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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175645
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】ドライバドリル
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/00 20060101AFI20241211BHJP
   B23B 45/02 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
B25B21/00 520A
B25B21/00 B
B25B21/00 530Z
B23B45/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】29
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024027661
(22)【出願日】2024-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2023093267
(32)【優先日】2023-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畔柳 貴勇
(72)【発明者】
【氏名】荒木 裕太
(72)【発明者】
【氏名】岡島 鎮記
(72)【発明者】
【氏名】大澤 泰成
(72)【発明者】
【氏名】桜山 真吾
【テーマコード(参考)】
3C036
【Fターム(参考)】
3C036EE19
3C036EE21
(57)【要約】
【課題】ドライバドリルの出力部を高トルク化すること。
【解決手段】ドライバドリルは、ステータ及びロータを有するモータと、モータよりも前方に配置され、ロータから伝達された回転力に基づいて前後方向に延びる回転軸を中心に回転するスピンドルと、スピンドルに取り付けられるチャックと、を有する出力部と、ロータの回転を減速して、ロータよりも低い回転速度で出力部を回転させる減速機構と、を備える。出力部の最大締付トルクは、160Nm以上である。
【選択図】図27
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ及びロータを有するモータと、
前記モータよりも前方に配置され、前記ロータから伝達された回転力に基づいて前後方向に延びる回転軸を中心に回転するスピンドルと、前記スピンドルに取り付けられるチャックと、を有する出力部と、
前記ロータの回転を減速して、前記ロータよりも低い回転速度で前記出力部を回転させる減速機構と、を備え、
前記出力部の最大締付トルクは、160Nm以上である、
ドライバドリル。
【請求項2】
前記減速機構は、3段変速である、
請求項1に記載のドライバドリル。
【請求項3】
ステータ及びロータを有するモータと、
前記モータよりも前方に配置され、前記ロータから伝達された回転力に基づいて前後方向に延びる回転軸を中心に回転するスピンドルと、前記スピンドルに取り付けられるチャックと、を有する出力部と、
前記ロータの回転を減速して、前記ロータよりも低い回転速度で前記出力部を回転させる減速機構と、を備え、
前記減速機構は、3段変速であり、
前記出力部の最大締付トルクは、155Nm以上である、
ドライバドリル。
【請求項4】
前記モータの周囲及び後部を覆う包囲部材と、
前記包囲部材の前部に接続され前記減速機構を収容するケーシングと、を備え、
前記チャックの前端部は、前記ケーシングよりも前方に配置され、
前記包囲部材の後端部と前記チャックの前端部との前後方向の距離を示す全長は、210mm以下である、
請求項3に記載のドライバドリル。
【請求項5】
ステータ及びロータを有するモータと、
前記モータよりも前方に配置され、前記ロータから伝達された回転力に基づいて前後方向に延びる回転軸を中心に回転するスピンドルと、前記スピンドルに取り付けられるチャックと、を有する出力部と、
前記ロータの回転を減速して、前記ロータよりも低い回転速度で前記出力部を回転させる減速機構と、
前記モータの周囲及び後部を覆う包囲部材と、
前記包囲部材の前部に接続され前記減速機構を収容するケーシングと、を備え、
前記チャックの前端部は、前記ケーシングよりも前方に配置され、
前記減速機構は、3段変速であり、
前記包囲部材の後端部と前記チャックの前端部との前後方向の距離を示す全長は、210mm以下である、
ドライバドリル。
【請求項6】
前記出力部を震動させる震動機構を備え、
前記ケーシングは、前記減速機構及び前記震動機構を含む動力伝達機構を収容し、
前記モータの前後方向の寸法は、50mmであり、
前記動力伝達機構の前後方向の寸法は、90mmであり、
前記チャックの前後方向の寸法は、50mmである、
請求項5に記載のドライバドリル。
【請求項7】
前記チャックが取り付けられる前記スピンドルの外径は、9/16インチである、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のドライバドリル。
【請求項8】
前記減速機構は、
前記ロータにより回転されるサンギヤの周囲に配置される複数の第1プラネタリギヤ及び複数の前記第1プラネタリギヤの周囲に配置される第1インターナルギヤからなる第1段部と、前記第1段部とは減速比が異なり、前記サンギヤの周囲に配置される複数の第2プラネタリギヤ及び複数の前記第2プラネタリギヤの周囲に配置される第2インターナルギヤからなる第2段部と、を有する第1遊星歯車機構と、
前記第1遊星歯車機構よりも前方に配置され、前記第1遊星歯車機構の回転力により作動する第2遊星歯車機構と、
前記第2遊星歯車機構よりも前方に配置され、前記第2遊星歯車機構の回転力により作動する第3遊星歯車機構と、を含み、
前記出力部は、前記第3遊星歯車機構を介して伝達される前記ロータの回転力により回転する、
請求項2から請求項5のいずれか一項に記載のドライバドリル。
【請求項9】
前記第2段部の減速比は、前記第1段部の減速比よりも大きい、
請求項8に記載のドライバドリル。
【請求項10】
前記第2遊星歯車機構の減速比及び前記第3遊星歯車機構の減速比は、前記第1段部の減速比よりも小さく、
前記第2遊星歯車機構の減速比は、前記第3遊星歯車機構の減速比よりも小さい。
請求項9に記載のドライバドリル。
【請求項11】
前記減速機構が1速であることは、前記第1遊星歯車機構の第2段部と、前記第2遊星歯車機構と、前記第3遊星歯車機構とが使用されることであり、
前記減速機構が2速であることは、前記第1遊星歯車機構の第2段部と、前記第3遊星歯車機構とが使用されることであり、
前記減速機構が3速であることは、前記第1遊星歯車機構の第1段部と、前記第3遊星歯車機構とが使用されることである、
請求項10に記載のドライバドリル。
【請求項12】
ステータ及びロータを有するモータと、
前記モータよりも前方に配置され、前記ロータから伝達された回転力に基づいて前後方向に延びる回転軸を中心に回転するスピンドルと、前記スピンドルに取り付けられるチャックと、を有する出力部と、
前記ロータの回転を減速して、前記ロータよりも低い回転速度で前記出力部を回転させる減速機構と、を備え、
前記減速機構は、低速モード、中速モード、及び高速モードを含む3段変速であり、
前記チャックに、直径65mmのセルフィードビットが保持され、
前記高速モードにおいて、前記セルフィードビットで厚さ30mmの米松に穴あけ可能である、
ドライバドリル。
【請求項13】
バッテリ装着部を備え、
定格電圧40Vバッテリ容量8Ahのバッテリパックが前記バッテリ装着部に装着された状態で、前記高速モードにおいて、前記セルフィードビットで前記米松に穴あけ可能である、
請求項12に記載のドライバドリル。
【請求項14】
前記高速モードにおいて、前記セルフィードビットで前記米松に穴あけするときの前記出力部のトルクは、16Nm以上である、
請求項13に記載のドライバドリル。
【請求項15】
前記高速モードにおいて、前記出力部のトルクが16Nmであるときの前記モータの回転数は900rpm以上である、
請求項13に記載のドライバドリル。
【請求項16】
前記高速モードにおいて、前記出力部のトルクが6Nmであるときの前記モータの回転数は1600rpm以上である、
請求項13に記載のドライバドリル。
【請求項17】
前記高速モードにおいて、前記出力部のトルクが0Nmから6Nmに上昇するときの前記モータの回転数の減少量は600rpm以下である、
請求項13に記載のドライバドリル。
【請求項18】
前記高速モードにおいて、前記出力部のトルクが6Nmであるときに前記モータに入力される電流は40A以下である、
請求項13に記載のドライバドリル。
【請求項19】
前記高速モードにおいて、前記出力部のトルクが6Nmであるときの前記モータの出力は1000W以上である、
請求項12に記載のドライバドリル。
【請求項20】
ステータ及びロータを有するモータと、
前記モータよりも前方に配置され、前記ロータから伝達された回転力に基づいて前後方向に延びる回転軸を中心に回転するスピンドルと、前記スピンドルに取り付けられるチャックと、を有する出力部と、
前記ロータの回転を減速して、前記ロータよりも低い回転速度で前記出力部を回転させる減速機構と、
バッテリ装着部と、を備え、
前記減速機構は、低速モード、中速モード、及び高速モードを含む3段変速であり、
前記チャックに、直径65mmのセルフィードビットが保持され、
バッテリ電力量320Whのバッテリパックが前記バッテリ装着部に装着された状態で、前記中速モードにおいて、前記セルフィードビットで厚さ30mmの米松に穴あけするときの前記出力部のトルクは、20Nm以上であり、
前記中速モードにおいて、前記出力部のトルクが20Nmであるときの前記モータの回転数は600rpm以上である、
ドライバドリル。
【請求項21】
前記中速モードにおいて、前記出力部のトルクが6Nmであるときの前記モータの回転数は1000rpm以上である、
請求項20に記載のドライバドリル。
【請求項22】
前記中速モードにおいて、前記出力部のトルクが0Nmから6Nmに上昇するときの前記モータの回転数の減少量は600rpm以下である、
請求項20に記載のドライバドリル。
【請求項23】
前記中速モードにおいて、前記出力部のトルクが6Nmであるときに前記モータに入力される電流は30A以下である、
請求項20に記載のドライバドリル。
【請求項24】
前記中速モードにおいて、前記出力部のトルクが6Nmであるときの前記モータの出力は700W以上である、
請求項20に記載のドライバドリル。
【請求項25】
ステータ及びロータを有するモータと、
前記モータよりも前方に配置され、前記ロータから伝達された回転力に基づいて前後方向に延びる回転軸を中心に回転するスピンドルと、前記スピンドルに取り付けられるチャックと、を有する出力部と、
前記ロータの回転を減速して、前記ロータよりも低い回転速度で前記出力部を回転させる減速機構と、
バッテリ装着部と、を備え、
前記減速機構は、低速モード、中速モード、及び高速モードを含む3段変速であり、
前記チャックに、直径65mmのセルフィードビットが保持され、
バッテリ電力量80Whのバッテリパックが前記バッテリ装着部に装着された状態で、前記中速モードにおいて、前記セルフィードビットで厚さ30mmの米松に穴あけするときの前記出力部のトルクは、16Nm以上であり、
前記中速モードにおいて、前記出力部のトルクが16Nmであるときの前記モータの回転数は300rpm以上である、
ドライバドリル。
【請求項26】
前記中速モードにおいて、前記出力部のトルクが6Nmであるときの前記モータの回転数は1000rpm以上である、
請求項25に記載のドライバドリル。
【請求項27】
前記中速モードにおいて、前記出力部のトルクが0Nmから6Nmに上昇するときの前記モータの回転数の減少量は600rpm以下である、
請求項25に記載のドライバドリル。
【請求項28】
前記中速モードにおいて、前記出力部のトルクが6Nmであるときに前記モータに入力される電流は30A以下である、
請求項25に記載のドライバドリル。
【請求項29】
前記中速モードにおいて、前記出力部のトルクが6Nmであるときの前記モータの出力は700W以上である、
請求項25に記載のドライバドリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、ドライバドリルに関する。
【背景技術】
【0002】
ドライバドリルに係る技術分野において、特許文献1に開示されているようなドライバドリルが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-171857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書で開示する技術は、ドライバドリルの出力部を高トルク化することを目的とする。また、本明細書で開示する技術は、ドライバドリルの全長を短縮化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書は、ドライバドリルを開示する。ドライバドリルは、ステータ及びロータを有するモータと、モータよりも前方に配置され、ロータから伝達された回転力に基づいて前後方向に延びる回転軸を中心に回転するスピンドルと、スピンドルに取り付けられるチャックと、を有する出力部と、ロータの回転を減速して、ロータよりも低い回転速度で出力部を回転させる減速機構と、を備えてもよい。出力部の最大締付トルクは、160Nm以上でもよい。
【0006】
また、ドライバドリルは、ステータ及びロータを有するモータと、モータよりも前方に配置され、ロータから伝達された回転力に基づいて前後方向に延びる回転軸を中心に回転するスピンドルと、スピンドルに取り付けられるチャックと、を有する出力部と、ロータの回転を減速して、ロータよりも低い回転速度で出力部を回転させる減速機構と、モータの周囲及び後部を覆う包囲部材と、包囲部材の前部に接続され減速機構を収容するケーシングと、を備えてもよい。チャックの前端部は、ケーシングよりも前方に配置されてもよい。減速機構は、3段変速でもよい。包囲部材の後端部とチャックの前端部との前後方向の距離を示す全長は、210mm以下でもよい。
【発明の効果】
【0007】
本明細書で開示する技術によれば、ドライバドリルの出力部が高トルク化される。また、本明細書で開示する技術によれば、ドライバドリルの全長が短縮化される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るドライバドリルを示す前方からの斜視図である。
図2図2は、実施形態に係るドライバドリルを示す後方からの斜視図である。
図3図3は、実施形態に係るドライバドリルを示す側面図である。
図4図4は、実施形態に係るドライバドリルを示す断面図である。
図5図5は、実施形態に係るドライバドリルの一部を示す断面図である。
図6図6は、実施形態に係る減速機構の一部を示す右前方からの斜視図である。
図7図7は、実施形態に係るドライバドリルの一部を示す前方からの斜視図である。
図8図8は、実施形態に係るドライバドリルの一部を示す側面図である。
図9図9は、実施形態に係るドライバドリルの一部を示す断面図である。
図10図10は、実施形態に係る減速機構を示す分解斜視図である。
図11図11は、実施形態に係る減速機構の一部を示す後方からの斜視図である。
図12図12は、実施形態に係る減速機構の一部を示す後方からの斜視破断図である。
図13図13は、実施形態に係る第1速度切換機構及び第2速度切換機構を示す側面図である。
図14図14は、実施形態に係る第1速度切換機構及び第2速度切換機構を示す右下後方からの斜視図である。
図15図15は、実施形態に係る減速機構が低速モード(1速)に設定されたときのドライバドリルを上方から見た図である。
図16図16は、実施形態に係る減速機構が低速モード(1速)に設定されたときのドライバドリルを示す断面図である。
図17図17は、実施形態に係る減速機構が低速モード(1速)に設定されたときのドライバドリルを示す断面図である。
図18図18は、実施形態に係る減速機構が低速モード(1速)に設定されたときのドライバドリルの内部構造を示す図である。
図19図19は、実施形態に係る減速機構が中速モード(2速)に設定されたときのドライバドリルを上方から見た図である。
図20図20は、実施形態に係る減速機構が中速モード(2速)に設定されたときのドライバドリルを示す断面図である。
図21図21は、実施形態に係る減速機構が中速モード(2速)に設定されたときのドライバドリルを示す断面図である。
図22図22は、実施形態に係る減速機構が中速モード(2速)に設定されたときのドライバドリルの内部構造を示す図である。
図23図23は、実施形態に係る減速機構が高速モード(3速)に設定されたときのドライバドリルを上方から見た図である。
図24図24は、実施形態に係る減速機構が高速モード(3速)に設定されたときのドライバドリルを示す断面図である。
図25図25は、実施形態に係る減速機構が高速モード(3速)に設定されたときのドライバドリルを示す断面図である。
図26図26は、実施形態に係る減速機構が高速モード(3速)に設定されたときのドライバドリルの内部構造を示す図である。
図27図27は、実施形態に係るドライバドリルの締付トルクと全長との関係を示す図である。
図28図28は、実施形態に係るドライバドリルのモータトルクとギヤ比との関係を示す図である。
図29図29は、実施形態に係るドライバドリルが実施可能な加工条件を説明する図である。
図30図30は、実施形態に係るモータを説明する図である。
図31図31は、実施形態に係る定格電圧40Vバッテリ容量8Ahの第1バッテリパックを使用した場合の高速モードにおける出力部のトルクとモータ特性との関係を示すグラフの一例である。
図32図32は、実施形態に係る定格電圧40Vバッテリ容量8Ahの第1バッテリパックを使用した場合の中速モードにおける出力部のトルクとモータ特性との関係を示すグラフの一例である。
図33図33は、実施形態に係る定格電圧40Vバッテリ容量2Ahの第2バッテリパックを使用した場合の中速モードにおける出力部のトルクとモータ特性との関係を示すグラフの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1つ又はそれ以上の実施形態において、ドライバドリルは、ステータ及びロータを有するモータと、モータよりも前方に配置され、ロータから伝達された回転力に基づいて前後方向に延びる回転軸を中心に回転するスピンドルと、スピンドルに取り付けられるチャックと、を有する出力部と、ロータの回転を減速して、ロータよりも低い回転速度で出力部を回転させる減速機構と、を備えてもよい。出力部の最大締付トルクは、160Nm以上でもよい。
【0010】
上記の構成では、ドライバドリルの出力部が高トルク化される。
【0011】
1つ又はそれ以上の実施形態において、減速機構は、3段変速でもよい。
【0012】
上記の構成では、作業内容に応じて出力部が適正なトルクで回転する。
【0013】
1つ又はそれ以上の実施形態において、ドライバドリルは、ステータ及びロータを有するモータと、モータよりも前方に配置され、ロータから伝達された回転力に基づいて前後方向に延びる回転軸を中心に回転するスピンドルと、スピンドルに取り付けられるチャックと、を有する出力部と、ロータの回転を減速して、ロータよりも低い回転速度で出力部を回転させる減速機構と、を備えてもよい。減速機構は、3段変速でもよい。出力部の最大締付トルクは、155Nm以上でもよい。
【0014】
上記の構成では、ドライバドリルの出力部が高トルク化される。
【0015】
1つ又はそれ以上の実施形態において、ドライバドリルは、ステータ及びロータを有するモータと、モータよりも前方に配置され、ロータから伝達された回転力に基づいて前後方向に延びる回転軸を中心に回転するスピンドルと、スピンドルに取り付けられるチャックと、を有する出力部と、ロータの回転を減速して、ロータよりも低い回転速度で出力部を回転させる減速機構と、モータの周囲及び後部を覆う包囲部材と、包囲部材の前部に接続され減速機構を収容するケーシングと、を備えてもよい。チャックの前端部は、ケーシングの前方に配置されてもよい。減速機構は、3段変速でもよい。包囲部材の後端部とチャックの前端部との前後方向の距離を示す全長は、210mm以下でもよい。
【0016】
上記の構成では、ドライバドリルの全長が短縮化される。
【0017】
1つ又はそれ以上の実施形態において、ドライバドリルは、出力部を震動させる震動機構を備えてもよい。ケーシングは、減速機構及び震動機構を含む動力伝達機構を収容してもよい。モータの前後方向の寸法は、50mmでもよい。動力伝達機構の前後方向の寸法は、90mmでもよい。チャックの前後方向の寸法は、50mmでもよい。
【0018】
上記の構成では、ドライバドリルの全長が短縮化される。
【0019】
1つ又はそれ以上の実施形態において、チャックが取り付けられるスピンドルの外径は、9/16インチでもよい。
【0020】
上記の構成では、出力部の高トルク化に適応した高強度のスピンドルが提供される。
【0021】
1つ又はそれ以上の実施形態において、減速機構は、ロータにより回転されるサンギヤの周囲に配置される複数の第1プラネタリギヤ及び複数の第1プラネタリギヤの周囲に配置される第1インターナルギヤからなる第1段部と、第1段部とは減速比が異なり、サンギヤの周囲に配置される複数の第2プラネタリギヤ及び複数の第2プラネタリギヤの周囲に配置される第2インターナルギヤからなる第2段部と、を有する第1遊星歯車機構と、第1遊星歯車機構よりも前方に配置され、第1遊星歯車機構の回転力により作動する第2遊星歯車機構と、第2遊星歯車機構よりも前方に配置され、第2遊星歯車機構の回転力により作動する第3遊星歯車機構と、を含んでもよい。出力部は、第3遊星歯車機構を介して伝達されるロータの回転力により回転してもよい。
【0022】
上記の構成では、作業内容に応じて出力部が適正なトルクで回転する。
【0023】
1つ又はそれ以上の実施形態において、第2段部の減速比は、第1段部の減速比よりも大きくてもよい。
【0024】
上記の構成では、作業内容に応じて出力部が適正なトルクで回転する。
【0025】
1つ又はそれ以上の実施形態において、第2遊星歯車機構の減速比及び第3遊星歯車機構の減速比は、第1段部の減速比よりも小さくてもよい。第2遊星歯車機構の減速比は、第3遊星歯車機構の減速比よりも小さくてもよい。
【0026】
上記の構成では、作業内容に応じて出力部が適正なトルクで回転する。
【0027】
1つ又はそれ以上の実施形態において、減速機構が1速であることは、第1遊星歯車機構の第2段部と、第2遊星歯車機構と、第3遊星歯車機構とが使用されることでもよい。減速機構が2速であることは、第1遊星歯車機構の第2段部と、第3遊星歯車機構とが使用されることでもよい。減速機構が3速であることは、第1遊星歯車機構の第1段部と、第3遊星歯車機構とが使用されることでもよい。
【0028】
上記の構成では、作業内容に応じて出力部が適正なトルクで回転する。
【0029】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0030】
実施形態においては、左、右、前、後、上、及び下の用語を用いて各部の位置関係について説明する。これらの用語は、ドライバドリルの中心を基準とした相対位置又は方向を示す。
【0031】
ドライバドリルは、モータを有する。実施形態において、モータの回転軸AXと平行な方向を適宜、軸方向、と称し、回転軸AXの周囲を周回する方向を適宜、周方向又は回転方向、と称し、回転軸AXの放射方向を適宜、径方向、と称する。
【0032】
実施形態において、回転軸AXは、前後方向に延びる。軸方向と前後方向とは一致する。軸方向一方側は、前方であり、軸方向他方側は、後方である。また、径方向において、回転軸AXに近い位置又は接近する方向を適宜、径方向内側、と称し、回転軸AXから遠い位置又は離隔する方向を適宜、径方向外側、と称する。
【0033】
<第1実施形態>
[ドライバドリルの概要]
図1は、実施形態に係るドライバドリル1を示す前方からの斜視図である。図2は、実施形態に係るドライバドリル1を示す後方からの斜視図である。図3は、実施形態に係るドライバドリル1を示す側面図である。図4は、実施形態に係るドライバドリル1を示す断面図である。実施形態において、ドライバドリル1は、震動ドライバドリルである。
【0034】
図1図2図3、及び図4に示すように、ドライバドリル1は、ハウジング2と、リヤカバー3と、ケーシング4と、バッテリ装着部5と、モータ6と、動力伝達機構7と、出力部8と、ファン9と、トリガレバー10と、正逆転切換レバー11と、速度切換レバー12と、モード切換リング13と、ライト14と、インタフェースパネル15と、ダイヤル16と、コントローラ17と、を備える。
【0035】
ハウジング2は、合成樹脂製である。実施形態において、ハウジング2は、ナイロン製である。ハウジング2は、左ハウジング2Lと、右ハウジング2Rとを含む。左ハウジング2Lと右ハウジング2Rとは、ねじ2Sにより固定される。左ハウジング2Lと右ハウジング2Rとが固定されることにより、ハウジング2が形成される。
【0036】
ハウジング2は、モータ収容部21と、グリップ部22と、バッテリ保持部23とを有する。
【0037】
モータ収容部21は、モータ6を収容する。モータ収容部21は、筒状である。モータ収容部21は、モータ6の周囲を覆うように配置される。
【0038】
グリップ部22は、作業者に握られる。グリップ部22は、モータ収容部21の下方に配置される。グリップ部22は、モータ収容部21から下方に延びる。トリガレバー10は、グリップ部22の前部に配置される。
【0039】
バッテリ保持部23は、コントローラ17を収容する。バッテリ保持部23は、グリップ部22の下部に配置される。バッテリ保持部23は、グリップ部22の下端部に接続される。前後方向及び左右方向のそれぞれにおいて、バッテリ保持部23の外形の寸法は、グリップ部22の外形の寸法よりも大きい。
【0040】
リヤカバー3は、合成樹脂製である。リヤカバー3は、モータ収容部21の後方に配置される。リヤカバー3は、モータ6の後部を覆うように配置される。リヤカバー3は、ファン9を収容する。リヤカバー3は、モータ収容部21の後部の開口を覆うように配置される。リヤカバー3は、ねじ3Sによりモータ収容部21に固定される。
【0041】
実施形態において、モータ収容部21及びリヤカバー3は、モータ6の周囲及び後部を覆う包囲部材である。なお、モータ収容部21とリヤカバー3とは、一体でもよい。
【0042】
モータ収容部21は、吸気口18を有する。リヤカバー3は、排気口19を有する。ハウジング2の外部空間の空気は、吸気口18を介して、ハウジング2の内部空間に流入する。ハウジング2の内部空間の空気は、排気口19を介して、ハウジング2の外部空間に流出する。
【0043】
ケーシング4は、動力伝達機構7を収容する。ケーシング4は、第1ケーシング4Aと、第2ケーシング4Bと、ブラケット板4Cと、ストップ板4Dとを含む。第2ケーシング4Bは、第1ケーシング4Aの前方に配置される。モード切換リング13は、第2ケーシング4Bの前方に配置される。第1ケーシング4Aは、合成樹脂製である。第2ケーシング4Bは、金属製である。実施形態において、第2ケーシング4Bは、アルミニウム製である。ケーシング4は、モータ収容部21の前部に接続される。第1ケーシング4A及び第2ケーシング4Bのそれぞれは、筒状である。
【0044】
第1ケーシング4Aは、第2ケーシング4Bの後端部に固定される。ブラケット板4Cは、第1ケーシング4Aの後端部の開口を覆うように配置される。ブラケット板4Cは、ねじ4Eにより第1ケーシング4Aの後端部に固定される。ストップ板4Dは、第2ケーシング4Bの前端部の開口を覆うように配置される。ストップ板4Dは、ねじ4Fにより第2ケーシング4Bの前端部に固定される。
【0045】
ケーシング4は、モータ収容部21の前部の開口を覆うように配置される。第1ケーシング4Aは、モータ収容部21の内側に配置される。第2ケーシング4Bは、ねじ4Sによりモータ収容部21に固定される。
【0046】
バッテリ装着部5は、バッテリ保持部23の下部に形成される。バッテリ装着部5は、バッテリパック20に接続される。バッテリパック20は、バッテリ装着部5に装着される。バッテリパック20は、バッテリ装着部5に着脱可能である。バッテリパック20は、二次電池を含む。実施形態において、バッテリパック20は、充電式のリチウムイオン電池を含む。バッテリ装着部5に装着されることにより、バッテリパック20は、ドライバドリル1に電力を供給することができる。モータ6は、バッテリパック20から供給される電力に基づいて駆動する。インタフェースパネル15及びコントローラ17は、バッテリパック20から供給される電力に基づいて作動する。
【0047】
モータ6は、ドライバドリル1の動力源である。モータ6は、インナロータ型のブラシレスモータである。モータ6は、モータ収容部21に収容される。モータ6は、筒状のステータ61と、ステータ61の内側に配置されるロータ62とを有する。ロータ62は、ステータ61に対して回転する。ロータ62は、軸方向に延伸するロータシャフト63を含む。
【0048】
動力伝達機構7は、モータ6の前方に配置される。動力伝達機構7は、ケーシング4に収容される。動力伝達機構7は、ロータシャフト63と出力部8とを連結する。動力伝達機構7は、モータ6が発生した動力を出力部8に伝達する。動力伝達機構7は、複数のギヤを有する。
【0049】
動力伝達機構7は、減速機構30と、震動機構40とを有する。
【0050】
減速機構30は、ロータ62(ロータシャフト63)の回転を減速して、ロータ62よりも低い回転速度で出力部8を回転させる。実施形態において、減速機構30は、第1遊星歯車機構31と、第2遊星歯車機構32と、第3遊星歯車機構33とを有する。第1遊星歯車機構31の少なくとも一部は、モータ6よりも前方に配置される。第2遊星歯車機構32は、第1遊星歯車機構31よりも前方に配置される。第3遊星歯車機構33は、第2遊星歯車機構32よりも前方に配置される。第1遊星歯車機構31は、モータ6の回転力により作動する。第2遊星歯車機構32は、第1遊星歯車機構31の回転力により作動する。第3遊星歯車機構33は、第2遊星歯車機構32の回転力により作動する。
【0051】
震動機構40は、出力部8を軸方向に震動させる。震動機構40は、第1カム41と、第2カム42と、震動切換リング43とを有する。
【0052】
出力部8は、モータ6よりも前方に配置される。出力部8は、ロータ62の回転力により回転する。出力部8は、動力伝達機構7を介してロータ62から伝達された回転力に基づいて、先端工具が取り付けられた状態で回転する。出力部8は、ロータ62から伝達された回転力に基づいて回転軸AXを中心に回転するスピンドル81と、スピンドル81の前端部に取り付けられるチャック82とを有する。先端工具は、チャック82に保持される。チャック82の前端部は、ケーシング4よりも前方に配置される。スピンドル81の少なくとも一部は、第3遊星歯車機構33よりも前方に配置される。スピンドル81は、第3遊星歯車機構33に連結される。スピンドル81は、第1遊星歯車機構31、第2遊星歯車機構32、及び第3遊星歯車機構33を介して伝達されるロータ62の回転力により回転する。
【0053】
ファン9は、モータ6の後方に配置される。ファン9は、モータ6を冷却するための気流を生成する。ファン9は、ロータ62の少なくとも一部に固定される。ファン9は、ロータシャフト63の後部に固定される。ファン9は、ロータシャフト63の回転により回転する。ロータシャフト63が回転することにより、ファン9は、ロータシャフト63と一緒に回転する。ファン9が回転することにより、ハウジング2の外部空間の空気が、吸気口18を介してハウジング2の内部空間に流入する。ハウジング2の内部空間に流入した空気は、ハウジング2の内部空間を流通することにより、モータ6を冷却する。ハウジング2の内部空間を流通した空気は、排気口19を介して、ハウジング2の外部空間に流出する。
【0054】
トリガレバー10は、モータ6を起動するために操作される。トリガレバー10は、グリップ部22の上部に設けられる。トリガレバー10の前端部は、グリップ部22の前部から前方に突出する。トリガレバー10は、前後方向に移動可能である。トリガレバー10は、作業者に操作される。トリガレバー10が後方に移動するように操作されることにより、モータ6が起動する。トリガレバー10の操作が解除されることにより、モータ6が停止する。
【0055】
正逆転切換レバー11は、モータ6の回転方向を切り換えるために操作される。正逆転切換レバー11は、グリップ部22の上部に設けられる。正逆転切換レバー11の左端部は、グリップ部22の左部から左方に突出する。正逆転切換レバー11の右端部は、グリップ部22の右部から右方に突出する。正逆転切換レバー11は、左右方向に移動可能である。正逆転切換レバー11は、作業者に操作される。正逆転切換レバー11が左方に移動するように操作されることにより、モータ6が正転方向に回転する。正逆転切換レバー11が右方に移動するように操作されることにより、モータ6が逆転方向に回転する。モータ6の回転方向が切り換えられることにより、スピンドル81の回転方向が切り換えられる。
【0056】
速度切換レバー12は、減速機構30の速度モード(変速段)を変更するために操作される。速度切換レバー12は、モータ収容部21の上部に設けられる。速度切換レバー12は、前後方向に移動可能である。速度切換レバー12は、作業者に操作される。減速機構30の速度モード(変速段)は、低速モード(1速)と中速モード(2速)と高速モード(3速)とを含む。すなわち、実施形態において、減速機構30の変速段数は、3段である。減速機構30は、3段変速の減速機構である。
【0057】
低速モードとは、ロータ62が一定の回転速度で回転している状態で、出力部8を第1回転速度(低速度)で回転させる速度モードをいう。中速モードとは、ロータ62が一定の回転速度で回転している状態で、出力部8を第1回転速度よりも高い第2回転速度(中速度)で回転させる速度モードをいう。高速モードとは、ロータ62が一定の回転速度で回転している状態で、出力部8を第2回転速度よりも高い第3回転速度(高速度)で回転させる速度モードをいう。速度切換レバー12の可動範囲は、前後方向に規定される。速度切換レバー12が可動範囲の前部に移動するように操作されることにより、減速機構30の速度モードが低速モードに設定される。速度切換レバー12が可動範囲の中間部に移動するように操作されることにより、減速機構30の速度モードが中速モードに設定される。速度切換レバー12が可動範囲の後部に移動するように操作されることにより、減速機構30の速度モードが高速モードに設定される。
【0058】
モード切換リング13は、震動機構40の作業モードを変更するために操作される。モード切換リング13は、ケーシング4の前方に配置される。モード切換リング13は、回転可能である。モード切換リング13は、作業者に操作される。震動機構40の作業モードは、震動モードと非震動モードとを含む。震動モードとは、出力部8を軸方向に震動させる作業モードをいう。非震動モードとは、出力部8を軸方向に震動させない作業モードをいう。モード切換リング13が回転方向の震動モード位置に配置されるように操作されることにより、震動機構40の作業モードが震動モードに設定される。モード切換リング13が回転方向の非震動モード位置に配置されるように操作されることにより、震動機構40の作業モードが非震動モードに設定される。
【0059】
ライト14は、ドライバドリル1の前方を照明する照明光を射出する。ライト14は、例えば発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を含む。ライト14は、モータ収容部21の前部の下部に配置される。ライト14は、トリガレバー10の上方に配置される。
【0060】
インタフェースパネル15は、バッテリ保持部23に設けられる。インタフェースパネル15は、操作装置24と、表示装置25とを含む。インタフェースパネル15は、板状である。操作装置24は、操作ボタンを含む。表示装置25として、複数のセグメント発光器を含むセグメント表示器、液晶ディスプレイのようなフラットパネルディスプレイ、及び複数の発光ダイオードが配置されたインジケータ型表示器が例示される。
【0061】
バッテリ保持部23にパネル開口27が形成される。パネル開口27は、グリップ部22よりも前方において、バッテリ保持部23の上面に形成される。インタフェースパネル15の少なくとも一部は、パネル開口27に配置される。
【0062】
操作装置24は、モータ6の駆動モードを変更するために操作される。操作装置24は、作業者に操作される。モータ6の駆動モードは、ドリルモード及びクラッチモードを含む。ドリルモードとは、モータ6の駆動においてモータ6に作用するトルクに関わらずモータ6を駆動させる駆動モードをいう。クラッチモードとは、モータ6の駆動においてモータ6に作用するトルクが電流閾値を超えたときにモータ6を停止させる駆動モードをいう。
【0063】
ダイヤル16は、モータ6の駆動条件を変更するために操作される。ダイヤル16は、バッテリ保持部23の前部に配置される。ダイヤル16は、回転可能にバッテリ保持部23に支持される。ダイヤル16は、360[°]以上回転可能である。ダイヤル16は、作業者に操作される。モータ6の駆動条件は、電流閾値を含む。ダイヤル16は、操作装置24により設定されたクラッチモードにおいて、電流閾値を変更するために操作される。
【0064】
バッテリ保持部23にダイヤル開口28が形成される。ダイヤル開口28は、バッテリ保持部23の前部の右部に形成される。ダイヤル16の少なくとも一部は、ダイヤル開口28に配置される。
【0065】
コントローラ17は、コンピュータシステムを含む。コントローラ17は、モータ6を制御する制御指令を出力する。コントローラ17の少なくとも一部は、コントローラケース26に収容される。コントローラ17は、コントローラケース26に保持された状態で、バッテリ保持部23に収容される。コントローラ17は、複数の電子部品が実装された回路基板を含む。回路基板に実装される電子部品として、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサ、ROM(Read Only Memory)又はストレージのような不揮発性メモリ、RAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリ、トランジスタ、コンデンサ、及び抵抗器が例示される。
【0066】
コントローラ17は、ダイヤル16の操作に基づいて、モータ6の駆動条件を設定する。上述のように、モータ6の駆動条件は、電流閾値を含む。コントローラ17は、クラッチモードにおいて、ダイヤル16の操作に基づいて、電流閾値を設定する。
【0067】
また、コントローラ17は、クラッチモードにおいて、モータ6の駆動においてモータ6に作用するトルクが設定した電流閾値を超えたときにモータ6を停止する。
【0068】
また、コントローラ17は、設定したモータ6の駆動条件を表示装置25に表示させる。
【0069】
[モータ及び動力伝達機構]
図5は、実施形態に係るドライバドリル1の一部を示す断面図である。図5に示すように、モータ6は、筒状のステータ61と、ステータ61の内側に配置されるロータ62とを有する。ロータ62は、軸方向に延伸するロータシャフト63を含む。
【0070】
ステータ61は、積層された複数の鋼板を含むステータコア61Aと、ステータコア61Aの前部に配置される前インシュレータ61Bと、ステータコア61Aの後部に配置される後インシュレータ61Cと、前インシュレータ61B及び後インシュレータ61Cを介してステータコア61Aに巻かれる複数のコイル61Dと、前インシュレータ61Bに取り付けられるセンサ回路基板61Eと、前インシュレータ61Bに支持される短絡部材61Fとを有する。センサ回路基板61Eは、ロータ62の回転を検出する複数の回転検出素子を有する。短絡部材61Fは、ヒュージング端子を介して複数のコイル61Dを接続する。短絡部材61Fは、リード線を介してコントローラ17に接続される。
【0071】
ロータ62は、回転軸AXを中心に回転する。ロータ62は、ロータシャフト63と、ロータシャフト63の周囲に配置されるロータコア62Aと、ロータコア62Aに保持される複数の永久磁石62Bとを有する。ロータコア62Aは、円筒状である。ロータコア62Aは、積層された複数の鋼板を含む。ロータコア62Aは、軸方向に延伸する貫通孔を有する。貫通孔は、周方向に複数形成される。永久磁石62Bは、ロータコア62Aの複数の貫通孔のそれぞれに配置される。
【0072】
センサ回路基板61Eの回転検出素子は、永久磁石62Bの磁界を検出することによって、ロータ62の回転を検出する。コントローラ17は、回転検出素子の検出データに基づいて、コイル61Dに駆動電流を供給する。
【0073】
ロータシャフト63は、回転軸AXを中心に回転する。ロータシャフト63の回転軸AXは、出力部8の回転軸と一致する。ロータシャフト63の前部は、ベアリング64に回転可能に支持される。ロータシャフト63の後部は、ベアリング65に回転可能に支持される。ベアリング64は、ステータ61の前方に配置されるブラケット板4Cに保持される。ベアリング65は、リヤカバー3に保持される。ロータシャフト63の前端部は、ベアリング64よりも前方に配置される。ロータシャフト63の前端部は、ケーシング4の内部空間に配置される。
【0074】
ロータシャフト63の前端部にピニオンギヤ31Sが設けられる。ピニオンギヤ31Sは、第1遊星歯車機構31のサンギヤとして機能する。ピニオンギヤ31Sは、モータ6により回転される。ピニオンギヤ31Sは、大径部311Sと、大径部311Sよりも前方に配置される小径部312Sとを含む。ロータシャフト63は、ピニオンギヤ31Sを介して、減速機構30の第1遊星歯車機構31に連結される。
【0075】
図6は、実施形態に係る減速機構30の一部を示す右前方からの斜視図である。スピンドル81は、第3キャリア33Cに連結される。実施形態において、スピンドル81の外周面に一対の平坦面81Tが形成される。平坦面81Tは、回転軸AXに平行である。一対の平坦面81Tは、相互に反対方向を向く。第3キャリア33Cは、スピンドル81の周囲に配置される。第3キャリア33Cの内周面は、一対の平坦面81Tのそれぞれに接触する支持面を含む。平坦面81Tにより、第3キャリア33Cとスピンドル81との相対回転が抑制される。第3キャリア33Cの回転により、スピンドル81が第3キャリア33Cと一緒に回転する。
【0076】
実施形態において、第3キャリア33Cの内側に配置されるスピンドル81の外径は、10mmである。一対の平坦面81Tの距離は、7.3mmである。これにより、出力部8の高トルク化に適応した高強度のスピンドル81が提供される。すなわち、出力部8が高トルク化しても、スピンドル81の劣化が抑制される。スピンドル81が劣化することは、スピンドル81の少なくとも一部に亀裂が生じることを含む。
【0077】
なお、更なる締付トルクを出せるようにするために、スピンドル81の外径は更に、太径とすることができる。すなわち、スピンドル81の外径は12mmにできる。そして、更に、スピンドル81の外径は14mmにできる。スピンドル81の外径の限界値は、16mmである。この10mm以上16mm以下の間で、締付トルクに応じたスピンドルの外径とすることができる。この間の中で、適した値・範囲を任意に採ることができる。
そして、平坦面81Tの距離も、大きくできる。すなわち、平坦面81Tの距離は、9mmにできる。更に、平坦面81Tの距離は、11mmにできる。平坦面81Tの距離の限界値は、13mmである。この7.3mm以上13mm以下の間で、平坦面81Tの距離とすことができる。この間の中で、適した値・範囲を任意に採ることができる。
【0078】
スピンドル81は、ベアリング83及びベアリング84により回転可能に支持される。スピンドル81は、ベアリング83及びベアリング84に支持されている状態で、前後方向に移動可能である。
【0079】
スピンドル81は、フランジ部81Fを有する。フランジ部81Fとベアリング83との間にコイルばね87が配置される。フランジ部81Fは、コイルばね87の前端部と接触する。コイルばね87は、スピンドル81を前方に移動させる弾性力を発生する。
【0080】
チャック82は、先端工具を保持可能である。チャック82は、スピンドル81の前部に連結される。スピンドル81の前端部にねじ孔81Rが設けられる。スピンドル81が回転することにより、チャック82が回転する。チャック82は、先端工具を保持した状態で回転する。
【0081】
震動機構40の第1カム41及び第2カム42のそれぞれは、第2ケーシング4Bの内側に配置される。前後方向において、第1カム41及び第2カム42のそれぞれは、ベアリング83とベアリング84との間に配置される。
【0082】
第1カム41は、リング状である。第1カム41は、スピンドル81の周囲に配置される。第1カム41は、スピンドル81に固定される。第1カム41は、スピンドル81と一緒に回転する。第1カム41の後面にカム歯が設けられる。第1カム41は、ストップリング44に支持される。ストップリング44は、スピンドル81の周囲に配置される。前後方向において、ストップリング44は、第1カム41とベアリング83との間に配置される。
【0083】
第2カム42は、リング状である。第2カム42は、第1カム41の後方に配置される。第2カム42は、スピンドル81の周囲に配置される。第2カム42は、スピンドル81と相対回転可能である。第2カム42の前面にカム歯が設けられる。第2カム42の前面のカム歯は、第1カム41の後面のカム歯に噛み合う。第2カム42の後面に爪が設けられる。
【0084】
前後方向において、第2カム42とベアリング84との間に支持リング45が配置される。支持リング45は、第2ケーシング4Bの内側に配置される。支持リング45は、第2ケーシング4Bに固定される。支持リング45の前面に複数のスチールボール46が配置される。スチールボール46と第2カム42との間にワッシャ47が配置される。第2カム42は、支持リング45とワッシャ47とにより規定される空間において、前後移動を規制された状態で回転可能である。
【0085】
震動切換リング43は、震動モードと非震動モードとを切り換える。モード切換リング13は、カムリング48を介して震動切換リング43に連結される。モード切換リング13とカムリング48とは一体で回転可能である。震動切換リング43は、前後方向に移動可能である。震動切換リング43は、突起部43Tを有する。突起部43Tは、第2ケーシング4Bに設けられたガイド孔に挿入される。震動切換リング43は、第2ケーシング4Bに設けられたガイド孔にガイドされながら前後方向に移動可能である。突起部43Tにより、震動切換リング43の回転は規制される。作業者によりモード切換リング13が操作されることにより、震動切換リング43は、前後方向に移動する。震動切換リング43は、前進位置と前進位置よりも後方の後退位置との間を前後方向に移動することにより、震動モードと非震動モードとを切り換える。モード切換リング13が操作されることにより、震動モードと非震動モードとが切り換えられる。
【0086】
震動モードは、第2カム42の回転が規制される状態を含む。非震動モードは、第2カム42の回転が許容される状態を含む。震動切換リング43が前進位置に移動すると、第2カム42の回転が規制される。震動切換リング43が後退位置に移動すると、第2カム42の回転が許容される。
【0087】
震動モードにおいては、前進位置に移動した震動切換リング43の少なくとも一部が第2カム42に接触する。震動切換リング43と第2カム42とが接触することにより、第2カム42の回転が規制される。第2カム42の回転が規制されている状態で、モータ6が駆動すると、スピンドル81に固定されている第1カム41は、第2カム42のカム歯に当たりながら回転する。これにより、スピンドル81は、前後方向に震動しながら回転する。
【0088】
非震動モードにおいては、後退位置に移動した震動切換リング43が第2カム42から離れる。震動切換リング43と第2カム42とが離れることにより、第2カム42の回転が許容される。第2カム42の回転が許容されている状態で、モータ6が駆動すると、第2カム42は、第1カム41及びスピンドル81と一緒に回転する。これにより、スピンドル81は、前後方向に震動することなく回転する。
【0089】
震動切換リング43は、第1カム41及び第2カム42の周囲に配置される。また、震動切換リング43は、第2カム42の後面と対向する対向部43Sを有する。対向部43Sは、震動切換リング43の後部から径方向内側に突出する。
【0090】
モード切換リング13が操作され、震動切換リング43が前進位置に移動すると、第2カム42の後面の爪と震動切換リング43の対向部43Sとが接触する。これにより、第2カム42の回転が規制される。このように、モード切換リング13が操作され、震動切換リング43が前進位置に移動することにより、震動機構40は、震動モードに切り換えられる。
【0091】
モード切換リング13が操作され、震動切換リング43が後退位置に移動すると、震動切換リング43の対向部43Sが第2カム42から離れる。これにより、第2カム42の回転が許容される。このように、モード切換リング13が操作され、震動切換リング43が後退位置に移動することにより、震動機構40は、非震動モードに切り換えられる。
【0092】
図7は、実施形態に係るドライバドリル1の一部を示す前方からの斜視図である。図8は、実施形態に係るドライバドリル1の一部を示す側面図である。図9は、実施形態に係るドライバドリル1の一部を示す断面図である。
【0093】
速度切換レバー12は、減速機構30の速度モードを変更するために操作される。速度切換レバー12は、ケーシング4の上方に設けられる。速度切換レバー12は、前後方向に移動可能である。速度切換レバー12は、作業者に操作される。減速機構30の速度モードは、低速モード(1速)と中速モード(2速)と高速モード(3速)とを含む。速度切換レバー12が可動範囲の前部に移動するように操作されることにより、減速機構30の速度モードが低速モード(1速)に設定される。速度切換レバー12が可動範囲の中間部に移動するように操作されることにより、減速機構30の速度モードが中速モード(2速)に設定される。速度切換レバー12が可動範囲の後部に移動するように操作されることにより、減速機構30の速度モードが高速モード(3速)に設定される。
【0094】
図10は、実施形態に係る減速機構30を示す前方からの分解斜視図である。図11は、実施形態に係る減速機構30の一部を示す後方からの斜視図である。図12は、実施形態に係る減速機構30の一部を示す後方からの斜視破断図である。
【0095】
第1遊星歯車機構31は、プラネタリギヤ311P(第1プラネタリギヤ)と、プラネタリギヤ311Pよりも前方に配置されるプラネタリギヤ312P(第2プラネタリギヤ)と、複数のプラネタリギヤ311P及び複数のプラネタリギヤ312Pのそれぞれを支持する第1段キャリア311Cと、複数のプラネタリギヤ312Pのそれぞれを支持する第2段キャリア312Cと、複数のプラネタリギヤ311Pの周囲に配置されるインターナルギヤ311Rと、複数のプラネタリギヤ312Pの周囲に配置されるインターナルギヤ312Rとを有する。図5に示したように、ロータシャフト63の前端部にピニオンギヤ31Sが設けられる。ピニオンギヤ31Sは、第1遊星歯車機構31のサンギヤとして機能する。ピニオンギヤ31Sは、ステータ61の前方側に配置される。ピニオンギヤ31Sは、ロータ62により回転される。ピニオンギヤ31Sは、ロータ62により直接に回転されてもよいし間接に回転されてもよい。
【0096】
第2遊星歯車機構32は、サンギヤ32Sと、サンギヤ32Sの周囲に配置される複数のプラネタリギヤ32Pと、複数のプラネタリギヤ32Pを支持する第2キャリア32Cと、複数のプラネタリギヤ32Pの周囲に配置されるインターナルギヤ32Rとを有する。サンギヤ32Sは、インターナルギヤ311R及びインターナルギヤ312Rの前方側に配置される。サンギヤ32Sは、プラネタリギヤ311P及びプラネタリギヤ312Pにより直接に回転されてもよいし間接に回転されてもよい。プラネタリギヤ32Pは、サンギヤ32Sに噛み合う。インターナルギヤ32Rはプラネタリギヤ32Pと噛み合う。
【0097】
第3遊星歯車機構33は、サンギヤ33Sと、サンギヤ33Sの周囲に配置される複数のプラネタリギヤ33Pと、複数のプラネタリギヤ33Pを支持する第3キャリア33Cと、複数のプラネタリギヤ33Pの周囲に配置されるインターナルギヤ33Rとを有する。
【0098】
プラネタリギヤ311Pは、ピニオンギヤ31Sの大径部311Sの周囲に複数配置される。プラネタリギヤ312Pは、ピニオンギヤ31Sの小径部312Sの周囲に複数配置される。
【0099】
ケーシング4は、ステータ61の前方側に配置される。ケーシング4は、ピニオンギヤ31S、プラネタリギヤ311P、プラネタリギヤ312P、インターナルギヤ311R、インターナルギヤ312R、サンギヤ32S、及びプラネタリギヤ32Pを収容する。スピンドル81は、インターナルギヤ32Rの前方側に配置される。スピンドル81は、プラネタリギヤ32Pにより直接に回転されてもよいし間接に回転されてもよい。スピンドル81の前部にチャック82が固定される。
【0100】
プラネタリギヤ311Pは、第1ピン311Aに回転可能に支持される。第1ピン311Aは、第1段キャリア311Cに支持される。第1ピン311Aは、第1段キャリア311Cの後面から後方に突出する。第1ピン311Aは、周方向に間隔をあけて複数設けられる。実施形態において、第1ピン311Aは、周方向に等間隔に4つ設けられる。プラネタリギヤ311Pは、複数(4つ)の第1ピン311Aのそれぞれに1つずつ支持される。プラネタリギヤ311Pは、第1段キャリア311Cよりも後方に配置される。第1段キャリア311Cは、第1ピン311Aを介してプラネタリギヤ311Pを回転可能に支持する。
【0101】
プラネタリギヤ312Pは、第2ピン312Aに回転可能に支持される。第2ピン312Aは、第1段キャリア311C及び第2段キャリア312Cのそれぞれに支持される。第1段キャリア311Cは、第2段キャリア312Cよりも後方に配置される。第2ピン312Aの後端部は、第1段キャリア311Cに支持される。第2ピン312Aの前端部は、第2段キャリア312Cに支持される。第2ピン312Aは、周方向に間隔をあけて複数設けられる。実施形態において、第2ピン312Aは、周方向に等間隔に4つ設けられる。周方向において、第1ピン311Aの位置と第2ピン312Aの位置とは、異なる。周方向において、相互に隣接する一対の第1ピン311Aの間に第2ピン312Aが配置される。プラネタリギヤ312Pは、複数(4つ)の第2ピン312Aのそれぞれに1つずつ支持される。前後方向(軸方向)において、プラネタリギヤ312Pは、第1段キャリア311Cと第2段キャリア312Cとの間に配置される。第1段キャリア311C及び第2段キャリア312Cのそれぞれは、第2ピン312Aを介してプラネタリギヤ312Pを回転可能に支持する。第2段キャリア312Cの外周部にギヤが設けられる。
【0102】
インターナルギヤ311R(第1インターナルギヤ)は、複数のプラネタリギヤ311Pの周囲に配置される。インターナルギヤ312R(第2インターナルギヤ)は、複数のプラネタリギヤ312Pの周囲に配置される。プラネタリギヤ311Pの外径は、プラネタリギヤ312Pの外径よりも小さい。
【0103】
第2遊星歯車機構32は、サンギヤ32Sと、サンギヤ32Sの周囲に配置される複数のプラネタリギヤ32Pと、複数のプラネタリギヤ32Pを支持する第2キャリア32Cと、複数のプラネタリギヤ32Pの周囲に配置されるインターナルギヤ32Rとを有する。サンギヤ32Sは、第2段キャリア312Cの前方に配置される。サンギヤ32Sの直径は、第2段キャリア312Cの直径よりも小さい。第2段キャリア312Cとサンギヤ32Sとは一体である。第2段キャリア312Cとサンギヤ32Sとは一緒に回転する。第2キャリア32Cにピン32Aが設けられる。プラネタリギヤ32Pは、ピン32Aに回転可能に支持される。第2キャリア32Cは、ピン32Aを介してプラネタリギヤ32Pを回転可能に支持する。
【0104】
第3遊星歯車機構33は、サンギヤ33Sと、サンギヤ33Sの周囲に配置される複数のプラネタリギヤ33Pと、複数のプラネタリギヤ33Pを支持する第3キャリア33Cと、複数のプラネタリギヤ33Pの周囲に配置されるインターナルギヤ33Rとを有する。サンギヤ33Sは、第2キャリア32Cの前方に配置される。サンギヤ33Sの直径は、第2キャリア32Cの直径よりも小さい。第2キャリア32Cとサンギヤ33Sとは一体である。第2キャリア32Cとサンギヤ33Sとは一緒に回転する。第3キャリア33Cにピン33Aが設けられる。プラネタリギヤ33Pは、ピン33Aに回転可能に支持される。第3キャリア33Cは、ピン33Aを介してプラネタリギヤ33Pを回転可能に支持する。
【0105】
図13は、実施形態に係る第1速度切換機構71及び第2速度切換機構72を示す側面図である。図14は、実施形態に係る第1速度切換機構71及び第2速度切換機構72を示す右下後方からの斜視図である。減速機構30は、第1速度切換機構71と、第2速度切換機構72とを有する。
【0106】
第1速度切換機構71は、第1遊星歯車機構31のインターナルギヤ312Rの回転が阻止されインターナルギヤ311Rの回転が許容される第1減速モードと、第1遊星歯車機構31のインターナルギヤ311Rの回転が阻止されインターナルギヤ312Rの回転が許容される第2減速モードとを切り換える。
【0107】
第1速度切換機構71は、チェンジリング500と、第1切換ワイヤ510と、第1可動部材610と、第1スプリング630とを有する。
【0108】
チェンジリング500は、リング部500Bと、リング部500Bに固定される複数の凸部500Cとを有する。凸部500Cは、第1ケーシング4Aの内周面に設けられたガイド溝に配置される。第1ケーシング4Aの内周面に設けられたガイド溝は、前後方向に延びる。凸部500Cが第1ケーシング4Aのガイド溝に配置されることにより、第1ケーシング4Aに対するチェンジリング500の相対回転が抑制される。チェンジリング500は、第1ケーシング4Aの内側において前後方向に移動可能である。チェンジリング500は、凸部500Cが第1ケーシング4Aの内周面に設けられているガイド溝にガイドされながら前後方向に移動することができる。チェンジリング500は、インターナルギヤ311R及びインターナルギヤ312Rの少なくとも一方の周囲に配置される。
【0109】
チェンジリング500は、第1切換ワイヤ510に連結される。チェンジリング500は、第1ケーシング4Aの内側において前後方向に移動可能である。チェンジリング500が前方に移動することにより第1減速モードになり、チェンジリング500が後方に移動することにより第2減速モードになる。
【0110】
実施形態において、プラネタリギヤ311P及びインターナルギヤ311Rからなる第1遊星歯車機構31の後段部(第1段部)の減速比と、プラネタリギヤ312P及びインターナルギヤ312Rからなる第1遊星歯車機構31の前段部(第2段部)の減速比とは、異なる。プラネタリギヤ312P及びインターナルギヤ312Rからなる前段部の減速比は、プラネタリギヤ311P及びインターナルギヤ311Rからなる後段部の減速比よりも大きい。ピニオンギヤ31Sが一定の回転数で回転した場合、第1減速モードにおける第2段キャリア312Cの回転速度は、第2減速モードにおける第2段キャリア312Cの回転速度よりも遅い。
【0111】
実施形態において、第1遊星歯車機構31の後段部(第1段部)の減速比は、1/4.000であり、前端部(第2段部)の減速比は、1/5.429である。
【0112】
実施形態において、第2遊星歯車機構32の減速比及び第3遊星歯車機構33の減速比は、第1遊星歯車機構31の後段部(第1段部)の減速比よりも小さい。第2遊星歯車機構32の減速比は、第3遊星歯車機構33の減速比よりも小さい。実施形態において、第2遊星歯車機構32の減速比は、1/2.857である。第3遊星歯車機構33の減速比は、1/3.684である。
【0113】
第1切換ワイヤ510は、第1ケーシング4Aの外側に配置される。第1切換ワイヤ510は、第1ケーシング4Aの外側において前後方向に移動可能である。第1切換ワイヤ510の先端部は、チェンジリング500に設けられた溝500Aに挿入される。第1ケーシング4Aに貫通孔4Hが設けられる。第1切換ワイヤ510の先端部は、貫通孔4Hを介して第1ケーシング4Aの内側に配置される。第1切換ワイヤ510の先端部は、第1ケーシング4Aの内側において溝500Aに挿入される。第1切換ワイヤ510の上部は、第1可動部材610に固定される。第1可動部材610は、速度切換レバー12に接続される。第1可動部材610は、ガイドロッド600により前後方向にガイドされる。ガイドロッド600は、前後方向に延びるように配置される。ガイドロッド600は、ケーシング4に固定される。図9に示すように、実施形態において、ガイドロッド600の後端部は、ブラケット板4Cに固定される。ガイドロッド600の前端部は、第2ケーシング4Bに固定される。第1可動部材610に前後方向に延びる第1ガイド穴が形成される。ガイドロッド600は、第1可動部材610の第1ガイド穴を貫通する。第1スプリング630は、コンプレッションスプリングである。第1スプリング630の後端部は、ブラケット板4Cに支持される。第1スプリング630の前端部は、第1可動部材610に接続される。第1スプリング630は、第1可動部材610が前方(一方向)に移動するように弾性力を発生する。第1スプリング630は、第1可動部材610及び第1切換ワイヤ510を介してチェンジリング500を前方に付勢する。
【0114】
インターナルギヤ311Rの外周面に複数のカム歯311Fが設けられる。インターナルギヤ312Rの外周面に複数のカム歯312Fが設けられる。凸部500Cは、インターナルギヤ311Rのカム歯311F及びインターナルギヤ312Rのカム歯312Fのいずれか一方に接触する接触部材である。凸部500Cは、第1ケーシング4Aの内周面に設けられたガイド溝にガイドされながら、インターナルギヤ311Rの外周面に対向する位置とインターナルギヤ312Rの外周面に対向する位置とに移動する。カム歯311Fと凸部500Cとが接触することにより、インターナルギヤ311Rの回転が阻止される。カム歯312Fと凸部500Cとが接触することにより、インターナルギヤ312Rの回転が阻止される。
【0115】
チェンジリング500は、第1切換ワイヤ510及び第1可動部材610を介して速度切換レバー12に接続される。速度切換レバー12は、第1可動部材610が前後方向に移動するように操作される。速度切換レバー12が前後方向に移動するように操作されることにより、第1可動部材610及び第1切換ワイヤ510が前後方向に移動し、チェンジリング500が前後方向に移動する。
【0116】
第1可動部材610と第1切換ワイヤ510とチェンジリング500とが前方に移動して、チェンジリング500がインターナルギヤ312Rの周囲に配置され、凸部500Cがインターナルギヤ312Rの外周面に対向するように配置されると、カム歯312Fと凸部500Cとが接触する。これにより、インターナルギヤ312Rの回転が阻止される。すなわち、第1可動部材610と第1切換ワイヤ510とチェンジリング500とが前方に移動して、インターナルギヤ312Rの回転が阻止されることにより、第1遊星歯車機構31が第1減速モードになる。
【0117】
第1可動部材610と第1切換ワイヤ510とチェンジリング500とが後方に移動して、チェンジリング500がインターナルギヤ311Rの周囲に配置され、凸部500Cがインターナルギヤ311Rの外周面に対向するように配置されると、カム歯311Fと凸部500Cとが接触する。これにより、インターナルギヤ311Rの回転が阻止される。すなわち、第1可動部材610と第1切換ワイヤ510とチェンジリング500とが後方に移動して、インターナルギヤ311Rの回転が阻止されることにより、第1遊星歯車機構31が第2減速モードになる。
【0118】
第1可動部材610は、第1ケーシング4Aに対して、インターナルギヤ311R及びインターナルギヤ312Rを回転固定と回転可能とに切換可能である。
【0119】
第2速度切換機構72は、第2遊星歯車機構32の減速機能が有効化される有効モードと、第2遊星歯車機構32の減速機能が無効化される無効モードとを切り換える。第2遊星歯車機構32を有効モードにすることは、インターナルギヤ32Rの回転を阻止することを含む。第2遊星歯車機構32を無効モードにすることは、インターナルギヤ32Rの回転を許容することを含む。インターナルギヤ32Rの回転が阻止されることにより、第2遊星歯車機構32が有効モードになる。インターナルギヤ32Rの回転が許容されることにより、第2遊星歯車機構32が無効モードになる。
【0120】
第2速度切換機構72は、インターナルギヤ32Rに連結される第2切換ワイヤ520と、インターナルギヤ33Rに設けられたカム歯33Fと、第2可動部材620と、第2スプリング640とを有する。
【0121】
第2切換ワイヤ520は、第1ケーシング4Aの外側に配置される。第2切換ワイヤ520は、第1ケーシング4Aの外側において前後方向に移動可能である。第2切換ワイヤ520の先端部は、インターナルギヤ32Rに設けられた溝32Eに挿入される。第1ケーシング4Aに貫通孔4Jが設けられる。第2切換ワイヤ520の先端部は、貫通孔4Jを介して第1ケーシング4Aの内側に配置される。第2切換ワイヤ520の先端部は、第1ケーシング4Aの内側において溝32Eに挿入される。第2切換ワイヤ520の上部は、第2可動部材620に固定される。第2可動部材620は、速度切換レバー12に接続される。第2可動部材620は、第1可動部材610よりも前方に配置される。第2可動部材620は、ガイドロッド600により前後方向にガイドされる。第2可動部材620に前後方向に延びる第2ガイド穴が形成される。ガイドロッド600は、第2可動部材620の第2ガイド穴を貫通する。第2スプリング640は、コンプレッションスプリングである。第2スプリング640の前端部は、第2ケーシング4Bに支持される。第2スプリング640の後端部は、第2可動部材620に接続される。第2スプリング640は、第2可動部材620が後方(他方向)に移動するように弾性力を発生する。第2スプリング640は、第2可動部材620及び第2切換ワイヤ520を介してインターナルギヤ32Rを後方に付勢する。
【0122】
インターナルギヤ32Rの外周面に複数のカム歯32Fが設けられる。カム歯32Fは、インターナルギヤ33Rのカム歯33Fと噛み合うことができる。インターナルギヤ32Rがインターナルギヤ33Rの内側に挿入されることによりインターナルギヤ32Rの回転がインターナルギヤ33Rのカム歯33Fによって阻止される。
【0123】
インターナルギヤ33Rは、インターナルギヤ32Rの前方に配置される。インターナルギヤ33Rは、第2ケーシング4Bに固定される。インターナルギヤ33Rの外周面にカム歯33Gが設けられる。カム歯33Gは、第2ケーシング4Bの内周面に設けられた凹部に挿入される。カム歯33Gが第2ケーシング4Bの内周面に設けられた凹部に挿入されることにより、インターナルギヤ33Rと第2ケーシング4Bとの相対移動が抑制される。
【0124】
速度切換レバー12は、第2可動部材620が前後方向に移動するように操作される。速度切換レバー12が前後方向に移動するように操作されることにより、第2可動部材620及び第2切換ワイヤ520が前後方向に移動し、インターナルギヤ32Rが前後方向に移動する。インターナルギヤ32Rが前後方向に移動することにより、インターナルギヤ32Rがインターナルギヤ33Rに挿入される状態とインターナルギヤ33Rから抜去される状態とが切り換えられる。
【0125】
第2可動部材620と第2切換ワイヤ520とインターナルギヤ32Rとが前方に移動して、インターナルギヤ32Rの少なくとも一部がインターナルギヤ33Rの内側に挿入され、インターナルギヤ33Rのカム歯33Fとインターナルギヤ32Rのカム歯32Fとが噛み合うことにより、インターナルギヤ32Rの回転が阻止される。すなわち、第2可動部材620と第2切換ワイヤ520とインターナルギヤ32Rとが前方に移動して、インターナルギヤ32Rの回転が阻止されることにより、第2遊星歯車機構32が有効モードになる。
【0126】
第2可動部材620と第2切換ワイヤ520とインターナルギヤ32Rとが後方に移動して、インターナルギヤ32Rがインターナルギヤ33Rの内側から抜去され、インターナルギヤ33Rのカム歯33Fとインターナルギヤ32Rのカム歯32Fとが離れることにより、インターナルギヤ32Rの回転が許容される。すなわち、第2可動部材620と第2切換ワイヤ520とインターナルギヤ32Rとが後方に移動して、インターナルギヤ32Rの回転が許容されることにより、第2遊星歯車機構32が無効モードになる。
【0127】
第2可動部材620は、第1ケーシング4Aに対して、インターナルギヤ32Rを回転固定と回転可能とに切換可能である。
【0128】
第2遊星歯車機構32が有効モードにおいては、インターナルギヤ32Rは、プラネタリギヤ32Pのみに噛み合う。第2遊星歯車機構32が無効モードにおいては、インターナルギヤ32Rは、プラネタリギヤ32P及び第2段キャリア312Cの両方に噛み合う。
【0129】
上述のように、実施形態において、減速機構30の速度モードは、低速モード(1速)と中速モード(2速)と高速モード(3速)とを含む。
【0130】
速度切換レバー12の可動範囲は、前後方向に規定される。速度切換レバー12が可動範囲の前部に移動するように操作されることにより、減速機構30の速度モードが低速モード(1速)に設定される。速度切換レバー12が可動範囲の中間部に移動するように操作されることにより、減速機構30の速度モードが中速モード(2速)に設定される。速度切換レバー12が可動範囲の後部に移動するように操作されることにより、減速機構30の速度モードが高速モード(3速)に設定される。
【0131】
低速モードは、第1遊星歯車機構31が第1減速モードに設定され、且つ、第2遊星歯車機構32が有効モードに設定されることを含む。速度切換レバー12が可動範囲の前部に移動するように操作され、第2可動部材620が前方に移動することにより、第1遊星歯車機構31が第1減速モードに設定され、且つ、第2遊星歯車機構32が有効モードに設定される。すなわち、低速モード(1速)においては、第1遊星歯車機構31の前段部(第2段部)と、第2遊星歯車機構32と、第3遊星歯車機構33とが使用(有効化)される。
【0132】
中速モードは、第1遊星歯車機構31が第1減速モードに設定され、且つ、第2遊星歯車機構32が無効モードに設定されることを含む。速度切換レバー12が可動範囲の中間部に移動するように操作されることにより、第1遊星歯車機構31が第1減速モードに設定され、且つ、第2遊星歯車機構32が無効モードに設定される。すなわち、中速モード(2速)においては、第1遊星歯車機構31の前段部(第2段部)と、第3遊星歯車機構33とが使用(有効化)される。
【0133】
高速モードは、第1遊星歯車機構31が第2減速モードに設定され、且つ、第2遊星歯車機構32が無効モードに設定されることを含む。速度切換レバー12が可動範囲の後部に移動するように操作され、第1可動部材610が後方に移動することにより、第1遊星歯車機構31が第2減速モードに設定され、且つ、第2遊星歯車機構32が無効モードに設定される。すなわち、高速モード(3速)においては、第1遊星歯車機構31の後段部(第1段部)と、第3遊星歯車機構33とが使用(有効化)される。
【0134】
図15は、実施形態に係る減速機構30が低速モード(1速)に設定されたときのドライバドリル1を上方から見た図である。図16は、実施形態に係る減速機構30が低速モード(1速)に設定されたときのドライバドリル1を示す断面図であり、図17のC-C線断面矢視図に相当する。図17は、実施形態に係る減速機構30が低速モード(1速)に設定されたときのドライバドリル1を示す断面図であり、図15のP-P線断面矢視図に相当する。図18は、実施形態に係る減速機構30が低速モード(1速)に設定されたときのドライバドリル1の内部構造を示す図である。
【0135】
図19は、実施形態に係る減速機構30が中速モード(2速)に設定されたときのドライバドリル1を上方から見た図である。図20は、実施形態に係る減速機構30が中速モード(2速)に設定されたときのドライバドリル1を示す断面図であり、図21のC-C線断面矢視図に相当する。図21は、実施形態に係る減速機構30が中速モード(2速)に設定されたときのドライバドリル1を示す断面図であり、図19のP-P線断面矢視図に相当する。図22は、実施形態に係る減速機構30が中速モード(2速)に設定されたときのドライバドリル1の内部構造を示す図である。
【0136】
図23は、実施形態に係る減速機構30が高速モード(3速)に設定されたときのドライバドリル1を上方から見た図である。図24は、実施形態に係る減速機構30が高速モード(3速)に設定されたときのドライバドリル1を示す断面図であり、図25のC-C線断面矢視図に相当する。図25は、実施形態に係る減速機構30が高速モード(3速)に設定されたときのドライバドリル1を示す断面図であり、図23のP-P線断面矢視図に相当する。図26は、実施形態に係る減速機構30が高速モード(3速)に設定されたときのドライバドリル1の内部構造を示す図である。
【0137】
速度切換レバー12は、第1可動部材610が前後方向に移動するように作業者に操作される。第1可動部材610は、ガイドロッド600にガイドされながら前後方向に移動する。速度切換レバー12は、第2可動部材620が前後方向に移動するように作業者に操作される。第2可動部材620は、ガイドロッド600にガイドされながら前後方向に移動する。第1スプリング630は、第1可動部材610が前方に移動するように弾性力を発生する。第2スプリング640は、第2可動部材620が後方に移動するように弾性力を発生する。
【0138】
図15図16図17、及び図18に示すように、減速機構30を中速モード(2速)から低速モード(1速)にする場合、作業者は、第2スプリング640の弾性力(付勢力)に抗って、速度切換レバー12が前方に移動するように速度切換レバー12を操作する。速度切換レバー12が前方に移動することにより、第2可動部材620が第2スプリング640の弾性力に抗って前方に移動する。速度切換レバー12の左右両側には、リーフスプリング530が固定されている。リーフスプリング530の凸部530Tがモータ収容部21の一部に設けられた凹部に挿入されることにより、速度切換レバー12が1速の位置で位置決めされる。第2可動部材620が第2可動部材620の可動範囲の前方に移動することにより、第1遊星歯車機構31のインターナルギヤ312Rの回転が阻止されインターナルギヤ311Rの回転が許容される第1減速モードに設定され、且つ、第2遊星歯車機構32のインターナルギヤ32Rの回転が阻止される有効モードに設定される。
【0139】
図23図24図25、及び図26に示すように、減速機構30を中速モード(2速)から高速モード(3速)にする場合、作業者は、第1スプリング630の弾性力(付勢力)に抗って、速度切換レバー12が後方に移動するように速度切換レバー12を操作する。速度切換レバー12が後方に移動することにより、第1可動部材610が第1スプリング630の弾性力に抗って後方に移動する。速度切換レバー12の左右両側には、リーフスプリング530が固定されている。リーフスプリング530の凸部530Tがモータ収容部21の一部に設けられた凹部に挿入されることにより、速度切換レバー12が3速の位置で位置決めされる。第1可動部材610が第1可動部材610の可動範囲の後方に移動することにより、第1遊星歯車機構31のインターナルギヤ311Rの回転が阻止されインターナルギヤ312Rの回転が許容される第2減速モードに設定され、且つ、第2遊星歯車機構32のインターナルギヤ32Rの回転が許容される無効モードに設定される。
【0140】
図19図20図21、及び図22に示すように、減速機構30を低速モード(1速)から中速モード(2速)にする場合、作業者は、速度切換レバー12が後方に移動するように速度切換レバー12を操作する。速度切換レバー12及び第2可動部材620は、第2スプリング640の弾性力により、後方に円滑に移動することができる。減速機構30を高速モード(3速)から中速モード(2速)にする場合、作業者は、速度切換レバー12が前方に移動するように速度切換レバー12を操作する。速度切換レバー12及び第1可動部材610は、第1スプリング630の弾性力により、前方に円滑に移動することができる。第1可動部材610が第1可動部材610の前方に移動し、第2可動部材620が第2可動部材620の後方に移動することにより、第1遊星歯車機構31のインターナルギヤ312Rの回転が阻止されインターナルギヤ311Rの回転が許容される第1減速モードに設定され、且つ、第2遊星歯車機構32のインターナルギヤ32Rの回転が許容される無効モードに設定される。
【0141】
[諸元]
図27は、実施形態に係るドライバドリル1の締付トルクと全長との関係を示す図である。ドライバドリル1の締付トルクとは、出力部8の最大締付トルクをいう。図5に示すように、ドライバドリル1の全長LTとは、モータ6を包囲する包囲部材の後端部とチャック82の前端部との前後方向の距離をいう。
【0142】
実施形態において、ドライバドリル1は、以下の条件2及び条件3を満足する。
【0143】
[条件2]最大締付トルクが155Nm以上(減速機構30の変速段数は3段)
[条件3]全長LTが210mm以下(減速機構30の変速段数は3段)
【0144】
なお、実施形態に係る減速機構30の変速段数は、3段であるが、減速機構30の変速段数を2段とした場合、ドライバドリル1は、以下の条件1を満足してもよい。
【0145】
[条件1]最大締付トルクが160Nm以上(減速機構30の変速段数は2段)
【0146】
なお、減速機構30の変速段数が3段の場合において、ドライバドリル1が上述の条件1を満足してもよい。
【0147】
[条件1]及び[条件2]において、最大締付トルクの上限値は特に限定されないが、例えば250Nmでもよい。すなわち、出力部8の最大締付トルクは、155Nm以上250Nm以下でもよい。出力部8の最大締付トルクは、160Nm以上250Nm以下でもよい。
【0148】
図5に示すように、実施形態において、モータ6の前後方向の寸法LMは、50mmである。動力伝達機構7の前後方向の寸法LGは、90mmである。チャック82の前後方向の寸法LCは、50mmである。
【0149】
図5に示す例において、モータ6の寸法LMは、ロータシャフト63の後端部と、ロータシャフト63の前端部を支持するベアリング64の後端部との前後方向の距離である。
このモータ6の寸法LMは、35mmから60mmの間で調整可能である。寸法を大きくした場合、モータの出力が大きくなり、減速比を小さくすることができる。また、寸法を小さくした場合、モータの出力が小さくなり、減速比を大きくすることとなる。寸法LMは、モータの大きさ・減速比を検討して、良い値を採ることができる。
採用したのは、寸法LMが50mmであるが、35mmから60mmの間の中で、40mmから55mmの間がより適した範囲と言える。この間の中で、適した値・範囲を任意に採ることができる。
モータ6の寸法LMを検討する際に、モータ6の直径も重要である。モータの出力は、モータの体積と、定性的な関係があるからである。
今回採用したモータ6の直径は、52mmである。しかし、この直径は40mmから65mmの間で調整可能である。例えば、直径を40mmとした場合は、寸法LMを長くするとよい。また、例えば、直径を65mmとした場合には、寸法LMを小さくすることができる。
採用したのは、直径が52mmであるが、40mmから65mmの間の中で、48mmから55mmの間がより適した範囲と言える。この間の中で、適した値・範囲を任意に採ることができる。
【0150】
図5に示す例において、動力伝達機構7の寸法LGは、ベアリング64の後端部と、ケーシング4の前端部との前後方向の距離である。
【0151】
図5に示す例において、チャック82の寸法LCは、ケーシング4の前端部と、チャック82の前端部との前後方向の距離である。
【0152】
また、チャック82は、スピンドル81の前端部に取り付けられる。図9に示すように、チャック82が取り付けられるスピンドル81の前端部の外径DSは、9/16インチである。
【0153】
図28は、実施形態に係るドライバドリル1のモータトルクとギヤ比との関係を示す図である。モータトルクとは、モータ6の出力トルクをいう。ギヤ比とは、減速機構30の減速比をいう。図28に示すように、モータトルクが大きい場合、ギヤ比が小さくても、出力部8の最大締付トルクは、大きい値を示すことができる。モータトルクが小さくても、ギヤ比が大きい場合、出力部8の最大締付トルクは、大きい値を示すことができる。
【0154】
上述のように、第1遊星歯車機構31の後段部(第1段部)の減速比は、1/4.000であり、前段部(第2段部)の減速比は、1/5.429である。第2遊星歯車機構32の減速比は、1/2.857である。第3遊星歯車機構33の減速比は、1/3.684である。減速機構30が1速である場合、減速機構30の減速比(ギヤ比)は、最大値を示す。減速機構30が1速であることは、第1遊星歯車機構31の前段部(第2段部)と、第2遊星歯車機構32と、第3遊星歯車機構33とが使用されることである。減速機構30が2速であることは、第1遊星歯車機構31の前段部(第2段部)と、第3遊星歯車機構33とが使用されることである。減速機構30が3速であることは、第1遊星歯車機構31の後段部(第1段部)と、第3遊星歯車機構33とが使用されることである。
【0155】
実施形態において、減速機構30の最大ギヤ比は、1/57.14である。減速機構30の最大ギヤ比が1/57.14である場合において、モータトルクが例えば2.80014Nmのモータ6を使用することにより、出力部8の最大締付トルクが160Nmになる。
【0156】
[効果]
以上説明したように、実施形態において、ドライバドリル1は、ステータ61及びロータ62を有するモータ6と、モータ6よりも前方に配置され、ロータ62から伝達された回転力に基づいて前後方向に延びる回転軸AXを中心に回転するスピンドル81と、スピンドル81に取り付けられるチャック82と、を有する出力部8と、ロータ62の回転を減速して、ロータ62よりも低い回転速度で出力部8を回転させる減速機構30と、を備えてもよい。出力部8の最大締付トルクは、160Nm以上でもよい。
【0157】
上記の構成では、ドライバドリル1の出力部8が高トルク化される。
【0158】
実施形態において、減速機構30は、3段変速でもよい。
【0159】
上記の構成では、作業内容に応じて出力部8が適正なトルクで回転する。
【0160】
実施形態において、ドライバドリル1は、ステータ61及びロータ62を有するモータ6と、モータ6よりも前方に配置され、ロータ62から伝達された回転力に基づいて前後方向に延びる回転軸AXを中心に回転するスピンドル81と、スピンドル81に取り付けられるチャック82と、を有する出力部8と、ロータ62の回転を減速して、ロータ62よりも低い回転速度で出力部8を回転させる減速機構30と、を備えてもよい。減速機構30は、3段変速でもよい。出力部8の最大締付トルクは、155Nm以上でもよい。
【0161】
上記の構成では、ドライバドリル1の出力部8が高トルク化される。
【0162】
実施形態において、ドライバドリル1は、ステータ61及びロータ62を有するモータ6と、モータ6よりも前方に配置され、ロータ62から伝達された回転力に基づいて前後方向に延びる回転軸AXを中心に回転するスピンドル81と、スピンドル81に取り付けられるチャック82と、を有する出力部8と、ロータ62の回転を減速して、ロータ62よりも低い回転速度で出力部8を回転させる減速機構30と、モータ6の周囲及び後部を覆う包囲部材であるモータ収容部21及びリヤカバー3と、モータ収容部21の前部に接続され減速機構30を収容するケーシング4と、を備えてもよい。チャック82の前端部は、ケーシング4の前方に配置されてもよい。減速機構30は、3段変速でもよい。リヤカバー3の後端部とチャック82の前端部との前後方向の距離を示す全長LTは、210mm以下でもよい。
【0163】
上記の構成では、ドライバドリル1の全長が短縮化される。
【0164】
実施形態において、ドライバドリル1は、出力部8を震動させる震動機構40を備えてもよい。ケーシング4は、減速機構30及び震動機構40を含む動力伝達機構7を収容してもよい。モータ6の前後方向の寸法LMは、50mmでもよい。動力伝達機構7の前後方向の寸法LGは、90mmでもよい。チャック82の前後方向の寸法LCは、50mmでもよい。
【0165】
上記の構成では、ドライバドリル1の全長が短縮化される。
【0166】
実施形態において、チャック82が取り付けられるスピンドル81の外径は、9/16インチでもよい。
【0167】
上記の構成では、出力部8の高トルク化に適応した高強度のスピンドル81が提供される。
【0168】
実施形態において、減速機構30は、ロータ62により回転されるサンギヤであるピニオンギヤ31Sの周囲に配置される複数の第1プラネタリギヤであるプラネタリギヤ311P及び複数のプラネタリギヤ311Pの周囲に配置される第1インターナルギヤであるインターナルギヤ311Rからなる第1段部と、第1段部とは減速比が異なり、ピニオンギヤ31Sの周囲に配置される複数の第2プラネタリギヤであるプラネタリギヤ312P及び複数のプラネタリギヤ312Pの周囲に配置される第2インターナルギヤであるインターナルギヤ312Rからなる第2段部と、を有する第1遊星歯車機構31と、第1遊星歯車機構31よりも前方に配置され、第1遊星歯車機構31の回転力により作動する第2遊星歯車機構32と、第2遊星歯車機構32よりも前方に配置され、第2遊星歯車機構32の回転力により作動する第3遊星歯車機構33と、を含んでもよい。出力部8は、第3遊星歯車機構33を介して伝達されるロータ62の回転力により回転してもよい。
【0169】
上記の構成では、作業内容に応じて出力部8が適正なトルクで回転する。
【0170】
実施形態において、第2段部の減速比は、第1段部の減速比よりも大きくてもよい。
【0171】
上記の構成では、作業内容に応じて出力部8が適正なトルクで回転する。
【0172】
実施形態において、第2遊星歯車機構32の減速比及び第3遊星歯車機構33の減速比は、第1段部の減速比よりも小さくてもよい。第2遊星歯車機構32の減速比は、第3遊星歯車機構33の減速比よりも小さくてもよい。
【0173】
上記の構成では、作業内容に応じて出力部8が適正なトルクで回転する。
【0174】
実施形態において、減速機構30が1速であることは、第1遊星歯車機構31の第2段部と、第2遊星歯車機構32と、第3遊星歯車機構33とが使用されることでもよい。減速機構30が2速であることは、第1遊星歯車機構31の第2段部と、第3遊星歯車機構33とが使用されることでもよい。減速機構30が3速であることは、第1遊星歯車機構31の第1段部と、第3遊星歯車機構33とが使用されることでもよい。
【0175】
上記の構成では、作業内容に応じて出力部8が適正なトルクで回転する。
【0176】
<第2実施形態>
第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号を付し、その構成要素の説明を簡略又は省略する。
【0177】
図29は、実施形態に係るドライバドリル1が実施可能な加工条件を説明する図である。上述の実施形態と同様、ドライバドリル1は、ステータ61及びロータ62を有するモータ6と、モータ6よりも前方に配置され、ロータから伝達された回転力に基づいて前後方向に延びる回転軸AXを中心に回転するスピンドル81と、スピンドル81に取り付けられるチャック82と、を有する出力部8と、ロータ62の回転を減速して、ロータ62よりも低い回転速度で出力部8を回転させる減速機構30と、を備える。減速機構30は、低速モード、中速モード、及び高速モードを含む3段変速である。なお、図29及び図30において、モータ6、出力部8、及び減速機構30の詳細な図示は省略する。
【0178】
バッテリ装着部5にバッテリパック20が装着される。実施形態において、2種類のバッテリパック20が使用される。バッテリ装着部5に装着されるバッテリパック20は、第1バッテリパック201と、第2バッテリパック202とを含む。
【0179】
第1バッテリパック201の定格電圧は40Vであり、バッテリ容量は8Ahである。すなわち、第1バッテリパック201のバッテリ電力量は、320Whである。
【0180】
第2バッテリパック202の定格電圧は40Vであり、バッテリ容量は2Ahである。すなわち、第2バッテリパック202のバッテリ電力量は、80Whである。
【0181】
出力部8に負荷が掛けられていない無負荷時において、モータ6の回転数は、36,000rpmである。
【0182】
バッテリ装着部5に第1バッテリパック201が装着された状態で、無負荷時において、高速モードにおける出力部8の回転数(最高回転数)は、2,400rpmであり、中速モードにおける出力部8の回転数(最高回転数)は、1,800rpmであり、低速モードにおける出力部8の回転数(最高回転数)は、650rpmである。
【0183】
無負荷時において、高速モードにおける減速機構30のギヤ比は、12以上17以下であり、実施形態においては14.74である。中速モードにおける減速機構30のギヤ比は、18以上22以下であり、実施形態においては20である。低速モードにおける減速機構30のギヤ比は、55以上59以下であり、実施形態においては57.14である。
【0184】
実施形態において、チャック82に、セルフィードビット100が保持される。セルフィードビット100の直径φbは65mmである。ドライバドリル1は、減速機構30が高速モードにおいて、セルフィードビット100で米松Wに穴あけ可能である。米松Wの厚さDは30mmである。米松W(ダグラスファー)は、建築用材として広く使用されている。
【0185】
図30は、実施形態に係るモータ6を説明する図である。図30において、モータ6は模式的に図示されている。モータ6は、ステータコア61Aと、インシュレータを介してステータコア61Aのティースに巻かれるコイル61Dと、ロータコア62Aと、ロータコア62Aに埋設される永久磁石62Bと、ロータコア62Aに固定されるロータシャフト63とを有する。コイル61Dは、6つ設けられる。永久磁石62Bは、4つ設けられる。
【0186】
ステータコア61Aの外径φsは、50mm以上54mm以下であり、実施形態においては52mmである。ステータコア61Aの軸方向の長さは、22mm以上26mm以下であり、実施形態においては24mmである。ロータコア62Aの外径φrは、24mm以上28mm以下であり、実施形態においては26mmである。ロータコア62Aの軸方向の長さは、27mm以上31mm以下であり、実施形態においては28.7mmである。コイル61Dを構成するワイヤの太さは、0.6mm以上0.8mm以下であり、実施形態においては0.7mmである。1つのコイル61Dを形成するために1つのティースにワイヤを巻いた回数は、24以上26以下であり、実施形態においては25である。
【0187】
図31は、実施形態に係る定格電圧40Vバッテリ容量8Ahの第1バッテリパック201を使用した場合の高速モードにおける出力部8のトルクとモータ特性との関係を示すグラフの一例である。図31に示すグラフは、第1バッテリパック201が満充電のときの出力部8のトルクとモータ特性との関係を示す。
【0188】
図31において、横軸は出力部8のトルクであり、縦軸はモータ特性である。モータ特性は、1分間あたりの出力部8の回転数[rpm]、モータ6の出力[W]、及びモータ6に入力される電流[A]を含む。
【0189】
図31において、ラインLaは、出力部8のトルクと出力部8の回転数との関係を示す。ラインLbは、出力部8のトルクとモータ6の出力との関係を示す。ラインLcは、出力部8のトルクとモータ6に入力される電流との関係を示す。
【0190】
ドライバドリル1は、定格電圧40Vバッテリ容量8Ah(バッテリ電力量320Wh)の第1バッテリパック201がバッテリ装着部5に装着された状態で、高速モードにおいて、直径φが65mmのセルフィードビット100で厚さDが30mmの米松Wに穴あけ可能である。
【0191】
高速モードにおいて、セルフィードビット100で米松Wに穴あけするときの出力部8のトルクは、16Nm以上である。高速モードにおいて、出力部8のトルクが16Nm以上であれば、直径φbが65mmのセルフィードビット100で厚さDが30mmの米松Wに穴あけすることができる。
【0192】
高速モードにおいて、出力部8のトルクが16Nmであるときのモータ6の回転数Taは、900rpm以上である。図31に示す例において、出力部8のトルクが16Nmであるときのモータ6の回転数Taは、約1000rpmである。
【0193】
高速モードにおいて、出力部8のトルクが6Nmであるときのモータの回転数Naは、1600rpm以上である。図31に示す例において、出力部8のトルクが6Nmであるときのモータの回転数Naは、約1900rpm以上である。
【0194】
高速モードにおいて、出力部6のトルクが0Nmから6Nmに上昇するときのモータ6の回転数の減少量は、600rpm以下である。
【0195】
高速モードにおいて、出力部8のトルクが6Nmであるときにモータ6に入力される電流Aaは、40A以下である。図31に示す例において、出力部8のトルクが6Nmであるときにモータ6に入力される電流Aaは、約38Aである。
【0196】
高速モードにおいて、出力部8のトルクが6Nmであるときのモータ6の出力Paは、1000W以上である。図31に示す例において、出力部8のトルクが6Nmであるときのモータ6の出力Paは、約1150Wである。
【0197】
図32は、実施形態に係る定格電圧40Vバッテリ容量8Ahの第1バッテリパック201を使用した場合の中速モードにおける出力部8のトルクとモータ特性との関係を示すグラフの一例である。図32に示すグラフは、第1バッテリパック201が満充電のときの出力部8のトルクとモータ特性との関係を示す。
【0198】
図32において、横軸は出力部8のトルクであり、縦軸はモータ特性である。モータ特性は、1分間あたりの出力部8の回転数[rpm]、モータ6の出力[W]、及びモータ6に入力される電流[A]を含む。
【0199】
図32において、ラインLaは、出力部8のトルクと出力部8の回転数との関係を示す。ラインLbは、出力部8のトルクとモータ6の出力との関係を示す。ラインLcは、出力部8のトルクとモータ6に入力される電流との関係を示す。
【0200】
ドライバドリル1は、定格電圧40Vバッテリ容量8Ah(バッテリ電力量320Wh)の第1バッテリパック201がバッテリ装着部5に装着された状態で、中速モードにおいて、直径φが65mmのセルフィードビット100で厚さDが30mmの米松Wに穴あけ可能である。
【0201】
中速モードにおいて、セルフィードビット100で米松Wに穴あけするときの出力部8のトルクは、16Nm以上である。中速モードにおいて、出力部8のトルクが例えば20Nmである場合、直径φbが65mmのセルフィードビット100で厚さDが30mmの米松Wに穴あけすることができる。また、中速モードにおいて、出力部8のトルクが例えば20Nmである場合、ドライバドリル1は、厚さDが30mmよりも厚い米松Wに穴あけすることができ、米松Wよりも硬い建築用材に穴あけすることができる。また、中速モードにおいて、出力部8のトルクが例えば20Nmである場合、ドライバドリル1は、直径φが65mmよりも大きい直径のセルフィービット100を用いて、米松Wに穴あけすることができる。
【0202】
中速モードにおいて、出力部8のトルクが20Nmであるときのモータ6の回転数Taは、600rpm以上である。図32に示す例において、出力部8のトルクが20Nmであるときのモータ6の回転数Taは、約750rpmである。
【0203】
中速モードにおいて、出力部8のトルクが6Nmであるときのモータの回転数Naは、1000rpm以上である。図32に示す例において、出力部8のトルクが6Nmであるときのモータの回転数Naは、約1450rpm以上である。
【0204】
中速モードにおいて、出力部6のトルクが0Nmから6Nmに上昇するときのモータ6の回転数の減少量は、600rpm以下である。
【0205】
中速モードにおいて、出力部8のトルクが6Nmであるときにモータ6に入力される電流Aaは、30A以下である。図32に示す例において、出力部8のトルクが6Nmであるときにモータ6に入力される電流Aaは、約28Aである。
【0206】
中速モードにおいて、出力部8のトルクが6Nmであるときのモータ6の出力Paは、700W以上である。図32に示す例において、出力部8のトルクが6Nmであるときのモータ6の出力Paは、約950Wである。
【0207】
図33は、実施形態に係る定格電圧40Vバッテリ容量2Ahの第2バッテリパック202を使用した場合の中速モードにおける出力部8のトルクとモータ特性との関係を示すグラフの一例である。図33に示すグラフは、第2バッテリパック202が満充電のときの出力部8のトルクとモータ特性との関係を示す。
【0208】
図33において、横軸は出力部8のトルクであり、縦軸はモータ特性である。モータ特性は、1分間あたりの出力部8の回転数[rpm]、モータ6の出力[W]、及びモータ6に入力される電流[A]を含む。
【0209】
図33において、ラインLaは、出力部8のトルクと出力部8の回転数との関係を示す。ラインLbは、出力部8のトルクとモータ6の出力との関係を示す。ラインLcは、出力部8のトルクとモータ6に入力される電流との関係を示す。
【0210】
ドライバドリル1は、定格電圧40Vバッテリ容量2Ah(バッテリ電力量80Wh)の第2バッテリパック202がバッテリ装着部5に装着された状態で、中速モードにおいて、直径φが65mmのセルフィードビット100で厚さDが30mmの米松Wに穴あけ可能である。
【0211】
中速モードにおいて、セルフィードビット100で米松Wに穴あけするときの出力部8のトルクは、16Nm以上である。中速モードにおいて、出力部8のトルクが16Nmである場合、直径φbが65mmのセルフィードビット100で厚さDが30mmの米松Wに穴あけすることができる。
【0212】
中速モードにおいて、出力部8のトルクが16Nmであるときのモータ6の回転数Taは、300rpm以上である。図33に示す例において、出力部8のトルクが16Nmであるときのモータ6の回転数Taは、約450rpmである。
【0213】
中速モードにおいて、出力部8のトルクが6Nmであるときのモータの回転数Naは、1000rpm以上である。図33に示す例において、出力部8のトルクが6Nmであるときのモータの回転数Naは、約1200rpm以上である。
【0214】
中速モードにおいて、出力部6のトルクが0Nmから6Nmに上昇するときのモータ6の回転数の減少量は、600rpm以下である。
【0215】
中速モードにおいて、出力部8のトルクが6Nmであるときにモータ6に入力される電流Aaは、30A以下である。図33に示す例において、出力部8のトルクが6Nmであるときにモータ6に入力される電流Aaは、約28Aである。
【0216】
中速モードにおいて、出力部8のトルクが6Nmであるときのモータ6の出力Paは、700W以上である。図33に示す例において、出力部8のトルクが6Nmであるときのモータ6の出力Paは、約760Wである。
【0217】
以上説明したように、実施形態によれば、直径φbが65mmのセルフィードビット100で厚さDが30mmの米松Wに穴あけするような重負荷作業においても、ドライバドリル1は、高速モードで重負荷作業することができる。ドライバドリル1は、重負荷作業に必要なトルク(約16Nm)を高速モードで得ることができるので、作業効率の低下が抑制される。
【0218】
<その他の実施形態>
上述の実施形態においては、ドライバドリル1の電源としてバッテリ装着部5に装着されるバッテリパック20が使用されることとした。ドライバドリル1の電源として、商用電源(交流電源)が使用されてもよい。
【符号の説明】
【0219】
1…ドライバドリル、2…ハウジング、2L…左ハウジング、2R…右ハウジング、2S…ねじ、3…リヤカバー、3S…ねじ、4…ケーシング、4A…第1ケーシング、4B…第2ケーシング、4C…ブラケット板、4D…ストップ板、4E…ねじ、4F…ねじ、4H…貫通孔、4J…貫通孔、4S…ねじ、5…バッテリ装着部、6…モータ、7…動力伝達機構、8…出力部、9…ファン、10…トリガレバー、11…正逆転切換レバー、12…速度切換レバー、13…モード切換リング、14…ライト、15…インタフェースパネル、16…ダイヤル、17…コントローラ、18…吸気口、19…排気口、20…バッテリパック、21…モータ収容部、22…グリップ部、23…バッテリ保持部、24…操作装置、25…表示装置、26…コントローラケース、27…パネル開口、28…ダイヤル開口、30…減速機構、31…第1遊星歯車機構、31S…ピニオンギヤ、32…第2遊星歯車機構、32A…ピン、32C…第2キャリア、32E…溝、32F…カム歯、32P…プラネタリギヤ、32R…インターナルギヤ、32S…サンギヤ、33…第3遊星歯車機構、33A…ピン、33C…第3キャリア、33F…カム歯、33G…カム歯、33P…プラネタリギヤ、33R…インターナルギヤ、33S…サンギヤ、40…震動機構、41…第1カム、42…第2カム、43…震動切換リング、43S…対向部、43T…突起部、44…ストップリング、45…支持リング、46…スチールボール、47…ワッシャ、48…カムリング、61…ステータ、61A…ステータコア、61B…前インシュレータ、61C…後インシュレータ、61D…コイル、61E…センサ回路基板、61F…短絡部材、62…ロータ、62A…ロータコア、62B…永久磁石、71…第1速度切換機構、72…第2速度切換機構、63…ロータシャフト、64…ベアリング、65…ベアリング、81…スピンドル、81F…フランジ部、81R…ねじ孔、81T…平坦面、82…チャック、83…ベアリング、84…ベアリング、87…コイルばね、100…セルフィードビット、201…第1バッテリパック201、202…第2バッテリパック、311A…第1ピン、311C…第1段キャリア、311P…プラネタリギヤ、312P…プラネタリギヤ、311R…インターナルギヤ、311F…カム歯、312R…インターナルギヤ、311S…大径部、312A…第2ピン、312C…第2段キャリア、312F…カム歯、312S…小径部、500…チェンジリング、500A…溝、500B…リング部、500C…凸部、510…第1切換ワイヤ、520…第2切換ワイヤ、530…リーフスプリング、530T…凸部、600…ガイドロッド、610…第1可動部材、620…第2可動部材、630…第1スプリング、640…第2スプリング、AX…回転軸、W…米松。
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