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特開2024-175652パンチャラトナム・ベリー相光学素子、及び、その製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175652
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】パンチャラトナム・ベリー相光学素子、及び、その製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20241211BHJP
   G02F 1/13 20060101ALN20241211BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALN20241211BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/13 505
G02F1/1337
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024062230
(22)【出願日】2024-04-08
(31)【優先権主張番号】P 2023093204
(32)【優先日】2023-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】三枝 良輔
(72)【発明者】
【氏名】川平 雄一
(72)【発明者】
【氏名】坂井 彰
【テーマコード(参考)】
2H088
2H149
2H290
【Fターム(参考)】
2H088EA10
2H088EA42
2H088HA03
2H088LA02
2H088MA18
2H149AA02
2H149AB02
2H149DA02
2H149DA12
2H149DB06
2H149FA24Y
2H290BA53
2H290BF23
2H290CB33
(57)【要約】
【課題】ディスクリネーションの発生を抑制し、光学特性に優れるパンチャラトナム・ベリー相光学素子、及び、該パンチャラトナム・ベリー相光学素子の製造に適したパンチャラトナム・ベリー相光学素子の製造方法を提供する。
【解決手段】光配向膜と、前記光配向膜と接する液晶層と、を備え、前記液晶層は、前記光配向膜によって規定される液晶の基準配向方位が互いに異なる複数の配向ドメインを有し、前記複数の配向ドメインは、複数の第1配向ドメインと複数の第2配向ドメインとを含み、前記複数の第2配向ドメインのそれぞれは、前記複数の第1配向ドメインのうちの2つの第1配向ドメインのそれぞれに接して前記2つの第1配向ドメインの間に位置しており、前記複数の第1配向ドメインは、互いに前記基準配向方位の差が90°とはならない、パンチャラトナム・ベリー相光学素子。
【選択図】図20

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光配向膜と、
前記光配向膜と接する液晶層と、を備え、
前記液晶層は、前記光配向膜によって規定される液晶の基準配向方位が互いに異なる複数の配向ドメインを有し、
前記複数の配向ドメインは、複数の第1配向ドメインと複数の第2配向ドメインとを含み、前記複数の第2配向ドメインのそれぞれは、前記複数の第1配向ドメインのうちの2つの第1配向ドメインのそれぞれに接して前記2つの第1配向ドメインの間に位置しており、
前記複数の第1配向ドメインは、互いに前記基準配向方位の差が90°とはならない、パンチャラトナム・ベリー相光学素子。
【請求項2】
前記複数の第1配向ドメインは、4種類以上の配向ドメインである、請求項1に記載のパンチャラトナム・ベリー相光学素子。
【請求項3】
所定の基準方位を0°としたとき、
前記複数の第1配向ドメインは、前記基準配向方位が0°である配向ドメインを含み、前記基準配向方位が90°である配向ドメインを含まない、請求項1に記載のパンチャラトナム・ベリー相光学素子。
【請求項4】
所定の基準方位を0°としたとき、
前記複数の第1配向ドメインは、前記基準配向方位が0°である配向ドメインと、前記基準配向方位が80°、85°、95°又は100°である配向ドメインとを含む、請求項1に記載のパンチャラトナム・ベリー相光学素子。
【請求項5】
光配向膜と、
前記光配向膜と接する液晶層と、を備え、
前記液晶層は、前記光配向膜によって規定される液晶の基準配向方位が互いに異なる複数の配向ドメインを有し、
前記複数の配向ドメインは、互いに前記基準配向方位の差が90°とはならない、パンチャラトナム・ベリー相光学素子。
【請求項6】
前記複数の配向ドメインは、4種類以上の配向ドメインである、請求項5に記載のパンチャラトナム・ベリー相光学素子。
【請求項7】
所定の基準方位を0°としたとき、
前記複数の配向ドメインは、前記基準配向方位が0°である配向ドメインを含み、前記基準配向方位が90°である配向ドメインを含まない、請求項5に記載のパンチャラトナム・ベリー相光学素子。
【請求項8】
所定の基準方位を0°としたとき、
前記複数の配向ドメインは、前記基準配向方位が0°である配向ドメインと、前記基準配向方位が80°、85°、95°又は100°である配向ドメインとを含む、請求項5に記載のパンチャラトナム・ベリー相光学素子。
【請求項9】
前記液晶層を平面視したとき、前記複数の配向ドメインは、第1方向に沿って、前記液晶層の前記第1方向の一端から他端に向かって並んでいる、請求項1~8のいずれかに記載のパンチャラトナム・ベリー相光学素子。
【請求項10】
前記液晶層を平面視したとき、前記複数の配向ドメインは、前記液晶層の中央から端部に向かって、内側の配向ドメインを外側の配向ドメインが囲むように並んでいる、請求項1~8のいずれかに記載のパンチャラトナム・ベリー相光学素子。
【請求項11】
前記液晶層における前記光配向膜に近接する部分を近接部分と呼ぶとき、
前記基準配向方位は、前記配向ドメイン内の前記近接部分の中央に位置する液晶の配向方位である、請求項1~8のいずれかに記載のパンチャラトナム・ベリー相光学素子。
【請求項12】
光配向膜に対する光配向処理を含み、
前記光配向処理は、光配向膜を複数の照射領域に分割し、フォトマスクを介して各照射領域に偏光を照射するものであり、
前記各照射領域に照射される偏光の偏光方向の差が、互いに90°とはならない、パンチャラトナム・ベリー相光学素子の製造方法。
【請求項13】
前記複数の照射領域のそれぞれは、他の照射領域と重畳しない非重畳領域と、他の照射領域と重畳する重畳領域とを含む、請求項12に記載のパンチャラトナム・ベリー相光学素子の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、パンチャラトナム・ベリー相光学素子、及び、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の焦点距離を有する光変調素子が知られており、例えば特許文献1には、同心円状に分布し液晶が配置される複数の領域を有し、各領域における液晶の配向状態が中心領域から周辺領域に向かって周期的に変化し、さらにその変化の周期が中心から周囲に向かって変化している液晶セルからなることを特徴とする光変調素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-197363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)等の光学デバイス向けに、焦点距離が可変である光変調素子が求められている。これに対して、本発明者らは、パンチャラトナム・ベリー相光学素子(PBOE)に着目し、該光学素子を実現するために、複数の配向ドメインからなる液晶層を設ける方法について検討した。しかしながら、配向ドメインの境界にディスクリネーション(液晶の配向乱れ)が発生し、良好な光学特性を有するパンチャラトナム・ベリー相光学素子を得ることが困難であった。
【0005】
本発明は上記現状に鑑みてなされたものであり、ディスクリネーションの発生を抑制し、光学特性に優れるパンチャラトナム・ベリー相光学素子、及び、該パンチャラトナム・ベリー相光学素子の製造に適したパンチャラトナム・ベリー相光学素子の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一実施形態は、光配向膜と、前記光配向膜と接する液晶層と、を備え、前記液晶層は、前記光配向膜によって規定される液晶の基準配向方位が互いに異なる複数の配向ドメインを有し、前記複数の配向ドメインは、複数の第1配向ドメインと複数の第2配向ドメインとを含み、前記複数の第2配向ドメインのそれぞれは、前記複数の第1配向ドメインのうちの2つの第1配向ドメインのそれぞれに接して前記2つの第1配向ドメインの間に位置しており、前記複数の第1配向ドメインは、互いに前記基準配向方位の差が90°とはならない、パンチャラトナム・ベリー相光学素子。
【0007】
(2)また、本発明のある実施形態は、上記(1)の構成に加え、前記複数の第1配向ドメインは、4種類以上の配向ドメインである、パンチャラトナム・ベリー相光学素子。
【0008】
(3)また、本発明のある実施形態は、上記(1)又は(2)の構成に加え、所定の基準方位を0°としたとき、前記複数の第1配向ドメインは、前記基準配向方位が0°である配向ドメインを含み、前記基準配向方位が90°である配向ドメインを含まない、パンチャラトナム・ベリー相光学素子。
【0009】
(4)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、(2)又は(3)の構成に加え、所定の基準方位を0°としたとき、前記基準配向方位が0°である配向ドメインと、前記基準配向方位が80°、85°、95°又は100°である配向ドメインとを含む、パンチャラトナム・ベリー相光学素子。
【0010】
(5)本発明の別の一実施形態は、光配向膜と、前記光配向膜と接する液晶層と、を備え、前記液晶層は、前記光配向膜によって規定される液晶の基準配向方位が互いに異なる複数の配向ドメインを有し、前記複数の配向ドメインは、互いに前記基準配向方位の差が90°とはならない、パンチャラトナム・ベリー相光学素子。
【0011】
(6)また、本発明のある実施形態は、上記(5)の構成に加え、前記複数の配向ドメインは、4種類以上の配向ドメインである、パンチャラトナム・ベリー相光学素子。
【0012】
(7)また、本発明のある実施形態は、上記(5)又は(6)の構成に加え、所定の基準方位を0°としたとき、前記複数の配向ドメインは、前記基準配向方位が0°である配向ドメインを含み、前記基準配向方位が90°である配向ドメインを含まない、パンチャラトナム・ベリー相光学素子。
【0013】
(8)また、本発明のある実施形態は、上記(5)、(6)又は(7)の構成に加え、所定の基準方位を0°としたとき、前記基準配向方位が0°である配向ドメインと、前記基準配向方位が80°、85°、95°又は100°である配向ドメインとを含む、パンチャラトナム・ベリー相光学素子。
【0014】
(9)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)又は(8)の構成に加え、前記液晶層を平面視したとき、前記複数の配向ドメインは、第1方向に沿って、前記液晶層の前記第1方向の一端から他端に向かって並んでいる、パンチャラトナム・ベリー相光学素子。
【0015】
(10)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)又は(8)の構成に加え、前記液晶層を平面視したとき、前記複数の配向ドメインは、前記液晶層の中央から端部に向かって、内側の配向ドメインを外側の配向ドメインが囲むように並んでいる、パンチャラトナム・ベリー相光学素子。
【0016】
(11)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)又は(10)の構成に加え、前記液晶層における前記光配向膜に近接する部分を近接部分と呼ぶとき、前記基準配向方位は、前記配向ドメイン内の前記近接部分の中央に位置する液晶の配向方位である、パンチャラトナム・ベリー相光学素子。
【0017】
(12)本発明の更に別の実施形態は、光配向膜に対する光配向処理を含み、前記光配向処理は、光配向膜を複数の照射領域に分割し、フォトマスクを介して各照射領域に偏光を照射するものであり、前記各照射領域に照射される偏光の偏光方向の差が、互いに90°とはならない、パンチャラトナム・ベリー相光学素子の製造方法。
【0018】
(13)また、本発明のある実施形態は、上記(12)の構成に加え、前記複数の照射領域のそれぞれは、他の照射領域と重畳しない非重畳領域と、他の照射領域と重畳する重畳領域とを含む、パンチャラトナム・ベリー相光学素子の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ディスクリネーションの発生を抑制し、光学特性に優れるパンチャラトナム・ベリー相光学素子、及び、該パンチャラトナム・ベリー相光学素子の製造に適したパンチャラトナム・ベリー相光学素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係るPBレンズの液晶層中の液晶の配向を模式的に示した平面図である。
図2】本発明の実施形態に係るPB回折格子の液晶層中の液晶の配向を模式的に示した平面図である。
図3A】マスク露光を説明する図である。
図3B】フォトマスクのアライメントずれが生じたときのマスク露光を説明する図である。
図4】本発明の実施形態に係るマスク露光を説明する図である。
図5】PBレンズの集光及び発散の一例について説明する模式図である。
図6】本発明の実施形態に係るPBレンズの一例を示す平面図である。
図7】本発明の実施形態に係るPBレンズの一例を示す平面図である。
図8】本発明の実施形態に係るPBレンズの断面模式図の一例である。
図9】実験例1の偏光の照射方法を説明する図である。
図10】実験例1のサンプルを示す写真である。
図11】実験例2のサンプルを示す写真である。
図12】偏光方向が0°の偏光UVに対して使用されたフォトマスクを示す図である。
図13】偏光方向が45°の偏光UVに対して使用されたフォトマスクを示す図である。
図14】偏光方向が90°の偏光UVに対して使用されたフォトマスクを示す図である。
図15】偏光方向が135°の偏光UVに対して使用されたフォトマスクを示す図である。
図16】PBレンズ作製時の偏光UV照射について説明する図である。
図17】偏光顕微鏡で観察した比較例1のPBレンズの写真である。
図18】回折効率の測定方法を説明する図である。
図19】回折効率の測定時のレーザー光がPBレンズを透過する位置を説明する図である。
図20】偏光顕微鏡で観察した実施例1のPBレンズの写真である。
図21】実施例1のPBレンズにおける液晶の配向を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に記載された内容に限定されるものではなく、本発明の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。なお、以下の説明において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して適宜用い、その繰り返しの説明は適宜省略する。本発明の各態様は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよい。
【0022】
本実施形態のパンチャラトナム・ベリー相光学素子(Pancharatnam-Berry phase Optical Elements、略して「PBOE」)は、光配向膜と、上記光配向膜と接する液晶層と、を備え、上記液晶層は、上記光配向膜によって規定される液晶の基準配向方位が互いに異なる複数の配向ドメインを有する。
【0023】
本実施形態における第1の態様では、上記複数の配向ドメインは、複数の第1配向ドメインと複数の第2配向ドメインとを含み、上記複数の第2配向ドメインのそれぞれは、上記複数の第1配向ドメインのうちの2つの第1配向ドメインのそれぞれに接して上記2つの第1配向ドメインの間に位置しており、上記複数の第1配向ドメインは、互いに上記基準配向方位の差が90°とはならない。
【0024】
また、本実施形態のPBOEの製造方法は、光配向膜に対する光配向処理を含み、上記光配向処理は、光配向膜を複数の照射領域に分割し、フォトマスクを介して各照射領域に偏光を照射するものであり、上記各照射領域に照射される偏光の偏光方向の差が、互いに90°とはならないものである。光配向膜の複数の照射領域のそれぞれは、他の照射領域と重畳しない非重畳領域(単一の偏光が照射される領域)と、他の照射領域と重畳する重畳領域(偏光方向が互いに異なる2つの偏光が重ねて照射される領域)とを含んでもよい。或いは、光配向膜の複数の照射領域のそれぞれは、非重畳領域であってもよい。
【0025】
上記複数の配向ドメインのうち、上記複数の第1配向ドメインは、それぞれ単一の偏光が照射された光配向膜の照射領域(非重畳領域)に対応して形成される配向ドメインに相当する。第1配向ドメインの各々は、その第1配向ドメインに対応する非重畳領域に照射された偏光の偏光方向に対応した基準配向方位を有することになる。一方、上記複数の第2配向ドメインは、2つの偏光が重ねて照射された照射領域(重畳領域)に対応して形成される配向ドメインに相当する。第2配向ドメインの各々は、その第2配向ドメインに対応する重畳領域に重ねて照射された2つの偏光の偏光方向に基づく方向(例えば、2つの偏光方向の中間の方向)に対応した基準配向方位を有することになる。例えば、照射領域ごとに偏光方向が異なる偏光を照射する際に、2つの照射領域が重畳するように、偏光方向が異なる偏光が重畳して照射された場合に、重畳領域に対応して第2配向ドメインが形成されることになる。したがって、複数の第2配向ドメインのそれぞれは、複数の第1配向ドメインのうちの2つの第1配向ドメインのそれぞれに接して上記2つの第1配向ドメインの間に位置する。上記2つの照射領域において、偏光方向が異なる偏光が重畳することなく照射された場合には、上記第2配向ドメインは形成されない。本実施形態の第1の態様において、上記第2配向ドメインは、複数の第1配向ドメインの間のすべてに介在していなくてもよい。
【0026】
第1配向ドメイン及び第2配向ドメインのそれぞれの配向ドメイン内の液晶の配向方位は、隣接する配向ドメイン内の液晶の配向方位や、光配向膜の配向規制力の大きさの影響で、単一のドメイン内で必ずしも一様とはならない。このため、配向ドメインの配向方位は、光配向膜によって規定される基準配向方位によって表される。基準配向方位は、平面視において当該ドメイン内の中央に位置する液晶の配向方位であることが好ましく、より好ましくは、液晶層における光配向膜に近接する部分を近接部分と呼ぶとき、配向ドメイン内の上記近接部分の中央に位置する液晶の配向方位である。
【0027】
上記複数の第2配向ドメインは設けられなくてもよい。本実施形態における第2の態様では、上記複数の配向ドメインは、互いに上記基準配向方位の差が90°とはならない。すなわち、上記第2の態様は、上記複数の第2配向ドメインが設けられず、上記複数の配向ドメインが上記複数の第1配向ドメインのみで構成される場合に相当する。以下では特に断りがなければ、「第1配向ドメイン」との用語は、本実施形態における第1の態様における「第1配向ドメイン」だけでなく、本実施形態における第2の態様の「配向ドメイン」を意味する。
【0028】
上記複数の第1配向ドメインは、互いに上記基準配向方位の差が90°とはならない。上記各照射領域に照射される偏光の偏光方向の差が互いに90°とはならないように偏光を照射することで、上記複数の第1配向ドメインの基準配向方位の差が90°とはならないようにすることができる。
なお、「90°とはならない」とは、88°(85°+3°)以下又は92°(95°-3°)以上であることが好ましく、誤差を考慮しない場合は、85°以下又は95°以上であることが好ましい。
【0029】
上記複数の第1配向ドメインは、所定の基準方位を0°としたとき、上記基準配向方位が0°である配向ドメインを含み、上記基準配向方位が90°である配向ドメインを含まないことが好ましい。また、上記複数の第1配向ドメインは、所定の基準方位を0°としたとき、上記基準配向方位が0°である配向ドメインと、上記基準配向方位が85°である配向ドメインとを含むか、又は、上記基準配向方位が0°である配向ドメインと、上記基準配向方位が95°である配向ドメインとを含むことがより好ましい。
【0030】
上記複数の配向ドメインの配列は特に限定されないが、好ましい配列としては、(1)上記液晶層を平面視したとき、上記複数の配向ドメインが、第1方向に沿って、上記液晶層の上記第1方向の一端から他端に向かって並んでいる配列や、(2)上記液晶層を平面視したとき、上記複数の配向ドメインが、上記液晶層の中央から端部に向かって、内側の配向ドメインを外側の配向ドメインが囲むように並んでいる配列が挙げられる。
【0031】
上記PBOEは、上記液晶層中の液晶が周期的な配向パターンを有するものであり、半波長板であることが好ましい。
【0032】
上記PBOEの機能は特に限定されず、例えば、レンズであってもよいし、回折格子であってもよい。
図1は、本発明の実施形態に係るPBレンズの液晶層中の液晶の配向を模式的に示した平面図である。なお、パンチャラトナム・ベリー相光学素子がレンズである場合、パンチャラトナム・ベリー相光学素子を「PBレンズ」ともいう。図1のPBレンズでは、液晶420の基準配向方位が互いに異なる複数の配向ドメインが同心円状に配置されている。図1中の破線は、配向ドメインの中心部を示している。中心からの配向ドメインの配置数、及び、配向ドメインのサイズは、目的とするレンズの設計(例えば、焦点距離やレンズサイズ)により変更される。図1では、配向ドメインの基準配向方位がそれぞれ0°、22.5°、45°、65°、85°、107.5°、130°及び155°であるように構成された複数の配向ドメインを有するPBレンズの液晶層を示している(上記配列(2)に相当)。図1のPBレンズでは、基準配向方位が0°の配向ドメインD1、基準配向方位が45°の配向ドメインD3、基準配向方位が85°の配向ドメインD5、及び、基準配向方位が130°の配向ドメインD7が第1配向ドメインであり、基準配向方位が22.5°の配向ドメインD2、基準配向方位が65°の配向ドメインD4、基準配向方位が107.5°の配向ドメインD6、及び、基準配向方位が155°の配向ドメインD8が第2配向ドメインである。
【0033】
図2は、本発明の実施形態に係るPB回折格子の液晶層中の液晶の配向を模式的に示した平面図である。図2中の破線は、配向ドメインの中心部を示している。なお、パンチャラトナム・ベリー相光学素子が回折格子である場合、パンチャラトナム・ベリー相光学素子を「PB回折格子」ともいう。図2では、配向ドメインの基準配向方位がそれぞれ0°、22.5°、45°、65°、85°、107.5°、130°及び155°であるように構成された複数の配向ドメインを有するPB回折格子の液晶層を示している(上記配列(1)に相当)。図2のPB回折格子では、基準配向方位が0°の配向ドメインD1、基準配向方位が45°の配向ドメインD3、基準配向方位が85°の配向ドメインD5、及び、基準配向方位が130°の配向ドメインD7が第1配向ドメインであり、基準配向方位が22.5°の配向ドメインD2、基準配向方位が65°の配向ドメインD4、基準配向方位が107.5°の配向ドメインD6、及び、基準配向方位が155°の配向ドメインD8が第2配向ドメインである。
【0034】
上記PBOEにおいて、上記液晶層における液晶の基準配向方位は、光配向処理が行われた光配向膜によって制御される。光配向処理前の光配向膜を複数の照射領域に分割し、光配向処理として、分割された各照射領域の光配向膜に対して異なる偏光方向の偏光を照射することによって、分割された各照射領域において光配向膜による配向規制力の働く方向が異なるものとなる。これにより、液晶の基準配向方位が互いに異なる複数の第1配向ドメインを面内にパターニングして形成することができる。第1配向ドメインの数は特に限定されないが、4種類以上であることが好ましい。すなわち、上記液晶層は、液晶の基準配向方位が互いに異なる4種類以上の第1配向ドメインを有することが好ましい。
【0035】
本実施形態では、上記複数の第1配向ドメインは、互いに上記基準配向方位の差が90°とはならない。そのような複数の第1配向ドメインは、偏光方向の差が互いに90°とはならない関係を満たすように調整された偏光を分割された各照射領域に照射することで形成することができる。
【0036】
本来であれば、光学特性を向上させる観点から、偏光方向のなす角が等間隔になるように偏光を光配向膜に照射することが望ましい。図3Aは、マスク露光を説明する図である。本発明者らは、4枚のフォトマスク110、120、130及び140を用いた露光で、偏光方向が0°、45°、90°、135°の偏光UV(PUV)を光配向膜200に照射しPBOEを作製したところ、ディスクリネーションが発生することが分かった。更に検討したところ、ディスクリネーションの発生は、0°と90°又は45°と135°といった偏光方向が直交する偏光UVが同じ照射領域に重なり合って照射されることで生じることが分かった。図3Aに示すような理想的なマスク露光では、直交する偏光UVが光配向膜200の同じ照射領域に重なり合って照射されることはないが、実際の工程では図3Bに示すようにフォトマスク140のアライメントずれ等が生じることがあり、直交する偏光UVの重なりが生じることがある。そこで、従来は直交していた偏光UV(例えば、偏光方向が0°及び90°の2つの偏光UV、偏光方向が45°及び135°の2つの偏光UV)のなす角を90°とはならないよう(例えば85°以下)に変更する(例えば、偏光UVの偏光方向を90°から80°に、135°から125°に変更することで、偏光方向が0°及び80°の2つの偏光UVのなす角、並びに、偏光方向が45°及び125°の2つの偏光UVのなす角は80°となる)ことで、アライメントずれ等によって意図しない複数の偏光UVが同じ照射領域に照射された場合であっても、ディスクリネーションが発生しなくなることを見出し、光学特性を維持したPBOEを作製できることが分かった。
【0037】
図4は、本発明の実施形態に係るマスク露光を説明する図である。図4では、4枚のフォトマスクを用いて光配向膜200への露光が行われる場合を示しており、第一のフォトマスク140を用いて偏光方向が0°の偏光UVが照射され、第二のフォトマスク130を用いて偏光方向が45°の偏光UVが照射され、第三のフォトマスク120を用いて偏光方向が85°の偏光UVが照射され、第四のフォトマスク110を用いて偏光方向が130°の偏光UVが照射されている。この露光の結果、以下の照射領域A1~A8が光配向膜200に形成される。
照射領域A1:偏光方向が0°の偏光UVのみが照射された領域(非重畳領域)
照射領域A2:偏光方向が0°の偏光UVと偏光方向が45°の偏光UVが照射された領域(重畳領域)
照射領域A3:偏光方向が45°の偏光UVのみが照射された領域(非重畳領域)
照射領域A4:偏光方向が45°の偏光UVと偏光方向が85°の偏光UVが照射された領域(重畳領域)
照射領域A5:偏光方向が85°の偏光UVのみが照射された領域(非重畳領域)
照射領域A6:偏光方向が85°の偏光UVと偏光方向が130°の偏光UVが照射された領域(重畳領域)
照射領域A7:偏光方向が130°の偏光UVのみが照射された領域(非重畳領域)
照射領域A8:偏光方向が130°の偏光UVと偏光方向が0°の偏光UVが照射された領域(重畳領域)
【0038】
照射領域A1の光配向膜200は、基準配向方位が0°の配向ドメイン(第1配向ドメイン)を形成し、照射領域A2の光配向膜200は、基準配向方位が22.5°の配向ドメイン(第2配向ドメイン)を形成し、照射領域A3の光配向膜200は、基準配向方位が45°の配向ドメイン(第1配向ドメイン)を形成し、照射領域A4の光配向膜200は、基準配向方位が65°の配向ドメイン(第2配向ドメイン)を形成し、照射領域A5の光配向膜200は、基準配向方位が85°の配向ドメイン(第1配向ドメイン)を形成し、照射領域A6の光配向膜200は、基準配向方位が107.5°の配向ドメイン(第2配向ドメイン)を形成し、照射領域A7の光配向膜200は、基準配向方位が130°の配向ドメイン(第1配向ドメイン)を形成し、照射領域A8の光配向膜200は、基準配向方位が155°の配向ドメイン(第2配向ドメイン)を形成する。
【0039】
上記PBOEの一種であるPBレンズについて図5~8を用いて具体的に説明する。図5は、PBレンズの集光及び発散の一例について説明する模式図である。図6及び7は、本発明の実施形態に係るPBレンズの一例を示す平面図である。図8は、本発明の実施形態に係るPBレンズの断面模式図の一例である。
【0040】
PBレンズ40PBは、左円偏光及び右円偏光のうち、一方の円偏光が入射すると集光させ、他方の円偏光が入射すると発散させる。PBレンズ40PBは、例えば、左円偏光と右円偏光で焦点距離がfと-fに切り替わるレンズとして機能させることができる。図5に示すように、例えば、PBレンズ40PBに左円偏光及び右円偏光のうち一方の円偏光が入射すると、PBレンズ40PBは、当該一方の円偏光を逆回転して他方の円偏光に変換しつつ集光し、PBレンズ40PBに他方の円偏光が入射すると、PBレンズ40PBは、当該他方の円偏光を逆回転して一方の円偏光に変換しつつ発散する。
【0041】
具体的には、図5に示すように、PBレンズ40PBに入射した右円偏光(図5の(i))は、逆回転して左円偏光に変換され、集光する(図5の(ii))。また、PBレンズ40PBに入射した左円偏光(図5の(iii))は、逆回転して右円偏光に変換され、発散する(図5の(iv))。このように、PBレンズ40PBに入射する円偏光の回転方向を切り替えることにより、焦点fの発散及び集光を切り替えることができる。また、PBレンズ40PBから出射される円偏光の回転方向は、PBレンズ40PBに入射する円偏光の回転方向とは逆方向となる。
【0042】
図6及び7に示すように、PBレンズ40PBは、支持基板410と、支持基板410上に設けられ、かつ、周期的に配向した液晶420を含む。液晶420の周期的な配向により、回折が発生し、レンズ機能を得ることができる。PBレンズ40PBは、回折型レンズである。
【0043】
PBレンズ40PBは、図6に示すように、中心から外に向かうにつれ、液晶420の長軸420Xが左回転する構造と、図7に示すように、中心から外に向かうにつれ、液晶420の長軸420Xが右回転する構造の2種類があり、偏光に対する作用が互いに異なる。
【0044】
図6に示すPBレンズ40PBの液晶層420は、配向ドメインの基準配向方位がそれぞれ0°、30°、60°、85°、110°及び145°であるように構成された複数の配向ドメインを有する。図6のPBレンズ40PBでは、(1)基準配向方位が0°の配向ドメインD11、基準配向方位が30°の配向ドメインD12、基準配向方位が60°の配向ドメインD13、基準配向方位が85°の配向ドメインD14、基準配向方位が110°の配向ドメインD15、及び、基準配向方位が145°の配向ドメインD16がすべて第1配向ドメインであってもよいし、(2)基準配向方位が0°の配向ドメインD11、基準配向方位が60°の配向ドメインD13、基準配向方位が110°の配向ドメインD15が第1配向ドメインであり、かつ基準配向方位が30°の配向ドメインD12、基準配向方位が85°の配向ドメインD14、及び、基準配向方位が145°の配向ドメインD16が第2配向ドメインであってもよい。
【0045】
図7に示すPBレンズ40PBの液晶層420は、第1配向ドメインの基準配向方位がそれぞれ180°(0°)、150°(-30°)、120°(-60°)、95°(-85°)、70°(-110°)及び35°(-145°)であるように構成された複数の配向ドメインを有する。図7のPBレンズ40PBは、(1)基準配向方位が180°の配向ドメインD21、基準配向方位が150°の配向ドメインD22、基準配向方位が120°の配向ドメインD23、基準配向方位が95°の配向ドメインD24、基準配向方位が70°の配向ドメインD25、及び、基準配向方位が35°の配向ドメインD26がすべて第1配向ドメインである態様であってもよいし、(2)基準配向方位が180°の配向ドメインD21、基準配向方位が120°の配向ドメインD23、基準配向方位が70°の配向ドメインD25が第1配向ドメインであり、かつ基準配向方位が150°の配向ドメインD22、基準配向方位が95°の配向ドメインD24、及び、基準配向方位が35°の配向ドメインD26が第2配向ドメインである態様であってもよい。
【0046】
PBレンズ40PBは、例えば、国際公開第2019/189818号に記載の方法で作製することができる。
【0047】
PBレンズ40PBは、図8に示すように、液晶420を含有する液晶層420Aを備える。PBレンズ40PBは、一例として、円偏光を対象として、入射光を所定の方向に回折して透過させる。なお、図8では、入射光を左円偏光としている。
【0048】
液晶層420Aは、図8中左側から3つの領域R0、R1、R2を有し、各領域で1周期の長さΛが異なっている。具体的には、1周期の長さΛは、領域R0、R1、R2の順に短くなっている。図8では、3つの領域R0、R1、R2を示しているが、領域の数は限定されない。また、領域R1及びR2は、光学軸が液晶層420Aの厚さ方向で捩れて回転した構造(以下、捩れ構造ともいう)を有していてもよい。このようなねじれ構造を2層積層することで、広い波長域や入射角に対して回折効率を向上することが可能である。
【0049】
3つの領域R0、R1、R2のそれぞれは、複数の配向ドメインD31、D32、D33及びD34を有し、各配向ドメインで基準配向方位が異なっている。基準配向方位は、液晶層420Aにおける光配向膜に近接する部分を近接部分と呼ぶとき、配向ドメイン内の近接部分の中央に位置する液晶431、432、433又は434の配向方位である。
【0050】
左円偏光LC1が液晶層420Aの面内の領域R1に入射すると、入射方向に対して、矢印X方向に、すなわち、液晶420の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化している一方向に所定角度、回折されて透過する。同様に左円偏光LC2が液晶層420Aの面内の領域R2に入射すると、入射方向に対して、矢印X方向に所定角度、回折されて透過する。同様に左円偏光LC0が液晶層420Aの面内の領域R0に入射すると、入射方向に対して、矢印X方向に所定角度、回折されて透過する。
【0051】
液晶層420Aによる回折の角度は、領域R1の液晶配向パターンの1周期ΛR1よりも、領域R2の液晶配向パターンの1周期ΛR2が短いため、図8に示すように、入射光に対する回折の角度は、領域R2の透過光の角度θR2の方が領域R1の透過光の角度θR1よりも大きくなる。また、領域R1の液晶配向パターンの1周期ΛR1よりも、領域R0の液晶配向パターンの1周期ΛR0が長いため、図8に示すように、入射光に対する回折の角度は、領域R0の透過光の角度θR0の方が領域R1の透過光の角度θR1よりも小さくなる。
【0052】
ここで、面内で液晶分子の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有する液晶層による光の回折では、回折角度が大きくなると回折効率が低下する、すなわち回折光の強度が弱くなるという問題がある。そのため、液晶層を、液晶の光学軸の向きが面内で180°回転する1周期の長さが異なる領域を有する構成とした場合には、光の入射位置によって回折角度が異なるため、面内の入射位置によって回折光の光量に差が生じる。すなわち、面内の入射位置によって、透過、回折した光が暗くなる領域が生じる。
【0053】
これに対して、本実施形態のPBレンズ40PBは、液晶層420Aが厚さ方向で捩れて回転する領域を有しており、厚さ方向の捩れ角の大きさが異なる領域を有する。図8に示す例では、液晶層420Aの領域R2の厚さ方向の捩れ角φR2は領域R1の厚さ方向の捩れ角φR1よりも大きい。また、領域R0は厚さ方向の捩れ構造を有していない。これにより、回折された光の回折効率の低下を抑制することができる。
【0054】
図8に示す例では、回折角度が領域R0よりも大きい領域R1及びR2に捩れ構造を付与することで、領域R1、R2で回折された光の光量の低下を抑制することができる。また、領域R1よりも回折角度が大きい領域R2の捩れ構造の捩れ角を、領域R1よりも大きくすることで、領域R2で回折された光の光量の低下を抑制することができる。これによって、面内の入射位置によって、透過した光の光量が均一になるようにすることができる。
【0055】
このように、本実施形態のPBレンズ40PBでは、液晶層420Aによる回折が大きい面内の領域では、入射光は厚さ方向の捩れ角が大きい層内を透過し、回折される。これに対して、液晶層420Aによる回折が小さい面内の領域は、入射光は厚さ方向の捩れ角が小さい層内を透過して回折される。すなわち、PBレンズ40PBでは、液晶層420Aによる回折の大きさに応じて、面内における厚さ方向の捩れ角を設定することで、入射光に対する透過光を明るくすることができる。そのため、PBレンズ40PBによれば、面内における透過光量の回折角度依存性を小さくすることができる。
【0056】
液晶層420Aの面内における回折の光の角度は、液晶配向パターンの1周期Λが短いほど大きい。また、液晶層420Aの面内における厚さ方向の捩れ角は、液晶配向パターンにおいて矢印X方向に沿って光軸の向きが180°回転する1周期Λの短い領域の方が1周期Λの大きい領域よりも、大きい。PBレンズ40PBでは、一例として、図8にも示すように、液晶層420Aの領域R2における液晶配向パターンの1周期ΛR2が、領域R1における液晶配向パターンの1周期ΛR1よりも短く、厚さ方向に捩れ角φR2は厚さ方向に捩れ角φR1は大きい。すなわち、光入射側の液晶層420Aの領域R2方が、大きく光を回折させる。
【0057】
したがって、対象とする液晶配向パターンの1周期Λに対して、面内における厚さ方向の捩れ角φを設定することで、好適に、面内の異なる領域において異なる角度に回折した透過光を明るくすることができる。
【0058】
PBレンズ40PBにおいては、前述のように、液晶配向パターンの1周期Λが短いほど回折の角度が大きいため、液晶配向パターンの1周期Λが短い領域ほど厚さ方向の捩れ角を大きくすることで透過光を明るくすることを可能にしている。そのため、PBレンズ40PBにおいては、液晶配向パターンの1周期の長さが異なる領域において、1周期の長さの順列と厚さ方向の捩れ角の大きさの順列が異なる領域を有することが好ましい。
【0059】
PBレンズ40PBは、液晶420を含む液晶組成物を用いて形成された液晶層420Aを備え、液晶層420Aは、上記液晶由来の光学軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有し、かつ、上記光学軸が液晶層420Aの厚さ方向で捩れて回転する領域を有しており、厚さ方向の捩れ角の大きさが異なる領域を有することが好ましい。
【0060】
PBレンズ40PBは、液晶420由来の光学軸の向きが面内で180°回転する長さを1周期とした際に、上記液晶配向パターンにおける上記1周期の長さが異なる領域を有することが好ましい。
【0061】
液晶層420Aは、上記液晶配向パターンにおける上記1周期の長さが異なる複数の領域が、上記1周期の長さの順に配列しており、かつ、上記厚さ方向の捩れ角の大きさが異なる複数の領域が、上記厚さ方向の捩れ角の大きさの順に配列しており、上記1周期の長さの順列の方向と上記厚さ方向の捩れ角の大きさの順列の方向とが異なる領域を有することが好ましい。
【0062】
液晶層420Aは、上記厚さ方向の捩れ角の大きさが10°~360°である領域を有することが好ましい。
【0063】
液晶層420Aは、上記液晶配向パターンにおける上記液晶420由来の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化する上記一方向に向かって、上記液晶配向パターンの上記1周期が、漸次、短くなることが好ましい。
【0064】
液晶層420Aの上記液晶配向パターンは、上記液晶420由来の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化する上記一方向を、内側から外側に向かう同心円状のパターンであることが好ましい。
【0065】
図8に示すPBレンズ40PBは、捩れ角が面内で変化するPBレンズであり、回折角が大きい場合においても回折効率が高い素子であるが、PBレンズ40PBは、捩れ角が面内で変化しないPBレンズであってもよい。具体的には、PBレンズ40PBは、厚み方向の捩れがない、又は、面内で一定の捩れ角であるPBレンズであってもよく、例えば、特表2008-532085号公報に記載の偏光回折格子を用いることができる。
【0066】
PBレンズ40PBは、液晶層420Aを、複数層、備えたPBレンズであって、液晶層420Aの厚さ方向で捩れ角の向きが互いに異なる液晶層420Aを有することが好ましい。
【0067】
PBレンズ40PBは、液晶層420Aを、複数層、備えたPBレンズであって、液晶層420Aの厚さ方向で捩れ角の大きさが互いに異なる液晶層420Aを有することが好ましい。
【0068】
PBレンズ40PBは、液晶層420Aを、複数層、備えたPBレンズであって、液晶層420Aは、上記液晶420由来の光学軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転する方向が互いに同一である液晶配向パターンを有することが好ましい。
【0069】
上記液晶配向パターンにおける上記1周期の長さは、50μm以下であることが好ましい。
【0070】
<<実験例>>
光配向膜を3つの照射領域に分割し、フォトマスクを介して各照射領域に偏光を照射する光配向処理において、2つの照射領域に照射される偏光の偏光方向の差が、互いに90°である場合(実験例1)と90°でない場合(実験例2~4)とを実際にサンプルを作製して比較した。
【0071】
<実験例1>
光配向膜を3つの照射領域に分け、両側の照射領域に照射される偏光の偏光方向の差が互いに90°であるようにしたサンプルを作製した。図9は、実験例1の偏光の照射方法を説明する図である。
【0072】
(サンプル作製手順)
正方形のガラス基板上に、光官能基を有する光配向性ポリマーを含む配向膜材料を塗布し、乾燥することにより配向処理前の光配向膜を形成した。
上記光配向膜に偏光UVを2回照射した。偏光UVとしては、UVランプ光源からの光を、ワイヤーグリッドを通すことで作製した直線偏光UVを用いた。図9に示すように、1回目の偏光UV照射は、上記光配向膜200の左側1/3の領域を遮光材(アルミニウム製のフィルム)で隠した状態で行った。このときの偏光UVの偏光方向を0°(基準方位)とする。2回目の偏光UV照射は、上記光配向膜200の右側1/3の領域を遮光材(アルミニウム製のフィルム)で隠した状態で行った。このとき、偏光UVの偏光方向を90°になるように照射した。偏光UVは、波長が365nm、積算光量が100mJ/cmであった。
上記した2回の偏光UV照射の結果、光配向膜200の右側1/3の領域には偏光方向が0°の偏光UVのみが照射され、光配向膜200の左側1/3の領域には偏光方向が90°の偏光UVのみが照射され、光配向膜200の中央1/3の領域には偏光方向が0°の偏光UVと偏光方向が90°の偏光UVが重ねて照射された。
その後、160℃で20分放置したあと、液晶(反応性メソゲン:RM)を1000rpmで回転するスピンコーターで塗布した。塗布後、60℃で60秒放置し、200mJ/cmの無偏光UV(波長365nm)を照射した。その結果、ガラス板上に光配向膜が形成され、光配向膜上に液晶層が形成されたサンプルが完成した。
【0073】
(評価方法)
光配向膜の右側1/3の領域と左側1/3の領域における液晶層の遅相軸の向きをAxometrics社製の偏光特性測定システム「Axoscan」によりそれぞれ測定した。2つの遅相軸のなす角を求めたとする。
また、光配向膜の右側1/3の領域と中央1/3の領域について、ヘーズ(濁度)を日本電色工業社製の「NDH2000」によりそれぞれ測定した。ヘーズの定義は、(拡散透過光強度)÷(全光線透過光強度)である。
【0074】
(実験例1の評価結果)
測定の結果、光配向膜の右側1/3の領域と左側1/3の領域における2つの遅相軸のなす角は90°であり、光配向膜の右側1/3の領域と左側1/3の領域に照射された偏光UVの偏光方向の差と同じであった。光配向膜の右側1/3の領域は、偏光UVが重ねて照射されなかった領域に相当し、光配向膜の中央1/3の領域は、偏光UVが重ねて照射された領域に相当する。
また、光配向膜の右側1/3の領域のヘーズが0.20%であったのに対して、光配向膜の中央1/3の領域のヘーズは2.70%であった。図10は、実験例1のサンプルを示す写真である。図10に示すように、光配向膜の中央1/3の領域(偏光UVが重ねて照射された領域)では、肉眼で曇りの発生が認識された。
【0075】
また、2つの領域のヘーズの差は、偏光UVが重ねて照射されなかった領域(光配向膜の右側1/3の領域)と重ねて照射された領域(光配向膜の中央1/3の領域)の差に相当し、実験例1では2.50%と大きかった。
【0076】
<実験例2>
実験例2では、光配向膜の右側1/3の領域と左側1/3の領域に照射する偏光UVの偏光方向の差を85°となるようにしたこと以外は実験例1と同様にしてサンプルを作製し、サンプルの評価を行った。
【0077】
(実験例2の評価結果)
測定の結果、光配向膜の右側1/3の領域と左側1/3の領域における2つの遅相軸のなす角は85°であり、光配向膜の右側1/3の領域と左側1/3の領域に照射された偏光UVの偏光方向の差と同じであった。光配向膜の右側1/3の領域は、偏光UVが重ねて照射されなかった領域に相当し、光配向膜の中央1/3の領域は、偏光UVが重ねて照射された領域に相当する。
また、光配向膜の右側1/3の領域のヘーズが0.20%であったのに対して、光配向膜の中央1/3の領域のヘーズは0.25%であった。図11は、実験例2のサンプルを示す写真である。図11に示すように、光配向膜の中央1/3の領域(偏光UVが重ねて照射された領域)では、肉眼で曇りの発生は認識されなかった。ヘーズは0.30%以下であることが好ましい。
【0078】
また、2つの領域のヘーズの差は、偏光UVが重ねて照射されなかった領域(光配向膜の右側1/3の領域)と重ねて照射された領域(光配向膜の中央1/3の領域)の差に相当し、実験例2では0.05%と実験例1と比べて著しく小さかった。2つの領域のヘーズの差が小さいほどディスクリネーションの発生を抑制できることから、良好な光学特性を有するパンチャラトナム・ベリー相光学素子を得るのに適している。上記2つの領域のヘーズの差は0.10%以下であることが好ましい。
【0079】
以上の結果から、偏光UVの偏光方向の差が85°であれば、ディスクリネーションの発生を抑制でき、ヘーズが改善するので、良好な光学特性を有するパンチャラトナム・ベリー相光学素子が得られることが分かった。
【0080】
<実験例3>
実験例3では、光配向膜の右側1/3の領域と左側1/3の領域に照射する偏光UVの偏光方向の差を70°となるようにしたこと以外は実験例1と同様にしてサンプルを作製し、サンプルの評価を行った。
【0081】
(実験例3の評価結果)
測定の結果、光配向膜の右側1/3の領域と左側1/3の領域における2つの遅相軸のなす角は70°であり、光配向膜の右側1/3の領域と左側1/3の領域に照射された偏光UVの偏光方向の差と同じであった。光配向膜の右側1/3の領域は、偏光UVが重ねて照射されなかった領域に相当し、光配向膜の中央1/3の領域は、偏光UVが重ねて照射された領域に相当する。
また、光配向膜の右側1/3の領域のヘーズが0.20%であったのに対して、光配向膜の中央1/3の領域のヘーズは0.20%であった。
【0082】
また、2つの領域のヘーズの差は、偏光UVが重ねて照射されなかった領域(光配向膜の右側1/3の領域)と重ねて照射された領域(光配向膜の中央1/3の領域)の差に相当し、実験例2では0.00%と実験例1と比べて著しく小さかった。
【0083】
以上の結果から、偏光UVの偏光方向の差が70°であれば、ディスクリネーションの発生を抑制でき、ヘーズが改善するので、良好な光学特性を有するパンチャラトナム・ベリー相光学素子が得られることが分かった。
【0084】
<実験例4>
実験例4では、光配向膜の右側1/3の領域と左側1/3の領域に照射する偏光UVの偏光方向の差を45°となるようにしたこと以外は実験例1と同様にしてサンプルを作製し、サンプルの評価を行った。
【0085】
(実験例4の評価結果)
測定の結果、光配向膜の右側1/3の領域と左側1/3の領域における2つの遅相軸のなす角は45°であり、光配向膜の右側1/3の領域と左側1/3の領域に照射された偏光UVの偏光方向の差と同じであった。光配向膜の右側1/3の領域は、偏光UVが重ねて照射されなかった領域に相当し、光配向膜の中央1/3の領域は、偏光UVが重ねて照射された領域に相当する。
また、光配向膜の右側1/3の領域のヘーズが0.20%であったのに対して、光配向膜の中央1/3の領域のヘーズは0.20%であった。
【0086】
また、2つの領域のヘーズの差は、偏光UVが重ねて照射されなかった領域(光配向膜の右側1/3の領域)と重ねて照射された領域(光配向膜の中央1/3の領域)の差に相当し、実験例2では0.00%と実験例1と比べて著しく小さかった。
【0087】
以上の結果から、偏光UVの偏光方向の差が45°であれば、ディスクリネーションの発生を抑制でき、ヘーズが改善するので、良好な光学特性を有するパンチャラトナム・ベリー相光学素子が得られることが分かった。
【0088】
<<実施例及び比較例>>
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明の効果を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0089】
<比較例1>
光配向膜を複数の照射領域に分割し、フォトマスクを介して各照射領域に偏光を照射する光配向処理において、各照射領域に照射される偏光UVの偏光方向の差が、互いに90°となる関係が含まれるパンチャラトナム・ベリー相光学素子(PBレンズ)を実際に作製した。
【0090】
(PBレンズ作製手順)
図16に示すように、ガラス基板100上に、光官能基を有する光配向性ポリマーを含む配向膜材料を塗布し、乾燥することにより光異性化型の光配向膜200を形成した後、偏光方向が0°、45°、90°及び135°の偏光UVをそれぞれ光配向膜200に対して照射した。偏光UVは、波長が365nm、積算光量が100mJ/cmであった。偏光UVの照射には、偏光UVの偏光方向に応じて、4種のフォトマスクを用いた。4種のフォトマスクはいずれも透光部と遮光部が同心円状に繰り返される円環型のフォトマスクであった。具体的には、偏光方向が0°の偏光UVに対して、図12に示す透光部111及び遮光部112を有するフォトマスク110を使用し、偏光方向が45°の偏光UVに対して、図13に示す透光部121及び遮光部122を有するフォトマスク120を使用し、偏光方向が90°の偏光UVに対して、図14に示す透光部131及び遮光部132を有するフォトマスク130を使用し、偏光方向が135°の偏光UVに対して、図15に示す透光部141及び遮光部142を有するフォトマスク140を使用した。図16に示すように、4種のフォトマスクは、偏光方向が異なる偏光UVが重ねて照射される領域(重畳領域)と重ねて照射されない領域(非重畳領域)とが交互に形成されるように設計されたものであった。
偏光UV照射後、160℃のオーブンで20分焼成し、その後、液晶(反応性メソゲン:RM)を1000rpmで回転するスピンコーターで塗布した。塗膜の厚みは波長532nmの光に対して位相差がλ/2(約266nm)となるように設定した。塗布後、60℃で60秒放置し、200mJ/cmの無偏光UV(波長365nm)を照射した。その結果、ガラス基板上に光配向膜が形成され、光配向膜上に液晶層が形成されたPBレンズが完成した。
【0091】
得られたPBレンズを偏光顕微鏡によって観察し、液晶層中の液晶が正常に配列していることを確認した。図17は、偏光顕微鏡で観察した比較例1のPBレンズの写真である。この比較例1のPBレンズの液晶層は、基準配向方位がそれぞれ0°、22.5°、45°、67.5°、90°、112.5°、135°、157.5°である複数の配向ドメインを含む。基準配向方位が0°、45°、90°、135°の配向ドメインのそれぞれは、第1配向ドメインに対応し、基準配向方位が22.5°、67.5°、112.5°、157.5°の配向ドメインのそれぞれは、第2配向ドメインに対応する。比較例1のPBレンズの液晶層は、互いに基準配向方位の差が90°となる2つの第1配向ドメイン(基準配向方位が0°と90°との2つの第1配向ドメイン、基準配向方位が45°と135°との2つの第1配向ドメイン)を含んでいる。
【0092】
(評価方法)
PBレンズの光学特性は回折効率に基づき評価した。図18は、回折効率の測定方法を説明する図である。図18に示すように、回折効率の測定には、波長532nmのレーザー光を出射するレーザー光源510、円偏光板520、PBレンズ40PBを使用した。
レーザー光源510から出射したレーザー光は、円偏光板520を通過し、円偏光となり出射される。その後、PBレンズ40PBの外周部を透過した光のうち、主要光は焦点距離に向かう。一方、0次光などの不要光は主要光とは異なる方向に回折する。そこで、図18に示すように、測定点1(PBレンズ透過直後)及び測定点2(主要光の光路かつ焦点距離よりも遠方)で光強度を測定し、測定点1で測定された光強度を「全透過光強度」とし、測定点2で測定された光強度を「主要光強度」とした。下記式により回折効率(単位:%)を算出した。
回折効率=(主要光強度)÷(全透過光強度)×100
また、回折効率は、図19に示すようにレーザー光がPBレンズを透過する位置(図中に●で表示)を変えて測定し、最小値と最大値を求めた。
【0093】
(比較例1の評価結果)
測定の結果、偏光方向が0°、45°、90°又は135°の偏光UVを光配向膜の各照射領域に照射して作製した比較例1のPBレンズの回折効率の最小値は76.2%であり、最大値は95.3%であった。PBレンズの面内でディスクリネーションが発生していたため、回折効率がバラついたものと考えられる。
【0094】
<実施例1>
光配向膜を複数の照射領域に分割し、フォトマスクを介して各照射領域に偏光を照射する光配向処理において、各照射領域に照射される偏光UVの偏光方向の差が、互いに90°とはならない(2つの偏光方向の差を当該2つの偏光方向がなす角のうちの鋭角の角度としたときは、各照射領域に照射される偏光UVの偏光方向の差が互いに90°未満(例えば85°以下)の関係を満たすということもできる)ようにパンチャラトナム・ベリー相光学素子(PBレンズ)を実際に作製した。使用する偏光UVの偏光方向を0°、45°、80°及び125°としたこと以外は、比較例1と同様にしてPBレンズを作製した。また、比較例1と同様にして回折効率を測定し、最小値と最大値を求めた。
【0095】
図20は、偏光顕微鏡で観察した実施例1のPBレンズの写真である。図21は、実施例1のPBレンズにおける液晶の配向を模式的に示す図である。図20及び21に示すように、実施例1のPBレンズにおいて、液晶層は、液晶420の基準配向方位が互いに異なる複数の第1配向ドメイン及び複数の第2配向ドメインを有し、上記複数の第1配向ドメインは、互いに上記基準配向方位の差が90°とはならない(2つの基準配向方位の差を当該2つの基準配向方位のそれぞれに沿った2つの方向がなす角のうちの鋭角の角度としたときは、複数の第1配向ドメインは、互いに上記基準配向方位の差が90°未満(例えば85°以下)の関係を満たすということもできる)ものであった。図21に示す実施例1のPBレンズの液晶層420は、基準配向方位がそれぞれ0°、45°、80°及び125°であるように構成された複数の第1配向ドメインと、基準配向方位がそれぞれ22.5°、62.5°、102.5°及び152.5°であるように構成された複数の第2配向ドメインとを有する。
【0096】
(実施例1の評価結果)
測定の結果、偏光方向が0°、45°、80°又は125°の偏光UVを光配向膜の各照射領域に照射して作製した実施例1のPBレンズの回折効率の最小値は95.4%であり、最大値は97.3%であった。実施例1のPBレンズは、比較例1のPBレンズよりも回折効率が高く、バラツキも少なかった。実施例1と比較例1の比較から、偏光UVの偏光方向のなす角を90°とはならないようにすることで、回折効率が良くなることを確認できた。これは、直交する偏光UVの重なりによってディスクリネーションが発生することを防止できたためであると考えられる。
【0097】
なお、図1及び図21に示したPBレンズは、中心から外に向かうにつれ、液晶420の長軸420Xが左回転する構造であったが、中心から外に向かうにつれ、液晶420の長軸420Xが右回転する構造であってもよい。図1に示したPBレンズに対応する右回転の構造として、PBレンズの液晶層420は、基準配向方位が180°(0°)の第1配向ドメイン、基準配向方位が157.5°(-22.5°)の第2配向ドメイン、基準配向方位が135°(-45°)の第1配向ドメイン、基準配向方位が115°(-65°)の第2配向ドメイン、基準配向方位が95°(-85°)の第1配向ドメイン、基準配向方位が72.5°(-107.5°)の第2配向ドメイン、基準配向方位が50°(-130°)の第1配向ドメイン、及び、基準配向方位が25°(-155°)の第2配向ドメインを順に有していてもよい。また、図21に示したPBレンズに対応する右回転の構造として、PBレンズの液晶層420は、基準配向方位が180°(0°)の第1配向ドメイン、基準配向方位が157.5°(-22.5°)の第2配向ドメイン、基準配向方位が135°(-45°)の第1配向ドメイン、基準配向方位が117.5°(-62.5°)の第2配向ドメイン、基準配向方位が100°(-80°)の第1配向ドメイン、基準配向方位が77.5°(-102.5°)の第2配向ドメイン、基準配向方位が55°(-125°)の第1配向ドメイン、及び、基準配向方位が27.5°(-152.5°)の第2配向ドメインを順に有していてもよい。
【0098】
また、PB回折格子の液晶層が有する複数の配向ドメインは、図2に示した例に限られない。例えば、上述したPBレンズの液晶層420が有する複数の配向ドメインをPB回折格子の液晶層が有する複数の配向ドメインとして適用してもよい。
【符号の説明】
【0099】
40PB:PBレンズ
100:ガラス基板
110、120、130、140:フォトマスク
200:光配向膜
410:支持基板
420:液晶
420A:液晶層
420X:液晶の長軸
510:レーザー光源
520:円偏光板
LC0、LC1、LC2:左円偏光
R0、R1、R2:領域
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【手続補正書】
【提出日】2024-04-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0098
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0098】
また、PB回折格子の液晶層が有する複数の配向ドメインは、図2に示した例に限られない。例えば、上述したPBレンズの液晶層420が有する複数の配向ドメインそれぞれの基準配向方位をPB回折格子の液晶層が有する複数の配向ドメインそれぞれの基準配向方位として適用してもよい。