(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175613
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】車両のマニュアルバルブ
(51)【国際特許分類】
F16H 61/00 20060101AFI20241211BHJP
F16H 63/34 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
F16H61/00
F16H63/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093542
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】譚 国棟
【テーマコード(参考)】
3J067
3J552
【Fターム(参考)】
3J067AA01
3J067AA24
3J067DA52
3J067DB18
3J067DB27
3J067FA56
3J067FB61
3J067GA01
3J552NA01
3J552QA10B
3J552QA28A
3J552QA42A
3J552SA60
3J552VA63W
(57)【要約】
【課題】スプール弁子の軸端面とシリンダボア端部の内壁面との間に形成された第1油室と、前記第1油室の排出ポートに接続され、前記第1油室内を大気に開放させない一方向弁と、を備えた車両のマニュアルバルブにおいて、第1油室内に負圧が発生することがなく、負圧に起因してシフト操作性が影響されることが抑制される車両のマニュアルバルブを、提供する。
【解決手段】第1油室28は、容積可変の第2油室34と接続油路38を介して接続されていて、シフトレバーの操作に連動するスプール弁子16が第1油室28の容積を増大させる方向に移動させられても、第1油室28の容積増大分の作動油が第2油室34から供給されるので、第1油室28内に負圧が発生することがなく、負圧に起因してシフト操作性が影響されることが抑制される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブボデーに形成された第1シリンダボアと、前記第1シリンダボア内に摺動可能に嵌め入れられたスプール弁子と、前記スプール弁子の軸端面と前記第1シリンダボア端部の内壁面との間に形成された第1油室と、前記第1油室のドレンポートに接続され、前記第1油室内を開放させない一方向弁と、を備えた車両のマニュアルバルブであって、
第2シリンダボア内に摺動可能に嵌め入れられ、前記第2シリンダボア内に容積可変の第2油室を形成するプランジャと、
前記第2油室を前記第1油室と接続する接続油路と、を含む
ことを特徴とする車両のパーキングロック制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者が操作するシフトレバーに連動して切り替えられる車両のマニュアルバルブに関し、特に、シフト操作に際して発生する負圧に起因してシフト操作荷重が影響されない車両のマニュアルバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の前進走行及び後進走行を切り替える油圧制御回路において、前進走行ギヤ段を成立させる油圧アクチュエータへ前進走行圧を出力する前進走行位置、前記前進走行圧及び後進走行ギヤ段を成立させる油圧アクチュエータへの後進走行圧のいずれの圧も出力しないニュートラル位置、前記後進走行圧を出力する後進走行位置、前記前進走行圧及び前記後進走行圧のいずれも出力せず、且つ車両のパーキングロック装置を作動させるパーキング位置を少なくとも含む操作位置へ操作されるマニュアルバルブが知られている。
【0003】
上記マニュアルバルブは、バルブボデーに形成されたシリンダボアと、そのシリンダボア内に摺動可能に嵌め入れられたスプール弁子とを備えている。スプール弁子とシリンダボア内壁面との間に形成された油室はドレンポートに常時連通させられているが、マニュアルバルブのスプール弁子が前進走行位置又は後進走行位置へ移動操作されると、上記油室は後進走行圧を出力する後進走行圧出力ポートに連通させられるので、それまで前進走行ギヤ段又は前記後進走行ギヤ段を成立させる油圧アクチュエータへ供給されていた作動油が上記油室を介して上記ドレンポートから排出されるようになっている。たとえば、特許文献1に記載されたマニュアルバルブがそれである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記油室が、スプール弁子の軸端面とシリンダボア端部の内壁面との間に形成され、その油室のドレンポートには、油室内を開放させないための一方向弁が設けられる場合がある。このような構造の場合には、シフトレバーの操作に連動するスプール弁子が油室の容積を増大させる方向に移動させられると、油室内に一時的に負圧が発生してシフト操作荷重が一時的に大きくなり、シフト操作に影響する場合があった。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、スプール弁子の軸端面とシリンダボア端部の内壁面との間に形成された第1油室と、前記第1油室の排出ポートに接続され、前記第1油室内を大気に開放させない一方向弁と、を備えた車両のマニュアルバルブにおいて、第1油室内に負圧が発生することがなく、負圧に起因してシフト操作性が影響されることが抑制される車両のマニュアルバルブを、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨とするところは、(a)バルブボデーに形成された第1シリンダボアと、前記第1シリンダボア内に摺動可能に嵌め入れられたスプール弁子と、前記スプール弁子の軸端面と前記第1シリンダボア端部の内壁面との間に形成された第1油室と、前記第1油室のドレンポートに接続され、前記第1油室内を開放させない一方向弁と、を備えた車両のマニュアルバルブであって、(b)第2シリンダボア内に摺動可能に嵌め入れられ、前記第2シリンダボア内に容積可変の第2油室を形成するプランジャと、(c)前記第2油室を前記第1油室と接続する接続油路と、を含むことにある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前記第1油室は、容積可変の前記第2油室と前記接続油路を介して接続されていて、シフトレバーの操作に連動するスプール弁子が第1油室の容積を増大させる方向に移動させられても、第1油室の容積増大分が第2油室から供給されるので、第1油室内に負圧が発生することがなく、負圧に起因してシフト操作性が影響されることが抑制される。
【0009】
好適には、前記プランジャは、前記第2シリンダボア内において、前記第2油室内の圧力と大気圧との差圧によって移動させられる。
【0010】
好適には、前記一方向弁は、前記第1シリンダボアと大気との間に配置され、
前記第1シリンダボアから大気に向かって流通を許容するが、大気から前記第1シリンダボアへ向かう流通を阻止するものである。
【0011】
好適には、前記第1油室は、マニュアルバルブのスプール弁子が中立位置へ移動操作されると、後進走行圧を出力する後進走行圧出力ポートに連通させられる。
【0012】
好適には、前記第1油室の第1中心軸線と前記第2油室第2中心軸線とが相互に平行となるように、前記第1シリンダボアと前記第2シリンダボアとが並列されている。
【0013】
好適には、前記第1油室の第1中心軸線と前記第2油室の第2中心軸線とが相互に共通となるように、前記第1シリンダボアと前記第2シリンダボアとが直列配置されている。
【0014】
好適には、前記第1油室の第1中心軸線と前記第2油室第2中心軸線とが相互に直交するように、前記第1シリンダボアと前記第2シリンダボアとが直交配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施例の、マニュアルバルブの構成を説明する模式図である。
【
図2】本発明の他の実施例のマニュアルバルブの構成を説明する模式図である。
【
図3】本発明の更に他の実施例のマニュアルバルブの構成を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0016】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【0017】
図1において、マニュアルバルブ10は、図示しない車両の前進走行及び後進走行を切り替える自動変速機の油圧制御回路に用いられる。マニュアルバルブ10は、自動変速機の前進走行ギヤ段を成立させる油圧アクチュエータへ前進走行圧P
Dを出力する前進走行位置(D位置)、前進走行圧P
D及び後進走行圧P
Rのいずれも出力しない中立位置(N位置)、自動変速機の後進走行ギヤ段を成立させる油圧アクチュエータへ後進走行圧P
Rを出力する後進走行位置(R位置)、前進走行圧P
D及び後進走行圧P
Rのいずれも出力せず、且つ図示しない車両のパーキングロック装置を機械的に或いは電気的に作動させるパーキング位置(P位置)へ、順に操作される。
【0018】
マニュアルバルブ10は、前記自動変速機内のバルブボデー12に形成された第1シリンダボア14と、第1シリンダボア14内に摺動可能に嵌め入れられたスプール弁子16と、を備えている。スプール弁子16のバルブボデー12から突き出した連結部16aには、直接的に、或いはシフトアクチュエータを介して間接的(電気的に)に図示しないシフトレバーと連結されており、スプール弁子16がシフトレバーの操作に連動して、D位置、N位置、R位置、P位置へ位置させられる。
【0019】
第1シリンダボア14には、元圧であるライン圧PLが供給される入力ポート18と、第1シリンダボア14の孔底に位置し、後進走行圧PRを排出させる後進走行圧排出ポート20と、入力ポート18と後進走行圧排出ポート20との間に位置し、後進走行圧PRを出力する後進走行圧出力ポート22と、入力ポート18よりも第1シリンダボア14の開口側に位置し、前進走行圧PDを出力する前進走行圧出力ポート24と、前進走行圧出力ポート24よりも第1シリンダボア14の開口側に位置し、前進走行圧PDをドレンさせるドレンポート26とが、形成されている。
【0020】
スプール弁子16には、第1シリンダボア14の孔底側端部に形成され、後進走行圧出力ポート22を入力ポート18及び後進走行圧排出ポート20に択一的に連通させる第1ランド16bと、第1シリンダボア14の長手方向中央部に形成され、前進走行圧出力ポート24を入力ポート18及びドレンポート26に択一的に連通させる第2ランド16cと、第1シリンダボア14の開口を開閉する位置に形成された第3ランド16dとが、備えられている。
【0021】
これにより、スプール弁子16がD位置に操作されると、前進走行圧出力ポート24から前進走行圧P
Dが出力され、スプール弁子16が
図1に示すN位置に操作されると、前進走行圧P
Dがドレンポート26からドレンされると同時に、後進走行圧P
Rが後進走行圧排出ポート20から排出され、スプール弁子16がR位置に操作されると、後進走行圧P
Rが後進走行圧出力ポート22から出力され、スプール弁子16がP位置に操作されると、前進走行圧P
D及び後進走行圧P
Rのいずれもが出力されず、且つ図示しない車両のパーキングロック装置を機械的に或いは電気的に作動させられる。
【0022】
第1油室28が、スプール弁子16の第1シリンダボア14の孔底側の軸端面と第1シリンダボア14の端部の内壁面との間に形成されており、マニュアルバルブ10では、第1油室28に連通する後進走行圧排出ポート20と大気との間に接続され、第1油室28内を開放させない一方向弁30が、設けられている。一方向弁30は、前進走行圧PDが後進走行圧排出ポート20から排出されるN位置が維持された状態でも、第1油室28内を開放させない。本実施例のマニュアルバルブ10は、第1油室28およびそれに連通する後進走行ギヤ段を成立させるための油圧アクチュエータ内に空気が入ると、ギヤ段成立等の作動が異常となるため、第1油室28内を開放させてはいけない機構である。
【0023】
さらに、マニュアルバルブ10は、第1シリンダボア14の第1中心軸線CL1と平行な第2中心軸線CL2を有するようにバルブボデー12に形成された第2シリンダボア32と、第2シリンダボア32内に摺動可能に嵌め入れられ、第2シリンダボア32内に容積可変の第2油室34を形成するたプランジャ36と、第2油室34を第1油室28と接続する接続油路38と、を備えている。
【0024】
一方向弁30は、第1シリンダボア14内の第1油室28と大気との間に配置され、第1シリンダボア14内から大気に向かって流通を許容するが、大気から第1シリンダボア14内へ向かう流通を阻止するものである。第1油室28は、マニュアルバルブ10のスプール弁子16が中立位置(N位置)へ移動操作されると、後進走行圧PRを出力する後進走行圧出力ポート22に連通させられる。
【0025】
第2シリンダボア32の一端は、大気と連通させられており、プランジャ36は、第2シリンダボア32内において、第2油室34内の圧力と大気圧との差圧によって移動させられるようになっている。スプール弁子16がD位置側へ操作されたことに関連して第1油室28内に負圧が発生しようとすると、プランジャ36が移動して第2油室34内の容積を小さくして第1油室28内に作動油を補充し、負圧の発生が抑制されるようになっている。
【0026】
上述のように、本実施例のマニュアルバルブ10によれば、第1油室28は、容積可変の第2油室34と接続油路38を介して接続されていて、シフトレバーの操作に連動するスプール弁子16が第1油室28の容積を増大させる方向たとえばP位置からR又はN位置への方向に移動させられても、第1油室28の容積増大分の作動油が第2油室34から供給されるので、第1油室28内に負圧が発生することがなく、負圧に起因してシフト操作性が影響されることが抑制される。
【0027】
また、本実施例のマニュアルバルブ10によれば、シフトレバーの操作に連動するスプール弁子16が第1油室28の容積を減少させる方向に移動させられた場合、第1油室28の容積減少分の作動油が一方向弁30を通して排出されるため、第1油室28内の昇圧によるシフトレバー操作が影響を受けることが回避される。
【0028】
また、本実施例では、第1油室28を有する第1シリンダボア14の第1中心軸線CL1と第2油室34を有する第2シリンダボア32の第2中心軸線CL2とが相互に平行となるように、第1シリンダボア14と第2シリンダボア32とが並列配置される。これにより、スプール弁子が1本構造のマニュアルバルブと比較して、スプール弁子16や第1シリンダボア14および第2シリンダボア32の加工が容易となるとともに、スペースを有効に活用できるので、マニュアルバルブ10の車両の搭載性が高められる。