(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175644
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】自動車用曲面カバープレートの構造と製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 1/113 20150101AFI20241211BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20241211BHJP
B32B 1/00 20240101ALI20241211BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
G02B1/113
G02B5/22
B32B1/00 Z
B32B9/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024003726
(22)【出願日】2024-01-15
(31)【優先権主張番号】112121125
(32)【優先日】2023-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】523433790
【氏名又は名称】台亞半導體股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Taiwan-Asia Semiconductor Corporation
【住所又は居所原語表記】No. 1, Li-Hsin 5th Rd., Hsinchu Science Park, Hsinchu City 30078, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】劉韋辰
(72)【発明者】
【氏名】陳聖偉
【テーマコード(参考)】
2H148
2K009
4F100
【Fターム(参考)】
2H148CA01
2H148CA14
2H148CA17
2H148CA29
2K009AA02
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2K009CC02
2K009CC03
2K009CC06
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4F100AA05E
4F100AA12E
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4F100JN06D
4F100JN06E
4F100JN18E
4F100YY00E
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コーティングの均一性を向上させた自動車用曲面カバープレートの製造方法。
【解決手段】自動車用曲面カバープレートの製造方法であり、平板構造であって、対向する第1面と第2面を有し、高分子ポリマー材料で作られているカバープレートを用意するステップと、第1面に硬化膜を形成するステップと、第2面にアンチグレア膜を形成するステップと、硬化膜の一部の領域に印刷層を形成するステップと、硬化膜と印刷層上に透明導電性検知膜を形成するステップと、以上のステップを経たカバープレートにホットプレス処理を行うことにより、カバープレートを一次元方向に湾曲した曲面構造に形成し、第1面と第2面を曲面に形成し、曲面構造の曲率半径を500mm~1000mmの間にするステップと、第2面に蒸着処理を行うことにより、アンチグレア膜上に反射防止膜を形成するステップと、反射防止膜上に指紋防止膜を形成するステップとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用曲面カバープレートの製造方法であって、
平板構造であって、対向する第1面と第2面を有し、高分子ポリマー材料で作られているカバープレートを用意するステップと、
前記第1面に硬化膜を形成するステップと、
前記第2面にアンチグレア膜を形成するステップと、
前記硬化膜の一部の領域に印刷層を形成するステップと、
前記硬化膜と前記印刷層上に透明導電性検知膜を形成するステップと、
以上のステップを経た前記カバープレートにホットプレス処理を行うことにより、前記カバープレートを一次元方向に湾曲した曲面構造に形成し、前記第1面と前記第2面を曲面に形成し、前記曲面構造の曲率半径を500mm~1000mmの間にするステップと、
前記第2面に蒸着処理を行うことにより、前記アンチグレア膜上に反射防止膜を形成するステップと、
前記反射防止膜上に指紋防止膜を形成するステップと、を含む自動車用曲面カバープレートの製造方法。
【請求項2】
前記アンチグレア膜上に前記反射防止膜を形成するステップと前記反射防止膜上に前記指紋防止膜を形成するステップとでは、前記カバープレートを円弧状の支持体に沿って移動させ、蒸着源によって前記カバープレートの前記第2面に対して蒸着処理を行い、前記カバープレートを常に前記蒸着源の蒸着角度に対して垂直に保つことを特徴とする請求項1に記載の自動車用曲面カバープレートの製造方法。
【請求項3】
前記アンチグレア膜上に前記反射防止膜を形成するステップと前記反射防止膜上に前記指紋防止膜を形成するステップとでは、載置台と自由回転軸を有する載置治具を使用し、前記カバープレートを前記載置台に乗せ、前記自由回転軸を前記円弧状の支持体に沿って移動させ、前記円弧状の支持体の任意の位置で自由に回転させることで、前記蒸着源に対する前記カバープレートの配置角度を調整することを特徴とする請求項2に記載の自動車用曲面カバープレートの製造方法。
【請求項4】
前記アンチグレア膜上に前記反射防止膜を形成するステップの前に、前記第2面に対して電子銃または熱蒸着処理を行い、前記アンチグレア膜上に接着層を形成するステップがあることを特徴とする請求項1に記載の自動車用曲面カバープレートの製造方法。
【請求項5】
前記接着層は、主に一酸化ケイ素または酸化アルミニウムを含むことを特徴とする請求項4に記載の自動車用曲面カバープレートの製造方法。
【請求項6】
前記反射防止膜は、交互に積層された少なくとも1つの高屈折率層と少なくとも1つの低屈折率層を含み、前記高屈折率層は、主に五酸化ニオブ、二酸化チタン、五酸化タンタル、窒化ケイ素、二酸化ハフニウムの少なくとも一つを含み、前記低屈折率層は、主に二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二フッ化マグネシウムの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の自動車用曲面カバープレートの製造方法。
【請求項7】
前記反射防止膜の積層総数は3~9であることを特徴とする請求項6に記載の自動車用曲面カバープレートの製造方法。
【請求項8】
前記反射防止膜は、波長範囲380nm~780nmに対応することを特徴とする請求項1に記載の自動車用曲面カバープレートの製造方法。
【請求項9】
一次元方向に湾曲した曲面構造であり、対向する第1面と第2面を有し、高分子ポリマー材料で作られており、前記曲面構造の曲率半径が500mm~1000mmの間であるカバープレートと、
前記第1面に形成される硬化膜と、
前記硬化膜の一部の領域に形成される印刷層と、
前記硬化膜と前記印刷層上に形成される透明導電性検知膜と、
前記第2面に形成されるアンチグレア膜と、
前記アンチグレア膜に形成される反射防止膜と、
前記反射防止膜に形成される指紋防止膜と、を含む自動車用曲面カバープレートの構造。
【請求項10】
前記アンチグレア膜と前記反射防止膜との間に位置する接着層をさらに含み、前記接着層は、主に一酸化ケイ素または酸化アルミニウムを含むことを特徴とする請求項9に記載の自動車用曲面カバープレートの構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用カバープレートと製造方法に関し、特に、曲面構造を有し、コーティングの均一性を向上させた自動車用曲面カバープレートと製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車製造技術の進歩に伴い、自動車用のパネルの機能や構造設計は多様化している。通常、自動車用のパネルの表示面にはガラスカバープレートが貼り付けられている。ガラスカバープレートは、自動車用のパネルを異物による傷から保護する。一方、消費者が識別できるように、ガラスカバープレートに商標や特定のパターンを印刷することも可能である。
【0003】
従来の自動車用のパネルは、ほとんどが平らなものだった。近年、外観や視野角の広さを考慮して、自動車用のパネルの多くは、曲面デザインを採用し始めている。しかし、ガラスカバープレートの可塑性が低いため、曲げる角度が小さすぎて、現在の自動車用のパネルの外観要件に対応できず、また、重くてかつ破損の危険性がある。なお、曲面を有するガラスカバープレートの外面に蒸着処理を行って反射防止膜を形成する工程では、コーティング設備の構造的、技術的な制約により、形成される反射防止膜の膜厚均一性が悪い場合が多い。
【0004】
従って、どのように前述の問題を改善できる自動車用曲面カバープレートと製造方法を設計するかは、研究に値する課題である。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、曲面構造を有し、コーティングの均一性を向上させた自動車用曲面カバープレートの製造方法を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、前記自動車用曲面カバープレートの製造方法により製造された自動車用曲面カバープレートの構造を提供することにある。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る自動車用曲面カバープレートの製造方法は、平板構造であって、対向する第1面と第2面を有し、高分子ポリマー材料で作られているカバープレートを用意するステップと、第1面に硬化膜を形成するステップと、第2面にアンチグレア膜を形成するステップと、硬化膜の一部の領域に印刷層を形成するステップと、硬化膜と印刷層上に透明導電性検知膜を形成するステップと、以上のステップを経たカバープレートにホットプレス処理を行うことにより、カバープレートを一次元方向に湾曲した曲面構造に形成し、第1面と第2面を曲面に形成し、曲面構造の曲率半径を500mm~1000mmの間にするステップと、第2面に蒸着処理を行うことにより、アンチグレア膜上に反射防止膜を形成するステップと、反射防止膜上に指紋防止膜を形成するステップと、を含む自動車用曲面カバープレートの製造方法である。
【0008】
本発明の実施例において、アンチグレア膜上に反射防止膜を形成するステップと反射防止膜上に指紋防止膜を形成するステップとでは、カバープレートを円弧状の支持体に沿って移動させ、蒸着源によってカバープレートの第2面に対して蒸着処理を行い、カバープレートを常に蒸着源の蒸着角度に対して垂直に保つ。
【0009】
本発明の実施例において、アンチグレア膜上に反射防止膜を形成するステップと反射防止膜上に指紋防止膜を形成するステップとでは、載置台と自由回転軸を有する載置治具を使用し、カバープレートを載置台に乗せ、自由回転軸を円弧状の支持体に沿って移動させ、円弧状の支持体の任意の位置で自由に回転させることで、蒸着源に対するカバープレートの配置角度を調整する。
【0010】
本発明の実施例において、アンチグレア膜上に反射防止膜を形成するステップの前に、第2面に対して電子銃または熱蒸着処理を行い、アンチグレア膜上に接着層を形成するステップがある。
【0011】
本発明の実施例において、接着層は、主に一酸化ケイ素または酸化アルミニウムを含む。
【0012】
本発明の実施例において、反射防止膜は、交互に積層された少なくとも1つの高屈折率層と少なくとも1つの低屈折率層を含み、高屈折率層は、主に五酸化ニオブ、二酸化チタン、五酸化タンタル、窒化ケイ素、二酸化ハフニウムの少なくとも一つを含み、低屈折率層は、主に二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二フッ化マグネシウムの少なくとも一つを含む。
【0013】
本発明の実施例において、反射防止膜の積層総数は3~9である。
【0014】
本発明の実施例において、反射防止膜は、波長範囲380nm~780nmに対応する。
【0015】
本発明に係る自動車用曲面カバープレートの構造は、カバープレート、硬化膜、印刷層、透明導電性検知膜、アンチグレア膜、反射防止膜、及び指紋防止膜を含む。カバープレートは、一次元方向に湾曲した曲面構造であり、対向する第1面と第2面を有し、高分子ポリマー材料で作られており、曲面構造の曲率半径は、500mm~1000mmの間であり、硬化膜は、第1面に形成されており、印刷層は、硬化膜の一部の領域に形成されており、透明導電性検知膜は、硬化膜と印刷層上に形成されており、アンチグレア膜は、第2面に形成されており、反射防止膜は、アンチグレア膜上に形成されており、指紋防止膜は、反射防止膜上に形成されている。
【0016】
本発明の実施例において、自動車用曲面カバープレートの構造は、アンチグレア膜と反射防止膜との間に位置する接着層をさらに含み、接着層は、主に一酸化ケイ素または酸化アルミニウムを含む。
【0017】
それによって、本発明に係る自動車用曲面カバープレートの構造は、高分子ポリマー材料で作られた一次元方向に湾曲したカバープレートによって、必要な曲面曲率を満たすために高い可塑性が得られ、全体の重量が軽減され、破損の問題を避けることができる。また、本発明に係る自動車用曲面カバープレートの構造において、一次元方向に湾曲したカバープレート上に形成された反射防止膜は、より良好な膜厚均一性を有する。また、自動車用曲面カバープレートの構造全体は、製造が容易であり、環境試験の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る自動車用曲面カバープレートの構造の製造方法を示すフローチャート
【
図2】本発明に係る自動車用曲面カバープレートの構造の製造方法において、各ステップに対応する構造を示す模式図
【
図3】本発明に係る自動車用曲面カバープレートの構造の製造方法において、カバープレートの第2面上に反射防止膜を形成する様子を示す模式図
【
図4】本発明に係る自動車用曲面カバープレートの構造の製造方法に使用される載置治具を示す模式図
【
図5】本発明の他の実施例に係る自動車用曲面カバープレートの構造の製造方法を示すフローチャート
【
図6】本発明に係る自動車用曲面カバープレートの構造の製造方法で形成された反射防止膜の構造を示す模式図
【
図7A】本発明の第1実施例に係る自動車用曲面カバープレートの構造の製造方法で形成された反射防止膜の反射防止スペクトル図
【
図7B】本発明の第2実施例に係る自動車用曲面カバープレートの構造の製造方法で形成された反射防止膜の反射防止スペクトル図
【
図8】本発明に係る自動車用曲面カバープレートの構造を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0019】
各態様および実施形態は単なる例示であり、限定的なものではないため、本明細書を参照した後、通常の知識を有する者により、本発明の範囲から逸脱することなく、他の態様および実施形態がなされ得る。以下の詳細な説明及び特許出願の範囲によれば、これらの実施形態の特徴及び利点がより明らかになるであろう。
【0020】
本明細書では、「1つ」または「1個」という用語は、本明細書に記載される要素および構成要素を記述するために使用される。これは便宜上であり、本発明の範囲に一般的な意味を持たせるためである。従って、別の意味を指すものでない限り、そのような説明は、1つまたは少なくとも1つを含むものと理解され、単数形には複数形も含まれる。
【0021】
本明細書では、「第1」や「第2」という序数詞の用語は、主に同一または類似の構成要素や構造を区別または参照するために使用されるものであり、必ずしもこれらの構成要素や構造の空間的または時間的な順序付けを意味するものではない。特定の状況や構成では、本発明の実施に影響を与えることなく、序数詞を互換的に使用できることに留意されたい。
【0022】
本明細書では、「含む」、「有する」、またはその他の類似の用語は、非排他的な包含を対象とする。例えば、複数の要素を含む構成要素または構造は、本明細書に列挙された要素だけに限定されるものではなく、明示的に列挙されていないが、構成要素や構造に固有の他の要素を含んでいてもよい。
【0023】
図1及び
図2を参照して説明する。
図1は、本発明に係る自動車用曲面カバープレートの構造の製造方法を示すフローチャートである。
図2は、本発明に係る自動車用曲面カバープレートの構造の製造方法において、各ステップに対応する構造を示す模式図である。
図1及び
図2に示すように、本発明に係る自動車用曲面カバープレートの構造の製造方法は、以下のステップを含む:
【0024】
ステップS1:平板構造であって、対向する第1面と第2面を有し、高分子ポリマー材料で作られているカバープレートを用意する。
【0025】
まず、本発明は、自動車用曲面カバープレートの構造1のベース構造部材として、カバープレート10を用意する。カバープレート10は、平板構造である。カバープレート10は、対向する第1面11と第2面12を有する。カバープレート10は、主に、ポリカーボネート(Poly Carbonate、PC)やポリメチルメタクリレート(PolyMethyl MethAcrylate、PMMA)などの透明な高分子ポリマー材料で作られている。カバープレート10は、他の類似の材料で作られてもよい。
【0026】
ステップS2:第1面に硬化膜を形成する。
【0027】
前記ステップS1でカバープレート10を用意した後、次に、本発明は、カバープレート10の第1面11にコーティング処理を行い、カバープレート10の第1面11に硬化膜(hard coating film)20を形成する。硬化膜20は、主にカバープレート10に構造強度と硬度を与えることで、耐スクラッチ効果を得ることができる。硬化膜20の材料および構造は周知の技術であるので、その説明を割愛する。
【0028】
ステップS3:第2面にアンチグレア膜を形成する。
【0029】
前記ステップS2で硬化膜20を形成した後、次に、本発明は、カバープレート10の第2面12に別のコーティング処理を行い、カバープレート10の第2面12にアンチグレア膜(anti-glare film)30を形成する。アンチグレア膜30は、主にカバープレート10に照射される外光によって生じるグレアの影響を低減するために使用される。アンチグレア膜30の材料および構造は周知の技術であるので、その説明を割愛する。
【0030】
ステップS4:硬化膜の一部の領域に印刷層を形成する。
【0031】
前記ステップS3でアンチグレア膜30を形成した後、次に、本発明は、硬化膜20が形成されたカバープレート10の第1面11に印刷処理を実行し、硬化膜20上に印刷層40を形成する。印刷層40は、主に有色インク材料を使用して、マーキング、指示、計器の目盛り、商標、または特定のパターンを形成する。印刷層40は、硬化膜20の一部の領域に形成される。印刷層40の材料および構造は周知の技術であるので、その説明を割愛する。
【0032】
ステップS5:硬化膜と印刷層上に透明導電性検知膜を形成する。
【0033】
前記ステップS4で印刷層40を形成した後、次に、本発明は、硬化膜20と印刷層40が形成された第1面11に別のコーティング処理を行い、硬化膜20と印刷層40上に単層又は二層の透明導電性検知膜(sensor film)50を形成する。透明導電性検知膜50は、主にカバープレート10のタッチセンシング機能を提供するための透明電極として使用される。透明導電性検知膜50の材料および構造は周知の技術であるので、その説明を割愛する。
【0034】
ステップS6:以上のステップを経たカバープレートにホットプレス処理を行うことにより、カバープレートを一次元方向に湾曲した曲面構造に形成する。第1面と第2面を曲面に形成する。また、曲面構造の曲率半径を500mm~1000mmの間にする。
【0035】
前記ステップS2~S5の後、本発明は、前記フィルム層が積層されたカバープレート10に対してホットプレス処理を行うことにより、カバープレート10を一次元方向Dに湾曲した曲面構造に形成する。詳しくは、本発明は、前記フィルム層が積層されたカバープレート10に対して、
図2の紙面に垂直な軸方向を基準として、カバープレート10の第2面から第1面に向けて一次元方向Dに沿ってホットプレス曲げ加工することにより、カバープレート10を一次元方向に沿って湾曲した曲面構造に形成した。ホットプレス曲げ加工されたカバープレート10の第1面11及び第2面12は、ともに曲面として形成される。第1面11は内側曲面となり、第2面12は外側曲面となる。カバープレート10の曲面構造の曲率半径は、500mm~1000mmの間である。
【0036】
ステップS7:第2面に蒸着処理を行うことにより、アンチグレア膜上に反射防止膜を形成する。
【0037】
前記ステップS6までの工程を経てアンチグレア膜30を形成した後、次に、本発明は、アンチグレア膜30が形成されたカバープレート10の第2面12に別の蒸着処理を実行し、アンチグレア膜30上に反射防止膜(anti-reflection film)60を形成する。反射防止膜60は、主に外光の反射を抑えて光の透過率を高めるために使用される。例えば、反射防止膜60は、波長範囲380nm~780nmの可視光に対応する。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、他の波長範囲に対応してもよい。前記蒸着処理は、物理蒸着(Physical Vapor Deposition、PVD)プロセスまたは他の類似プロセスであってもよい。
【0038】
図3及び
図4を参照して説明する。
図3は、本発明に係る自動車用曲面カバープレートの構造の製造方法においてカバープレートの第2面に反射防止膜を形成する様子を示す模式図である。
図4は、本発明に係る自動車用曲面カバープレートの構造の製造方法に使用される載置治具を示す模式図である。
図3及び
図4に示すように、カバープレート10の第2面12に反射防止膜60を形成するために、本発明に係る自動車用曲面カバープレートの構造の製造方法は、ステップS7の蒸着処理において、載置治具A及びドーム状の円弧状の支持体Cを利用し、蒸着源Bによってカバープレート10の第2面12に対して蒸着処理を行う。
【0039】
載置治具Aは、載置台A1と自由回転軸A2を有する。載置台A1は、自由回転軸A2に連結されている。載置台A1には、カバープレート10が乗せられる。カバープレート10を乗せた載置台A1の載置面は、カバープレート10の第1面11の曲面に対応することで、カバープレート10の第1面11を接触して固定し、第2面12を蒸着源Bに向けることが容易になる。自由回転軸A2は、円弧状の支持体Cに沿って移動し、円弧状の支持体Cの任意の位置で自由に回転することで、蒸着源Bに対するカバープレート10の配置角度を調整することができる。自由回転軸A2は、円弧状の支持体C上を摺動するユニバーサルジョイントとすることができる。蒸着源Bは、円弧状の支持体Cの円心位置または非円心位置に対応するように設定することができる。
【0040】
本発明に係る自動車用曲面カバープレートの構造の製造方法において、ステップS7の蒸着処理では、カバープレート10を載置治具Aの載置台A1に載置固定し、載置治具Aを円弧状の支持体Cに沿って移動させる。載置治具Aの移動中、載置治具Aの自由回転軸A2を制御することにより、蒸着源Bに対するカバープレート10の第2面12の配置角度を調整し、カバープレート10の第2面12が常に蒸着源Bに向くようにして、蒸着源Bの蒸着角度に対して垂直に保つようにすることで、蒸着源Bがカバープレート10の第2面12に行う蒸着処理を容易にする。それによって、本発明において、アンチグレア膜30上に形成された反射防止膜60の膜厚均一性は、1.5%未満となる。即ち、形成された反射防止膜60の厚みがより均一になる。
【0041】
ステップS8:反射防止膜上に指紋防止膜を形成する。
【0042】
前記ステップS7で反射防止膜60を形成した後、本発明は、反射防止膜60が形成されたカバープレート10の第2面12に別の蒸着処理を実行し、第2面12に指紋防止膜(anti-fingerprint film)70を形成する。指紋防止膜70は、主に指紋や汚れがカバープレート10に付着するのを防止する役割を果たす。指紋防止膜70の材料および構造は周知の技術であるので、その説明を割愛する。
【0043】
以下、
図3、
図5、及び
図6を参照して説明する。
図5は、本発明の他の実施例に係る自動車用曲面カバープレートの構造の製造方法を示すフローチャートである。
図6は、本発明に係る自動車用曲面カバープレートの構造の製造方法で形成された反射防止膜の構造を示す模式図である。
図3、
図5、及び
図6に示すように、本発明の他の実施例において、前記ステップS7で反射防止膜60を形成する前に、第2面に対して電子銃または熱蒸着処理を行い、アンチグレア膜上に接着層を形成するステップS61がある。
【0044】
前記ステップS6の後、本発明は、カバープレート10の第2面12に向けて、アンチグレア膜30に対して電子銃または熱蒸着処理を行うことで、アンチグレア膜30上に接着層80を形成する。接着層80は、アンチグレア膜30と反射防止膜60との間に位置する。接着層80は、主に本発明の自動車用曲面カバープレート1の環境試験の信頼性を向上させるために使用され、例えば、温度環境試験、湿度環境試験、紫外線老化試験などが挙げられる。接着層80は、アンチグレア膜30とその後に形成される反射防止膜60との接着を補助することができる。本発明の実施例において、接着層80は、主に一酸化ケイ素(SiO)または酸化アルミニウム(Al2O3)を含む。ただし、接着層80の組成はこれに限定されない。前記組成物からなる接着層80により、本発明に係る自動車用曲面カバープレート1は、環境試験において、温度湿度バイアス試験(Temperature Humidity Bias Test、THB)では85℃/85%の水準を達成することができる。紫外線老化試験(QUV)では、1000時間の水準を達成することができる。
【0045】
図6から
図7Bを参照して説明する。
図7Aは、本発明の第1実施例に係る自動車用曲面カバープレートの構造の製造方法で形成された反射防止膜の反射防止スペクトル図である。
図7Bは、本発明の第2実施例に係る自動車用曲面カバープレートの構造の製造方法で形成された反射防止膜の反射防止スペクトル図である。
図6に示すように、本発明において、反射防止膜60は、主に屈折率の異なる2種類の材料層が交互に積層された多層構造であり、その積層総数は3~9である。反射防止膜60は、少なくとも1つの高屈折率層61と少なくとも1つの低屈折率層62を含む。高屈折率層61は、主に五酸化ニオブ(Nb
2O
5)、二酸化チタン(TiO
2)、五酸化タンタル(Ta
2O
5)、窒化ケイ素(SiN)、二酸化ハフニウム(HfO
2)の少なくとも一つを含む。低屈折率層62は、主に二酸化ケイ素(SiO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、二フッ化マグネシウム(MgF
2)の少なくとも一つを含む。ただし、反射防止膜60の組成はこれに限定されない。
【0046】
第1実施例において、反射防止膜60の高屈折率層61は五酸化ニオブからなり、低屈折率層62は二酸化ケイ素からなり、積層総数は4である。つまり、反射防止膜60の奇数層(すなわち、1層目と3層目)は、五酸化ニオブからなる高屈折率層61である。反射防止膜60の偶数層(すなわち、2層目と4層目)は、二酸化ケイ素からなる低屈折率層62である。接着層80、反射防止膜60、及び指紋防止膜70の各層の組成および厚さは、以下の表1に示すとおりである。
【表1】
【0047】
表1及び
図7Aに示すように、反射防止膜60の総膜厚は約250nmである。反射防止膜60が対応する波長範囲における光反射率は、380nm以降は10%から徐々に0%に向かい、780nmまでは概ね5%以下に維持される。この実施例では、反射防止膜60は、可視光の波長範囲、すなわち380nmから780nmの間において、比較的低い光反射率を維持することがわかる。
【0048】
第2実施例において、反射防止膜60の高屈折率層61は二酸化チタンからなり、低屈折率層62は二酸化ケイ素からなり、積層総数は4である。つまり、反射防止膜60の奇数層(すなわち、1層目と3層目)は、二酸化チタンからなる高屈折率層61である。反射防止膜60の偶数層(すなわち、2層目と4層目)は、二酸化ケイ素からなる低屈折率層62である。接着層80、反射防止膜60、及び指紋防止膜70の各層の組成および厚さは、以下の表2に示すとおりである。
【表2】
【0049】
表2及び
図7Bに示すように、反射防止膜60の総膜厚は約240nmである。反射防止膜60が対応する波長範囲における光反射率は、380nm以降は10%から徐々に0%に向かい、780nmまでは概ね5%以下に維持される。この実施例では、反射防止膜60は、可視光の波長範囲、すなわち380nmから780nmの間において、同様に比較的低い光反射率を維持することがわかる。
【0050】
図8は、本発明に係る自動車用曲面カバープレートの構造を示す模式図である。
図8に示すように、本発明に係る自動車用曲面カバープレートの構造1は、カバープレート10、硬化膜20、印刷層40、透明導電性検知膜50、アンチグレア膜30、反射防止膜60、及び指紋防止膜70を含む。カバープレート10は、一次元方向に湾曲した曲面構造であり、対向する第1面11と第2面12を有する。カバープレート10は、高分子ポリマー材料で作られている。曲面構造の曲率半径は、500mm~1000mmの間である。硬化膜20は、第1面11に形成されている。印刷層40は、硬化膜20の一部の領域に形成されている。透明導電性検知膜50は、硬化膜20と印刷層40上に形成されている。アンチグレア膜30は、第2面12に形成されている。反射防止膜60は、アンチグレア膜30上に形成されている。指紋防止膜70は、反射防止膜60上に形成されている。
【0051】
上述した実施形態はあくまでも例示であり、本願の実施形態やその用途を限定することを意図するものではない。さらに、前述の実施形態において少なくとも1つの例示的な実施例を示したが、本発明に多数の変形例が存在し得ることを理解されたい。また、本明細書に記載される実施例は、請求の範囲、用途、または構成をいかなる形で限定することを意図するものではない。むしろ、前述の実施形態は、当該技術分野における通常の知識を有する者に、実施形態の1つまたは複数を実施するためのガイドを提供する。さらに、請求の範囲を逸脱することなく、要素の機能および配置に変更を加えることができ、請求の範囲には、本特許出願の出願時における既知の均等物および予見可能なすべての均等物が含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1 自動車用曲面カバープレートの構造
10 カバープレート
11 第1面
12 第2面
20 硬化膜
30 アンチグレア膜
40 印刷層
50 透明導電性検知膜
60 反射防止膜
70 指紋防止膜
80 接着層
A 載置治具
A1 載置台
A2 自由回転軸
B 蒸着源
C 円弧状の支持体
D 一次元方向
S1~S8、S61 ステップ
【手続補正書】
【提出日】2024-11-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用曲面カバープレートの製造方法であって、
平板構造であって、対向する第1面と第2面を有し、高分子ポリマー材料で作られているカバープレートを用意するステップと、
前記第1面に硬化膜を形成するステップと、
前記第2面にアンチグレア膜を形成するステップと、
前記硬化膜の一部の領域に印刷層を形成するステップと、
前記硬化膜と前記印刷層上に透明導電性検知膜を形成するステップと、
以上のステップを経た前記カバープレートにホットプレス処理を行うことにより、前記カバープレートを一次元方向に湾曲した曲面構造に形成し、前記第1面と前記第2面を曲面に形成し、前記曲面構造の曲率半径を500mm~1000mmの間にするステップと、
一次元方向に湾曲した曲面構造を形成した前記カバープレートの前記第2面に蒸着処理を行うことにより、前記アンチグレア膜上に反射防止膜を形成するステップと、
前記反射防止膜上に指紋防止膜を形成するステップと、を含む自動車用曲面カバープレートの製造方法。
【請求項2】
前記アンチグレア膜上に前記反射防止膜を形成するステップと前記反射防止膜上に前記指紋防止膜を形成するステップとでは、前記カバープレートを円弧状の支持体に沿って移動させ、蒸着源によって前記カバープレートの前記第2面に対して蒸着処理を行い、前記カバープレートを常に前記蒸着源の蒸着角度に対して垂直に保つことを特徴とする請求項1に記載の自動車用曲面カバープレートの製造方法。
【請求項3】
前記アンチグレア膜上に前記反射防止膜を形成するステップと前記反射防止膜上に前記指紋防止膜を形成するステップとでは、載置台と自由回転軸を有する載置治具を使用し、前記カバープレートを前記載置台に乗せ、前記自由回転軸を前記円弧状の支持体に沿って移動させ、前記円弧状の支持体の任意の位置で自由に回転させることで、前記蒸着源に対する前記カバープレートの配置角度を調整することを特徴とする請求項2に記載の自動車用曲面カバープレートの製造方法。
【請求項4】
前記アンチグレア膜上に前記反射防止膜を形成するステップの前に、前記第2面に対して電子銃または熱蒸着処理を行い、前記アンチグレア膜上に接着層を形成するステップがあることを特徴とする請求項1に記載の自動車用曲面カバープレートの製造方法。
【請求項5】
前記接着層は、主に一酸化ケイ素または酸化アルミニウムを含むことを特徴とする請求項4に記載の自動車用曲面カバープレートの製造方法。
【請求項6】
前記反射防止膜は、交互に積層された少なくとも1つの高屈折率層と少なくとも1つの低屈折率層を含み、前記高屈折率層は、主に五酸化ニオブ、二酸化チタン、五酸化タンタル、窒化ケイ素、二酸化ハフニウムの少なくとも一つを含み、前記低屈折率層は、主に二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二フッ化マグネシウムの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の自動車用曲面カバープレートの製造方法。
【請求項7】
前記反射防止膜の積層総数は3~9であることを特徴とする請求項6に記載の自動車用曲面カバープレートの製造方法。
【請求項8】
前記反射防止膜は、波長範囲380nm~780nmに対応することを特徴とする請求項1に記載の自動車用曲面カバープレートの製造方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の自動車用曲面カバープレートの製造方法を用いて製造された自動車用曲面カバープレートの構造であって、
一次元方向に湾曲した曲面構造であり、対向する第1面と第2面を有し、高分子ポリマー材料で作られており、前記曲面構造の曲率半径が500mm~1000mmの間であるカバープレートと、
前記第1面に形成される硬化膜と、
前記硬化膜の一部の領域に形成される印刷層と、
前記硬化膜と前記印刷層上に形成される透明導電性検知膜と、
前記第2面に形成されるアンチグレア膜と、
前記アンチグレア膜に形成される反射防止膜と、
前記反射防止膜に形成される指紋防止膜と、を含む自動車用曲面カバープレートの構造。
【請求項10】
前記アンチグレア膜と前記反射防止膜との間に位置する接着層をさらに含み、前記接着層は、主に一酸化ケイ素または酸化アルミニウムを含むことを特徴とする請求項9に記載の自動車用曲面カバープレートの構造。