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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175601
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】防振台
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/04 20060101AFI20241211BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20241211BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
F16F9/04
F16F9/32 V
F16F15/02 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093515
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】522297236
【氏名又は名称】株式会社プロスパイラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225543
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 真
(72)【発明者】
【氏名】大津 一高
【テーマコード(参考)】
3J048
3J069
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048BE02
3J048CB13
3J048DA01
3J048EA13
3J069AA01
3J069AA11
3J069AA21
3J069AA31
3J069DD06
(57)【要約】
【課題】積載物の重量によらず一定の高さを保つコンパクトな空気ばね機構を有する防振台を提供する。
【解決手段】プレート貫通孔及び空気注入口を有するプレートと、プレート貫通孔に挿入されるピストンと、プレート貫通孔とピストンの間に配置される環状のバルブと、ピストンの上端部とバルブとの間に配置される弾性部材と、プレートの上面に配置される配管部と、プレートの下面に配置され、ピストンの中心軸線に沿った上下方向にプレートを移動させる昇降部と、を備え、空気注入による配管部の弾性変形によって、バルブとプレート貫通孔との間の隙間である空気通路が開かれ、前記昇降部と前記プレートの下面との間に空気が流入し、弾性部材の弾性力によって、空気通路が閉じられる、防振台が提供される。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレート貫通孔及び空気注入口を有するプレートと、
前記プレート貫通孔に挿入されるピストンと、
前記プレート貫通孔と前記ピストンの間に配置される環状のバルブと、
前記ピストンの上端部と前記バルブとの間に配置される弾性部材と、
前記プレートの上面に配置される配管部と、
前記プレートの下面に配置され、前記ピストンの中心軸線に沿った上下方向に前記プレートを移動させる昇降部と、
を備え、
空気注入による前記配管部の弾性変形によって、前記バルブと前記プレート貫通孔との間の隙間である空気通路が開かれ、前記昇降部と前記プレートの下面との間に空気が流入し、
前記弾性部材の弾性力によって前記空気通路が閉じられる、防振台。
【請求項2】
請求項1に記載の防振台であって、
前記配管部は、前記プレートの上面及び前記バルブに結合されている上側結合部と、前記プレートの上面及び前記バルブに結合されていない上側非結合部と、を有する配管部用ゴムを含み、
前記昇降部は、前記プレートの下面及び前記ピストンに結合されている下側結合部と、前記プレートの下面及び前記ピストンに結合されていない下側非結合部と、を有する昇降部用ゴムを含む、防振台。
【請求項3】
請求項2に記載の防振台であって、
前記配管部は、前記空気注入口からの空気注入によって、前記上側非結合部と前記プレートの上面との間にバルブ用空気室を形成し、
前記昇降部は、前記空気通路からの空気の流入によって、前記下側非結合部と前記プレートの下面との間に作動空気室を形成し、
前記バルブ用空気室及び前記作動空気室は、前記空気通路が開いたときに連通する、防振台。
【請求項4】
請求項2に記載の防振台であって、
前記上側結合部は、前記バルブの外周、並びに、前記プレートの上面のうち前記バルブ及び前記空気注入口を取り囲む部分に結合され
前記下側結合部は、前記ピストンの外周、並びに、前記プレートの下面のうち前記ピストンを取り囲む部分に結合される、防振台。
【請求項5】
請求項2に記載の防振台であって、前記弾性部材は、前記ピストンの周囲に配置されたバルブ抑えゴムを含む、防振台。
【請求項6】
請求項2に記載の防振台であって、前記弾性部材は、前記ピストンの周囲に配置されたバルブ抑えスプリングを含む、防振台。
【請求項7】
請求項5に記載の防振台であって、前記バルブ抑えゴム及び前記配管部用ゴムは一体に成型されている、防振台。
【請求項8】
請求項5に記載の防振台であって、前記配管部及び前記昇降部は、加硫接着によって前記プレートに接着される、防振台。
【請求項9】
請求項8に記載の防振台であって、
前記プレートの上面及び下面、前記バルブ、並びに前記ピストンに、ゴムが接着可能な接着可能部分が形成され、
前記接着可能部分で、前記上側結合部が前記プレートの上面及び前記バルブに接着され、前記下側結合部が前記プレートの下面及び前記ピストンに接着される、防振台。
【請求項10】
請求項9に記載の防振台であって、前記接着可能部分は、レーザー表面加工によって形成される、防振台。
【請求項11】
請求項9に記載の防振台であって、前記接着可能部分は、接着フィルムによって形成される、防振台。
【請求項12】
請求項1に記載の防振台であって、前記ピストンは管状であり、また、前記防振台の外部に開口する中空部と、前記ピストンの側面に設けられ、且つ、前記中空部と連通する開口部と、を有する、防振台。
【請求項13】
請求項1に記載の防振台であって、前記ピストンの上端部に、前記ピストンの側面から突出する突出部が設けられている、防振台。
【請求項14】
請求項5に記載の防振台であって、前記バルブ抑えゴム又は前記配管部用ゴムと一体に成型されているゴムを含むシール部材が、前記ピストンと前記バルブとの間の隙間に配置される、防振台。
【請求項15】
請求項14に記載の防振台であって、
前記ピストンの側面に凹部が設けられ、
前記シール部材の下端に、前記ピストンの側面に面し、且つ、前記凹部の形状に対応する形状を有する凸部が設けられている、防振台。
【請求項16】
請求項1に記載の防振台であって、前記ピストンの側面に潤滑剤が塗布される、防振台。
【請求項17】
請求項16に記載の防振台であって、前記潤滑剤はグリスである、防振台。
【請求項18】
請求項1に記載の防振台であって、前記プレートは四角形状であり、前記プレートのそれぞれの隅に、前記プレート貫通孔及び前記ピストンが配置されている、防振台。
【請求項19】
請求項1に記載の防振台であって、前記プレートは円形状であり、前記プレートの周方向に間隔を空けて、複数の前記プレート貫通孔及び前記ピストンが配置されている、防振台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防振台に関し、特に空気ばね機構を有する防振台に関する。
【背景技術】
【0002】
積載物を支持するための台は、積載物が振動で損害を受けることを防ぐために、ゴム又はスプリング等の防振手段を備える場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、防振手段としてスプリングを利用する無振動台車が開示されている。この無振動台車は、ばね付キャスター、コイルばね、ゲル緩衝材、ワイヤーロープ防振器、及び横揺れ防止ばねによって、有害な振動を抑制している。
【0004】
ゴム又はスプリングを利用した防振装置の防振性能を上昇させるには、ばね定数を下げることが有用である。しかし、ばね定数が低いと、積載物の荷重によってゴム又はスプリングが大きく変位してしまう。そのため、ストロークを大きくする必要があり、スペース効率が悪化する。さらに、積載物の重量が大きい場合、ゴム又はスプリングの全長を大きくする必要があるため、スペース効率がより悪化する。
【0005】
スペース効率の良好な防振装置として、空気ばねが挙げられる。空気ばねは、重量に関係なく一定の高さを維持する機構を有する。非特許文献1~3には、産業機械又は精密機器等に利用される空気ばねが開示されている。
【0006】
しかし、従来の空気ばねは、構造が複雑であり、部品数及び組立工程数が多いため、高価である。特に、各部品が別体であり、組付けにボルト又はナット等の機械的係止手段を必要とするため、部品数及び組立工程数が多くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-25999号公報
【特許文献2】特開2016-107609号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】株式会社ナベヤ、“ラバー空気ばね FAEBI”、[online]、[令和5年5月29日検索]、インターネット<https://www.nabeya.co.jp/search.php?action=Detail&Key=9928FAEBI>
【非特許文献2】株式会社ナベヤ、“ラバー空気ばね(ダンパー調節タイプ) FAEBI-HD”、[online]、[令和5年5月29日検索]、インターネット<https://www.nabeya.co.jp/search.php?action=Detail&Key=9928FAEBI-HD>
【非特許文献3】倉敷化工株式会社、“PSB形 空気ばね”、[online]、[令和5年5月29日検索]、インターネット<https://sanki.kuraka.co.jp/products/detail18_psb.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、積載物の重量によらず一定の高さを保つコンパクトな空気ばね機構を有する防振台を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、従来の空気ばね装置よりも部品数及び組立工程数が低減した空気ばね機構を有する防振台を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態に係る防振台は、
(1) プレート貫通孔及び空気注入口を有するプレートと、プレート貫通孔に挿入されるピストンと、プレート貫通孔とピストンの間に配置される環状のバルブと、ピストンの上端部とバルブとの間に配置される弾性部材と、プレートの上面に配置される配管部と、プレートの下面に配置され、ピストンの中心軸線に沿った上下方向にプレートを移動させる昇降部と、を備え、空気注入による配管部の弾性変形によって、バルブとプレート貫通孔との間の隙間である空気通路が開かれ、昇降部とプレートの下面との間に空気が流入し、弾性部材の弾性力によって、空気通路が閉じられる、防振台である。
【0012】
(2) 上記(1)の防振台において、配管部は、プレートの上面及びバルブに結合されている上側結合部と、プレートの上面及びバルブに結合されていない上側非結合部と、を有する配管部用ゴムを含み、昇降部は、プレートの下面及びピストンに結合されている下側結合部と、プレートの下面及びピストンに結合されていない下側非結合部と、を有する昇降部用ゴムを含んでもよい。
【0013】
(3) 上記(2)の防振台において、配管部は、空気注入口からの空気注入によって、上側非結合部とプレートの上面との間にバルブ用空気室を形成してもよく、昇降部は、空気通路からの空気の流入によって、下側非結合部とプレートの下面との間に作動空気室を形成してもよく、バルブ用空気室及び作動空気室は、空気通路が開いたときに連通してもよい。
【0014】
(4) 上記(2)又は(3)の防振台において、上側結合部は、バルブの外周、並びに、プレートの上面のうちバルブ及び空気注入口を取り囲む部分に結合されてもよく、下側結合部は、ピストンの外周、並びに、プレートの下面のうちピストンを取り囲む部分に結合されてもよい。
【0015】
(5) 上記(2)~(4)の何れかの防振台において、弾性部材は、ピストンの周囲に配置されたバルブ抑えゴムを含んでもよい。
【0016】
(6) 上記(2)~(4)の何れかの防振台において、弾性部材は、ピストンの周囲に配置されたバルブ抑えスプリングを含んでもよい。
【0017】
(7) 上記(5)の防振台において、バルブ抑えゴム及び配管部用ゴムは一体に成型されてもよい。
【0018】
バルブ抑えゴム及び配管部用ゴムを一体に成型すれば、部品の結合に必要な部品数及び組立工程数を低減させることによって、製造コストを削減することができる。
【0019】
(8) 上記(5)又は(7)の防振台において、配管部及び昇降部は、加硫接着によってプレートに接着されてもよい。
【0020】
(9) 上記(8)の防振台において、プレートの上面及び下面、バルブ、並びにピストンに、ゴムが接着可能な接着可能部分が形成されてもよく、接着可能部分で、上側結合部がプレートの上面及びバルブに接着され、下側結合部がプレートの下面及びピストンに接着されてもよい。
【0021】
(10) 上記(9)の防振台において、接着可能部分は、レーザー表面加工によって形成されてもよい。
【0022】
(11) 上記(9)の防振台において、接着可能部分は、接着フィルムによって形成されてもよい。
【0023】
(12) 上記(1)~(11)の何れかの防振台において、ピストンは管状であってもよく、また、防振台の外部に開口する中空部と、ピストンの側面に設けられ、且つ、中空部と連通する開口部と、を有してもよい。
【0024】
管状ピストンは、防振台から積載物を下ろしたときに、ピストンの中空部を通じて作動空気室内の空気を外部に排出することができる。この排出によって、作動空気室の過剰な膨張による昇降部の破損を防ぐことができる。
【0025】
(13) 上記(1)~(12)の何れかの防振台において、ピストンの上端部に、ピストンの側面から突出する突出部が設けられてもよい。
【0026】
突出部は、弾性部材が突出部よりも上方に移動することを防ぎ、バルブが空気通路を閉じることを助けることができる。
【0027】
(14) 上記(5)又は(7)~(12)の何れかの防振台において、バルブ抑えゴム又は配管部用ゴムと一体に成型されているゴムを含むシール部材が、ピストンとバルブの間の隙間に配置されてもよい。
【0028】
シール部材は、ピストンとバルブの間の隙間から作動空気室内の空気が漏れることを防ぐことができる。
【0029】
(15) 上記(14)の防振台において、ピストンの側面に凹部が設けられてもよく、シール部材の下端に、ピストンの側面に面し、且つ、凹部の形状に対応する形状を有する凸部が設けられてもよい。
【0030】
ピストンに凹部が設けられていれば、シール部材の成型時に、シール部材の下端に凸部を設けることができる。凸部は、ピストンとバルブの間のシール性をより高めることができる。
【0031】
(16) 上記(1)~(15)の何れかの防振台において、ピストンの側面に潤滑剤が塗布されてもよい。
【0032】
潤滑剤を塗布すれば、弾性部材及びシール部材は、ピストンに対して摺動することができ、これらの部材の摩擦による劣化を防ぐことができる。
【0033】
(17) 上記(16)の防振台において、潤滑剤は、グリスであってもよい。
【0034】
(18) 上記(1)~(17)の何れかの防振台において、プレートは四角形状であってもよく、プレートのそれぞれの隅に、プレート貫通孔及びピストンが配置されてもよい。
【0035】
(19) 上記(1)~(17)の何れかの防振台において、プレートは円形状であってもよく、プレートの周方向に間隔を空けて、プレート貫通孔及びピストンが配置されてもよい。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、重量によらず一定の高さを保つコンパクトな空気ばね機構を有する防振台が提供される。この防振台は、従来の空気ばね装置よりも、部品数及び組立工程数を低減でき、製造コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1A】本発明の一実施形態に係る防振台の断面図である。
図1B】防振台におけるプレートの上面図である。
図1C】防振台におけるプレートの下面図である。
図1D】空気注入前の防振台における、ピストンの凹部付近の拡大図である。
図1E】空気注入中の防振台における、ピストンの凹部付近の拡大図である。
図2A】空気注入前の防振台の断面図である。
図2B】空気注入中の防振台の断面図である。
図2C図2AのA-A線に沿った断面図である。
図2D図2BのA-A線に沿った断面図である。
図2E】プレートが所定の高さまで上昇した後で、プレート上の積載物による荷重が取り除かれた状態の防振台の断面図である。
図3A】四角形状プレート上のピストン、配管部及び空気注入口の配置例である。
図3B】円形状プレート上のピストン、配管部及び空気注入口の配置例である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下では、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係る防振台について説明する。本明細書では、ピストンの中心軸線に沿った方向を上下方向、中心軸線に対して直交する方向を横方向と呼ぶ。添付の図面は模式図である。そのため、図示されている部品の位置、大きさ及び形状等は、実際の位置、大きさ及び形状等と異なる可能性がある。
【0039】
図1Aは、本発明の一実施形態に係る防振台1の断面図である。防振台1は、プレート貫通孔16及び空気注入口18を有するプレート10と、プレート貫通孔16に挿入されるピストン30と、プレート貫通孔16とピストン30の間に配置される環状のバルブ40と、ピストン30の上端部とバルブ40との間に配置される弾性部材50と、プレートの上面12に配置される配管部60と、プレートの下面14に配置され、ピストン30の中心軸線に沿った上下方向にプレート10を移動させる昇降部70と、を備える。空気注入口18から空気を注入すると、プレートの上面12と配管部60の間にバルブ用空気室80が形成される。バルブ40とプレート貫通孔16との間の隙間である空気通路を空気が通ることで、プレートの下面14と昇降部70の間に作動空気室90が形成される。
【0040】
プレート貫通孔16及び空気注入口18は、プレートの上面12及び下面14を貫通する。プレート貫通孔16の内面は、環状のバルブ40を受け入れて支持するような形状を有する。空気注入口18には、防振台1に空気を注入するための導管20が取り付けられる。導管20は、空気タンク等の容器(不図示)に接続される。
【0041】
ピストン30は管状である。ピストン30は、防振台1の外部に開口する中空部32と、ピストン30の側面に設けられ、且つ、中空部32と連通する開口部34と、を有する。
【0042】
管状ピストンを使用する場合、プレート10が所定の高さまで上昇した状態で防振台1から積載物を取り除くと、積載物による荷重がなくなることによって、作動空気室90が膨張し、作動空気室90がピストン30の開口部34と連通する。作動空気室90内の空気は、開口部34と作動空気室90が連通しなくなるまで、ピストン30の中空部32を通じて外部に排出される。この排出によって、作動空気室90の過剰な膨張による昇降部70の破損を防ぐとともに、プレート10を一定の高さに保つことができる。
【0043】
従来の空気ばね装置は、空気室の過剰な膨張を防ぐために、積載物を空気ばね装置から降ろす前に、空気室から空気を全て抜くことが必要な場合がある。管状ピストンは、このような必要性をなくすことができる。防振台から荷物を降ろす頻度が高い場合、例えば、台車に本発明の一実施形態に係る防振台を利用する場合、管状ピストンは、荷物を降ろす度に空気を抜く手間を省くことができる。
【0044】
ピストン30の上端部には、ピストン30の側面から突出する突出部36が設けられている。空気注入によって作動空気室90が膨張すると、プレート10、バルブ40及びバルブ40によって支持されている弾性部材50が上方に移動する。弾性部材50の上端が突出部36に突き当たると、突出部36は、弾性部材50が突出部36の上方に移動することを防ぎ、バルブ40が空気通路を閉じることを助けることができる。
【0045】
環状のバルブ40は、プレート貫通孔16とピストン30の間に配置される。空気注入による配管部60の弾性変形によって、バルブ40とプレート貫通孔16との間の隙間である空気通路が開かれ、昇降部70とプレートの下面14との間に空気が流入する。バルブ用空気室80及び作動空気室90は、空気通路が開いたときに連通する。
【0046】
弾性部材50は、ピストン30の周囲に配置される。作動空気室90の膨張によってバルブ40が上方に移動するとき、弾性部材50の弾性力によってバルブ40が下方に押し込まれて、空気通路が閉じられる。
【0047】
弾性部材50はバルブ抑えゴムである。弾性部材50は、バルブ抑えスプリングであってもよい。
【0048】
バルブ抑えゴム及び配管部用ゴムは、一体に成型することができる。一体に成型すれば、部品の組付けにボルト又はナット等の機械的係止手段が必要なくなり、部品数及び組立工程数を低減させることによって、製造コストを削減することができる。
【0049】
図1Bは、防振台1におけるプレート10の上面図である。配管部60は、プレートの上面12及びバルブ40に結合されている上側結合部62と、プレートの上面12及びバルブ40に結合されていない上側非結合部64と、を有する配管部用ゴムである。図1A及び図1Bから分かるように、上側結合部62は、バルブ40の外周、並びに、プレートの上面12のうちバルブ40及び空気注入口18を取り囲む部分に結合されている。配管部60は、空気注入口18からの空気注入による配管部用ゴムの弾性変形によって、上側非結合部64とプレートの上面12との間にバルブ用空気室80を形成する。バルブ用空気室80の膨張によってバルブ40が持ち上がり、空気通路が開かれる。
【0050】
図1Cは、防振台1におけるプレートの下面図である。昇降部70は、プレートの下面14及びピストン30に結合されている下側結合部72と、プレートの下面14及びピストン30に結合されていない下側非結合部74と、を有する昇降部用ゴムである。図1A及び1Cを見れば分かるように、下側結合部72は、ピストン30の外周、並びに、プレートの下面14のうちピストン30を取り囲む部分に結合される。昇降部70は、空気通路からの空気の流入による昇降部用ゴムの弾性変形によって、下側非結合部74とプレートの下面14との間に作動空気室90を形成する。作動空気室90の膨張によって、プレート10が持ち上がる。
【0051】
配管部60及び昇降部70は、ゴムの成型と接着を同時に行う加硫接着によって、プレート10に接着される。
【0052】
加硫接着の前に、レーザー表面加工又は接着フィルム等によって、プレートの上面12及び下面14、バルブ40、並びにピストン30に、ゴムが接着可能な接着可能部分100が形成される。接着可能部分100で、上側結合部62がプレートの上面12及びバルブ40に接着され、下側結合部72がプレートの下面14及びピストン30に接着される。レーザー表面加工の方法は、例えば、特許文献2に開示されている。接着フィルムは、ゴムと金具を接着するためのフィルムであり、例えば、寺岡製作所製のゴム用両面テープが挙げられる。接着可能部分100を形成するための他の方法として、例えば、プレート10上で、ゴムが接着しない部分にマスキングを施した後で、ゴムが接着する部分にスプレー接着剤を吹き付ける方法が挙げられる。
【0053】
従来の空気ばねは、別体の空気室用のゴムを含む部品を組み付けるために機械的係止手段を必要とし、また、部品同士を組み付ける工程のせいで、組立工程数が増加する。加硫接着は、全ての部品を一度に接着することができる。そのため、加硫接着を利用すれば、部品同士の結合に必要な機械的係止手段が不要となり、部品数及び組立工程数を減らすことができる。
【0054】
防振台1は、バルブ抑えゴム又は配管部用ゴムと一体成型されているゴムであるシール部材110を備える。シール部材110は、ピストン30とバルブ40の間の隙間に配置される。シール部材110は、ピストン30とバルブ40の間の隙間から空気が漏れることを防ぐことができる。図1Aを見れば分かるように、シール部材110は、成型時に、バルブ40の上面に配置されている穴から、又はバルブ40を横方向に貫通するゴム注入口42を通じてゴムを注入することによって、ピストン30とバルブ40の間の隙間に流し込まれる。
【0055】
図1D及び1Eは、空気注入の前後の防振台1における、ピストン30の凹部38付近の拡大図である。ピストン30の側面には、凹部38が設けられている。ピストン30とバルブ40の間にゴムを注入したときに、ゴムが凹部38に入り込むことによって、シール部材110の下端に凸部112が形成される。凸部112は、ピストン30の側面に面し、且つ、凹部38の形状に対応する形状を有する。凸部112は、ピストン30とバルブ40の間のシール性をより高めることができる。
【0056】
ピストン30の側面に潤滑剤120を塗布してもよい。潤滑剤120を塗布すれば、弾性部材50及びシール部材110がピストン30に対して滑らかに摺動できるので、これらの部品の摩擦による劣化を防ぐことができる。潤滑剤120は、グリス又はオイルであってもよい。
【0057】
次に、図2A~Eを参照して、本発明の一実施形態に係る防振台1の作動について説明する。
【0058】
図2Aは、空気注入前の防振台1を示す。この状態では、配管部60の上側非結合部64がプレートの上面12に接触し、昇降部70の下側非結合部74がプレートの下面14に接触している。
【0059】
図2Bは、空気注入中の防振台1を示す。空気は、積載物がプレート10上に載せられた状態で注入される。積載物は、配管部60を避けるように載せられる。空気注入口18から空気を注入すると、配管部60が弾性変形して、バルブ用空気室80を形成する。図2Cは、図2AのA-A線に沿った断面図である。図2Dは、図2BのA-A線に沿った断面図である。図2C及び2Dから分かるように、配管部60の上側非結合部64とプレートの上面12との間に空気が入り込むことによって、バルブ用空気室80が形成される。注入される空気の量を増やすと、バルブ用空気室80が膨張して、配管部60と結合しているバルブ40が持ち上がる。これにより、バルブ40とプレート貫通孔16との間の隙間である空気通路が開く。
【0060】
昇降部70の下側非結合部74とプレートの下面14との間に、空気通路を通じて空気が流入することによって、作動空気室90が形成される。注入される空気の量を増やすと、作動空気室90が膨張して、プレート10が持ち上がる。
【0061】
プレート10が所定の高さまで上昇すると、バルブ抑えゴムの上端が突出部36に突き当たる。それ以上の量の空気を注入すると、バルブ抑えゴムの弾性力(反発力)によってバルブ40が下方に押し込まれ、バルブ40が空気通路を閉じる。この状態では、空気を注入しても作動空気室90には空気が入らず、プレート10は一定の高さで支持される。
【0062】
以上のとおり、バルブ40は、作動空気室90内への空気の流入を制御する弁体として機能し、プレート貫通孔16の内面は、バルブ40を受け入れて支持する弁座として機能し、配管部60は、空気通路を開くための力をバルブ40に伝達するための部品として機能する。これらの部品が協働して、空気通路を開閉するためのバルブとしての役割を果たす。
【0063】
バルブ抑えゴムは、空気通路を閉じるための力をバルブ40に伝達して、積載物を載せた状態のプレート10の高さを所定の高さ以下に制限するストッパーとして機能する。バルブ抑えゴムによって、作動空気室90の過剰な膨張による昇降部用ゴムの破損を防ぐことができる。従来の空気ばね装置は、ゴムの破損を防ぐために、別体のストッパーを空気ばね装置に取り付けて、空気ばね装置の高さを制限することを必要とする。防振台1では、バルブ抑えゴム及び配管部用ゴムが一体成型されるため、別体のストッパー及びこれを取り付ける工程を削減することができる。
【0064】
図2Eは、プレート10が所定の高さまで上昇した後で、積載物による荷重が取り除かれた状態の防振台1の断面図である。積載物がプレート10上に載せられた状態では、積載物による荷重と、作動空気室90の空気圧とが釣り合い、プレート10が所定の高さに保たれる。荷重が取り除かれると、作動空気室90は、空気圧によって膨張し、ピストン30の側面に設けられた開口部34と連通する。作動空気室90内の空気は、開口部34と作動空気室90が連通しなくなるまで、ピストン30の中空部32を通じて防振台1の外部に排出される。
【0065】
この状態で再びプレート10上に積載物を載せると、積載物による荷重がプレート10を下方に押し下げる。プレート10が下降すると、プレート10によって支持されるバルブ40も下降する。そのため、バルブ40がバルブ抑えゴムを上方に押す力が低下し、したがって、バルブ抑えゴムがバルブ40を下方に押す弾性力も低下する。弾性力の低下により、空気通路が再び開き、バルブ用空気室80から作動空気室90に空気が流入する。
【0066】
導管20は、空気タンク(不図示)に接続されている。バルブ用空気室80から流出した量の空気が空気タンクからバルブ用空気室80内に充填されて、プレート10は再び所定の高さに上昇する。空気タンク内の空気圧が減少した場合、ポンプによって空気タンク内に空気を充填することができる。ポンプは、空気タンクに永続的に接続されてもよいし、必要なときに空気タンクに一時的に接続されてもよい。
【0067】
次に、図3A及び3Bを参照して、本発明の一実施形態に係る防振台1のプレート10上における、ピストン30、配管部60及び空気注入口18の配置例について説明する。
【0068】
図3Aでは、四角形状のプレート10の四隅に4個のピストン30が配置されている。配管部60は、プレート10の3つの辺に沿って、プレート10に結合されている。空気注入口18は、真ん中の配管部60に設けられている。配管部60の損傷を防ぐため、積載物は、配管部60を避けるように配置することが望ましい。この配置例では、プレート10の中央に積載物を配置することができる。
【0069】
図3Bでは、円形状のプレート10の外周部に、周方向に間隔を空けて8個のピストン30が配置されている。配管部60は、プレート10の中心から各ピストン30に向けて径方向に延びている。空気注入口18はプレート10の中心に設けられている。ピストン30の数を増やせば、防振台1はより重い積載物を支持することができる。この配置例では、積載物の下部に脚部を取り付けることで、配管部60を避けるように積載物を配置することができる。
【0070】
プレート10の形状は四角形又は円形に限定されず、例えば、多角形又は楕円形等の形状であってもよい。ピストン30、配管部60及び空気注入口18の配置は、図3A及び3Bで示した例に限定されない。例えば、配管部60は、プレート10の中心を避けるように、プレート10の外周に沿って配置されてもよい。
【0071】
防振台1は、床に設置してもよいし、台車等の搬送手段に取り付けてもよい。
【0072】
防振台1は、産業機械及び工作機械等の、振動を発生させる機械からの防振、並びに、光学機器、精密機器及びその脆弱な部品等の、振動から防護する必要のある機器の除振のために利用してもよい。また、防振台1は、椅子又は乗り物等のシートに利用してもよい。
【0073】
本発明の実施形態について、図面及び明細書を用いて説明してきたが、上記の実施形態は、特許請求の範囲に記載されている発明を限定するものではなく、また実施形態について説明される特徴の組み合わせの全てが課題の解決に必要であるとは限らない。また、当業者であれば、本発明の実施形態に対して様々な変形又は修正を容易に行えることに留意されたい。従って、変形又は修正も本発明の範囲に含まれることに留意されたい。
【符号の説明】
【0074】
1 防振台
10 プレート
12 プレートの上面
14 プレートの下面
16 プレート貫通孔
18 空気注入口
20 導管
30 ピストン
32 中空部
34 開口部
36 突出部
38 凹部
40 バルブ
42 ゴム注入口
50 弾性部材
60 配管部
62 上側結合部
64 上側非結合部
70 昇降部
72 下側結合部
74 下側非結合部
80 バルブ用空気室
90 作動空気室
100 接着可能部分
110 シール部材
112 凸部
120 潤滑剤
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B