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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175676
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】農薬組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/12 20060101AFI20241211BHJP
   A01N 47/16 20060101ALI20241211BHJP
   A01P 13/00 20060101ALI20241211BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20241211BHJP
   A01N 55/10 20060101ALI20241211BHJP
   A01N 47/12 20060101ALI20241211BHJP
   A01N 51/00 20060101ALI20241211BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
A01N25/12
A01N47/16 Z
A01P13/00
A01P3/00
A01N55/10 300
A01N47/12 Z
A01N51/00
A01P7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024090755
(22)【出願日】2024-06-04
(31)【優先権主張番号】P 2023092859
(32)【優先日】2023-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】303020956
【氏名又は名称】三井化学クロップ&ライフソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】静谷 成晃
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 篤志
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA01
4H011AB01
4H011AC01
4H011BA01
4H011BB11
4H011BB13
4H011BB16
4H011BC19
4H011BC20
4H011DC05
4H011DC06
4H011DH02
(57)【要約】
【課題】 農薬有効成分の水への初期の急激な溶出が十分に抑制され、徐放性に優れた徐放性農薬組成物を提供すること。
【解決手段】 樹脂エマルション、表面処理カオリン、及び、有機変性ベントナイトと油類との組み合わせ、の3種からなる群から選択される2種以上と、農薬有効成分と、を含有する農薬組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂エマルション、表面処理カオリン、及び、有機変性ベントナイトと油類との組み合わせ、の3種からなる群から選択される2種以上と、農薬有効成分と、を含有する農薬組成物。
【請求項2】
前記樹脂エマルションが、アクリル系樹脂エマルションである、請求項1に記載の農薬組成物。
【請求項3】
前記表面処理カオリンが、シラン表面処理カオリンである、請求項1に記載の農薬組成物。
【請求項4】
前記有機変性ベントナイトが、第4級アンモニウム化合物表面処理ベントナイトである、請求項1に記載の農薬組成物。
【請求項5】
前記油類が、炭化水素系オイル及び植物性油脂からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の農薬組成物。
【請求項6】
前記農薬有効成分として、20~25℃における水溶解度が50g/L以下である農薬有効成分を含有する、請求項1に記載の農薬組成物。
【請求項7】
界面活性剤及び増量剤からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含有する、請求項1に記載の農薬組成物。
【請求項8】
粒剤である、請求項1~7のうちのいずれか一項に記載の農薬組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の農薬組成物の製造方法であり、前記樹脂エマルション、前記表面処理カオリン、及び、前記有機変性ベントナイトと前記油類との組み合わせ、の3種からなる群から選択される2種以上と、前記農薬有効成分と、を混合して造粒する工程を含む、製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載の農薬組成物の製造方法であり、前記樹脂エマルション、前記表面処理カオリン、及び、前記有機変性ベントナイトと前記油類との組み合わせ、の3種からなる群から選択される2種以上を混合して造粒する造粒工程と、
前記造粒工程で得られた造粒物に、前記農薬有効成分を含有させる工程と、
を含む製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は農薬組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農薬の剤型としては、粉剤、粒剤、水和剤、水溶剤、乳剤、液剤、油剤等が知られている。中でも粒剤は、施用時の飛散が少ないことや、計量が比較的容易であるといった特徴を有するため、日本国内において広く使用されている。また近年、農業機械の技術進歩により、例えば水稲栽培において、粒剤を用いる育苗箱処理機や田植え同時施薬機等が開発されている。そのため、特に粒剤には、作物(例えば稲)に対する低薬害性、薬効の長期残効性、製造時の製造容易性や高効率性、機械散布機における散布適性といった多観点での総合的な性能が求められている。
【0003】
上記の作物に対する低薬害性や、薬効の長期残効性については、農薬有効成分の初期の急激な溶出を制御し、これら性質を農薬組成物に付与することを目的として、これまでにもいくつかの農薬組成物やその製造方法の検討がなされている。例えば、特開2001-233706号公報(特許文献1)には、農薬有効成分、撥水剤、及びカルボキシメチルセルロースを混合して造粒する、徐放性農薬粒剤の製造方法が記載されており、前記撥水剤としてワックス類や疎水性シリカが挙げられている。また、例えば、特開平8-143402号公報(特許文献2)には、徐放性農薬粒剤として、固体状の農薬活性成分の粒子と非晶質シリカの粒子と補助剤成分との混合物を造粒してなる農薬粒剤が記載されている。さらに、例えば、特開2010-18527号公報(特許文献3)には、農薬有効成分の溶出を制御することを目的とした、農薬活性成分、セピオライト、結合剤、及び界面活性剤を含有する徐放性農薬粒剤が記載されている。また、例えば、特開2011-6396号公報(特許文献4)には、溶出制御型農薬組成物として、農薬活性成分、脂肪酸及び/又は脂肪酸誘導体、水難溶性多糖類、及び無機物質を含有する農薬組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-233706号公報
【特許文献2】特開平8-143402号公報
【特許文献3】特開2010-18527号公報
【特許文献4】特開2011-6396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の農薬組成物の構成やその製造方法では、特殊な機械を用いる必要があったり、工程が複雑であったり、特に含有される農薬有効成分の水への溶解度(水溶解度)によっては造粒が困難であったりという課題を有していた。さらに、本発明者らは、従来の農薬組成物では、農薬有効成分、特に前記溶解度が高い農薬有効成分の水への初期の急激な溶出の抑制が未だ十分ではなく、過剰に溶出した農薬有効成分によって作物に対する薬害(生育不良等)が生じたり、農薬有効成分の長期の残効性が低下するといった課題を有していることを見出した。
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、農薬有効成分の水への初期の急激な溶出が十分に抑制され、徐放性に優れた徐放性農薬組成物、及び農薬有効成分の水への初期の急激な溶出が十分に抑制され、徐放性に優れた徐放性農薬粒剤を容易に高効率で得ることができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、樹脂エマルション、表面処理カオリン、及び、有機変性ベントナイトと油類との組み合わせ、の3種からなる群から選択される2種以上と、農薬有効成分と、を含有する構成とすることにより、前記農薬有効成分の水への初期の急激な溶出が十分に抑制され、徐放性に優れた農薬組成物とすることができ、前記農薬有効成分が作物に与える薬害を十分に軽減したり、前記農薬有効成分の効果の持続性(長期残効性)を向上させることが可能となることを見出した。また、かかる構成によれば、前記成分を混合して造粒するだけで、容易に、かつ、高効率で十分な粒度の農薬粒剤を製造することが可能であることも見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
かかる知見により得られた本発明の態様は次のとおりである。
[1]
樹脂エマルション、表面処理カオリン、及び、有機変性ベントナイトと油類との組み合わせ、の3種からなる群から選択される2種以上と、農薬有効成分と、を含有する農薬組成物。
[2]
前記樹脂エマルションが、アクリル系樹脂エマルションである、[1]に記載の農薬組成物。
[3]
前記表面処理カオリンが、シラン表面処理カオリンである、[1]又は[2]に記載の農薬組成物。
[4]
前記有機変性ベントナイトが、第4級アンモニウム化合物表面処理ベントナイトである、[1]~[3]のうちのいずれか一項に記載の農薬組成物。
[5]
前記油類が、炭化水素系オイル及び植物性油脂からなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[4]のうちのいずれか一項に記載の農薬組成物。
[6]
前記農薬有効成分として、20~25℃における水溶解度が50g/L以下である農薬有効成分を含有する、[1]~[5]のうちのいずれか一項に記載の農薬組成物。
[7]
前記農薬有効成分として、ジノテフラン、シメコナゾール、トルプロカルブ、シクロピリモレート、及びこれらの農薬上許容可能な酸付加塩からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、[1]~[6]のうちのいずれか一項に記載の農薬組成物。
[8]
界面活性剤及び増量剤からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含有する、[1]~[7]のうちのいずれか一項に記載の農薬組成物。
[9]
粒剤である、[1]~[8]のうちのいずれか一項に記載の農薬組成物。
[10]
[9]に記載の農薬組成物の製造方法であり、前記樹脂エマルション、前記表面処理カオリン、及び、前記有機変性ベントナイトと前記油類との組み合わせ、の3種からなる群から選択される2種以上と、前記農薬有効成分と、を混合して造粒する工程を含む、製造方法。
[11]
[9]に記載の農薬組成物の製造方法であり、前記樹脂エマルション、前記表面処理カオリン、及び、前記有機変性ベントナイトと前記油類との組み合わせ、の3種からなる群から選択される2種以上を混合して造粒する造粒工程と、
前記造粒工程で得られた造粒物に、前記農薬有効成分を含有させる工程と、
を含む製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、農薬有効成分の水への初期の急激な溶出が十分に抑制され、徐放性に優れた徐放性農薬組成物、及び農薬有効成分の水への初期の急激な溶出が十分に抑制され、徐放性に優れた徐放性農薬粒剤を容易に高効率で得ることができる製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0011】
<農薬組成物>
本発明の農薬組成物は、樹脂エマルション、表面処理カオリン、及び、有機変性ベントナイトと油類との組み合わせ、の3種からなる群から選択される2種以上と、農薬有効成分と、を含有する。
【0012】
(農薬有効成分)
本発明に係る農薬有効成分としては、特に制限されず、殺虫剤、殺菌剤、除草剤、及び植物成長調節剤等として従来公知の化合物が挙げられる。例えば、「The Pesticide Manual,17th Edition(Publisher:The British Crop Protection Council)」や、「SHIBUYA INDEX,2014,(Publisher:SHIBUYA INDEX RESEARCH GROUP)」に記載の化合物が挙げられ、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。これらの中でも、本発明の農薬組成物は徐放性に優れ、長期間に亘って効果を維持できることから、前記農薬有効成分としては、殺虫剤、殺菌剤、除草剤、及び植物成長調節剤からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、前記群から選択される少なくとも1種からなることがより好ましい。また、例えば、植物に対する薬害も同時に軽減するという目的では、前記農薬有効成分としては、殺虫剤及び殺菌剤からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0013】
本発明に係る農薬有効成分としてより好ましくは、例えば、有機リン酸エステル系化合物、カーバメート系化合物、ネライストキシン誘導体、有機塩素系化合物、ピレスロイド系化合物、ベンゾイルウレア系化合物、幼若ホルモン様化合物、脱皮ホルモン様化合物、ネオニコチノイド系化合物、神経細胞のナトリウムチャンネルブロッカー、殺虫性大環状ラクトン、γ-アミノ酪酸(GABA)拮抗剤、リヤノジンレセプター作用性化合物、殺虫性尿素類、BT剤、昆虫病原ウイルス剤、ポリエーテル系抗生物質、チアミン拮抗薬、及びサルファ剤・葉酸拮抗薬配合剤が挙げられ、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0014】
前記殺虫剤としてより具体的には、例えば、アセフェート(acephate)、ジクロルボス(dichlorvos)、EPN、フェニトロチオン(fenitrothion)、フェナミホス(fenamiphos)、プロチオホス(prothiofos)、プロフェノホス(profenofos)、ピラクロホス(pyraclofos)、クロルピリホスメチル(chlorpyrifos-methyl)、ダイアジノン(diazinon)、ホスチアゼート(fosthiazate)、イミシアホス(imicyafos)、フォレート(phorate)等の有機リン酸エステル系化合物;メソミル(methomyl)、チオジカルブ(thiodicarb)、アルジカルブ(aldicarb)、オキサミル(oxamyl)、プロポキスル(propoxur)、カルバリル(carbaryl)、フェノブカルブ(fenobucarb)、エチオフェンカルブ(ethiofencarb)、フェノチオカルブ(fenothiocarb)、ピリミカーブ(pirimicarb)、カルボフラン(carbofuran)、カルボスルファン(carbosulfan)、ベンフラカルブ(benfuracarb)等のカーバメート系化合物;カルタップ(cartap)、チオシクラム(thiocyclam)等のネライストキシン誘導体;ジコホル(dicofol)、テトラジホン(tetradifon)等の有機塩素系化合物;ペルメトリン(permethrin)、テフルトリン(tefluthrin)、シペルメトリン(cypermethrin)、トラロメトリン(tralomethrin)、デルタメトリン(deltamethrin)、シハロトリン(cyhalothrin)、フェンバレレート(fenvalerate)、フルバリネート(fluvalinate)、エトフェンプロックス(etofenprox)、シラフルオフェン(silafluofen)、シハロスリン(cyhalothrin)等のピレスロイド系化合物;ジフルベンズロン(diflubenzuron)、テフルベンズロン(teflubenzuron)、フルフェノクスロン(flufenoxuron)、クロルフルアズロン(chlorfluazuron)等のベンゾイルウレア系化合物;メトプレン(methoprene)、ヒドロプレン(hydroprene)、キノプレン(kinoprene)等の幼若ホルモン様化合物;クロマフェノジド(chromafenozide)等の脱皮ホルモン様化合物;イミダクロプリド(imidacloprid)、クロチアニジン(c1othianidin)、チアメトキサム(thiamethoxam)、アセタミプリド(acetamiprid)、ニテンピラム(nitenpyram)、チアクロプリド(thiacloprid)、ジノテフラン(dinotefuran)、スルフォキサフロル(sulfoxaflor)、フルピラジフロン(flupyradifurone)、フルピリミン(flupyrimin)、ジクロロメゾチアズ(dicloromezotiaz)、トリフルメゾピリム(triflumezopyrim)、フェンメゾジチアズ(fenmezoditiaz)等のニコチン性アセチルコリン受容体作用薬(ネオニコチノイド系化合物);フルベンジアミド(flubendiamide)、クロラントラニリプロール(chlorantraniliprole)、シアントラニリプロール(cyantraniliprole)、シクラニリプロール(cyclaniliprole)、テトラニリプロール(tetraniliprole)等のジアミド化合物;エチプロール(ethiprole)、フィプロニル(fipronil)、ピラフルプロール(pyrafluprole)、ピリプロール(pyriprole)、ブロフラニリド(broflanilide)、フルキサメタミド(fluxametamide)等のGABA受容体作用性化合物(γ-アミノ酪酸(GABA)拮抗剤);ピリダベン(pyridaben)、フェンピロキシメート(fenpyroximate)、ピリミジフェン(pyrimidifen)、テブフェンピラド(tebufenpyrad)、トルフェンピラド(tolfenpyrad)等の呼吸鎖電子伝達系複合体I阻害化合物;シフルメトフェン(cyflumetofen)、シエノピラフェン(cyenopyrafen)、ピフルブミド(pyflubumide)等の呼吸鎖電子伝達系複合体II阻害化合物;フルアクリピリム(fluacrypyrim)、アセキノシル(acequinocyl)、フロメトキン(flometoquin)等の呼吸鎖電子伝達系複合体III阻害化合物;スピロジクロフェン(spirodiclofen)、スピロメシフェン(spiromesifen)、スピロテトラマト(spirotetramat)等のACCase阻害化合物;スピノサド(spinosad)、アバメクチン(abamectin)、ミルベマイシン(milbemycin)、スピネトラム(spinetoram)、レピメクチン(lepimectin)、エマメクチン安息香酸塩(emamectin benzoate)等のマクロライド化合物、及びこれらの農薬上許容可能な酸付加塩が挙げられる。
【0015】
さらに、前記殺虫剤としては、その他の化合物として、ブプロフェジン(buprofezin)、ヘキシチアゾクス(hexythiazox)、アミトラズ(amitraz)、クロルジメホルム(chlordimeform)、エトキサゾール(etoxazole)、ピメトロジン(pymetrozine)、ビフェナゼート(bifenazate)、フロニカミド(flonicamid)、クロルフェナピル(chlorfenapyr)、ピリプロキシフェン(pyriproxyfen)、インドキサカルブ(indoxacarb)、ピリダリル(pyridalyl)、ピリフルキナゾン(pyrifluquinazon)、メタフルミゾン(metaflumizone)、ヒドラメチルノン(hydramethylnon)、トリアザメート(triazamate)、アフィドピロペン(afidopyropen)、レノフルスリン(renofluthrin)、クロロプラレトリン(chloroprallethrin)、シハロジアミド(cyhalodiamide)、フルアザインドリジン(fluazaindolizine)、イプシロン-メトフルスリン(epsilon-metofluthrin)、イプシロン-モムフルオロスリン(epsilon-momfluorothrin)、カッパ-ビフェントリン(kappa-bifenthrin)、カッパ-テフルトリン(kappa-tefluthrin)、フルヘキサホン(fluhexafon)、チオキサザフェン(tioxazafen)、モムフルオロスリン(momfluorothrin)、ヘプタフルスリン(heptafluthrin)、ピリミノストロビン(pyriminostrobin)、シクロキサプリド(cycloxaprid)、イソシクロセラム(isocycloseram)、オキサゾスルフィル(oxazosulfyl)、チクロピラゾフロル(tyclopyrazoflor)、スピロピディオン(spiropidion)、アシノナピル(acynonapyr)、ジムプロピリダズ(dimpropyridaz)、インダザピロキサメット(indazapyroxamet)、フルペンチオフェノックス(flupentiofenox)、ニコフルプロール(nicofluprole)、シクロブトリフルラム(cyclobutrifluram)、有機金属系化合物、ジニトロ系化合物、有機硫黄化合物、尿素系化合物、トリアジン系化合物、ヒドラジン系化合物、及びこれらの農薬上許容可能な酸付加塩も挙げられ、また、BT剤、昆虫病原ウイルス剤等のような微生物農薬も挙げられる。
【0016】
これらの中でも、前記殺虫剤としては、カルタップ(cartap)、チオシクラム(thiocyclam)、フルピリミン(flupyrimin)、トリフルメゾピリム(triflumezopyrim)、クロラントラニリプロール(chlorantraniliprole)、シアントラニリプロール(cyantraniliprole)、テトラニリプロール(tetraniliprole)、フィプロニル(fipronil)、ピメトロジン(pymetrozine)、フロニカミド(flonicamid)、オキサゾスルフィル(oxazosulfyl)、イミダクロプリド(imidacloprid)、チアメトキサム(thiamethoxam)、ジノテフラン(dinotefuran)、及びこれらの農薬上許容可能な酸付加塩からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0017】
前記殺菌剤としてより具体的には、例えば、アゾキシストルビン(azoxystrobin)、クレソキシムメチル(kresoxim-methyl)、トリフロキシストロビン(trifloxystrobin)、メトミノストロビン(metominostrobin)、オリサストロビン(orysastrobin)等のストロビルリン系化合物;メパニピリム(mepanipyrim)、ピリメサニル(pyrimethanil)、シプロジニル(cyprodinil)等のアニリノピリミジン系化合物;トリアジメホン(triadimefon)、ビテルタノール(bitertanol)、トリフルミゾール(triflumizole)、メトコナゾール(metconazole)、プロピコナゾール(propiconazole)、ペンコナゾール(penconazole)、フルシラゾール(flusilazole)、ミクロブタニル(myclobutanil)、シプロコナゾール(cyproconazole)、テブコナゾール(tebuconazole)、ヘキサコナゾール(hexaconazole)、プロクロラズ(prochloraz)、シメコナゾール(simeconazole)等のアゾール系化合物;キノメチオネート(chinomethionate)等のキノキサリン系化合物;マンネブ(maneb)、ジネブ(zineb)、マンコゼブ(mancozeb)、ポリカーバメート(polycarbamate)、プロビネブ(propineb)等のジチオカーバメート系化合物;ジエトフェンカルブ(diethofencarb)等のフェニルカーバメート系化合物;クロロタロニル(chlorothalonil)、キントゼン(quintozene)等の有機塩素系化合物;ベノミル(benomyl)、チオファネートメチル(thiophanate-methyl)、カルベンダジム(carbendazim)等のベンズイミダゾール系化合物;メタラキシル(metalaxyl)、オキサジキシル(oxadixyl)、オフラセ(ofurace)、ベナラキシル(benalaxyl)、フララキシル(furalaxyl)、シプロフラン(cyprofuram)等のフェニルアミド系化合物;ジクロフルアニド(dichlofluanid)等のスルフェン酸系化合物;水酸化第二銅(copper hydroxide)、オキシキノリン銅(oxine-copper)等の銅系化合物;ヒドロキシイソキサゾール(hydroxyisoxazole)等のイソキサゾール系化合物;ホセチルアルミニウム(fosetyl-aluminium)、トルクロホスメチル(tolclofos-methyl)等の有機リン系化合物;キャプタン(captan)、カプタホール(captafol)、フォルペット(folpet)等のN-ハロゲノチオアルキル系化合物;プロシミドン(procymidone)、イプロジオン(iprodione)、ビンクロゾリン(vinclozolin)等のジカルボキシイミド系化合物;フルトラニル(flutolanil)、メプロニル(mepronil)、フラメトピル(furametpyr)、チフルザミド(thifluzamide)、ボスカリド(boscalid)、ペンチオピラド(penthiopyrad)等のカルボキシアニリド系化合物;フェンプロピモルフ(fenpropimorph)、ジメトモルフ(dimethomorph)等のモルフォリン系化合物;水酸化トリフェニルスズ(fentin hydroxide)、酢酸トリフェニルスズ(fentin acetate)等の有機スズ系化合物;フルジオキソニル(fludioxonil)、フェンピクロニル(fenpiclonil)等のシアノピロール系化合物;及びこれらの農薬上許容可能な酸付加塩が挙げられる。
【0018】
さらに、前記殺菌剤としては、その他の化合物として、トリシクラゾール(tricyclazole)、ピロキロン(pyroquilon)、カルプロパミド(carpropamid)、ジクロシメット(diclocymet)、フェノキサニル(fenoxanil)、フサライド(fthalide)、フルアジナム(fluazinam)、シモキサニル(cymoxanil)、トリホリン(triforine)、ピリフェノックス(pyrifenox)、フェナリモル(fenarimol)、フェンプロピディン(fenpropidin)、ペンシクロン(pencycuron)、フェリムゾン(ferimzone)、シアゾファミド(cyazofamid)、イプロバリカルブ(iprovalicarb)、ベンチアバリカルブイソプロピル(benthiavalicarb-isopropyl)、イミノクタジンアルベシル酸塩(iminoctadin albesilate)、シフルフェナミド(cyflufenamid)、カスガマイシン(kasugamycin)、バリダマイシン(validamycin)、ストレプトマイシン(streptomycin)、オキソリニック酸(oxolinic acid)、テブフロキン(tebufloquin)、プロベナゾール(probenazole)、アシベンゾラルSメチル(acibenzolar-S-methyl)、チアジニル(tiadinil)、イソチアニル(isotianil)、イソプロチオラン(isoprothiolane)、トルプロカルブ(tolprocarb)、ピジフルメトフェン(pydiflumetofen)、ピカルブトラゾクス(picarbutrazox)、マンデストロビン(mandestrobin)、ジピメチトロン(dipymetitrone)、ピラジフルミド(pyraziflumid)、オキサチアピプロリン(oxathiapiprolin)、ペンフルフェン(penflufen)、フルオキサピプロリン(fluoxapiprolin)、フロリルピコキサミド(florylpicoxamid)、フルオピモミド(fluopimomide)、イプフルフェノキン(ipflufenoquin)、フルインダピル(fluindapyr)、イソフルシプラム(isoflucypram)、キノフメリン(quinofumelin)、メチルテトラプロール(metyltetraprole)、ピリダクロメチル(pyridachlometyl)、ピラプロポイン(pyrapropoyne)、アミノピリフェン(aminopyrifen)、インピルフルキサム(inpyrfluxam)、ジクロベンチアゾクス(dichlobentiazox)、及びこれらの農薬上許容可能な酸付加塩も挙げられる。
【0019】
これらの中でも、前記殺菌剤としては、アゾキシストルビン(azoxystrobin)、オリサストロビン(orysastrobin)、チフルザミド(thifluzamide)、フラメトピル(furametpyr)、フサライド(fthalide)、プロベナゾール(probenazole)、アシベンゾラルSメチル(acibenzolar-S-methyl)、チアジニル(tiadinil)、イソチアニル(isotianil)、イソプロチオラン(isoprothiolane)、トルプロカルブ(tolprocarb)、カルプロパミド(carpropamid)、ジクロシメット(diclocymet)、フェノキサニル(fenoxanil)、トリシクラゾール(tricyclazole)、ピロキロン(pyroquilon)、フェリムゾン(ferimzone)、テブフロキン(tebufloquin)、シメコナゾール(simeconazole)、バリダマイシン(validamycin)、カスガマイシン(kasugamycin)、ペンシクロン(pencycuron)、ペンフルフェン(penflufen)、ジクロベンチアゾクス(dichlobentiazox)、インピルフルキサム(inpyrfluxam)、及びこれらの農薬上許容可能な酸付加塩からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0020】
前記除草剤としてより具体的には、例えば、シハロホップブチル(cyhalofop-butyl)、フェノキサプロップエチル(fenoxaprop-ethyl)、フルアジホップブチル(fluazifop-butyl)、ハロキシホップメチル(haloxyfop-methyl)、メタミホップ(metamifop)、キザロホップエチル(quizalofop-ethyl)等のアリールオキシフェノキシプロピオネート系化合物;アロキシジム(alloxydim)、ブトロキシジム(butroxydim)、プロホキシジム(profoxydim)、セトキシジム(sethoxydim)、テプラロキシジム(tepralozydim)等のシクロヘキサンジオン系化合物;ピノキサデン(pinoxaden)等のフェニルピラゾリン系化合物;イマザメタベンズメチル(imazamethabenz-methyl)、イマザモックス(imazamox)、イマザピック(imazapic)、イマザピル(imazapyr)、イマザキン(imazaquin)、イマゼタピル(imazethapyr)等のイミダゾリノン系化合物;ビスピリバックナトリウム(bispyribac-sodium)、ピリベンゾキシム(pyribenzoxim)、ピリフタリド(pyriftalid)、ピリミノバックメチル(pyriminobac-methyl)、ピリチオバックナトリウム(pyrithiobac-sodium)等のピリミジルベンゾエート系化合物;ピリミスルファン(pyrimisulfan)、トリアファモン(triafamone)、アミドスルフロン(amidosulfuron)、アジムスルフロン(azimsulfuron)、ベンスルフロンメチル(bensulfuron-methyl)、クロリムロンエチル(chlorimuron-ethyl)、クロルスルフロン(chlorsulfuron)、シノスルフロン(cinosulfuron)、シクロスルファムロン(cyclosulfamuron)、エタメトスルフロンメチル(ethametsulfuron-methyl)、エトキシスルフロン(ethoxysulfuron)、フラザスルフロン(flazasulfuron)、フルセトスルフロン(flucetosulfuron)、フルピルスルフロンメチルナトリウム(flupyrsulfuron-methyl-Na)、ホラムスルフロン(foramsulfuron)、ハロスルフロンメチル(halosulfuron-methyl)、イマゾスルフロン(imazosulfuron)、イオドスルフロンメチルナトリウム(iodosulfuron-methyl-Na)、メソスルフロンメチル(mesosulfuron-methyl)、メタゾスルフロン(metazosulfuron)、メトスルフロンメチル(metsulfuron-methyl)、ニコスルフロン(nicosulfuron)、オルトスルファムロン(orthosulfamuron)、オキサスルフロン(oxasulfuron)、ピリミスルフロンメチル(primisulfuron-methyl)、プロピリスルフロン(propyrisulfuron)、プロスルフロン(prosulfuron)、ピラゾスルフロンエチル(pyrazosulfuron-ethyl)、リムスルフロン(rimsulfuron)、スルホメツロンメチル(sulfometuron-methyl)、スルホスルフロン(sulfosulfuron)、チフェンスルフロンメチル(thifensulfuron-methyl)、トリアスルフロン(triasulfuron)等のスルホニルウレア系化合物;プロピザミド(propyzamide)、イソキサベン(isoxaben)、テブタム(tebutam)等のベンズアミド系化合物;クロルタールジメチル(chlorthal-dimethyl)等の安息香酸系化合物;ベンフルラリン(benfluralin)、ブトラリン(butralin)、ジニトラミン(dinitramine)、エタルフルラリン(ethalfluralin)、フルクロラリン(fluchloralin)、イソプロパリン(isopropalin)、ニトラリン(nitralin)、オリザリン(oryzalin)、ペンジメタリン(pendimethalin)、プロジアミン(prodiamine)、プロフルラリン(profluralin)、トリフルラリン(trifluralin)等のジニトロアニリン系化合物;ブタミホス(butamifos)、DMPA等の有機リン系化合物;ジチオピル(dithiopyr)、チアゾピル(thiazopyr)等のピリジン系化合物;クロランベン(chloramben)、ジカンバ(dicamba)、TBA等のベンゾエート系化合物;2,4,5,-T、2,4,-D、2,4-DB、クロメプロップ(clomeprop)、ジクロルプロップ(dichlorprop)、フェノプロップ(fenoprop)、MCPA、メコプロップ(mecoprop)、クロルフェンプロップ(chlorfenprop)、アミノピラリド(aminopyralid)、クロピラリド(clopyralid)、フロルピラウキシフエン(florpyrauxifen)、ハラウキシフェン(halauxifen)、ピクロラム(picloram)、フルロキシピル(fluroxypyr)、トリクロピル(triclopyr)、アミノシクロピラクロル(aminocyclopyrachlor)等のピリミジンカルボン酸系化合物;キンメラック(quinmerac)等のキノリンカルボン酸系の化合物;プロパニル(propanil)等の酸アミド系化合物;クロルプロカルブ(chlorprocarb)、デスメジファム(desmedipham)、フェンメディファム(phenmedipham)等のフェニルカーバメート系化合物;クロリダゾン(chloridazon)等のピリダジノン系化合物;アメトリン(ametryn)、アトラジン(atrazine)、アジプロトリン(aziprotryne)、シアナジン(cyanazine)、デスメトリン(desmetryne)、ジプロペトリン(dipropetryn)、メトプロトリン(methoprotryne)、プロメトリン(prometryne)、プロパジン(propazine)、セブチラジン(sebuthylazine)、セクブメトン(secbumeton)、シマジン(simazine)、シメトリン(simetryn)、テルブメトン(terbumeton)、テルブチラジン(terbuthylazine)、テルブトリン(terbutryne)、トリエタジン(trietazine)、プロシアジン(procyazine)等のトリアジン系化合物;ヘキサジノン(hexazinone)、メタミトロン(metamitron)、メトリブジン(metribuzin)等のトリアジノン系化合物;アミカルバゾン(amicarbazone)等のトリアゾリノン系化合物;ブロマシル(bromacil)、レナシル(lenacil)、ターバシル(terbacil)等のウラシル系化合物;ブロムロン(bromuron)、クロルブロムロン(chlorbromuron)、クロロトルロン(chlorotoluron)、ジメフロン(dimefuron)、ジウロン(diuron)、エチジムロン(ethidimuron)、フェヌロン(fenuron)、イソウロン(isouron)、メタベンズチアズロン(methabenzthiazuron)、メトブロムロン(metobromuron)、メトクスロン(metoxuron)、モノリニュロン(monolinuron)、ネブロン(neburon)等の尿素系化合物;ベンタゾン(bentazon)等のベンゾチアジノン系化合物;ピリデート(pyridate)等のフェニルピリダジン系化合物;グリホサート(glyphosate)等のグリシン系化合物;ビアラホス(bialaphos)、グルホシネートアンモニウム塩(glufosinate-ammonium)等のホスフィン酸系化合物;フルリドン(fluridone)等のジフェニルヘテロ環系化合物;フルロクロリドン(flurochloridone)、ノルフルラゾン(norflurazon)等のN-フェニルヘテロ環系化合物;ベフルブタミド(beflubutamid)、ジフルフェニカン(diflufenican)、ピコリナフェン(picolinafen)等のフェニルエーテル系化合物;ビキスロゾン(bixlozone)、クロマゾン(clomazone)等のイソキサゾリジノン系化合物;アシフルオルフェン(acifluorfen)、ビフェノックス(bifenox)、クロメトキシフェン(chlomethoxyfen)、クロルニトロフェン(chlornitrofen)、フルオログリコフェンエチル(fluoroglycofen-ethyl)、ホメサフェン(fomesafen)、ラクトフェン(lactofen)、ニトロフェン(nitrofen)、オキシフルオルフェン(oxyfluorfen)等のジフェニルエーテル系化合物;クロルフタリム(chlorphthalim)、シニドンエチル(cinidon-ethyl)、エピリフェナシル(epyrifenacil)、フルミオキサジン(flumioxazin)、ペントキサゾン(pentoxazone)、サフルフェナシル(saflufenacil)、チアフェナシル(tiafenacil)、フルチアセットメチル(fluthiacet-methyl)等のN-フェニルイミド系化合物;オキサジアルギル(oxadiargyl)、オキサジアゾン(oxadiazon)等のN-フェニルオキサジアゾロン系化合物;アザフェニジン(azafenidin)、カルフェントラゾンエチル(carfentrazone-ethyl)、スルフェントラゾン(sulfentrazone)等のN-フェニルトリアゾリノン系化合物;ピラフルフェンエチル(pyraflufen-ethyl)等のフェニルピラゾール系化合物;カフェンストロール(cafenstrole)、フェントラザミド(fentrazamide)、イプフェンカルバゾン(ipfencarbazone)等のアゾリルカルボキサミド系化合物;ベンフレセート(benfuresate)、エトフメセート(ethofumesate)等のベンゾフラン系化合物;フェノキサスルホン(fenoxasulfone)、ピロキサスルホン(pyroxasulfone)等のイソキサゾリン系化合物;インダノファン(indanofan)、トリジファン(tridiphane)等のオキシラン系化合物;ブチレート(butylate)、シクロエート(cycloate)、ジメピペレート(dimepiperate)、EPTC、エスプロカルブ(esprocarb)、モリネート(molinate)、オルベンカルブ(orbencarb)、ペブレート(pebulate)、プロスルホカルブ(prosulfocarb)、ベンチオカルブ(benthiocarb)、チオカルバジル(tiocarbazil)、トリアレート(tri-allate)、バーノレート(vernolate)等のチオカーバメート系化合物;アセトクロール(acetochlor)、アラクロール(alachlor)、アリドクロール(allidochlor)、ブタクロール(butachlor)、ブテナクロール(butenachlor)、デラクロール(delachlor)、ジメタクロール(dimethachlor)、ジメテナミド(dimethenamid)、メタザクロール(metazachlor)、メトラクロール(metolachlor)、ペトキサミド(pethoxamid)、プレチラクロール(pretilachlor)、プロパクロール(propachlor)、プロピソクロール(propisochlor)、プリナクロール(prynachlor)、テニルクロール(thenylchlor)等のα-クロロアセトアミド系化合物;テニルクロール(thenylchlor)、フルフェナセット(flufenacet)、メフェナセット(mefenacet)等のα-オキシアセトアミド系化合物;アニロホス(anilofos)、ピペロホス(piperophos)等のα-チオアセトアミド系化合物;ジフルフェンゾピルナトリウム(diflufenzopyr-sodium)、ナプタラム(naptalam)等のアリールカルボキシレート系化合物;シペルコート(cyperquat)、ジクワット(diquat)、パラコート(paraquat)等のピリジニウム系化合物;バーバン(barban)、カルベタミド(carbetamide)、クロルブファム(chlorbufam)、クロロプロファム(chlorpropham)、プロファム(propham)、スエップ(swep)等のカーバメート系化合物;DNOC、ジノサム(dinosam)、ジノセブ(dinoseb)、ジノテルブ(dinoterb)、エチノフェン(etinofen)、メジノテルブ(medinoterb)等のジニトロフェノール系化合物;イソキサフルトール(isoxaflutole)等のイソキサゾール系化合物;ピラスルホトール(pyrasulfotole)、トルピラレート(tolpyralate)、トプラメゾン(topramezone)、ベンゾフェナップ(benzofenap)、ピラゾリネート(pyrazolynate)、ピラゾキシフェン(pyrazoxyfen)等のピラゾール系化合物;ビシクロピロン(bicyclopyrone)、フェンキノトリオン(fenquinotrione)、メソトリオン(mesotrione)、スルコトリオン(sulcotrione)、テフリルトリオン(tefuryltrione)、テンボトリオン(tembotorione)、ベンゾビシクロン(benzobicyclon)等のトリケトン系化合物;テトフルピロリメット(tetflupyrolimet)等のアリールピロリジノンアニリド系化合物;インダジフラム(indaziflam)、トリアジフラム(triaziflam)等のアルキルアジン系化合物;クロルチアミド(chlorthiamid)、ジクロベニル(dichlobenil)、ブロモフェノキシム(bromofenoxim)、ブロモキシニル(bromoxynil)、アイオキシニル(ioxynil)等のニトリル系化合物;フルポキサム(flupoxam)等のトリアゾロカルボキシアミド系化合物;シンメチリン(cinmethylin)、メチオゾリン(methiozolin)等のベンジルエーテル系化合物;アクロニフェン(aclonifen)等のジフェニルエーテル系化合物;シクロピリモレート(cyclopyrimorate)等のフェノキシピリダジン系化合物;アミトロール(amitrole)等のトリアゾール系化合物;キンクロラック(quinclorac)等のキノリンカルボキシレート系化合物;ジフェナミド(diphenamid)、ナプロアニリド(naproanilide)ナプロパミド(napropamide)等のアセトアミド系化合物;フラムプロップ-メチル(flamprop-m)等のアリールアミノプロピオン酸系化合物;ダラポン(dalapon)、フルプロパネート(flupropanate)、TCA等のクロロカルボン酸系化合物;ベンスリド(
bensulide)等のジチオリン酸系化合物;メルフルイジド(mefluidide)、ペルフルイドン(perfluidone)等のトリフルオロメタンスルホンアニリド系化合物;及びこれらの農薬上許容可能な酸付加塩が挙げられる。
【0021】
さらに、前記除草剤としては、その他の化合物として、ピラクロニル(pyraclonil)、エンドタール(endothal)、ブロモブチド(bromobutide)、CAMA、カコジル酸(cacodylic acid)、クミルロン(cumyluron)、DSMA、ジフェンゾコート(difenzoquat)、ダイムロン(daimuron)、エトベンザニド(etobenzanid)、MSMA、メチルダイムロン(methyldymron)、オレイン酸(oleic acid)、オキサジクロメホン(oxaziclomefone)、ペラルゴン酸(pelargonic acid)、ピリブチカルブ(pyributicarb)、キノクラミン(quinoclamine)、及びこれらの農薬上許容可能な酸付加塩も挙げられる。
【0022】
これらの中でも、前記除草剤としては、シクロピリモレート(cyclopyrimorate)及びその農薬上許容可能な塩からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0023】
本発明の農薬組成物は、含有される農薬有効成分の水溶解度にかかわらず優れた徐放性を発揮することができる。そのため、当該農薬有効成分としては、前記農薬組成物の形態、適用目的、適用対象、及び適用方法、並びに、同農薬有効成分の特性等によって適宜選択され、特に制限されないが、本発明の農薬組成物に含有される農薬有効成分としては、例えば、20~25℃における水溶解度が50g/L以下であることが好ましい。なお、前記20℃~25℃の範囲は、20-0.5℃~25+0.5℃の範囲を許容する。また、前記水溶解度としては、45g/L以下であることがより好ましく、40g/L以下であることがさらに好ましく、1g/L以下であることがさらにより好ましい。なお、前記水溶解度の下限としては、例えば、0.1mg/Lが挙げられる。
【0024】
本発明における「水溶解度」は、農薬有効成分が水に溶けた飽和溶液の濃度を示し、OECDガイドラインNo.105(OECD GUIDELINE FOR THE TESTING OF CHEMICALS 105,Adopted 27.07.95,https://doi.org/10.1787/9789264069589-en)の方法で測定される。OECDガイドラインNo.105には、水溶解度が10mg/Lを超える農薬有効成分に適用されるフラスコ法、及び水溶解度が10mg/Lよりも低い農薬有効成分に適用されるカラム溶出法の2つの方法が掲載されているが、測定方法は当該ガイドラインに従って選択される。また、本発明における「水溶解度」としては、独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)のホームページ(http://www.acis.famic.go.jp/syouroku/index.htm)にて公開されている農薬抄録において、各農薬有効成分の水溶解度として開示されているものや、環境省のホームページ(https://www.env.go.jp/water/dojo/noyaku/odaku_kijun/kijun.html)にて公開されている評価書に水溶解度として開示されているものを採用してもよい。
【0025】
このような水溶解度の農薬有効成分としては、例えば、ジノテフラン、シメコナゾール、トルプロカルブ、シクロピリモレート、及びこれらの農薬上許容可能な酸付加塩等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
本発明において、前記農薬上許容可能な酸付加塩としては、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、及び酢酸塩等が挙げられ、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0027】
本発明の農薬組成物における前記農薬有効成分の含有量(農薬有効成分が2種以上である場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)としては、その種類、使用目的、及び適用対象や適用方法等に応じて適宜調整されるものであるため一概にはいえないが、農薬組成物の全質量に対して、例えば、0.1~60質量%、0.2~50質量%、0.5~40質量%、0.5~30質量%とすることができる。
【0028】
(樹脂エマルション)
本発明において、「樹脂エマルション」とは、樹脂からなる粒子の平均粒子径が0.001~100μmにある樹脂粒子を示し、前記平均粒子径としては、0.005~10μmであることが好ましく、0.01~5μmであることがより好ましい。このような樹脂エマルションの平均粒子径は、例えば、レーザー回折散乱式粒度分布測定法、動的光散乱式粒度分布測定法により測定される。より具体的には、樹脂エマルションを、測定に適した濃度まで適宜水で懸濁又は希釈し、撹拌しながら超音波処理して粒子を分散させることにより調製した測定用サンプルについて、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、LA-960(堀場))又は動的光散乱式粒度分布測定装置(例えば、DLS-6500(大塚電子))を用いて測定して得られた粒度分布における、体積基準の累積頻度50%のメジアン径を、前記平均粒子径とすることができる。前記樹脂エマルションは、農薬組成物(特に粒剤)の空隙を埋め、水の侵入を遅くする作用を有すると推察される。
【0029】
前記樹脂エマルションに係る樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよいが、中でも、アクリル系樹脂であることが好ましい。
【0030】
本発明において、「アクリル系樹脂」とは、少なくともアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルをモノマーとする高分子化合物(重合体:前記モノマーの単独重合体及び共重合体、前記モノマーのうちの1種以上と他のモノマーとの共重合体)を示す。前記アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、及びアクリル酸2-エチルヘキシル等が挙げられ、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。また、前記メタクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が挙げられ、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0031】
前記アクリル系樹脂には、アクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルを主として、これに、他のモノマー、例えば、芳香族ビニルモノマー、オレフィンモノマー、シリコーンマクロマー、及びバーサチック酸ビニルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーが重合してなる高分子化合物(共重合体)も包含される。前記芳香族ビニルモノマーとしては、スチレン等が挙げられる。また、前記オレフィンモノマーとしては、エチレン、プロピレン、及びブタジエン等が挙げられ、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0032】
本発明の農薬組成物に含有される前記アクリル系樹脂としては、上記のうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0033】
前記アクリル系樹脂として、より具体的には、例えば、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合体(例えば、ジャパンコーティングレジン株式会社製Mowinyl-Powder LDM7000P等)、アクリル酸アルキルエステルとスチレンとの共重合体(例えば、ジャパンコーティングレジン株式会社製モビニール6485、Mowinyl-Powder LDM7400P等)、アクリル酸アルキルエステルとシリコーンマクロマーとの共重合体(例えば、ジャパンコーティングレジン株式会社製モビニール7110等)、及びメタクリル酸アルキルエステルとエチレンとの共重合体(例えば、三井・ダウポリケミカル株式会社製ニュクレルN1108C等)などが挙げられる。
【0034】
本発明において、「酢酸ビニル系樹脂」とは、少なくとも酢酸ビニルをモノマーとする高分子化合物(重合体:前記モノマーの単独重合体又は前記モノマーと他のモノマーとの共重合体)を示す。
【0035】
前記酢酸ビニル系樹脂には、酢酸ビニルを主として、これに他のモノマー、例えば、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、バーサチック酸ビニル、オレフィンモノマー、ハロゲン化オレフィンモノマー、及び不飽和ジカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーが重合してなる高分子化合物(共重合体)も包含される。前記アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、及びアクリル酸2-エチルヘキシル等が挙げられ、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。前記メタクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸メチル等が挙げられ、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。また、前記オレフィンモノマーとしては、エチレン、プロピレン、及びブタジエン等が挙げられ、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。前記ハロゲン化オレフィンモノマーとしては、塩化ビニル及び塩化ビニリデン等が挙げられ、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0036】
本発明の農薬組成物に含有される前記酢酸ビニル系樹脂としては、上記のうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0037】
前記酢酸ビニル系樹脂として、より具体的には、例えば、酢酸ビニルとバーサチック酸ビニルとアクリル酸アルキルエステルとの共重合体(例えば、ジャパンコーティングレジン株式会社製Mowinyl-Powder LDM2072P等)、酢酸ビニルとエチレンとの共重合体(例えば、ジャパンコーティングレジン株式会社製モビニール180E等)、及びエチレンと酢酸ビニルと塩化ビニルとの共重合体(例えば、住化ケムテックス株式会社製スミカフレックス808HQ等)などが挙げられる。
【0038】
本発明において、「ウレタン系樹脂」とは、ウレタン結合を有する高分子化合物(重合体)を示し、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させることにより得られる。前記ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネートが挙げられる。また、前記ポリオールとしては、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等のポリエーテルポリオール;ポリエチレンアジペートグリコール及びポリブチレンアジペートグリコール等のポリエステルポリオール;並びにポリブチレンカーボネートジオール及びポリヘキサメチレンカーボネートジオール等のポリカーボネートポリオールが挙げられる。前記ウレタン系樹脂としては、これらのポリイソシアネートとポリオールとの反応物のうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0039】
本発明の農薬組成物の製造に用いる樹脂エマルションとしては、液状の樹脂エマルション液又は粉状の樹脂エマルション粉末として一般に流通しているものを適宜用いることができる。
【0040】
前記樹脂エマルション液とは、前記樹脂からなる粒子が水等の分散媒に乳化分散しているものを示す。前記樹脂エマルション液中の樹脂エマルションの含有量としては、通常、15~70質量%程度である。
【0041】
このような樹脂エマルション液としては、例えば、ジャパンコーティングレジン株式会社製モビニール6485(アクリル酸アルキルエステルとスチレンとの共重合体)、日本エイアンドエル株式会社製ナルスターSR-140(カルボキシル化されたブタジエン-スチレン-メタクリル酸メチル共重合体)、住化ケムテックス株式会社製スミカフレックス808HQ(エチレンと酢酸ビニルと塩化ビニルとの共重合体)、第一工業製薬株式会社製スーパーフレックス500M(脂肪族イソシアネートとポリエステルポリオールとが重合されているウレタン樹脂)、及び昭和電工株式会社製ポリゾールAP-3140、AP-3820(スチレン・アクリル共重合樹脂)等が挙げられる。
【0042】
前記樹脂エマルション粉末は、再乳化形粉末樹脂などとも呼ばれ、一般的に、前記樹脂エマルション液に必要に応じて安定剤等を加え、噴霧乾燥等の方法で乾燥して得られる、水に再分散可能な微粉末状物質である。
【0043】
このような樹脂エマルション粉末としては、例えば、ジャパンコーティングレジン株式会社製Mowinyl-Powder DM201P(酢酸ビニルとバーサチック酸ビニルとの共重合体)、ジャパンコーティングレジン株式会社製Mowinyl-Powder DM2072P(酢酸ビニルとバーサチック酸ビニルとアクリル酸アルキルエステルとの共重合体)、ジャパンコーティングレジン株式会社製Mowinyl-Powder LDM7000P(アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合体)、ジャパンコーティングレジン株式会社製Mowinyl-Powder LDM7400P(アクリル酸アルキルエステルとスチレンとの共重合体)、WACKER CHEMICALS社製VINNAPAS 2012E(アクリル酸アルキルエステルとスチレンとの共重合体)、VINNAPAS 2310E(アクリル酸アルキルエステルとスチレン及びバーサチック酸ビニルとの共重合体)、Cleanese社製ELOTEX TITAN7000(スチレン-アクリル酸エステルの共重合体)、及びCleanese社製ELOTEX FX7000(スチレン-アクリル酸エステルの共重合体)等が挙げられる。
【0044】
本発明の農薬組成物が前記樹脂エマルションを含有する場合、その含有量(前記樹脂からなる粒子の量;樹脂エマルションが2種以上である場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)としては、農薬組成物の全質量に対して、0.5~40質量%であることが好ましく、1~30質量%であることがより好ましく、2~20質量%であることがさらに好ましく、2~15質量%であることがさらにより好ましい。前記樹脂エマルションの含有量が前記上限を超えると、農薬組成物の製造時に装置に付着する原料の量が多くなったり、農薬粒剤を製造する場合に所望の大きさに整えることが困難となったりする(造粒不良)傾向にあり、他方、前記下限未満であると、農薬有効成分の水への溶出抑制効果(徐放効果)が十分に得られなくなる傾向にある。
【0045】
(表面処理カオリン)
本発明において、「表面処理カオリン」とは、表面処理剤によって表面が改質処理されたカオリンを示す。本発明において、「カオリン」とは、カオリナイト(カオリン石、AlSi(OH))を主成分とする粘土を示す。本発明の農薬組成物において、前記表面処理カオリンは、前記表面処理剤により付加された化学修飾基によって、結合剤や前記樹脂エマルション等の他の成分との相互作用を強化し、農薬有効成分の溶出抑制効果(徐放効果)を向上させる作用を有するものと推察される。
【0046】
前記表面処理剤としては、カオリン表面の官能基と反応可能な反応基と、前記化学修飾基(又は前記化学修飾基を生じ得る基)とを有する有機化合物が挙げられる。前記反応基としては、例えば、アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、メルカプト基が挙げられる。代表的な表面処理剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、脂肪酸、界面活性剤等が挙げられる。
【0047】
前記シランカップリング剤として、より具体的には、例えば、アルコキシシリル基(-Si(OR):前記式中、Rはアルキル基を示し、nは1~3の整数を示し、n=1又は2のとき、ケイ素原子(Si)に結合する他の基は特に限定されない。)を有する有機化合物、例えば、メルカプトシラン、アミノシラン、ビニルシラン、エポキシシランが挙げられる。当該シランカップリング剤は、前記化学修飾基としてカオリン表面にシラノール基(-SiOH)を付加する。
【0048】
前記メルカプトシランとしては、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。前記アミノシランとしては、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、及びこれらの塩酸塩等が挙げられる。前記ビニルシランとしては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。前記エポキシシランとしては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0049】
前記チタネートカップリング剤として、より具体的には、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートが挙げられる。また、前記脂肪酸として、より具体的には、例えば、ステアリン酸、オレイン酸等が挙げられる。
【0050】
前記表面処理カオリンとしては、例えば、ビニルシラン表面処理焼成カオリン(例えば、BASF社製Translink 37、Translink 77;KaMin LLC社製Polyfil WC;イメリス ミネラルズ・ジャパン社製Polarite 103A、Polarite 503S等)、アミノシラン表面処理焼成カオリン(例えば、BASF社製Translink 445、Translink 555;KaMin LLC社製Nulok 390;Kentucky Tennessee Clay社製Amlok 321;イメリス ミネラルズ・ジャパン社製Polarite 102A、Polarite 402A、Polarite 502A等)、ステアリン酸表面処理カオリン(BASF社製ASP 101;KaMin LLC社製Nucap 390、Nucote 7009等)、メルカプトシラン表面処理焼成カオリン(KaMin LLC社製Nucap 100G、Nucap 190W、Nucap 290W;Kentucky Tennessee Clay社製Mercap 100、Mercap 200等)等が挙げられ、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0051】
これらの中でも、本発明に係る表面処理カオリンとしては、前記シランカップリング剤によって表面がシラン処理されたシラン表面処理カオリンであることが好ましい。本発明において、「シラン表面処理カオリン」とは、カオリン表面に前記シラノール基が付加されたものを示す。このようなシラン表面処理カオリンとしては、前記シランカップリング剤の含有量が、シラン表面処理カオリンの全質量に対して、0.01~40質量%であることが好ましく、0.05~20質量%であることがより好ましい。前記シランカップリング剤の含有量は、例えば、シラン表面処理カオリンを加熱して得られる変化を測定する熱重量分析法、元素分析法、非分散型赤外線分析法等により測定可能である。
【0052】
また、本発明に係る表面処理カオリンとしては、粒子状の表面処理カオリン粒子であることが好ましい。前記表面処理カオリン粒子としては、その平均粒子径が0.01~50μmであることが好ましく、0.05~10μmであることがより好ましい。前記表面処理カオリン粒子の平均粒子径は、例えば、レーザー回折散乱式粒度分布測定法、動的光散乱式粒度分布測定法により測定される。より具体的には、表面処理カオリン粒子を、1%程度の界面活性剤(例えば、ヘキサメタリン酸ナトリウム)水溶液で測定に適した濃度まで適宜懸濁し、撹拌しながら超音波処理して粒子を分散させることにより調製した測定用サンプルについて、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、LA-960(堀場))又は動的光散乱式粒度分布測定装置(例えば、DLS-6500(大塚電子))を用いて測定して得られた粒度分布における、体積基準の累積頻度50%のメジアン径を、前記平均粒子径とすることができる。
【0053】
本発明の農薬組成物が前記表面処理カオリンを含有する場合、その含有量(表面処理カオリンが2種以上である場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)としては、農薬組成物の全質量に対して、0.1~60質量%であることが好ましく、1~50質量%であることがより好ましく、5~40質量%であることがさらに好ましく、5~30質量%であることがさらにより好ましい。前記表面処理カオリンの含有量が前記上限を超えると、農薬組成物の製造時に練合不良や造粒不良が生じやすくなる傾向にあり、他方、前記下限未満であると、農薬有効成分の水への溶出抑制効果(徐放効果)が十分に得られなくなる傾向にある。
【0054】
(有機変性ベントナイトと油類との組み合わせ)
〔有機変性ベントナイト〕
本発明において、「有機変性ベントナイト」とは、モンモリロナイトを主成分とするスメクタイト型粘土であるベントナイトに、有機カチオン、主に、脂肪ニトリル由来の第4級アンモニウムイオンを反応させた有機変性粘土を示し、「有機ベントナイト」などとも呼ばれている。前記有機変性ベントナイトとしては、ベントナイトの表面を第4級アンモニウムイオンと反応させた第4級アンモニウム化合物表面処理ベントナイトであることが好ましい。本発明において、前記有機変性ベントナイトは、下記の油類と共に、本発明の農薬組成物に優れた徐放性を付与するだけでなく、改良剤(好ましくは造粒性改良剤)として機能して製造性をより向上させるものと推察される。
【0055】
本発明において、前記ベントナイトには、モンモリロナイトを主成分とする弱アルカリ性粘土鉱物だけでなく、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト等のスメクタイトを包含する。また、前記第4級アンモニウムイオンとしては、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリアルキルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム等が挙げられる。
【0056】
前記有機変性ベントナイトとしては、例えば、ジステアルジモニウムヘクトライト、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト、ジメチルジステアリルアンモニウムベントナイト、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト、トリメチルステアリルアンモニウムベントナイト、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムベントナイト等が挙げられ、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0057】
前記有機変性ベントナイトとして、より具体的には、例えば、クニビス110、クニビス127(以上、クニミネ工業株式会社製);エスベン、エスベンNTO、エスベンNZ、エスベンNZ70、エスベンW(以上、株式会社ホージュン製);クレイトン34、クレイトン40、クレイトンEM、クレイトンER、クレイトンHT(以上、ビックケミー・ジャパン社製)等が挙げられる。
【0058】
また、本発明に係る有機変性ベントナイトとしては、粒子状の有機変性ベントナイト粒子であることが好ましい。前記有機変性ベントナイト粒子としては、その平均粒子径が0.001~100μmであることが好ましく、0.005~60μmであることがより好ましく、0.01~30μmであることがさらに好ましい。前記有機変性ベントナイト粒子の平均粒子径は、例えば、レーザー回折散乱式粒度分布測定法、動的光散乱式粒度分布測定法により測定される。より具体的には、有機変性ベントナイト粒子を、0.5%程度の界面活性剤(例えば、ヘキサメタリン酸ナトリウム及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)水溶液で測定に適した濃度まで適宜懸濁し、撹拌しながら超音波処理して粒子を分散させることにより調製した測定用サンプルについて、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、LA-960(堀場))又は動的光散乱式粒度分布測定装置(例えば、DLS-6500(大塚電子))を用いて測定して得られた粒度分布における、体積基準の累積頻度50%のメジアン径を、前記平均粒子径とすることができる。
【0059】
本発明の農薬組成物が前記有機変性ベントナイトを含有する場合、その含有量(有機変性ベントナイトが2種以上である場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)としては、農薬組成物の全質量に対して、0.05~40質量%であることが好ましく、0.1~30質量%であることがより好ましく、0.2~20質量%であることがさらに好ましく、0.3~15質量%であることがさらに好ましい。前記有機変性ベントナイトの含有量が前記上限を超えると、農薬組成物の製造時に練合不良や造粒不良が生じやすくなる傾向にあり、他方、前記下限未満であると、農薬有効成分の水への溶出抑制効果(徐放効果)が十分に得られなくなる傾向にある。
【0060】
〔油類〕
本発明において、「油類」には、脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物(油脂)だけではなく、炭化水素系オイルも包含される。本発明において、前記油類は、上記の有機変性ベントナイトと共に、本発明の農薬組成物に優れた徐放性を付与するだけでなく、改良剤(好ましくは造粒性改良剤)として機能して製造性をより向上させるものと推察される。
【0061】
前記油脂としては、例えば、サラダ油、白絞油、コーン油、大豆油、ごま油、ナタネ油(キャノーラ油)、こめ油(米糠油)、パーム核油、綿実油、ひまし油等の常温で液体の植物性油脂;魚油、肝油等の常温で液体の動物性油脂;カカオバター、ピーナッツバター、パーム油、ヤシ油等の常温で固体の植物性油脂;ラード(豚脂)、ヘット(牛脂)、乳脂(バター、ギー)等の常温で固体の動物性油脂;が挙げられる。
【0062】
前記炭化水素系オイルとしては、例えば、テルペノイド等を主成分とする精油;ノルマルパラフィン、イソパラフィン、流動パラフィン等の脂肪族炭化水素;アルキルベンゼン、アルキルナフタレン等の芳香族炭化水素が挙げられる。また、前記炭化水素系オイルには、例えば、脂肪酸メチルエステル(例えば、オレイン酸メチル)、二塩基酸メチルエステル等の合成油(炭化水素系エステル)も包含される。
【0063】
本発明に係る油類としては、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってよいが、作業容易性及び安全性の観点から、常温で液体(高沸点油類)であることが好ましく、ナタネ油、白絞油、綿実油等の植物性油脂(好ましくは常温で液体)、及び炭化水素系オイルからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、脂肪族炭化水素(例えば流動パラフィン)や脂肪酸メチルエステル等の炭化水素系オイルからなる群から選択される少なくとも1種であることがさらに好ましい。ここで、前記常温とは、より具体的には、第十八改正日本薬局方通則に規定されている常温である「15℃~25℃」を指す。また、前記液体の性状としては、作業時のハンドリングの観点から、例えば、B型粘度計(TOKIMEC製、VISCOMETER MODEL BM)を用い、使用ローター:3又は4、回転数:60r/min、測定時間:60秒の条件で測定される25℃の粘度が、1000mPa・s以下であることが好ましく、800mPa・s以下であることがより好ましく、500mPa・s以下であることがさらに好ましい。
【0064】
本発明の農薬組成物が前記油類を含有する場合、その含有量(油類が2種以上である場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)としては、農薬組成物の全質量に対して、0.05~40質量%であることが好ましく、0.1~30質量%であることがより好ましく、0.5~20質量%であることがさらに好ましい。前記油類の含有量が前記上限を超えると、農薬組成物の製造時に装置に付着する原料の量が多くなったり、農薬粒剤を製造する場合に所望の大きさに整えることが困難となったりする(造粒不良)傾向にあり、他方、前記下限未満であると、農薬有効成分の水への溶出抑制効果(徐放効果)が十分に得られなくなる傾向にある。
【0065】
また、本発明の農薬組成物では、前記油類を含有する場合には前記有機変性ベントナイトも含有し、前記有機変性ベントナイトを含有する場合には前記油類も含有する。ただし、前記樹脂エマルション及び前記表面処理カオリンに加えて、前記有機変性ベントナイト及び前記油類のうちのいずれか一方のみが含有される農薬組成物を除外するものではない。前記有機変性ベントナイト及び前記油類は組み合わせて農薬組成物に含有されることにより、本発明の農薬組成物に優れた徐放性を付与するだけでなく、改良剤(好ましくは造粒性改良剤)として機能して製造性をより向上させるものと推察される。
【0066】
本発明の農薬組成物が有機変性ベントナイトと油類との組み合わせを含有する場合、これらの含有量(前記有機変性ベントナイトの含有量と前記油類の含有量との合計含有量、以下同じ)としては、農薬組成物の全質量に対して、0.1~50質量%であることが好ましく、0.2~40質量%であることがより好ましく、0.7~30質量%であることがさらに好ましく、0.8~20質量%であることがさらにより好ましい。前記合計含有量が前記上限を超えると、農薬組成物の製造時に装置に付着する原料の量が多くなったり、農薬粒剤を製造する場合に所望の大きさに整えることが困難となったりする(造粒不良)傾向にあり、他方、前記下限未満であると、農薬有効成分の水への溶出抑制効果が十分に得られなくなる傾向にある。
【0067】
また、このときの本発明の農薬組成物における前記有機変性ベントナイトの含有量と前記油類の含有量との質量比(有機変性ベントナイトの含有量:油類の含有量)としては、上記と同様の観点から、1:30~30:1であることが好ましく、1:20~20:1であることがより好ましく、1:10~10:1であることがさらに好ましく、1:5~5:1であることがさらにより好ましい。
【0068】
本発明の農薬組成物としては、前記樹脂エマルション、前記表面処理カオリン、及び、前記有機変性ベントナイトと前記油類との組み合わせ、の3種からなる群から選択される2種以上を含有していればよく、例えば、下記の組み合わせが挙げられる。
【0069】
(樹脂エマルションと表面処理カオリンとの組み合わせ)
この場合、前記樹脂エマルションの含有量と前記表面処理カオリンの含有量との合計含有量としては、農薬組成物の全質量に対して、0.6~70質量%であることが好ましく、2~60質量%であることがより好ましく、7~50質量%であることがさらに好ましく、7~40質量%であることがさらにより好ましい。前記合計含有量が前記上限を超えると、農薬組成物の製造時に装置に付着する原料の量が多くなったり、農薬粒剤を製造する場合に所望の大きさに整えることが困難となったりする(造粒不良)傾向にあり、他方、前記下限未満であると、農薬有効成分の水への溶出抑制効果(徐放効果)が十分に得られなくなる傾向にある。
【0070】
(樹脂エマルションと有機変性ベントナイトと油類との組み合わせ)
この場合、前記樹脂エマルションの含有量と前記有機変性ベントナイト及び油類の含有量との合計含有量としては、農薬組成物の全質量に対して、0.6~50質量%であることが好ましく、1.2~40質量%であることがより好ましく、2.7~35質量%であることがさらに好ましく、2.8~35質量%であることがさらにより好ましい。前記合計含有量が前記上限を超えると、農薬組成物の製造時に装置に付着する原料の量が多くなったり、農薬粒剤を製造する場合に所望の大きさに整えることが困難となったりする(造粒不良)傾向にあり、他方、前記下限未満であると、農薬有効成分の水への溶出抑制効果(徐放効果)が十分に得られなくなる傾向にある。
【0071】
(表面処理カオリンと有機変性ベントナイトと油類との組み合わせ)
この場合、前記表面処理カオリンの含有量と前記有機変性ベントナイト及び油類の含有量との合計含有量としては、農薬組成物の全質量に対して、0.2~60質量%であることが好ましく、1.2~55質量%であることがより好ましく、5.7~50質量%であることがさらに好ましく、5.8~50質量%であることがさらにより好ましい。前記合計含有量が前記上限を超えると、農薬組成物の製造時に装置に付着する原料の量が多くなったり、農薬粒剤を製造する場合に所望の大きさに整えることが困難となったりする(造粒不良)傾向にあり、他方、前記下限未満であると、農薬有効成分の水への溶出抑制効果(徐放効果)が十分に得られなくなる傾向にある。
【0072】
(樹脂エマルションと表面処理カオリンと有機変性ベントナイトと油類との組み合わせ)
この場合、前記樹脂エマルションの含有量と前記表面処理カオリンの含有量と前記有機変性ベントナイト及び油類の含有量との合計含有量としては、農薬組成物の全質量に対して、0.7~70質量%であることが好ましく、2.2~60質量%であることがより好ましく、7.7~50質量%であることがさらに好ましく、7.8~45質量%であることがさらにより好ましい。前記合計含有量が前記上限を超えると、農薬組成物の製造時に装置に付着する原料の量が多くなったり、農薬粒剤を製造する場合に所望の大きさに整えることが困難となったりする(造粒不良)傾向にあり、他方、前記下限未満であると、農薬有効成分の水への溶出抑制効果(徐放効果)が十分に得られなくなる傾向にある。
【0073】
(補助剤)
本発明の農薬組成物としては、上記の農薬有効成分、及び上記の3種の成分(樹脂エマルション、表面処理カオリン、有機変性ベントナイトと油類との組み合わせ)の他に、本発明の効果を阻害しない範囲内で、界面活性剤、結合剤、増量剤、防黴剤、着色剤、安定化剤等の補助剤をさらに含有していてもよい。
【0074】
本発明の農薬組成物が前記補助剤を含有する場合、当該補助剤は1種であっても2種以上の組み合わせであってよく、その含有量(補助剤が2種以上である場合にはそれらの合計含有量)としては、その種類や組み合わせに応じて適宜調整することができるが、例えば、農薬組成物の全質量に対して、0.01~90質量%とすることができ、1~80質量%であることが好ましく、5~70質量%であることがより好ましい。
【0075】
〔界面活性剤〕
前記界面活性剤としては、例えば、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤等が挙げられ、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0076】
前記陰イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルサルフェート、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルサルフェート、ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーサルフェート、アルキルサルフェート、アルカンスルホネート、α-オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホサクシネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルスルホネート、アルキルジフェニルエーテルジスルホネート、リグニンスルホネート、アルキルナフタレンスルホネート、(アルキル)ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルスルホネート、脂肪酸塩、N-メチル-脂肪酸サルコシネート、樹脂酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルホスフェート、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルホスフェート、ポリカルボン酸型界面活性剤等が挙げられる。なお、上記のポリオキシアルキレンは、本発明の効果を阻害しない限り特に限定されるものではないが、ポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレンからなる群から選択される1種又はそれらの混合であることが好ましい。
【0077】
前記非イオン性界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン樹脂酸エステル、ポリオキシアルキレンヒマシ油、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレン脂肪酸アミド、ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテル、シリコーン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤等が挙げられる。なお、上記のポリオキシアルキレンは、本発明の効果を阻害しない限り特に限定されるものではないが、ポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレンからなる群から選択される1種又はそれらの混合であることが好ましい。
【0078】
前記陽イオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルベンザルコニウムクロライド、アルキルアミン等が挙げられる。また、前記両性界面活性剤としては、ジアルキルアミノエチルベタイン、アルキルジメチルベンジルベタイン等が挙げられる。
【0079】
本発明の農薬組成物が前記界面活性剤を含有する場合、その含有量(界面活性剤が2種以上である場合にはそれらの合計含有量)としては、農薬組成物の全質量に対して、0.01~20質量%であることが好ましく、0.1~10質量%であることがより好ましい。
【0080】
〔結合剤〕
前記結合剤としては、例えば、リグニンスルホン酸塩;カルボシキメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体;デンプン、デキストリン等の加工澱粉;ブドウ糖、ショ糖等の糖類;ポリアクリル酸ナトリウム等のポリアクリレート類(上記のアクリル系樹脂エマルションを除く);ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等のポリビニル誘導体(上記の酢酸ビニル系樹脂エマルションを除く);アルギン酸ナトリウム、アラビアガム、ゼラチン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、及びカゼイン等の天然物由来のガム類が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0081】
本発明の農薬組成物が前記結合剤を含有する場合、その含有量(結合剤が2種以上である場合にはそれらの合計含有量)としては、農薬組成物の全質量に対して、0.05~20質量%であることが好ましく、0.1~10質量%であることがより好ましい。
【0082】
〔増量剤〕
前記増量剤としては、クレー、タルク、ベントナイト(上記の有機変性ベントナイトを除く)、カオリン(焼成カオリン、含水カオリン等;上記の表面処理カオリンを除く)、ゼオライト、酸性白土、珪藻土、バーミキュライト、パーライト、軽石等の天然鉱物質やその焼成品;炭酸カルシウム、塩化カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム等の無機塩類;木粉、トウモロコシ殻軸等の植物由来物質;尿素、ホワイトカーボン、二酸化チタン等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0083】
本発明の農薬組成物が前記増量剤を含有する場合、その含有量(増量剤が2種以上である場合にはそれらの合計含有量)としては、農薬組成物の全質量に対して、2~90質量%であることが好ましく、5~85質量%であることがより好ましく、5~80質量%であることがさらに好ましい。
【0084】
〔防黴剤、着色剤、安定化剤〕
前記防黴剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラヒドロキシ安息香酸エステル、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0085】
前記着色剤としては、例えば、青色1号や赤色2号等のタール色素;カラメル色素等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0086】
前記安定化剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線防止剤、乾燥剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0087】
(農薬粒剤)
本発明の農薬組成物の態様としては、粉剤(DL粉剤、FD剤を包含する)、粉粒剤、粒剤、水和剤(フロアブル剤、顆粒水和剤を包含する)、水溶剤(顆粒水溶剤を包含する)、乳剤(乳濁剤、サスポエマルション剤を包含する)、液剤、油剤、エアゾール、燻煙剤、マイクロカプセル剤等が挙げられるが、優れた徐放性を奏する観点からは、粒剤(本明細書中、場合により「農薬粒剤」ともいう)であることが好ましい。
【0088】
前記粒剤とは、一般に最大粒子径が0.03~100mmのもの(本発明において好ましくは0.06~10mm、0.1~2.0mm、又は0.3~1.7mm)を示し、本発明では、錠剤や粒も粒剤に包含する。前記粒剤の形状としては特に制限されず、円柱状、ペレット状、タブレット状等が挙げられる。前記粒剤としては、これを水溶性フィルム等内に包装したパック状の形態であってもよい。なお、前記最大粒子径とは、前記粒剤を平面へ投影した場合の円の直径であり、投影が円形ではない場合(粒子が平板状、板状等、棒状、多角状等の形状である場合)には、その最小包含円の直径のことをいう。
【0089】
(徐放性)
本発明によれば、農薬有効成分の水への初期の急激な溶出を十分に抑制することができる農薬組成物、すなわち、徐放性農薬組成物が提供される。本発明において、「徐放性」とは、農薬組成物(好ましくは前記粒剤)を水に投入したときに、その水中への時間当たりの農薬有効成分の溶出量が少ないことをいい、例えば、25~40℃の脱イオン水100mLを入れた試験容器に、農薬組成物500mgを投入して1~3時間経過後、前記試験容器内の溶液について高速液体クロマトグラフィーによって測定される農薬有効成分の量(溶出量)又は濃度(溶出濃度)で評価することができるが、その値は農薬有効成分の種類に応じて異なる。
【0090】
(適用方法)
本発明の農薬組成物は、特に制限されず、含有する農薬有効成分の種類に応じて、当該農薬有効成分が有効量(農薬有効成分の種類、適用目的、適用方法等によって調整される)となるように、適宜対象に適用することができる。例えば、本発明の農薬組成物(好ましくは粒剤)を、作物を栽培する田面水中、畑、培養担体(水耕栽培、砂耕、NFT(Nutrient Film Technique)、ロックウール耕等の養液;人工培土、育苗用人工マット等の固形培地等)にそのまま均一散布することができる。また、本発明の農薬組成物(好ましくは粒剤)は、植穴処理剤や箱処理剤としても使用することができる。
【0091】
本発明の農薬組成物は徐放性に優れ、作物に対する薬害を十分に抑制することができるため、適用可能な作物としても特に限定されるものではないが、例えば、穀類、豆類、砂糖製造用緑草類、野菜類、果樹類等の有用植物が挙げられる。また例えば、農薬有効成分の水への急激な溶出の抑制が特に要求される観点からは、水稲を含むイネ科の作物が挙げられる。
【0092】
<農薬組成物の製造方法>
本発明の農薬組成物の製造方法としては特に制限されず、例えば、前記樹脂エマルション、前記表面処理カオリン、前記有機変性ベントナイトと前記油類との組み合わせ、の3種からなる群から選択される2種以上と、前記農薬有効成分と、必要に応じて前記補助剤及び/又は溶媒(例えば水)と、を混合し、農薬の製剤製造方法として従来公知の方法又はそれに準じた方法によって得ることができる。
【0093】
これらの中でも、本発明の農薬組成物が粒剤(農薬粒剤)である場合、かかる農薬粒剤の製造方法としては、前記樹脂エマルション、前記表面処理カオリン、前記有機変性ベントナイトと前記油類との組み合わせ、の3種からなる群から選択される2種以上と、前記農薬有効成分と、必要に応じて前記補助剤及び/又は溶媒(例えば水)と、を混合して造粒する工程を含むことが好ましい。
【0094】
前記混合方法及び造粒方法としては、特に制限されず、農薬の製剤製造方法として従来公知の方法又はそれに準じた方法を適宜採用することができ、例えば、押出造粒法、転動造粒法、転動流動造粒法、流動層造粒法、攪拌混合造粒法、圧縮造粒法、及び打錠法を挙げることができる。例えば、円柱状の粒剤を製造する場合には、押出造粒法が好ましく、また、球状の粒剤を製造する場合には、転動造粒法及び撹拌混合造粒法が好ましい。
【0095】
押出造粒法の場合には、例えば、先ず、前記樹脂エマルション、前記表面処理カオリン、前記有機変性ベントナイトと前記油類との組み合わせ、の3種からなる群から選択される2種以上と、前記農薬有効成分と、必要に応じて前記補助剤と、を高速攪拌混合機やリボン型ミキサー等を用いて均一に混合して混合物を得る。前記各成分としては、必要に応じて事前に粉砕処理を施したものを用いてもよい。また、前記樹脂エマルションを用いる場合には、上記の樹脂エマルション液及び樹脂エマルション粉末のいずれを用いてもよいが、より製造性に優れる観点からは、前記樹脂エマルション粉末を用いることが好ましい。
【0096】
次いで、得られた混合物に、水等の溶媒(溶媒量(溶媒の質量/(混合物の質量+溶媒の質量)×100(%))としては、農薬有効成分の種類にもよるが、例えば、7.5~17.5%、好ましくは8.5~16.5%等の広い範囲から採用することができる)を添加し、双腕ニーダーやリボン型ミキサー等を用いてさらに混合(練合)して練合物を得る。次いで、得られた練合物をバスケット型造粒機やスクリュー式造粒機等の押出造粒機を用いて造粒する。造粒時の押出し穴径(スクリーン径)としては、特に制限されないが、通常、例えば、0.03~100mm(好ましくは0.3~10mm、より好ましくは0.5~5mm)の範囲である。本発明の製造方法によれば、前記溶媒量に大きく制限されることなく高い歩留まり率を達成することができるため、容易に本発明の農薬粒剤を高効率で得ることができる。
【0097】
次いで、得られた造粒物を、必要に応じてマルメライザー等で整粒した後、流動層乾燥機やベッド式乾燥機等を用いて乾燥して前記溶媒を除去し、必要に応じて篩別等することにより、本発明の農薬粒剤を得ることができる。
【0098】
また、本発明の農薬粒剤の製造方法としては、前記樹脂エマルション、前記表面処理カオリン、前記有機変性ベントナイトと前記油類との組み合わせ、の3種からなる群から選択される2種以上と、必要に応じて前記補助剤及び/又は溶媒(例えば水)と、を混合して造粒した後、得られた造粒物に、前記農薬有効成分を含有させる方法であってもよい。
【0099】
前記造粒物を得る方法(造粒工程)としては、前記農薬有効成分を用いないこと以外は上述のとおりである。また、前記造粒物に前記農薬有効成分を含有させる方法としては、例えば、前記造粒物に前記農薬有効成分(例えば、前記農薬有効成分の溶媒(例えば有機溶媒)液)を含浸させる方法やスプレー等で吹き付けた後、必要に応じて前記農薬有効成分の溶媒を乾燥除去する方法などが挙げられる。
【実施例0100】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例において、シクロピリモレートの水溶解度は、環境省のホームページ(https://www.env.go.jp/water/dojo/noyaku/odaku_kijun/kijun.html)にて公開されている評価書に水溶解度として開示されているものであり、それ以外の各農薬有効成分の水溶解度は、独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)のホームページ(http://www.acis.famic.go.jp/syouroku/index.htm)にて公開されている農薬抄録において、同農薬有効成分の水溶解度として開示されているものである。
【0101】
(実施例1)
先ず、シクロピリモレート原体(水溶解度(20℃):11.9mg/L、三井化学アグロ株式会社製)3.00質量部、樹脂エマルション(アクリル系樹脂エマルション(粉末)、モビニールLDM7400P(Mowinyl-Powder LDM7400P、以下同じ)、ジャパンコーティングレンジ社製)4.00質量部、表面処理カオリン(ビニルシラン表面処理焼成カオリン、Translink37、BASF社製)10.00質量部、有機変性ベントナイト(第4級アンモニウム化合物表面処理ベントナイト、エスベンW、株式会社ホージュン製)1.50質量部、油類(炭化水素系オイル、オレイン酸メチル、富士フィルム和光純薬工業株式会社製)2.50質量部、界面活性剤(ジオクチルスルホサクシネート:ニューカルゲンEX-70、竹本油脂株式会社製)0.30質量部、結合剤(ポリビニルアルコール:ゴーセノールGH-20S、三菱ケミカル株式会社製)1.00質量部、及び増量剤(クレー、昭和クレー70T、昭和KDE株式会社製)77.70質量部を、混合機(ファイバーミキサ、パナソニック株式会社製)で混合して混合物を得た。得られた混合物に適当量の水を加え、縦型ニーダー(ACM08LVT-B型、株式会社愛工舎製作所製)で練合した。得られた練合物を、直径1.0mmのスクリーンを装着したマルチグラン(MG-55型、株式会社ダルトン製)を用いて造粒し、60℃で2時間乾燥して水を除去し、農薬組成物(粒剤)を得た。下記の表1に得られた農薬組成物の組成(質量部)を示す。
【0102】
(実施例2~4、比較例1~3)
農薬組成物の組成を下記の表1に示す組成としたこと以外は実施例1と同様にして、各農薬組成物(粒剤)を得た。
【0103】
【表1】
【0104】
(溶出試験)
先ず、試験容器(100mL容)に脱イオン水100mLを入れ、恒温槽内に静置し、水温を40℃とした。次いで、実施例及び比較例で得られた各農薬組成物500mgを前記試験容器に投入した。投入から3時間経過後、試験容器内の溶液を均一になるように穏やかに振盪した後、約1mLを採取し、孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過した。ろ液中の農薬有効成分(シクロピリモレート)の濃度をそれぞれ高速液体クロマトグラフィーにより測定し、前記3時間後の前記試験容器内の各農薬有効成分の濃度(溶出濃度(ppm))を算出した。結果を下記の表2に示す。
【0105】
【表2】
【0106】
表2に示したように、溶出試験の結果、本発明の農薬組成物(例えば、実施例1~4)においては、農薬有効成分の溶出濃度がいずれも十分に低く、優れた徐放性を有することが確認された。他方、本発明に係る樹脂エマルション、表面処理カオリン、有機変性ベントナイト、及び油類をいずれも含まない農薬組成物(例えば比較例1)や、少なくとも本発明に係る樹脂エマルション、表面処理カオリン、及び有機変性ベントナイトと油類との組み合わせのうちの2種以上を含まない農薬組成物(例えば、比較例2~3)では、溶出濃度において本発明の農薬組成物よりも劣ることが確認された。
【0107】
(実施例5)
シクロピリモレート原体に代えてシメコナゾール原体(水溶解度(20℃):57.5mg/L、三井化学アグロ株式会社製)を用い、有機変性ベントナイトとしてクニミネ工業株式会社製のクニビス110(第4級アンモニウム化合物表面処理ベントナイト)を、油類として富士フィルム和光純薬工業株式会社製のナタネ油(植物性油脂)を、界面活性剤として花王株式会社製のエマール10PT(ラウリル硫酸ナトリウム)を、結合剤として株式会社クラレ社製のクラレポバール44-88S(ポリビニルアルコール)を、それぞれ用い、各含有量を下記の表3に示す組成(質量部)としたこと以外は実施例1と同様にして、農薬組成物(粒剤)を得た。下記の表3に得られた農薬組成物の組成(質量部)を示す。
【0108】
(実施例6~7、比較例4~5)
農薬組成物の組成を下記の表3に示す組成としたこと以外は実施例5と同様にして、各農薬組成物(粒剤)を得た。
【0109】
【表3】
【0110】
(溶出試験)
先ず、試験容器(100mL容)に脱イオン水100mLを入れ、恒温槽内に静置し、水温を40℃とした。次いで、実施例及び比較例で得られた各農薬組成物500mgを前記試験容器に投入した。投入から1時間経過後、試験容器内の溶液を均一になるように穏やかに振盪した後、約1mLを採取し、孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過した。ろ液中の農薬有効成分(シメコナゾール)の濃度をそれぞれ液体クロマトグラフィーにより測定し、前記1時間後の前記試験容器内の各農薬有効成分の濃度(溶出濃度(ppm))を算出した。結果を下記の表4に示す。
【0111】
【表4】
【0112】
表4に示したように、溶出試験の結果、本発明の農薬組成物(例えば、実施例5~7)においては、農薬有効成分の溶出濃度がいずれも十分に低く、優れた徐放性を有することが確認された。他方、本発明に係る樹脂エマルション、表面処理カオリン、有機変性ベントナイト、及び油類をいずれも含まない農薬組成物(例えば比較例4)や、少なくとも本発明に係る樹脂エマルション、表面処理カオリン、及び有機変性ベントナイトと油類との組み合わせのうちの2種以上を含まない農薬組成物(例えば比較例5)では、溶出濃度において本発明の農薬組成物よりも劣ることが確認された。
【0113】
(実施例8)
シクロピリモレート原体に代えて、トルプロカルブ85%プレミックス(トルプロカルブ水溶解度(20℃):41.2mg/L、純度85.0%、三井化学アグロ株式会社製)を6.71質量部(トルプロカルブ量:5.70質量部)用い、樹脂エマルションとしてCelanese社製のELOTEX FX7000(アクリル系樹脂エマルション(粉末))を、表面処理カオリンとしてBASF社製のTranslink445(アミノシラン表面処理焼成カオリン)を、油類として三光化学工業株式会社製の流動パラフィンNo.260-S(炭化水素系オイル)を、界面活性剤として花王株式会社製のエマール10PT(ラウリル硫酸ナトリウム)を、結合剤として株式会社クラレ社製のクラレポバール44-88S(ポリビニルアルコール)を、それぞれ用い、各含有量を下記の表5に示す組成(質量部)としたこと以外は実施例1と同様にして農薬組成物(粒剤)を得た。下記の表5に得られた農薬組成物の組成(質量部)を示す。
【0114】
(実施例9~10、比較例6)
農薬組成物の組成を下記の表5に示す組成としたこと以外は実施例8と同様にして、各農薬組成物(粒剤)を得た。
【0115】
【表5】
【0116】
(溶出試験)
先ず、試験容器(100mL容)に脱イオン水100mLを入れ、恒温槽内に静置し、水温を40℃とした。次いで、実施例及び比較例で得られた各農薬組成物500mgを前記試験容器に投入した。投入から1時間経過後、試験容器内の溶液を均一になるように穏やかに振盪した後、約1mLを採取し、孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過した。ろ液中の農薬有効成分(トルプロカルブ)の濃度をそれぞれ液体クロマトグラフィーにより測定し、前記1時間後の前記試験容器内の各農薬有効成分の濃度(溶出濃度(ppm))を算出した。結果を下記の表6に示す。
【0117】
【表6】
【0118】
表6に示したように、溶出試験の結果、本発明の農薬組成物(例えば、実施例8~10)においては、農薬有効成分の溶出濃度がいずれも十分に低く、優れた徐放性を有することが確認された。他方、本発明に係る樹脂エマルション、表面処理カオリン、有機変性ベントナイト、及び油類をいずれも含まない農薬組成物(例えば比較例6)では溶出濃度において本発明の農薬組成物よりも劣ることが確認された。
【0119】
(実施例11)
シクロピリモレート原体に代えて、ジノテフラン85%プレミックス(ジノテフラン水溶解度(20℃):40g/L、純度85.0%、三井化学アグロ株式会社製)2.35質量部(ジノテフラン量:2.0質量部)を用い、表面処理カオリンとしてKaMin社製のNucap290W(メルカプトシラン表面処理焼成カオリン)を、有機変性ベントナイトとしてクニミネ工業株式会社製のクニビス127(第4級アンモニウム化合物表面処理ベントナイト)を、油類として三光化学工業株式会社製の流動パラフィンNo.260-S(炭化水素系オイル)を、界面活性剤として花王株式会社製のエマール10PT(ラウリル硫酸ナトリウム)を、結合剤として株式会社クラレ社製のクラレポバール44-88S(ポリビニルアルコール)を、それぞれ用い、各含有量を下記の表7に示す組成(質量部)としたこと以外は実施例1と同様にして農薬組成物(粒剤)を得た。下記の表7に得られた農薬組成物の組成(質量部)を示す。
【0120】
(実施例12、比較例7~10)
農薬組成物の組成を下記の表7に示す組成としたこと以外は実施例11と同様にして、各農薬組成物(粒剤)を得た。
【0121】
【表7】
【0122】
(溶出試験)
先ず、試験容器(100mL容)に脱イオン水100mLを入れ、恒温槽内に静置し、水温を25℃とした。次いで、実施例及び比較例で得られた各農薬組成物500mgを前記試験容器に投入した。投入から1時間経過後、試験容器内の溶液を均一になるように穏やかに振盪した後、約1mLを採取し、孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過した。ろ液中の農薬有効成分(ジノテフラン)の濃度をそれぞれ液体クロマトグラフィーにより測定し、前記1時間後の前記試験容器内の各農薬有効成分の濃度(溶出濃度(ppm))を算出した。結果を下記の表8に示す。
【0123】
【表8】
【0124】
表8に示したように、溶出試験の結果、本発明の農薬組成物(例えば、実施例11~12)においては、農薬有効成分の溶出濃度がいずれも十分に低く、優れた徐放性を有することが確認された。他方、本発明に係る樹脂エマルション、表面処理カオリン、有機変性ベントナイト、及び油類をいずれも含まない農薬組成物(例えば比較例7)や、少なくとも本発明に係る樹脂エマルション、表面処理カオリン、及び有機変性ベントナイトと油類との組み合わせのうちの2種以上を含まない農薬組成物(例えば、比較例8~10)では、溶出濃度において本発明の農薬組成物よりも劣ることが確認された。
【0125】
(実施例13)
先ず、シメコナゾール原体(水溶解度(20℃):57.5mg/L、三井化学アグロ株式会社製)4.50質量部、樹脂エマルション(アクリル系樹脂エマルション(粉末)、モビニールLDM7400P、ジャパンコーティングレジン株式会社製)10.00質量部、表面処理カオリン(メルカプトシラン表面処理カオリン、Nucap290W、KaMin社製)20.0質量部、有機変性ベントナイト(第4級アンモニウム化合物表面処理ベントナイト、クニビス127、クニミネ工業株式会社製)3.00質量部、油類(炭化水素系オイル、流動パラフィンNo.260-S、三光化学工業株式会社製)5.00質量部、界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム(アルキルサルフェート):エマール10PT、花王株式会社製)0.30質量部、結合剤(ポリビニルアルコール:クラレポバール44-88S、株式会社クラレ製)0.50質量部、及び増量剤(クレー、昭和クレー70T、昭和KDE株式会社製)56.70質量部を、混合機(ファイバーミキサ、パナソニック社製)で混合して混合物を得た。得られた混合物に12%(水分量:水の質量/(混合物の質量+水の質量)×100(%))となるように水を加え、縦型ニーダー(ACM08LVT-B型、株式会社愛工舎製作所製)で練合した。得られた練合物を、直径1.0mmのスクリーンを装着したマルチグラン(MG-55型、株式会社ダルトン製)を用いて造粒し、60℃で2時間乾燥して水を除去し、農薬組成物(粒剤)を得た。
【0126】
下記の表9に得られた農薬組成物の組成(質量部)を示す。また、前記水分量を9%又は15%としたこと以外は同様にして、各水分量で製造した農薬組成物(粒剤)を得た(得られた農薬組成物の組成は、水分量を12%で製造した農薬組成物の組成と同じである)。
【0127】
(比較例11~15)
農薬組成物の組成を下記の表9に示す組成とし、また、前記水分量を下記の表10に示す量としたこと以外は実施例13と同様にして、各農薬組成物(粒剤)を得た。なお、表9中、ベントナイトとしては、クニミネ工業株式会社製のクニゲルV1を用いた。
【0128】
【表9】
【0129】
(製造性試験)
実施例及び比較例で得られた各農薬組成物を、目開き1.7mm、0.3mmの篩を用いてふるい分けし、粒子径が1.7mm以下、かつ、0.3mmよりも大きい粒の合計重量の、全農薬組成物重量に対する割合(重量分率(%))を求めた。結果を下記の表10に示す。なお、表10中、「-」は、該当する農薬組成物は調製しなかったことを示す。本試験では、前記水分量が至適量よりも少ない場合には、粒子径が0.3mm未満の粒の重量分率が増加し、至適量よりもさらに極端に少ない場合には、造粒されずに粉状のまま排出される割合が増加する傾向にある。他方、前記水分量が至適量よりも多い場合には、粒子径が1.7mmを超える粒の重量分率が増加し、至適量よりもさらに極端に多い場合には、造粒時に造粒物同士の結合がおきて団粒化したり、練合時にペースト化したりして粒状とならない傾向にある。
【0130】
【表10】
【0131】
表10に示したように、本発明の農薬組成物(例えば実施例13)では、少なくとも9~15%の広い範囲の水分量で、97%以上の重量分率(歩留まり)が得られた。つまり、水分量の至適量の範囲が広いため、容易に高効率で粒剤を得ることができ、製造性に優れることが確認された。他方、本発明に係る構成以外の農薬組成物(例えば、比較例11~15)では、水分量の至適量の範囲(例えば、前記重量分率が95%以上となる範囲)が狭く、製造時に厳密な制御を要したり、至適量外の水分量で造粒することによる造粒物の粉化(*印)や造粒物同士の結合が起こったりする(×印)など、製造が困難となることが確認された。
【0132】
上記に示したように、本発明の農薬組成物では溶出濃度が十分に低く、農薬有効成分の種類にかかわらず優れた徐放性が発揮されることが確認され、また、水分量の厳密な調整を必要とせず製造も容易であることが確認された。他方、本発明に係る樹脂エマルション、表面処理カオリン、及び有機変性ベントナイトと油類との組み合わせのうちの2種以上を含まない農薬組成物では、農薬有効成分の種類にかかわらず溶出濃度が高く、徐放性において本発明の農薬組成物よりも劣ることが確認され、さらに、水分量の厳密な調整が必要で製造も困難であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明によれば、農薬有効成分の水への初期の急激な溶出が十分に抑制され、徐放性に優れた徐放性農薬組成物、及び農薬有効成分の水への初期の急激な溶出が十分に抑制され、徐放性に優れた徐放性農薬粒剤を容易に高効率で得ることができる製造方法を提供することが可能となる。