(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175638
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物および冷媒輸送ホース
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20241211BHJP
F16L 11/06 20060101ALI20241211BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20241211BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20241211BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20241211BHJP
B32B 1/08 20060101ALI20241211BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20241211BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20241211BHJP
B32B 25/18 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
C08L101/00
F16L11/06
C08K3/00
C08L77/00
C08K5/00
B32B1/08 B
B32B27/34
B32B27/18 Z
B32B25/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023191647
(22)【出願日】2023-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2023093276
(32)【優先日】2023-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100165995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 寿人
(72)【発明者】
【氏名】百々瀬 愛
(72)【発明者】
【氏名】若林 健太
(72)【発明者】
【氏名】若松 博之
(72)【発明者】
【氏名】村山 洋
(72)【発明者】
【氏名】田中 淑美
(72)【発明者】
【氏名】齋田 知秀
【テーマコード(参考)】
3H111
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3H111AA02
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4J002AA001
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4J002FD206
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4J002GN00
(57)【要約】
【課題】柔軟性、耐冷媒透過性および耐劣化性が良好な冷媒輸送ホースを提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂を含むマトリックス中にエラストマーがドメインとして存在する海島構造を有する冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物であって、熱可塑性樹脂組成物はエラストマー100質量部、熱可塑性樹脂30~100質量部ならびにハイドロタルサイト類および/またはマグネシウム・アルミニウム固溶体0.5~10質量部を含み、熱可塑性樹脂が熱可塑性樹脂100質量部を基準として50~100質量部のポリアミドを含み、エラストマーがポリイソブチレン骨格を有するエラストマーを含むことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を含むマトリックス中にエラストマーがドメインとして存在する海島構造を有する冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物であって、熱可塑性樹脂組成物はエラストマー100質量部、熱可塑性樹脂30~100質量部ならびにハイドロタルサイト類および/またはマグネシウム・アルミニウム固溶体0.5~10質量部を含み、熱可塑性樹脂が熱可塑性樹脂100質量部を基準として50~100質量部のポリアミドを含み、エラストマーがポリイソブチレン骨格を有するエラストマーを含む、冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
熱可塑性樹脂組成物が亜鉛華、フェニレンジアミン系またはキノリン系老化防止剤および加工助剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
ポリアミドが、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド6/66共重合体、ポリアミド6/12共重合体、ポリアミド46、ポリアミド6T、ポリアミド9TおよびポリアミドMXD6からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
ポリイソブチレン骨格を有するエラストマーが、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、イソブチレン-モノアルキルスチレン共重合ゴム、ハロゲン化イソブチレン-モノアルキルスチレン共重合ゴムおよびスチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
ハイドロタルサイト類および/またはマグネシウム・アルミニウム固溶体が100m2/g以上の比表面積を有する、請求項1に記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
熱可塑性樹脂組成物が第1の脂肪酸金属塩および前記第1の脂肪酸金属塩よりも融点が低い第2の脂肪酸金属塩を更に含有している、請求項1に記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記第1の脂肪酸金属塩の融点が150℃以上である、請求項6に記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記第2の脂肪酸金属塩の融点が150℃未満である、請求項7に記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
前記第1の脂肪酸金属塩が、エラストマー100質量部を基準として0.5~5.0質量部である、請求項6に記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
前記第2の脂肪酸金属塩が、エラストマー100質量部を基準として0.5~5.0質量部である、請求項6に記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
前記第1の脂肪酸金属塩の質量Wd1と前記第2の脂肪酸金属塩の質量Wd2との比Wd1/Wd2が0.5~5.0である、請求項6に記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項12】
前記第1の脂肪酸金属塩が、ステアリン酸カルシウム、12-ヒドロキシステアリン酸亜鉛および12-ヒドロキシステアリン酸リチウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項6に記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項13】
前記第2の脂肪酸金属塩が、ステアリン酸亜鉛およびステアリン酸マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項6に記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる層を含む冷媒輸送ホース。
【請求項15】
冷媒輸送ホースが内層、補強層および外層を含み、内層が請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる層である、請求項14に記載の冷媒輸送ホース。
【請求項16】
加硫ゴムからなる層を含まない請求項14に記載の冷媒輸送ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物および冷媒輸送ホースに関する。より詳しくは、本発明は、自動車のエアコンディショナーなどに使用される冷媒輸送ホースを製造するのに用いられる熱可塑性樹脂組成物およびその熱可塑性樹脂組成物からなる層を含む冷媒輸送ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車への軽量化要求が高まる中、これまで自動車に使われていたゴム製のホースを、ゴムに代えてバリア性の高い樹脂で作製し、薄肉化することにより、軽量化を実現しようとする取り組みがある。特に、現行の自動車のエアコンディショナーの冷媒輸送ホースは主材料がゴムであり、その主材料をバリア性の高い樹脂で置き換えることができれば、軽量化が実現できる。
【0003】
特開2011-58638号公報(特許文献1)には、ハイドロタルサイトなどの受酸剤を添加したポリアミド樹脂組成物を用いて得られる最内層を有する冷媒輸送ホースが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の冷媒輸送ホースは、受酸剤を添加することにより、ポリアミドの加水分解を抑制することができるので、耐劣化性が高いが、柔軟性および耐冷媒透過性が必ずしも充分ではない。
【0006】
本発明は、柔軟性、耐冷媒透過性および耐劣化性が良好な冷媒輸送ホースを製造するのに用いられる熱可塑性樹脂組成物および冷媒輸送ホースを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明(I)は、熱可塑性樹脂を含むマトリックス中にエラストマーがドメインとして存在する海島構造を有する冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物であって、熱可塑性樹脂組成物はエラストマー100質量部、熱可塑性樹脂30~100質量部ならびにハイドロタルサイト類および/またはマグネシウム・アルミニウム固溶体0.5~10質量部を含み、熱可塑性樹脂が熱可塑性樹脂100質量部を基準として50~100質量部のポリアミドを含み、エラストマーがポリイソブチレン骨格を有するエラストマーを含むことを特徴とする。
本発明(II)は、本発明(I)の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物からなる層を含む冷媒輸送ホースである。
【0008】
本発明は以下の実施態様を含む。
[1]熱可塑性樹脂を含むマトリックス中にエラストマーがドメインとして存在する海島構造を有する冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物であって、熱可塑性樹脂組成物はエラストマー100質量部、熱可塑性樹脂30~100質量部ならびにハイドロタルサイト類および/またはマグネシウム・アルミニウム固溶体0.5~10質量部を含み、熱可塑性樹脂が熱可塑性樹脂100質量部を基準として50~100質量部のポリアミドを含み、エラストマーがポリイソブチレン骨格を有するエラストマーを含む、冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
[2]熱可塑性樹脂組成物が亜鉛華、フェニレンジアミン系またはキノリン系老化防止剤および加工助剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、[1]に記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
[3]ポリアミドが、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド6/66共重合体、ポリアミド6/12共重合体、ポリアミド46、ポリアミド6T、ポリアミド9TおよびポリアミドMXD6からなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]に記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
[4]ポリイソブチレン骨格を有するエラストマーが、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、イソブチレン-モノアルキルスチレン共重合ゴム、ハロゲン化イソブチレン-モノアルキルスチレン共重合ゴム、およびスチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]に記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
[5]ハイドロタルサイト類および/またはマグネシウム・アルミニウム固溶体が100m2/g以上の比表面積を有する、[1]に記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
[6]熱可塑性樹脂組成物が第1の脂肪酸金属塩および第1の脂肪酸金属塩よりも融点が低い第2の脂肪酸金属塩を更に含有している、[1]に記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
[7]第1の脂肪酸金属塩の融点が150℃以上である、[6]に記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
[8]第2の脂肪酸金属塩の融点が150℃未満である、[7]に記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
[9]第1の脂肪酸金属塩が、エラストマー100質量部を基準として0.5~5.0質量部である、[6]に記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
[10]第2の脂肪酸金属塩が、エラストマー100質量部を基準として0.5~5.0質量部である、[6]に記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
[11]第1の脂肪酸金属塩の質量Wd1と第2の脂肪酸金属塩の質量Wd2との比Wd1/Wd2が0.5~5.0である、[6]に記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
[12]第1の脂肪酸金属塩が、ステアリン酸カルシウム、12-ヒドロキシステアリン酸亜鉛および12-ヒドロキシステアリン酸リチウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、[6]に記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
[13]第2の脂肪酸金属塩が、ステアリン酸亜鉛およびステアリン酸マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、[6]に記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
[14][1]に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる層を含む冷媒輸送ホース。
[15]冷媒輸送ホースが内層、補強層および外層を含み、内層が[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる層である、[14]に記載の冷媒輸送ホース。
[16]加硫ゴムからなる層を含まない[14]に記載の冷媒輸送ホース。
【発明の効果】
【0009】
本発明の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物は、柔軟性、耐冷媒透過性および耐劣化性に優れる。
本発明の冷媒輸送ホースは、柔軟性、耐冷媒透過性および耐劣化性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図2は、ホースの柔軟性の評価方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明(I)は冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物に関する。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、冷媒輸送ホースを製造するために用いられる。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、冷媒輸送ホースの内層を構成する材料として用いられる。
【0012】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含むマトリックス中にエラストマーがドメインとして存在する海島構造を有する。海島構造を有することにより、熱可塑性樹脂組成物が柔軟性を有することができる。海島構造を得るには、混練中にゴムを架橋(動的架橋)する。
【0013】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、エラストマー100質量部、熱可塑性樹脂30~100質量部ならびにハイドロタルサイト類および/またはマグネシウム・アルミニウム固溶体0.5~10質量部を含む。
【0014】
エラストマーとは、常温でゴム弾性を示す高分子物質をいう。
エラストマーは、ポリイソブチレン骨格を有するエラストマーを含む。
ポリイソブチレン骨格とは、複数のイソブチレンが重合して形成された化学構造、すなわち-[-CH2-C(CH3)2-]n-(ただし、nは2以上の整数である。)で表される化学構造をいう。
ポリイソブチレン骨格を有するエラストマーは、ポリイソブチレン骨格を有する限り限定されないが、好ましくは、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、イソブチレン-モノアルキルスチレン共重合ゴム、ハロゲン化イソブチレン-モノアルキルスチレン共重合ゴムおよびスチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)からなる群から選ばれる少なくとも1種である。イソブチレン-モノアルキルスチレン共重合ゴムは、例えばイソブチレン-p-メチルスチレン共重合ゴム(IPMS)を挙げることができる。ハロゲン化イソブチレン-モノアルキルスチレン共重合ゴムは、例えばハロゲン化イソブチレン-p-メチルスチレン共重合ゴムを挙げることができる。エラストマーは、より好ましくは臭素化イソブチレン-p-メチルスチレン共重合ゴム(BIMS)である。
エラストマーは、本発明の効果を阻害しない範囲で、ポリイソブチレン骨格を有するエラストマー以外のエラストマーを含んでもよい。
【0015】
熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂100質量部を基準として、50~100質量部のポリアミドを含み、好ましくは70~100質量部のポリアミドを含み、より好ましくは80~100質量部のポリアミドを含む。熱可塑性樹脂がポリアミドを含むことにより、ガスバリア性が確保できる。
ポリアミドは、限定するものではないが、好ましくは、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド6/66共重合体、ポリアミド6/12共重合体、ポリアミド46、ポリアミド6T、ポリアミド9TおよびポリアミドMXD6からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
熱可塑性樹脂はポリアミド以外の熱可塑性樹脂を含むことができる。ポリアミド以外の熱可塑性樹脂としては、限定するものではないが、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリケトンなどが挙げられる。
熱可塑性樹脂は、ポリアミド以外の熱可塑性樹脂を含むことができるが、好ましくはポリアミドのみを含む。
【0016】
熱可塑性樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の含有量は、エラストマー100質量部を基準として、30~100質量部であり、好ましくは31~95質量部であり、より好ましくは31~80質量部である。熱可塑性樹脂の含有量が前記数値範囲内のとき、柔軟性と耐冷媒透過性の両立が可能になる。
【0017】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ハイドロタルサイト類および/またはマグネシウム・アルミニウム固溶体を含む。
冷媒輸送ホースの内層にポリアミドを含む熱可塑性樹脂組成物を用いた場合、冷媒中のエステル系オイルのような潤滑剤の劣化などによって発生した酸が内層中のポリアミドの加水分解を促進し、内層の耐劣化性を低下させるが、ハイドロタルサイト類および/またはマグネシウム・アルミニウム固溶体を含むことにより、ハイドロタルサイト類および/またはマグネシウム・アルミニウム固溶体が酸を捕捉し、内層の耐劣化性の低下を抑制することができる。
ハイドロタルサイト類は、[M2+
1-xM3+
x(OH)2]x+[An-
x/n・mH2O]x-の一般式で表される不定比化合物である。M2+はMg2+,Mn2+,Fe2+,Co2+,Ni2+,Cu2+,Zn2+などの2価金属である。M3+はAl3+,Fe3+,Cr3+,Co3+,In3+などの3価金属である。An-はOH-,F-,Cl-,Br-,NO3
-,CO3
2-、SO4
2-,Fe(CN)6
3-,CH3COO―,シュウ酸イオン,サリチル酸イオンなどのn価のアニオンである。xは0<x≦0.33の範囲にある。
ハイドロタルサイト類の代表的鉱物は、Mg1-xAlx(OH)2(CO3)x/2・nH2Oの化学組成を有する鉱物である。ハイドロタルサイトの化学組成は(Mg6Al2(OH)2(CO3)16・4H2O)である。
ハイドロタルサイト類は、天然品と合成品があるが、本発明にはいずれのハイドロタルサイト類も使用することができる。
ハイドロタルサイト類は、市販されており、たとえば、セトラスホールディングス株式会社から、DHT(登録商標)-4C、DHT(登録商標)-4Aなどの商品名で入手することができる。
マグネシウム・アルミニウム固溶体とは、マグネシウム・アルミニウム・酸化物であり、脱水作用がある。マグネシウム・アルミニウム固溶体は、MgO含量が55~65%、Al2O3含量が30~40%であることが好ましい。マグネシウム・アルミニウム固溶体の化学組成をMgaAlbOcで表したときに、a=0.7、b=0.3、c=1.15のものが好ましい。マグネシウム・アルミニウム固溶体は、市販されており、たとえば、セトラスホールディングス株式会社から、KW-2000、KW-2100、KW-2200などの商品名で入手することができる。
ハイドロタルサイト類および/またはマグネシウム・アルミニウム固溶体は、100m2/g以上の比表面積を有することが好ましく、100~200m2/gの比表面積を有することが好ましい。ハイドロタルサイト類および/またはマグネシウム・アルミニウム固溶体の比表面積が前記数値範囲内のとき、熱可塑性樹脂組成物の耐劣化性が向上する。
ハイドロタルサイト類および/またはマグネシウム・アルミニウム固溶体は、マトリックスとドメインのいずれに含まれていてもよいが、マトリックスに含まれていることが好ましい。
【0018】
熱可塑性樹脂組成物中のハイドロタルサイト類および/またはマグネシウム・アルミニウム固溶体の含有量は、エラストマー100質量部を基準として、0.5~10質量部であり、好ましくは0.5~8質量部であり、より好ましくは0.5~6質量部である。ハイドロタルサイト類および/またはマグネシウム・アルミニウム固溶体の含有量が少なすぎると、熱可塑性樹脂組成物の耐劣化性が不充分となる。ハイドロタルサイト類および/またはマグネシウム・アルミニウム固溶体の含有量が多すぎると、疲労性や耐久性が悪くなる。
熱可塑性樹脂組成物は、ハイドロタルサイト類とマグネシウム・アルミニウム固溶体のいずれか一方を含んでもよいし、両方を含んでもよい。熱可塑性樹脂組成物が両方を含む場合、ハイドロタルサイト類の含有量とマグネシウム・アルミニウム固溶体の含有量の合計が、エラストマー100質量部を基準として、0.5~10質量部である。
【0019】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、亜鉛華、フェニレンジアミン系またはキノリン系老化防止剤および加工助剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。亜鉛華、フェニレンジアミン系またはキノリン系老化防止剤および加工助剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことにより、熱可塑性樹脂組成物の押出加工性が向上する。亜鉛華、フェニレンジアミン系またはキノリン系老化防止剤および加工助剤の3種の添加剤は、そのうちの1種のみを含んでもよいし、そのうちのいずれか2種を含んでもよいし、3種すべてを含んでもよい。
【0020】
亜鉛華は、酸化亜鉛ともいう。
亜鉛華は、粘度安定剤として機能し、熱可塑性樹脂組成物が亜鉛華を含むことにより、熱可塑性樹脂組成物を押出成形する際に粘度の上昇が抑えられ、滞留物発生を効果的に減らすことができるので、加工性が良好になる。
亜鉛華は、市販されており、たとえば、正同化学工業株式会社から、酸化亜鉛3種などの商品名で入手することができる。
亜鉛華の含有量は、所望の効果が得られる限り限定されないが、熱可塑性樹脂とエラストマーの合計量100質量部を基準として、好ましくは0.1~30質量部であり、より好ましくは0.5~20質量部であり、さらに好ましくは0.5~6質量部である。
亜鉛華はマトリックスとドメインのいずれに含まれていてもよいが、亜鉛華の50質量%以上がマトリックスに含まれることが好ましい。亜鉛華の50質量%以上がマトリックスに含まれることにより、熱可塑性樹脂組成物を押出成形する際に粘度の上昇が抑えられ、滞留物発生を効果的に減らすことができるので、加工性が良好になる。
【0021】
フェニレンジアミン系またはキノリン系老化防止剤は、老化防止剤および/または架橋剤として機能し、熱可塑性樹脂組成物の耐熱老化性を向上させ、押出加工性の向上に寄与する。
フェニレンジアミン系老化防止剤とは、二級アミンを置換基として2つ有する芳香族環を分子構造に持つ老化防止剤をいうが、好ましくは、N-フェニル-N′-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N′-(1-メチルヘプチル)-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N′-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミンおよびN,N′-ジフェニル-p-フェニレンジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはN-フェニル-N′-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミンである。
フェニレンジアミン系老化防止剤は、市販されており、たとえば、Solutia社などから、6PPDの商品名で入手することができる。
キノリン系老化防止剤とは、キノリン骨格を分子構造に持つ老化防止剤をいうが、好ましくは、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体である。
キノリン系老化防止剤は、市販されており、たとえば、大内新興化学工業株式会社から「ノクラック」(登録商標)224などの商品名で入手することができる。
熱可塑性樹脂組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤またはキノリン系老化防止剤の含有量(フェニレンジアミン系老化防止剤とキノリン系老化防止剤の両方を含む場合は、フェニレンジアミン系老化防止剤の含有量とキノリン系老化防止剤の含有量の合計)は、所望の効果が得られる限り限定されないが、熱可塑性樹脂とエラストマーの合計量100質量部を基準として、好ましくは0.1~10質量部であり、より好ましくは0.1~5.0質量部である。
フェニレンジアミン系またはキノリン系老化防止剤は、マトリックスとドメインのいずれに含まれていてもよいが、ドメインに含まれていることが好ましい。
【0022】
加工助剤は、熱可塑性樹脂組成物の押出加工性の改善に寄与する。
加工助剤は、特に限定するものではないが、好ましくは、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステルおよび脂肪酸アミドから選ばれる少なくとも1種である。
脂肪酸としては、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸などが挙げられるが、好ましくはステアリン酸である。
脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、12-ヒドロキシステアリン酸亜鉛、12-ヒドロキシステアリン酸リチウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウムなどが挙げられる。
脂肪酸エステルとしては、グリセリンモノステアレート、ソルビタンステアレート、ステアリルステアレート、エチレングリコールジステアレートなどが挙げられる。
脂肪酸アミドとしては、ステアリン酸モノアミド、オレイン酸モノアミド、エチレンビスステアリン酸アミドなどが挙げられる。
熱可塑性樹脂組成物中の加工助剤の含有量は、所望の効果が得られる限り限定されないが、熱可塑性樹脂とエラストマーの合計量100質量部を基準として、好ましくは0.2~10質量部であり、より好ましくは1~8質量部であり、さらに好ましくは1~5質量部である。
加工助剤は、マトリックスとドメインのいずれに含まれていてもよいが、マトリックスに含まれていることが好ましい。
【0023】
本発明において、熱可塑性樹脂組成物は、第1の脂肪酸金属塩および第1の脂肪酸金属塩よりも融点が低い第2の脂肪酸金属塩の両方を含んでいることが好ましい。
加工助剤として高い融点を有する第1の脂肪酸金属塩を添加することで、熱可塑性樹脂とエラストマーとのアロイの混錬・押出しを行う際の温度において、第1の脂肪酸金属塩が良好な運動性を有し、加工助剤として高い作用を有するが、第1の脂肪酸金属塩は、冷媒輸送ホースの使用温度(例えば150℃以下)においては分子の運動性が不十分であり、受酸剤としての作用は限定的である。受酸効果を増強のため、脂肪酸金属塩を増量させるだけでは、柔軟性は良化するものの、バリア性不足が懸念される。
低い融点を有する第2の金属脂肪酸塩は、冷媒輸送ホースの使用温度(例えば150℃以下)において分子の運動性が高く、受酸剤として高い効果を発揮しうる。
本発明では、高い融点を有する第1の脂肪酸金属塩に加えて低い融点を有する第2の脂肪酸金属塩を更に添加することで、冷媒輸送ホース使用温度において柔軟性とバリア性を損なわずに耐加水分解性を向上させた。
【0024】
熱可塑性樹脂組成物の加工性及び耐劣化性の観点から、第1の脂肪酸金属塩の融点は、150℃以上であることが好ましい。また、同様の観点から、第2の脂肪酸金属塩の融点は、150℃未満であることが好ましい。第1の脂肪酸金属塩の融点は、150℃以上、160℃以上、170℃以上、180℃以上、190℃以上、200℃以上、又は210℃以上であってよい。他方、第2の脂肪酸金属塩の融点は、150℃未満、145℃以下、140℃以下、135℃以下、130℃以下、又は125℃以下であってよい。
【0025】
柔軟性、バリア性および加工性の観点から、熱可塑性樹脂組成物中の第1の脂肪酸金属塩は、エラストマー100質量部を基準として0.5~5.0質量部であることが好ましい。熱可塑性樹脂組成物中の第1の脂肪酸金属塩は、エラストマー100質量部を基準として、より好ましくは1.0~3.0質量部、さらに好ましくは2.0~2.5質量部である。
【0026】
耐劣化性の観点から、熱可塑性樹脂組成物中の第2の脂肪酸金属塩は、エラストマー100質量部を基準として0.5~5.0質量部であることが好ましい。熱可塑性樹脂組成物中の第2の脂肪酸金属塩は、エラストマー100質量部を基準として、より好ましくは0.5~2.0質量部、さらに好ましくは0.5~1.0質量部である。
【0027】
柔軟性、バリア性、加工性および耐劣化性のバランスの観点から、第1の脂肪酸金属塩の質量Wd1と第2の脂肪酸金属塩の質量Wd2との比Wd1/Wd2が0.5~5.0であることが好ましい。
【0028】
第1の脂肪酸金属塩は、ステアリン酸カルシウム(融点:155±5℃)、12-ヒドロキシステアリン酸亜鉛(融点:150±10)および12-ヒドロキシステアリン酸リチウム(融点:212±10)からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
また、第2の脂肪酸金属塩は、ステアリン酸亜鉛(融点:125±5℃)およびステアリン酸マグネシウム(融点:145±5℃)からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0029】
熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、前記した添加剤以外の添加剤を含むことができる。
【0030】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、冷媒、冷凍機油および水を含む冷媒含有組成物中で熱可塑性樹脂組成物を150℃で96時間処理した後の引張試験における破断伸び(処理後EB)が処理前の熱可塑性樹脂組成物の引張試験における破断伸び(処理前EB)の30~100%であることが好ましい。処理後EB/処理前EB×100[%]を、以下、「処理後EB残存率」という。処理後EB残存率は、より好ましくは35~100%であり、さらに好ましくは50~100%である。処理後EB残存率が前記数値範囲内にある熱可塑性樹脂組成物を用いて冷媒輸送ホースを作製すれば、耐劣化性に優れる冷媒輸送ホースを得ることができる。
【0031】
破断伸び(EB)の測定は、次のように行う。
熱可塑性樹脂組成物を、200mm幅T型ダイス付40mmφ単軸押出機(株式会社プラ技研製)を用いて、シリンダーおよびダイスの温度を熱可塑性樹脂組成物中の最も融点の高いポリマー成分の融点+10℃に設定し、冷却ロール温度50℃、引き取り速度3m/minの条件で平均厚さ1.0mmのシートに成形し、成形されたシートをJIS 6号ダンベル形状に打ち抜き、熱可塑性樹脂組成物の試験片を作製する。
作製した熱可塑性樹脂組成物の試験片について、JIS K7161に準拠し、温度25℃、相対湿度50%、速度500mm/minで引張試験を行い、得られた応力ひずみ曲線から破断したときの伸びを求め、その伸びを破断伸び(EB)とする。
【0032】
処理後EBの測定方法は、次のとおりである。
破断伸びの測定のために作製したJIS 6号ダンベル形状の熱可塑性樹脂組成物の試験片を、定体積容器に、水、冷凍機油および冷媒とともに密閉封入し、所定温度時間加熱処理をする。封入量は、水:冷凍機油:冷媒=1:80:160の質量比である。
処理後、定体積容器から熱可塑性樹脂組成物の試験片を取り出し、その試験片について破断伸びを測定し、それを処理後EBとする。
処理後EB残存率の測定は、次のように行う。
未処理の熱可塑性樹脂組成物の試験片について、破断伸びを測定し、それを処理前EBとする。
処理後EB残存率は、次式により算出する。
処理後EB残存率(%)=処理後EB/処理前EB×100
【0033】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、温度25℃における10%モジュラスが、好ましくは10MPa以下であり、より好ましくは2~10MPaであり、さらに好ましくは5~9MPaである。温度25℃における10%モジュラスが前記数値範囲内にある熱可塑性樹脂組成物を用いて冷媒輸送ホースを作製すれば、柔軟性に優れる冷媒輸送ホースを得ることができる。
10%モジュラスはJIS K7161に準拠して測定する。
【0034】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、温度21℃および相対湿度50%における酸素透過係数が、好ましくは0.03cm3・mm/(m2・day・mmHg)以下であり、より好ましくは0.0001~0.0300cm3・mm/(m2・day・mmHg)であり、さらに好ましくは0.0050~0.0200cm3・mm/(m2・day・mmHg)である。温度21℃および相対湿度50%における酸素透過係数が前記数値範囲内にある熱可塑性樹脂組成物を用いて冷媒輸送ホースを作製すれば、耐冷媒透過性に優れる冷媒輸送ホースを得ることができる。
酸素透過係数とは、規定の温度・湿度条件下で、圧力1mmHgあたり、面積1m2あたりで厚さが1mmでの1日に透過する酸素量をいう。
【0035】
本発明(II)は冷媒輸送ホースに関する。
冷媒輸送ホースとは、エアコンディショナーなどの冷媒を輸送するためのホースをいう。本発明(II)の冷媒輸送ホースは、特に、自動車のエアコンディショナーの冷媒を輸送するためのホースに好適に用いられる。エアコンディショナーの冷媒としてはハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、炭化水素、二酸化炭素、アンモニア、水などを挙げることができ、HFCとしてはR410A、R32、R404A、R407C、R507A、R134aなどが挙げられ、HFOとしてはR1234yf、R1234ze、1233zd、R1123、R1224yd、R1336mzzなどが挙げられ、炭化水素としてはメタン、エタン、プロパン、プロピレン、ブタン、イソブタン、ヘキサフルオロプロパン、ペンタンなどが挙げられる。
【0036】
図1に、本発明の冷媒輸送ホースの一実施形態の断面図を示す。ただし、本発明は
図1に示されたものに限定されない。
冷媒輸送ホース1は、内層2、補強層3および外層4を含む。補強層3は内層2の外側に配置され、外層4は補強層3の外側に配置される。
【0037】
本発明(II)の冷媒輸送ホースは、本発明(I)の熱可塑性樹脂組成物からなる層を含むことを特徴とする。
図1においては、本発明(I)の熱可塑性樹脂組成物からなる層は内層2である。
内層2は、好ましくは、本発明(I)の熱可塑性樹脂組成物からなる。内層2が本発明(I)の熱可塑性樹脂組成物からなることにより、冷媒輸送ホースの耐冷媒透過性が向上する。
【0038】
内層の厚さは、特に制限されないが、たとえば、0.2~3mmであるとよい。
【0039】
補強層は、内層と外層の間に設けられる層であり、補強層を形成しうる補強材料は、特に限定されるものではなく、有機材料、無機材料のいずれでもよい。たとえば、有機材料として、ポリマー(繊維材料)が挙げられ、ポリエステル、ポリアミド、アラミド、ビニロン、レーヨン、PBO(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)、ポリケトン、ポリアリレート等が例示される。また、無機材料として、金属が挙げられ、ブラスメッキが施されたワイヤ、亜鉛メッキワイヤー等の硬鋼線が例示される。補強材料は表面処理されたものであってもよい。補強層は、耐疲労性能に優れ、コストパフォーマンスに優れるという観点から、ポリエステル系繊維が好ましい。補強層を有することによって、ホースの強度を確保し、耐圧性を優れたものにすることができる。補強層の厚さは、特に制限されないが、たとえば、0.3~3mmであるとよい。
補強層(補強材料)の形態としては、たとえば、スパイラル構造および/またはブレード構造に編組されたものが好ましく挙げられる。また、補強層は、1層の補強層または複数の補強層のいずれでもよい。
【0040】
外層4を構成する材料としては、限定するものではないが、熱可塑性エラストマー、加硫ゴムなどが挙げられ、好ましくは熱可塑性エラストマーである。熱可塑性エラストマーとしては、限定するものではないが、好ましくはポリオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマーが挙げられる。さらに好ましくはポリプロピレンを用いた熱可塑性エラストマー、ポリアミド12を用いた熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0041】
外層の厚さは、特に制限されないが、たとえば、0.2~3mmであるとよい。
【0042】
冷媒輸送ホースは、好ましくは、加硫ゴムからなる層を含まない。加硫ゴムからなる層を含まないことにより、ホース製造工程が減少(具体的には加硫工程の省略)し、省エネルギーとなる。
【0043】
冷媒輸送ホースの製造方法は、特に限定されないが、次のようにして製造することができる。まず内層(内管)を押出成形によりチューブ状に押出し、次いでそのチューブ上に補強材料を編組して補強層とし、さらにその補強層の上に外層(外管)を押出成形により被覆することで、冷媒輸送ホースを製造することができる。
【実施例0044】
《実施例1~11および比較例1~3》
[原材料]
BIMS: エクソンモービル・ケミカル社製臭素化イソブチレン-p-メチルスチレン共重合体ゴム「EXXPRO」(登録商標)3745
酸変性POエラストマー: 三井化学株式会社製マレイン酸変性α-オレフィン共重合体「タフマー」(登録商標)MH7010
PA6: 宇部興産株式会社製ポリアミド6「UBEナイロン」(登録商標)1011FB
PA6/12: 宇部興産株式会社製ポリアミド6/12共重合体「UBEナイロン」(登録商標)7024B
PA12: 宇部興産株式会社製ポリアミド12「UBESTA」(登録商標)3012U
マグネシウム・アルミニウム固溶体: セトラスホールディングス株式会社製マグネシウム・アルミニウム固溶体KW-2200(比表面積:145m2/g)(「マグネシウム・アルミニウム固溶体」を以下「Mg・Al固溶体」ともいう。)
ハイドロタルサイト類: セトラスホールディングス株式会社製ハイドロタルサイト「DHT」(登録商標)-4C(比表面積:15m2/g)
亜鉛華: 正同化学工業株式会社製酸化亜鉛3種(酸化亜鉛をポリアミド6に混合したマスターバッチとして表に記載の亜鉛華分添加)
6PPD: Solutia社製フェニレンジアミン系老化防止剤「SANTOFLEX」(登録商標)6PPD(物質名:N-フェニル-N′-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン)
ステアリン酸カルシウム: 堺化学工業株式会社製ステアリン酸カルシウムSC-PG
ステアリン酸: 千葉脂肪酸株式会社製工業用ステアリン酸
【0045】
(1)熱可塑性樹脂組成物の調製
各原材料を、表1および表2に示す配合比率で、二軸混練押出機(株式会社日本製鋼所製)に投入し、235℃で3分間混練した。混練物を押出機から連続的にストランド状に押出し、水冷後、カッターで切断することにより、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物A1~A14を得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物A1~A14について、処理後EB残存率、10%モジュラスおよび酸素透過係数を測定した。測定結果を表1および表2に示す。
【0046】
(2)外層用樹脂組成物の調製
IIR(エクソンモービル・ケミカル社製ブチルゴム「エクソンブチル」268)100質量部、架橋性樹脂(三菱ケミカル株式会社製シラン変性ポリプロピレン「リンクロン」(登録商標)XPM800HM)19質量部、ポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製プロピレンホモポリマー「プライムポリプロ」(登録商標)J108M)19質量部、樹脂系架橋剤(日立化成株式会社製アルキルフェノール-ホルムアルデヒドレジン「ヒタノール」(登録商標)2501Y)3質量部、亜鉛華(正同化学工業株式会社製酸化亜鉛3種)6質量部および老化防止剤(Irganox 1010)5質量部を、二軸混練押出機(株式会社日本製鋼所製)に投入し、235℃で3分間混練した。混練後のペレットにおいて、シラノール縮合触媒(三菱ケミカル株式会社製シラン架橋剤マスターバッチ「触媒MB」PZ010)2質量部をドライブレンドにより添加して、外層用樹脂組成物B1を調製した。触媒MB添加後は30分以内に外層を押出した。
BIMS(エクソンモービル・ケミカル社製臭素化イソブチレン-p-メチルスチレン共重合体ゴム「EXXPRO」(登録商標)3745)100質量部、PA12(宇部興産株式会社製ポリアミド12「UBEナイロン」(登録商標)3012U)39質量部、亜鉛華(正同化学工業株式会社製酸化亜鉛3種)5質量部、6PPD(Solutia社製フェニレンジアミン系老化防止剤「SANTOFLEX」(登録商標)6PPD(物質名:N-フェニル-N′-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン))3質量部、ステアリン酸カルシウム(堺化学工業株式会社製ステアリン酸カルシウムSC-PG)1質量部およびステアリン酸(千葉脂肪酸株式会社製工業用ステアリン酸)1質量部を、二軸混練押出機(株式会社日本製鋼所製)に投入し、235℃で3分間混練して、外層用樹脂組成物B2を調製した。
【0047】
(3)冷媒輸送ホースの作製
予め離型剤を塗布したマンドレル上に、前記(1)で調製した熱可塑性樹脂組成物を、押出機により表3および表4に示す厚さのチューブ状に押出した。その上に編組機を使用してポリエステルの補強糸を編組し、その上に、外層用樹脂組成物B1またはB2を押出機により表3および表4に示す厚さのチューブ状に押出して、マンドレルを抜き取ることで、内層/補強層/外層からなるホースを作製した。
作製したホースについて、耐冷媒透過性および柔軟性を評価した。評価結果を表3および表4に示す。
【0048】
測定・評価方法は、以下のとおりである。
【0049】
[破断伸び(EB)の測定]
熱可塑性樹脂組成物を、200mm幅T型ダイス付40mmφ単軸押出機(株式会社プラ技研製)を用いて、シリンダーおよびダイスの温度を熱可塑性樹脂組成物中の最も融点の高いポリマー成分の融点+10℃に設定し、冷却ロール温度50℃、引き取り速度3m/minの条件で平均厚さ1.0mmのシートに成形し、成形されたシートをJIS 6号ダンベル形状に打ち抜き、熱可塑性樹脂組成物の試験片を作製した。
作製した熱可塑性樹脂組成物の試験片について、JIS K7161に準拠し、温度25℃、相対湿度50%、速度500mm/minで引張試験を行い、得られた応力ひずみ曲線から破断したときの伸びを求め、その伸びを破断伸び(EB)とした。
【0050】
[処理後EB残存率の測定]
破断伸びの測定のために作製したJIS 6号ダンベル形状の熱可塑性樹脂組成物の試験片を、定体積容器に、水、冷凍機油および冷媒とともに密閉封入し、所定温度時間加熱処理をした。封入量は、水:冷凍機油:冷媒=1:80:160の質量比である。
処理後、定体積容器から熱可塑性樹脂組成物の試験片を取り出し、その試験片について破断伸びを測定し、それを処理後EBとした。
未処理の熱可塑性樹脂組成物の試験片について、破断伸びを測定し、それを処理前EBとした。
処理後EB残存率は、次式により算出した。
処理後EB残存率(%)=処理後EB/処理前EB×100
【0051】
[10%モジュラスの測定]
熱可塑性樹脂組成物を、200mm幅T型ダイス付40mmφ単軸押出機(株式会社プラ技研製)を用いて、シリンダーおよびダイスの温度を熱可塑性樹脂組成物中の最も融点の高いポリマー成分の融点+10℃に設定し、冷却ロール温度50℃、引き取り速度3m/minの条件で平均厚さ1.0mmのシートに成形した。
作製した平均厚さ1.0mmのシートを、JIS 6号ダンベル形状に打ち抜き、JIS K7161に準拠して、温度25℃、相対湿度50%、速度500mm/minで引張試験を行い、得られた応力ひずみ曲線から10%伸張時における応力を求め、10%モジュラスとした。
【0052】
[酸素透過係数の測定]
熱可塑性樹脂組成物を、200mm幅T型ダイス付40mmφ単軸押出機(株式会社プラ技研製)を用いて、シリンダーおよびダイスの温度を熱可塑性樹脂組成物中の最も融点の高いポリマー成分の融点+10℃に設定し、冷却ロール温度50℃、引き取り速度3m/minの条件で平均厚さ0.2mmのシートに成形した。
作製したシートを切り出し、MOCON社製OXTRAN 1/50を用いて、温度21℃、相対湿度50%で、酸素透過係数を測定した。
【0053】
[耐冷媒透過性の評価]
SAE J2064 AUG2015に準拠して測定を行った。長さ1.07mのホースの試験サンプルの中に、試験サンプルの内容積1cm3あたり70%±3%の冷媒(HFO-1234yf)を封入した。この試験サンプルを80℃の雰囲気下に25日放置し、25日期間中の最後の所定期間(5日間~7日間)での1日あたりの質量の減少量(冷媒透過量)[kg/day]を測定し、この減少量を試験サンプルの内表面積で除した数値を、1年間あたりの数値に換算することで、冷媒透過係数[kg/(m2・year)]を算出した。冷媒透過係数の数値が小さい程、耐冷媒透過性に優れていることを意味する。この数値が6以下であれば、実用上十分な耐冷媒透過性を有していると評価できる。表3および表4では、この数値が6以下の場合を〇、この数値が6超の場合を×で示した。
【0054】
[柔軟性の評価]
図2に示すように、ホースの試験サンプルSに対して、長手方向一方端部をクランプなどの固定具によって固定し、固定位置から所定長さL(120+ホース外径/2)×π[mm]だけ離間した他方端部にバネ秤を取り付けて引張り、破線で示す状態から実線で示す状態に試験サンプルSを半円弧状に屈曲させる。そして、ホース内側半径Rが120mmの屈曲状態において水平方向に引っ張っているバネ秤によって計測される引張力Fを評価指標とした。この引張力Fの値が小さい程、試験サンプルSは屈曲し易くて柔軟性に優れていることを意味する。表3および表4では、引張力Fが20N未満の場合を〇、引張力Fが20N以上の場合を×で示した。
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
《実施例12~19および参考例1~3》
[原材料]
BIMS: エクソンモービル・ケミカル社製臭素化イソブチレン-p-メチルスチレン共重合体ゴム「EXXPRO」(登録商標)3745
SIBS: 株式会社カネカ製イソブチレン系熱可塑性エラストマー「SIBSTAR」(登録商標)
6PPD: Solutia社製フェニレンジアミン系老化防止剤「SANTOFLEX」(登録商標)6PPD(物質名:N-フェニル-N′-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン)
亜鉛華: 正同化学工業株式会社製酸化亜鉛3種(酸化亜鉛をポリアミド6に混合したマスターバッチとして表に記載の亜鉛華分添加)
PA6: 宇部興産株式会社製ポリアミド6「UBEナイロン」(登録商標)1011FB
PA6/12: 宇部興産株式会社製ポリアミド6/12共重合体「UBEナイロン」(登録商標)7024B
PA11: アルケマ株式会社製ポリアミド11「Rilsan」(登録商標)OTL
ハイドロタルサイト類: セトラスホールディングス株式会社製ハイドロタルサイト「DHT」(登録商標)-4C(比表面積:15m2/g)
ステアリン酸: 千葉脂肪酸株式会社製工業用ステアリン酸
ステアリン酸カルシウム: 堺化学工業株式会社製ステアリン酸カルシウムSC-PG(融点:155±5℃)
ステアリン酸亜鉛: 堺化学工業株式会社製ステアリン酸亜鉛SZ-PG(融点:125±5℃)
ステアリン酸マグネシウム: 堺化学工業株式会社製ステアリン酸マグネシウムSM-PG(融点:145±5℃)
【0060】
(1)熱可塑性樹脂組成物の調製
表5に示す条件に記載の材料を、各例に示す配合比率にて二軸混練機(株式会社日本製鋼所)に投入し、200~225℃で3分間混錬した。得られた混錬物を連続的にストランド状に押し出し、冷水後にカッターで切断することにより、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0061】
(2)フィルム成形
得られた熱可塑性樹脂組成物を、550mm幅T型ダイス付Φ40mm単軸押出機(株式会社プラ技研)を用いて、シートに成形した。具体的には、シリンダーおよびダイスの温度を200~240℃に設定し、冷却ロール温度および引き取り速度を任意の条件に設定し、平均厚み2.0mmのシートを得た。
【0062】
[10%モジュラスの測定]
得られたシートを、JIS 6号ダンベル形状に打ち抜き、JIS K7161に準拠して、温度25℃、速度500mm/minの条件で引張試験を行い、得られた応力ひずみ曲線から10%伸張時における応力を求め、10%モジュラスとした。
【0063】
[酸素透過係数の測定]
得られたシートを切り出し、MOCON社製OXTRAN 1/50を用いて、温度21℃、相対湿度50%で、酸素透過係数cm3・mm/(m2・day・mmHg)を測定した。
【0064】
[混錬エネルギーの測定]
熱可塑性樹脂組成物を製造する際における、二軸混練機の比エネルギー、すなわち混錬における原料1kgあたりの混錬機の電動機効率及び機械効率を加味した押出機電動機消費電力量(kWh/kg)を測定し、混錬エネルギーとした。
【0065】
[オートクレーブ試験]
得られたシートをJIS 6号ダンベル形状に打ち抜き試験片を作製した。
試験片に対して、JIS K7161に準拠し、温度25℃、相対湿度50%、速度500mm/minで引張試験を行い、得られた応力ひずみ曲線から破断したときの伸びを求め、その伸びを処理前破断伸び(EB)とした。
次いで、別の試験片を冷媒、エアコン用オイルおよび水とともにオートクレーブに封入し、150℃、168h、3.1MPa条件下で静置した。その後、オートクレーブから試験片を取り出し、その試験片について破断伸びを測定し、それを処理後EBとした。
EB残存率は、次式により算出した。
EB残存率(%)=処理後EB/処理前EB×100
【0066】
製造の条件及び測定結果を、以下の表5に示した。なお、表5において、各例の10%モジュラス、酸素透過係数、混錬エネルギー、及びオートクレーブ試験前後のEB残存率の値は、測定値ではなく参考例1における測定値を100とした場合の相対値として記載している。
【0067】
【0068】
本開示は、以下の発明を包含する。
発明[1] 熱可塑性樹脂を含むマトリックス中にエラストマーがドメインとして存在する海島構造を有する冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物であって、熱可塑性樹脂組成物はエラストマー100質量部、熱可塑性樹脂30~100質量部ならびにハイドロタルサイト類および/またはマグネシウム・アルミニウム固溶体0.5~10質量部を含み、熱可塑性樹脂が熱可塑性樹脂100質量部を基準として50~100質量部のポリアミドを含み、エラストマーがポリイソブチレン骨格を有するエラストマーを含む、冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
発明[2] 熱可塑性樹脂組成物が亜鉛華、フェニレンジアミン系またはキノリン系老化防止剤および加工助剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、発明[1]に記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
発明[3] ポリアミドが、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド6/66共重合体、ポリアミド6/12共重合体、ポリアミド46、ポリアミド6T、ポリアミド9TおよびポリアミドMXD6からなる群から選ばれる少なくとも1種である、発明[1]または[2]に記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
発明[4] ポリイソブチレン骨格を有するエラストマーが、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、イソブチレン-モノアルキルスチレン共重合ゴム、ハロゲン化イソブチレン-モノアルキルスチレン共重合ゴムおよびスチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種である、発明[1]~[3]のいずれか一つに記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
発明[5] ハイドロタルサイト類および/またはマグネシウム・アルミニウム固溶体が100m2/g以上の比表面積を有する、発明[1]~[4]のいずれか一つに記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
[6] 第1の脂肪酸金属塩および第1の脂肪酸金属塩よりも融点が低い第2の脂肪酸金属塩を更に含有している、発明[1]~[5]のいずれか一つに記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
[7] 第1の脂肪酸金属塩の融点が150℃以上である、発明[6]に記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
[8] 第2の脂肪酸金属塩の融点が150℃未満である、発明[7]に記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
[9] 第1の脂肪酸金属塩が、エラストマー100質量部を基準として0.5~5.0質量部である、発明[6]~[8]のいずれか一つに記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
[10] 第2の脂肪酸金属塩が、エラストマー100質量部を基準として0.5~5.0質量部である、発明[6]~[9]のいずれか一つに記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
[11] 第1の脂肪酸金属塩の質量Wd1と第2の脂肪酸金属塩の質量Wd2との比Wd1/Wd2が0.5~5.0である、発明[6]~[10]のいずれか一つに記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
[12] 第1の脂肪酸金属塩が、ステアリン酸カルシウム、12-ヒドロキシステアリン酸亜鉛および12-ヒドロキシステアリン酸リチウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、発明[6]~[11]のいずれか一つに記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
[13] 第2の脂肪酸金属塩が、ステアリン酸亜鉛およびステアリン酸マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、発明[6]~[12]のいずれか一つに記載の冷媒輸送ホース用熱可塑性樹脂組成物。
発明[14] 発明[1]~[13]のいずれか一つに記載の熱可塑性樹脂組成物からなる層を含む冷媒輸送ホース。
発明[15] 冷媒輸送ホースが内層、補強層および外層を含み、内層が発明[1]~[13]のいずれか一つに記載の熱可塑性樹脂組成物からなる層である、発明[14]に記載の冷媒輸送ホース。
発明[16] 加硫ゴムからなる層を含まない発明[14]または[15]に記載の冷媒輸送ホース。