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▶ ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイスの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175655
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】計時器用ベアリング
(51)【国際特許分類】
   G04B 31/04 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
G04B31/04
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024081450
(22)【出願日】2024-05-20
(31)【優先権主張番号】23177607.1
(32)【優先日】2023-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】シリル・ルシュティ
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ・メリノ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】寸法が小さく、計時器用コンポーネントのスタッフを常に非常に効率的に再配置することを可能にする、計時器のためのベアリングを提供する。
【解決手段】計時器用ベアリング1であって、応力が付与されたコンパクトなアセンブリー10は、第1のオリフィス9a内に取り付けられた第1の弾性メンバー3と、第1の弾性メンバー3と第2のオリフィスとの間に配置された第2の弾性メンバー6と、第2のオリフィスに対向するように配置された、ピボット要素5と、第1及び第2の弾性メンバー3、6の間に配置されたエンドストーン要素4とを備え、エンドストーン要素4は、中央部13aと周部13bによって構成しており、中央部13aには、ピボット要素5の一部を中に配置することができる空洞があり、周部13bには、第2の弾性メンバー6の平坦な上面の周全体に支えられるように構成している接触領域23がある。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通開口(8)が形成されたベアリングハウジング(2)を備える計時器用ベアリング(1)であって、
前記貫通開口(8)には、応力が付与されたコンパクトなアセンブリー(10)があり、前記コンパクトなアセンブリー(10)は、
前記貫通開口(8)の第1のオリフィス(9a)内に取り付けられた第1の弾性メンバー(3)と、
前記第1の弾性メンバー(3)と前記貫通開口(8)の第2のオリフィス(9b)との間に配置された第2の弾性メンバー(6)と、
計時器用コンポーネントのスタッフを回転させるために設けられ、前記第2の弾性メンバー(6)の中央領域に配置され、前記第2のオリフィス(9b)に対向するように配置された、ピボット要素(5)と、
前記コンポーネントの前記スタッフの端部分を受けるように意図され、前記第1及び第2の弾性メンバー(3、6)の間に配置されたエンドストーン要素(4)とを備え、
前記第2のオリフィス(9b)を通して、前記コンポーネントの前記スタッフを前記貫通開口(8)内に挿入することができ、
前記エンドストーン要素(4)は、中央部(13a)と周部(13b)によって構成しており、
前記中央部(13a)には、前記ピボット要素(5)の一部を中に配置することができる空洞(15)があり、
前記周部(13b)には、前記第2の弾性メンバー(6)の平坦な上面の周全体に支えられるように構成している接触領域(23)がある
ことを特徴とするベアリング(1)。
【請求項2】
前記中央部(13a)と前記周部(13b)はそれぞれ、前記エンドストーン要素(4)の先端部(13a)と基部(13b)を形成する
ことを特徴とする請求項1に記載のベアリング(1)。
【請求項3】
前記エンドストーン要素(4)は、前記貫通開口(8)の回転軸(A3)に対して前記貫通開口(8)内において軸方向に動くことができるように取り付けられる
ことを特徴とする請求項1に記載のベアリング(1)。
【請求項4】
前記エンドストーン要素(4)の前記中央部(13a)は、前記計時器が受ける可能性のある衝撃を受けたときに、前記貫通開口(8)の前記第1のオリフィス(9a)内に入り込むように構成している
ことを特徴とする請求項1に記載のベアリング(1)。
【請求項5】
前記エンドストーン要素(4)の前記周部(13b)には、前記計時器が受ける可能性のある衝撃を受けたときに前記第1の弾性メンバー(3)と連係するように構成している止め領域がある
ことを特徴とする請求項1に記載のベアリング(1)。
【請求項6】
前記空洞(15)内に配置される前記ピボット要素(5)の部分は、前記第2の弾性メンバー(6)の前記中央領域から突出しており、
この部分には、前記空洞(15)の背部(16)の近くに配置される外面がある
ことを特徴とする請求項1に記載のベアリング(1)。
【請求項7】
前記第1の弾性メンバー(3)は、前記貫通開口(8)の回転軸(A3)に対して略軸方向に変形するように構成している
ことを特徴とする請求項1に記載のベアリング(1)。
【請求項8】
前記第1の弾性メンバー(3)には、前記第1の弾性メンバー(3)を前記貫通開口(8)内に締め付け固定するための締め付け要素(11a)と、前記エンドストーン要素(4)の前記中央部(13a)に支えられるように意図された応力付与要素(11b)と、前記応力付与要素(11b)と前記締め付け要素(11a)を互いに接続する接続要素(11c)とがある
ことを特徴とする請求項1に記載のベアリング(1)。
【請求項9】
前記第2の弾性メンバー(6)は、前記第2の弾性メンバー(6)を前記貫通開口(8)内にて接続するための接続部分(21a)と、前記ピボット要素(5)を前記第2の弾性メンバー(6)の中央領域にて締め付け固定するための締め付け部分(21b)とがあり、
前記接続部分(21a)と前記締め付け部分(21b)は、前記第2の弾性メンバー(6)の少なくとも1つの弾性要素(21c)によって互いに接続される
ことを特徴とする請求項1に記載のベアリング(1)。
【請求項10】
前記第2の弾性メンバー(6)は、前記ベアリングハウジング(2)内にて固定されるように取り付けられる
ことを特徴とする請求項1に記載のベアリング(1)。
【請求項11】
前記第2の弾性メンバー(6)は、前記貫通開口(8)の回転軸(A3)に対する略半径方向に変形するように構成している
ことを特徴とする請求項1に記載のベアリング(1)。
【請求項12】
前記ベアリングハウジング(2)、前記貫通開口(8)、前記第1及び第2の弾性メンバー(3、6)、前記エンドストーン要素(5)、及び前記ピボット要素には、前記ベアリング(1)の中心軸(A1)と一致する回転軸(A2、A3、A4、A5、A6、A7)がある
ことを特徴とする請求項1に記載のベアリング(1)。
【請求項13】
請求項1に記載のベアリング(1)を備える
ことを特徴とする計時器用ムーブメント。
【請求項14】
請求項13に記載の計時器用ムーブメントを備える
ことを特徴とする計時器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明のいくつかの実施形態は、計時器用コンポーネントのスタッフのための、計時器用ベアリング、特に衝撃吸収性ベアリング、に関する。本発明は、さらに、このようなベアリングを備える計時器用ムーブメントに関する。本発明は、さらに、このようなベアリング及び/又はこのような計時器用ムーブメントを備える計時器に関する。
【背景技術】
【0002】
計時器において、典型的には、計時器用コンポーネントのスタッフには、その両端にピボットがあり、この端は、計時器用ムーブメントのプレートのようなブランクやブリッジに取り付けられたベアリング内を回転する。一部の計時器用コンポーネント、特にバランス、において、衝撃吸収機構があるベアリングを取り付けることが一般的である。なぜなら、このバランススタッフのピボットが通常細く、このバランスの重さが比較的大きいために、衝撃吸収機構がないと衝撃の影響を受けてピボットが壊れてしまう可能性があるためである。
【0003】
従来技術において、一般的に、伝統的な衝撃吸収性ベアリングには、ピボットのための軸方向及び半径方向のガイド要素を形成する貫通穴がある穴あきジュエルのようなブッシュがある。このようなジュエルは、一般的にセッティングと呼ばれる、ベアリング支持体に入れ込まれ、そのベアリング支持体上にエンドストーンが取り付けられて、ピボットの軸方向止めを形成する。このセッティングは、半径方向の衝撃を軸方向の衝撃に変換するように意図されている。このようなセッティングは、エンドストーンの上部に軸方向の応力を与えるように構成している、通常はダンピングばねである、弾性手段によって、ベアリングハウジングの背部に対向するように保持される。このスタッフピボットは、穴あきジュエルに形成された貫通穴内に挿入される。このようなベアリングは、セッティング、穴あきジュエル、及びエンドストーンによって形成されるアセンブリーが、ダンピングばねのおかげで動くことができるため、衝撃を吸収する。
【0004】
しかし、このようなベアリングの主な課題の1つは、特にこのようなベアリングが含む潤滑剤の経年劣化や経年劣化を理由として、堅牢性が低いことである。このことによって、ベアリングの動作が変わり、信頼性が低くなる。この結果、このようなベアリングは、衝撃を受けたときにバランススタッフの完全な半径方向の再度のセンタリングが確実ではなくなる。なぜなら、このような再度のセンタリングはランダムであることが多いためである。ここでの問題は、特定の耐衝撃性の構成において特定の瞬間Tにおいてムーブメントのレートが設定されることに基づいている。衝撃を受けた後、例えば、不完全なセンタリングによってベアリングの構成が変わり、以前に行われたレート調整が最適ではなくなってしまう。すなわち、バランススタッフの位置がムーブメントのレートに直接影響し、したがって、クロノメトリー的な安定性を向上させるためには、このセンタリングの誤差についての課題を解決する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的の1つは、寸法が小さく、計時器用コンポーネントのスタッフを常に非常に効率的に再配置することを可能にするような、計時器のためのベアリングを提供することである。
【0006】
本発明は、計時器用コンポーネントのスタッフを繰り返し配置するためのベアリングを提供することを別の目的とする。
【0007】
本発明は、小さい寸法のベアリングを提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような状況で、本発明は、貫通開口が形成されたベアリングハウジングを備える計時器用ベアリングに関し、前記貫通開口には、応力が付与されたコンパクトなアセンブリーがあり、前記コンパクトなアセンブリーは、前記貫通開口の第1のオリフィス内に取り付けられた第1の弾性メンバーと、前記第1の弾性メンバーと前記前記貫通開口の第2のオリフィスとの間に配置された第2の弾性メンバーと、計時器用コンポーネントのスタッフを回転させるために設けられ、前記第2の弾性メンバーの中央領域に配置され、前記第2のオリフィスに対向するように配置された、ピボット要素と、前記コンポーネントの前記スタッフの端部分を受けるように意図され、前記第1及び第2の弾性メンバーの間に配置されたエンドストーン要素とを備え、前記第2のオリフィスを通して、前記コンポーネントの前記スタッフを前記貫通開口内に挿入することができ、前記エンドストーン要素は、中央部と周部によって構成しており、前記中央部には、前記ピボット要素の一部を中に配置することができる空洞があり、前記周部には、前記第2の弾性メンバーの平坦な上面の周全体に支えられるように構成している接触領域がある。
【0009】
他の実施形態においては、以下のような特徴を有する。
- 前記中央部と前記周部はそれぞれ、前記エンドストーン要素の先端部と基部を形成する。
- 前記エンドストーン要素は、前記貫通開口の回転軸に対して前記貫通開口内において軸方向に動くことができるように取り付けられる。
- 前記エンドストーン要素の前記中央部は、前記計時器が受ける可能性のある衝撃を受けたときに、前記貫通開口の前記第1のオリフィス内に入り込むように構成している。
- 前記エンドストーン要素の前記周部には、前記計時器が受ける可能性のある衝撃を受けたときに前記第1の弾性メンバーと連係するように構成している止め領域がある。
- 前記空洞内に配置される前記ピボット要素の部分は、前記第2の弾性メンバーの前記中央領域から突出しており、この部分には、前記空洞の背部の近くに配置される外面がある。
- 前記第1の弾性メンバーは、前記貫通開口の回転軸に対して略軸方向に変形するように構成している。
- 前記第1の弾性メンバーには、前記第1の弾性メンバーを前記貫通開口内に締め付け固定するための締め付け要素と、前記エンドストーン要素の前記中央部に支えられるように意図された応力付与要素と、前記応力付与要素と前記締め付け要素を互いに接続する接続要素とがある。
- 前記第2の弾性メンバーは、前記第2の弾性メンバーを前記貫通開口内にて接続するための接続部分と、前記ピボット要素を前記第2の弾性メンバーの中央領域にて締め付け固定するための締め付け部分とがあり、前記接続部分と前記締め付け部分は、前記第2の弾性メンバーの少なくとも1つの弾性要素によって互いに接続される。
- 前記第2の弾性メンバーは、前記ベアリングハウジング内にて固定されるように取り付けられる。
- 前記第2の弾性メンバーは、前記貫通開口の回転軸に対する略半径方向に変形するように構成している。
- 前記ベアリングハウジング、前記貫通開口、前記第1及び第2の弾性メンバー、前記エンドストーン要素、及び前記ピボット要素には、前記ベアリングの中心軸と一致する回転軸がある。
【0010】
本発明の別の態様は、このようなベアリングが取り付けられた計時器用ムーブメントに関する。
【0011】
本発明の別の態様は、このような計時器用ムーブメントを備える計時器に関する。
【0012】
添付の図面を参照しながら例として与えられる本発明の特定の実施形態についての以下の説明を読むことによって、本発明の他の特徴及び利点が一層明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る計時器用ベアリングの斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る図1に示しているベアリングを上から見た図である。
図3】本発明の実施形態に係る図2に示しているベアリングの軸III-IIIに沿った断面の図である。
図4】本発明の実施形態に係るベアリングを形成するすべての部品の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1~4は、携行型時計(例、腕時計、懐中時計)のような計時器、特に腕時計、のためのベアリング1の一実施形態を示している。このようなベアリング1は、電子式ムーブメントや機械式ムーブメントのような計時器用ムーブメントの計時機構の一部であることができる。例として、前記計時機構は、バランスとばねを備えるばね仕掛けバランス型発振器であることができる。
【0015】
このベアリング1は、「計時器用ベアリング」、「耐衝撃性ベアリング」又は「衝撃吸収性ベアリング」とも呼ばれ、セラミックス又はガラス製のスタッフ、特にスタッフピボット、を回転させるために特に適している。このようなスタッフは、「回転スタッフ」、「ピボットスタッフ」又は「アーバー」とも呼ばれ、計時器用コンポーネントのスタッフであることができ、これは、計時機構が発振器である場合のバランスピボットシャンクのような「回転可動部品のスタッフ」とも呼ばれる。
【0016】
このようなベアリング1は、取り付けられたベアリングの軸A1とも呼ばれる、ベアリング1の中心軸A1を中心に回転可能に計時器用コンポーネントのスタッフをガイドし、また、このスタッフの並進運動を止めるように、特に、軸A1に対する軸方向及び/又は半径方向の並進運動を制限するように、効果的に構成している。
【0017】
なお、この計時器コンポーネントのスタッフをガイドすることは、その計時器コンポーネント自体をガイドすることにもなり、軸A1に対するコンポーネントの軸方向及び/又は半径方向の並進運動がこのベアリング1のおかげで制限される。
【0018】
このようなベアリング1は、計時器用ムーブメントのブリッジのようなブランク、例えば、バランスブリッジやプレート、に組み付けられたり、堅固に接続されるように意図されている。代わりに、このベアリング1は、例えば機械加工によって、プレートやブリッジの本体に直接形成することができる。
【0019】
図4を参照すると、ベアリング1には、ピボット要素5と、エンドストーン要素4と、第1及び第2の弾性メンバー3、6とによって構成するコンポーネント群からなるコンパクトなアセンブリー10を受けるように構成しているベアリングハウジング2がある。
【0020】
このベアリングハウジング2には、「中央貫通開口」とも呼ばれる貫通開口8があり、この貫通開口8は、このベアリングユニットの軸とも呼ばれる、このベアリングハウジング2の回転軸A2、の方向と平行な方向に形成されている。このような貫通開口8の各端には、第1及び第2のオリフィス9a、9bがある。なお、第1のオリフィス9aの開口断面は、好ましくは第2のオリフィス9bの開口断面よりも大きい。後述するように、第1のオリフィス9aは、第1の弾性メンバー3を貫通開口8内に取り付けることに役立つように構成しており、第2のオリフィス9bは、計時器用コンポーネントのスタッフをこの同じ貫通開口8内に挿入することを可能にするように構成している。
【0021】
このベアリングハウジング2において、貫通開口8には、ベアリング1の中心軸A1と一致する回転軸A3があり、これは、貫通開口8の軸とも呼ばれる。このような貫通開口8は、この軸A3を中心とする回転体形状であり、これは、このベアリングハウジング2のベッドないしエンクロージャを形成する。なお、このベッドは、図4に示している貫通開口8の内周壁20によってベアリングハウジング2内に形成される容積に対応するものである。したがって、この構成において、このようなベッドは、第1のオリフィス9aと第2のオリフィス9bの間に形成され、これは、このようなベッドの一部を形成する。
【0022】
このベアリング1において、貫通開口8は、ベアリングハウジング2において、コンパクトなアセンブリー10の構成を受けたり、このような構成や取り付けに寄与するように構成している。この構成において、コンパクトなアセンブリー10には、貫通開口8の内周壁20と連係して、ベアリングハウジング2内におけるこのコンパクトなアセンブリー10の配置を確実にするように意図された取り付け領域11a、21a、22a、22bがある。このような取り付け領域11a、21a、22a、22bは、このアセンブリー10の第1及び第2の弾性メンバー3、6内/上にある。代替的実施形態の1つにおいて、これらの取り付け領域11a、21a、22a、22bは、第1及び第2の弾性メンバー3、6内/上のみにある。すなわち、これらの取り付け領域11a、21a、22a、22bは、ベアリング1を形成するためにベアリングハウジング2内におけるこのコンパクトなアセンブリー10の取り付けを実行する/確実にするこのコンパクトなアセンブリー10の唯一の部品である。後で説明するように、これらの取り付け領域11a、21a、22a、22bは、このハウジング2に支えられること及び/又はこのハウジング2に締め付け固定されることによって、このベアリングハウジング2と連係する。
【0023】
このアセンブリーにおいて、ピボット要素5、エンドストーン要素4、第1の弾性メンバー3、及び第2の弾性メンバー6にはそれぞれ、中心軸A4、A5、A6、A7がある。これらの軸A4、A5、A6、A7はそれぞれ、コンパクトなアセンブリー10がベアリングハウジング2内にて取り付けられたときに、ベアリング1の軸A1、ベアリングハウジング2の軸A2、及び貫通開口8の軸A3と一致する。
【0024】
すでに述べたように、このコンパクトなアセンブリー10は、第1の弾性メンバー3と、エンドストーン要素4と、ピボット要素5がある第2の弾性メンバー6とによって構成するコンポーネント群によって形成される。
【0025】
第1の弾性メンバー3は、例えば、戻しばねタイプの弾性要素であり、計時器、特にこの計時器の計時器用ムーブメント、が実質的に軸方向の衝撃を受けた後に、エンドストーン要素4、したがって、計時器用コンポーネントのスタッフ、をベアリングハウジング2の貫通開口8内に弾性的に戻し、また、適切に軸方向にて置き換えるように意図されている。すなわち、第1の弾性メンバー3は、貫通開口8の回転軸A3に対して略軸方向に変形するように構成している。すなわち、この第1の弾性メンバー3は、計時器用コンポーネントのスタッフを常に、軸方向の衝撃を多く吸収するように構成している同じ場所に、軸方向に再配置するように構成している。したがって、この第1の弾性メンバー3は、このような衝撃を受けて、計時器用コンポーネントのスタッフを、その初期位置又は休み位置に、回転軸A3に対して軸方向に配置するように構成していることがわかる。
【0026】
このような第1の弾性メンバー3は、ベアリングハウジング2に堅固に接続され又は締め付け固定される。特に、この第1の弾性メンバー3は、貫通開口8の第1のオリフィス9a内にて取り付けられる。このために、この第1の弾性メンバー3には、少なくとも1つの接続要素11c、少なくとも1つの応力付与要素11b、及び少なくとも1つの締め付け要素11aがあり、これらは互いに接続される。
【0027】
特に、この第1の弾性メンバー3には、「堅固な接続要素」とも呼ばれる締め付け要素11aがあり、これは、開口8の第1のオリフィス9aに形成されるノッチ12内に配置されるように構成している。図4を参照すると、この第1の弾性メンバー3には、2つの締め付け要素11aがある。各締め付け要素11aは、貫通開口8に形成されたノッチ12内に配置されて、第1の弾性メンバー3をこの貫通開口8内に取り付けることに寄与するように構成している。なお、これらの締め付け要素11aは、上記のベアリングハウジング2内のアセンブリー10の取り付け領域11a、21a、22a、22bの一部を形成する。
【0028】
第1の弾性メンバー3には、さらに、エンドストーン要素4と接触している応力付与要素11bがある。特に、応力付与要素11bは、エンドストーン要素4の中央部13aに、特にこのエンドストーン要素4の先端部13a上において、支えられるように意図されている。これらの応力付与要素11bは、このエンドストーン要素4に、略軸方向の戻し力、特に軸方向の弾性力、を与えるように構成している。なお、図4を参照すると、この第1の弾性メンバー3には、好ましくは、2つの応力付与要素11bがある。
【0029】
第1の弾性メンバー3には、さらに、応力付与要素11bと締め付け要素11aとを接続する接続要素11cがある。図4に示しているように、この第1の弾性メンバー3には、この接続要素11cが2つある。
【0030】
このコンパクトなアセンブリー10において、エンドストーン要素4は、ピボットの端に対応する計時器用コンポーネントのスタッフの端部(ないし端)を受けたり、このスタッフの端部のための当接体を構成したりするように意図されている。貫通開口8内において、エンドストーン要素4が第1及び第2の弾性メンバー3、6の間に配置される。このようなエンドストーン要素4は、この貫通開口8内において、この貫通開口8の回転軸A3に対して軸方向及び半径方向に運動可能になるように取り付けられる。
【0031】
このエンドストーン要素4には、中央部13aと周部13b、そして、内面14aと外面14bがある。なお、このエンドストーン要素4において、中央部13aは周部13bに囲まれている。このようなエンドストーン要素4には、中央部13aと周部13bを接続する段領域13cがあり、これは、図3及び4に示しているこのエンドストーン要素4の外面14bにおいて見ることができる。この構成において、このような中央部13aと周部13bはそれぞれ、エンドストーン要素4の先端部13aと基部13bを形成する。
【0032】
このエンドストーン要素4の内面14aにおいて、中央部13aには、図3に示している空洞15があり、後で説明するように、その空洞15の中にピボット要素5の一部を配置することができる。この内面14aにおいて、周部13bは、第2の弾性メンバー6の平坦な上面の外環部に直接支えられるように構成している接触領域23がある。代替的実施形態の1つにおいて、接触領域23は、第2の弾性メンバー6の平坦な上面の周全体に直接支えられるように構成している。なお、このような空洞15は、機械加工によって、特にダイヤモンド工具を用いた伝統的な機械加工、又はレーザー加工によって、作ることができる。
【0033】
前記のように、中央部13aと周部13bはそれぞれ、このエンドストーン要素4の先端部13aと基部13bを形成する。この先端部13aは、特に計時器が受ける可能性がある実質的に軸方向の衝撃を受けた際に、第1の弾性メンバー3内に、特に第1の弾性メンバー3の内側に形成される空間内に、入り込むように構成しており/形を有し、この空間は、この第1の弾性メンバー3の接続要素11cによって境界が定められる。この基部13bは、このような衝撃を受けた際に、第1の弾性メンバー3と連係することによって、エンドストーン要素4のための止め領域を形成するように構成している。実際に、このような止め領域は、この基部13bに位置するエンドストーン要素4の外面14bの部分に形成される。この構成において、この止め領域は、接続要素11cと締め付け要素11aと連係して、衝撃、特に実質的に軸方向の強い衝撃、を受けた際に、計時器用コンポーネントのスタッフの軸方向の変位を制限することができる。
【0034】
このようなエンドストーン要素4は、例えば、合成貴石、又はルビーやジルコニアなどの単結晶又は多結晶でない材料によって作られたエンドストーン、又は金属性材料又はケイ素ベースの材料(例えば、単結晶又は多結晶のケイ素、その酸化物、窒化物又は炭化物であることができ、これも単結晶又は多結晶であることができる)によって作られた要素であることができる。
【0035】
このコンパクトなアセンブリー10において、ピボット要素5は、計時器用コンポーネントのスタッフを回転させるように意図されている。このピボット要素5には、計時器用コンポーネントのこのスタッフ、特にこのスタッフの端部、を受けるための中央穴17がある。このピボット要素5は、第2の弾性メンバー6の中央領域に配置され、第2のオリフィス9bに対向するようにポジショニングされる。この第2のオリフィス9bを通して計時器用コンポーネントのスタッフを前記貫通開口8内に挿入することができる。このようなピボット要素5には、上面18a、側面18b、及び下面18cがあり、この側面18bは、これらの上面18aと下面18cを接続する。この構成において、このピボット要素5の上面18aは、エンドストーン要素4の内面14aに対向し、ピボット要素5の下面18cは、第2のオリフィス9bに対向するように配置される。特に、このピボット要素5には、エンドストーン要素4の空洞15内に配置される第2の弾性メンバー6から突出する部分があり、ピボット要素5の上面18aが空洞15の背部16の近くに配置される。
【0036】
このようなピボット要素5は、「ブッシュ」とも呼ばれ、穴あきジュエルであることができ、これは、典型的には、合成貴石、又はルビーやジルコニアのような単結晶又は多結晶ではない材料、又はケイ素ベースの材料(例えば、単結晶又は多結晶ケイ素、その酸化物、窒化物又は炭化物であり、これらも単結晶又は多結晶であることができる)、又は金属製のリングによって作られる。
【0037】
このコンパクトなアセンブリー10において、第2の弾性メンバー6は、貫通開口8内において、したがって、ベアリングハウジング2内において、固定されるように配置され/取り付けられる。この貫通開口8において、この第2の弾性メンバー6は、この貫通開口8の内周壁20が含む肩部上面19上に配置される。なお、この肩部上面19は、オリフィス9aの底部に位置し、内周壁20の表面に直交している。
【0038】
このアセンブリー10において、第2の弾性メンバー6は、貫通開口8の回転軸A3に対する略半径方向に変形するように構成している。すなわち、この第2の弾性メンバー6は、半径方向の衝撃を吸収するように構成していることによって、常に同じ場所にある計時器用コンポーネントのスタッフを半径方向に動かすように構成している。
【0039】
特に、この第2の弾性メンバー6は、貫通開口8の内周壁20に接続するための接続部分21aと、ピボット要素5をこの第2の弾性メンバー6の中央領域にて締め付け固定するための締め付け部分21bとを有し、これらの接続部分21aと締め付け部分21bは、この第2の弾性メンバー6の少なくとも1つの弾性要素21cによって互いに接続されている。なお、接続部分21aと締め付け部分21bは、弾性要素21cと比べて、この第2の弾性メンバー6の堅固な部分である。これらの接続部分21aと締め付け部分21bは、応力を受けた際に弾性変形しやすい。
【0040】
前記少なくとも1つの弾性要素21cは、ムーブメントが衝撃を受けた際に、接続部分21aに対する締め付け部分21bの変位を制御することによって、第2の弾性メンバー6の半径方向の変形を確実にするように構成している。すなわち、弾性要素21cは、その初期位置又は休み位置において、衝撃に応答して、接続部分21a、ピボット要素5、又は計時器用コンポーネントのスタッフを、回転軸A3に対する半径方向に配置するように構成している。
【0041】
また、この第2の弾性メンバー6には、好ましくは、互いに実質的に平行である平坦な上面と下面がある。
【0042】
接続部分21aは、この第2の弾性メンバー6の外周壁を形成する。この構成において、第2の弾性メンバー6が貫通開口8内に取り付けられるときに、この周壁、したがってこの接続部分21a、の側面22aが、この貫通開口8の内周壁20の全部又は一部上に載置される。特に、この接続部分21aは、第2の弾性メンバー6が貫通開口8内に入り込むときに、弾性変形するように構成している。このときに、この接続部分21aは、その側面22aによって開口8の内周壁20に支えられることができる。例として、第2の弾性メンバー6は、入れ込む(drive in)ことによってこの貫通開口8内に挿入することができる。
【0043】
この接続部分21aは、さらに、貫通開口8内にある肩部上面19と連係するように構成している接触面22bがある。なお、前記例を参照すると、第2の弾性メンバー6は、接続部分21aの接触面22bを介して貫通開口8の肩部上面19に当接するまで、貫通開口8内に入れ込まれることによって挿入される。なお、この接触面22bは、この第2の弾性メンバー6の平坦な下面上にある。
【0044】
したがって、このような接続部分21aは、第2の弾性メンバー6を貫通開口8内にて、固定されるように配置する/取り付けることを可能にすることがわかる。すなわち、この接続部分21aは、貫通開口8の回転軸A3に対するこの第2の弾性メンバー6の軸方向、半径方向及び/又は角度方向の相対的変位を防ぐために十分な強度で、第2の弾性メンバー6が所定の位置に締め付けられたり保持されたりすることを確実にすることに寄与する。
【0045】
なお、この接続部分21aは、ベアリングハウジング2内におけるコンパクトなアセンブリー10の取り付け領域11a、21a、22a、22bの一部を形成する。すなわち、これらの取り付け領域11a、21a、22a、22bに、この接続部分21aの接触面22b及び側面22aが含まれる。
【0046】
接続部分21aには、さらに、エンドストーン要素4の接触領域23と連係するように構成している平坦な上面の外環部を形成する/含む支持面22cがある。実際に、エンドストーン要素4の基部13bは、この支持面22cに直接支えられることができる。接続部分21aにおいて、この支持面22cは、接触面22bの上又は接触面22bに対して鉛直方向に配置されている。また、この支持面22cは、接触面22bと実質的に平行である。
【0047】
すでに述べたように、第2の弾性メンバー6には、さらに、この第2の弾性メンバー6の中央領域にピボット要素5を締め付け固定するための部分21bがある。この取り付け部分21bは、この第2の弾性メンバー6の内周壁を形成する。ピボット要素5は、この第2の弾性メンバー6に取り付けられた部分であって、その側面18bがこの内周壁に全体的又は部分的に接続されるように構成しているものであることができる。このような接続を、入れ込み、接着、又は溶接によって行うことができる。
【0048】
なお、代替的実施形態の1つにおいて、このピボット要素5は、締結部分21bと一体的に作ることによって、この第2の弾性メンバー6の一体的な部分であることができる。この構成において、この第2の弾性メンバー6の中央領域は、このピボット要素5である/このピボット要素5を形成していると考えられる。
【0049】
この第2の弾性メンバー6は、特にケイ素を含む第2の弾性メンバー6のために、深掘り反応性イオンエッチングプロセス(通常、その頭字語「DRIE」によって呼ばれる)を用いたり、例えばニッケルベースの第2の弾性メンバー6のために、UV-LigaのようなLigaプロセスを用いたりして、作ることができる。
【0050】
したがって、このような本発明に係るベアリング1は、このベアリング1の動作に影響を与えることなく、従来技術のベアリングと比べて小さい/縮小した全体寸法を有する。このように大きさが小さいことは、特に、第1及び第2の弾性メンバー3、6、エンドストーン要素4、及びピボット要素5によって形成されるコンパクトなアセンブリー10によって達成され、より正確には、以下によって達成される。すなわち、
- ベアリングハウジング2における貫通開口8の第1のオリフィス9a内においてエンドストーン要素4の中央部13a、この場合は先端部13a、が動くことを可能にするような、エンドストーン要素4の特定の形状
- 肩部上面19に対して鉛直方向に第2の弾性メンバー6の平坦な上面上にエンドストーン要素4の基部13bが直接載置されることを可能にするような、エンドストーン要素4の特定の形状
- 中にピボット要素5の一部を配置することができる、エンドストーン要素4の内面14aの内側に空洞15が存在すること
- ピボット要素5を第2の弾性メンバー6の中央領域に配置し、このピボット要素5の本体の一部がこの第2の弾性メンバー6の厚み内に存在すること
【0051】
なお、このベアリング1において、エンドストーン要素4は、第2の弾性メンバー6の上面に支えられることによって、エンドストーン要素4の先端部13aを支える応力付与要素11bの作用下で、この第2の弾性メンバー6の平坦な上面の周全体に軸方向の弾性力のみを及ぼす。そして、この力は、エンドストーン要素4の接触領域23によって、貫通開口8の肩部上面19に対して鉛直方向に、前記周部を形成する支持面22cに与えられる。
【0052】
また、「実質的に軸方向の衝撃」は、「厳密に軸方向」、「略軸方向」又は「部分的に軸方向」の衝撃であると理解すべきである。同様に、「実質的に半径方向の衝撃」は、「厳密に半径方向」、「略半径方向」又は「部分的に半径方向」の衝撃であると理解すべきである。
【0053】
また、この明細書において、「実質的に平行」とは、「厳密に平行又は略平行」であることを意味するものと理解することができる。
【0054】
したがって、このようなベアリング1は、休み位置にある計時器コンポーネントのスタッフが、計時器が衝撃又は加速度を受けた後における軸方向及び半径方向の再センタリング/再配置を確実にすることに寄与する。
【符号の説明】
【0055】
1 ベアリング
2 ベアリングハウジング
3 第1の弾性メンバー
4 エンドストーン要素
5 ピボット要素
6 第2の弾性メンバー
8 貫通開口
9a 第1のオリフィス
9b 第2のオリフィス
10 コンパクトなアセンブリー
11a 締め付け要素
11b 応力付与要素
11c 接続要素
13a 中央部
13b 周部
15 空洞
16 背部
21a 接続部分
21b 締め付け部分
21c 弾性要素
23 接触領域
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】