リアクトル43は、スイッチング素子41,42の接続点に接続されていると共に電力ライン34に接続されている。制御IC44は、スイッチング素子41,42をスイッチング制御する。コンデンサ45は、電力ライン34に接続されていると共に接地に接続されている。分圧用抵抗素子46,47は、電力ライン34と接地とに対してこの順に直列に接続されている。分圧用抵抗素子46,47の接続点P1の電圧Vo(電力ライン34の電圧が分圧用抵抗素子46,47により分圧された電圧)は、信号線48を介して制御IC44に入力される。DC/DCコンバータ40は、制御IC44によるスイッチング素子41,42のスイッチング制御により、電力ライン30側の電力を降圧して電力ライン34側に供給できるようになっている。
【0015】
電子制御ユニット70は、マイクロコンピュータを備えており、マイクロコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートなどを有する。電子制御ユニット70には、各種センサからの信号が入力されている。電子制御ユニット70に入力される信号としては、例えば、モータ22の回転子の回転位置を検出する回転位置センサからの回転位置θmや、モータ22の各相の電流を検出する電流センサからの相電流Iu,Iv,Iwを挙げることができる。高電圧バッテリ26の出力端子に取り付けられた電圧センサ26vからの電圧Vbhや、高電圧バッテリ26の出力端子に取り付けられた電流センサ26iからの電流Ibh、補機バッテリ32の出力端子に取り付けられた電圧センサ32vからの電圧Vbl、リアクトル43に直列に取り付けられた電流センサ49からの電流Ioも挙げることができる。スタートスイッチ72からのスタート信号や、シフトレバーの操作位置を検出するシフトポジションセンサからのシフトポジション、アクセルペダルの踏込量を検出するアクセルペダルポジションセンサからのアクセル開度、ブレーキペダルの踏込量を検出するブレーキペダルポジションセンサからのブレーキペダルポジション、車速センサからの車速も挙げることができる。上述したように、電子制御ユニット70には、接続点P1の電圧Voも信号線48を介して入力されている。
【0016】
電子制御ユニット70からは、各種制御信号が出力されている。電子制御ユニット70から出力される信号としては、例えば、インバータ24の複数のスイッチング素子への制御信号や、制御IC44への電圧指令Vo*を挙げることできる。電圧指令Vo*は、電気自動車20の状態(例えば、高電圧バッテリ26の状態や、補機バッテリ32の状態、電力ライン34に接続された図示しない補機の状態などのうちの少なくとも1つ)に基づいて設定されてもよいし、一定電圧(例えば、補機バッテリ32の定格電圧に基づく電圧など)が用いられてもよい。なお、制御IC44は、接続点P1の電圧Voと電圧指令Vo*との差が小さくなるようにスイッチング素子41,42をスイッチング制御する。電子制御ユニット70は、電流センサ26iからの高電圧バッテリ26の電流Ibの積算値に基づいて高電圧バッテリ26の蓄電割合SOC(State Of Charge)を演算している。
【0017】
次に、実施形態の電気自動車20の動作、特に、DC/DCコンバータ40の動作について説明する。図2は、電子制御ユニット70により実行される処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。本ルーチンは、スタートスイッチ72がオンにされたときに実行される。
【0018】
図2の処理ルーチンが実行されると、電子制御ユニット70は、最初に、通常制御指令および電圧指令Vo*を制御IC44に出力する(ステップS100)。制御IC44は、通常制御指令および電圧指令Vo*を受けると、上述したように、接続点P1の電圧Voと電圧指令Vo*との差が小さくなるようにスイッチング素子41,42をスイッチング制御する。
【0019】
続いて、DC/DCコンバータ40の停止条件が成立したか否かを判定し(ステップS110)、DC/DCコンバータ40の停止条件が成立していないと判定したときには、ステップS100に戻る。ここで、DC/DCコンバータ40の停止条件としては、例えば、スタートスイッチ72がオフにされた条件などを挙げることができる。
【0020】
ステップS100でDC/DCコンバータ40の停止条件が成立したと判定すると、電流徐減制御指令を制御IC44に出力する(ステップS120)。制御IC44は、電流徐減制御指令を受けると、例えば接続点P1の電圧Voに基づいて、DC/DCコンバータ40の電流Ioが徐々に小さくなるようにスイッチング素子41,42をスイッチング制御する。
【0021】
続いて、電流センサ49からのDC/DCコンバータ40の電流Ioが閾値Ioref未満であるか否かを判定し(ステップS130)、電流Ioが閾値Ioref以上であると判定したときには、ステップS120に戻る。閾値Iorefについては後述する。ステップS130で電流Ioが閾値Ioref未満に至ったと判定すると、制御IC44にディスエーブル信号(スイッチング停止指令)を出力して(ステップS130)、本ルーチンを終了する。制御IC44は、ディスエーブル信号を受けると、スイッチング素子41,42のスイッチングを停止する。
【0022】
DC/DCコンバータ40のスイッチング素子41,42のスイッチングを停止したときには、電力ライン34の寄生インダクタンス50により負のサージ電圧が生じ得る。このサージ電圧により接続点P1の電圧Voが過度に低下すると、信号線48を介して制御IC44に過度に低い電圧(例えば負の電圧)が入力され、制御IC44が悪影響を受ける可能性がある。図3は、スイッチング素子41,42のスイッチング停止の直前の電流Ioと、スイッチング素子41,42のスイッチング停止の直後の接続点P1の電圧Vo(信号線48を介して制御IC44に入力される電圧)と、の関係の一例を示す説明図である。図示するように、スイッチング素子41,42のスイッチング停止の直後の接続点P1の電圧Voは、スイッチング素子41,42のスイッチング停止の直前の電流Ioが大きいほど低くなる。これは、スイッチング素子41,42のスイッチング停止の直前の電流Ioが大きいほど、スイッチング素子41,42のスイッチングを停止したときの負のサージ電圧が大きくなりやすいためである。そして、電圧Voは、電流Ioが値Io1のときに値0となる。即ち、電流Ioが値Io1よりも大きいと、電圧Voが負になるおそれがある。
【0023】
本実施形態では、以上のことを踏まえて、閾値Iorefは、スイッチング素子41,42のスイッチング停止の直後の接続点P1の電圧Voが、制御IC44に悪影響を与えない範囲内の電圧(制御IC44における信号線48についての入力ポートの許容下限電圧を下回らない範囲内の電圧)として、実験や解析、機械学習などにより予め定められた値が用いられる。そして、DC/DCコンバータ40の電流Ioが閾値Ioref未満に至ったときに、電子制御ユニット70が制御IC44にスイッチング素子41,42のスイッチングを停止させることにより、スイッチング素子41,42のスイッチングを停止したときに接続点P1の電圧Voが過度に低下するのを抑制することができる。この結果、信号線48を介して制御IC44に過度に低い電圧が入力されるのを抑制し、制御IC44が悪影響を受けるのをより適切に抑制することができる。なお、閾値Iorefが小さいほど、DC/DCコンバータ40の停止条件が成立してからスイッチング素子41,42のスイッチングを停止するまでの時間が長くなるため、閾値Iorefは、ある程度大きいのが好ましい。
【0024】
以上説明した本実施形態のコンバータ装置では、電子制御ユニット70は、DC/DCコンバータ40の停止条件が成立したときには、制御IC44に電流徐減制御指令を出力することにより、制御IC44に、DC/DCコンバータ40の電流Ioを徐々に小さくさせる。そして、DC/DCコンバータ40の電流Ioが閾値Ioref未満に至ると、制御IC44にディスエーブル信号を出力することにより、制御IC44に、スイッチング素子41,42のスイッチングを停止させる。これにより、スイッチング素子41,42のスイッチングを停止したときに制御IC44が悪影響を受けるのを抑制することができる。
【0025】
上述した実施形態では、電子制御ユニット70は、図2の処理ルーチンを実行するものとし。しかし、これに代えて、図4の処理ルーチンを実行してもよい。図4の処理ルーチンは、ステップS200,S210の処理が追加された点を除いて、図2の処理ルーチンと同一である。したがって、図4の処理ルーチンのうち図2の処理ルーチンと同一の処理については、同一のステップ番号を付し、詳細な説明を省略する。
【0026】
図4の処理ルーチンでは、電子制御ユニット70は、最初に、電圧センサ32vからの補機バッテリ32の電圧Vblを記憶電圧Vblmとしてフラッシュメモリなどに記憶させ(ステップS200)、ステップS100の処理に進む。したがって、記憶電圧Vblmは、スイッチング素子41,42のスイッチングを開始する前(DC/DCコンバータ40が出力を開始する前)の補機バッテリ32の電圧Vblとなる。
【0027】
続いて、ステップS110でDC/DCコンバータ40の停止条件が成立したと判定すると、記憶電圧Vblmに基づいて閾値Iorefを設定して(ステップS210)、ステップS120の処理に進む。この場合の閾値Iorefの設定処理は、例えば、記憶電圧Vbl1と閾値Iorefとの関係を実験や解析、機械学習などにより予め定めて第1マップとして記憶しておき、記憶電圧Vbl1が与えられると、第1マップから対応する閾値Iorefを導出することにより行なうことができる。閾値Iorefは、記憶電圧Vblmが低いほど小さくなるように設定される。これは、記憶電圧Vblmが低いほど、スイッチング素子41,42のスイッチング停止の直後の接続点P1の電圧Voが低くなりやすいためである。これにより、閾値Iorefをより適切に設定することができる。この結果、スイッチング素子41,42のスイッチングを停止するときに生じる負のサージ電圧が制御IC44に悪影響を与えるのをより適切に抑制することができる。なお、閾値Iorefは、低い値である方が負サージ抑制の効果が大きい。しかし、それと引き換えに電流Ioが閾値Ioref未満となるまでの時間が長くなるデメリットがある。そこで、この変形例の処理を追加することにより、設定する閾値Iorefを最適化して電流Ioが閾値Ioref未満となるまでの時間を短縮することができる。
【0028】
上述した実施形態では、図1の電気自動車20に示したように、接続点P1の電圧Voは、信号線48を介して制御IC44に入力されるものとした。しかし、図5の電気自動車120に示すように、接続点P1の電圧Voは、信号線48を介して制御IC44および電子制御ユニット70に入力されてもよい。この場合、電子制御ユニット70は、図2の処理ルーチンに代えて、図6の処理ルーチンを実行してもよい。図6の処理ルーチンは、ステップS300の処理が追加された点を除いて、図2の処理ルーチンと同一である。したがって、図6の処理ルーチンのうち図2の処理ルーチンと同一の処理については、同一のステップ番号を付し、詳細な説明を省略する。
【0029】
図6の処理ルーチンでは、電子制御ユニット70は、ステップS110でDC/DCコンバータ40の停止条件が成立したと判定すると、そのときの接続点P1の電圧Voに基づいて閾値Iorefを設定して(ステップS300)、ステップS120の処理に進む。この場合の閾値Iorefの設定処理は、例えば、DC/DCコンバータ40の停止条件が成立したときの接続点P1の電圧Voと閾値Iorefとの関係を実験や解析、機械学習などにより予め定めて第2マップとして記憶しておき、DC/DCコンバータ40の停止条件が成立したときの接続点P1の電圧Voが与えられると、第2マップから対応する閾値Iorefを導出することにより行なうことができる。閾値Iorefは、DC/DCコンバータ40の停止条件が成立したときの接続点P1の電圧Voが低いほど小さくなるように設定される。これは、DC/DCコンバータ40の停止条件が成立したときの接続点P1の電圧Voが低いほどスイッチング素子41,42のスイッチング停止の直後の接続点P1の電圧Voが低くなりやすいためである。これにより、閾値Iorefをより適切に設定することができる。この結果、スイッチング素子41,42のスイッチングを停止するときに生じる負のサージ電圧が制御IC44に悪影響を与えるのをより適切に抑制することができる。なお、閾値Iorefは、低い値である方が負サージ抑制の効果が大きい。しかし、それと引き換えに電流Ioが閾値Ioref未満となるまでの時間が長くなるデメリットがある。そこで、この変形例の処理を追加することにより、設定する閾値Iorefを最適化して電流Ioが閾値Ioref未満となるまでの時間を短縮することができる。
【0030】
上述した実施形態では、閾値Iorefは、電力ライン34のDC/DCコンバータ40から補機バッテリ32までの配線長を考慮せずに定められるものとした。しかし、閾値Iorefは、電力ライン34のDC/DCコンバータ40から補機バッテリ32までの配線長が長いほど小さくなるように設定されてもよい。これは、電力ライン34のDC/DCコンバータ40から補機バッテリ32までの配線長が長いほど、その部分の寄生インダクタンス50が大きくなり、スイッチング素子41,42のスイッチング停止の直後の負のサージ電圧が高くなり、その直後の接続点P1の電圧Voが低くなりやすいためである。これにより、閾値Iorefをより適切に設定することができる。この結果、スイッチング素子41,42のスイッチングを停止するときに生じる負のサージ電圧が制御IC44に悪影響を与えるのをより適切に抑制することができる。なお、閾値Iorefは、低い値である方が負サージ抑制の効果が大きい。しかし、それと引き換えに電流Ioが閾値Ioref未満となるまでの時間が長くなるデメリットがある。そこで、この変形例の処理を追加することにより、設定する閾値Iorefを最適化して電流Ioが閾値Ioref未満となるまでの時間を短縮することができる。また、配線長は車種によって異なるため、車種に応じて閾値Iorefを選択し、切り替えてもよい。
【0031】
上述した実施形態では、電子制御ユニット70は、DC/DCコンバータ40の電流Ioが閾値Ioref未満に至ったときに、制御IC44にディスエーブル信号を出力するものとした。しかし、DC/DCコンバータ40の電流Ioが閾値Ioref未満になかなか至らない場合、DC/DCコンバータ40の停止条件が成立してから所定時間が経過したときに、制御IC44にディスエーブル信号を出力してもよい。
【0032】
上述した実施形態では、高電圧バッテリ26の負極端子は、接地(共通の負極ライン)に接続されているものとした。しかし、高電圧バッテリ26の負極端子は、接地に接続されていなくてもよい。
【0033】
上述した実施形態では、電気自動車20は、第1蓄電装置として高電圧バッテリ26を用いると共に第2蓄電装置として補機バッテリ32を用いるものとした。しかし、高電圧バッテリ26に代えてキャパシタを用いたり、補機バッテリ32に代えてキャパシタを用いたりしてもよい。
【0034】
上述した実施形態では、モータ22とインバータ24と高電圧バッテリ26と補機バッテリ32とDC/DCコンバータ40とを備える電気自動車20の形態として説明した。しかし、これに限定されるものではなく、モータとインバータと高電圧バッテリと補機バッテリとDC/DCコンバータとに加えてエンジンを備えるハイブリッド車の形態としたり、モータとインバータと高電圧バッテリと補機バッテリとDC/DCコンバータとに加えて燃料電池を備える燃料電池車の形態としたりしてもよい。
【0035】
実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施形態では、スイッチング素子41,42と制御IC44とを有するDC/DCコンバータ40が「DC/DCコンバータ」に相当し、電子制御ユニット70が「制御装置」に相当する。
【0036】
なお、実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0037】
以上、本開示を実施するための実施形態について説明したが、本開示はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本開示は、コンバータ装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0039】
20,120 電気自動車、22 モータ、24 インバータ、26 高電圧バッテリ、26i 電流センサ、26v 電圧センサ、30 電力ライン、32 補機バッテリ、32v 電圧センサ、34 電力ライン、40 DC/DCコンバータ、41,42 スイッチング素子、43 リアクトル、44 制御IC、45 コンデンサ、46,47 分圧用抵抗素子、48 信号線、49 電流センサ、50 寄生インダクタンス、70 電子制御ユニット、72 スタートスイッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6