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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017559
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】射出成形機およびノズルシリンダ
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/62 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
B29C45/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120277
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(72)【発明者】
【氏名】藤堂 良輔
(72)【発明者】
【氏名】佐光 巧
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206JA07
4F206JD05
4F206JF01
4F206JF12
4F206JL02
4F206JM01
4F206JM12
4F206JN03
4F206JQ42
4F206JQ74
4F206JQ86
(57)【要約】      (修正有)
【課題】成形材料の滞留防止と耐久性の向上と充填性の向上とを両立した、射出成形機またはそのノズルシリンダを提供する。
【解決手段】ジャンクション流路と計量空間に連通する供給流路41と、計量空間とノズル流路とに連通する唯一の流路である、互いに接続される1本の第1射出流路421と1本の第2射出流路422とで構成された射出流路42と、を有し、第1射出流路421は、プランジャの中心軸を通る直線である中心線Cに対して所定の角度で傾斜し、第2射出流路422は、中心線C上に延びる、ノズルシリンダ4または当該ノズルシリンダ4を備える射出成形機が提供される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形材料が供給される可塑化シリンダと、
前記可塑化シリンダ内に回転自在に設けられるスクリュと、
前記可塑化シリンダから送られた前記成形材料を貯留する内孔を有する射出シリンダと、
前記内孔に進退自在に設けられるプランジャと、
前記射出シリンダの前端部に取り付けられるとともに、前記内孔および前記プランジャの前面とともに前記成形材料を計量する計量空間を構成する壁面を有するノズルシリンダと、
前記可塑化シリンダと前記ノズルシリンダとに連通するジャンクション流路を有するジャンクションと、
前記プランジャで押し出された前記成形材料が流通するノズル流路を有し、前記ノズル流路が前記プランジャの中心軸を通る直線である中心線上に位置するように、前記ノズルシリンダの前端部に取り付けられるノズルと、を備え、
前記ノズルシリンダは、
前記ジャンクション流路と前記計量空間に連通する供給流路と、
前記計量空間と前記ノズル流路とに連通する唯一の流路である、互いに接続される1本の第1射出流路と1本の第2射出流路とで構成された射出流路と、を有し、
前記供給流路は、
前記ジャンクション流路と接続される供給流路入口と、
前記壁面において前記中心線よりも前記ジャンクション側に形成される供給流路出口と、を有し、
前記第1射出流路は、
前記中心線に対して所定の角度で傾斜するとともに、
前記壁面において前記中心線を挟んで前記供給流路出口と反対側に形成される第1射出流路入口と、
前記第2射出流路と接続される第1射出流路出口と、を有し、
前記第2射出流路は、
前記中心線上に延びるとともに、
前記第1射出流路と接続される第2射出流路流路入口と、
前記ノズル流路と接続される第2射出流路出口と、を有する、射出成形機。
【請求項2】
前記第1射出流路の前記角度は、15°以下である、請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記第1射出流路の前記角度は、5°以下である、請求項2に記載の射出成形機。
【請求項4】
成形材料が供給される可塑化シリンダと、前記可塑化シリンダ内に回転自在に設けられるスクリュと、前記可塑化シリンダから送られた前記成形材料を貯留する内孔を有する射出シリンダと、前記内孔に進退自在に設けられるプランジャと、前記射出シリンダの前端部に取り付けられるとともに、前記内孔および前記プランジャの前面とともに前記成形材料を計量する計量空間を構成する壁面を有するノズルシリンダと、前記可塑化シリンダと前記ノズルシリンダとに連通するジャンクション流路を有するジャンクションと、前記プランジャで押し出された前記成形材料が流通するノズル流路を有し、前記ノズル流路が前記プランジャの中心軸を通る直線である中心線上に位置するように、前記ノズルシリンダの前端部に取り付けられるノズルと、を備える射出成形機の前記ノズルシリンダであって、
前記ノズルシリンダは、
前記ジャンクション流路と前記計量空間に連通する供給流路と、
前記計量空間と前記ノズル流路とに連通する唯一の流路である、互いに接続される1本の第1射出流路と1本の第2射出流路とで構成された射出流路と、を有し、
前記供給流路は、
前記ジャンクション流路と接続される供給流路入口と、
前記壁面において前記中心線よりも前記ジャンクション側に形成される供給流路出口と、を有し、
前記第1射出流路は、
前記中心線に対して所定の角度で傾斜するとともに、
前記壁面において前記中心線を挟んで前記供給流路出口と反対側に形成される第1射出流路入口と、
前記第2射出流路と接続される第1射出流路出口と、を有し、
前記第2射出流路は、
前記中心線上に延びるとともに、
前記第1射出流路と接続される第2射出流路流路入口と、
前記ノズル流路と接続される第2射出流路出口と、を有する、ノズルシリンダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機、特にスクリュプリプラ式射出成形機と、そのノズルシリンダに関する。
【背景技術】
【0002】
スクリュプリプラ式の射出成形機の射出ユニットにおいては、成形材料を可塑化する可塑化部と、可塑化された成形材料を計量して射出する射出部とが別体に設けられ、可塑化部と射出部とはジャンクションを介して接続される。可塑化部は、可塑化シリンダおよび可塑化シリンダ内に設けられるスクリュを含んで構成される。射出部は、後側から順に、射出シリンダおよび射出シリンダに挿通されるプランジャと、ノズルシリンダと、ノズルと、を含んで構成される。
【0003】
可塑化部の可塑化シリンダからジャンクションを介して送られた成形材料は、ノズルシリンダ内の供給流路を通り、射出シリンダへと送られる。プランジャを前進させると、射出シリンダ内の成形材料が押し出される。プランジャによって押し出された成形材料は、ノズルシリンダ内の射出流路を通り、ノズルシリンダに取り付けられたノズルへと送られ、ノズルの先端から射出される。すなわち、ノズルシリンダは、ノズルの取付具としての役割を果たすとともに、成形材料の流路として供給流路および射出流路を有している。
【0004】
ノズルシリンダの後端部に形成される供給流路出口および射出流路入口の近辺においては成形材料が流動しやすいが、それらの開口から離れた部分においては成形材料の滞留が起こりやすい。成形材料が長時間滞留すると、炭化や劣化が生じ、成形不良の原因となることがある。また、滞留が起こりやすい状況下では、射出成形機内の成形材料を他の種類のものに変える際に、成形材料の置換に時間がかかることがある。
【0005】
そこで、射出流路の位置や、射出流路を構成する流路の本数等を工夫し、成形材料の滞留を防止する技術が公知である。例えば、特許文献1の図3に開示されるノズルシリンダ(ノズルアダプタ39)は、射出流路として、ノズルシリンダの中央部分に貫通して形成された射出孔31と、供給流路の出口(開口30a)と180°離れた位置に開口するとともに射出孔31の中間位置に接続される射出副路36と、を有する。また、特許文献1の図7および8に示されるノズルシリンダ(ノズルアダプタ39)は、射出流路として、ノズルシリンダの中央部分に形成され後側が閉塞している非貫通孔である射出孔31と、射出孔31の閉塞部分から90°ずつ角度を変えて分岐する3本の射出副路37,37,37と、を有する。このように射出流路を構成することで、成形材料の滞留を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許2615334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来は、ノズルシリンダの後端部に射出流路入口としての開口を複数設けることで、滞留防止を試みていた。しかしながら、複数の流路が存在すると部材の耐久性が下がり、長期の使用により亀裂が発生する虞がある。例えば、特許文献1の図3に開示されるノズルシリンダでは、射出孔31と射出副路36との間の部分に、亀裂が発生しやすい。特許文献1の図7および8に示されるノズルシリンダにおいても、3本の射出副路37,37,37の間の部分に、亀裂が発生しやすい。
【0008】
このようなノズルシリンダにおいて、耐久性を向上させ亀裂を防止する観点からは、各流路の径は小さい方が好ましい。しかしながら、流路の径が小さいと圧力損失が発生するため、金型への成形材料の充填性が悪化する。また、射出副路36,37,37,37は射出孔31,31と比べて特に小径に構成されていたので、射出副路36,37,37,37において、かえって滞留が生じることがあった。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、成形材料の滞留防止と、耐久性の向上と、充填性の向上と、を両立した、射出成形機またはそのノズルシリンダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、成形材料が供給される可塑化シリンダと、可塑化シリンダ内に回転自在に設けられるスクリュと、可塑化シリンダから送られた成形材料を貯留する内孔を有する射出シリンダと、内孔に進退自在に設けられるプランジャと、射出シリンダの前端部に取り付けられるとともに、内孔およびプランジャの前面とともに成形材料を計量する計量空間を構成する壁面を有するノズルシリンダと、可塑化シリンダとノズルシリンダとに連通するジャンクション流路を有するジャンクションと、プランジャで押し出された成形材料が流通するノズル流路を有し、ノズル流路がプランジャの中心軸を通る直線である中心線上に位置するように、ノズルシリンダの前端部に取り付けられるノズルと、を備え、ノズルシリンダは、ジャンクション流路と計量空間に連通する供給流路と、計量空間とノズル流路とに連通する唯一の流路である、互いに接続される1本の第1射出流路と1本の第2射出流路とで構成された射出流路と、を有し、供給流路は、ジャンクション流路と接続される供給流路入口と、壁面において中心線よりもジャンクション側に形成される供給流路出口と、を有し、第1射出流路は、中心線に対して所定の角度で傾斜するとともに、壁面において中心線を挟んで供給流路出口と反対側に形成される第1射出流路入口と、第2射出流路と接続される第1射出流路出口と、を有し、第2射出流路は、中心線上に延びるとともに、第1射出流路と接続される第2射出流路流路入口と、ノズル流路と接続される第2射出流路出口と、を有する、射出成形機が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、成形材料が供給される可塑化シリンダと、可塑化シリンダ内に回転自在に設けられるスクリュと、可塑化シリンダから送られた成形材料を貯留する内孔を有する射出シリンダと、内孔に進退自在に設けられるプランジャと、射出シリンダの前端部に取り付けられるとともに、内孔およびプランジャの前面とともに成形材料を計量する計量空間を構成する壁面を有するノズルシリンダと、可塑化シリンダとノズルシリンダとに連通するジャンクション流路を有するジャンクションと、プランジャで押し出された成形材料が流通するノズル流路を有し、ノズル流路がプランジャの中心軸を通る直線である中心線上に位置するように、ノズルシリンダの前端部に取り付けられるノズルと、を備える射出成形機のノズルシリンダであって、ノズルシリンダは、ジャンクション流路と計量空間に連通する供給流路と、計量空間とノズル流路とに連通する唯一の流路である、互いに接続される1本の第1射出流路と1本の第2射出流路とで構成された射出流路と、を有し、供給流路は、ジャンクション流路と接続される供給流路入口と、壁面において中心線よりもジャンクション側に形成される供給流路出口と、を有し、第1射出流路は、中心線に対して所定の角度で傾斜するとともに、壁面において中心線を挟んで供給流路出口と反対側に形成される第1射出流路入口と、第2射出流路と接続される第1射出流路出口と、を有し、第2射出流路は、中心線上に延びるとともに、第1射出流路と接続される第2射出流路流路入口と、ノズル流路と接続される第2射出流路出口と、を有する、ノズルシリンダが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るノズルシリンダでは、互いに接続される1本の第1射出流路および1本の第2射出流路が設けられる。第1射出流路の第1射出流路出口と、第2射出流路の第2射出流路入口とが接続され、第1射出流路および第2射出流路が、計量空間とノズル流路とに連通する唯一の射出流路を構成する。第1射出流路の第1射出流路入口は、プランジャの中心軸を通る直線である中心線を挟んで、供給流路の供給流路出口と反対側に形成されているので、成形材料の滞留が起こりにくい。また、第1射出流路および第2射出流路で構成される射出流路以外に、射出流路が設けられないので、複数の流路が近接して耐久性が下がる箇所がなく、亀裂が発生しにくい。加えて、射出流路の径を比較的大きくすることができ、圧力損失を抑えて、充填性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の射出成形機に係る射出ユニットの概略構成図である。
図2】本実施形態のノズルシリンダの斜視図である。
図3】本実施形態のノズルシリンダの斜視図である。
図4】本実施形態のノズルシリンダの断面図である。
図5】変形例のノズルシリンダの断面図であり、第1部材と第2部材とが分離した状態を示す。
図6】変形例のノズルシリンダの断面図であり、第1部材と第2部材とが係合した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に説明される各種変形例は、それぞれ任意に組み合わせて実施することができる。
【0015】
本実施形態の射出成形機は、スクリュプリプラ式射出成形機である。射出成形機は、射出ユニット100と、型締ユニット(不図示)と、射出ユニット100および型締ユニットを制御する制御装置(不図示)と、を備える。射出ユニット100は、成形材料を可塑化させ、所定量を計量した後に、型締ユニットによって保持される不図示の金型に対して射出する。型締ユニットは、金型を開閉および型締可能に構成されている。型締ユニットは、成形材料が射出されるときは、金型を閉じ、所定圧力の型締力を金型に対して付与する。金型のキャビティ内に射出された成形材料が冷却されて成形品となった後、型締ユニットは金型を開いて成形品を排出し、再度金型を閉じる。型締ユニットとしては、直圧式やトグル式等、周知の構成が採用できる。
【0016】
図1に示されるように、射出ユニット100は、可塑化部1と、ジャンクション2と、射出部3と、を備える。図1においては、構成の一部が断面図として示される。本明細書では、特に断りがない限り、成形材料が射出される側(図1における左側)を「前」、成形材料が供給される側(図1における右側)を「後」として説明する。また、成形材料の流路に関して、流動方向の上流側の開口を「入口」、下流側の開口を「出口」という。また、以下においては横型射出成形機を例に説明するが、射出成形機は竪型射出成形機等の他の形態であってもよい。
【0017】
可塑化部1は、供給された成形材料を可塑化し、前方に送る。可塑化部1は、可塑化シリンダ11と、スクリュ13と、逆止装置15と、スクリュ駆動装置17と、ヒータ19と、を含む。
【0018】
可塑化シリンダ11は、成形材料が供給される筒体である。可塑化シリンダ11の後側には材料投入口111が形成され、不図示のホッパー等を介して材料投入口111に成形材料が供給される。可塑化シリンダ11は、ヒータ19により所望の温度に加熱される。
【0019】
スクリュ13は、可塑化シリンダ11内に回転自在に設けられる。スクリュ13は、可塑化シリンダ11に供給された成形材料を、ヒータ19による熱と、剪断熱によって可塑化しながら、前方へと送る。
【0020】
逆止装置15は、例えば単動シリンダであり、計量完了時にスクリュ13を前進させて流路を塞ぎ、射出時の成形材料の逆流を防止する。このような逆止装置15に代えて、ボールバルブ等の他の逆止機構が設けられてもよい。ただし、ボールバルブによる逆流防止に比べて、スクリュ13の前進による逆流防止は成形材料の滞留が起こりにくい点で好適である。
【0021】
スクリュ駆動装置17は、スクリュ13を回転させる任意のアクチュエータであってよいが、例えば油圧モータまたは電動モータである。
【0022】
ジャンクション2は、可塑化部1と射出部3とを接続する。より具体的には、ジャンクション2は、可塑化部1の可塑化シリンダ11と、射出部3のノズルシリンダ4とを接続する。ジャンクション2は、可塑化シリンダ11とノズルシリンダ4とに連通する、ジャンクション流路21を有する。可塑化シリンダ11から送られた成形材料は、ジャンクション2のジャンクション流路21を通り、ノズルシリンダ4を経由して、射出部3の射出シリンダ31へと送られる。ジャンクション2は、ヒータにより加熱可能に構成されてもよい。
【0023】
スクリュ13の前進による逆流防止を行う場合は、ジャンクション2のスクリュ13との当接部に、ジャンクション2の本体と分離可能なタッチブッシュ23が設けられることが望ましい。また、ジャンクション2とノズルシリンダ4との位置決めのため、ジャンクション2およびノズルシリンダ4に係合するジャンクションリング25が設けられてもよい。タッチブッシュ23およびジャンクションリング25には、成形材料が流通可能な流路が形成される。
【0024】
射出部3は、可塑化部1から送られた成形材料を計量して、金型へと射出する。射出部3は、射出シリンダ31と、プランジャ32と、プランジャ駆動装置33と、ノズルシリンダ4と、ノズル34と、ヒータ35,36と、を含む。
【0025】
射出シリンダ31は、可塑化シリンダ11から送られた成形材料を計量する筒体である。すなわち、射出シリンダ31は、可塑化シリンダ11から送られた成形材料を貯留する貫通孔である内孔を有する。射出シリンダ31は、ヒータ35により所望の温度に加熱される。
【0026】
プランジャ32は、射出シリンダ31の内孔に進退自在に設けられる、略円柱状の部材である。ただし、プランジャ32の先端は、略円錐形状を有していることが望ましい。計量時、プランジャ32は、射出シリンダ31に供給された成形材料の圧力により後退する。プランジャ32の位置を不図示のエンコーダで検出することで、所望の量の成形材料を射出シリンダ31内で計量することができる。ただし、計量にあたっては、プランジャ32をプランジャ駆動装置33により能動的に後退させてもよい。所定量の成形材料を計量後、プランジャ32は所定の速度または圧力で前進し、射出シリンダ31内の成形材料をノズル34へと押し出す。
【0027】
プランジャ駆動装置33は、プランジャ32を前後退させる任意のアクチュエータであってよいが、例えば油圧シリンダまたは電動シリンダである。
【0028】
以下においては、プランジャ32の中心軸を通る直線を、中心線Cと呼ぶ。また、射出シリンダ31の内孔と、プランジャ32の前面と、ノズルシリンダ4の後端面の一部である壁面43と、で構成される空間であって、成形材料を計量する空間を計量空間311と呼ぶ。
【0029】
射出シリンダ31の前端部には、ノズルシリンダ4が取り付けられる。ノズルシリンダ4は、ノズル34の取付具としての役割を果たすとともに、成形材料の流路として供給流路41および射出流路42を有している。ノズルシリンダ4は、ヒータ35により所望の温度に加熱される。ノズルシリンダ4の詳細な構成については後述する。
【0030】
ノズル34は、プランジャ32で押し出された成形材料が流通するノズル流路341を有する。ノズル34は、ノズルシリンダ4の前端部に取り付けられ、このとき、ノズル流路341は中心線C上に位置する。ノズル34は少なくとも射出時、金型のゲート口に当接される。プランジャ32によって押し出された成形材料は、射出流路42を経由してノズル流路341へ送られ、ノズル34の先端から金型へと射出される。ノズル34は、ヒータ36により所望の温度に加熱される。
【0031】
ここで、図2から図4を参照しながら、ノズルシリンダ4について詳述する。ノズルシリンダ4は、供給流路41と、射出流路42と、壁面43と、取付孔44と、を有する。
【0032】
ノズルシリンダ4の後端部には、計量空間311の前面をなし、プランジャ32の先端と対面する壁面43が設けられる。本実施形態のようにプランジャ32の先端が略円錐形状を有する場合は、壁面43はプランジャ32の先端と係合する略円錐形状を有する窪みに形成される。
【0033】
ノズルシリンダ4の前端部には、ノズル34を取り付けるための取付孔44が設けられる。取付孔44の側面には雌ネジが形成されており、ノズル34の後端部に形成された雄ネジと螺合する。
【0034】
供給流路41は、ジャンクション流路21と計量空間311に連通し、可塑化シリンダ11からジャンクション2を介して計量空間311へと成形材料を供給する流路である。供給流路41の入口側の開口である供給流路入口41aは、ジャンクション2との接続部分に形成され、ジャンクション流路21とジャンクションリング25を介して接続される。供給流路41の出口側の開口である供給流路出口41bは、壁面43において中心線Cよりもジャンクション2側に形成され、計量空間311と接続される。典型的な横型射出成形機においては、供給流路出口41bは、壁面43の周縁における上部に形成される。
【0035】
射出流路42は、計量空間311とノズル流路341とに連通し、計量空間311からノズル34へと成形材料を排出する流路である。本実施形態のノズルシリンダ4では、計量空間311とノズル流路341とに連通する流路としては、射出流路42が唯一の流路である。射出流路42は、互いに接続される1本の第1射出流路421と、1本の第2射出流路422と、で構成される。
【0036】
第1射出流路421は、計量空間311と第2射出流路422とに連通し、中心線Cに対して所定の角度で傾斜する流路である。第1射出流路421の入口側の開口である第1射出流路入口421aは、壁面43において中心線Cを挟んで供給流路出口41bと反対側、すなわち180°離れた位置に形成され、計量空間311と接続される。典型的な横型射出成形機においては、第1射出流路入口421aは、壁面43の周縁における下部に形成される。第1射出流路421の出口側の開口である第1射出流路出口421bは、ノズルシリンダ4の内部に形成され、第2射出流路422と接続される。
【0037】
第2射出流路422は、第1射出流路421とノズル流路341とに連通し、中心線C上に延びる流路である。第2射出流路422の入口側の開口である第2射出流路入口422aは、ノズルシリンダ4の内部に形成され、第1射出流路421と接続される。すなわち、第1射出流路出口421bと第2射出流路入口422aとが、互いに接続される。第2射出流路422の出口側の開口である第2射出流路出口422bは、取付孔44の前面に形成され、ノズル流路341と接続される。
【0038】
第1射出流路421と第2射出流路422の合流地点では不可避の圧力損失が生じる。ただし、第1射出流路421の傾斜角度が十分小さければ、圧力損失は無視できる程度に小さくなる。第1射出流路421の中心線Cに対する傾斜角度は、例えば、15°以下であることが好ましく、特に5°以下であることが好ましい。第2射出流路422はノズル流路341との接続性を向上させるために形成されているものであるので、第1射出流路421の傾斜角度を小さくする上では短い方が好ましい。本実施形態のノズルシリンダ4においては、第2射出流路422は、例えば、10mm以下であってよい。
【0039】
一般的な射出成形機においては、ノズル流路341が中心線C上に存在するよう設計されている。そのため、既存のノズルシリンダと互換性のあるノズルシリンダ4を設計する上では、中心線C上に第2射出流路422を設けることが望ましい。
【0040】
なお、本明細書では、線分上を通る連続した流路を「1本の流路」として扱う。射出流路42は、互いに接続される1本の第1射出流路421と、1本の第2射出流路422と、で構成され、計量空間311とノズル流路341とに連通する唯一の流路であるが、これは、射出流路42は1点のみで屈曲する流路であり、射出流路42を構成する流路は分岐しておらず、第1射出流路入口421aが唯一の射出流路42の入口であり、第2射出流路出口422bが唯一の射出流路42の出口であり、射出流路42の他に計量空間311とノズル流路341とに連通する流路がないことを意味する。
【0041】
逆に、線分上を通る連続した流路である限りにおいて、第1射出流路421または第2射出流路422は、2つ以上に分割して構成されてもよい。図5および図6には、変形例に係るノズルシリンダ40が示される。本変形例においては、ノズルシリンダ4に係る構成と同等の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。ノズルシリンダ40は、互いに分離・係合可能な第1部材4Aと第2部材4Bとを含んで構成される。
【0042】
第1部材4Aの前端部には、第2部材4Bを取り付けるための取付孔45が設けられ、取付孔44の側面には雌ネジが形成される。第2部材4Bの後端部に位置する係合部46には、取付孔44の雌ネジと螺合する雄ネジが形成される。図6に示されるように、取付孔45に係合部46を係合させることで、ノズルシリンダ40が組み立てられる。
【0043】
第1部材4Aは、供給流路入口41aおよび供給流路出口41bを含む供給流路41と、第1射出流路入口421aおよび第1射出流路出口421bを含む第1射出流路421と、第2射出流路入口422aを含む第2射出流路422の一部と、壁面43と、取付孔45と、を備える。第2部材4Bは、第2射出流路出口422bを含む第2射出流路422の一部と、取付孔44と、係合部46と、を備える。すなわち、第2射出流路422が、第1部材4Aと第2部材4Bを跨いで、2つに分割して形成されている。
【0044】
本変形例に係るノズルシリンダ40では、第1部材4Aと第2部材4Bを跨いで、第2射出流路422が分割して形成される。この場合、第1部材4Aに形成される流路の出口と第2部材4Bに形成させる流路の入口との位置とが整合するよう、第1部材4Aおよび第2部材4Bを製造することが容易である。ただし、第1部材4Aと第2部材4Bを跨いで、第1射出流路421が分割されてもよい。この場合、第2射出流路422をより短く形成することが容易であるため、第1射出流路421の傾斜角度をより小さく設計できる。いずれの場合においても、第1射出流路421の中心線Cに対する傾斜角度は、例えば、15°以下であることが好ましい。
【0045】
このように、ノズルシリンダは2つ以上の部材に分割可能に構成されてもよい。ノズルシリンダは、通常は鋼材のブロックを加工することで製造される。このように分割可能に構成することで、各部材の製造時に廃棄となる部分を減らすことができ、製造時のコストを抑えることができる。特に、サイズが大きいノズルシリンダにおいては、分割可能に構成することによるコスト削減のメリットが大きい。
【0046】
ここで、本実施形態における成形材料の流動の仕方について説明する。計量時、スクリュ13の回転により可塑化シリンダ11から送られた成形材料は、ジャンクション流路21および供給流路41を通り、計量空間311へと送られる。計量の初期段階においては、プランジャ32先端の略円錐形状に沿って、供給流路出口41bから吐出された成形材料が第1射出流路入口421a付近へと流動する。この流れにより、計量空間311に残存した前回計量した成形材料が第1射出流路入口421a付近へと押し出されるので、成形材料の滞留が防止される。
【0047】
計量完了後、スクリュ13をタッチブッシュ23へと当接させ、計量空間311から可塑化シリンダ11へと成形材料が逆流することを防止する。そして、プランジャ32を前進させ、成形材料の射出を行う。プランジャ32によって押し出された成形材料は、第1射出流路入口421aから第1射出流路421へと流入し、第2射出流路422を通り、ノズル流路431へと送られる。こうして、ノズル34の先端から、金型へと成形材料が射出される。
【0048】
本実施形態のノズルシリンダ4では、中心線Cを挟んで壁面43に供給流路入口41aおよび第1射出流路入口421aがそれぞれ設けられているので、壁面43の周辺全体で成形材料が流動しやすく、滞留が発生しにくい。
【0049】
また、本実施形態のノズルシリンダ4では、第1射出流路421および第2射出流路422で構成される射出流路42が、計量空間311とノズル流路341とに連通する流路としては唯一である。そのため、複数の流路が近接して耐久性が下がる箇所がなく、亀裂が発生しにくい。また、射出流路42の径を比較的大きくすることができるので、圧力損失が抑えられ、充填性が向上する。射出流路42の径の適切な値は、例えば、ノズルシリンダ4に係る三次元モデルを作成し、流動解析を行うことで求めることができる。
【0050】
本発明は、既にいくつかの例が具体的に示されているように、図面に示される実施形態の構成に限定されず、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形または応用が可能である。
【符号の説明】
【0051】
11 可塑化シリンダ
13 スクリュ
2 ジャンクション
21 ジャンクション流路
31 射出シリンダ
311 計量空間
32 プランジャ
34 ノズル
341 ノズル流路
4 ノズルシリンダ
41 供給流路
41a 供給流路入口
41b 供給流路出口
42 射出流路
421 第1射出流路
421a 第1射出流路入口
421b 第1射出流路出口
422 第2射出流路
422a 第2射出流路入口
422b 第2射出流路出口
43 壁面
C 中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6