(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175618
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】行動要因推定方法および行動要因推定プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/0639 20230101AFI20241211BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20241211BHJP
【FI】
G06Q10/0639
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093563
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】野口 洋平
(72)【発明者】
【氏名】上村 拓也
(72)【発明者】
【氏名】烏谷 彰
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA04
5L010AA06
5L049AA04
5L049AA06
(57)【要約】
【課題】対象者の行動の行動要因を正しく推定できること。
【解決手段】行動要因推定装置100は、行動要因推定のモデルを用いて、対象者の行動の行動要因を推定する。行動要因推定装置100は、新たに推定する対象者の行動および業務状況に対応する行動および業務状況の学習データが、モデルが今までに学習を行った際に用いた学習データに含まれているか否かを、例えば、推定可否判定用設定Hを参照して判定する。行動要因推定装置100は、判定結果に基づいて、モデルを用いて対象者の行動の行動要因の推定が可能か否かを可否判定する。判定結果は、例えば、(1)モデルの再学習なしで推定可能、(2)モデルの再学習が有効な可能性あり、(3)誤判定リスク高、の3通りが得られる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
行動要因推定モデルを用いて、対象者の行動の行動要因を推定する行動要因推定方法において、
新たに推定する前記対象者の行動および業務状況に対応する行動および業務状況の学習データが、前記行動要因推定モデルが今までに学習を行った際に用いた学習データに含まれているか否かを判定し、
判定結果に基づいて、前記行動要因推定モデルを用いて前記対象者の行動の行動要因の推定が可能な否かを可否判定する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする行動要因推定方法。
【請求項2】
前記可否判定の処理は、
推定時の前記対象者の行動と前記学習データに含まれる行動について閾値を用いた高低いずれかの類似状態、および推定時の前記対象者の業務状況と前記学習データに含まれる業務状況との類似状態の組み合わせに基づき、
前記推定時の前記対象者の行動と前記学習データに含まれる行動とが類似し、推定時の前記対象者の業務状況と前記学習データに含まれる業務状況とが類似する場合、前記行動要因推定モデルを用いた前記対象者の行動の行動要因の推定が可能と第1判定し、
推定時の前記対象者の業務状況と前記学習データに含まれる業務状況とが類似しない場合、推定時の前記対象者の行動と前記学習データに含まれる行動との類似に関わりなく、前記行動要因推定モデルの再学習により前記対象者の行動の行動要因の推定の可能性があると第2判定し、
推定時の前記対象者の行動と前記学習データに含まれる行動とが類似せず、推定時の前記対象者の業務状況と前記学習データに含まれる業務状況とが類似する場合、前記行動要因推定モデルを用いた前記対象者の行動の行動要因の推定では誤判定リスクが高いと第3判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の行動要因推定方法。
【請求項3】
前記第1判定の場合、前記行動要因推定モデルに、推定時の前記対象者の行動を入力し、当該行動の行動要因を推定し、
前記第2判定の場合、再学習後の行動要因推定モデルに、推定時の前記対象者の行動を入力し、当該行動の行動要因を推定し、
前記第3判定の場合、前記行動要因推定モデルを用いた前記対象者の行動の行動要因の推定を行わない、
ことを特徴とする請求項2に記載の行動要因推定方法。
【請求項4】
前記第2判定時、当該第2判定の要因となった業務状況に対応する行動を除外する特定を行い、特定した行動以外の行動を用いた再学習を行う、
ことを特徴とする請求項2に記載の行動要因推定方法。
【請求項5】
前記除外する特定の処理は、前記行動の種別と前記業務状況の種別との組み合わせのうち前記行動要因推定モデルの学習から除外する組み合わせの設定に基づき、前記対象者の業務状況に対し除外する行動を特定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の行動要因推定方法。
【請求項6】
前記除外する特定の処理は、前記行動の種別と前記業務状況の種別との組み合わせのうち前記行動要因モデルの学習から除外する度合いの組み合わせに設定した除外する度合いの設定に基づき、再学習した前記行動要因推定モデルおよび再学習前の行動要因推定モデルそれぞれの回帰係数を重回帰モデルにより線形結合した修正版モデルを作成し、
前記修正版モデルを用いて前記対象者の行動の行動要因を推定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の行動要因推定方法。
【請求項7】
前記対象者の業務状況は、前記対象者の業務を記録した業務状況ログデータから所定の業務種別毎に集計した値をデータ抽出し、
前記対象者の行動は、前記業務ログデータから所定の行動特徴毎に集計した値をデータ抽出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の行動要因推定方法。
【請求項8】
行動要因推定モデルを用いて、対象者の行動の行動要因を推定する行動要因推定プログラムにおいて、
新たに推定する前記対象者の行動および業務状況に対応する行動および業務状況の学習データが、前記行動要因推定モデルが今までに学習を行った際に用いた学習データに含まれているか否かを判定し、
判定結果に基づいて、前記行動要因推定モデルを用いて前記対象者の行動の行動要因の推定が可能な否かを可否判定する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする行動要因推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、行動要因推定方法および行動要因推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
対象者の行動の経時的な変化の状態(行動変容)を決定する要因(行動要因)を推定する技術がある。行動要因の推定により、対象者に適切な行動変容を促し、業務改善する等の各種支援サービスに適用されている。対象者の行動は、例えば、対象者が携帯するスマートフォンのセンサや、PCのアプリケーションの操作等により行動データとして検出可能である。複数のユーザの業務遂行時の行動データと行動要因の関係を機械学習し、行動要因推定モデル作成することで、作成した行動要因推定モデルを用いて対象者の新たな行動のデータの行動要因が推定可能となる。
【0003】
行動要因を推定する先行技術としては、例えば、ユーザへのアンケートとシチュエーション情報による特徴量に基づいてユーザのステージを判定し、ユーザがターゲット行動を行う際に影響を及ぼす動機要因または阻害要因を判定しメッセージ送信するものがある。また、ユーザの生体データと行動データに基づく生体指標と、生体指標に影響を及ぼす行動指標の生成に基づきユーザが行動を変容する必要性を表す要求度を算出し、要求度に基づき、複数の中から決定した指導者からユーザに行動変容を促すものがある。また、ユーザの感情、行動、コンテクストの推定値に基づいてユーザの状態を判定し、ユーザへの介入について、介入のタイプ、タイミング、頻度を機械学習モデルで決定するものがある。また、利用者が入力する行動の阻害要因および行動要因と、行動データにより意図と行動の乖離のプロファイルを用いて行動の提案を行うものがある(例えば、下記特許文献1~4参照。)。
【0004】
また、スマートフォン等のセンサ値や画面のオン/オフ等の行動データを用いて、使用者の内面状態(ストレス状態)を推定する技術がある(例えば、下記非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-86282号公報
【特許文献2】特開2020-13208号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2019/0189025号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2018/0082261号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】落合圭一、外9名、ストレスと注意機能の相互作用を考慮したスマートフォンログからのストレス推定手法、マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2019)シンポジウム、令和元年7月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術では、例えば、業務状況が作成した行動要因推定モデルの学習時と変わった場合の行動の行動要因を誤判定してしまう可能性があった。例えば、過去に同じ業務状況で同じ行動を行った対象者についての学習が行われていない行動要因推定モデルを用いた場合、対象者の新たな行動の行動要因を推定できない可能性が高い。
【0008】
一つの側面では、本発明は、対象者の行動の行動要因を正しく推定できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一つの実施態様によれば、行動要因推定モデルを用いて、対象者の行動の行動要因の推定において、新たに推定する前記対象者の行動および業務状況に対応する行動および業務状況の学習データが、前記行動要因推定モデルが今までに学習を行った際に用いた学習データに含まれているか否かを判定し、判定結果に基づいて、前記行動要因推定モデルを用いて前記対象者の行動の行動要因の推定が可能な否かを可否判定する、行動要因推定方法および行動要因推定プログラムが提案される。
【発明の効果】
【0010】
一態様によれば、対象者の行動の行動要因を正しく推定できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施の形態にかかる行動要因推定の一実施例を示す説明図である。
【
図2】
図2は、業務ログデータに基づき対象者の行動データから行動要因を推定する説明図である。
【
図3】
図3は、行動要因を推定する処理例の説明図である。
【
図4】
図4は、行動要因の推定状態の説明図である。
【
図5】
図5は、実施の形態にかかる行動要因推定装置の機能例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、行動要因推定装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、実施の形態において推定する行動要因の例を示す図表である。
【
図8】
図8は、行動要因を推定するモデルの学習時に正解データとなる心理尺度アンケートの質問例を示す図表である。
【
図9】
図9は、業務ログデータから行動データを抽出する例の説明図である。
【
図11】
図11は、実施の形態にかかる行動要因推定の処理概要を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、行動要因の推定可否の判定処理の詳細例を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、行動要因の推定可否判定を説明する図表である。
【
図14】
図14は、対象者の業務状況の違いを特定する処理の詳細例を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、対象者の業務状況データのうち学習時の業務状況データと異なるものを特定する処理を説明する図表である。
【
図16】
図16は、モデルの再学習の詳細例を示すフローチャートである。
【
図17】
図17は、過去の行動データからモデルの再学習の処理の説明図である。
【
図18】
図18は、過去の行動データからモデルの再学習で行動要因を推定する他の処理例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照して、本発明にかかる行動要因推定方法および行動要因推定プログラムの実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
(実施の形態にかかる行動要因推定方法の一実施例)
図1は、実施の形態にかかる行動要因推定の一実施例を示す説明図である。実施の形態の行動要因推定方法は、例えば、行動要因推定モデルを用いて対象者の行動の行動要因を推定する。行動要因は、行動変容に与える影響が大きい要因であり、例えば、対象者自身の能力、環境等である。行動の行動要因を推定する対象者は、例えば所定の業務を行う従業員である。行動要因推定モデルは、複数の対象者(従業員)の行動と業務状況との関係を機械学習することで予め作成される。
【0014】
実施の形態の行動要因推定方法では、新たに行動した対象者(従業員)の過去の業務状況と同じ業務状況の学習データが、学習済みの行動要因推定モデルに含まれているか否かを判定する。そして、判定結果に基づいて、対象者の新たな行動の行動要因の推定に、行動要因推定モデルを使用するか否かを判定する。
【0015】
ここで、過去に同じ業務状況で同じ行動を行った対象者についての学習が行われていない行動要因推定モデルを用いた場合、対象者の新たな行動の行動要因を推定できない可能性が高い。この点を鑑み、実施の形態では、対象者の過去の業務状況と同じ業務状況の学習データが、学習済みの行動要因推定モデルの学習データに含まれていない場合には、学習済みの行動要因推定モデルを用いた推定を行わない。実施の形態の行動要因推定方法は、サーバ等の行動要因推定装置100がプログラム実行することで実現できるほか、クラウドへのアクセスによっても実現できる。
【0016】
実施の形態の行動要因推定装置100は、下記1.~3.の各処理を含み対象者の行動の行動要因を推定する。
【0017】
1.対象者の新たな行動時(推定時)の対象者の行動と、業務状況とを取得する。例えば、対象者の行動データAと業務状況データWを取得する。また過去データ記憶部511が記憶するモデル学習時(過去)の行動データaと業務状況データwとを取得する。
【0018】
2.判定時における業務状況と類似した状況における対象者の行動を、行動要因推定モデルMが過去に学習しているか否かにより、行動要因の推定可否を判定する。行動要因推定装置100は、予め
図1に示す行動要因の推定可否を判定する推定可否判定用設定Hの情報を保持している。推定可否判定用設定Hの縦軸は対象者の行動の類似(似ている/似ていない)、横軸は対象者の業務状況の類似(似ている/似ていない)であり、これらの行動および業務状況の組み合わせ別の推定可否の判定結果(1)~(3)が設定されている。
【0019】
判定結果(1)
対象者のモデル学習時と判定時の行動の類似が「似ている」であり、対象者のモデル(行動要因推定モデル)学習時と判定時の業務状況の類似が「似ている」である場合。この場合、行動要因推定装置100は、判定結果(1)「モデルの再学習なしで行動要因を推定可能」と判定する。
【0020】
判定結果(2)
対象者のモデル学習時と判定時の行動の類似が「似ている/似ていない」のいずれの場合においても、対象者のモデル学習時と判定時の業務状況の類似が「似ていない」場合。この場合、行動要因推定装置100は、判定結果(2)「モデルの再学習が有効な可能性あり」と判定する。
【0021】
判定結果(3)
また、対象者のモデル学習時と判定時の行動が「似ていない」であり、対象者のモデル学習時と判定時の業務状況が「似ている」場合。この場合、行動要因推定装置100は、判定結果(3)「誤判定リスク高」と判定する。
【0022】
3.推定可否判定結果に基づく行動要因の推定処理を行う。判定結果(1)「再学習なしで推定可能」の場合、行動要因推定装置100は、学習済みのモデルを用いて対象者の行動の行動要因の推定値を出力する。また、判定結果(2)「モデルの再学習が有効な可能性あり」の場合、行動要因推定装置100は、再学習したモデルを用いて対象者の行動の行動要因の推定値を出力する。また、判定結果(3)「誤判定リスクが高い」場合、行動要因推定装置100は、対象者の行動の行動要因の推定値の出力を行わない。または、過去に推定したことがある対象者については、過去(前回)推定時と同じ推定値を出力してもよい。
【0023】
上記のように、行動要因推定モデルを用いて対象者の行動要因を推定する際の対象者の業務状況と同じ業務状況の学習データが、行動要因推定モデルが今までに学習を行った際に用いた学習データに含まれているか否かの推定可否を判定する。この推定可否の判定により、推定対象者の行動要因の推定に、学習済みの行動要因推定モデルを使用するか否かを決定する。ここで、過去に同じ業務状況で同じ行動を行った人についての学習が行われていない行動要因推定モデルを用いた場合、正確な行動要因の推定が行えない可能性が高くなる。このような場合、実施の形態では、学習済みの行動要因推定モデルを用いた行動要因の推定を行わないことで、不正確な推定を行うことを抑止できるようになる。
【0024】
また、推定可否で複数の判定を行うことで、学習済みの行動要因推定モデルをそのまま用いて行動要因を推定すること、あるいは行動要因推定モデルを再学習することで行動要因を推定することもできるようになる。
【0025】
(既存技術の課題について)
図2は、業務ログデータに基づき対象者の行動データから行動要因を推定する説明図である。行動要因の推定の対象者である従業員の業務遂行時、スケジュール管理ソフト、勤怠管理システム、業務管理システム、従業員が操作するPC上のWebブラウザ等は、従業員の業務ログデータ201を取得可能である。例えば、業務ログデータ201は、PCログイン日時、社内チャットの書込み、業務ソフトの画面ID、eラーニングサイトアクセス日時、PCログオフ日時等を含む。
【0026】
そして、取得した業務ログデータ201を入力とし、行動データ抽出層202で予め設定した行動特徴毎の行動データaを抽出し、行動データaの最適な組み合わせパターンを機械学習(Machine learning)204により抽出することで、行動要因Cを推定する。学習時には、アンケート結果Qを格納するアンケート結果記憶部206から事前のアンケート結果Qによる行動要因の正例(正解データ)を参照する。
【0027】
このように、複数の従業員の過去の行動データaと行動要因Cの関係を学習しておくことで、従業員の新たな行動時を示す行動データAの行動要因Cが推定可能になる。例えば、推定する行動要因Cは、従業員の学習モチベーション、協力モチベーション、自己効力感等が含まれる。
【0028】
図3は、行動要因を推定する処理例の説明図である。行動要因の推定にあたり、従業員の行動データと行動要因の正解値を突き合わせて、行動データと行動要因の対応関係を学習しておく必要がある。
【0029】
行動データは、例えば、従業員がPC上で開発エディタを開いている時間、メール返信までの平均速度、打ち込んだ文字数等であり、所定期間での集計値を用いる。
図3の例では、横軸には行動データ1として従業員のメール返信までの平均速度、縦軸には行動データ2として、開発エディタを開いている時間である。行動要因の正解値は、例えば、5段階等の心理尺度に基づき各従業員の行動要因を取得しておく。正解値は、所定の平均基準で分けた高または低の2値とする。
【0030】
従来技術では、例えば、行動データから行動要因の高/低の2値を推定するために、行動データを説明変数、正解値を目的変数とするロジスティック回帰を行う。
図3の例では、2つの行動データ1,2を横軸と縦軸に選んで、説明変数としている。各点は、各従業員を意味する。ロジスティック回帰により、境界式Dを算出する。そして、新たに推定したい従業員を
図3上にプロットした際、境界式Dを中央としたいずれの領域に位置するかにより、行動要因を推定する。例えば、境界式Dの左上側の領域R1にプロットされた従業員の行動要因は「低い」と推定し、境界式Dの右下側の領域R2にプロットされた従業員の行動要因は「高い」と推定することができる。
【0031】
図4は、行動要因の推定状態の説明図である。従来技術では、従業員の業務状況が学習時と変わり、行動が変化した場合の行動要因を誤って推定する可能性がある。
図4(a)は行動要因を正しく推定できる場合の例、
図4(b)は行動要因の推定を誤る場合の例を示す。
【0032】
図4(a)に示す例では、従業員の業務状況が学習時と判定時(推定時)とで類似している場合であり、境界式Dを境に行動要因(例えば、業務のモチベーション)の「高/低」を、それぞれ正しく判定できる。
【0033】
これに対し、
図4(b)の例では、従業員の業務状況が学習時と判定時(推定時)に対し異なる場合を示す。この場合、対象の従業員について、学習時に対して判定時に著しく繁忙となり(出張が多く直ぐメール返信できない)常務状況であったとする。この場合、対象の従業員のプロットについて、行動データ1(メール返信までの平均速度が遅い)が左下側の領域R2から境界式Dを超えて右上側の領域R1に位置し、従業員の行動要因(モチベーション)を「低」と誤判定してしまう。
【0034】
これに対し、実施の形態の行動要因推定方法では、学習時と判定時の業務状況の違いに基づき、既学習の行動要因推定モデルMが、現在の行動データAに対し、「そのまま適用可」であるか、あるいは、「適用不可」かを判定する。行動要因推定モデルMが今までに学習を行った際に用いた学習データに含まれていない場合「適用不可」とし、作成済み(既存)の行動要因推定モデルMを用いた行動要因Cの推定を行わないことで、不正確な行動要因Cの推定の処理実施を抑止する。
【0035】
さらに、実施の形態の行動要因推定装置100では、既学習の行動要因推定モデルMを用いた推定が不可である場合、判定時の業務状況の行動データAから再学習をする等により行動要因推定モデルMを行動要因推定モデルM’に変更する。これにより、仮に業務状況が変わったとしても、行動要因Cを推定可能にする。
【0036】
(行動要因推定装置の構成例)
図5は、実施の形態にかかる行動要因推定装置の機能例を示すブロック図である。行動要因推定装置100は、データ取得部501、推定可否判定部502、乖離特定部503、再学習部504、推定値出力部505、複数のテーブルやデータベース(DB)等の記憶部510を含む。以下の説明における「モデル」Mは、上述した「行動要因推定モデル」Mを指す。
【0037】
記憶部510は、対象者の行動の行動要因Cを推定するための複数のデータを記憶する。複数の記憶部510は、例えば、過去データ記憶部511、除外テーブル記憶部512、学習済みモデル記憶部513を含む。
【0038】
過去データ記憶部511は、モデル学習時(過去)の行動データaと、業務状況データwを記憶する。除外テーブル記憶部512は、業務状況データwから好ましくない行動データaを除外する除外テーブルTの情報を記憶する。学習済みモデル記憶部513は、推定可否の判定対象となっている学習済みモデルMの情報を記憶する。
【0039】
データ取得部501は、対象者の行動の行動要因Cの推定時(上記判定時)における対象者の行動データAと、業務状況データWとを取得する。
【0040】
推定可否判定部502は、データ取得部501が取得した対象者の行動データAと業務状況データW、および、過去データ記憶部511が記憶するモデル学習時(過去の)の行動データaと業務状況データwとを読み出す。そして、推定可否判定部502は、判定時における業務状況と類似した状況における対象者の行動を、モデルが過去に学習しているか否かにより、行動要因Cの推定可否を判定する。
【0041】
推定可否判定部502は、例えば、下記(1)~(3)の判定を行う。
(1)モデルMの再学習なしで(既存の)モデルMを用いて対象者の行動の行動要因Cを推定可能。
(2)モデルMの再学習が有効な可能性がある。過去の行動データaから再学習したモデルM’を用いて対象者の行動の行動要因Cを推定できる可能性がある。
(3)誤判定リスクが高い旨を出力。この場合、例えば、対象者の行動要因Cを推定しない。
【0042】
乖離特定部503は、推定可否判定部502による判定結果が推定「否」の場合、判定時と学習時の業務状況の違い(乖離)を特定し、モデルMの再学習のための準備を行う。乖離特定部503は、例えば、データ取得部501および過去データ記憶部511の業務状況データW,wに基づき、判定時と学習時の業務状況の違いが大きい業務状況を特定する。
【0043】
再学習部504は、乖離特定部503が特定した判定時と学習時の業務状況の違いに基づき、除外テーブル記憶部512の除外テーブルTを参照する。そして、再学習部504は、行動要因推定モデルMから好ましくない行動データaを除き、再学習に使用する行動データaを決定し、モデルMの再学習を行う。
【0044】
推定値出力部505は、推定可否判定部502の判定結果(1)~(3)に対応して、それぞれ対象者の行動の行動要因Cの推定値の出力を制御する。
【0045】
(1)推定値出力部505は、判定結果、再学習なしで判定可の場合、学習済みモデル記憶部513に記憶された学習済みの(既存の)モデルMを用いて対象者の行動の行動要因Cの推定値を出力する。
【0046】
(2)推定値出力部505は、判定結果、モデルMの再学習が有効な可能性がある場合、再学習部504で再学習されたモデルM’を用いて対象者の行動の行動要因Cの推定値を出力する。例えば、判定結果(2)の要因となった業務状況に対応する行動を特定し、特定した行動を除いてモデルMの再学習を行う。
【0047】
(3)推定値出力部505は、判定結果、誤判定リスクが高い場合、対象者の行動の行動要因Cの推定値の出力を行わない。または、推定値出力部505は、過去に推定したことがある対象者については、過去と同じ推定値を出力してもよい。
【0048】
(行動要因推定装置のハードウェア構成例)
図6は、行動要因推定装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図6において、行動要因推定装置100は、汎用のサーバを用いることができる。行動要因推定装置100は、プロセッサ等のCPU(Central Processing Unit)601と、メモリ602と、ネットワークIF603と、記録媒体IF604と、記録媒体605と、を含む。また、各構成部は、バス600によってそれぞれ接続される。
【0049】
ここで、CPU601は、行動要因推定装置100の全体の制御を司る制御部である。CPU601は、複数のコアを有していてもよい。メモリ602は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびフラッシュROMなどを有する。具体的には、例えば、フラッシュROMがOSのプログラムを記憶し、ROMがアプリケーションプログラムを記憶し、RAMがCPU601のワークエリアとして使用される。メモリ602に記憶されるプログラムは、CPU601にロードされることで、コーディングされている処理をCPU601に実行させる。
【0050】
ネットワークIF603は、通信回線を通じてネットワークNWに接続され、ネットワークNWを介して外部のコンピュータに接続可能である。そして、ネットワークIF603は、ネットワークNWと装置内部とのインターフェースを司り、外部のコンピュータからのデータの入出力を制御する。ネットワークIF603には、例えば、モデムやLANアダプタなどを採用することができる。
【0051】
記録媒体IF604は、CPU601の制御に従って記録媒体605に対するデータのリード/ライトを制御する。記録媒体605は、書き込まれたデータを記憶する。記録媒体605としては、HDD等の磁気ディスクや光ディスク、SSD(Solid State Drive)、USB(Universal Serial Bus)メモリなどがある。
【0052】
なお、行動要因推定装置100は、上述した構成部のほかに、例えば、入力装置、ディスプレイなどを有してもよい。
【0053】
図5に示したデータ取得部501~推定値出力部505の各機能は、
図6に示したCPU601をプログラム実行することで実現できる。
図5に示した記憶部510の各データは、
図6に示したメモリ602、記録媒体604を用いて記憶することができる。
図5に示したデータ取得部501、推定値出力部505の機能のうち、データ取得およびデータ出力にかかる機能は、例えば、
図6に示したネットワークIF603を用いて実現できる。
【0054】
(行動要因推定装置の各機能の処理例)
次に、行動要因推定装置100の各機能の処理例を具体例を用いて説明する。
【0055】
(行動要因の例)
図7は、実施の形態において推定する行動要因の例を示す図表である。
図7に示す例では、下記技術文献1等により定義された行動変容の各理論および業務に従事する従業員からの現場ヒアリングをもとに、行動要因を下記1.~9.の9種類に分類している。
【0056】
技術文献1:早川昭二、外7名、高齢者の介護予防行動を決定する要因に関する研究、マルチメディア,分散,協調とモバイルシンポジウム2022論文集、pp.590-594
【0057】
図7の例では、行動要因Cは、認知的要因、能力要因、環境要因の3つに大分類している。認知的要因では、(1)その行動に対する「知識」、(2)その行動をする「モチベーション」、(3)その行動に関する「自己効力感」、(4)その行動に関する「結果予測」、(5)その行動のための「時間・費用」の5種類の行動要因Cがある。各種類の内容は、例えば、(1)その行動に対する「知識」は、その行動を起こすのに「必要な知識」やその「行動が与える影響」についても知識を持っているか(ただし知識のみで行動変容を起こすのは難しい)である。
【0058】
また、能力要因では、(6)その行動に対する「身体的・知的能力」、(7)その行動の「日課への組み込み容易性」の2種類の行動要因Cがある。例えば、(6)その行動に対する「身体的・知的能力」とは、その行動を行うのに、十分な「身体的能力や知的能力」を持っているかである。
【0059】
また、環境要因では、(8)その行動に関する「ロールモデルの観察」、(9)その行動に対する「社会的支援」の2種類の行動要因Cがある。例えば、(8)その行動に関する「ロールモデルの観察」とは、「その行動を行っている、または成功している身近な人(境遇の近い身近な高齢者など)が存在し、さらに「そのことを知っているか(観察学習)」である。
【0060】
(心理尺度アンケートの例)
図8は、行動要因を推定するモデルの学習時に正解データとなる心理尺度アンケートの質問例を示す図表である。
図8に示す質問例qでは、下記技術文献2に開示されたSMSGSE、および下記技術文献3に開示された多側面ワークモチベーション尺度での心理尺度アンケートを用いている。
【0061】
技術文献2:三好昭子、主観的な感覚としての人格特性的自己効力感尺度(SMSGSE)の開発、発達心理学研究、vol.14(2)、pp.172-179、2003
技術文献3:池田浩、森永雄太、我が国における多側面ワークモチベーション尺度の開発、産業・組織心理学研究、vol.30(2)、pp.171-189、2017
【0062】
図8に示す質問例qでは、例えば、行動要因Cとして、自己効力感、協力志向的モチベーション、学習志向的モチベーションの3分類を設定し、行動要因別に設定した複数の質問を従業員に問う。例えば、行動要因C「自己効力感」についての複数の質問は、「大して努力しなくても、私はたいていのことならできるような気がする。」、「どんな状況に直面しても、わたしならうまくそれに対処することができるような感じがする。」、…、「非常に困難な状況の中でも、わたしならそこから抜け出すことができると思う。」である。例えば、これら各質問に対する従業員の(達成度合い別の)5段階の回答に基づき、正解データを生成する。
【0063】
(業務ログデータから行動データを抽出する例)
図9は、業務ログデータから行動データを抽出する例の説明図である。実施の形態では、従業員の行動の意味合いを概念的に行動特徴Fとして定義することで、意味のある行動データaを従業員の業務ログデータ201から抽出し、抽出した行動データaの個人差から行動要因Cの大きさを推定する。行動特徴Fとは、業務ログデータ201に対し業務上の意味付けをするために、業務行動上の意味合いをグルーピングしたものである。
【0064】
業務ログデータ201から行動データaを抽出する技術は、例えば、下記技術文献4に開示されている。
【0065】
技術文献4:野口洋平、外3名、オフィスワーカーの生産性向上に向けた行動変容支援技術-業務ログを用いた行動要因推定に関する基礎技術、情報処理学会第85回全国大会、5E-03、2023年
【0066】
図9に示す例では、業務ログデータ201は、例えば、従業員の各行動に対応する下記1.~6.がある。1.ログイン時のeラーニングサイトへのアクセス日時。2.所定のサービスのコース購入時における購入コース名、価格、難易度等。3.所定のサービスのコース購入時における他コースURL(アドレス)の閲覧履歴。4.所定のサービスのコース受講時における(受講する)各ビデオ再生日時。5.所定のサービスのコース受講時におけるビデオ時間区間毎の閲覧回数。6.所定のサービスのコース受講時における受講終了日時。
【0067】
行動要因推定装置100は、上述した行動データ抽出層202が取得した業務ログデータ201から、例えば、下記(1)~(5)の行動特徴Fを抽出する。(1)習慣性、(2)探求性、(3)迅速性、(4)優先性、(5)完遂性。
【0068】
各行動特徴Fについて、(1)習慣性は、同質タスクを毎日同じ時間帯に処理、を意味する。(2)探求性は、タスク着手前や契約前に多数の情報収集、を意味する。(3)迅速性は、素早く行動(業務依頼にすぐ対応等)を意味する。(4)優先性は、特定タスクにリソースを集中、を意味する。(5)完遂性は、網羅的に最後まで行動、を意味する。
【0069】
行動要因推定装置100は、行動特徴F別の行動データaの最適な組み合わせパターンを機械学習により抽出することで、従業員の行動要因Cを推定する。学習時には、上述した事前のアンケート結果による行動要因Cの正例をアンケート結果記憶部206から参照する。
【0070】
そして、行動要因推定装置100は、複数の従業員の過去の行動データaと行動要因Cの関係を学習しておくことで、従業員の新たな行動時の行動データAの行動要因Cを推定する。例えば、推定する行動要因Cは、従業員の学習モチベーション、協力モチベーション、自己効力感等を含む。
【0071】
(業務状況データのデータ化の例)
図10は、業務状況のデータ化の説明図である。行動要因推定装置100(データ取得部501)は、業務ログデータ201に含まれる従業員の勤務の場所や取り組んだタスクの詳細等の詳細の情報を業務状況データwとして抽出する。行動要因推定装置100は、行動データaの集計期間と同じ集計期間(例えば、1か月)で業務状況データwを集計する。
【0072】
図10に示すように、業務ログデータ201は、スケジュール管理ソフト、勤怠管理システム、業務管理システム、従業員が操作するPC上のWebブラウザ等の各種ログがある。行動要因推定装置100は、業務ログデータ201をタグ付け等により、複数の業務状況データwを抽出する。
【0073】
業務状況データwは、例えば、1か月単位の集計期間において、行動データaを収集した期間、従業員がどのような業務状況であったかを表し、それぞれ所定の値を有する。
図10の例の業務状況データwの各内容は、繁忙だった日数の値「8(日)」、飛び込み案件数の値「12(個)」、在宅勤務の日数の値「2(日)」、…、同僚が多く休んだ日数の値「5(日)」、高額案件の数の値「3(個)」である。
【0074】
(行動要因推定の処理例)
図11は、実施の形態にかかる行動要因推定の処理概要を示すフローチャートである。
図11に示す各処理の詳細は後述する。
図11に示す処理は、行動要因推定装置100の制御部(CPU601)が実行する。
【0075】
はじめに、行動要因推定装置100(データ取得部501)は、対象者の行動データAと業務状況データWを取得する(ステップS1101)。
【0076】
次に、行動要因推定装置100(推定可否判定部502)は、行動要因の推定可否を判定する(ステップS1103)。ここで、行動要因推定装置100(推定可否判定部502)は、過去データ記憶部511から過去の行動データaと業務状況データwを取得する(ステップS1102)。そして、行動要因推定装置100(推定可否判定部502)は、対象者の行動データA,aと、業務状況データW,wと、に基づき、判定時の業務状況と類似した状況における対象者の行動を、モデルMが過去に学習しているか否かを判定する。行動要因推定装置100は、上述のように、下記(1)~(3)の3通りの判定結果を出力する。
【0077】
判定結果(1)モデルMの再学習なしで(既存の)モデルMを用いて対象者の行動の行動要因Cを推定可能。
判定結果(2)モデルMの再学習が有効な可能性がある。過去の行動データaから再学習したモデルM’を用いて対象者の行動の行動要因Cを推定できる可能性がある。
判定結果(3)誤判定リスクが高い旨を出力。この場合、例えば、対象者の行動要因Cを推定しない。
【0078】
判定結果(1)の場合(ステップS1103:Case1)、行動要因推定装置100(推定値出力部505)は、学習済みモデル記憶部513に記憶されている学習済みモデルMを選択する(ステップS1104)。そして、行動要因推定装置100は、選択した学習済みモデルMを用いて対象者の行動の行動要因Cを推定し、推定値を出力し(ステップS1105)、処理終了する。
【0079】
判定結果(2)の場合(ステップS1103:Case2)、行動要因推定装置100は、モデルMの再学習のための処理として、乖離特定部503および再学習部504による処理を行う。この判定結果(2)では、対象者の業務状況に類似する人が過去いなかったことに相当する。
【0080】
行動要因推定装置100(乖離特定部503)は、対象者の業務状況の違いを詳細に特定する(ステップS1106)。行動要因推定装置100は、例えば、対象者の業務状況データWのうち、学習時の業務状況データwと大きく異なっているものを特定する。そして、行動要因推定装置100(再学習部504)は、過去の行動データからモデルMを再学習する(ステップS1107)。
【0081】
行動要因推定装置100は、例えば、除外テーブル512を参照し、モデルMから除外すべき行動データaを特定し、特定した行動データa以外の行動データaを再学習用に選び直す。そして、行動要因推定装置100(推定値出力部505)は、選び直した行動データaにより学習済みモデル記憶部513に記憶された学習済みモデルMを再学習する。
【0082】
そして、行動要因推定装置100は、再学習したモデルM’を用いて対象者の行動の行動要因Cを推定し、推定値を出力し(ステップS1105)、処理終了する。
【0083】
判定結果(3)の場合(ステップS1103:Case3)、行動要因推定装置100は、誤判定リスクが高いためモデルMを用いた推定を行わずに処理終了する。ここで、誤判定リスクが高い旨を出力してもよい。
【0084】
(行動要因推定の処理の詳細例)
図12は、行動要因の推定可否の判定処理の詳細例を示すフローチャートである。この
図12は、
図11のステップS1103の処理の詳細例であり、推定可否判定部502が行う処理に相当する。
【0085】
行動要因推定装置100は、判定時の業務状況と似た状況における対象者の行動を、モデルMが過去に学習しているのか否かを判別する。
【0086】
図11のステップS1101,S1102の処理後、行動要因推定装置100は、対象者の業務状況(業務状況データW)と似た状況の人が、モデルM学習時の従業員の中に存在するか否かを判定する(ステップS1201)。例えば、業務状況データw全体(N個の業務状況データwからなる集合)の類似度を業務状況データWと総当たり的に計算する。行動要因推定装置100は、類似度について、例えば、データ間のコサイン類似度等を計算し、所定の閾値基準で類似度の高/低を判定する。
【0087】
ステップS1201の判定結果、対象者の業務状況と似た状況の人が、モデルM学習時の従業員の中に存在しているとする(ステップS1201:Yes)。この場合、行動要因推定装置100は、対象者の行動データaについても類似しているか否かを判定する(ステップS1202)。例えば、対象者の行動データAについて、行動データa全体(N個の行動データaの集合)との類似度を計算する。
【0088】
一方、ステップS1201の判定結果、対象者の業務状況と似た状況の人が、モデルM学習時の従業員の中に存在していない場合(ステップS1201:No)、行動要因推定装置100は、ステップS1204の処理に移行する。
【0089】
ステップS1202の判定結果、対象者の行動と似た状況の人が、モデルM学習時の対象者の中に存在している場合(ステップS1202:Yes)、行動要因推定装置100は、ステップS1203の処理に移行する。
【0090】
ステップS1203では、行動要因推定装置100は、モデルMの再学習なしで行動要因Cを推定可能と判定する(ステップS1203、判定結果(1))。この後、行動要因推定装置100は、
図11のステップS1104の処理に移行する。
【0091】
ステップS1204では、行動要因推定装置100は、(既存の)モデルMの再学習が行動要因Cの推定に有効と判定する(ステップS1204、判定結果(2))。この後、行動要因推定装置100は、
図11のステップS1106の処理に移行する。
【0092】
また、ステップS1202の判定結果、対象者の行動と似た状況の人が、モデルM学習時の対象者の中に存在していない場合(ステップS1202:No)、行動要因推定装置100は、ステップS1205の処理に移行する。
【0093】
ステップS1205では、行動要因推定装置100は、モデルMを用いた行動要因の推定では、誤判定リスクが高いと判定し(ステップS1205、判定結果(3))、処理終了する。ここで、行動要因推定装置100は、誤判定リスクが高い旨を表示等で出力してもよい。また、行動要因推定装置100は、過去に推定したことがある対象者については、過去と同じ推定値を出力してもよい。
【0094】
図13は、行動要因の推定可否判定を説明する図表である。
図13に示す行動要因の推定可否判定用設定1300は、
図1の符号Hに相当し、
図12で説明した判定結果(1)~(3)の各判定例を図表化したものである。縦軸は対象者の行動の類似(似ている/似ていない)、横軸は対象者の業務状況の類似(似ている/似ていない)であり、これらの行動および業務状況の組み合わせ別の判定結果(1)~(3)が設定されている。
【0095】
行動要因推定装置100(推定可否判定部502)は、例えば、行動要因の推定可否判定用設定1300を記憶部510に記憶したものを参照することで、対象者の行動の類似と業務状況の類似との組み合わせた判定結果(1)~(3)を判定することもできる。
【0096】
例えば、対象者のモデルM学習時と判定時の行動の類似が「似ている」であり、対象者のモデルM学習時と判定時の業務状況の類似が「似ている」場合、行動要因推定装置100は、判定結果(1)モデルMの再学習なしで行動要因Cを推定可能と判定する。
【0097】
また、対象者のモデルM学習時と判定時の行動の類似が「似ている」および「似ていない」場合において、対象者のモデルM学習時と判定時の業務状況の類似が「似ていない」場合であったとする。この場合、行動要因推定装置100は、判定結果(2)モデルMの再学習が有効な可能性があると判定する。
【0098】
また、対象者のモデルM学習時と判定時の行動が「似ていない」であり、対象者のモデルM学習時と判定時の業務状況が「似ている」場合、行動要因推定装置100は、判定結果(3)誤判定リスク高と判定する。
【0099】
図14は、対象者の業務状況の違いを特定する処理の詳細例を示すフローチャートである。
図14は、判定結果(2)に対応してモデルMを再学習する際の前処理に相当し、判定結果(2)の要因となった業務状況に対応する行動を特定する処理に相当する。
図14は、
図11のステップS1106の処理の詳細例であり、乖離特定部503が行う処理に相当する。
【0100】
図11のステップS1106(
図12のステップS1204)の処理後、行動要因推定装置100は、対象者の未注目の業務状況データWを(注目データとして)1つ取り出す(ステップS1401)。次に、行動要因推定装置100は、注目データと同様の意味の、学習時の業務状況データwと差の絶対値を計算し、平均をとる(ステップS1402)。
【0101】
次に、行動要因推定装置100は、算出した平均が所定の閾値以上か否かを判定する(ステップS1403)。算出した平均が所定の閾値以上であれば(ステップS1403:Yes)、行動要因推定装置100は、業務状況データwの要素を再学習部に渡し(ステップS1404)、ステップS1405の処理に移行する。一方、算出した平均が所定の閾値以上でなければ(ステップS1403:No)、行動要因推定装置100は、ステップS1405の処理に移行する。
【0102】
ステップS1405では、行動要因推定装置100は、未注目の業務状況データWが存在しないかを判定する(ステップS1405)。未注目の業務状況データWが存在しなければ(ステップS1405:Yes)、行動要因推定装置100は、再学習の処理(ステップS1107(ステップS1601))に移行する。未注目の業務状況データWが存在していれば(ステップS1405:No)、行動要因推定装置100は、ステップS1401の処理に戻る。
【0103】
図15は、対象者の業務状況データのうち学習時の業務状況データと異なるものを特定する処理を説明する図表である。
図15を用いて、
図14で説明した処理を説明する。
【0104】
図15では、対象者の業務状況データWのうちの要素「顧客先訪問日数」W1が学習時の全従業員の業務状況データwのうちの要素「顧客先訪問日数」w1と比べて特に大きかった場面を想定している。
図15の例では、対象者の「顧客先訪問日数」W1の値が「24」であり、対応する全従業員(例:4名)の業務状況データwのうち「顧客先訪問日数」w1の値は「1,10,10,7」であるとする。この場合、行動要因推定装置100(乖離特定部503)は、W1の値「24」と、w1の各値「1,10,10,7」との差分をそれぞれ計算する。これにより、行動要因推定装置100は、差の絶対値Δ1「24-1=23」、Δ2「24-10=14」、Δ3「24-10=14」、Δ4「24-7=17」を得る。
【0105】
そして、行動要因推定装置100は、差の絶対値の平均「17」を求める。この後、行動要因推定装置100は、差の絶対値の平均「17」が閾値TH(例:15)以上であるか否かを求める。
図15の例では、行動要因推定装置100は、差の絶対値の平均「17」が閾値TH(例:15)以上であると判定する。この場合、行動要因推定装置100は、注目した業務状況データWの要素「顧客先訪問日数W1」が、学習時の従業員の業務状況データw1とは大きく異なる、と判定する。この場合、行動要因推定装置100は、この判定結果の情報を用いて、以下に説明するモデルMの再学習を行う。
【0106】
図16は、モデルの再学習の詳細例を示すフローチャートである。この
図16は、
図11のステップS1107の処理の詳細例であり、再学習部504が行う処理に相当する。
【0107】
図11のステップS1106(
図14のステップS1405)の処理後、行動要因推定装置100は、閾値以上だった業務状況データW(要素W1)を取得する(ステップS1601)。次に、行動要因推定装置100は、除外テーブルTを参照し、再学習時に除外すべき行動データaを特定する(ステップS1602)。
【0108】
次に、行動要因推定装置100は、学習時に用いた行動データaを利用してモデルMを再学習し(ステップS1603)、推定値出力の処理(ステップS1105)に移行する。この再学習では、学習時の行動データaのうち、ステップS1602で除外した残りの行動データaを用いる。
【0109】
図17は、過去の行動データからモデルの再学習の処理の説明図である。
図17を用いて、
図16で説明した処理を説明する。行動要因推定装置100(再学習部504)は、特定した違いの大きい業務状況データW(上記要素W1)の情報を取得し(ステップS1601)、除外テーブルTを参照して再学習に使う行動データaを決定する(ステップS1602相当)。
【0110】
除外テーブルTには、各業務状況データw,Wに大きな違いがあった時に、学習済みのモデルMから除くべき行動データaが設定されている。除外テーブルTの縦軸が行動データの複数の各行動(種別)、横軸が複数の業務状況(種別)毎の業務状況データ(要素)であり、縦横の交点上に除外する設定「除く」配置したものである。
図17の例では、行動データの行動「電話対応した数」と、業務状況データの要素「出社日数」の交点に除外の旨である「除く」が設定されている。また、行動データの行動「メール返信速度」と、業務状況データの要素「顧客先訪問日数」の交点に除外の旨である「除く」が設定されている。また、行動データの行動「メール返信速度」と、業務状況データの要素「時短勤務日数」の交点に除外の旨である「除く」が設定されている。
【0111】
除外テーブルT上で交点となる除外の設定「除く」は、予め管理者等が行動データの行動に対する業務状況データの要素の組み合わせにおいて、学習済みのモデルMから除くことが好ましい行動-要素の交点に設定しておく。例えば、除外テーブルTは、業務状況データと相関が大きい行動データの影響が無視されるように業務内容を熟知している現場の職員や、心理学・行動分析の専門家の経験則に基づき予め設定することができる。
【0112】
行動要因推定装置100は、除外テーブルTの参照により、行動要因Cの推定について、モデルMであったものを、再学習したモデルM’に切り替える(ステップS1603相当)。この際、行動要因推定装置100は、学習済みモデル記憶部513を参照し、除外した行動の行動データa以外の行動データaで学習済みモデルMを再学習する。この後、行動要因推定装置100は、切り替えにより再学習したモデルM’を用いて対象者の行動の行動要因Cを推定することになる。
【0113】
(モデルの再学習による他の推定処理例)
図18は、過去の行動データからモデルの再学習で行動要因を推定する他の処理例の説明図である。この処理例では、行動データaを無視する度合い(除外する度合いに相当)を除外テーブルTに設定しておく。そして、行動要因推定装置100は、除外テーブルTの設定に基づいて再学習後のモデルM’を元のモデルMに足し合わせることで、モデルMを修正して推定値を出力する。モデルMは重回帰モデルを想定している。
【0114】
図18(a)には、他の設定例の除外テーブルTを示す。除外テーブルTの縦軸の行動データaの行動1~3、横軸の業務状況データwの各要素1~3の交点には、それぞれ行動データaの無視度合いを示す比率を設定しておく。比率は、「0~1」の値を有し、値が大きいほど無視する度合いが高い。例えば、行動データ「行動1」に対する業務状況データ「要素1」の比率は「0.9」、行動データ「行動2」に対する業務状況データ「要素1」の比率は「0」、行動データ「行動2」に対する業務状況データ「要素1」の比率は「0」が設定されている。
【0115】
モデルの再学習が必要な場合(上記Case2判定時)の処理を説明する。この場合、行動要因推定装置100は、特定の行動データaを除いて再学習したモデルM’(例えば、ステップS1603で導出したもの)と、元のモデル(最初に学習したモデルM)の回帰係数を上記の比率に基づき線形結合した修正版モデルM”を作成する。
【0116】
図18(b)は、修正版モデルM”の作成例を示す。行動要因推定装置100は、元のモデルMの各行動1~3の回帰係数と切片の比率を設定する。また、行動要因推定装置100は、これらの係数(1-0.9=0.1)と、再学習モデルM’の各行動1~3の回帰係数と切片の比率、およびこれらの係数(0.9、
図18(a)の行動1-要素2の比率)とを加算する。これにより、修正版モデルM”として、行動1は「0.63」、行動2は「-2.7」、行動3は「1.50」、切片は「-1.45」の値を得る。
【0117】
そして、行動要因推定装置100は、修正版モデルM”に、対象者の新規の行動データAを入力して行動要因Cの推定値を出力する。この処理例によれば、行動データについて無視する度合いに強弱の変化を付けることができる。加えて、複数の専門家間の評価平均値(アンケート等で採取)などを直接比率として反映することもでき、行動要因Cの判定に関する客観性を高めることができる。
【0118】
以上説明した実施の形態にかかる行動要因の推定は、個人毎の行動の要因を推定して、適切に働きかけることが求められる各種サービスに適用可能である。例えば、企業内で従業員にeラーニングを継続受講させる支援サービスに適用できる。また、企業や自治体において、職員の満足度や生産性を高める人員配置や業務のマッチング支援、運動や禁煙など、職員の健康行動を支援するサービスに適用できる。また、産業保健師による特定保健指導の支援サービスにも適用できる。
【0119】
以上説明したように、実施の形態の行動要因推定では、行動要因推定モデルを用いて、対象者の行動の行動要因を推定する。そして、新たに推定する対象者の行動および業務状況に対応する行動および業務状況の学習データが、行動要因推定モデルが今までに学習を行った際に用いた学習データに含まれているか否かを判定する。そして、判定結果に基づいて、行動要因推定モデルを用いて対象者の行動の行動要因の推定が可能な否かを可否判定する。例えば、過去に同じ業務状況で同じ行動を行った対象者についての学習が行われていない行動要因推定モデルを用いた場合、正確な推定が行えない可能性が高いが、実施の形態によれば、そのような場合に、行動要因推定モデルを用いた推定を行わないことで、不正確な推定を行うことを抑止できるようになる。
【0120】
また、可否判定の処理は、推定時の対象者の行動と学習データに含まれる行動について閾値を用いた高低いずれかの類似状態、および推定時の対象者の業務状況と学習データに含まれる業務状況との類似状態の組み合わせた判定を行う。例えば、推定時の対象者の行動と学習データに含まれる行動とが類似し、推定時の対象者の業務状況と学習データに含まれる業務状況とが類似する場合、行動要因推定モデルを用いた対象者の行動の行動要因の推定が可能と第1判定する。また、推定時の対象者の業務状況と学習データに含まれる業務状況とが類似しない場合、推定時の対象者の行動と学習データに含まれる行動との類似に関わりなく、行動要因推定モデルの再学習により対象者の行動の行動要因の推定の可能性があると第2判定する。また、推定時の対象者の行動と学習データに含まれる行動とが類似せず、推定時の対象者の業務状況と学習データに含まれる業務状況とが類似する場合、行動要因推定モデルを用いた対象者の行動の行動要因の推定では誤判定リスクが高いと第3判定する。これにより、複数の推定可否判定結果に対応して、行動要因推定モデルをそのまま用いる推定処理、行動要因推定モデルの再学習後の推定処理、および行動要因推定モデルを用いた推定処理の抑止、の各処理を切り分けて行えるようになる。
【0121】
また、第1判定の場合、行動要因推定モデルに、推定時の対象者の行動を入力し、当該行動の行動要因を推定する。第2判定の場合、再学習後の行動要因推定モデルに、推定時の対象者の行動を入力し、当該行動の行動要因を推定する。また、第3判定の場合、行動要因推定モデルを用いた対象者の行動の行動要因の推定を行わない、こととしてもよい。このように、各推定可否判定結果に対応して、行動要因推定モデルをそのまま用いる推定処理、行動要因推定モデルの再学習後の推定処理、および行動要因推定モデルを用いた推定処理の抑止、の各処理を適切に実施できるようになる。
【0122】
また、第2判定時、当該第2判定の要因となった業務状況に対応する行動を除外する特定を行い、特定した行動以外の行動を用いた再学習を行うこととしてもよい。これにより、対象者の業務状況および行動に適した行動要因推定モデルの再学習が行え、対象者の行動の行動要因を正確に推定できるようになる。
【0123】
また、除外する特定の処理は、行動の種別と業務状況の種別との組み合わせのうち行動要因推定モデルの学習から除外する組み合わせの設定に基づき、対象者の業務状況に対し除外する行動を特定することとしてもよい。例えば、業務状況データと相関が大きい行動データの影響が無視されるように業務内容を熟知している現場の職員や、心理学・行動分析の専門家の経験則に基づき予め除外テーブルを設定しておくことで、除外テーブルの参照により、再学習で除外が好ましい行動を簡単に抽出できるようになる。
【0124】
また、除外する特定の処理は、行動の種別と業務状況の種別との組み合わせのうち行動要因モデルの学習から除外する度合いの組み合わせに設定した除外する度合いの設定に基づき、再学習した行動要因推定モデルおよび再学習前の行動要因推定モデルそれぞれの回帰係数を重回帰モデルにより線形結合した修正版モデルを作成してもよい。この場合、修正版モデルを用いて対象者の行動の行動要因を推定できるようになる。
【0125】
また、対象者の業務状況は、対象者の業務を記録した業務状況ログデータから所定の業務種別毎に集計した値をデータ抽出する。また、対象者の行動は、業務ログデータから所定の行動特徴毎に集計した値をデータ抽出することとしてもよい。これにより、過去データを蓄積した業務ログデータを用いて簡単に業務状況及び行動のデータを得ることができるようになる。
【0126】
なお、本実施の形態で説明した行動要因推定方法は、予め用意されたプログラムをPCやワークステーションなどのコンピュータで実行することにより実現することができる。本実施の形態で説明した行動要因推定プログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。また、本実施の形態で説明した行動要因推定プログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布してもよい。
【0127】
上述した実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0128】
(付記1)行動要因推定モデルを用いて、対象者の行動の行動要因を推定する行動要因推定方法において、
新たに推定する前記対象者の行動および業務状況に対応する行動および業務状況の学習データが、前記行動要因推定モデルが今までに学習を行った際に用いた学習データに含まれているか否かを判定し、
判定結果に基づいて、前記行動要因推定モデルを用いて前記対象者の行動の行動要因の推定が可能な否かを可否判定する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする行動要因推定方法。
【0129】
(付記2)前記可否判定の処理は、
推定時の前記対象者の行動と前記学習データに含まれる行動について閾値を用いた高低いずれかの類似状態、および推定時の前記対象者の業務状況と前記学習データに含まれる業務状況との類似状態の組み合わせに基づき、
前記推定時の前記対象者の行動と前記学習データに含まれる行動とが類似し、推定時の前記対象者の業務状況と前記学習データに含まれる業務状況とが類似する場合、前記行動要因推定モデルを用いた前記対象者の行動の行動要因の推定が可能と第1判定し、
推定時の前記対象者の業務状況と前記学習データに含まれる業務状況とが類似しない場合、推定時の前記対象者の行動と前記学習データに含まれる行動との類似に関わりなく、前記行動要因推定モデルの再学習により前記対象者の行動の行動要因の推定の可能性があると第2判定し、
推定時の前記対象者の行動と前記学習データに含まれる行動とが類似せず、推定時の前記対象者の業務状況と前記学習データに含まれる業務状況とが類似する場合、前記行動要因推定モデルを用いた前記対象者の行動の行動要因の推定では誤判定リスクが高いと第3判定する、
ことを特徴とする付記1に記載の行動要因推定方法。
【0130】
(付記3)前記第1判定の場合、前記行動要因推定モデルに、推定時の前記対象者の行動を入力し、当該行動の行動要因を推定し、
前記第2判定の場合、再学習後の行動要因推定モデルに、推定時の前記対象者の行動を入力し、当該行動の行動要因を推定し、
前記第3判定の場合、前記行動要因推定モデルを用いた前記対象者の行動の行動要因の推定を行わない、
ことを特徴とする付記2に記載の行動要因推定方法。
【0131】
(付記4)前記第2判定時、当該第2判定の要因となった業務状況に対応する行動を除外する特定を行い、特定した行動以外の行動を用いた再学習を行う、
ことを特徴とする付記2に記載の行動要因推定方法。
【0132】
(付記5)前記除外する特定の処理は、前記行動の種別と前記業務状況の種別との組み合わせのうち前記行動要因推定モデルの学習から除外する組み合わせの設定に基づき、前記対象者の業務状況に対し除外する行動を特定する、
ことを特徴とする付記4に記載の行動要因推定方法。
【0133】
(付記6)前記除外する特定の処理は、前記行動の種別と前記業務状況の種別との組み合わせのうち前記行動要因モデルの学習から除外する度合いの組み合わせに設定した除外する度合いの設定に基づき、再学習した前記行動要因推定モデルおよび再学習前の行動要因推定モデルそれぞれの回帰係数を重回帰モデルにより線形結合した修正版モデルを作成し、
前記修正版モデルを用いて前記対象者の行動の行動要因を推定する、
ことを特徴とする付記4に記載の行動要因推定方法。
【0134】
(付記7)前記対象者の業務状況は、前記対象者の業務を記録した業務状況ログデータから所定の業務種別毎に集計した値をデータ抽出し、
前記対象者の行動は、前記業務ログデータから所定の行動特徴毎に集計した値をデータ抽出する、
ことを特徴とする付記1に記載の行動要因推定方法。
【0135】
(付記8)前記第3判定の場合、行動要因の推定の誤判定リスクが高い旨、および前回推定時と同じ推定値を出力する、
ことを特徴とする付記2に記載の行動要因推定方法。
【0136】
(付記9)行動要因推定モデルを用いて、対象者の行動の行動要因を推定する行動要因推定プログラムにおいて、
新たに推定する前記対象者の行動および業務状況に対応する行動および業務状況の学習データが、前記行動要因推定モデルが今までに学習を行った際に用いた学習データに含まれているか否かを判定し、
判定結果に基づいて、前記行動要因推定モデルを用いて前記対象者の行動の行動要因の推定が可能な否かを可否判定する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする行動要因推定プログラム。
【符号の説明】
【0137】
100 行動要因推定装置
201 業務ログデータ
202 行動データ抽出層
204 機械学習
206 アンケート結果記憶部
501 データ取得部
502 推定可否判定部
503 乖離特定部
504 再学習部
505 推定値出力部
510 記憶部
511 過去データ記憶部
512 除外テーブル記憶部
513 学習済みモデル記憶部
601 CPU
602 メモリ
603 ネットワークIF
605 記録媒体
1300(H) 推定可否判定用設定
A, a 行動データ
C 行動要因
F 行動特徴
M 学習済みモデル(行動要因推定モデル)
M’ 再学習モデル
M” 修正版モデル
NW ネットワーク
T 除外テーブル
W,w 業務状況データ