(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175641
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】排泄物処理材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A01K 1/015 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
A01K1/015 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023197238
(22)【出願日】2023-11-21
(62)【分割の表示】P 2023092836の分割
【原出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】321000026
【氏名又は名称】株式会社大貴
(74)【代理人】
【識別番号】100179327
【弁理士】
【氏名又は名称】大坂 憲正
(72)【発明者】
【氏名】畑中 忍
【テーマコード(参考)】
2B101
【Fターム(参考)】
2B101AA13
2B101AA20
2B101GB05
(57)【要約】
【課題】pH指示薬の選択の自由度が高い排泄物処理材、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】排泄物処理材は、動物の尿を吸収する粒状体10を備えている。粒状体10は、添加剤12、及び指示薬14を含有している。添加剤12は、動物の尿に溶解して当該尿のpHを変動させる。指示薬14は、添加剤12が溶解した尿のpHに応じて変色する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の尿を吸収する粒状体を備え、
前記粒状体は、
前記尿に溶解して当該尿のpHを変動させる添加剤と、
前記添加剤が溶解した前記尿のpHに応じて変色するpH指示薬と、を含有することを特徴とする排泄物処理材。
【請求項2】
請求項1に記載の排泄物処理材において、
前記添加剤は、前記尿のpHが正常値であるときに前記pH指示薬が第1の色を呈するとともに、当該尿のpHが異常値であるときに当該pH指示薬が前記第1の色と異なる第2の色を呈するように、当該尿のpHを変動させる排泄物処理材。
【請求項3】
請求項1に記載の排泄物処理材において、
前記添加剤は、固体の状態で前記粒状体に含有されている排泄物処理材。
【請求項4】
請求項1に記載の排泄物処理材において、
前記添加剤の水溶液のpHは、当該添加剤が溶解する前の前記尿のpHよりも高い排泄物処理材。
【請求項5】
請求項1に記載の排泄物処理材において、
前記添加剤は、ホウ砂である排泄物処理材。
【請求項6】
請求項1に記載の排泄物処理材において、
前記粒状体に占める前記添加剤の重量割合は、0.1%以上5%以下である排泄物処理材。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載の排泄物処理材において、
前記pH指示薬は、pHに応じて変色する天然色素を含有する排泄物処理材。
【請求項8】
請求項7に記載の排泄物処理材において、
前記天然色素は、クルクミン、又はアントシアニンである排泄物処理材。
【請求項9】
請求項1乃至6の何れかに記載の排泄物処理材において、
前記粒状体に占める前記pH指示薬の重量割合は、1%以上20%以下である排泄物処理材。
【請求項10】
請求項1乃至6の何れかに記載の排泄物処理材において、
前記粒状体は、有機物を主材料とする排泄物処理材。
【請求項11】
請求項10に記載の排泄物処理材において、
前記粒状体は、紙類を主材料とする排泄物処理材。
【請求項12】
請求項1乃至6の何れかに記載の排泄物処理材において、
前記粒状体は、表面が被覆されていない造粒物である排泄物処理材。
【請求項13】
動物の尿を吸収する粒状体を形成する粒状体形成工程を含み、
前記粒状体形成工程においては、前記尿に溶解して当該尿のpHを変動させる添加剤と、前記添加剤が溶解した前記尿のpHに応じて変色するpH指示薬と、を含有する前記粒状体を形成することを特徴とする排泄物処理材の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記粒状体形成工程においては、前記尿のpHが正常値であるときに前記pH指示薬が第1の色を呈するとともに当該尿のpHが異常値であるときに当該pH指示薬が前記第1の色と異なる第2の色を呈するように当該尿のpHを変動させる前記添加剤を含有する前記粒状体を形成する排泄物処理材の製造方法。
【請求項15】
請求項13に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記粒状体形成工程においては、前記添加剤が固体の状態で含有されている前記粒状体を形成する排泄物処理材の製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記粒状体形成工程は、前記粒状体を構成する造粒物を形成する造粒工程を含み、
前記造粒工程においては、造粒材料を無加水で造粒することにより前記造粒物を形成する排泄物処理材の製造方法。
【請求項17】
請求項13に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記添加剤の水溶液のpHは、当該添加剤が溶解する前の前記尿のpHよりも高い排泄物処理材の製造方法。
【請求項18】
請求項13に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記添加剤は、ホウ砂である排泄物処理材の製造方法。
【請求項19】
請求項13に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記粒状体形成工程においては、前記粒状体に占める前記添加剤の重量割合が0.1%以上5%以下となるように、当該粒状体を形成する排泄物処理材の製造方法。
【請求項20】
請求項13乃至19の何れかに記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記pH指示薬は、pHに応じて変色する天然色素を含有する排泄物処理材の製造方法。
【請求項21】
請求項20に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記天然色素は、クルクミン、又はアントシアニンである排泄物処理材の製造方法。
【請求項22】
請求項13乃至19の何れかに記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記粒状体形成工程においては、前記粒状体に占める前記pH指示薬の重量割合が1%以上20%以下となるように、当該粒状体を形成する排泄物処理材の製造方法。
【請求項23】
請求項13乃至19の何れかに記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記粒状体形成工程においては、有機物を主材料とする前記粒状体を形成する排泄物処理材の製造方法。
【請求項24】
請求項23に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記粒状体形成工程においては、紙類を主材料とする前記粒状体を形成する排泄物処理材の製造方法。
【請求項25】
請求項13乃至19の何れかに記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記粒状体形成工程においては、表面が被覆されていない造粒物である前記粒状体を形成する排泄物処理材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排泄物処理材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の排泄物処理材としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。同文献に記載された排泄物処理材は、動物の尿を吸収する複数の粒状体からなる。各粒状体は、不織布粉砕物及び糊剤に加えて、pH指示薬を含有している。そのため、この排泄物処理材においては、動物の尿のpHに応じて粒状体が変色する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようにpH指示薬は、動物の尿のpHに応じて粒状体を変色させるために含有されている。それゆえ、pH指示薬は、当該排泄物処理材を使用する動物(対象動物)の尿のpHを変色域に含むものでなければならないという制約がある。かかる制約は、従来の排泄物処理材においてpH指示薬の選択の自由度を低下させる要因となっていた。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、pH指示薬の選択の自由度が高い排泄物処理材、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による排泄物処理材は、動物の尿を吸収する粒状体を備え、上記粒状体は、上記尿に溶解して当該尿のpHを変動させる添加剤と、上記添加剤が溶解した上記尿のpHに応じて変色するpH指示薬と、を含有することを特徴とする。
【0007】
この排泄物処理材においては、尿に溶解して当該尿のpHを変動させる添加剤を含有する粒状体が設けられている。この場合、pH指示薬は、元の尿(添加剤が溶解する前の尿)のpHを変色域に含まなくても、添加剤が溶解した尿のpHを変色域に含んでいれば充分である。これにより、pH指示薬が対象動物の尿のpHを変色域に含むものでなければならないという制約から免れることができる。
【0008】
また、本発明による排泄物処理材の製造方法は、動物の尿を吸収する粒状体を形成する粒状体形成工程を含み、上記粒状体形成工程においては、上記尿に溶解して当該尿のpHを変動させる添加剤と、上記添加剤が溶解した上記尿のpHに応じて変色するpH指示薬と、を含有する上記粒状体を形成することを特徴とする。
【0009】
この製造方法においては、尿に溶解して当該尿のpHを変動させる添加剤を含有する粒状体が形成される。この場合、pH指示薬は、元の尿のpHを変色域に含まなくても、添加剤が溶解した尿のpHを変色域に含んでいれば充分である。これにより、pH指示薬が対象動物の尿のpHを変色域に含むものでなければならないという制約から免れることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、pH指示薬の選択の自由度が高い排泄物処理材、及びその製造方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明による排泄物処理材の一実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明による排泄物処理材の一実施形態を示す模式図である。排泄物処理材1は、猫や犬等の動物の排泄物(主に尿)の処理に用いられる排泄物処理材である。排泄物処理材1は、複数の粒状体10を備えている。排泄物処理材1は、例えば、複数の粒状体10が箱状のトイレに敷設された状態で使用される。
【0014】
各粒状体10は、吸水性を有しており、動物の尿を吸収する。すなわち、各粒状体10は、その内部に尿を取り込んで保持する。粒状体10が吸水性を有するというには、次の試験により測定される吸水率が40%以上であることが必要である。まず、内径10cm、目開き1mmの篩に50g相当の粒状体10(サンプル)を入れる。篩の下には、空のビーカーを設置する。そして、サンプルに対し、外筒の内径3cm、筒先の内径4mmのシリンジ(テルモ社製60mlシリンジ)を用いて、30mlの水を10秒かけて滴下する。1分間放置した後、ビーカー内の水量を計測する。滴下した水量(30ml)から計測された水量を引いた値の、滴下した水量に対する割合をもって吸水率とする。すなわち、ビーカー内の水量が18ml以下であれば、吸水率が40%以上となるため、粒状体10が吸水性を有するといえる。
【0015】
各粒状体10は、粒状をしている。かかる粒状の形状としては、例えば、球、円柱、又は楕円体が挙げられる。各粒状体10の粒径は、例えば、5mm以上30mm以下である。ここで、粒状体10の粒径は、当該粒状体10を内包し得る最小の球の直径として定義される。各粒状体10は、有機物を主材料とすることが好ましい。ここで、粒状体10の主材料とは、粒状体10を構成する材料のうち、当該粒状体10に占める重量割合が最大のものをいう。粒状体10の主材料である有機物としては、例えば、紙類、植物類、プラスチック類、又は有機汚泥類が挙げられる。
【0016】
紙類は、パルプを主体とする材料をいう。紙類としては、例えば、通常の紙(紙粉)やパルプの他にも、フラッフパルプ、塩ビ壁紙由来の紙(塩ビ壁紙の製造時又は分級時に発生する紙)、石膏ボード由来の紙(石膏ボードの製造時又は分級時に発生する紙)、又は衛生用品由来の紙(紙を含む衛生用品の製造時又は分級時に発生する紙)を用いることができる。紙を含む衛生用品としては、例えば、紙おむつ、生理用ナプキン、尿取りパッド、又は衛生用紙(ティッシュペーパー、トイレットペーパー、ペーパータオル等)が挙げられる。植物類としては、例えば、木粉、大鋸屑、又は植物性残渣(茶殻、オカラ等)を用いることができる。プラスチック類としては、例えば、通常のプラスチックの他にも、塩ビ壁紙由来のプラスチック(塩ビ壁紙の製造時又は分級時に発生するプラスチック)、又は衛生用品由来のプラスチック(プラスチックを含む衛生用品の製造時又は分級時に発生するプラスチック)を用いることができる。プラスチックを含む衛生用品としては、例えば、紙おむつ、生理用ナプキン、尿取りパッド、又は衛生マスクが挙げられる。有機汚泥類としては、例えば、製紙スラッジ、又はパルプスラッジを用いることができる。
【0017】
図2は、粒状体10を示す模式図である。各粒状体10は、添加剤12、及び指示薬14を含有している。添加剤12は、尿に溶解して当該尿のpHを変動させる。すなわち、添加剤12が溶解した尿(尿を溶媒とし添加剤12を溶質とする溶液)のpHは、元の尿(添加剤12が溶解する前の尿)のpHと異なる。本実施形態において添加剤12の水溶液のpHは、元の尿のpHよりも高い。添加剤12としては、例えばホウ砂(四ホウ酸ナトリウム十水和物)を用いることができる。添加剤12は、固体の状態で粒状体10に含有されている。すなわち、使用前(尿を吸収する前)の粒状体10において添加剤12は、液体に溶けておらず、乾燥状態にある。粒状体10に含有されている添加剤12の全てが、固体の状態にあることが好ましい。
【0018】
指示薬14は、pH指示薬であり、添加剤12が溶解した尿のpHに応じて変色する。指示薬14は、添加剤12が溶解した尿のpHを変色域に含んでいる。指示薬14は、元の尿のpHを変色域に含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。本実施形態において指示薬14は、pHに応じて変色する天然色素を含有している。指示薬14としては、例えば、ウコンパウダー、又はバタフライピーパウダーを用いることができる。ウコンパウダー及びバタフライピーパウダーは、天然色素として、それぞれクルクミン及びアントシアニンを含有している。
【0019】
添加剤12は、尿のpHが正常値であるときに指示薬14が第1の色を呈するとともに、尿のpHが異常値であるときに指示薬14が第2の色を呈するように、尿のpHを変動させてもよい。pHの変動量は、添加剤12の種類や含有量等により調整することができる。第2の色は、第1の色と異なる。第1及び第2の色は、例えば第1の色が黄色又は橙色で第2の色が赤色である場合のように、色相が相異なることが好ましい。
【0020】
具体例として、排泄物処理材1の対象動物が猫であり、指示薬14がウコンパウダーである場合を考える。猫の尿のpHの正常値は、6.0以上6.8以下である。また、ウコンパウダー(クルクミン)は、pHが約8.5以上になると赤色に変色する。それゆえ、元の尿のpHが6.8のときに変動後の尿のpHが約8.5になるように、添加剤12を含有させればよい。そうすることにより、元の尿のpHが6.8以下の正常値のときは指示薬14が黄色又は橙色を呈する一方で、元の尿のpHが6.8を超える異常値であるときは指示薬14が赤色を呈することになる。
【0021】
本実施形態において粒状体10は、上述の主材料、添加剤12、及び指示薬14のみからなる。各粒状体10に占める主材料、添加剤12、及び指示薬14の重量割合は、例えば、それぞれ80%以上95%以下、0.1%以上5%以下、及び1%以上20%以下である。粒状体10の具体的な組成は、例えば、パルプ89重量%、ホウ砂(添加剤12)1重量%、ウコンパウダー又はバタフライピーパウダー(指示薬14)10重量%である。
【0022】
各粒状体10は、表面が被覆されていない造粒物である。詳細には、各粒状体10は、造粒材料(各粒状体10を構成する材料)を造粒してなる造粒物である。各粒状体10には、被覆層(造粒物の表面の一部又は全体を覆う層)が設けられていない。それゆえ、各粒状体10は、均質な造粒物からなる単層構造をしている。
【0023】
排泄物処理材1においては、動物が排尿すると、その尿は、粒状体10に吸収される。すると、粒状体10に吸収された尿に添加剤12が溶解し、当該尿のpHが変動する。そして、変動後の尿のpHに応じて指示薬14が変色し、それにより粒状体10も変色する。これにより、ユーザ(動物の飼主等)は、指示薬14の呈色を確認することができる。
【0024】
続いて、本発明による排泄物処理材の製造方法の一実施形態として、排泄物処理材1の製造方法の一例を説明する。この製造方法は、粒状体形成工程を含んでいる。
【0025】
粒状体形成工程は、粒状体10を形成する工程である。粒状体形成工程は、粒状体10を構成する造粒物を形成する造粒工程を含んでいる。造粒工程においては、造粒装置を用いて造粒材料(主材料、添加剤12及び指示薬14)を造粒することにより、造粒物を形成する。本実施形態において造粒材料は、無加水で造粒される。すなわち、造粒の前後を通じて、造粒材料に対する加水は行われない。造粒装置としては、例えば押出造粒機を用いることができる。造粒に先立って、造粒材料には、粉砕、混錬等の前処理が必要に応じて行われる。また、造粒後には、篩分け(分粒)、乾燥等の後処理が必要に応じて行われる。以上により、複数の粒状体10からなる排泄物処理材1が得られる。
【0026】
本実施形態の効果を説明する。本実施形態においては、尿に溶解して当該尿のpHを変動させる添加剤12を含有する粒状体10が形成される。この場合、指示薬14は、元の尿のpHを変色域に含まなくても、添加剤12が溶解した尿のpHを変色域に含んでいれば充分である。これにより、指示薬14が対象動物の尿のpHを変色域に含むものでなければならないという制約から免れることができる。したがって、指示薬14の選択の自由度が高い排泄物処理材1、及びその製造方法が実現されている。
【0027】
敷衍すると、元の尿のpHは、コントロールすることができない。そのため、pH指示薬の変色域を元の尿のpHに合わせようとすると、自ずとpH指示薬の選択の幅が狭まってしまう。これに対し、添加剤12が溶解した尿のpHは、上述のとおり添加剤12によるpHの変動量を調整することにより、コントロールすることができる。そのため、pH指示薬の変色域を変動後の尿のpHに合わせるようにすれば、pH指示薬の選択の幅を広げることができる。それが、排泄物処理材1において指示薬14の選択の自由度が高い所以である。
【0028】
尿のpHが正常値であるときに指示薬14が第1の色を呈するとともに尿のpHが異常値であるときに指示薬14が第2の色を呈する場合、指示薬14の呈色の違いにより尿の異常を容易に判別することができる。このように尿のpHが正常値か否かで指示薬14が異なる色を呈するようにした場合、排泄物処理材1は、対象動物の健康状態を把握するのに役立つ。
【0029】
ただし、尿のpHが正常値か否かで指示薬14が異なる色を呈することは、必須でない。pHが正常値か否かにかかわらず、粒状体10が尿を吸収したときに指示薬14が変色すれば、使用済みの粒状体10(尿を吸収した粒状体10)と未使用の粒状体10(尿を吸収していない粒状体10)とを視覚的に区別することができる。このことは、多数の粒状体10の中から使用済みの粒状体10を選択的に取り除くのに役立つ。
【0030】
添加剤12は、固体の状態で粒状体10に含有されている。この場合、添加剤12は、尿に溶解した後に初めて指示薬14と反応する。これにより、粒状体10の使用前に指示薬14が変色してしまう事態を回避することができる。
【0031】
造粒工程においては、造粒材料が無加水で造粒されている。これにより、添加剤12が固体の状態のまま含有された粒状体10を容易に形成することができる。
【0032】
添加剤12の水溶液のpHは、元の尿のpHよりも高い。この場合、添加剤12が溶解した後の尿のpHを元の尿のpHよりも高くすることができる。これにより、元の尿が酸性であっても、アルカリ領域に変色域を有するpH指示薬を指示薬14として用いることが可能となる。
【0033】
ホウ砂は、水溶液の濃度が変わっても、pHが大きく変化しない性質を有している。例えば、ホウ砂の水溶液(20℃)のpHは、濃度が0.1%のとき9.3、1.0%のとき9.2、2.0%のとき9.2である。このため、添加剤12としてホウ砂を用いた場合、尿のpHの変動量を微調整しやすいという利点がある。
【0034】
指示薬14は、pHに応じて変色する天然色素を含有している。天然色素は、BTB溶液等の合成試薬に比して、一旦変色すると退色しにくい性質を有している。このため、動物の排尿から長時間(例えば8時間程度)が経過した後であっても、指示薬14の呈色を確認しやすい。動物の排尿はユーザの外出中や睡眠中に行われることも多いため、このように長時間経過後でも指示薬14の呈色を確認できることは有用である。
【0035】
指示薬14の含有量が多い方が、指示薬14の呈色を視認しやすい。かかる観点から、粒状体10に占める指示薬14の重量割合は、1%以上であることが好ましい。他方、指示薬14の含有量が多すぎると、粒状体10の本来の機能である吸水性が損なわれかねない。かかる観点から、上記重量割合は、20%以下であることが好ましい。
【0036】
粒状体10が有機物を主材料とする場合、焼却処分に適した粒状体10を得ることができる。このことは、使用済みの粒状体10の処分の便宜に資する。
【0037】
粒状体10が紙類を主材料とする場合、主材料が白色又はそれに近い色になるため、指示薬14の呈色を視認しやすいという利点がある。
【0038】
粒状体10は、表面が被覆されていない造粒物である。この場合、造粒物(粒状体10)の表面の全体が露出するため、造粒物の呈色(指示薬14の呈色)を視認しやすい。
【0039】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。上記実施形態においては、添加剤12としてホウ砂を用いる場合を例示した。しかし、添加剤12としては、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、又はリン酸ナトリウムを用いてもよい。
【0040】
上記実施形態においては、添加剤12の水溶液のpHが、元の尿のpHよりも高い場合を例示した。しかし、添加剤12の水溶液のpHは、元の尿のpHより低くてもよい。その場合、添加剤12が溶解した後の尿のpHを元の尿のpHよりも低くすることができる。
【0041】
上記実施形態においては、指示薬14が天然色素を含有する場合を例示した。しかし、指示薬14としては、BTB溶液、フェノールフタレイン溶液等の合成試薬を用いてもよい。
【0042】
上記実施形態においては、粒状体10が、被覆されていない造粒物のみからなる単層構造を有する場合を例示した。しかし、粒状体10は、造粒物及び被覆層からなる複層構造(二層構造)を有していてもよい。すなわち、指示薬14の呈色を視認できる限り、造粒物の表面が被覆されていてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 排泄物処理材
10 粒状体
12 添加剤
14 指示薬(pH指示薬)