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  • 特開-締結構造 図1
  • 特開-締結構造 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175595
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】締結構造
(51)【国際特許分類】
   F16B 5/02 20060101AFI20241211BHJP
   F16D 65/02 20060101ALI20241211BHJP
   F16D 55/228 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
F16B5/02 E
F16D65/02 E
F16D55/228
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093499
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井熊 直
【テーマコード(参考)】
3J001
3J058
【Fターム(参考)】
3J001FA02
3J001FA09
3J001GC02
3J001JA03
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA66
3J058AA69
3J058AA73
3J058AA77
3J058AA87
3J058BA46
3J058CC03
3J058CC23
3J058CC82
3J058DD03
3J058FA01
(57)【要約】
【課題】締結された二部材を保持する保持力を向上させることが可能な締結構造を得る。
【解決手段】ボルト30、32は、第一ボルト孔18X、18Y及び第二ボルト孔26X、26Yに挿入されてナックル18のキャリパ取付部18A、18Bとキャリパブラケット26の腕部26A、26Bとを締結する。第一ボルト孔18X、18Yと第二ボルト孔26X、26Yとで構成されたボルト挿入部40、42は対で設けられている。ボルト挿入部40、42の各々は、ナックル18とキャリパブラケット26との互いの接触面であってボルト30、32の軸線に垂直な方向に対して傾斜する傾斜接触面18C、26C、18D、26Dを貫通するように形成されている。傾斜接触面18C、26C、18D、26Dの各々は、対となるボルト挿入部40、42同士の間の中央側へ向けていずれもナックル18側へ傾斜している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一ボルト孔が形成された第一部材と、
前記第一ボルト孔と連通する第二ボルト孔が形成され、前記第一部材と締結される第二部材と、
前記第一ボルト孔及び前記第二ボルト孔に挿入されて前記第一部材と前記第二部材とを締結するボルトと、
を備え、
前記第一ボルト孔と前記第二ボルト孔とで構成されるボルト挿入部が対で設けられ、前記ボルト挿入部の各々は、前記第一部材と前記第二部材との互いの接触面であって前記ボルトの軸線に垂直な方向に対して傾斜する傾斜接触面を貫通するように形成され、
前記傾斜接触面の各々は、対となる前記ボルト挿入部同士の間の中央側へ向けていずれも前記第一部材側へ又はいずれも前記第二部材側へ傾斜している、締結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
二部材がボルトで締結されている構造が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-158196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ボルトを用いた締結構造では、二部材の互いの接合面(接触面)は、通常は、ボルトの軸線に対して垂直となっている。このような構成においては、締結された二部材のうちの一方の部材に対してボルトの軸線に垂直な方向の荷重が入力された場合、保持力は接合面の摩擦力に大きく左右されてしまうので、保持力を向上させる点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、締結された二部材を保持する保持力を向上させることが可能な締結構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載する本発明の締結構造は、第一ボルト孔が形成された第一部材と、前記第一ボルト孔と連通する第二ボルト孔が形成され、前記第一部材と締結される第二部材と、前記第一ボルト孔及び前記第二ボルト孔に挿入されて前記第一部材と前記第二部材とを締結するボルトと、を備え、前記第一ボルト孔と前記第二ボルト孔とで構成されるボルト挿入部が対で設けられ、前記ボルト挿入部の各々は、前記第一部材と前記第二部材との互いの接触面であって前記ボルトの軸線に垂直な方向に対して傾斜する傾斜接触面を貫通するように形成され、前記傾斜接触面の各々は、対となる前記ボルト挿入部同士の間の中央側へ向けていずれも前記第一部材側へ又はいずれも前記第二部材側へ傾斜している。
【0007】
上記構成によれば、第一部材には、第一ボルト孔が形成され、第一部材と締結される第二部材には、第一ボルト孔と連通する第二ボルト孔が形成されている。ボルトは、第一ボルト孔及び第二ボルト孔に挿入されて第一部材と第二部材とを締結する。ここで、第一ボルト孔と第二ボルト孔とで構成されるボルト挿入部が対で設けられ、ボルト挿入部の各々は、第一部材と第二部材との互いの接触面であってボルトの軸線に垂直な方向に対して傾斜する傾斜接触面を貫通するように形成され、傾斜接触面の各々は、対となるボルト挿入部同士の間の中央側へ向けていずれも第一部材側へ又はいずれも第二部材側へ傾斜している。このため、締結された第一部材及び第二部材のうちの一方の部材に対してボルトの軸線に垂直な方向の荷重が、対となるボルト挿入部が並ぶ方向に入力された場合、傾斜接触面によって、第一部材と第二部材とを離反させようとする方向の分力が作用し、その力をボルトの軸力によって抑えることができる。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、本発明の締結構造によれば、締結された二部材を保持する保持力を向上させることが可能になるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る締結構造が適用された車両のディスクブレーキ及びその付近を車両幅方向内側から見た状態で示す図である。
図2図1の2L-2L線に沿って切断した状態を簡略化して示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係る締結構造について図1及び図2を用いて説明する。なお、図1において示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示している。
【0011】
図1には、本実施形態に係る締結構造が適用された車両のディスクブレーキ(「ディスクブレーキ装置」ともいう)20及びその付近が車両幅方向内側から見た状態の図で示されている。図1に示されるように、アクスル10(図中では断面で図示)の車両幅方向外側部分の外周側には、アクスルハブ12が配置されている。アクスルハブ12はアクスル10に固定されている。また、アクスルハブ12には、ベアリング14が固定されており、ベアリング14のアウタレース14Aには、ボルト16によって第一部材としてのナックル18が固定されている。これにより、アクスルハブ12は、ナックル18に対して回転自在に支持されている。
【0012】
ナックル18よりも車両幅方向外側には、略円盤状のディスクロータ22が配置されている。ディスクロータ22は、アクスルハブ12に固定され、アクスル10及びアクスルハブ12と一体的に回転するようになっている。このディスクロータ22は、ディスクブレーキ20の一部を構成している。
【0013】
一方、ナックル18は、車両前後方向前側の上下にキャリパ取付部18A、18Bを備えている。キャリパ取付部18A、18Bには、第二部材としてのキャリパブラケット26の取り付け用の腕部26A、26Bの端部がボルト30、32によって締結されている。この点についての詳細は後述する。キャリパブラケット26は、キャリパ24の一部を構成し、キャリパ24は、ディスクロータ22と共にディスクブレーキ20の主要部を構成している。ディスクブレーキ20は、ディスクブレーキ20が搭載された車両でブレーキ操作がされた場合、キャリパ24の構成部であるブレーキパッド(図示省略)がディスクロータ22を押圧するようになっている。なお、ディスクブレーキ20については、公知構成が適用されているため、詳細説明は省略する。
【0014】
図2には、図1の2L-2L線に沿って切断した状態を簡略化した拡大断面図が示されている。図2に示されるように、ナックル18には、ボルト30、32が挿入される第一ボルト孔18X、18Yが厚み方向に貫通して形成されている。また、ナックル18と締結されるキャリパブラケット26には、ボルト30、32が挿入される第二ボルト孔26X、26Yが厚み方向に貫通して形成されている。第二ボルト孔26X、26Yは、第一ボルト孔18X、18Yと連通する。これにより、本実施形態では、第一ボルト孔18X、18Yと第二ボルト孔26X、26Yとでボルト挿入部40、42が構成されている。ボルト挿入部40、42は対で設けられている。
【0015】
ボルト30、32は、頭部30A、32Aと、雄ネジ部30S、32Sが形成されて軸部30B、32Bと、を備えている。また、第二ボルト孔26X、26Yの内周面には、雄ネジ部30S、32Sと螺合する雌ネジ部(図示省略)が形成されている。ボルト30、32は、第一ボルト孔18X、18Y及び第二ボルト孔26X、26Yに挿入されて第二ボルト孔26X、26Yの雌ネジ部に螺合されると共に、頭部30A、32Aがキャリパ取付部18A、18Bに接することで、ナックル18のキャリパ取付部18A、18Bとキャリパブラケット26の腕部26A、26Bとを締結する。
【0016】
ボルト挿入部40、42の各々は、ナックル18とキャリパブラケット26との互いの接触面であってボルト30、32の軸線に垂直な方向に対して傾斜する傾斜接触面18C、26C、18D、26Dを貫通するように形成されている。傾斜接触面18C、26C、18D、26Dの各々は、対となるボルト挿入部40、42同士の間の中央側へ向けていずれもナックル18側へ傾斜している。
【0017】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0018】
本実施形態では、締結されたナックル18及びキャリパブラケット26のうちの一方の部材であるキャリパブラケット26に対してボルト30、32の軸線に垂直な方向の荷重が、対となるボルト挿入部40、42が並ぶ方向に入力された場合、傾斜接触面18C、26C、18D、26Dによって、ナックル18とキャリパブラケット26とを離反させようとする方向の分力が作用し、その力をボルト30、32の軸力によって抑えることができる。すなわち、締結されたナックル18及びキャリパブラケット26の互いの接触面(接合面)同士の摩擦力に頼らずに、ボルト30、32の剛性を利用して、ナックル18及びキャリパブラケット26を保持する保持力を向上させることができる。以下、より具体的に説明する。
【0019】
図1に示されるディスクブレーキ20が搭載された車両が前進走行しているとき、ディスクロータ22は矢印R1方向へ回転する。このときにブレーキ操作がされると、キャリパ24の構成部であるブレーキパッド(図示省略)がディスクロータ22を押圧する。これにより、キャリパ24には、ディスクロータ22の回転方向(矢印R1方向)と同じ方向の荷重が作用する。
【0020】
このとき、図2に示されるキャリパブラケット26の腕部26A、26Bには、図中右側のボルト30による締結部側から図中左側のボルト32による締結部側へ向かう方向の荷重F1が作用する。これに対して、ナックル18は、車体(図示省略)側に支持されることで、配置位置に留まろうとし、キャリパ取付部18A、18Bには反力C1(荷重F1とは反対方向の力)が作用する。すると、ナックル18の図中左側のキャリパ取付部18Bが、図中左側の傾斜接触面18D、26Dによって、キャリパブラケット26の図中左側の腕部26Bに対して、図中の右上側へ移動しようとする。これによって、ボルト32をその軸線方向に延ばそうとする分力が作用し、その力をボルト32の軸力によって抑えることができる。さらに、ナックル18の図中左側のキャリパ取付部18Bとキャリパブラケット26の図中左側の腕部26Bとの間の滑り量が大きくなろうとするほどボルト32の軸力が増えてナックル18の図中左側のキャリパ取付部18Bとキャリパブラケット26の図中左側の腕部26Bとの間での滑りは生じづらくなる。
【0021】
一方、図1に示されるディスクブレーキ20が搭載された車両が後退しているとき、ディスクロータ22は矢印R2方向へ回転する。このときにブレーキ操作がされると、キャリパ24の構成部であるブレーキパッド(図示省略)がディスクロータ22を押圧する。これにより、キャリパ24には、ディスクロータ22の回転方向(矢印R2方向)と同じ方向の荷重が作用する。
【0022】
このとき、図2に示されるキャリパブラケット26の腕部26A、26Bには、図中左側のボルト32による締結部側から図中右側のボルト30による締結部側へ向かう方向の荷重F2が作用する。これに対して、ナックル18は、車体(図示省略)側に支持されることで、配置位置に留まろうとし、キャリパ取付部18A、18Bには反力C2(荷重F2とは反対方向の力)が作用する。すると、ナックル18の図中右側のキャリパ取付部18Aが、図中右側の傾斜接触面18C、26Cによって、キャリパブラケット26の図中右側の腕部26Aに対して、図中の左上側へ移動しようとする。これによって、ボルト30をその軸線方向に延ばそうとする分力が作用し、その力をボルト30の軸力によって抑えることができる。さらに、ナックル18の図中右側のキャリパ取付部18Aとキャリパブラケット26の図中右側の腕部26Aとの間の滑り量が大きくなろうとするほどボルト30の軸力が増えてナックル18の図中右側のキャリパ取付部18Aとキャリパブラケット26の図中右側の腕部26Aとの間の滑りは生じづらくなる。
【0023】
以上説明したように、本実施形態によれば、締結された二部材すなわちナックル18及びキャリパブラケット26を保持する保持力を向上させることが可能になる。また、本実施形態では、ナックル18及びキャリパブラケット26の互いの接触面同士の摩擦力に頼らないで上記の効果を得ることができるので、摩擦係数μのばらつき等を考慮して余裕を持って設計をする、といったことをする必要がなくなる。また、本実施形態では、ナックル18とキャリパブラケット26との間で大きな滑りが生じにくくなるので、ボルト30、32が緩み難くなる。
【0024】
なお、上記実施形態では、傾斜接触面18C、26C、18D、26Dの各々は、対となるボルト挿入部40、42同士の間の中央側へ向けていずれもナックル18側へ傾斜しているが、上記実施形態の変形例として、傾斜接触面18C、26C、18D、26Dに代えて形成される傾斜接触面の各々が、ボルト(30、32)の軸線に垂直な方向に対して傾斜すると共に、対となるボルト挿入部(40、42)同士の間の中央側へ向けていずれもキャリパブラケット(26)側へ傾斜している、という構成も採り得る。
【0025】
また、上記実施形態の変形例として、第二ボルト孔(26X、26Y)の内周面に雌ネジ部が形成されず、第一部材(ナックル18)及び第二部材(キャリパブラケット26)を貫通して突出したボルト(30、32)の軸部(30B、32B)における雄ネジ部(30S、32S)が、別途設けたナットの雌ネジ部に螺合されている、という構成でもよい。
【0026】
なお、上記実施形態及び上述の複数の変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。
【0027】
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0028】
18 ナックル(第一部材)
18C 傾斜接触面
18D 傾斜接触面
18X 第一ボルト孔
18Y 第一ボルト孔
26 キャリパブラケット(第二部材)
26C 傾斜接触面
26D 傾斜接触面
26X 第二ボルト孔
26Y 第二ボルト孔
30 ボルト
32 ボルト
40 ボルト挿入部
42 ボルト挿入部
図1
図2