IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-シール構造 図1
  • 特開-シール構造 図2
  • 特開-シール構造 図3
  • 特開-シール構造 図4
  • 特開-シール構造 図5
  • 特開-シール構造 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175605
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】シール構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/08 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
B60R13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093529
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡野 昌之
【テーマコード(参考)】
3D023
【Fターム(参考)】
3D023BA02
3D023BA03
3D023BA04
3D023BB16
3D023BB21
3D023BB30
3D023BC01
3D023BD21
3D023BE20
(57)【要約】
【課題】ケーブルを通すための隙間が設けられていてもエンジンコンパートメントから車室へ伝達される騒音を低減できるシール構造を得る。
【解決手段】車両前後方向から見て車両のエンジンコンパートメント内に生じる空隙をシールするように設けられるとともに、ケーブルを通す隙間を形成するための切欠部26を有するシール部材22と、シール部材22の内部に形成され、開口部32が切欠部26の底面26Aに設けられている消音室30と、を備えたシール構造20とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向から見て車両のエンジンコンパートメント内に生じる空隙をシールするように設けられるとともに、ケーブルを通す隙間を形成するための切欠部を有するシール部材と、
前記シール部材の内部に形成され、開口部が前記切欠部の底面に設けられている消音室と、
を備えたシール構造。
【請求項2】
前記切欠部は、「U」字状に形成された凹部である請求項1に記載のシール構造。
【請求項3】
前記消音室は、前記底面に対して垂直に形成されている請求項1又は請求項2に記載のシール構造。
【請求項4】
車両前後方向から見て車両のエンジンコンパートメント内に生じる空隙をシールするように設けられるとともに、ケーブルを通す隙間を形成するための凹部を有するシール部材と、
前記シール部材の内部に形成され、開口部が前記凹部の底面と側面とにそれぞれ設けられている複数の消音室と、
を備えたシール構造。
【請求項5】
前記複数の消音室は、それぞれ前記底面及び前記側面に対して垂直に形成されている請求項4に記載のシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室へ伝達される騒音に対するシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のピラーとフェンダーとの間に配設され、凹凸走行のタイヤ変形に伴うタイヤの空洞共鳴音や走行中のタイヤハウスに起因する低周波音といった騒音が車室内に進入することを抑制したフェンダーインシュレータは、従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-085057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両のエンジンコンパートメント(電気自動車等の場合、エンジンではなく、モーターが収容されているが、その場合も「エンジンコンパートメント」と称する:以下同様)から車室へ伝達される騒音を低減するためのシール構造(音漏れ抑制構造)には、エンジンコンパートメント内に配索する各種ケーブルを通すための隙間(音漏れの原因となる隙間)を設けなければならない場合があることから、未だ改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、ケーブルを通すための隙間が設けられていてもエンジンコンパートメントから車室へ伝達される騒音を低減できるシール構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る第1の態様のシール構造は、車両前後方向から見て車両のエンジンコンパートメント内に生じる空隙をシールするように設けられるとともに、ケーブルを通す隙間を形成するための切欠部を有するシール部材と、前記シール部材の内部に形成され、開口部が前記切欠部の底面に設けられている消音室と、を備えている。
【0007】
第1の態様の発明によれば、車両前後方向から見て車両のエンジンコンパートメント内に生じる空隙をシールするようにシール部材が設けられている。そして、そのシール部材は、ケーブルを通す隙間を形成するための切欠部を有しており、その切欠部の底面に開口部が設けられている消音室がシール部材の内部に形成されている。したがって、ケーブルを通すための隙間が切欠部によって設けられていても、その隙間を通る騒音の少なくとも一部は、開口部から消音室に進入して消音される。これにより、エンジンコンパートメントから車室へ伝達される騒音が低減される。
【0008】
また、本発明に係る第2の態様のシール構造は、第1の態様のシール構造であって、前記切欠部は、「U」字状に形成された凹部である。
【0009】
第2の態様の発明によれば、切欠部が「U」字状に形成された凹部となっている。そのため、その凹部によって設けられた隙間にケーブルを通し易い。なお、本発明における「U」字状には略「U」字状も含まれる。また、ケーブルを通すための隙間が凹部によって設けられていても、その隙間を通る騒音の少なくとも一部は、開口部から消音室に進入して消音されるため、エンジンコンパートメントから車室へ伝達される騒音が低減される。
【0010】
また、本発明に係る第3の態様のシール構造は、第1又は第2の態様のシール構造であって、前記消音室は、前記底面に対して垂直に形成されている。
【0011】
ここで、消音室が、切欠部(凹部)の底面に対して垂直に形成されていない場合、その曲がっている部分において、一部の音波(騒音)が反射してしまい、騒音(音波)を効率よく消音室へ導くことができない。
【0012】
第3の態様の発明によれば、消音室が、切欠部(凹部)の底面に対して垂直に形成されているため、消音室が、切欠部(凹部)の底面に対して垂直に形成されていない場合に比べて、その切欠部(凹部)によって設けられた隙間を通る騒音の少なくとも一部が、効率よく消音室へ導かれる。したがって、その騒音の少なくとも一部が効果的に消音される。
【0013】
また、本発明に係る第4の態様のシール構造は、車両前後方向から見て車両のエンジンコンパートメント内に生じる空隙をシールするように設けられるとともに、ケーブルを通す隙間を形成するための凹部を有するシール部材と、前記シール部材の内部に形成され、開口部が前記凹部の底面と側面とにそれぞれ設けられている複数の消音室と、を備えている。
【0014】
第4の態様の発明によれば、車両前後方向から見て車両のエンジンコンパートメント内に生じる空隙をシールするようにシール部材が設けられている。そして、そのシール部材は、ケーブルを通す隙間を形成するための凹部を有しており、その凹部の底面と側面とに、それぞれ開口部が設けられている複数の消音室がシール部材の内部に形成されている。したがって、ケーブルを通すための隙間が凹部によって設けられていても、その隙間を通る騒音の少なくとも一部は、各開口部から各消音室に進入して消音される。これにより、エンジンコンパートメントから車室へ伝達される騒音が低減される。
【0015】
また、本発明に係る第5の態様のシール構造は、第4の態様のシール構造であって、前記複数の消音室は、それぞれ前記底面及び前記側面に対して垂直に形成されている。
【0016】
ここで、各消音室が、凹部の底面及び側面に対して、それぞれ垂直に形成されていない場合、それぞれの曲がっている部分において、一部の音波(騒音)が反射してしまい、騒音(音波)を効率よく消音室へ導くことができない。
【0017】
第5の態様の発明によれば、各消音室が、凹部の底面及び側面に対して、それぞれ垂直に形成されているため、各消音室が、凹部の底面及び側面に対して、それぞれ垂直に形成されていない場合に比べて、その凹部によって設けられた隙間を通る騒音の少なくとも一部が、効率よく各消音室へ導かれる。したがって、その騒音の少なくとも一部が効果的に消音される。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、ケーブルを通すための隙間が設けられていてもエンジンコンパートメントから車室へ伝達される騒音を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係るエンジンコンパートメント内のシール構造を示す概略正面図である。
図2】第1実施形態に係るシール構造を構成するシール部材を示す概略斜視図である。
図3】第1実施形態に係るシール構造を構成するシール部材を断面で示す概略正面図である。
図4】第2実施形態に係るシール構造を構成するシール部材を示す概略斜視図である。
図5】(A)第3実施形態に係るシール構造を構成するシール部材を示す概略斜視図である。(B)第3実施形態に係るシール構造による音圧低減作用を示す説明図である。
図6】(A)第4実施形態に係るシール構造を構成するシール部材を示す概略斜視図である。(B)第5実施形態に係るシール構造を構成するシール部材を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。なお、説明の便宜上、各図において適宜示す矢印UPを車両上方向、矢印REを車両後方向、矢印RHを車両右方向とする。したがって、以下の説明で、特記することなく上下、前後、左右の方向を記載した場合は、車両における上下、前後、左右を示すものとする。また、左右方向は、車幅方向と同義である。
【0021】
<第1実施形態>
まず、第1実施形態について説明する。図1に示されるように、第1実施形態に係るシール構造20は、車両10のエンジンコンパートメント12内において、例えばフェンダーライナー14の上部で、かつカウルサイドメンバー16の車幅方向外側に設けられたシール部材22で構成されている。
【0022】
シール部材22は、ウレタンフォーム等の弾性体によって所定の厚みに形成されており、前後方向から見た正面視で、フェンダーライナー14の上部で、かつカウルサイドメンバー16の車幅方向外側に生じる空隙をシールする(埋める)ように、その空隙にほぼ合致する形状に形成されている。
【0023】
なお、図2に示されるように、シール部材22の前壁及び後壁には、それぞれ車幅方向に延在する複数の溝部24が形成されている。換言すれば、シール部材22の前壁及び後壁には、車幅方向から見た側面視で、それぞれ複数の凹凸形状が形成されている。これにより、溝部24(凹凸形状)が形成されていない場合に比べて、シール部材22の軽量化が図れる構成になっている。
【0024】
また、図1に示されるように、シール部材22の上側にも、シール部材22と同等の機能を有するシール部材21が設けられている。上側のシール部材21の下壁と下側のシール部材22の上壁とは、一例として、嵌合可能に構成されていることが好ましく、上側のシール部材21は、例えば図示しないクリップによって、フェンダーエクステンションパネル(図示省略)に固定されるようになっている。
【0025】
シール構造20を構成するシール部材22には、ワイヤーハーネスやウォッシャーホース等のケーブル18を通す隙間Gを形成するための切欠部としての凹部26が形成されている。具体的に説明すると、シール部材22の車幅方向内側における上下方向略中央部には、正面視略「U」字状の凹部26が所定の深さで形成されている。この凹部26によって設けられた正面視略「U」字状の隙間Gを通って、エンジンコンパートメント12内のケーブル18が配索されるようになっている。なお、隙間Gを通るケーブル18は、図示の1本に限定されない。
【0026】
また、図2図3に示されるように、シール部材22の内部には、消音機能を有するレゾネータ型の消音室30が一体に形成されている。すなわち、この消音室30は、図示しない金型によってシール部材22をモールド成形することで一体に形成されるようになっており、その開口部32は、凹部26の底面26Aにおける上下方向略中央部で、かつ厚み方向略中央部に設けられている。換言すれば、消音室30の開口部32は、車幅方向内側へ向けて開口されている。
【0027】
消音室30は、中空の略円柱形状に形成されており、円形状の開口部32と同一の内径で所定の長さまで連続する連通管としての連通部34と、連通部34から徐々に内径が大きくされつつ所定の長さまで連続する拡径部36と、拡径部36の最大内径で所定の長さまで連続する本体部38と、を有している。つまり、消音室30は、凹部26の底面26Aに対して垂直に形成されており、その軸方向が車幅方向に沿った方向とされている。
【0028】
なお、消音室30(開口部32を含む)の寸法は、車両10の種類等に応じて適宜設定される。ここで、共鳴周波数をf、音速をc、連通部34の長さをL、連通部34の断面積をS、拡径部36を含む本体部38の容積をVとすると、ヘルムホルツレゾネータの理論式は、次のようになる。
【0029】
f=c/(2×π)×(S/(L×V))1/2
【0030】
したがって、シール部材22をモールド成形する金型において、連通部34の長さL、連通部34の断面積S、拡径部36を含む本体部38の容積Vを適宜設定することにより、車両10の種類等に応じた(車両10の種類毎に異なる)適切な特定周波数の騒音が低減可能となる。
【0031】
以上のような構成とされた第1実施形態に係るシール構造20において、次にその作用について説明する。
【0032】
図1に示されるように、第1実施形態に係るシール構造20を構成するシール部材22は、正面視で、車両10のエンジンコンパートメント12内に生じる空隙をシールするように設けられている。すなわち、このシール部材22は、正面視で、フェンダーライナー14の上部で、かつカウルサイドメンバー16の車幅方向外側に設けられている。
【0033】
そして、エンジンコンパートメント12内のケーブル18が、シール部材22の凹部26によって設けられた隙間Gを通って配索されている。つまり、ケーブル18を配索するために、正面視で、シール部材22とカウルサイドメンバー16の車幅方向外側端部との間には、略「U」字状の隙間Gが形成されている。そのため、その隙間Gにケーブル18を通し易い。
【0034】
ここで、そのシール部材22の内部には、消音室30が形成されており、その開口部32が凹部26の底面26Aに設けられている。したがって、ケーブル18を通すための隙間Gが凹部26によって設けられていても、その隙間Gを通る騒音(エンジン音又はモーター音、フロントタイヤからのロードノイズ及びパターンノイズ等)の少なくとも一部は、その開口部32から消音室30に進入して消音される。これにより、エンジンコンパートメント12から車室へ伝達される騒音、より具体的にはフェンダーライナー14の上部からカウル(図示省略)内に進入して車室へ伝達される騒音を低減させることができる。
【0035】
また、この消音室30は、その開口部32を車幅方向内側へ向けて、凹部26の底面26Aに対して垂直に形成されており、その軸方向が車幅方向に沿った方向とされている。ここで、凹部26の底面26Aに対して垂直に形成されていない消音室(図示省略)の場合、その曲がっている部分、即ち本体部へ通じる連通部(連通管)において、一部の音波(騒音)が反射してしまい、騒音(音波)を効率よく本体部へ導くことができない。
【0036】
これに対し、第1実施形態に係る消音室30は、凹部26の底面26Aに対して垂直に形成されているため、凹部26の底面26Aに対して垂直に形成されていない消音室(図示省略)の場合に比べて、その凹部26によって設けられた隙間Gを通る騒音の少なくとも一部(特定周波数の騒音であり、特に前後方向に沿って進行する騒音)を効率よく本体部38へ導くことができる。したがって、その騒音の少なくとも一部を効果的に消音することができる。
【0037】
また、この消音室30は、シール部材22のモールド成形時に一体に形成されるものであるため、例えば消音室が別体で成形され、その後、その消音室がシール部材に埋設されて製造される構成(図示省略)に比べて、シール部材22を簡単に製造することができる。また、この消音室30を形成することにより、シール部材22は、その一部が除去されることになるため、消音室が形成されていないシール部材(図示省略)に比べて、より軽量化が図れるとともに、その製造コスト(材料費)も低減させることができる。
【0038】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同等の部位には同じ符号を付して詳細な説明(共通する作用も含む)は適宜省略する。
【0039】
図4に示されるように、第2実施形態におけるシール部材22には、消音室30が複数(2個追加され、合計3個)形成されている。具体的に説明すると、このシール部材22には、消音室30の他に、開口部32Uが凹部26の上側の側面(上面)26Uに設けられたレゾネータ型の消音室30Uと、開口部32Dが凹部26の下側の側面(下面)26Dに設けられたレゾネータ型の消音室30Dと、が更に追加されている。
【0040】
消音室30Uは、中空の略円柱形状に形成されており、円形状の開口部32Uと同一の内径で所定の長さまで連続する連通部34Uと、連通部34Uから徐々に内径が大きくされつつ所定の長さまで連続する拡径部36Uと、拡径部36Uのほぼ最大内径で所定の長さまで連続する本体部38Uと、を有している。つまり、消音室30Uは、開口部32Uを下方側へ向けて、凹部26の側面26Uに対して垂直に形成されており、その軸方向が上下方向に沿った方向とされている。
【0041】
同様に、消音室30Dも、中空の略円柱形状に形成されており、円形状の開口部32Dと同一の内径で所定の長さまで連続する連通部34Dと、連通部34Dから徐々に内径が大きくされつつ所定の長さまで連続する拡径部36Dと、拡径部36Dのほぼ最大内径で所定の長さまで連続する本体部38Dと、を有している。つまり、消音室30Dは、開口部32Dを上方側へ向けて、凹部26の側面26Dに対して垂直に形成されており、その軸方向が上下方向に沿った方向とされている。
【0042】
このように、凹部26の底面26Aに開口部32が設けられた消音室30と、凹部26の側面26U、26Dにそれぞれ開口部32U、32Dが設けられた消音室30U、30Dと、がシール部材22の内部に形成されていると、ケーブル18を通すための隙間Gが凹部26によって設けられていても、その隙間Gを通る騒音の少なくとも一部は、各開口部32、32U、32Dから各消音室30、30U、30Dに進入して消音される。
【0043】
したがって、エンジンコンパートメント12から車室へ伝達される騒音を効果的に低減させることができる。特に、消音室30、30U、30D毎に異なる特定周波数の騒音を低減できるように、各消音室30、30U、30Dの寸法が適宜設定されていると、エンジンコンパートメント12から車室へ伝達される騒音(複数の異なる特定周波数の騒音)をより効果的に低減させることができる。
【0044】
また、各消音室30、30U、30Dは、凹部26の底面26A及び側面26U、26Dに対して、それぞれ垂直に形成されている。ここで、各消音室が、凹部26の底面26A及び側面26U、26Dに対して、それぞれ垂直に形成されていない場合、それぞれの曲がっている部分、即ち各本体部へ通じる各連通部(連通管)において、一部の音波(騒音)が反射してしまい、騒音(音波)を効率よく本体部へ導くことができない。
【0045】
これに対し、第2実施形態に係る各消音室30、30U、30Dは、凹部26の底面26A及び側面26U、26Dに対して、それぞれ垂直に形成されているため、各消音室が、凹部26の底面26A及び側面26U、26Dに対して、それぞれ垂直に形成されていない場合に比べて、その凹部26によって設けられた隙間Gを通る騒音の少なくとも一部(複数の異なる特定周波数の騒音であり、特に前後方向に沿って進行する騒音)を効率よく各本体部38、38U、38Dへ導くことができる。したがって、その騒音の少なくとも一部を効果的に消音することができる。
【0046】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同等の部位には同じ符号を付して詳細な説明(共通する作用も含む)は適宜省略する。
【0047】
図5(A)に示されるように、第3実施形態におけるシール部材22には、平断面視で略「U」字状となる別経路としての消音室40が所定の長さで形成されている。この消音室40は、全体の内径が一定に形成された音波干渉型とされており、音の入口及び出口の何れか一方となる開口部42と、音の入口及び出口の何れか他方となる開口部44と、が凹部26の底面26Aの上下方向略中央部に、その厚み方向に所定の間隔を空けて設けられている。つまり、この消音室40も、各開口部42、44を車幅方向内側へ向けて、凹部26の底面26Aに対して垂直に形成されている。
【0048】
このような消音室40にすると、例えば図5(B)に示されるように、隙間Gを前方側から後方側へ通る騒音の一部は、開口部42から消音室40に進入して開口部44から出る。そのため、隙間Gを前方側から後方側へ通ってきた騒音の少なくとも一部は、その開口部44から出た騒音の一部との合流部での干渉作用(位相差のある音波同士の打ち消し合い)によって消音される(特定周波数の音圧が低減される)。
【0049】
すなわち、ケーブル18を通すための隙間Gが凹部26によって設けられていても、その隙間Gを通る騒音の少なくとも一部は、その騒音(音波)に位相差を生じさせる消音室40によって消音される。したがって、エンジンコンパートメント12から車室へ伝達される騒音(音波干渉型の場合、特定周波数の騒音)を効果的に低減させることができる。
【0050】
また、この消音室40も、凹部26の底面26Aに対して垂直に形成されているため、消音室40が凹部26の底面26Aに対して垂直に形成されていない場合に比べて、その凹部26によって設けられた隙間Gを通る騒音の少なくとも一部(特定周波数の騒音であり、特に前後方向に沿って進行する騒音)を効果的に消音することができる。
【0051】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同等の部位には同じ符号を付して詳細な説明(共通する作用も含む)は適宜省略する。
【0052】
図6(A)に示されるように、第4実施形態におけるシール部材22には、中空円柱形状の消音室46が所定の長さで形成されている。この消音室46は、全体の内径が一定に形成されたサイドブランチ型とされており、開口部48が、凹部26の底面26Aにおける上下方向略中央部で、かつ厚み方向略中央部に設けられている。つまり、この消音室46も、その開口部48を車幅方向内側へ向けて、凹部26の底面26Aに対して垂直に形成されており、その軸方向が車幅方向に沿った方向とされている。
【0053】
したがって、ケーブル18を通すための隙間Gが凹部26によって設けられていても、その隙間Gを通る騒音の少なくとも一部は、その開口部48から消音室46に進入して消音される。これにより、エンジンコンパートメント12から車室へ伝達される騒音(サイドブランチ型の場合、特定周波数の騒音)を低減させることができる。
【0054】
また、この消音室46も、凹部26の底面26Aに対して垂直に形成されているため、消音室46が凹部26の底面26Aに対して垂直に形成されていない場合に比べて、その凹部26によって設けられた隙間Gを通る騒音の少なくとも一部(特定周波数の騒音であり、特に前後方向に沿って進行する騒音)を効果的に消音することができる。
【0055】
<第5実施形態>
最後に、第5実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同等の部位には同じ符号を付して詳細な説明(共通する作用も含む)は適宜省略する。
【0056】
図6(B)に示されるように、第5実施形態におけるシール部材22には、上下方向が長手方向となる中空四角柱形状の消音室50が形成されている。この消音室50は、凹部26の底面26Aに上下方向が長手方向とされて設けられた矩形状の開口部52と同一の大きさのまま所定の深さ(長さ)まで形成された拡張型とされている。つまり、この消音室50も、その開口部52を車幅方向内側へ向けて、凹部26の底面26Aに対して垂直に形成されている。
【0057】
したがって、ケーブル18を通すための隙間Gが凹部26によって設けられていても、その隙間Gを通る騒音の少なくとも一部は、その開口部52から消音室50に進入して消音される。これにより、エンジンコンパートメント12から車室へ伝達される騒音(拡張型の場合、広範囲に亘る広域周波数の騒音)を低減させることができる。
【0058】
また、この消音室50も、凹部26の底面26Aに対して垂直に形成されているため、消音室50が凹部26の底面26Aに対して垂直に形成されていない場合に比べて、その凹部26によって設けられた隙間Gを通る騒音の少なくとも一部(広域周波数の騒音であり、特に前後方向に沿って進行する騒音)を効果的に消音することができる。
【0059】
以上、本実施形態に係るシール構造20について、図面を基に説明したが、本実施形態に係るシール構造20は、図示のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。例えば、シール部材21、22の形状は、図示の形状に限定されるものではなく、正面視で、エンジンコンパートメント12内に形成される各部位の空隙の形状に合わせて適切な形状に形成される。
【0060】
また、図1図3に示されるように、ケーブルを通すための隙間を形成するのは、シール部材22の車幅方向外側の下端部に形成された正面視逆「L」字状の切欠部28でもよく、その切欠部28の底面28Aに開口部(図示省略)が設けられた消音室(図示省略)が、その底面28Aに対して垂直になるように、シール部材22の内部に更に形成されていてもよい。また、切欠部(凹部26、切欠部28)の形状も、図示の形状に限定されるものではなく、例えば略半円形状(図示省略)等とされていてもよい。
【0061】
また、各消音室30、40、46内に進入した水(雨水等)を排出できるように、シール部材22に、各消音室30、40、46の内周壁の下部側と連通する水抜き用の連通孔(図示省略)を鉛直方向に沿って形成するようにしてもよい。また、各消音室30、40、46内に進入した水を排出できるように、各消音室30、40、46を、凹部26の底面26Aに対して極僅かに下向き傾斜させて形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10 車両
12 エンジンコンパートメント
18 ケーブル
20 シール構造
22 シール部材
26 凹部(切欠部)
26A 底面
30 消音室
32 開口部
G 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6