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  • 特開-交換可能尾錠デバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175667
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】交換可能尾錠デバイス
(51)【国際特許分類】
   A44C 5/18 20060101AFI20241211BHJP
   A44B 11/25 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
A44C5/18 A
A44B11/25
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024088544
(22)【出願日】2024-05-31
(31)【優先権主張番号】23177456.3
(32)【優先日】2023-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】513233632
【氏名又は名称】ハリー・ウィンストン・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】オーレリアン・ブシェ
【テーマコード(参考)】
3B090
【Fターム(参考)】
3B090AC04
(57)【要約】
【課題】交換可能尾錠デバイスを提供すること。
【解決手段】本発明は、つく棒(4)が周囲に連結される棒材(3)を備える尾錠(2)を備える交換可能尾錠デバイス(1)に関し、デバイスは、棒材(3)を受け入れるように構成される通路(50)を備えるインサート(5)と、棒材(3)を通路(50)内に保持するため、インサート(5)と協働するように構成されるレバー(6)とを備え、レバー(6)は、インサート(5)に対して枢動可能に組み付けられ、棒材(3)が通路(50)内で保持される係止位置から棒材(3)が通路(50)を自由に離れる開放位置まで移動するように構成され、デバイスは、係止位置でレバー(6)を保持する手段を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
つく棒(4)が周囲に連結される棒材(3)を備える尾錠(2)を備える交換可能尾錠デバイス(1)であって、前記デバイスは、前記棒材(3)を受け入れるように構成される通路(50)を備えるインサート(5)と、前記棒材(3)を前記通路(50)内に保持するため、前記インサート(5)と協働するように構成されるレバー(6)とを備え、前記レバー(6)は、前記インサート(5)に対して枢動するように組み付けられ、前記棒材(3)が前記通路(50)内で保持される係止位置から前記棒材(3)が前記通路(50)を自由に離れる開放位置まで移動するように構成され、前記デバイスは、前記レバー(6)を前記係止位置で保持する手段を備える、交換可能尾錠デバイス(1)。
【請求項2】
前記インサート(5)は、前記レバー(6)を前記係止位置内に受け入れるように構成される凹部(51)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の交換可能尾錠デバイス(1)。
【請求項3】
前記凹部(51)は、前記インサートの内部側壁(52、53)に第1の対の止まり穴(54)を備え、前記第1の対の止まり穴(54)は、前記レバー(6)と一体の枢動キャッチ(63,64)と協働するように構成され、前記協働は、前記レバー(6)のための枢動軸を形成する、請求項1に記載の交換可能尾錠デバイス(1)。
【請求項4】
前記通路(50)は、前記つく棒(4)のための通り道(55)を備える、請求項1に記載の交換可能尾錠デバイス(1)。
【請求項5】
前記レバーは、保持部材(60)を備え、前記保持部材(60)は、前記棒材を前記通路(50)内に保持するように構成され、前記保持部材は、前記つく棒(4)のための通り道(61)を有する、請求項1に記載の交換可能尾錠デバイス(1)。
【請求項6】
前記レバー保持手段(6)は、1対のボール・キャッチ(65、66)を備える、請求項1に記載の交換可能尾錠デバイス(1)。
【請求項7】
前記インサートは、前記ボール・キャッチ(65、66)を受け入れるように構成される第2の対の止まり穴(56)を有し、前記第1の対の止まり穴(54)及び前記第2の対の止まり穴(56)は、同一平面上にある、請求項1に記載の交換可能尾錠デバイス(1)。
【請求項8】
前記レバー(6)は、前記係止位置から前記開放位置まで前記レバー(6)を移動させる操作タブ(62)を備える、請求項1に記載の交換可能尾錠デバイス(1)。
【請求項9】
前記インサート(5)は、前記つく棒(62)を取り扱う空間を形成する肩部(57)を有し、前記つく棒は、前記レバーが前記係止位置にある際に前記凹部内に部分的に載置される、請求項1に記載の交換可能尾錠デバイス(1)。
【請求項10】
請求項1に記載の交換可能尾錠デバイス(1)を備える時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測時器又は装身具の分野に関する。より詳細には、本発明は、交換可能尾錠デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
バンドは、典型的には、皮革又は金属から作製され、棒材によりバンドに取り付けられる尾錠を有する。
【0003】
時計製造産業において、特にバンドがひどく摩耗した際に取り替える場合、ユーザが時計のバンドを容易に変更することを可能にする、又は例えば皮革バンド及び金属バンドを交換可能にするため、解決策が提案されている。近年、バンドをケースから分離するこれらのシステムを改善するために多大な努力が捧げられており、多数の解決策が提案されている。
【0004】
しかし、上記努力は、尾錠の取外しには捧げられておらず、有利な解決策が十分にはない。貴金属の尾錠又は中留の有用性は、着用者が、尾錠を変更せずに、単純、迅速、安全に、工具を使用せずにバンドを交換可能にしたいようなものである。
【0005】
本発明が対処する別のニーズは、全く修正していないバンド、即ち標準的なバンドによって、このバンドの取替えを可能にすることであり、このニーズは、今日まで提案されているたいていの解決策では該当しない。
【0006】
より具体的には、バンドは、時計に対するバンドの組付け高さのために、ケースに最も近い側から距離がある場合がほとんどである一方で、バンドは、構成要素のうちこの組付けの側で着用者の手首に触れるので、棒材のラッチ部品が皮膚をこすり、このために不快さを生じさせることに加えて、(複数の異なる金属から作製される)装填棒材装置が着用者の汗に露出される。その結果、製品の劣化(酸化等)に関する問題であるだけでなく、ニッケル又は他のアレルゲンを含有する材料が最も頻繁に使用されるので、着用者に対するアレルギーの危険性も増大させる。
【0007】
特許文献米国特許第5951193号明細書は、棒材がバンド内に組み付けられた2つの弾性要素と協働する構成要素上に尾錠を組み付ける方法を説明しており、この方法により、バンド内に開口する細長い開口部に棒材を摺動させることによって棒材を取り付けることを可能にする。この解決策は、普遍的な交換可能性を達成するために使用する際にいくつかの欠点を有する。というのは、この解決策は、これらの組付け要素を組み込むように修正してあるバンドを必要とするためである。したがって、この解決策は、尾錠を標準的なバンド上に組み付けることを可能にしないため、市販のバンドとの交換可能性を制限している。更に、取付け要素に対して尾錠を組み付け、取り外す位置は、バンドの動作位置の方向にあるため、尾錠は、時計が装着された際、特に時計がかなり緩く装着された場合、又はダイビング中にネオプレン素材のウエットスーツの上から装着される時計の場合、ウエットスーツの厚さが縮み、バンドが緩くなると、外れることがある。最後に、棒材を受け入れる穴の幅は、穴の一部が組付け後に依然として見えるような幅であり、みかけが悪いだけでなく、ごみが中にたまり、装置の動作を壊し得る凹部を形成することもある。
【0008】
特許文献CH714409は、交換可能尾錠、及びその組付け方法を説明しており、交換可能尾錠において、つく棒は、つく棒を取り外すために棒材の軸に沿って移動させなければならず、つく棒の受入れを意図する開口部がこの移動を可能にするように十分に広いようにバンドを修正する必要がある。したがって、この解決策は、開口部が通常より広いバンドにのみ適合するため、普遍的ではない。更に、尾錠を組み付け、取り外す際、装填棒材を押し込むためにユーザがつく棒に加える力は、常にバンドの構成要素の同じ側に加えられる力であり、構成要素の部品に変形をもたらし、つく棒の径方向移動の遊びを増大させ、尾錠の安全性及びバンドの美観を損ねる。最後に、尾錠の組付け/取外し工程は、触覚的及び/又は可聴的な合図等、ユーザに正確な組付けを知らせる合図をもたらさず、不正確な組付けの危険性、したがって、意図しない分離を引き起すことがある。
【0009】
特許文献CH713108は、尾錠の第2の要素に対する尾錠の第1の要素の回転に従ったクリップ留めによって、容易に組み付け、取り外されることが意図される尾錠デバイスを説明している。この文献は、折りたたみ中留式の尾錠に対する適用例を示し、つく棒式の尾錠に対する実施形態は、説明も例示もされていない。しかし、つく棒式の尾錠及び折りたたみ中留式の尾錠の両方に適用し得るデバイスを提案することは有利である。
【0010】
記載される締結デバイスは、典型的には、着用者の裁量で取り替え得る交換可能尾錠に使用される。しかし、これらの締結デバイスは、欠点がある。特に、これらの締結デバイスは、例えば、管内への開口部の作製又はピストンの改造等、棒材に対する大きな構造修正を必要とする。こうした変更は、著しい追加製造費用につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5951193号明細書
【特許文献2】CH714409
【特許文献3】CH713108
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の主な目的は、従来技術のデバイスの様々な欠点を克服することである。
【0013】
より詳細には、本発明の目的は、取外しが容易で、操作が容易で、新製品に適用可能である一方で、依然として既存の製品に遡及的に適合し、標準的な市販のバンドに適応する尾錠を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的で、本発明は、つく棒が周囲に連結される棒材を備える尾錠を備える交換可能尾錠デバイスに関し、デバイスは、棒材を受け入れるように構成される通路を備えるインサートと、通路内に棒材を保持するため、インサートと協働するように構成されるレバーとを備え、レバーは、インサートに対して枢動するように組み付けられ、棒材が通路内で保持される係止位置から、棒材が自由に通路を離れる開放位置まで移動するように構成され、デバイスは、係止位置でレバーを保持する手段を備える。
【0015】
本発明の他の有利な代替実施形態によれば、
-インサートは、レバーを係止位置で受け入れることが意図される凹部を備え、
-凹部は、インサートの内部側壁に第1の対の止まり穴を備え、第1の対の止まり穴は、レバーと一体の枢動キャッチと協働するように構成され、協働は、レバーのための枢動軸を形成し、
-通路は、つく棒のための通り道を備え、
-レバーは、棒材を通路内に保持するように構成される保持部材を備え、保持部材は、つく棒のための通り道を有し、
-レバー保持手段は、1対のボール・キャッチを備え、
-インサートは、ボール・キャッチを受け入れるように構成される第2の対の止まり穴を有し、第1の対の止まり穴及び第2の対の止まり穴は、同一平面上にあり、
-レバーは、係止位置から開放位置までレバーを移動させる操作タブを備え、
-インサートは、つく棒が係止位置で載置される肩部を有する。
【0016】
本発明は、更に、本発明による交換可能尾錠デバイスを備える時計に関する。
【0017】
本発明の他の特徴及び利点は、図面を参照しながら非限定的な例として示され、決して限定するものではない以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明による交換可能尾錠デバイスの分解斜視図である。
図2】閉鎖位置における、本発明による交換可能尾錠デバイスの斜視図である。
図3】開放位置における、本発明による交換可能尾錠デバイスの斜視図である。
図4a】閉鎖位置における、本発明による交換可能尾錠デバイスの断面図である。
図4b】開放位置における、本発明による交換可能尾錠デバイスの断面図である。
図5】尾錠がデバイスから解放されている、本発明による交換可能尾錠デバイスの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明による交換可能尾錠デバイスを示す。
【0020】
交換可能尾錠デバイス1は、第2のバンド構成要素に取り付けるため、つく棒4に適合する時計の尾錠2に第1のバンド構成要素の端部を取り付け、取り外すことが意図される。
【0021】
つく棒式の尾錠の例のみが示されるが、そのようなデバイスは、スタッド式の尾錠にも適合可能である。スタッド式の尾錠は、つく棒式の尾錠に似ている尾錠であるが、つく棒を有さず、この場合、スタッドは、つく棒が典型的に相互作用する構成要素を固定するために使用される。
【0022】
バンドは、交換可能締結デバイスにより尾錠に締結され、交換可能締結デバイスは、尾錠2と、つく棒4が周囲に連結される棒材3とを備え、デバイスは、通路50を備えるインサート5を備え、通路50は、棒材3自体の軸(X)の方向で棒材3を案内することによって棒材3を受け入れるように構成される。棒材の「軸」は、棒材3自体の回転軸(X)、又は棒材の本体が完全な軸対称本体ではない場合、棒材が沿って延在する軸を指すと理解されたい。
【0023】
デバイスは、通路50を閉鎖するため、インサート5と協働するように構成されるレバー6を更に備える。レバー6は、インサート5に対して、棒材3が通路50内で保持される係止位置から棒材3が自由に通路を離れる開放位置まで枢動するように構成される。
【0024】
レバー6は、レバー6と一体の1対のボール・キャッチ66によって係止位置で保持され、各ボール・キャッチ66は、インサート5の凹部51内に形成される止まり穴56と協働し、協働は、レバー6のための枢動軸を形成する。
【0025】
図1に示されるように、通路50は、つく棒4を通過させる通り道55を有し、この構成は、デバイスが係止位置にある際につく棒4が棒材3と共に枢動することを可能にする。したがって、尾錠システムがバンド構成要素上に組み付けられる場合、棒材3は、インサート5の通路50に挿入される。
【0026】
インサート5は、レバー6を受け入れるように構成される凹部51を備え、レバーは、凹部51内で係止位置から開放位置まで枢動する。凹部51は、実質的に平行六面体の形状であり、2つの内部側壁52、53と、後壁と、背面とを有する。
【0027】
凹部51も、デバイスが係止位置にある際にレバー6が通路50内で棒材3を保持し得るように、通路50に開口する。
【0028】
後壁は、凹部51の底部に対して高さの差を生じさせるように肩部57を有し、したがって、着用者が、操作タブ62と呼ばれるレバー6の端部を把持し、係止位置から開放位置までレバー6を移動し得るような空間を形成する。
【0029】
図2及び図4aに示されるように、レバー6の長さは、凹部51の長さより短い。この構成は、肩部57において、凹部内に空いた空間をもたらし、操作タブ62への容易なアクセス及びレバー6の動作を可能にする。
【0030】
レバー6は、棒材3を通路50内に保持するように構成される保持部材60を備える第1の端部と、操作タブ62によって形成される第2の端部とを有する。有利には、保持部材60は、棒材3の通過を容易にするように凹んだくちばしのような形状を有し、デバイスが係止位置にある際につく棒4が枢動し得るように、つく棒4のための通り道61を備える。
【0031】
デバイスが係止位置、即ち、棒材3が通路50内に載置され、レバー6によって通路50で保持される位置にある際、図4aに示されるように、棒材3は、レバーの保持部材60によって保持され、適切な位置で棒材を保持し、棒材が自由位置に移動しないようにするが、棒材は、棒材の軸X回りに自由に枢動する。
【0032】
開放位置に移動すると、レバー6は、図4bに示されるようにその開放位置まで移動し、枢動する。レバーが枢動すると、凹形状の保持部材60は、通路50の底部に載置され、通路50を開放したままにし、後で棒材3が係止位置から自由位置に移動するのを可能にする。レバー6を解除するには、レバー6に十分な力を加え、ボール・キャッチ65、66を止まり穴56から外さなければならない。
【0033】
通路50が開放される又は自由になると、棒材3は、図5に示されるようにデバイスから外され、ユーザはバンドを変更し、尾錠を維持し得る。
【0034】
上記の実施形態では、デバイスは、皮革、合成布帛又はエラストマ材料から作製される、いわゆる可撓性バンドのために説明される。
【0035】
本発明のこれらの様々な態様のために、安全で交換可能な尾錠デバイスが得られ、このデバイスは、容易に、迅速に、工具を必要とせずにバンドを交換することを可能にする。
【0036】
本発明は、説明した例に限定されず、当業者には明らかになる様々な代替実施形態及び修正形態も想定し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0037】
1 交換可能尾錠デバイス
2 尾錠
3 棒材
4 つく棒
5 インサート
6 レバー
50 通路
51 凹部
52 内部側壁
53 内部側壁
54 止まり穴
55 通り道
56 止まり穴
57 肩部
60 保持部材
61 通り道
62 操作タブ
63 枢動キャッチ
64 枢動キャッチ
65 ボール・キャッチ
66 ボール・キャッチ
X 棒材3の回転軸
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
【外国語明細書】