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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175611
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】戸先側縦枠、戸枠及び開口構造
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/52 20060101AFI20241211BHJP
   E06B 1/34 20060101ALI20241211BHJP
   E05B 15/02 20060101ALI20241211BHJP
   E06B 1/16 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
E06B1/52
E06B1/34 A
E05B15/02 A
E06B1/16 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093539
(22)【出願日】2023-06-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 健太
【テーマコード(参考)】
2E011
【Fターム(参考)】
2E011EA04
2E011EB02
2E011ED01
(57)【要約】
【課題】錠受け穴の有無を容易に変更可能な金属製の戸先側縦枠、その戸先側縦枠を備えた戸枠、及びその戸枠が開口部に設けられた開口構造を提供する。
【解決手段】戸枠1は、室内の壁Wの開口部Oに取り付けられている。戸枠1の戸先側縦枠2は、板状の金属部材によって形成され、内側面に上下方向に延びる凹溝25が形成された上下方向に延びる筒状の縦枠本体21と、凹溝25内に溝底26を覆い隠すように設けられた遮蔽部材22とを備えている。凹溝25の溝底26及び遮蔽部材22には、錠受け部材50が嵌まる錠受け穴h1~h3が形成され、凹溝25の溝底26には、錠受け穴h1,h2が複数箇所に形成されている。遮蔽部材22は、縦枠本体21に着脱自在に固定されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の壁の開口部に取り付けられる戸枠の戸先側縦枠であって、
板状の金属部材によって形成され、内側面に上下方向に延びる凹溝が形成された上下方向に延びる筒状の縦枠本体と、
上記凹溝内に溝底を覆い隠すように設けられた遮蔽部材とを備え、
上記凹溝の溝底及び上記遮蔽部材には、錠受け部材が嵌まる錠受け穴が形成され、
上記遮蔽部材は、上記縦枠本体に着脱自在に固定されている
ことを特徴とする戸先側縦枠。
【請求項2】
室内の壁の開口部に取り付けられる戸枠の戸先側縦枠であって、
板状の金属部材によって形成され、内側面に上下方向に延びる凹溝が形成された上下方向に延びる筒状の縦枠本体と、
上記凹溝内に溝底を覆い隠すように設けられた遮蔽部材とを備え、
上記遮蔽部材には、錠受け部材が嵌まる錠受け穴が形成され、
上記遮蔽部材は、上記縦枠本体に着脱自在に固定されている
ことを特徴とする戸先側縦枠。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の戸先側縦枠において、
上記戸枠は、引戸又は吊戸が設けられるものであり、
上記凹溝は、戸じゃくり溝である
ことを特徴とする戸先側縦枠。
【請求項4】
請求項3に記載の戸先側縦枠において、
上記縦枠本体は、
上記凹溝が上記壁より手前側に形成されるものであり、
上記凹溝の手前側に、板状の金属部材を折り返した折返し部を有し、
上記折返し部は、前面が上記縦枠本体の前面の一部を構成し、後面が上記凹溝の手前側の溝側面を構成するように形成されている
ことを特徴とする戸先側縦枠。
【請求項5】
室内の壁の開口部に取り付けられる戸枠であって、
請求項1又は2に記載の戸先側縦枠を備える
ことを特徴とする戸枠。
【請求項6】
請求項5に記載の戸枠において、
上記戸枠を構成する枠材のうち、上記戸先側縦枠以外の枠材は、木製材料で構成されている
ことを特徴とする戸枠。
【請求項7】
請求項6に記載の戸枠において、
上記戸先側縦枠と上記戸先側縦枠以外の枠材とは、同一材料からなる化粧層でそれぞれ覆われている
ことを特徴とする戸枠。
【請求項8】
室内の壁の開口部に設けられた戸枠によって出入口が形成された開口構造であって、
上記戸枠は、請求項5に記載の戸枠である
ことを特徴とする開口構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の壁の開口部に取り付けられる金属製の戸先側縦枠、その戸先側縦枠を備えた戸枠、及びその戸枠が開口部に設けられた開口構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車椅子が通過したり、多くの人が利用したりする建物の開口部では、耐久性を向上させるため、金属製の戸枠を採用することがある。一方、木材を基調とした内装が好まれる傾向にあり、金属製の戸枠を採用する場合でも、木製の扉を用いたり、戸枠に木目調の仕上げを施したりすることがある(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1には、金属製のドア枠本体の表面を木目調の化粧シートで被覆した金属製ドア枠が開示されている。このようなドア枠によれば、木材を基調とした内装に合わせることができるため、金属製のドア枠の利点を生かしながら木製扉や壁面に対して違和感のない内装が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-266556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、錠付きの戸を用いる場合、戸先側縦枠に錠受け部材が嵌まる錠受け穴が形成された戸枠を施工する必要があるが、鍵受け穴のない誤った戸先側縦枠を施工してしまうことがある。また、逆に、錠の必要ない戸に対して、錠受け穴が形成された誤った戸先側縦枠を施工してしまうこともある。錠受け穴の有無が誤っていた場合に、木製の戸枠であれば、施工された状態でも、誤って形成された錠受け穴を埋める、又は新たに錠受け穴をあけることができるが、金属製の戸枠では、施工された状態で錠受け穴の有無の変更を行うことができず、戸枠を取り外した上で、戸先側縦枠をそれぞれ正しいもの(錠付きの戸に対しては錠受け穴が形成された戸先側縦枠、錠の必要ない戸に対しては錠受け穴のない戸先側縦枠)に変更する必要があった。
【0006】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたもので、その目的は、錠受け穴の有無を容易に変更可能な金属製の戸先側縦枠、その戸先側縦枠を備えた戸枠、及びその戸枠が開口部に設けられた開口構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明では、戸先側縦枠において、金属製の縦枠本体の内側面に上下方向に延びる凹溝を形成し、凹溝内に溝底を覆い隠す遮蔽部材を着脱自在に設け、遮蔽部材を取り替えるだけで錠受け穴の有無を容易に変更できるように構成した。
【0008】
具体的には、第1の発明は、室内の壁の開口部に取り付けられる戸枠の戸先側縦枠であって、板状の金属部材によって形成され、内側面に上下方向に延びる凹溝が形成された上下方向に延びる筒状の縦枠本体と、上記凹溝内に溝底を覆い隠すように設けられた遮蔽部材とを備え、上記凹溝の溝底及び上記遮蔽部材には、錠受け部材が嵌まる錠受け穴が形成され、上記遮蔽部材は、上記縦枠本体に着脱自在に固定されていることを特徴とするものである。
【0009】
また、第2の発明は、室内の壁の開口部に取り付けられる戸枠の戸先側縦枠であって、板状の金属部材によって形成され、内側面に上下方向に延びる凹溝が形成された上下方向に延びる筒状の縦枠本体と、上記凹溝内に溝底を覆い隠すように設けられた遮蔽部材とを備え、上記遮蔽部材には、錠受け部材が嵌まる錠受け穴が形成され、上記遮蔽部材は、上記縦枠本体に着脱自在に固定されていることを特徴とするものである。
【0010】
なお、「縦枠本体の内側面」は、縦枠本体の側面であって戸枠の内側面となる部分を言う。
【0011】
第1の発明では、戸先側縦枠において、金属製の縦枠本体の内側面に上下方向に延びる凹溝を形成し、凹溝内に溝底を覆い隠す遮蔽部材を設けると共に、遮蔽部材だけでなく凹溝の溝底にも錠受け部材が嵌まる錠受け穴を形成し、遮蔽部材を縦枠本体に着脱自在に固定することとしている。このような構成の戸先側縦枠によれば、錠付きの戸に対して錠受け穴のない誤った戸先側縦枠を、又は、錠の必要ない戸に対して錠受け穴が形成された誤った戸先側縦枠を施工してしまっても、戸枠全体を取り外すことなく、戸先側縦枠の遮蔽部材のみを取り外し、適切な遮蔽部材(錠付きの戸に対しては錠受け穴が形成された遮蔽部材、錠の必要ない戸に対しては錠受け穴のない遮蔽部材)に取り替えるだけで、錠受け穴の有無を容易に変更することができる。
【0012】
第2の発明では、戸先側縦枠において、金属製の縦枠本体の内側面に上下方向に延びる凹溝を形成し、凹溝内に溝底を覆い隠す遮蔽部材を設けると共に、遮蔽部材にのみ錠受け部材が嵌まる錠受け穴を形成し、該遮蔽部材を縦枠本体に着脱自在に固定することとしている。このような構成の戸先側縦枠によれば、錠付きの戸に対して錠受け穴のない誤った戸先側縦枠を、又は、錠の必要ない戸に対して錠受け穴が形成された戸先側縦枠を誤った施工してしまっても、戸枠全体を取り外すことなく、戸先側縦枠の遮蔽部材のみを取り外し、適切な遮蔽部材(錠付きの戸に対しては錠受け穴が形成された遮蔽部材、錠の必要ない戸に対しては錠受け穴のない遮蔽部材)に取り替えるだけで、錠受け穴の有無を容易に変更することができる。
【0013】
以上により、第1及び第2の発明によれば、錠受け穴の有無を容易に変更可能な金属製の戸先側縦枠を提供することができる。
【0014】
また、第2の発明によれば、鍵受け穴の位置(高さ)が戸の錠の位置と対応しない誤った戸先側縦枠を施工してしまっても、戸枠全体を取り外すことなく、戸先側縦枠の遮蔽部材のみを取り外して錠受け穴が適切な位置に形成された遮蔽部材に取り替えるだけで、錠受け穴の位置を容易に変更することができる。同様に、第1の発明においても、凹溝の溝底に、錠受け部材の設置可能箇所(複数)に対応する錠受け穴(1つの大きい穴又は複数の穴)を形成することにより、鍵受け穴の位置(高さ)が戸の錠の位置と対応しない誤った戸先側縦枠を施工してしまっても、戸枠全体を取り外すことなく、戸先側縦枠の遮蔽部材のみを取り外して錠受け穴が適切な位置に形成された遮蔽部材に取り替えるだけで、錠受け穴の位置を容易に変更することができる。
【0015】
第3の発明は、第1の発明において、上記戸枠は、引戸又は吊戸が設けられるものであり、上記凹溝は、戸じゃくり溝であることを特徴とするものである。
【0016】
第3の発明では、引戸又は吊戸用の戸先側縦枠に従来設けられる戸じゃくり溝の溝底を上記凹溝として利用している。このような構成によれば、従来の戸じゃくり溝を有する戸先側縦枠の構成を大きく変更することなく、錠受け穴の有無を容易に変更可能な金属製の戸先側縦枠を提供することができる。
【0017】
第4の発明は、第3の発明において、上記縦枠本体は、上記凹溝が上記壁より手前側に形成されるものであり、上記凹溝の手前側に、板状の金属部材を折り返した折返し部を有し、上記折返し部は、前面が上記縦枠本体の前面の一部を構成し、後面が上記凹溝の手前側の溝側面を構成するように形成されていることを特徴とするものである。
【0018】
第4の発明では、戸先側縦枠は、戸じゃくり溝(凹溝)が壁より手前側に形成されたものであり、所謂アウトセット型の戸枠に用いられるものである。アウトセット型の戸枠では、縦枠本体の戸じゃくり溝の手前側に側壁が設けられないことが多いところ、第4の発明では、戸じゃくり溝(凹溝)内に遮蔽部材を設けるため、戸じゃくり溝(凹溝)の手前側に板状の金属部材を折り返した折返し部を設け、戸じゃくり溝(凹溝)の手前側に側壁が形成されるようにしている。従って、第4の発明によれば、戸先側縦枠に、例えば、車椅子等が当たった際に、遮蔽部材が損傷したり、脱離したりするのを防止することができる。
【0019】
第5の発明は、室内の壁の開口部に取り付けられる戸枠であって、第1又は第2の発明に係る戸先側縦枠を備えることを特徴とするものである。
【0020】
第5の発明によれば、錠受け穴の有無を容易に変更可能な戸枠を提供することができる。
【0021】
第6の発明は、第5の発明において、上記戸枠を構成する枠材のうち、上記戸先側縦枠以外の枠材は、木製材料で構成されていることを特徴とするものである。
【0022】
第6の発明では、戸枠を構成する枠材のうち、戸先側縦枠以外の枠材を、施工現場において加工が容易な木製材料で構成することとしている。そのため、第6の発明によれば、戸枠を構成する枠材の全てを金属製とする場合に比べて、戸枠の施工コストを低減することができる。
【0023】
第7の発明は、第6の発明において、上記戸先側縦枠と上記戸先側縦枠以外の枠材とは、同一材料からなる化粧層でそれぞれ覆われていることを特徴とするものである。
【0024】
第7の発明では、戸先側縦枠のみを金属製とし、残りの枠材を木製とした場合であっても、戸枠を構成する枠材の全てを同一材料からなる化粧層で覆うことにより、戸枠を統一感ある意匠に仕上げることができる。
【0025】
第8の発明は、室内の壁の開口部に設けられた戸枠によって出入口が形成された開口構造であって、上記戸枠は、第5の発明に係る戸枠であることを特徴とするものである。
【0026】
第8の発明によれば、錠受け穴の有無を容易に変更可能な戸枠が設けられた開口構造を提供することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明した如く、本発明によると、戸先側縦枠において、金属製の縦枠本体の内側面に上下方向に延びる凹溝を形成し、凹溝内に溝底を覆い隠す遮蔽部材を着脱自在に設け、遮蔽部材を取り替えるだけで錠受け穴の有無を容易に変更できるように構成したため、錠受け穴の有無を容易に変更可能な金属製の戸先側縦枠、該戸先側縦枠を備えた戸枠、及び該戸枠が設けられた開口構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明の実施形態1に係る戸先側縦枠を備えた戸枠を開口部に設けた開口構造の正面図である。
図2図2は、図1の開口構造の横断面図である。
図3図3は、図2の戸先側縦枠付近の拡大図である。
図4図4は、本発明の実施形態1に係る戸先側縦枠の内側面図である。
図5図5は、図4のV-V線断面図である。
図6図6は、図5のVI-VI線断面図である。
図7図7は、図4のVII部分の拡大図である。
図8図8は、図7のVIII-VIII線断面図である。
図9図9は、実施形態1の変形例1に係る図8相当図である。
図10図10は、実施形態1の変形例2に係る図8相当図である。
図11図11は、実施形態1の変形例3に係る図8相当図である。
図12図12は、実施形態1の変形例4に係る図8相当図である。
図13図13は、本発明の実施形態2に係る戸先側縦枠を備えた戸枠を開口部に設けた開口構造の正面図である。
図14図14は、図13の開口構造の横断面図である。
図15図15は、図14の戸先側縦枠付近の拡大図である。
図16図16は、本発明の実施形態3に係る戸先側縦枠を備えた戸枠を開口部に設けた開口構造の正面図である。
図17図17は、図16の開口構造の横断面図である。
図18図18は、図17の戸先側縦枠付近の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0030】
《発明の実施形態1》
-開口構造の概略構成-
図1及び図2は、本発明の実施形態1に係る戸先側縦枠2を備えた戸枠1、及び室内の壁Wの開口部Oに設けられた戸枠1によって出入口が形成された開口構造70の一例を示す図である。図1は正面図であり、図2は水平方向の断面図である。以下では、説明の便宜上、図1の左側、右側、上側、下側を、それぞれ「左」、「右」、「上」、「下」として説明する。また、図1の紙面直交方向において手前側を「前」、奥側を「後」として説明する。
【0031】
図1及び図2に示すように、壁Wは、大壁構造の壁であり、開口部Oには、壁W内に設けられる左右の柱A,A(躯体)と、左右の柱A,A間に横架されたまぐさB(躯体)と、左右の柱A,A及びまぐさBの前後に設けられる一対の壁下地材C,Cとが設けられている。開口構造70は、壁Wの開口部Oに戸枠1を設けることにより、出入口が形成されるものである。戸枠1には、上記出入口を開閉する戸Dが設けられている。戸Dは、本実施形態1では、戸枠1の内側に左右方向にスライド移動可能に取り付けられて戸枠1によって形成された出入口を開閉する吊戸によって構成されている。
【0032】
-戸枠の詳細構成-
戸枠1は、一対の縦枠2,3と、該一対の縦枠2,3の上端を連結する上枠4とを門型に枠組みした三方枠であり、上枠4の左右方向の中間部に上下方向に延びる方立5が組付けられている。戸枠1は、戸枠1を構成する枠材2~5が枠組みされた状態で、壁Wの開口部Oに施工されている。
【0033】
戸枠1を構成する枠材(一対の縦枠2,3、上枠4及び方立5)のうち、戸先側縦枠2は、金属材料によって構成され、それ以外の枠材(戸尻側縦枠3、上枠4及び方立5)は、木製材料で構成されている。金属製の戸先側縦枠2と、それ以外の枠材3~5とは、同一材料からなる化粧層6でそれぞれ覆われている。本実施形態1では、化粧層6は、化粧シートで構成されているが、化粧層6は、塗料や樹脂からなる層であってもよく、突板であってもよい。
【0034】
一対の縦枠2,3は、戸Dの戸先側に設けられる戸先側縦枠2と、戸Dの戸尻側に設けられる戸尻側縦枠3とで構成されている。一対の縦枠2,3は、開口部Oの高さ(床面FとまぐさBの下面との距離)と略等しい上下長さに形成されている。戸先側縦枠2は、見込方向の長さが壁Wの厚さよりも長い。一方、戸尻側縦枠3は、開口部O内に設けられて壁Wと一体に形成された控え壁w1の前側に施工されるため、見込方向の長さが壁Wの厚さよりも短い。戸先側縦枠2は、四周側面が板状の金属部材によって構成された筒状の縦枠本体21(中空部材)を備えるように構成され、戸尻側縦枠3は、木製の帯板状部材によって構成されている。
【0035】
上枠4は、図2に示す平面視においてL字形状の木製の板状部材によって構成されている。上枠4は、一対の縦枠2,3の上端部を連結するように(縦勝ちとなるように)一対の縦枠2,3に組付けられている。なお、図示していないが、上枠4の下端部には、吊戸からなる戸Dを吊り下げるレールが埋め込まれている。
【0036】
方立5は、一対の縦枠2,3と同様に、開口部Oの高さ(床面FとまぐさBの下面との距離)と略等しい上下長さに形成され、上枠4の左右方向の中間部に固定されて控え壁w1の先端部に設けられる。方立5は、見込方向の長さが控え壁w1の厚さよりも長い。方立5は、戸尻側縦枠3と同様に、木製の帯板状部材によって構成されている。
【0037】
なお、本発明の特徴は、戸枠1を構成する枠材2~5のうち、戸先側縦枠2にあるので、以下では、戸先側縦枠2について詳述する。
【0038】
〔戸先側縦枠〕
戸先側縦枠2は、錠受け穴h3の有無、位置又は個数を誤った戸先側縦枠2を備えた戸枠1を施工してしまった場合に、戸枠1を取り外すことなく、錠受け穴h3の有無、位置又は個数を容易に変更可能なように構成されている。具体的には、図3及び図4に示すように、戸先側縦枠2は、縦枠本体21と遮蔽部材22との2部材で構成されることにより、戸枠1を取り外すことなく、錠受け穴h3の有無、位置又は個数を容易に変更可能なように構成されている。
【0039】
縦枠本体21は、四周側面が板状の金属部材によって構成された筒状部材であり、本実施形態1では、本体部23と固定部24の2つの部分で構成されている。
【0040】
本体部23は、板状の金属部材を折り曲げることにより形成され、連続して形成される前外側面部23a(壁Wの前側の壁下地材Cの木口から前側へ延びる部分)と、前面部23bと、内側面部23cと、後面部23dと、後外側面部23e(壁Wの後側の壁下地材Cの木口から後側へ延びる部分)とを有している。本体部23の内側面部23cには、縦枠本体21を柱Aに固定するためのビス91を挿通するビス挿通穴v1が形成されている。本実施形態1では、図4に示すように、ビス挿通穴v1は、本体部23の内側面部23cの見込方向の中央部に4つ、上下方向に等間隔で並ぶように形成されている。また、ビス挿通穴v1には、ビス挿通穴v1を隠すビス隠しキャップc1が差し込まれている。
【0041】
固定部24は、板状の金属部材によって形成されている。固定部24は、見込方向の長さが、本体部23の前外側面部23aと後外側面部23eとの間隔よりも長い。固定部24は、本体部23の前外側面部23a及び後外側面部23eの内側に、本体部23の前外側面部23aと後外側面部23eとの間を内側から閉塞するように設けられる。固定部24は、本体部23の内側面部23cに形成されたビス挿通穴v1から挿通されたビス91によって、壁W内に設けられる柱Aに固定される。このように本体部23の前外側面部23a及び後外側面部23eの内側に設けられた固定部24を柱Aに固定することにより、縦枠本体21が、柱Aに固定される。
【0042】
縦枠本体21の前面は、本体部23の前面部23bによって構成され、縦枠本体21の内側面は、本体部23の内側面部23cによって構成され、縦枠本体21の後面は、本体部23の後面部23dによって構成され、縦枠本体21の外側面は、本体部23の前外側面部23a及び後外側面部23eと固定部24とによって構成されている。
【0043】
縦枠本体21の内側面(本体部23の内側面部23c)には、上下方向に延びる凹溝25が形成されている。凹溝25は、本体部23の内側面部23cを外側へ凹ませることによって形成され、縦枠本体21の上端から下端に亘るように形成されている。本実施形態1では、凹溝25は、溝深さが7~17mm程度、幅が35~50mm程度で、矩形状の横断面を有するように形成されている。
【0044】
本実施形態1では、凹溝25は、吊戸からなる戸Dの戸先が嵌まる戸じゃくり溝を構成している。詳細については後述するが、凹溝25の溝底26には、錠受け部材50が嵌まる錠受け穴h1,h2が2箇所に形成されている。錠受け穴h1,h2は、本実施形態1では、上下方向に長い矩形状の穴であり、後述する錠受け部材50のトロヨケ51の本体部53が嵌まる大きさに形成されている。凹溝25には、溝底26を覆い隠すように、遮蔽部材22が設けられている。
【0045】
遮蔽部材22は、板状の金属部材をコ字状に折り曲げることにより形成され、連続して形成される前面部22aと、内側面部22bと、後面部22cとを有している。遮蔽部材22は、凹溝25内に嵌まると共に溝底26を覆い隠すことができるように、凹溝25の幅よりも僅かに短い幅を有するように形成されている。また、遮蔽部材22は、戸じゃくり溝としての凹溝25が遮蔽部材22によって埋まらないように、見付方向の寸法が、凹溝25の溝深さよりも短くなるように形成されている。
【0046】
なお、詳細については後述するが、遮蔽部材22は、戸先側縦枠2を開口部Oから取り外すことなく、縦枠本体21の凹溝25内に着脱できるように、上下方向の寸法が、縦枠本体21の上下方向の長さよりも短くなるように構成されている。具体的には、遮蔽部材22の上下方向の長さは、縦枠本体21に固定された状態において、下端は縦枠本体21の下端に位置する一方、上端は縦枠本体21に連結される上枠4の下端(吊戸のレールが上枠4の下端よりも下方に位置する場合、レールの下端)よりも下方に位置する長さに形成されている。遮蔽部材22の上下方向の長さをこのように構成することにより、遮蔽部材22は、戸先側縦枠2を開口部Oから取り外すことなく、縦枠本体21の凹溝25内に着脱できるように構成される。
【0047】
遮蔽部材22の内側面部22bには、遮蔽部材22を縦枠本体21に固定するためのビス92を挿通するビス挿通穴v2が形成されている。本実施形態1では、図4に示すように、ビス挿通穴v2は、遮蔽部材22の内側面部22bの見込方向の中央部に4つ、ビス挿通穴v1と同じ高さ位置に(上下方向に等間隔で並ぶように)形成されている。
【0048】
また、遮蔽部材22の内側面部22bには、錠受け部材50が嵌まる錠受け穴h3が形成されている。錠受け穴h3は、凹溝25の溝底26に形成された2つの錠受け穴h1,h2のいずれか(図4では下側の錠受け穴h2)に対応する高さ位置に形成されている。錠受け穴h3は、後述する錠受け部材50のストライク52がほぼ隙間なく嵌まる大きさ及び形状に形成されている。
【0049】
なお、本実施形態1では、既に開口部Oに施工された戸枠1を取り外すことなく、遮蔽部材22のみを取り替えるだけで錠受け穴h3の有無、位置又は個数を容易に変更できるように、上記遮蔽部材22の他、錠受け穴h3のない遮蔽部材22と、錠受け穴h3が凹溝25の溝底26に形成された上側の錠受け穴h1に対応する高さ位置に形成された遮蔽部材22と、錠受け穴h3が凹溝25の溝底26に形成された2つの上側の錠受け穴h1,h2の両方に対応する高さ位置に形成された遮蔽部材22とが用意されている。
【0050】
(遮蔽部材の固定構造)
遮蔽部材22は、縦枠本体21に着脱自在に固定されている。具体的には、図5及び図6に示すように、遮蔽部材22には、縦断面がコ字形状の固定部材27が溶接によって固定されている。固定部材27は、遮蔽部材22の内側面部22bに形成された4つのビス挿通穴v2に対応するように4つ設けられ、それぞれ上端部及び下端部が遮蔽部材22に溶接によって固定されている。また、固定部材27及び凹溝25の溝底26には、ビス挿通穴v2に対応する位置に、ビス92がねじ込まれるビス穴v3が形成されている。遮蔽部材22は、凹溝25内の設置位置においてビス挿通穴v2から挿通したビス92によって、固定部材27を凹溝25の溝底26に固定することにより、縦枠本体21に着脱自在に固定されている。なお、図5及び図6中、符号28は、ビス92締結用の裏板であり、符号c2は、ビス挿通穴v2に差し込まれてビス挿通穴v2を隠すビス隠しキャップである。
【0051】
(錠受け部材及び錠受け部材の取付構造)
図7及び図8に示すように、錠受け部材50は、錠を受ける箱状のトロヨケ51と、トロヨケ51の内側に設けられる板状のストライク52とで構成されている。トロヨケ51は、板状の金属部材を折り曲げて箱状に形成した内側面が開口する本体部53と、錠穴k1を残して本体部53の内側面を遮蔽する蓋部54とを有している。本体部53と蓋部54とは、ビス93によって固定されている。トロヨケ51の上端部及び下端部には、ビス94が挿通されるビス挿通穴v4が形成されている。ビス挿通穴v4は、トロヨケ51の本体部53の上下に設けられる2つのフランジ部53aと蓋部54の上端部及び下端部とにそれぞれ形成されている。また、ストライク52には、ビス挿通穴v4に対応する位置にビス94が締め付けられるビス穴v5が形成されている。なお、ビス穴v5は、遮蔽部材22に溶接された2つの固定部材29にも形成されている。
【0052】
(錠受け部材の取付構造)
本実施形態1では、錠受け部材50は、遮蔽部材22の錠受け穴h3にストライク52を嵌めた状態で、ビス穴v4に挿通したビス94を締め付けることにより、遮蔽部材22に固定される。具体的には、遮蔽部材22の錠受け穴h3にストライク52が嵌まった状態で、ビス穴v4に挿通したビス94を締め付けると、トロヨケ51及びストライク52の上端部及び下端部が遮蔽部材22に溶接された2つの固定部材29に固定され、錠受け部材50が遮蔽部材22に固定される。
【0053】
なお、図8に示すように、錠受け部材50が固定された遮蔽部材22を、縦枠本体21の凹溝25内の所定の設置位置に配置して遮蔽部材22を縦枠本体21に固定すると、錠受け部材50のトロヨケ51の本体部53が、縦枠本体21の凹溝25の溝底26に形成された下側の錠受け穴h2に嵌まる。
【0054】
-戸枠の施工方法-
戸枠1は、本実施形態1では、戸枠1を構成する枠材(戸先側縦枠2、戸尻側縦枠3、上枠4及び方立5)を枠組みした状態で、壁Wの開口部Oに施工する。なお、戸先側縦枠2の遮蔽部材22は、開口部Oに施工する前に縦枠本体21に固定しておいてもよく、開口部Oへ施工後に縦枠本体21に固定してもよい。
【0055】
-錠受け穴の有無、位置又は個数の変更作業-
次に、錠受け穴h3の有無、位置又は個数を誤った戸先側縦枠2を含む戸枠1を施工してしまった場合に、錠受け穴h3の有無、位置又は個数を変更する作業を説明する。
【0056】
(錠受け穴の有無を変更する作業)
例えば、錠受け部材50を設ける必要がないにも拘わらず、図4に示すように、錠受け部材50が設けられた戸先側縦枠2を施工してしまった場合、まず、4本のビス92を取り外すことにより、誤って施工された錠受け穴h3が形成された遮蔽部材22を錠受け部材50ごと取り外す。これにより、錠受け部材50のトロヨケ51の本体部53は、縦枠本体21の凹溝25の溝底26に形成された上側の錠受け穴h1又は下側の錠受け穴h2から取り出される。
【0057】
次に、錠受け穴h3が形成されていない遮蔽部材22を準備し、該遮蔽部材22を、既に開口部Oに取り付けられている縦枠本体21の凹溝25内の所定位置に配置して、4つのビス92によって遮蔽部材22を縦枠本体21に固定する。これにより、縦枠本体21の錠受け穴h1,h2は、遮蔽部材22によって覆い隠され、戸先側縦枠2は、錠受け穴h3のない戸先側縦枠2となる。
【0058】
逆に、錠受け部材50を設ける必要があるにも拘わらず、錠受け部材50が設けられていない戸先側縦枠2を施工してしまった場合、まず、4本のビス92を取り外すことにより、誤って施工された錠受け穴h3のない遮蔽部材22を取り外す。
【0059】
次に、錠受け穴h3が適切な位置に形成された遮蔽部材22を準備し、該遮蔽部材22に錠受け部材50を取り付ける。該遮蔽部材22を、既に開口部Oに取り付けられている縦枠本体21の凹溝25内の所定位置に配置して、4つのビス92によって遮蔽部材22を縦枠本体21に固定する。なお、このとき、錠受け部材50のトロヨケ51の本体部53は、縦枠本体21の凹溝25の溝底26に形成された上側の錠受け穴h1又は下側の錠受け穴h2に嵌まる。以上により、戸先側縦枠2は、錠受け穴h3のある戸先側縦枠2となり、錠受け部材50が所望の位置に設置される。
【0060】
(錠受け穴の位置変更作業)
例えば、錠受け部材50が、上下2箇所の設置位置のうち、下側の設置位置(図4に示す設置位置)に設けられるべきところ、上側の設置位置に設けられた戸先側縦枠2を施工してしまった場合、まず、4本のビス92を取り外すことにより、遮蔽部材22を錠受け部材50ごと取り外す。具体的には、誤って施工された錠受け穴h3が誤った位置(遮蔽部材22を凹溝25内に設けたときに凹溝25の溝底26の上側の錠受け穴h1に対応する位置)に形成された遮蔽部材22を取り外す。これにより、錠受け部材50のトロヨケ51の本体部53は、縦枠本体21の凹溝25の溝底26に形成された上側の錠受け穴h1から取り出される。
【0061】
錠受け穴h3が誤った位置に形成された遮蔽部材22を取り外した後、2本のビス94を取り外すことにより、該遮蔽部材22から錠受け部材50を取り外す。
【0062】
次に、錠受け穴h3が適切な位置(ここでは、遮蔽部材22を凹溝25内に設けたときに凹溝25の溝底26の下側の錠受け穴h2に対応する位置)に形成された遮蔽部材22を準備し、該遮蔽部材22に錠受け部材50を取り付ける。該遮蔽部材22を、既に開口部Oに取り付けられている縦枠本体21の凹溝25内の所定位置に配置して、4つのビス92によって遮蔽部材22を縦枠本体21に固定する。これにより、錠受け部材50が所望の位置(上下の設置位置のうち図4に示す下側の設置位置)に設置される。なお、このとき、錠受け部材50のトロヨケ51の本体部53は、縦枠本体21の凹溝25の溝底26に形成された下側の錠受け穴h2に嵌まる。
【0063】
(錠受け穴の個数変更作業)
本実施形態1では、錠受け部材50が上下2箇所の設置位置の両方に設けられるべきところ、上下のいずれかにしか設けられていない戸先側縦枠2を施工してしまった場合にも、戸枠1を取り外すことなく、遮蔽部材22のみを取り替えるだけで錠受け穴h3の個数を容易に変更(1箇所から2箇所に変更)し、錠受け部材50の設置箇所数を容易に変更することができる。
【0064】
具体的には、まず、上述の位置変更と同様に、4本のビス92を取り外すことにより、遮蔽部材22を錠受け部材50ごと取り外し、2本のビス94を取り外すことにより、遮蔽部材22から錠受け部材50を取り外す。
【0065】
次に、取り外した錠受け部材50の他に、もう1つ錠受け部材50を用意すると共に、錠受け穴h3が適切な個数(ここでは、遮蔽部材22を凹溝25内に設けたときに凹溝25の溝底26の2つの錠受け穴h1,h2に対応するように上下に1つずつ)形成された遮蔽部材22とを準備し、該遮蔽部材22に2つの錠受け部材50(取り外した錠受け部材50と、別途用意した錠受け部材50)を取り付ける。該遮蔽部材22を、既に開口部Oに取り付けられている縦枠本体21の凹溝25内の所定位置に配置して、4つのビス92によって遮蔽部材22を縦枠本体21に固定する。これにより、錠受け部材50が所望の位置(上下の設置位置の両方)に設置される。なお、このとき、上側の錠受け部材50のトロヨケ51の本体部53は、縦枠本体21の凹溝25の溝底26に形成された上側の錠受け穴h1に嵌まり、下側の錠受け部材50のトロヨケ51の本体部53は、縦枠本体21の凹溝25の溝底26に形成された下側の錠受け穴h2に嵌まる。
【0066】
以上のように、本実施形態1では、縦枠本体21の凹溝25の溝底26に、錠受け部材50の上下2箇所の設置位置に対応する2箇所に錠受け穴h1,h2を形成し、また、錠受け穴h3のない遮蔽部材22と、錠受け穴h1に対応する高さ位置に錠受け穴h3が形成された遮蔽部材22と、錠受け穴h2に対応する高さ位置に錠受け穴h3が形成された遮蔽部材22と、錠受け穴h3が凹溝25の溝底26に形成された2つの上側の錠受け穴h1,h2の両方に対応する高さ位置に形成された遮蔽部材22とを用意している。そのため、錠付きの戸Dに対して錠受け穴h3のない誤った戸先側縦枠2を、又は、錠の必要ない戸Dに対して錠受け穴h3が形成された誤った戸先側縦枠2を施工してしまった場合にも、戸枠1全体を取り外すことなく、戸先側縦枠2の遮蔽部材22のみを取り外し、適切な遮蔽部材22(錠付きの戸Dに対しては錠受け穴h3が形成された遮蔽部材22、錠の必要ない戸Dに対しては錠受け穴h3のない遮蔽部材22)に取り替えるだけで、錠受け穴h3の有無を容易に変更することができる。また、鍵受け穴h3の位置(高さ)が戸の錠の位置と対応しない誤った戸先側縦枠2を施工してしまっても、戸枠1を取り外すことなく、遮蔽部材22のみを取り外して錠受け穴h3が適切な位置に形成された遮蔽部材22に取り替えるだけで、錠受け穴h3の位置を容易に変更することができる。さらに、錠受け部材50が上下2箇所の設置位置の両方に設けられるべきところ、上下のいずれかにしか設けられていない戸先側縦枠2を施工してしまった場合にも、戸枠1を取り外すことなく、遮蔽部材22のみを取り替えるだけで錠受け穴h3の個数を容易に変更(1箇所から2箇所に変更)し、錠受け部材50の設置箇所数を容易に変更することができる。
【0067】
-実施形態1の効果-
本実施形態1では、戸先側縦枠2において、金属製の縦枠本体21の内側面(本体部23の内側面部23c)に上下方向に延びる凹溝25を形成し、凹溝25内に溝底26を覆い隠す遮蔽部材22を設けると共に、遮蔽部材22だけでなく凹溝25の溝底26にも錠受け部材50が嵌まる錠受け穴h1~h3を形成し、遮蔽部材22を縦枠本体21に着脱自在に固定することとしている。このような構成の戸先側縦枠2によれば、錠付きの戸Dに対して錠受け穴h3のない誤った戸先側縦枠2を、又は、錠の必要ない戸Dに対して錠受け穴h3が形成された誤った戸先側縦枠2を施工してしまっても、戸枠1全体を取り外すことなく、戸先側縦枠2の遮蔽部材22のみを取り外し、適切な遮蔽部材22(錠付きの戸Dに対しては錠受け穴h3が形成された遮蔽部材22、錠の必要ない戸Dに対しては錠受け穴h3のない遮蔽部材22)に取り替えるだけで、錠受け穴h3の有無を容易に変更することができる。
【0068】
また、本実施形態1によれば、凹溝25の溝底26に形成された錠受け部材50が嵌まる錠受け穴h1,h2が、錠受け部材50の設置可能箇所(本実施形態1では2つ)に対応するように形成されているため、鍵受け穴h3の位置(高さ)が戸の錠の位置と対応しない誤った戸先側縦枠2を施工してしまっても、戸枠1全体を取り外すことなく、戸先側縦枠2の遮蔽部材22のみを取り外して錠受け穴h3が適切な位置に形成された遮蔽部材22に取り替えるだけで、錠受け穴h3の位置を容易に変更することができる。なお、縦枠本体21の錠受け穴h1,h2は、遮蔽部材22の錠受け穴h3に対応する錠受け穴h1,h2を選択すればよい。
【0069】
さらに、本実施形態1によれば、凹溝25の溝底26に形成された錠受け部材50が嵌まる錠受け穴h1,h2が、錠受け部材50の設置可能箇所(本実施形態1では2つ)に対応するように形成されているため、錠受け部材50が上下2箇所の設置位置の両方に設けられるべきところ、上下のいずれかにしか設けられていない戸先側縦枠2を施工してしまった場合にも、戸枠1を取り外すことなく、遮蔽部材22のみを取り替えるだけで錠受け穴h3の個数を容易に変更(1箇所から2箇所に変更)し、錠受け部材50の設置箇所数を容易に変更することができる。
【0070】
以上により、本実施形態1によれば、錠受け穴h3の有無、位置又は個数を容易に変更可能な金属製の戸先側縦枠2を提供することができる。
【0071】
また、本実施形態1では、吊戸用の戸先側縦枠2に従来設けられる戸じゃくり溝の溝底を凹溝25として利用している。このような構成によれば、従来の戸じゃくり溝を有する戸先側縦枠2の構成を大きく変更することなく、錠受け穴h3の有無、位置又は個数を容易に変更可能な金属製の戸先側縦枠2を提供することができる。
【0072】
また、本実施形態1では、上記の戸先側縦枠2を備えることにより、錠受け穴h3の有無、位置又は個数を容易に変更可能な戸枠1を提供することができる。
【0073】
また、本実施形態1では、戸枠1を構成する枠材2~5のうち、戸先側縦枠2以外の枠材3~5を、施工現場において加工が容易な木製材料で構成することとしている。そのため、本実施形態1によれば、戸枠1を構成する枠材2~5の全てを金属製とする場合に比べて、戸枠1の施工コストを低減することができる。
【0074】
また、本実施形態1では、金属製の戸先側縦枠2と、戸枠1を構成する枠材2~5のうちの戸先側縦枠2以外の枠材3~5とを、同一材料からなる化粧層6でそれぞれ覆うこととしている。このような構成によれば、戸先側縦枠2のみを金属製とし、残りの枠材3~5を木製とした場合であっても、戸枠1を構成する枠材2~5の全てを同一材料からなる化粧層6で覆うことにより、戸枠1を統一感ある意匠に仕上げることができる。
【0075】
また、本実施形態1では、錠受け穴h3の有無、位置又は個数を容易に変更可能な戸枠1が設けられた開口構造70を提供することができる。
【0076】
-実施形態1の変形例1-
実施形態1の変形例1は、図9に示すように、実施形態1の戸枠1において、戸先側縦枠2を、錠受け部材50が嵌まる錠受け穴h3が遮蔽部材22のみに形成され、縦枠本体21の凹溝25の溝底26には、錠受け穴h1,h2が形成されない戸先側縦枠2に変更したものである。
【0077】
具体的には、変形例1では、図9に示すように、凹溝25の深さが実施形態1よりも深く形成されている。また、遮蔽部材22の前面部22a及び後面部22cの見付方向長さ(左右方向長さ)が、実施形態1よりも長くなるように形成されている。具体的には、遮蔽部材22の前面部22a及び後面部22cの見付方向長さは、遮蔽部材22に錠受け部材50を固定した際に、錠受け部材50が遮蔽部材22の内側面部22bと凹溝25の溝底26との間に収まる長さに形成されている。その他の構成は、実施形態1と同様であるため説明を省略する。
【0078】
変形例1では、戸先側縦枠2において、金属製の縦枠本体21の内側面(本体部23の内側面部23c)に上下方向に延びる凹溝25を形成し、凹溝25内に溝底26を覆い隠す遮蔽部材22を設けると共に、遮蔽部材22にのみ錠受け部材50が嵌まる錠受け穴h3を形成し、該遮蔽部材22を縦枠本体21に着脱自在に固定することとしている。このように構成された変形例1によっても、実施形態1と同様に、錠受け穴h3の有無、位置又は個数を容易に変更可能な金属製の戸先側縦枠2を提供することができる。また、変形例1によっても、実施形態1が奏するその他の効果の全てを奏することができる。
【0079】
-実施形態1の変形例2-
実施形態1の変形例2は、図10に示すように、実施形態1の戸枠1において、戸先側縦枠2の遮蔽部材22の構成を変更したものである。具体的には、変形例2では、遮蔽部材22は、横断面が略矩形状の木製の帯板状部材によって構成されている。また、変形例2では、図10に示すように、遮蔽部材22には、錠受け部材50のストライク52だけでなく、トロヨケ51の本体部53の一部と蓋部54が嵌まる錠受け穴h3が形成されている。
【0080】
その他の構成は、実施形態1と同様であるため説明を省略する。変形例2によっても、実施形態1が奏する効果の全てを奏することができる。
【0081】
-実施形態1の変形例3-
実施形態1の変形例3は、図11に示すように、実施形態1の戸枠1において、変形例1のように、戸先側縦枠2を、錠受け部材50が嵌まる錠受け穴h3が遮蔽部材22のみに形成された戸先側縦枠2に変更し、さらに、変形例2のように、遮蔽部材22を、横断面が略矩形状の木製の帯板状部材によって構成したものである。変形例1と同様に、凹溝25の深さが実施形態1よりも深く形成され、縦枠本体21の凹溝25の溝底26には錠受け穴h1,h2が形成されない。また、変形例2と同様に、遮蔽部材22には、錠受け部材50のストライク52だけでなくトロヨケ51の本体部53の一部と蓋部54が嵌まる錠受け穴h3が形成されている。
【0082】
その他の構成は、実施形態1と同様であるため説明を省略する。変形例3によっても、実施形態1が奏する効果の全てを奏することができる。
【0083】
-実施形態1の変形例4-
実施形態1の変形例4は、図12に示すように、実施形態1の戸枠1において、遮蔽部材22を、樹脂製の薄い帯板状部材によって構成したものである。変形例4では、遮蔽部材22には、錠受け部材50のストライク52、トロヨケ51の本体部53のフランジ部53a及び蓋部54が嵌まる錠受け穴h3が形成され、縦枠本体21の凹溝25の溝底26には、錠受け部材50のトロヨケ51の本体部53の凹部53bは嵌まるが、フランジ部53aは嵌まらない実施形態1の錠受け穴h1,h2よりも上下方向の長さが短い錠受け穴h1,h2が形成されている。
【0084】
変形例4では、遮蔽部材22は、実施形態1と同様に、ビス92によって縦枠本体21の凹溝25の溝底26に固定されている。錠受け部材50は、2つのビス94によって、縦枠本体21の凹溝25の溝底26に、ストライク52とトロヨケ51の本体部53のフランジ部53aと蓋部54とを固定することにより、縦枠本体21に固定されている。
【0085】
その他の構成は、実施形態1と同様であるため説明を省略する。変形例4によっても、実施形態1が奏する効果の全てを奏することができる。また、変形例4によれば、遮蔽部材22が樹脂材料で構成されているため、遮蔽部材22を戸当たりとして兼用することができる。よって、戸当たりを別途設ける必要がない。
【0086】
《発明の実施形態2》
実施形態2は、図13~15に示すように、本発明に係る戸先側縦枠2を、アウトセット型の戸枠1に用いたものである。なお、実施形態2においても、戸Dが吊戸である例について説明する。実施形態2では、吊戸からなる戸Dを吊り下げるレールRは、壁Wの手前側に設けられている。そのため、戸Dは、壁Wの手前側において左右方向にスライド移動することにより、戸枠1によって形成される出入口を開閉することとなる。
【0087】
-戸枠の詳細構成-
図13及ぶ図14に示すように、戸枠1は、一対の縦枠2,3と、該一対の縦枠2,3の上端を連結する上枠4とを門型に枠組みした三方枠である。戸枠1は、戸枠1を構成する枠材2~4が枠組みされた状態で、壁Wの開口部Oに施工されている。
【0088】
実施形態1と同様に、戸枠1を構成する枠材(一対の縦枠2,3、上枠4)のうち、戸先側縦枠2は、金属材料によって構成され、それ以外の枠材(戸尻側縦枠3及び上枠4)は、木製材料で構成されている。金属製の戸先側縦枠2と、それ以外の枠材3,4とは、同一材料からなる化粧層6でそれぞれ覆われている。本実施形態2では、化粧層6は、化粧シートで構成されているが、化粧層6は塗料からなる層であってもよい。
【0089】
一対の縦枠2,3は、戸Dの戸先側に設けられる戸先側縦枠2と、戸Dの戸尻側に設けられる戸尻側縦枠3とで構成されている。一対の縦枠2,3は、開口部Oの高さ(床面FとまぐさBの下面との距離)と略等しい上下長さに形成されている。一対の縦枠2,3は、見込方向の長さが壁Wの厚さよりも長い。また、戸先側縦枠2は、後述する戸じゃくり溝を構成する凹溝25が、壁Wよりも手前側に形成されるように、見込方向の長さが戸尻側縦枠3よりも長く、壁Wの前面から手前側へ大きく突出するように設けられている。戸先側縦枠2は、四周側面が板状の金属部材によって構成された筒状の縦枠本体21(中空部材)を備えるように構成され、戸尻側縦枠3は、木製の帯板状部材によって構成されている。
【0090】
上枠4は、図14に示す平面視において矩形状の木製の板状部材によって構成されている。上枠4は、一対の縦枠2,3の上端部を連結するように(縦勝ちとなるように)一対の縦枠2,3に組付けられている。
【0091】
なお、本発明の特徴は、戸枠1を構成する枠材2~4のうち、戸先側縦枠2にあるので、以下では、戸先側縦枠2について詳述する。
【0092】
〔戸先側縦枠〕
実施形態2においても、実施形態1と同様に、戸先側縦枠2は、錠受け穴h3の有無、位置又は個数を誤った戸先側縦枠2を備えた戸枠1を施工してしまった場合に、戸枠1を取り外すことなく、錠受け穴h3の位置及び有無を容易に変更可能なように構成されている。また、実施形態2においても、図15に示すように、戸先側縦枠2は、縦枠本体21と遮蔽部材22との2部材で構成されることにより、戸枠1を取り外すことなく、錠受け穴h3の有無、位置又は個数を容易に変更可能なように構成されている。
【0093】
縦枠本体21は、概ね実施形態1と同様に構成され、四周側面が板状の金属部材によって構成された筒状部材であり、本体部23と固定部24の2つの部分で構成されている。実施形態2では、本体部23は、前外側面部23a(壁Wの前側の壁下地材Cの木口から前側へ延びる部分)及び内側面部23cの見込方向の長さが実施形態1よりも長くなるように形成される一方、前面部23bの見付方向の長さが実施形態1よりも短くなるように形成されている。また、実施形態2では、上述したように、戸じゃくり溝を構成する凹溝25が、本体部23の内側面部23c(縦枠本体21の内側面)の壁Wよりも手前側の部分に形成されている。
【0094】
ところで、この種のアウトセット型の戸枠1では、戸じゃくり溝(凹溝25)の手前側に側壁が設けられないことが多い。しかしながら、本願のように、車椅子が衝突すること等を考慮して耐久性を向上すべく戸先側縦枠2を金属製にした戸枠1では、戸じゃくり溝(凹溝25)の手前側に側壁を設けない構成とすると、車椅子等が当たった際に、戸じゃくり溝(凹溝25)内の遮蔽部材22が損傷したり、脱離したりする虞がある。
【0095】
そこで、実施形態2では、縦枠本体21の凹溝25の手前側に、板状の金属部材をコ字状に折り返すことによって形成された、前面が縦枠本体21の前面の一部となり、後面が凹溝25の手前側の溝側面となる折返し部21Xを設けることとしている。
【0096】
また、実施形態2では、遮蔽部材22は、実施形態1の変形例2と同様に、横断面が略矩形状の木製の帯板状部材によって構成されている。実施形態2においても、遮蔽部材22は、凹溝25内に嵌まると共に溝底26を覆い隠すことができるように、凹溝25の幅よりも僅かに短い幅を有するように形成されている。また、遮蔽部材22は、戸じゃくり溝としての凹溝25が遮蔽部材22によって埋まらないように、見付方向の寸法が、凹溝25の溝深さよりも短くなるように形成されている。
【0097】
また、実施形態2においても、遮蔽部材22は、戸先側縦枠2を開口部Oから取り外すことなく、縦枠本体21の凹溝25内に着脱できるように、上下方向の寸法が、縦枠本体21の上下方向の長さよりも短くなるように構成されている。具体的には、遮蔽部材22の上下方向の長さは、縦枠本体21に固定された状態において、下端は縦枠本体21の下端に位置する一方、上端はレールRの下端(レール枠の下端)よりも下方に位置する長さに形成されている。遮蔽部材22の上下方向の長さをこのように構成することにより、遮蔽部材22は、戸先側縦枠2を開口部Oから取り外すことなく、縦枠本体21の凹溝25内に着脱できるように構成される。
【0098】
また、遮蔽部材22には、実施形態1の変形例2(図10参照)と同様に、錠受け部材50のストライク52だけでなく、トロヨケ51の本体部53の一部と蓋部54が嵌まる錠受け穴h3が形成されている。
【0099】
その他の構成、戸枠の施工方法及び錠受け穴の有無、位置又は個数の変更作業は、実施形態1と概ね同様であるため、説明を省略する。
【0100】
実施形態2によっても、実施形態1と同様の効果を奏することができる。
【0101】
また、アウトセット型の戸枠では、縦枠本体の戸じゃくり溝の手前側に側壁が設けられないことが多いところ、実施形態2では、戸じゃくり溝(凹溝25)内に遮蔽部材22を設けるため、戸じゃくり溝(凹溝25)の手前側に板状の金属部材を折り返した折返し部21Xを設け、戸じゃくり溝(凹溝25)の手前側に側壁が形成されるようにしている。従って、実施形態2によれば、戸先側縦枠2に、例えば、車椅子等が当たった際に、遮蔽部材22が損傷したり、脱離したりするのを防止することができる。
【0102】
-実施形態2の変形例-
実施形態2では、遮蔽部材22を実施形態1の変形例2と同様に、横断面が略矩形状の木製の帯板状部材によって構成する場合について説明したが、実施形態1と同様に、実施形態2の戸先側縦枠2において、遮蔽部材22をコ字状に折り曲げた板状の金属部材によって形成してもよい。
【0103】
また、実施形態2の戸先側縦枠2において、実施形態1の変形例1と同様に、凹溝25の深さを実施形態2よりも深くし、実施形態1の変形例1と同様の遮蔽部材22を用い、錠受け穴h3が遮蔽部材22のみに形成されるようにしてもよい。
【0104】
また、実施形態2の戸先側縦枠2において、実施形態1の変形例3と同様に、凹溝25の深さを実施形態2よりも深くし、実施形態1の変形例3と同様の遮蔽部材22を用い、錠受け穴h3が遮蔽部材22のみに形成されるようにしてもよい。
【0105】
また、実施形態2の戸先側縦枠2において、実施形態1の変形例4と同様に、遮蔽部材22を、樹脂製の薄い帯板状部材によって構成してもよい。
【0106】
また、実施形態2では、折返し部21Xが、板状の金属部材をコ字状に折り返すことによって形成されていたが、折返し部21Xは、板状の金属部材を折り重ねることによって形成された見込方向の幅が実施形態2よりも狭いものであってもよい。このようなものであっても実施形態2と同様の効果を奏することができる。
【0107】
《発明の実施形態3》
実施形態3は、図16~18に示すように、本発明に係る戸先側縦枠2を、引き込み型の戸枠1に用いたものである。なお、実施形態3においても、戸Dが吊戸である例について説明する。実施形態3では、戸Dの戸尻側に壁Wと一体に形成された前後に間隔を空けて配置される2枚の戸袋壁w2,w2により、その間に収納空間Sが形成され、吊戸からなる戸Dは、出入口を閉じない開状態において、収納空間Sに引き込まれて収納されるように構成されている。
【0108】
-戸枠の詳細構成-
図16及び図17に示すように、戸枠1は、一対の縦枠2,3と、該一対の縦枠2,3の上端を連結する上枠4とを門型に枠組みした三方枠である。実施形態3では、戸尻側縦枠3は、収納空間Sを閉塞しないように、2つの縦枠部材3a,3aによって構成されている。また、実施形態3では、2つの縦枠部材3a,3aの戸先側端部(左端部)に、上下方向に延びる方立5,5が着脱自在に取り付けられている。戸枠1は、戸枠1を構成する枠材2~4が枠組みされた状態で、壁Wの開口部Oに施工されている。
【0109】
実施形態1と同様に、戸枠1を構成する枠材(一対の縦枠2,3、上枠4及び方立5,5)のうち、戸先側縦枠2は、金属材料によって構成され、それ以外の枠材(戸尻側縦枠3を構成する2つの縦枠部材3a,3a、上枠4及び方立5,5)は、木製材料で構成されている。金属製の戸先側縦枠2と、それ以外の枠材3~5とは、同一材料からなる化粧層6でそれぞれ覆われている。本実施形態3では、化粧層6は、化粧シートで構成されているが、化粧層6は塗料からなる層であってもよい。
【0110】
一対の縦枠2,3は、戸Dの戸先側に設けられる戸先側縦枠2と、戸Dの戸尻側に設けられる戸尻側縦枠3とで構成されている。一対の縦枠2,3は、開口部Oの高さ(床面FとまぐさBの下面との距離)と略等しい上下長さに形成されている。戸先側縦枠2は、見込方向の長さが壁Wの厚さよりも長い。一方、戸尻側縦枠3は、2つの縦枠部材3a,3aで構成され、各縦枠部材3aは、見込方向の長さが壁Wの厚さよりも短く、収納空間Sの前後の戸袋壁w2,w2の厚さよりも長い。戸先側縦枠2は、四周側面が板状の金属部材によって構成された筒状の縦枠本体21(中空部材)を備えるように構成され、戸尻側縦枠3の各縦枠部材3aは、木製の帯板状部材によって構成されている。
【0111】
上枠4は、図17に示す平面視において矩形状の木製の板状部材によって構成されている。上枠4は、一対の縦枠2,3の上端部を連結するように(縦勝ちとなるように)一対の縦枠2,3に組付けられている。
【0112】
方立5,5は、床面Fと上枠4の下端面との距離と略等しい上下長さに形成され、戸尻側縦枠3を構成する2つの縦枠部材3a,3aの戸先側(左側)に着脱自在に取り付けられている。方立5は、見込方向の長さが縦枠部材3aの見込方向の長さよりも短い。方立5は、縦枠部材3aと同様に、木製の帯板状部材によって構成されている。方立5,5は、装着時には、閉状態にある戸Dを前後方向から視た際に、戸Dと戸尻側縦枠3との間に隙間を遮蔽する。一方、メンテナンス等で戸Dを取り外す際には、方立5,5を取り外すことにより、戸Dを容易に取り外し、また、取り付けることが可能となる。
【0113】
なお、本発明の特徴は、戸枠1を構成する枠材2~5のうち、戸先側縦枠2にあるので、以下では、戸先側縦枠2について詳述する。
【0114】
〔戸先側縦枠〕
実施形態3においても、実施形態1と同様に、戸先側縦枠2は、錠受け穴h3の有無、位置又は個数を誤った戸先側縦枠2を備えた戸枠1を施工してしまった場合に、戸枠1を取り外すことなく、錠受け穴h3の有無、位置又は個数を容易に変更可能なように構成されている。また、実施形態3においても、図18に示すように、戸先側縦枠2は、縦枠本体21と遮蔽部材22との2部材で構成されることにより、戸枠1を取り外すことなく、錠受け穴h3の有無、位置又は個数を容易に変更可能なように構成されている。
【0115】
縦枠本体21は、概ね実施形態1と同様に構成され、四周側面が板状の金属部材によって構成された筒状部材であり、本体部23と固定部24の2つの部分で構成されている。実施形態3では、戸じゃくり溝を構成する凹溝25が、本体部23の内側面部23c(縦枠本体21の内側面)の前後方向の中央部分に形成されている。そのため、実施形態1では、本体部23の内側面部23cの凹溝25以外の部分に形成されていたビス挿通穴v1が、実施形態3では、凹溝25の溝底26に形成されている。実施形態3では、ビス挿通穴v1は、同じ凹溝25の溝底26に形成されるビス穴v3と形成位置が重ならないように、ビス挿通穴v2と異なる高さ位置に形成されている。
【0116】
その他の構成、戸枠の施工方法及び錠受け穴の有無、位置又は個数の変更作業は、実施形態1と概ね同様であるため、説明を省略する。このような実施形態3によっても、実施形態1と同様の効果を奏することができる。
【0117】
-実施形態3の変形例-
実施形態3では、縦枠本体21の凹溝25の溝底26と遮蔽部材22の両方に錠受け穴h1~h3が形成され、錠受け部材50が両方の錠受け穴h1,h3/h2,h3に嵌まるように構成されていたが、実施形態3の戸先側縦枠2において、実施形態1の変形例1と同様に、凹溝25の深さを実施形態3よりも深くし、実施形態1の変形例1と同様の遮蔽部材22を用い、錠受け穴h3が遮蔽部材22のみに形成されるようにしてもよい。
【0118】
また、実施形態3では、遮蔽部材22をコ字状に折り曲げた板状の金属部材によって形成する場合について説明したが、実施形態1の変形例2と同様に、実施形態3の戸先側縦枠2において、遮蔽部材22を横断面が略矩形状の木製の帯板状部材によって構成してもよい。
【0119】
また、実施形態3の戸先側縦枠2において、実施形態1の変形例3と同様に、凹溝25の深さを実施形態3よりも深くし、実施形態1の変形例3と同様の遮蔽部材22を用い、錠受け穴h3が遮蔽部材22のみに形成されるようにしてもよい。
【0120】
また、実施形態3の戸先側縦枠2において、実施形態1の変形例4と同様に、遮蔽部材22を、樹脂製の薄い帯板状部材によって構成してもよい。
【0121】
《その他の実施形態》
上記実施形態1~3では、三方枠からなる戸枠1について説明したが、本発明に係る戸枠1は、金属製の戸先側縦枠2を備えていればよく、二方枠や三方枠であってもよい。
【0122】
また、上記実施形態1~3では、戸枠1を構成する枠材のうち、戸先側縦枠2のみが金属製で、戸先側縦枠2以外の枠材が木製材料で構成される例について説明したが、本発明に係る戸枠1は、戸先側縦枠2以外の枠材も金属製であってもよい。
【0123】
また、上記実施形態1~3では、錠受け部材50の設置可能箇所が上下2箇所の例について説明したが、錠受け部材50の設置可能箇所は、1箇所であってもよく、3箇所以上であってもよい。
【0124】
また、上記実施形態1~3では、既に開口部Oに施工された戸枠1を取り外すことなく、遮蔽部材22のみを取り替えるだけで錠受け穴h3の有無、位置及び個数を容易に変更できるように、図4に示す遮蔽部材22の他、錠受け穴h3のない遮蔽部材22と、錠受け穴h3が凹溝25の溝底26に形成された上側の錠受け穴h1に対応する高さ位置に形成された遮蔽部材22と、錠受け穴h3が凹溝25の溝底26に形成された2つの上側の錠受け穴h1,h2の両方に対応する高さ位置に形成された遮蔽部材22とを用意していた。
【0125】
しかしながら、本発明に係る戸先側縦枠2は、錠受け穴h3の有無を容易に変更可能であればよく、錠受け穴h3の位置及び個数の少なくとも一方を変更できないものであってもよい。具体的には、錠受け穴h3のない遮蔽部材22の有無を容易に変更できるようにするには、錠受け穴h3が形成された遮蔽部材22と錠受け穴h3のない遮蔽部材22とを用意しておけばよい。また、錠受け穴h3の位置を容易に変更できるようにするには、錠受け穴h3の形成位置の異なる遮蔽部材22を複数用意しておけばよく、錠受け穴h3の個数を容易に変更できるようにするには、錠受け穴h3の個数の異なる遮蔽部材22を複数用意しておけばよい。
【0126】
また、上記実施形態1~3において、錠受け穴h3の大きさの異なる遮蔽部材22を複数用意することにより、既に開口部Oに施工された戸枠1を取り外すことなく、遮蔽部材22のみを取り替えるだけで錠受け穴h3の大きさを容易に変更できるように構成してもよい。このような戸先側縦枠2によれば、取り付ける錠受け部材50の種類を誤ったまま戸枠1を施工してしまい、より大きな錠受け部材50に変更する必要が生じた場合であっても、戸枠1全体を取り外すことなく、戸先側縦枠2の遮蔽部材22のみを取り外し、より大きな錠受け穴h3が形成された適切な遮蔽部材22に取り替えるだけで、錠受け穴h3の大きさを容易に変更することができる。
【0127】
また、上記実施形態1~3では、戸Dが吊戸である例について説明したが、本発明は、戸Dが開き戸又は引戸(引き違い戸を含む)である開き戸用又は引戸用の戸枠1にも適用することができる。なお、開き戸用の戸枠1に本発明を適用する場合、遮蔽部材22を、凹溝25が埋まる寸法(遮蔽部材22の内側面が縦枠本体21の内側面と面一になる寸法)に形成すればよい。また、引き違い戸用の戸枠1に本発明を適用する場合、戸枠1を構成する一対の縦枠の両方を戸先側縦枠2で構成すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明は、室内の壁の開口部に取り付けられる金属製の戸先側縦枠、その縦枠を備えた戸枠、及びその戸枠が開口部に設けられた開口構造に有用である。
【符号の説明】
【0129】
1 戸枠
2 戸先側縦枠
3 戸尻側縦枠(戸先側縦枠以外の枠材)
4 上枠(戸先側縦枠以外の枠材)
5 方立(戸先側縦枠以外の枠材)
6 化粧層
21 縦枠本体
21X 折り返し部
22 遮蔽部材
23c 内側面部(縦枠本体の内側面)
25 凹溝
26 溝底
50 錠受け部材
70 開口構造
h1 錠受け穴
h2 錠受け穴
h3 錠受け穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【手続補正書】
【提出日】2024-07-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の壁の開口部に取り付けられる戸枠の戸先側縦枠であって、
板状の金属部材によって形成され、内側面に上下方向に延びる凹溝が形成された上下方向に延びる筒状の縦枠本体と、
上記凹溝内に溝底を覆い隠すように設けられた遮蔽部材とを備え、
上記凹溝の溝底及び上記遮蔽部材には、錠受け部材が嵌まる錠受け穴が形成され、
上記遮蔽部材は、上記縦枠本体に着脱自在に固定されている
ことを特徴とする戸先側縦枠。
【請求項2】
室内の壁の開口部に取り付けられる戸枠の戸先側縦枠であって、
板状の金属部材によって形成され、内側面に上下方向に延びる凹溝が形成された上下方向に延びる筒状の縦枠本体と、
上記凹溝内に溝底を覆い隠すように設けられた遮蔽部材とを備え、
上記遮蔽部材には、錠受け部材が嵌まる錠受け穴が形成され、
上記遮蔽部材は、上記縦枠本体に着脱自在に固定され
上記戸枠は、引戸又は吊戸が設けられるものであり、
上記凹溝は、戸じゃくり溝である
ことを特徴とする戸先側縦枠。
【請求項3】
請求項に記載の戸先側縦枠において、
上記戸枠は、引戸又は吊戸が設けられるものであり、
上記凹溝は、戸じゃくり溝である
ことを特徴とする戸先側縦枠。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の戸先側縦枠において、
上記縦枠本体は、
上記凹溝が上記壁より手前側に形成されるものであり、
上記凹溝の手前側に、板状の金属部材を折り返した折返し部を有し、
上記折返し部は、前面が上記縦枠本体の前面の一部を構成し、後面が上記凹溝の手前側の溝側面を構成するように形成されている
ことを特徴とする戸先側縦枠。
【請求項5】
室内の壁の開口部に取り付けられる戸枠であって、
請求項1又は2に記載の戸先側縦枠を備える
ことを特徴とする戸枠。
【請求項6】
請求項5に記載の戸枠において、
上記戸枠を構成する枠材のうち、上記戸先側縦枠以外の枠材は、木製材料で構成されている
ことを特徴とする戸枠。
【請求項7】
請求項6に記載の戸枠において、
上記戸先側縦枠と上記戸先側縦枠以外の枠材とは、同一材料からなる化粧層でそれぞれ覆われている
ことを特徴とする戸枠。
【請求項8】
室内の壁の開口部に設けられた戸枠によって出入口が形成された開口構造であって、
上記戸枠は、請求項5に記載の戸枠である
ことを特徴とする開口構造。