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特開2024-175597電動車両制御方法および電動車両制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175597
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】電動車両制御方法および電動車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20190101AFI20241211BHJP
【FI】
B60L3/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093503
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成田 定治
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC12
5H125BA00
5H125BC06
5H125CD02
5H125CD07
5H125EE51
(57)【要約】
【課題】ハーネスの昇温を抑制しつつ、使用者に違和感や不満が生じることを抑制する。
【解決手段】バッテリ6から電力が供給される駆動モータ3を備える電動車両を制御する電動車両制御方法において、コントローラ7が、バッテリ6と駆動モータ3とを電気的に接続するハーネス81の温度を推定し、ハーネス81の推定温度が第1閾値Tth1に達したら、推定温度が高くなるほどバッテリ6の入出力の上限を低下させる第1制限を開始し、推定温度が第1閾値Tth1よりも高い第2閾値Tth2に達したら、第1制限から、バッテリ6の出力を駆動モータ3の出力が退避走行用の出力になる値に制限する第2制限へ切り替えることを特徴とする、電動車両制御方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリから電力が供給される駆動モータを備える電動車両を制御する電動車両制御方法において、
コントローラが、
前記バッテリと前記駆動モータとを電気的に接続するハーネスの温度を推定し、
前記ハーネスの推定温度が第1閾値に達したら、前記推定温度が高くなるほど前記バッテリの入出力の上限を低下させる第1制限を開始し、
前記推定温度が前記第1閾値よりも高い第2閾値に達したら、前記第1制限から、前記バッテリの出力を前記駆動モータの出力が退避走行用の出力になる値に制限する第2制限へ切り替えることを特徴とする、電動車両制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電動車両制御方法において、
前記電動車両は、車両前面に開口するグリルに配置されるグリルシャッターを備え、
前記コントローラは、
前記グリルシャッターを原則的に閉状態とし、エンジンルーム内に配置された冷却用補機の冷却要求に応じて開状態にするシャッター制御を行い、
さらに、前記推定温度として、前記グリルシャッターが閉状態の場合の閉状態推定温度と、前記グリルシャッターが開状態の場合の開状態推定温度と、を推定し、
前記グリルシャッターが閉状態の場合には、前記第1閾値及び前記第2閾値と比較する前記推定温度として前記閉状態推定温度を用い、
前記閉状態推定温度が前記第2閾値に達したら、前記冷却要求の如何にかかわらず前記グリルシャッターを開状態にし、かつ前記第1閾値及び前記第2閾値と比較する前記推定温度を前記閉状態推定温度から前記開状態推定温度に切り替える、電動車両制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載の電動車両制御方法において、
前記コントローラは、前記閉状態推定温度と前記開状態推定温度との切り替えにより前記バッテリの使用可能出力に変化が生じる場合には、変化速度を予め設定した上限速度に制限する、電動車両制御方法。
【請求項4】
請求項1に記載の電動車両制御方法において、
前記コントローラは、前記第1制限の実行中には、前記ハーネスが高温になっているために入出力が制限されていることを、故障時とは異なる形態でインストゥルメントパネル内に表示する、電動車両制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載の電動車両制御方法において、
前記コントローラは、前記第1制限の実行中には、インストゥルメントパネル内のパワーメータ上に使用不可能な入出力領域を表示する、電動車両制御方法。
【請求項6】
バッテリと、前記バッテリから供給される電力によって駆動される駆動源としての駆動モータと、を備える電動車両を制御する電動車両制御装置において、
前記バッテリと前記駆動モータとを電気的に接続するハーネスの温度を推定する温度推定部と、
前記ハーネスの推定温度が第1閾値に達したら、前記推定温度が高くなるほど前記バッテリの入出力の上限を低下させる第1制限を開始する第1制限処理部と、
前記推定温度が前記第1閾値よりも高い第2閾値に達したら、前記第1制限から、前記バッテリの出力を前記駆動モータの出力が退避走行用の出力になる値に制限する第2制限へ切り替える第2制限処理部と、
を備えることを特徴とする、電動車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両制御方法および電動車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリからワイヤーハーネス(以下、「ハーネス」又は「電線」ということもある。)を介して駆動モータやその他の電気機器に電力を供給する電動車両においては、駆動モータ等への供給電力が大きいほどハーネスの温度が上昇し易い。ハーネスの耐熱温度は、一般的に想定される走行状況、例えば高速道路での本線合流時の加速や追い越し加速等、における温度上昇に基づいて設定されているので、これらの走行状況においてハーネスの温度が耐熱温度を超える可能性は低い。ただし、例えば高速道路において高車速領域での全開加速が連続して繰り返されるような走行状況では、ハーネスの温度が耐熱温度を超えてしまうおそれがある。ハーネスを太くする等して耐熱温度を高めることも可能ではあるが、これによりハーネスの重量が重くなり、コストも上昇する。そして、高車速領域での全開加速を連続して繰り返すような走行状況になる機会は稀であり、このような走行状況に対応するために耐熱温度を高めることは、車両の軽量化及びコストの観点から好ましくない。特許文献1には、電線の推定温度が上限温度以上となった場合には電源から負荷としての後輪用の駆動モータへの電力の供給を停止することで、電線を保護する制御が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4624400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記文献に記載の制御のように、電線の温度が上限温度を超えた場合に後輪用の駆動モータへの電力供給を停止してしまうと、車両の要求トルクに対して十分な駆動力を得られなくなり、ドライバ等に違和感や不満を与えるおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、ハーネスの昇温を抑制しつつ、使用者に違和感や不満が生じることを抑制できる電動車両の制御方法及び制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、バッテリから電力が供給される駆動モータを備える電動車両を制御する電動車両制御方法が提供される。この方法において、コントローラは、バッテリと駆動モータとを電気的に接続するハーネスの温度を推定し、ハーネスの推定温度が第1閾値に達したら、推定温度が高くなるほどバッテリの入出力の上限を低下させる第1制限を開始し、推定温度が第1閾値よりも高い第2閾値に達したら、第1制限から、バッテリの出力を駆動モータの出力が退避走行用の出力になる値に制限する第2制限へ切り替える。
【0007】
本発明の別の態様によれば、バッテリと、バッテリから供給される電力によって駆動される駆動源としての駆動モータと、を備える電動車両を制御する電動車両制御装置が提供される。この装置は、バッテリと駆動モータとを電気的に接続するハーネスの温度を推定する温度推定部と、ハーネスの推定温度が第1閾値に達したら、推定温度が高くなるほどバッテリの入出力の上限を低下させる第1制限を開始する第1制限処理部と、推定温度が第1閾値よりも高い第2閾値に達したら、第1制限から、バッテリの出力を駆動モータの出力が退避走行用の出力になる値に制限する第2制限へ切り替える第2制限処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
上記態様によれば、ハーネスの昇温を抑制しつつ、使用者に違和感や不満が生じることを抑制できる電動車両の制御方法及び制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、電動車両の制御装置の概略構成図である。
図2図2は、ハーネス保護のための制御を説明する図である。
図3図3は、ハーネス温度が変化する状況における、ハーネスを流れる電流値を説明する図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る制御ルーチンを示すフローチャートである。
図5図5は、インストゥルメントパネルに表示されるパワーメータの一例を示す図である。
図6図6は、図4の制御ルーチンを実行した場合のタイミングチャートの一例である。
図7図7は、図4の制御ルーチンを実行した場合のタイミングチャートの他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態を適用する電動車両の制御装置100の概略構成図である。電動車両は、バッテリ装置6から供給される電力によって駆動モータ3を回転させて走行する、いわゆるBattery Electric Vehicle(BEV)である。
【0012】
制御装置100は、駆動モータ3と、インバータ31と、バッテリ装置6と、コントローラ7と、車室空調装置用のコンプレッサ91と、冷却用補機としてのモータ用熱交換器1と、空調用熱交換器2と、グリルシャッター4と、を備える。
【0013】
駆動モータ3は三相交流モータであり、インバータ31を介してバッテリ装置6と電気的に接続されている。駆動モータ3は、バッテリ装置6からの供給電力によって駆動力を発生し、図示しない駆動輪(前輪)を回転させる。なお、駆動モータ3は、車両の減速時には発電機として機能し、車両の減速エネルギーを電力として回生する。回生電力はインバータ31を介してバッテリ装置6(バッテリ61、62)に充電される。
【0014】
インバータ31は、駆動モータ3及びバッテリ装置6を電気的に接続する。インバータ31は、バッテリ装置6からの直流電力を交流に変換して駆動モータ3に供給する駆動インバータである。
【0015】
バッテリ装置(車両電機機器)6は、二次電池であるバッテリ61、62と、リレー63と、SDスイッチ64等を含むバッテリパックである。バッテリ61、62は、蓄えられた電力を駆動モータ3に供給する強電バッテリである。また、バッテリ61とバッテリ62は、SDスイッチ64を介して電気的に接続されている。
【0016】
リレー63は、バッテリ61、62と駆動モータ3とを接続する配線上のバッテリ61、62近傍に設置される。リレー63は、バッテリ61、62と駆動モータ3とを導通させる状態(オン状態)、及び電気的に遮断する状態(オフ状態)が切り替わるように開閉可能に設けられる。
【0017】
SDスイッチ64は、緊急時等に手動または自動でバッテリ61、62の回路をオフにするスイッチであり、バッテリ61とバッテリ62とを電気的に接続する配線上に設けられる。
【0018】
なお、バッテリ装置6には、バッテリ61、62の電流値を検出する電流センサ(図示しない)が設けられている。当該電流センサにより検出された電流値は、後述するコントローラ7に送信される。
【0019】
コントローラ7は、例えば車両コントロールモジュール(VCM:vehicle control module)であり、電動車両全体の電力の受給や駆動モータ3の動作等を統合的に制御する。
【0020】
コントローラ7は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ7を複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。コントローラ7は特定のプログラムを実行することにより、制御装置100全体を制御するための処理を実行する。例えば、コントローラ7は、温度推定部、第1制限処理部、及び第2制限処理部として機能することで、後述するハーネス保護のための制御を実行する。
【0021】
なお、駆動モータ3にはレゾルバやエンコーダ等の回転数検出装置が備え付けられており、当該回転数検出装置が駆動モータ3の回転数を検出する。検出されたモータ回転数は、コントローラ7に送信される。
【0022】
また、駆動モータ3とインバータ31の間には、電流センサ(図示しない)が設置されている。当該電流センサは駆動モータ3の交流電流を検出し、検出された電流値は、コントローラ7に送信される。電流センサは、三相交流電流のそれぞれを検出してもよく、また、任意の二相の電流を検出し、残りの一相の電流はコントローラ7により演算して求めてもよい。
【0023】
また、インバータ31のDC端側には、電圧センサ(図示しない)が付設されており、当該電圧センサは、インバータ31のDC端電圧を検出する。検出された電圧値は、コントローラ7に送信される。
【0024】
コンプレッサ91は、車室空調装置で用いる冷媒を圧縮するものである。空調用熱交換器2は、コンプレッサ91で圧縮されることで温度上昇した冷媒を空気との熱交換により冷却するものである。
【0025】
モータ用熱交換器1は、駆動モータ3を冷却する冷却液を空気との熱交換により冷却するものである。
【0026】
グリルシャッター4は、車両前方に開口するグリル(図示せず。)に開閉可能に配置される。グリルシャッター4の開閉はコントローラ7により行われる。
【0027】
空調用熱交換器2及びモータ用熱交換器1は、グリルを通過した走行風が当たるように、エンジンルーム内のグリル付近に配置されている。
【0028】
グリルシャッター4は、閉状態を基本状態として、空調用熱交換器2及びモータ用熱交換器1の冷却要求がある場合には開状態に制御される。ここでいう冷却要求とは、グリルシャッター4が閉状態のままでは空調用熱交換器2又はモータ用熱交換器1の冷却性能を確保できない場合にコントローラ7が生成する要求である。例えば、外気温が40℃を超える状況では、エンジンルーム内の空気も高温となっているため、グリルシャッター4が閉じたままでは空調用熱交換器2が十分な冷却機能を発揮できない。このような場合にコントローラ7は冷却要求を生成する。
【0029】
また、閉状態を基本状態とするのは、走行風をエンジンルーム内に流入させずに車体に沿って流すことで車体の空気抵抗を低減させて、燃費性能の向上を図るためである。一方、グリルシャッター4を開状態にすると、空気抵抗は増大するものの、エンジンルーム内の空気よりも低温の外気をグリルから導入し、これと空調用熱交換器2及びモータ用熱交換器1とを熱交換させることで、冷却性能を確保できる。
【0030】
次に、制御装置100の配線の詳細について説明する。
【0031】
インバータ31とバッテリ61、62とは、バスバー83、バスバー84、及びバスバー83とバスバー84とを連結する2本のハーネス81によって電気的に接続されている。バスバー84上のバッテリ61、62近傍には、リレー63が設けられている。これにより、駆動モータ3の回生電力は、ハーネス81を介してバッテリ61、62に充電される。バッテリ61、62に充電された電力は、ハーネス81を介して駆動モータ3に供給される。
【0032】
コンプレッサ91及びその他の車両電機機器(補機)は、ハーネス85を介してバスバー83に接続されている。また、DC/DCコンバータ92等のその他の車両電機機器(補機)を、ハーネス86を介してバスバー84に接続してもよい。
【0033】
このように、電動車両の制御装置100では、バッテリ61、62と駆動モータ3とを、強電ハーネス(ハーネス81)を用いて接続している。しかしながら、ハーネスの被覆(架橋ポリエチレン、シリコンゴム等)には耐熱温度の制約があり、ハーネスを通過する電力が大きいと、ハーネスの温度が上昇し、ハーネスの被覆の耐熱温度(以下、ハーネスの耐熱温度と称する。)を超えてしまうおそれがある。例えば、高速道路において高車速領域での全開加速が繰り返されるような走行状況では、ハーネス81を大きな電流が繰り返し通過することになり、ハーネス81が昇温して耐熱温度を超えてしまうおそれがある。なお、配線のすべてにバスバーを用いれば、耐熱温度の制約はほとんど無くなるが、配線距離が長い(例えば数m)箇所では、加工性や取り回し性の問題から、バスバーのみを用いることは難しい。
【0034】
これに対し、ハーネスを保護するために、ハーネス81の温度が上限温度を超えた場合に、駆動モータ3の出力を制限すると、車両の要求トルクに対して、十分な駆動力を得られず、使用者に違和感や不満を与えるおそれがある。
【0035】
一方、ハーネスを太くして、耐熱温度を高めることも可能だが、ハーネスの重量が重くなり、車両の軽量化等の観点から好ましくなく、また、コストがかかるという問題もある。そもそもハーネスの耐熱温度が問題になるまで高車速領域での全開加速を繰り返し行えるような走行状況になる機会は稀である。このような限られた場面のために、重量増やコスト増を招いてまで耐熱温度を高めることは好ましくない。
【0036】
そこで本実施形態では、ハーネス81の温度を推定し、推定温度が耐熱温度より低い第1閾値に達したら、推定温度が高くなるほどバッテリ装置6の入出力を低下させる第1制限を開始する。なお、第1制限における温度上昇に対する制限値の傾きについては後述する。そして、推定温度がさらに上昇して第1閾値より高い第2閾値に達したら、第1制限から、駆動モータ3の出力を退避走行用の出力に制限する第2制限へと切り替える。
【0037】
図2は、本実施形態によるハーネス保護のための制御を説明する図である。図2の横軸はハーネス81の推定温度[degC]、縦軸はバッテリ装置6の使用可能出力[kW]である。また、Pfullは出力制限がない状態における使用可能出力、Plimpは退避走行用の出力、Tth1はハーネス温度の第1閾値、Tth2はハーネス温度の第2閾値、Tmaxはハーネス81の限界温度、を意味する。
【0038】
第1閾値Tth1は、一般的に想定される使用状況において到達することが想定されるハーネス温度の上限Tsut(例えば高速道路における全開加速中の温度)よりも10~15℃程度高い温度である。第2閾値Tth2は、第1閾値Tth1より5℃程度高く、かつ後述する限界温度Tmaxより5℃程度低い温度である。限界温度Tmaxは、ハーネス81の耐熱温度の限界値か、ハーネス81の耐熱温度よりも少しだけ低い、耐熱温度付近の温度である。なお、ハーネス81の温度は、後述するようにハーネス81を流れる電流値から推定される。
【0039】
退避走行用の出力Plimpは、例えば、駆動モータ3に退避走行に必要な駆動力を発生させることが可能であり、かつ、退避走行中にハーネス温度が出火温度まで上昇することがない出力である。
【0040】
ハーネス温度が第1閾値Tth1より低い領域(領域R0)では、コントローラ7は使用可能出力を制限しない。
【0041】
ハーネス温度が第1閾値Tth1以上かつ第2閾値未満の領域(領域R1)では、コントローラ7は、ハーネス温度が高くなるほど使用可能出力を小さくする第1制限を行う。このように制限すれば、ハーネス温度が低下して領域R0に戻る可能性がある。
【0042】
なお、電動車両の駆動システムを、最高速度近傍では駆動システムの最大出力が出ない構成にしておくことで、第1制限の開始後もしばらくは最高速度で走行可能である。
【0043】
また、使用可能出力の制限開始により負の加速度が生じる可能性があるが、制限開始に伴う使用可能出力の変化速度を制限することで、使用者が違和感や不満を覚えることがない程度(例えば、0.03G以下)の加速度に抑えることができる。
【0044】
ハーネス温度が第2閾値以上かつ限界温度Tmax未満の領域(領域R2)では、コントローラ7は、使用可能出力を退避走行用の出力Plimpに制限する第2制限を行う。本来であれば、第1制限を行えば第2閾値に到達する可能性は低いので、ハーネス温度が第2閾値以上になるということは、実際には使用可能出力がコントローラ7の指示通りに制限されていない可能性がある。そこで、駆動モータ3の出力を退避走行用の出力に制限する。
【0045】
ハーネス温度が限界温度Tmax以上の領域(領域R3)では、コントローラ7はリレーカットによりバッテリ装置6の入出力を停止させる。
【0046】
図3は、ハーネス温度が領域R0からR2へと遷移する走行状況において、コントローラ7が上述した第1制限及び第2制限を行った場合の、ハーネス81を流れる電流値を説明するための図である。図の横軸は電流値[A]、縦軸は時間[sec]である。ハーネス温度が領域R0からR2へと遷移する走行状況とは、例えば、速度無制限の高速道路において、80km/hから全開加速をして、160km/hに到達したら80km/hまで減速する、という走行パターンを30分以上継続して繰り返す状況である。
【0047】
図中の実線Aは本実施形態の制御を実行した場合のハーネス81の電流値、一点鎖線Bは第1制限開始ライン、二点鎖線Cはハーネス発煙ライン、一点二鎖線Dは退避走行用上限電流値、長破線Eはフューズ溶断特性線、をそれぞれ示している。二点鎖線Cは、ハーネス81の仕様に応じて定まる、発煙するおそれのある電流値である。一点鎖線Bは、二点鎖線Cに対して電流センサの検出誤差を織り込んだものである。
【0048】
タイミングt1までは、実線Aの電流値は一点鎖線Bの電流値よりも低いので、第1制限は行われない。実線Aが一点鎖線Bに到達した(つまりハーネス温度が第1閾値Tth1に到達した)タイミングt1以降に第1制限を行わないと、図中に短破線で示したように電流値は二点鎖線Cを超えてしまい、ハーネス81から発煙するおそれがある。しかし本実施形態では、タイミングt1において第1制限を開始するので、それ以降も電流値(実線A)が一点鎖線Bを超えることはない。なお、第1制限を行ってもハーネス81が昇温し続けて第2閾値Tth2に到達したら、それ以降の電流値は一点二鎖線D上を推移する。
【0049】
ところで、本実施形態の電動車両はグリルシャッター4を備える。グリルシャッター4を開状態にすると、走行風がエンジンルーム内に流入することにより、ハーネス81の周囲温度はグリルシャッター4が閉状態のときに比べて低くなる。つまり、ハーネス81を流れる電流の大きさが同じであっても、ハーネス温度はグリルシャッター4が開状態の方が閉状態よりも低くなる。例えば、グリルシャッター4が閉状態でハーネス温度が第1閾値のときに、グリルシャッター4を開状態にすればハーネス温度が第1閾値未満になることもある。そこで、グリルシャッター4を開閉する判断基準として、上述した冷却要求の他に、ハーネス温度も用いる。すなわち、ハーネス温度に基づいてバッテリ装置6の入出力電力を制限する際に、グリルシャッター4の開閉もハーネス温度に基づいて行う。
【0050】
図4は、コントローラ7が実行するバッテリ装置6の入出力及びグリルシャッター4の開閉の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0051】
ステップS101~S104は、ハーネス81の温度を推定するための工程である。ハーネスの温度Tの温度変化ΔTは、ハーネスにおける発熱量(r/C)Iと放熱量(hA/C)(T-T)の差から、以下の式(1)により求めることができる。なお、式(1)において、Δtは、前回の温度推定時からの経過時間、r/Cは発熱係数、hA/Cは放熱係数、Tは前回の推定時における推定温度(前回推定温度)、Tはハーネス周囲の温度である。発熱係数r/C、放熱係数hA/Cはハーネスに固有の定数であり、固定値である。また、ハーネス周囲の温度は実測値であってもよいが、実験等により予め適当に決定しておいた固定値を用いてもよい。
【0052】
【数1】
【0053】
式(1)に示すように、ハーネスの温度変化ΔTは、ハーネスを流れる電流値Iから推定することができる。また、ハーネスの温度は、前回推定温度Tとハーネスの温度変化ΔTとを加算して求めることができる。本実施形態では、まずハーネスを流れる電流値Iの推定を行い、電流の推定値からハーネスの温度を推定する。
【0054】
以下、フローチャートのステップにしたがって説明する。
【0055】
ステップS101において、コントローラ7は駆動モータ3の回転数、インバータ31の電流値及びDC端電圧値、並びにバッテリ61、62の電流値を取得する。また、コントローラ7は、取得したインバータの電流値から、駆動モータ3のトルクを推定する。
【0056】
ステップS102において、コントローラ7は、駆動モータ3の回転数、トルク及びインバータ31のDC端電圧値に基づき、インバータ31のDC電流値をそれぞれ推定する。インバータ31のDC電流値は、バスバー83のDC電流値に相当する。
【0057】
ステップS103において、コントローラ7は、推定したインバータ31のDC電流値に基づき、ハーネス81を流れるDC電流値を推定する。具体的には、バッテリ61、62の充電を行っている場合においては、ハーネス81のDC電流値IHARは、バッテリ61,62の入力電流ILBCinと等しいと推定される。
【0058】
一方、バッテリ61、62から駆動モータ3に電力が供給される場合においては、ハーネス81のDC電流値IHARは、バッテリ61,62の出力電流ILBCoutと等しいと推定される。
【0059】
ステップS103において、ハーネス81を流れるDC電流値IHARを推定すると、コントローラ7はステップS104の処理を実行する。
【0060】
ステップS104において、コントローラ7は、ハーネス81を流れるDC電流値IHARに基づき、グリルシャッター4が閉状態のときのハーネス温度(以下、シャッター閉時ハーネス温度ともいう。)Tcloseと、グリルシャッター4が開状態のときのハーネス温度(以下、シャッター開時ハーネス温度ともいう。)Topenと、を推定する。具体的には、前述の式(1)を用いて、ハーネス81の温度変化ΔTを算出し、前回推定温度Tと温度変化ΔTを加算してハーネス81の温度Tを推定する。このとき、ハーネス周囲の温度Tは、シャッター閉時ハーネス温度Tcloseを算出する際にはT∞1(例えば80℃)、シャッター開時ハーネス温度Tcloseを算出する際にはT∞2(例えば60℃)とする。
【0061】
なお、前回推定温度Tの初期値には、ハーネス周囲の温度Tを用いる。即ち、1回目の温度推定では、放熱量(hA/C)(T-T)はゼロとなる。従って、ハーネス81における発熱量(r/C)Iに、制御装置100が起動してからの経過時間Δtを乗じた値が温度変化ΔTとなり、温度変化ΔTとハーネス周囲の温度T(前回推定温度T)とを加算した値がハーネス推定温度となる。
【0062】
ステップS105において、コントローラ7は、シャッター閉時ハーネス温度Tcloseが第1閾値Tth1以上であるか否かを判定し、第1閾値Tth1以上の場合はステップS106の処理に進み、第1閾値未満の場合はステップS104の処理に戻る。
【0063】
ステップS106において、コントローラ7は、シャッター閉時ハーネス温度Tcloseに基づく第1制限を開始する。
【0064】
ステップS107において、コントローラ7は、シャッター閉時ハーネス温度Tcloseが第2閾値Tth2以上であるか否かを判定し、第2閾値Tth2以上の場合にはステップS109の処理に進み、第2閾値Tth2未満の場合はステップS108においてグリルシャッター4を閉状態のままにして、ステップS104の処理に戻る。
【0065】
ステップS109において、コントローラ7は、グリルシャッター4を開状態にする。これにより走行風がグリルシャッター4を介してエンジンルームに流入し、ハーネスの周囲温度Tが低下する。
【0066】
ステップS110において、コントローラ7はシャッター開時ハーネス温度Topenが第2閾値Tth2以上か否かを判定し、第2閾値Tth2以上の場合にはステップS111の処理に進み、第2閾値Tth2未満の場合はステップS114の処理に進む。
【0067】
ステップS111において、コントローラ7は、バッテリ装置6の入出力を上述した退避走行用の出力であるPlimpに固定する。
【0068】
ステップS112において、コントローラ7は、シャッター開時ハーネス温度Topenが限界温度Tmax以上か否かを判定し、限界温度Tmax以上の場合はステップS113の処理に進み、限界温度Tmax未満の場合はステップS110の処理に戻る。
【0069】
ステップS113において、コントローラ7は、リレーカットすることによりバッテリ装置6の入出力を停止させる。ステップS111~S113の処理によれば、ハーネス温度が上昇した場合でも退避走行が可能となり、退避走行中にハーネス温度がさらに上昇した場合にはリレーカットするので安全性を確保できる。
【0070】
一方、ステップS114においては、コントローラ7はシャッター閉時ハーネス温度Tcloseに基づく第1制限から、シャッター開時ハーネス温度Topenに基づく第1制限へ移行する。すなわち、シャッター開時ハーネス温度Topenはシャッター閉時ハーネス温度Tcloseより低いので、バッテリ装置6の入出力の制限を解除することになる。このとき、制限の解除に伴うバッテリ装置6の出力の変化により使用者に違和感等を与えることは望ましくないので、違和感を与えないように所定の変化速度で変化させる。具体的な変化速度は適合により設定するものであるが、6kW程度であればシステムの成り行きで変化させたとしても使用者は違和感を覚えることはないと考えられる。そこで、例えば、シャッター開時ハーネス温度Topenに基づく第1制限の制限値とシャッター開時ハーネス温度Topenに基づく第1制限の制限値との差が6kW以上ある場合には、変化速度を6kW/secに制限し、差が6kW未満の場合には変化速度を制限しないこととする。
【0071】
ステップS115において、コントローラ7はシャッター開時ハーネス温度Topenが第1閾値Tth1未満であるか否かを判定し、第1閾値Tth1未満の場合はステップS116の処理に進み、第1閾値Tth1以上の場合はステップS114の処理に戻る。
【0072】
ステップS116において、コントローラ7は、グリルシャッター4を閉上に戻してステップS104の処理に戻る。
【0073】
ところで、第1制限によりバッテリ装置6の入出力が制限されると、使用者が車両に何らかの故障が生じていると誤解するおそれがあるので、第1制限の実行中には、ハーネス81が高温になっているために入出力が制限されているのであって、故障ではないことを使用者に告知することが望ましい。そこで、出力が制限されていることを下記の方法により使用者に告知する。
【0074】
図5は電動車両のインストゥルメントパネルに表示されるパワーメータ20の一例を示す図である。図5の左図は第1制限が行われていないときの状態、同右図は第1制限が行われているときの状態をそれぞれ示している。
【0075】
パワーメータ20は、駆動モータ3の現在の出力を示す装置である。図中のゼロを起点として、図中時計回り方向の領域は力行時の出力領域を示し、図中反時計回り方向の領域は回生時の出力領域を示している。そして、インジケータ21が現在の出力を指し示す。図5の左図は、駆動モータ3が力行状態で、最大出力に対して約50%程度の出力を発生していることを示している。
【0076】
第1制限の実行中は、制限後の最大出力可能値及び最大回生可能値をパワーメータ上で明確にする。例えば、図5の右図のように、第1制限により出力不可能となった領域(S1)及び回生不可能になった領域(S2)をグレーアウト又は塗りつぶし等することで、現在の最大出力可能値及び最大回生可能値を明確化する。これにより、使用者は現在出力が制限されていることを認識できる。
【0077】
また、上記のパワーメータ20の表示だけでなく、文字による告知を行ってもよい。例えば、インストゥルメントパネル内の車両情報ディスプレイに「EVシステム高温のため一時的に出力を制限しています」というメッセージを表示してもよい。その際、文字の色は、故障告知用の文字とは異なる色にすることが好ましい。例えば故障告知用の文字が黄色であれば、第1制限の告知は白色にする。これにより、使用者は、出力が通常時より低くなっているのはハーネス保護のためであり、故障ではないことを知ることが出来る。
【0078】
第2制限を実行する場合は、上記の通り何らかの故障が発生している可能性があるので、コーションランプを点灯させる。故障である旨を車両情報ディスプレイに表示してもよい。そして、コントローラ7には故障コードDTC1を記録する。また、ハーネス温度が限界温度Tmaxを超えてリレーカットした場合も第2制限を実行する場合と同様に、コーションランプの点灯、車両情報ディスプレイによる表示、故障コードDTC2の記録、を行う。
【0079】
図6は、上記の制御ルーチンを実行した場合のタイミングチャートの一例である。具体的には、第1制限を開始した後の走行中にハーネス温度が低下して、第1制限が解除される場合のタイミングチャートである。
【0080】
ハーネス温度が上昇してタイミングt1で第1閾値Tth1に到達すると、ハーネス温度が高いほどバッテリ装置6の入出力の上限を低下させる第1制限が開始される。タイミングt1以降もシャッター閉ハーネス温度Tcloseは上昇し続けているので、バッテリ装置6の使用可能出力も低下し続けている。その後のタイミングt2からタイミングt3までは、シャッター閉ハーネス温度Tcloseが一定なので、バッテリ装置6の使用可能出力も一定になっている。
【0081】
タイミングt3からシャッター閉ハーネス温度Tcloseが低下し始めると、バッテリ装置6の使用可能出力は増大し始める。そして、タイミングt4においてシャッター閉ハーネス温度Tcloseが第1閾値Tth1まで低下すると、第1制限は解除される。その後は、パワースイッチがオフになるタイミングt5までシャッター閉ハーネス温度Tcloseは第1閾値Tth1未満で推移するので、バッテリ装置6の使用可能出力が制限されることはない。
【0082】
第1制限が行われるタイミングt1からタイミングt4までの間は、上述した使用者への告知が行われる。なお、図6の例ではハーネス温度が第2閾値Tth2、限界温度Tmaxを超えていないので、故障コードDTC1、DTC2が記録されることも警告灯点灯要求が生成されることもない。また、ハーネス温度が限界温度Tmaxを超えていないので、パワースイッチがオフになるタイミングt5までリレーカットされることもない。
【0083】
図7は、上記の制御ルーチンを実行した場合のタイミングチャートの他の例である。具体的には、グリルシャッター4が閉状態で第1制限が開始され、さらにグリルシャッター4を開状態にする状況に至ったものの、その後の走行中にハーネス温度が低下して、第1制限が解除される場合のタイミングチャートである。
【0084】
タイミングt1で第1制限が開始されるところまでは図6と同様である。しかしこの例では、シャッター閉ハーネス温度Tcloseがタイミングt2において第2閾値以上になる。このため、タイミングt2においてグリルシャッター4が開状態になり、かつ各閾値と対比する対象がシャッター閉ハーネス温度Tcloseからシャッター開時ハーネス温度Topenへ切り替わる。そして、タイミングt2におけるシャッター開時ハーネス温度Topenは第1閾値以上第2閾値未満なので、第2制限は開始されない。
【0085】
また、シャッター開時ハーネス温度Topenはシャッター閉ハーネス温度Tcloseより低いので、シャッター閉ハーネス温度Tcloseからシャッター開時ハーネス温度Topenへの切り替えに伴い、第1制限によるバッテリ装置6の使用可能出力は増大する。ただし、使用者に違和感を生じさせないように、タイミングt2からタイミングt3にかけて上述した変化速度で徐々にバッテリ装置6の使用可能出力を増大させる。
【0086】
タイミングt3からタイミングt4までの区間はシャッター開時ハーネス温度Topenが一定なので、バッテリ装置6の使用可能出力も一定になっている。タイミングt4からはシャッター開時ハーネス温度Topenが低下し続けているので、バッテリ装置6の使用可能出力は上昇し続ける。そして、タイミングt5においてシャッター開時ハーネス温度Topenが第1閾値Tth1まで低下すると、第1制限は解除される。それ以降、タイミングt6でパワースイッチがオフになるまで、バッテリ装置6の使用可能出力が制限されない。
【0087】
この例では、タイミングt1からタイミングt5が第1制限の行われる期間であり、この期間中は上述した使用者への告知が行われる。DTCの記録、警告灯点灯要求の生成、及びリレーカットが行われないのは図6の例と同様である。
【0088】
以上のように本実施形態では、バッテリ装置6から電力が供給される駆動モータ3を備える電動車両を制御する電動車両制御方法が提供される。この方法において、コントローラ7は、バッテリ装置6と駆動モータ3とを電気的に接続するハーネス81の温度を推定し、ハーネス81の推定温度が第1閾値Tth1に達したら、推定温度が高くなるほどバッテリ装置6の入出力の上限を低下させる第1制限を開始し、ハーネス81の推定温度が第1閾値Tth1よりも高い第2閾値Tth2に達したら、第1制限から、バッテリ装置6の出力を駆動モータ3の出力が退避走行用の出力になる値に制限する第2制限へ切り替える。これによれば、退避走行をする状況になる前に第1制限によってハーネス81の昇温を抑制するので、ハーネス81を熱から保護することができる。また、第1制限ではハーネス81の温度が高くなるほど制限の度合いを強くするので、バッテリ装置6の使用可能出力が急激に低下することがなく、使用者の違和感等を抑制できる。
【0089】
本実施形態では、電動車両は、車両前面に開口するグリルに配置されるグリルシャッター4を備える。そして、コントローラ7は、グリルシャッター4を原則的に閉状態とし、エンジンルーム内に配置された冷却用補機としてのモータ用熱交換器1及び空調用熱交換器2の冷却要求に応じて開状態にするシャッター制御を行い、さらに、ハーネス81の推定温度として、グリルシャッター4が閉状態の場合のシャッター閉ハーネス温度Tclose(閉状態推定温度)と、グリルシャッター4が開状態の場合のシャッター開時ハーネス温度Topen(開状態推定温度)と、を推定し、グリルシャッター4が閉状態の場合には、第1閾値Tth1及び第2閾値Tth2と比較する推定温度としてシャッター閉ハーネス温度Tcloseを用い、シャッター閉ハーネス温度Tcloseが第2閾値Tth2に達したら、冷却要求の如何にかかわらずグリルシャッター4を開状態にし、かつ第1閾値Tth1及び第2閾値Tth2と比較する推定温度をシャッター閉ハーネス温度Tcloseからシャッター開時ハーネス温度Topenに切り替える。このように、グリルシャッター4を開くか否かの判断材料にハーネス81の温度を加え、バッテリ装置6の使用可能出力を制限する際には、グリルシャッター4の状態に応じてシャッター閉ハーネス温度Tcloseとシャッター開時ハーネス温度Topenとを切り替えて使用するので、使用可能出力が制限される度合いをより小さくすることができ、使用者の不満を抑制できる。
【0090】
本実施形態では、コントローラ7は、シャッター閉ハーネス温度Tcloseとシャッター開時ハーネス温度Topenとの切り替えによりバッテリ装置6の使用可能出力に変化が生じる場合には、変化速度を予め設定した上限速度に制限する。これにより、バッテリ装置6の使用可能出力の変化に起因する使用者の違和感等を抑制できる。
【0091】
本実施形態では、コントローラ7は、第1制限の実行中に、ハーネスが高温になっているために入出力が制限されていることを、故障時とは異なる形態でインストゥルメントパネル内に表示する。これにより、使用者は、出力が通常時より低くなっているのはハーネス保護のためであり、故障ではないことを知ることが出来る。
【0092】
本実施形態では、コントローラ7は、第1制限の実行中には、インストゥルメントパネル内のパワーメータ上に使用不可能な入出力領域を表示する。これにより、使用者は使用可能な入出力領域を知ることが出来る。
【0093】
なお、本実施形態では駆動モータ3が前輪を駆動する二輪駆動車に本発明を適用する場合を例に挙げて説明したが、後輪を駆動する駆動モータ3も備える四輪駆動車にも同様に適用可能である。その場合、上述した実施形態の制御の他に、後輪駆動用の駆動モータ3を制御するインバータとバッテリ装置6とを電気的に接続するハーネスの温度を推定し、後輪駆動用の駆動モータ3についても第1制限又は第2制限を行えばよい。
【0094】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0095】
1 モータ用熱交換機、 2 空調用熱交換器、 3 駆動モータ、 4 グリルシャッター、 6 バッテリ装置、 7 コントローラ、 31 インバータ、 81 ハーネス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7