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特開2024-175593作業機械の油圧ホース保持装置および油圧ショベル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175593
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】作業機械の油圧ホース保持装置および油圧ショベル
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
E02F9/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093495
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】槇野 裕太
(72)【発明者】
【氏名】進 崇一郎
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015BA01
(57)【要約】
【課題】複数の油圧ホースを保持させる構成において、簡易な構成でありながら設置場所の自由度を向上させた作業機械の油圧ホース保持装置および油圧ショベルを提供すること。
【解決手段】 掘削作業機1は油圧シリンダにより動作する掘削装置と、油圧シリンダと油圧源とを接続する複数の油圧ホースを保持する油圧ホース保持装置60を備え、油圧ホース保持装置60は、直方体状の第1ゴム体61と、板状の第2ゴム体71と、第1ゴム体61および第2ゴム体71を挟持する2枚の挟持板81,82を有し、第1ゴム体61に穿設された複数の第1保持部62と、第1ゴム体61の第3面に形成された複数の第1溝部と第2ゴム体71の一面に形成された複数の第2溝部とを向かい合わせに配置することで形成される複数の第2保持部72に油圧ホースを保持するものである。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ホースを貫通させた状態で保持し、貫通方向を共通とするように所定の方向について列設された複数の第1保持部と、
前記第1保持部が開口する側と異なる側の面に形成され、前記第1保持部の貫通方向を延伸方向とした複数の第1溝部と、を有し、
複数の前記第1溝部は、前記所定の方向について前記第1保持部とずれた位置に設けられている、
作業機械の油圧ホース保持装置。
【請求項2】
複数の前記第1保持部と、複数の前記第1溝部を有する第1ゴム体と、
複数の前記第1溝部のそれぞれに対応する複数の第2溝部が設けられた第2ゴム体と、
を備え、
複数の前記第1溝部と複数の前記第2溝部とをそれぞれ対向配置することにより、前記第1ゴム体と前記第2ゴム体との間にそれぞれが前記油圧ホースを保持する複数の第2保持部を形成する、
請求項1に記載の作業機械の油圧ホース保持装置。
【請求項3】
前記第1保持部は、隣り合う前記第1溝部の間に形成される仕切領域と対向する位置に形成される、
請求項2に記載の作業機械の油圧ホース保持装置。
【請求項4】
前記第1ゴム体は、複数の前記第1溝部が形成された面と反対側の面から複数の前記第1保持部のそれぞれに向けて前記第1保持部につながるように形成されるスリットを有する、
請求項3に記載の作業機械の油圧ホース保持装置。
【請求項5】
機体に装着するための装着部を備え、
前記第1ゴム体および前記第2ゴム体は、前記装着部に対して、複数の前記第1保持部および複数の前記第2保持部の各々の形成方向を傾斜させて設けられている、
請求項2に記載の作業機械の油圧ホース保持装置。
【請求項6】
前記第1ゴム体と前記第2ゴム体を、前記第1溝部と前記第2溝部が対向する方向に挟持する2枚の板部材を備え、
前記2枚の板部材のうちの一方の一端には、前記装着部が設けられている、
請求項5に記載の作業機械の油圧ホース保持装置。
【請求項7】
上部にブームを回動可能に支持する第1支持部と、前端部に前記ブームを回動動作させるブームシリンダを回動可能に支持する第2支持部と、前記第1支持部の下方かつ前記第2支持部の後方で機体フレームに上下方向を軸方向として回動可能に連結される連結部と、を有するブームブラケットを備え、
前記ブームブラケット内において前記第1支持部、前記第2支持部および前記連結部との間に形成された空間に、請求項1から請求項6の何れか1項に記載の作業機械の油圧ホース保持装置が配置されている油圧ショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧により動作する作業装置を備えた作業機械の油圧ホース保持装置および油圧ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば掘削作業機等の作業機械には、左右一対のクローラ式の走行部を有する下部走行体と、下部走行体に旋回可能に接続された上部旋回体と、上部旋回体の旋回フレームの前側に俯仰動可能に設けられた作業装置から構成されたものがある。掘削作業機は油圧ショベルとも呼称され、油圧により作業装置を動作させている。
【0003】
油圧により動作する作業装置は、上部旋回体内に配設された油圧源から圧油の給排を受ける複数の油圧アクチュエータを有している。これら複数の油圧アクチュエータの各々と油圧源との間は、金属製配管及び可撓性を有する油圧ホースを含んで設けられた複数の油圧給排路により接続されている。
【0004】
掘削作業機の作業装置は、ブームと、ブームの先端に回動可能に取り付けられたアームと、アームの先端に回動可能に取り付けられたバケット等の作業具から構成されている。ブーム、アームおよびバケットをそれぞれ回動動作させる油圧アクチュエータに対して圧油を給排する油圧給排路を構成する部材としては、例えば、ブームの基端側では、ブームの回動時に変形可能な可撓性を有する油圧ホースが採用されている。
【0005】
特許文献1では、ブームの回動に追従して油圧ホースに撓みが生じたときに、複数の油圧ホースが互いに絡まり、あるいは、互いに擦れて摩耗することを防止するために、ホースクランプにより複数の油圧ホースを結束するようにした構成が提案されている。特許文献1に提案されたホースクランプの構成では、上下2段にブームの幅方向に列設された複数の油圧ホースを、上段側ホースクランプと下段側ホースクランプにそれぞれ結束し、上段側ホースクランプと下段側ホースクランプとが、互いに前後方向にスライド可能に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-144897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のホースクランプは、上段側ホースクランプと下段側ホースクランプとを互いに前後方向にスライド可能とするために、構造が複雑化し、製造コストが高くなるという問題がある。さらに、ホースクランプ自体の大きさも、スライド部分を含むことで大きくなり、設置場所の自由度が低いという問題も有している。
【0008】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、複数の油圧ホースを保持させる構成において、簡易な構成でありながら設置場所の自由度を向上させた作業機械の油圧ホース保持装置および油圧ショベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る作業機械の油圧ホース保持装置は、油圧ホースを貫通させた状態で保持し、貫通方向を共通とするように所定の方向について列設された複数の第1保持部と、前記第1保持部が開口する側と異なる側の面に形成され、前記第1保持部の貫通方向を延伸方向とした複数の第1溝部と、を有し、複数の前記第1溝部は、前記所定の方向について前記第1保持部とずれた位置に設けられているものである。
【0010】
本発明の他の態様に係る作業機械の油圧ホース保持装置は、前記油圧ホース保持装置において、複数の前記第1保持部と、複数の前記第1溝部を有する第1ゴム体と、複数の前記第1溝部のそれぞれに対応する複数の第2溝部が設けられた第2ゴム体と、を備え、複数の前記第1溝部と複数の前記第2溝部とをそれぞれ対向配置することにより、前記第1ゴム体と前記第2ゴム体との間にそれぞれが前記油圧ホースを保持する複数の第2保持部を形成するものである。
【0011】
本発明の他の態様に係る作業機械の油圧ホース保持装置は、前記油圧ホース保持装置において、前記第1保持部は、隣り合う前記第1溝部の間に形成される仕切領域と対向する位置に形成されるものである。
【0012】
本発明の他の態様に係る作業機械の油圧ホース保持装置は、前記第1ゴム体は、複数の前記第1溝部が形成された面と反対側の面から複数の前記第1保持部のそれぞれに向けて前記第1保持部につながるように形成されるスリットを有するものである。
【0013】
本発明の他の態様に係る作業機械の油圧ホース保持装置は、前記油圧ホース保持装置おいて、機体に装着するための装着部を備え、前記第1ゴム体および前記第2ゴム体は、前記装着部に対して、複数の前記第1保持部および複数の前記第2保持部の各々の形成方向を傾斜させて設けられているものである。
【0014】
本発明の他の態様に係る作業機械の油圧ホース保持装置は、前記油圧ホース保持装置において、前記第1ゴム体と前記第2ゴム体を、前記第1溝部と前記第2溝部が対向する方向に挟持する2枚の板部材を備え、前記2枚の板部材のうちの一方の一端には、前記装着部が設けられているものである。
【0015】
本発明に係る油圧ショベルは、上部にブームを回動可能に支持する第1支持部と、前端部に前記ブームを回動動作させるブームシリンダを回動可能に支持する第2支持部と、前記第1支持部の下方かつ前記第2支持部の後方で機体フレームに上下方向を軸方向として回動可能に連結される連結部と、を有するブームブラケットを備え、前記ブームブラケット内において前記第1支持部、前記第2支持部および前記連結部との間に形成された空間に、前記作業機械の油圧ホース保持装置が配置されているものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の油圧ホースを保持させる構成において、簡易な構成でありながら作業機械への設置の自由度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る掘削作業機の斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る掘削作業機の掘削装置の支持部分の部分拡大図である。
図3】本発明の一実施形態に係る掘削作業機のブームブラケットの前方左上方視からの斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係る掘削作業機のブームブラケットの後方右上方視からの斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係る掘削作業機の油圧ホース保持装置の斜視図である。
図6】本発明の一実施形態に係る掘削作業機の油圧ホース保持装置の正面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る掘削作業機の油圧ホース保持装置の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、複数の油圧ホースを保持する構成の油圧ホース保持装置において、簡易な構成でありながら、作業機械における設置位置の自由度の向上を図るものである。以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
本発明の実施の形態では、本発明に係る油圧ホース保持装置を適用する作業機械として、旋回作業車である掘削作業機(油圧ショベル)を例にとって説明する。ただし、本発明に係る油圧ホース保持装置は、掘削作業機に限らず、例えば、ブルドーザ、クレーン作業機、コンパクトトラックローダ、スキッドステアローダ、ホイールローダ等の他の作業機械にも広く適用可能である。
【0020】
本実施形態に係る掘削作業機1の全体構成について、図1を用いて説明する。なお、以下では、特に方向視を定めない限り、掘削作業機1の運転席に着座したオペレータの位置を基準に、「前側」、「後側」、「左右側」、「平面側」又は「上側」、「底面側」又は「下側」と称する。
【0021】
図1に示すように、掘削作業機1は、自走可能な走行車体(機体)2と、走行車体2に取り付けられた作業機としての掘削装置3および排土装置4とを備える。走行車体2は、走行部5を備えた下部走行体20Aと、下部走行体20Aの上部に旋回可能に設けられた上部旋回体20Bとから構成される。排土装置4は下部走行体20A側に取付けられ、掘削装置3は上部旋回体20B側に取付けられる。
【0022】
下部走行体20Aは、左右一対のクローラ式の走行部5,5と、左右の走行部5,5間に介設された基台としてのトラックフレーム6を有する。
【0023】
走行部5は、トラックフレーム6に支持されたスプロケット、アイドラおよび複数のローラに履帯を巻回した構成を有する。走行部5は、その後端部に、駆動輪である駆動スプロケット5aを有する。
【0024】
トラックフレーム6は、左右の走行部5,5間に位置するセンターフレーム部6aと、センターフレーム部6aの左右両側に設けられたサイドフレーム部6bとを有する。
【0025】
トラックフレーム6の前側には、排土装置4が取り付けられている。排土装置4は、左右の走行部5,5間において前後方向に伸延する一対の支持フレーム4bと、支持フレーム4bの先端側に設けられた排土板としてのブレード4aとを有する。排土装置4は、支持フレーム4bとトラックフレーム6との間に設けられたブレードシリンダ(図示せず)によって昇降回動可能に設けられている。これらの構成を含む排土装置4は、全体として略左右対称に構成されている。
【0026】
旋回フレーム7は、平面視略円形状に構成され、トラックフレーム6に対して、トラックフレーム6の上側に設けられた旋回ベアリング6cにより、上下方向の軸線回りに左右いずれの方向にも旋回可能に設けられている。旋回フレーム7の後下部には、カウンタウエイト7aが設けられている。また、旋回フレーム7は、左右の走行部5,5の左右幅内、つまり左側の走行部5の左外側縁端と右側の走行部5の右側縁端との間の幅内で旋回可能に構成されている。これにより、掘削作業機1による小旋回作業が可能となっている。
【0027】
旋回フレーム7上には、運転部10が設けられている。運転部10の右側には、タンク部9が設けられている。タンク部9には、掘削作業機1が有する油圧シリンダ等の油圧アクチュエータに供給される作動油を収容する作動油タンクが設けられている。運転部10の床部8の左側が、運転部10に対するオペレータの乗降口となっている。また、旋回フレーム7上の後部には、駆動源として、原動機であるエンジン12が設けられている。旋回フレーム7の後部および右側面はボンネットおよび外装カバーによって覆われている。
【0028】
運転部10は、掘削装置3および走行部5を運転・操作するためのものである。旋回フレーム7上には、運転部10に対してキャノピ13が設けられている。キャノピ13は、旋回フレーム7の後部上方に立設された左右一対の支柱部36,36と、支柱部36,36に支持され前方に張り出して設けられたキャノピルーフ部38とを有する。キャノピルーフ部38は、運転部10を上方から覆っている。
【0029】
運転部10においては、床部8の後側に運転席支持台14が設けられている。そして、運転席支持台14上に運転席15が設けられている。運転席15の前方には、左右一対の走行レバー16が、床部8から上方へ向けて延出した状態で設けられている。床部8上における走行レバー16の左右両側には、作業用の複数の操作ペダル18が配設されている。また、運転部10において、運転席15の周囲には、掘削装置3等の作業部を操作するための作業操作レバー17およびスイッチ等の各種操作部を有する操作パネル部等が設けられている。
【0030】
掘削装置3は、油圧により動作する作業装置であり、掘削作業機1の前側に設けられたフロント作業装置である。旋回フレーム7の前端の左右中央部には、掘削装置3を支持する支持ブラケット41が前方に向けて突設されている。支持ブラケット41に、掘削装置3の基端部をなすブームブラケット42を、上下方向を回動軸方向として回動可能に支持させている。掘削装置3は、ブームブラケット42と旋回フレーム7との間に設けられたスイングシリンダ29(図4参照)により、旋回フレーム7に対して左右にスイングするように設けられている。
【0031】
掘削装置3は、側面視でブーメラン状に屈曲した形状を有し掘削装置3の基部側の部分を構成するブーム21と、ブーム21の先端側に連結されたアーム22と、アーム22の先端部に取り付けられたバケット23とを有する。掘削装置3は、ブーム21を回動動作させるブームシリンダ26と、アーム22を回動動作させるアームシリンダ27と、バケット23を回動動作させる作業具シリンダ28とを有する。これらのシリンダは、いずれも油圧シリンダである。掘削装置3においては、作業内容に応じてバケット23に替えてグラップルまたはブレーカ等の他の装置が装着される。
【0032】
以上のような構成を備えた掘削作業機1においては、運転席15に着座したオペレータにより走行レバー16、作業操作レバー17、および、操作ペダル18が適宜操作されることで、所望の動作・作業が行われる。
【0033】
旋回フレーム7の前端に設けられた掘削装置3の支持部分の構成について、図2から図4を参照しつつ説明する。図2は、旋回フレーム7の前端における掘削装置3の支持部分を拡大して示す斜視図である。図3は、掘削装置3の支持部分を構成するブームブラケット42の左前上方視からの斜視図であり、図4は、その右後上方視からの斜視図である。なお、図2においては、ブームシリンダ26および運転部10の図示を省略している。また、図3においては、ブームブラケット42の一部を切断して示している。
【0034】
支持ブラケット41は、旋回フレーム7の底板7bの前方に所定の距離だけ離間させて水平に突設された上下一対の連結部41a,41bにより構成されている。上下一対の連結部41a,41bの同一垂直線上となる位置には、それぞれ連結軸を挿通可能な孔部が設けられている。また、前面視において上下一対の連結部41a,41bの間には旋回フレーム7の内部に連通する開口部39(図2参照)が設けられている。この開口部39は、機関室11に設けられた油圧源から延伸された油圧ホース55を挿通可能とするものである。
【0035】
ブームブラケット42は、鋳型成形により形成され、左右一対の壁部43a,43bを有する。ブームブラケット42の左右一対の壁部43a,43bの間には、ブーム21を回動可能に支持する回動支軸48およびブームシリンダ26を回動可能に支持する回動支軸49が互いに平行に架設されている。ブームブラケット42の上部に回動支軸48を含むブーム支持部31(第1支持部)、前面の上下方向中間部に回動支軸49を含むブームシリンダ支持部32(第2支持部)、右側の壁部43bに右側方に突出させてスイングシリンダ連結部33が、それぞれ設けられている。
【0036】
ブームブラケット42の後面の上下両側には、支持ブラケット41の上下一対の連結部41a,41bとそれぞれ連結軸を介して連結される連結部45,46が設けられている。連結部45,46は、ブーム支持部31より下方かつブームシリンダ支持部32よりも後方に設けられている。
【0037】
ブームブラケット42の上側の連結部45は、側面視略横U字形状に形成された上下一対のボス部45a,45bを有する。同様にブームブラケット42の下側の連結部46は、側面視略横U字形状に形成された上下一対のボス部46a,46bを有する。さらに、各ボス部45a,45b,46a,46bの同一垂直線上となる位置には、連結軸を挿通可能な孔部45c,45d,46c,46dが設けられている。上下一対のボス部45a,45bおよびボス部46a,46bの下側のボス部45b,46bには、ボルト53a,53bを挿入可能な孔部45e,46eが回転軸方向と直交する方向(水平方向)に貫通して設けられている。ボルト53a,53bを、下側のボス部45b,46bおよび連結軸を径方向に貫通して設けることにより、連結軸を連結部45,46に固定する。
【0038】
ブームブラケット42の上側の連結部45と下側の連結部46との間には、前後方向に油圧ホース55を貫通させることが可能な開口部54が形成されている。
【0039】
油圧ホース55は可撓性部材から成り、開口部54を介して、図2に示すように、旋回フレーム7の内部からブームブラケット42の前方に油圧ホース55を引き出し、さらに左右の壁部43a,43bの間の空間56の上方に向けて引き回すことが可能となっている。また、油圧ホース55はブーム21の回動に応じて変形する
【0040】
ブームブラケット42を支持ブラケット41に取り付けるときには、連結部45のボス部45a,45bの間に支持ブラケット41側の連結部41aを、連結部46のボス部46a,46bの間に、支持ブラケット41側の連結部41bを挟み込むようにして、支持ブラケット41にブームブラケット42を係合させる。その状態で、ブームブラケット42の上側のボス部45a,45bの孔部45c,45dと支持ブラケット41の上側の連結部41aの孔部により形成される貫通孔に上方から連結軸を挿入する。同様に、ブームブラケット42の下側のボス部46a,46bの孔部46c,46dと支持ブラケット41の下側の連結部41bの孔部により形成される貫通孔に下方から連結軸を挿入する。しかる後、ブームブラケット42の連結部45における下側のボス部45bの孔部45eにボルト53aを挿入して連結軸を径方向に貫通させ、ボス部45bから突出したボルト53aの端部にナット(図示せず)を締結する。同様に、ブームブラケット42の連結部46における下側のボス部46bにボルト53bを挿入し、連結軸を径方向に貫通させ、ボス部46bから突出したボルト53bの端部にナット(図示せず)を締結する。これにより、ブームブラケット42が連結軸を介して支持ブラケット41に連結される。
【0041】
図2に示すように、支持ブラケット41側の連結部41aとブームブラケット42側の連結部45の連結部分、および、支持ブラケット41側の連結部41bとブームブラケット42側の連結部46の連結部分の間には、ブームブラケット42を左右に回動させたときに、旋回フレーム7の内部から開口部39を通して引き出した油圧ホース55の弛みを許容しつつ、油圧ホース55と支持ブラケット41およびブームブラケット42の部材との干渉を避けるため、空間57(図2参照)が設けられている。
【0042】
旋回フレーム7内から開口部39を抜けて前方に延出された複数の油圧ホース55は、支持ブラケット41の内部およびブームブラケット42の内部を後方から前方に向けて通り、ブームブラケット42のブームシリンダ支持部32とブーム支持部31との間で上向きに方向を変え、さらに、前方から後方斜め上方に向かいつつ、ブームブラケット42のブーム支持部31において支持された掘削装置3の基端部21aの下方を抜けて掘削装置3の背面に延びて配設される。複数の油圧ホース55は、側面視において略S字を描くように、ブームブラケット42内において、ブーム21の基端と上側の連結部45の間を抜けてブーム21の背面側に達する。
【0043】
複数の油圧ホース55の各々は、ブームブラケット42内の中途において、油圧ホース保持装置60により保持されている。また、複数の油圧ホース55の各々は、ブーム21の背面に固定された油圧ホースホルダ90によっても保持されている。なお、油圧ホースホルダ90は、従来から油圧ホース55の保持に用いられている金属製、ゴム製およびこれらを組み合わせたものを採用することができる。複数の油圧ホース55は、油圧ホース保持装置60および油圧ホースホルダ90による各保持部において固定状態で保持され、両保持部間の部分について、掘削装置3の姿勢(ブーム21の回動位置)によって形態を変化させる。具体的には、複数の油圧ホース55の両保持部間の部分は、ブーム21が立った状態において、側面視で後側に膨らんだ湾曲形態をなし(図1参照)、ブーム21が前側に倒れるにつれて後側への膨らみを徐々に小さくするように形態を変化させる。各油圧ホース55を、両保持部によって適当な位置で拘束することにより、ブーム21の回動時に油圧ホース55の変形が許容される領域が規定され、複数の油圧ホース55の他の部分への干渉や複数の油圧ホース55間の擦れおよび捻じれが抑制される。
【0044】
次に、ブームブラケット42において左右を壁部43a,43bに挟まれた回動支軸48と回動支軸49との間の空間56に配置された油圧ホース保持装置60について説明する。図5は、油圧ホース保持装置60の斜視図であり、図6は、その正面図である。また、図7は、油圧ホース保持装置60の分解斜視図である。
【0045】
油圧ホース保持装置60は、第1ゴム体61と、第2ゴム体71と、第1ゴム体61および第2ゴム体71を挟持する2枚の挟持板81,82を備えている。油圧ホース保持装置60は、油圧ホース55を貫通させる複数の孔部(保持孔)を有し、各孔部に油圧ホース55を貫通させた状態で、油圧ホース55を固定状態で保持する。本実施形態に係る油圧ホース保持装置60は、上段に横並びに7個、下段に横並びに8個、合計15個の孔部を有し、最大で15本の油圧ホース55を保持することが可能である。油圧ホース保持装置60は、第1ゴム体61の長手方向(左右方向)について対称または略対称に構成されている。
【0046】
第1ゴム体61は、直方体状の形状を有し、所定の厚みのゴム板から形成されている。なお、この明細書において直方体状とは、長方形状の六面を有する形状であって、例えば、隣り合う面によって形成される角部の全て又は一部に面取り若しくは角丸め等の加工が施されている形状も含む。すなわち、おおよそ直方体状であるものも含む。言い換えると、第1ゴム体61は、長方形状の前面(第1面61a)と後面(第2面61b)と、上面(第4面61d)と下面(第3面61c)と、長さ方向の両端面(側端面61e)からなる六面を持つブロックである。
【0047】
第1ゴム体61は、第1面61aと第2面61bとの間を貫通して形成された複数の第1保持部62a,62b,62c,62d,62e,62f,62g(以下、これらを総称する場合は、第1保持部62と呼称する。)を有する。第1ゴム体61に穿設された複数の第1保持部62は、それぞれが油圧ホース55を保持する保持孔であり、直方体状の第1ゴム体61の長手方向に、所定の間隔で列設されている。
【0048】
第1ゴム体61の第1面61aおよび第2面61bの長辺側で直交する第3面61cには、複数の第1溝部64a,64b,64c,64d,64e、64f,64g,64h(以下、これらを総称する場合は、第1溝部64と呼称する。)が形成されている。第1溝部64は、第1面61aおよび第2面61bに亘って形成された正面視形状が半円状の凹部であり(図6参照)、第1保持部62の形成方向(Z方向)に対して平行に形成されている。複数の第1溝部64のそれぞれは、第1保持部62の貫通方向視で第1面61aにおける複数の第1保持部62の列設方向(X方向)と直交する方向(Y方向)において、第1保持部62とはずれた位置に設けられている。このずれた位置とは、より具体的には図6に示すように、第1保持部62の円形の中心を通るY方向に沿った直線L1と第1溝部64の半円の中心を通るY方向に沿った直線L2とがX方向において異なる位置となるものである。さらに、直線L2が第1保持部62と交差することなく、直線L1が第1溝部64に交差することがない位置関係で、第1保持部62と第1溝部64は互いに形成されている。言い換えると、第1保持部62は、隣り合う第1溝部64との間に形成される仕切領域65a,65b,65c,65d,65e,65f,65g(以下、これらを総称する場合は、仕切領域65と呼称する。)と、第1保持部62の列設方向と直交する方向において、対向する位置に形成されている。
【0049】
第1ゴム体61は、第3面61cに対向する第4面61dから複数の第1保持部62のそれぞれに向けてつながるように形成されるスリット63a,63b,63c,63d,63e,63f,63g(以下、これらを総称する場合は、スリット63と呼称する。)を有している。スリット63は、第1保持部62に油圧ホース55を挿入するためのものであり、第4面61dから第1保持部62に亘って形成されている。スリット63は、第1ゴム体61の長手方向に対向した一対の面により形成されており、第1ゴム体61の第1面61a、第2面61bおよび第4面61d、並びに第1保持部62の内周面の各面に臨んで開口している。あくまでも一例であるが、第1ゴム体61の自然状態でのスリット63の隙間は、例えば1mm程度である。第1ゴム体61を弾性変形させてスリット63を開拡させることにより、油圧ホース55が第1保持部62に向けて挿入することが可能となる。
【0050】
第1ゴム体61の第1保持部62および第1溝部64の列設領域の両端には、第3面61cと第4面61dを貫通して、後述する連結部材を挿通可能な孔部66a,66bが設けられている。
【0051】
第2ゴム体71は、第1ゴム体61よりも厚みが薄いゴム板から形成され、第1ゴム体61と外形が略同形の直方体形状を有する。第1ゴム体61の第3面61cと対面する第2ゴム体71の端面71aには、複数の第2溝部74a,74b,74c,74d,74e、74f,74g,74h(以下、これらを総称する場合は、第2溝部74と呼称する。)が形成されている。複数の第2溝部74は、第1溝部64と同形の凹部であり、各々が第1溝部64の各々と対向する位置に設けられている。
【0052】
第1ゴム体61の第1溝部64の形成面(第3面61c)と第2ゴム体の第2溝部74の形成面(端面71a)とを向い合せに組み合わせることにより、図6に示すように、隣り合う第1溝部64との間に形成される仕切領域65と隣り合う第2溝部74との間に形成される仕切領域75a,75b,75c,75d,75e,75f,75g(以下、これらを総称する場合は、仕切領域75と呼称する。)により画定される正面視略円形の孔部(保持孔)である第2保持部72a,72b,72c,72d,72e、72f,72g,72h(以下、これらを総称する場合は、第2保持部72と呼称する。)が形成される。
【0053】
本実施形態において、上段の複数の(7個の)第1保持部62、および下段の複数の(8個の)第2保持部72は、それぞれX方向について等間隔または略等間隔に配置されるとともに、X方向について互い違いに配置されている。つまり、複数の第1保持部62および第2保持部72は、図6に示すような第1保持部62の貫通方向視において、第1保持部62の開口形状である円周形状の中心と、第2保持部72の開口形状である円周形状の中心とを、X方向の一方から他方にかけて交互に結ぶ線がジグザグ状の折れ線となるように配置されている。
【0054】
第2ゴム体71の第2溝部74の列設領域の両端の第1ゴム体61における孔部66a,66bに対応する位置には、板厚方向(Y方向)に貫通する孔部76a,76bが設けられている。
【0055】
2枚の挟持板81,82のうち、第1ゴム体61側に配置される挟持板81は、平板状の板金から成り、第1ゴム体61の第4面61dに略対応する矩形状の形状を有する。挟持板81の第1ゴム体61における孔部66a,66bに対応する位置には、孔部83a,83bが設けられている。
【0056】
2枚の挟持板81,82のうち、第2ゴム体71側に配置される挟持板82は、所定形状の板金を鈍角山形に曲げ加工して形成され、第2ゴム体71に面当接する部分である挟持部84と、挟持部84の一端側に延設された装着部85とを有する。
【0057】
挟持部84の第2ゴム体71と接する面には、一対の案内支柱86a,86bが突設されている。一対の案内支柱86a,86bは、油圧ホース保持装置60を組み立てる際に第1ゴム体61および第2ゴム体71を所定の方向に整列させるためのものであり、第2ゴム体71の孔部76a,76bおよび第1ゴム体61の孔部66a,66bを貫通して配置される。一対の案内支柱86a,86bの先端部には、ボルト69a,69b(図7参照)のネジ溝に螺合する雌ネジ孔が形成されており、挟持板81および挟持板82を連結する連結部材としても機能する。孔部76a,76bおよび孔部66a,66b内に挿通される案内支柱86a,86bの長さは、第1ゴム体61および第2ゴム体71を重ねた厚み(Y方向の長さ)よりも僅かに短く設定され、挟持板81および挟持板82との間の最小間隔を規定している。ボルト69a,69bの案内支柱86a,86bの先端部分への締め込み量により、挟持板81および挟持板82との間の間隔が調整され、第1保持部62および第2保持部72における油圧ホース55に対する締め付け(圧縮力)を適正に設定することが可能となっている。
【0058】
挟持部84には、第2ゴム体71の端面71aと逆側となる裏面71b側に設けられた複数の突起部77と嵌り合う複数の孔部87が設けられている。複数の突起部77のそれぞれが対応する孔部87に嵌合することで、挟持板82に対する第2ゴム体71のZ方向の位置ずれが抑制される。
【0059】
装着部85は、挟持板82の一端側に設けられた、油圧ホース保持装置60をブームシリンダ支持部32の所定の位置に装着するための部分である。装着部85は、挟持部84の一端から延設されて挟持部84と一体的に設けられている。装着部85には、固定用のネジ79a,79bをそれぞれ挿通可能な孔部88a,88bが形成されている。
【0060】
次に、油圧ホース保持装置60の作業者による取り付けおよび組み立て作業について説明する。油圧ホース保持装置60をブームブラケット42における空間56に配置するときには、装着部85を固定用のネジ79a,79bによるネジ締結により、ブームブラケット42における連結部45の上側のボス部45aの上面平坦部45fに固定する(図3および図4参照)。これにより、挟持板82の挟持部84が水平方向に対して下向きに傾斜して設けられるとともに、案内支柱86a,86bがブームブラケット42の前方斜め上向きに設けられる。ここで、水平方向は、ボス部45aの上面平坦部45fが沿う面の方向であり、ブームブラケット42を支持ブラケット41に連結する連結軸の軸方向に直交する面に沿う方向である。
【0061】
続いて、挟持板82に対して、第2ゴム体71を重ねる。より具体的には、挟持板82の案内支柱86a,86bが、第2ゴム体71の孔部76a,76bを挿通するように、挟持板82に対して第2ゴム体71を重ね合わせる。このとき、第2ゴム体71は第2溝部74が設けられている端面71aを略上方に向けて配置される。挟持板82の挟持部84における孔部87に、第2ゴム体71の突起部77が嵌合することにより、第2ゴム体71の位置ずれが防止される。
【0062】
第2ゴム体71の端面71aに設けられた第2溝部74に、油圧ホース55を載せ、さらにその上に第1ゴム体61を重ね合わせる。第1ゴム体61の孔部66a,66bには、第2ゴム体71の孔部76a,76bを貫通した挟持板82の案内支柱86a,86bが挿通された状態となる。第2ゴム体71側の第2溝部74と第1ゴム体61側の第1溝部64のそれぞれが互いに向い合せとなり、油圧ホース55を保持する第2保持部72が形成される。
【0063】
第1ゴム体61の複数の第1保持部62には、スリット63を介して油圧ホース55が保持される。油圧ホース55は、第1ゴム体61を第2ゴム体71と重ね合わせる前に、第1保持部62にスリット63を介して予め保持させておいてもよく、第1ゴム体61を第2ゴム体71と重ね合わせた後にスリット63から挿入して保持させてもよい。
【0064】
第1保持部62b~62fは、第1保持部62a,62gおよび第2保持部72よりも孔径が小さく設定されている。油圧ホース55は、ホースが太くなるほど可撓性が低くなる傾向にあることから、油圧ホース保持装置60では、油圧ホースの太さに応じた組み立て作業性を考慮して、径の異なる保持部の配置を決めている。太い油圧ホース55を各保持部に保持させる作業において作業者の体力的負担が増大する傾向にあることから、例えば、第2保持部72を第1ゴム体61と第2ゴム体71の2部品の合わせ面に形成することで、油圧ホース55を第2溝部74に載置したその上から第1ゴム体61、挟持板81を重ねてボルト69a,69bを締めるだけでよいため作業者が太い油圧ホース55を引き回して保持部に向けてスリットを通過させる必要がなく作業が省力化される。また、挟持板82から第2ゴム体71、第1ゴム体61の順に組み立てることから、油圧ホース55を保持させる作業および油圧ホース保持装置60の組み立て性を向上させることが可能である。
【0065】
第2ゴム体71、第1ゴム体61の順に組み立てた後には、第1ゴム体61に対して挟持板81を重ね、ボルト69a,69bを孔部83a,83bに挿通させる。挟持板82側に突設された案内支柱86a,86bの先端にボルト69a,69bをそれぞれ締結することにより、第1ゴム体61および第2ゴム体71が、挟持板81および挟持板82により押圧された状態で挟持される。このとき、第1ゴム体61および第2ゴム体71に対して圧縮力が与えられ、第1保持部62および第2保持部72の内周が油圧ホース55の外周に密着する。これにより、油圧ホース55が油圧ホース保持装置60により拘束されることになる。
【0066】
なお、第1保持部62および第2保持部72に保持される油圧ホース55の本数は、掘削装置3に配置される油圧シリンダの数に応じて適宜変更される。したがって、例えば、掘削装置3が、バケット23を油圧により着脱可能とするアタッチメント着脱装置を備える構成の場合には、第1保持部62e,62fにアタッチメント着脱装置の油圧シリンダに対する作動油給排用の油圧ホース55を保持させる。一方で、図1に示す掘削装置3のように、アタッチメント着脱装置を有さない場合は、第1保持部62e,62fは空洞となる。
【0067】
仮に、第1保持部62aの中心を通る直線L1上に第2保持部72aが配置された場合には、第1保持部62aが空洞となった場合に第1保持部62aと第2保持部72aとの間が肉薄となるため、第2保持部72aにおいて油圧ホース55の拘束・保持に用いられる圧縮力の伝播が不十分となる。また、このような場合に油圧ホース55の拘束・保持に十分な圧縮力の伝播に必要な厚みを確保しようとすると、第1保持部62aと第2保持部72aとの間の圧縮力の負荷方向に沿った方向(Y方向)の間隔を広くして、第1ゴム体61のY方向の厚みを厚くする必要がある。そうすると、油圧ホース保持装置のY方向の寸法が拡大し、ブームブラケット42内の限られた空間56内に油圧ホース保持装置を配置することが困難となる。本実施形態に係る油圧ホース保持装置60においては、図6に直線L1および直線L2で示すように、第1ゴム体61および第2ゴム体71に対する圧縮力の負荷方向に沿った方向(Y方向)において、第1保持部62および第2保持部72が、互いに異なる位置に設けられている。このため、第2保持部72から第1ゴム体61の第4面61dに至るまでの領域には、第2保持部72に対して圧縮力を伝播させることが可能となるゴムの肉厚が十分に確保される。つまり、第1ゴム体61において、隣り合う第1保持部62およびスリット63の間の部分が、各第2保持部72の上側(第4面61d側)において第4面61dまで連続した肉厚部分となる。第1保持部62から第1ゴム体61の第3面61cに至るまでの領域(仕切領域65)についても同様に、ゴムを介した圧縮力が確保可能である。したがって、第1ゴム体61のY方向の厚みを増大させることなく、油圧ホース保持装置60をコンパクトに構成することができる。
【0068】
また、ボルト69a,69bの案内支柱86a,86bへの締結は、先ず、締め付けを緩めにした仮止め状態とし、油圧ホース55の長さ調整を行う。具体的には、オペレータが油圧ホース55を引っ張る等して、ブームブラケット42の前側を通って第1保持部62および第2保持部72のそれぞれに至るまでの油圧ホース55の長さ、および、油圧ホース保持装置60からブーム21の背面側の油圧ホースホルダ90に至るまでの油圧ホース55の長さを調整する。しかる後に、仮止め状態のボルト89a,89bをさらに締め、第1保持部62および第2保持部72のそれぞれに保持させた油圧ホース55にゴムを介した圧縮力を作用させ、油圧ホース55を拘束する。これにより、掘削装置3が前後に回動した場合でも、ブームブラケット42の前側を通る油圧ホース55の長さがずれることがなく、油圧ホース55が擦れることで損傷することを防止することが可能となる。
【0069】
このように油圧ホース保持装置60を組み立てることで、複数の油圧ホース55がそれぞれ第1保持部62および第2保持部72の所定の位置に保持される。油圧ホース保持装置60を組み立てた状態では、図6に示すように、第1保持部62および第2保持部72は、第1ゴム体61の第2面61b側から見た正面視においては、概略ジグザク状に配置されることになる。これにより、第1保持部62および第2保持部72と同じ数の保持部を、第1保持部62の列設方向(X方向)に直線状に配置する場合と比較して、油圧ホース保持装置60の幅方向(直方体の長辺方向)の寸法の増大を防止することができる。同様に、第2保持部72を第1保持部62の列設方向と直交する方向(Y方向)について同じ位置に直線状に配置する場合と比較して、油圧ホース保持装置60の高さ方向(直方体の短辺方向)の寸法の増大を防止することができる。このように、油圧ホース保持装置60をコンパクトに構成することが可能となることから、油圧ホース保持装置60の作業機械における設置の自由度が向上する。
【0070】
以上のような本実施形態に係る油圧ホース保持装置60は、以下の構成を備えていると言える。すなわち、油圧ホース55を貫通させた状態で保持し、貫通方向を共通とするように所定の方向(第1ゴム体61の長手方向)について列設された複数の第1保持部62と、第1保持部62が開口する側と異なる側の面である第3面61cに形成され、第1保持部62の貫通方向を延伸方向とした複数の第1溝部64と、を有し、複数の第1溝部64は、前記所定の方向について第1保持部62とずれた位置に設けられている。具体的には、油圧ホース保持装置60は、互いに対向する第1面61aと第2面61bとを貫通して設けられた油圧ホース55を保持する複数の第1保持部62と、複数の第1保持部62の列設方向(図5図7におけるX方向)について第1面61aおよび第2面61bと等しい長さを有するとともに第1面61aおよび第2面61bに直交する第3面61cに、複数の第1保持部62の形成方向に対して平行に形成され、第1面61aにおける複数の第1保持部62の列設方向と直交する方向においてずれた位置に設けられた複数の第1溝部64と、を有する第1ゴム体61を備えるものである。
【0071】
このような油圧ホース保持装置60によれば、第1保持部62の列設方向と直交する方向、すなわち、第1ゴム体61の圧縮力の負荷方向について、第1保持部62に対して圧縮力の伝播に十分な肉厚を確保することが可能となる。したがって、第1保持部62の列設方向と直交する方向の第1ゴム体61の厚みを薄くし、油圧ホース保持装置60をコンパクトに構成することが可能となる。油圧ホース保持装置60の作業機械への設置の自由度が向上する。
【0072】
また、油圧ホース保持装置60は、複数の第1溝部64のそれぞれに対応する複数の第2溝部74が設けられた第2ゴム体71を備え、複数の第1溝部64と複数の第2溝部74とをそれぞれ対向配置することにより、第1ゴム体61と第2ゴム体71との間にそれぞれが油圧ホース55を保持する複数の複数の第2保持部72を形成するものである。
【0073】
このような油圧ホース保持装置60によれば、複数の第1保持部62と複数の第2保持部72は、略ジグザク状に配置されることになる。すなわち、簡易かつコンパクトな構成で、複数の保持部を1列に列設する場合と比較して、上下2列に保持部を設けることができ、複数の油圧ホース55を保持することが可能となる。このように、油圧ホース保持装置60のサイズをコンパクトに構成したことで作業機械への油圧ホース保持装置60の設置の自由度が向上する。さらに、より多くの油圧ホース55を互いに絡ませることなく整列させることができることから、作業機械のオプション追加による油圧ホース55の数の増加に対しても単一の油圧ホース保持装置60で容易に対応することが可能である。
【0074】
また、油圧ホース保持装置60では、第1保持部62は、隣り合う第1溝部64の間に形成される仕切領域65と対向する位置に形成されている。つまり、第1保持部62および第1溝部64のそれぞれの形成位置は、図6に示すように、第1面61aにおいて横方向(X方向)については第1保持部62の列設方向と第1溝部64の列設方向が略平行であり、第1保持部62および第1溝部64の列設方向に直交する方向(Y方向)については、隣り合う第1溝部64の間に形成される仕切領域65と第1保持部62とが対向する位置関係となる。
【0075】
このような油圧ホース保持装置60によれば、ボルト69a,69bの締結によって第1ゴム体61および第2ゴム体71に与えられる圧縮力の負荷方向に沿った方向において、複数の第1保持部62の一部、および、複数の第2保持部72の一部に油圧ホース55を保持しない空洞ができる場合であっても、第1保持部62および第2保持部72のそれぞれに保持された油圧ホース55に対しては、物性が均一なゴム内を直線的に伝達される圧縮力を与えることができ、油圧ホース55に対する締め付けを適正に保つことができる。
【0076】
また、油圧ショベルである掘削作業機1では、第1ゴム体61は、複数の第1溝部64が形成された面である第3面61cと反対側の面である第4面61dから複数の第1保持部62のそれぞれに向けて形成されるスリット63を有するものである。
【0077】
このような油圧ホース保持装置60によれば、直方体状の第1ゴム体61において複数の第2保持部72を構成する第1溝部64が形成された第3面61cの反対側となる第4面61dから複数の第1保持部62に通じるスリット63を設けたことから、第1保持部62への油圧ホース55の挿入と油圧ホース保持装置60の組立の自由度が向上する。
【0078】
また、油圧ホース保持装置60は、機体(旋回フレーム7に支持ブラケット41を介して接続されたブームブラケット42)に装着するための装着部85を備え、第1ゴム体61および第2ゴム体71は、装着部85に対して、複数の第1保持部62および複数の第2保持部72の各々の形成方向(貫通方向)を傾斜させて設けられているものである。
【0079】
このような油圧ホース保持装置60によれば、装着部85を備えたことにより、作業機械の所望の位置に油圧ホース保持装置60を容易に設置することが可能となる。また、装着部85と第1ゴム体61および第2ゴム体71との位置関係に関して、装着部85を作業機械に設置したときに、複数の第1保持部62および複数の第2保持部72の各々の形成方向が、装着部85に対して傾斜して設けられるようにしたことから、油圧ホース55を導く方向に応じた油圧ホース保持装置60の配置を容易に行うことができる。
【0080】
また、油圧ホース保持装置60は、第1ゴム体61と第2ゴム体71を挟持する2枚の板部材(挟持板81,82)を備えている。2枚の板部材は、第1溝部64と第2溝部74を対向させて重ね合わせる第1ゴム体61と第2ゴム体71の重ね方向を挟持方向として、一方の板部材(挟持板81)が第1ゴム体61に、他方の板部材(挟持板82)が第2ゴム体71に密着して設けられる。また、2枚の板部材のうちの一方(挟持板82)の一端には、装着部85が設けられているものである。言い換えると、挟持板82の挟持部84から図4~5に示すZ方向に延設された端部に装着部85が形成されているものである。
【0081】
このような油圧ホース保持装置60によれば、装着部85を第1ゴム体61と第2ゴム体71を挟持する部分である挟持部84と一体的に設けることにより、作業機械の所望の位置に油圧ホース保持装置60をより容易に設置することが可能となる。
【0082】
また、このような油圧ホース保持装置60は、次のようなブームブラケット42を有する油圧ショベル(掘削作業機1)に配設される。すなわち、油圧ショベル(掘削作業機1)は、上部にブーム21を回動可能に支持する第1支持部(ブーム支持部31)と、前端部に前記ブームを回動動作させる油圧シリンダ(ブームシリンダ26)を回動可能に支持する第2支持部(ブームシリンダ支持部32)と、第1支持部(ブーム支持部31)の下方かつ第2支持部(ブームシリンダ支持部32)の後方で機体フレーム(旋回フレーム7)に上下方向を軸方向として回動可能に連結される連結部45,46と、を有するブームブラケット42を備え、ブームブラケット42内において第1支持部(ブーム支持部31)、第2支持部(ブームシリンダ支持部32)および連結部(連結ボス部45,46)との間に形成された空間に、油圧ホース保持装置60が配置されているものである。
【0083】
このような油圧ショベル(掘削作業機1)における油圧ホース保持装置60の配置は、ブームブラケット42内の第1支持部(ブーム支持部31)の下側の空間56、言い換えると、掘削装置3の基端部21aとブームブラケット42の連結ボス部45との間の隙間空間を有効に活用するものである。このような隙間空間にも配置可能に油圧ホース保持装置60をコンパクトに構成したことにより、複数の油圧ホース55を保護しつつ掘削装置3の背面側に油圧ホース55を導くことが可能となる。
【0084】
上述した実施形態の説明は本発明の一例であり、本発明に係る作業機械は上述の実施形態に限定されることはない。このため、上述した実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。また、本開示に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。
【0085】
なお、本発明は、以下の態様をとることができる。
(1)
油圧ホースを貫通させた状態で保持し、貫通方向を共通とするように所定の方向について列設された複数の第1保持部と、
前記第1保持部が開口する側と異なる側の面に形成され、前記第1保持部の貫通方向を延伸方向とした複数の第1溝部と、を有し、
複数の前記第1溝部は、前記所定の方向について前記第1保持部とずれた位置に設けられている
作業機械の油圧ホース保持装置。
(2)
複数の前記第1保持部と、複数の前記第1溝部を有する第1ゴム体と、
複数の前記第1溝部のそれぞれに対応する複数の第2溝部が設けられた第2ゴム体と、
を備え、
複数の前記第1溝部と複数の前記第2溝部とをそれぞれ対向配置することにより、前記第1ゴム体と前記第2ゴム体との間にそれぞれが前記油圧ホースを保持する複数の第2保持部を形成する、
前記(1)に記載の作業機械の油圧ホース保持装置。
(3)
前記第1保持部は、隣り合う前記第1溝部の間に形成される仕切領域と対向する位置に形成される、
前記(1)または前記(2)に記載の作業機械の油圧ホース保持装置。
(4)
前記第1ゴム体は、複数の前記第1溝部が形成された面と反対側の面から複数の前記第1保持部のそれぞれに向けて前記第1保持部につながるように形成されるスリットを有する、
前記(2)または前記(3)に記載の作業機械の油圧ホース保持装置。
(5)
機体に装着するための装着部を備え、
前記第1ゴム体および前記第2ゴム体は、前記装着部に対して、複数の前記第1保持部および複数の前記第2保持部の各々の形成方向を傾斜させて設けられている、
前記(2)に記載の作業機械の油圧ホース保持装置。
(6)
前記第1ゴム体と前記第2ゴム体を、前記第1溝部と前記第2溝部が対向する方向に挟持する2枚の板部材を備え、
前記2枚の板部材のうちの一方の一端には、前記装着部が設けられている、
前記(5)に記載の作業機械の油圧ホース保持装置。
(7)
上部にブームを回動可能に支持する第1支持部と、前端部に前記ブームを回動動作させるブームシリンダを回動可能に支持する第2支持部と、前記第1支持部の下方かつ前記第2支持部の後方で機体フレームに上下方向を軸方向として回動可能に連結される連結部と、を有するブームブラケットを備え、
前記ブームブラケット内において前記第1支持部、前記第2支持部および前記連結部との間に形成された空間に、前記(1)から前記(6)の何れか1に記載の作業機械の油圧ホース保持装置が配置されている油圧ショベル。
【符号の説明】
【0086】
1 掘削作業機(作業機械)
2 走行車体
5 走行部
7 旋回フレーム(機体フレーム)
10 運転部
11 機関室
20A 下部走行体
20B 上部旋回体
21 ブーム
22 アーム
23 バケット
26 ブームシリンダ
27 アームシリンダ
28 作業具シリンダ
29 スイングシリンダ
31 アーム支持部
32 アームシリンダ支持部
33 スイングシリンダ支持部
41 支持ブラケット
42 ブームブラケット
45 連結部
46 連結部
48 回動支軸
49 回動支軸
55 油圧ホース
56 空間
60 油圧ホース保持装置
61 第1ゴム体
61a 第1面
61b 第2面
61c 第3面
61d 第4面
62 第1保持部
63 スリット
64 第1溝部
65 仕切領域
66 孔部
69a,69b ボルト
71 第2ゴム体
72 第2保持部
74 第2溝部
79a,69b ネジ
81 挟持板(板部材)
82 挟持板(板部材)
84 挟持部
85 装着部
86a,86b 案内支柱
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7