(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175680
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】電位図を分析する方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/361 20210101AFI20241211BHJP
A61B 5/287 20210101ALI20241211BHJP
【FI】
A61B5/361
A61B5/287
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024091307
(22)【出願日】2024-06-05
(31)【優先権主張番号】23177752
(32)【優先日】2023-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519129126
【氏名又は名称】キャスビジョン アーペーエス
【氏名又は名称原語表記】CathVision ApS
【住所又は居所原語表記】Titangade 11, 2200 Koebenhavn N, Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ルーネ パーマン
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127GG10
4C127GG13
4C127GG16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】制御システムを介して電位図を分析する方法に関し、最適化が得られるよう公知の方法を改善する。
【解決手段】電位図は人体に挿入されたカテーテルを介して記録されており、制御システムにより、第1チャネル(K_a)において活性化候補を検出し、第1チャネル(K_a)の時間の次元に沿って活性化候補の複数の異なる潜在的シーケンスを定めることができ、制御システムにより、1つまたは複数の独立したコスト成分を有するコストを潜在的シーケンスに割り当て、制御システムにより、第1チャネル(K_a)の潜在的シーケンスから、優位な活性化のシーケンスを選択し、制御システムにより、潜在的シーケンスのコストに基づいて、最適化判定基準を満たす優位な活性化のシーケンスを選択する。制御システムにより、活性化候補にコスト成分を割り当て、潜在的シーケンスのコストが、それぞれの潜在的シーケンスを定める活性化候補のコスト成分を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御システムを介して、電位図(1)を分析する方法であって、前記電位図(1)は、人体に挿入されたカテーテルを介して記録されており、前記カテーテルは、複数の電極を有し、前記電位図(1)の少なくとも1つのチャネル(K)は、前記電極により、好ましくは前記電極の間で記録されており、
前記制御システムにより、第1チャネル(K_a)において活性化候補(3)を検出し、
前記第1チャネル(K_a)の時間の次元(5)に沿って、活性化候補(3)の複数の異なる潜在的シーケンス(4)を定めることができ、前記制御システムにより、1つまたは複数の独立したコスト成分を有するコストを前記潜在的シーケンス(4)に割り当て、
前記制御システムにより、前記第1チャネル(K_a)の前記潜在的シーケンス(4)から、優位な活性化のシーケンス(2)を選択し、前記制御システムにより、前記潜在的シーケンス(4)の前記コストに基づいて、最適化判定基準を満たす前記優位な活性化のシーケンス(2)を選択する、方法において、
前記制御システムにより、活性化候補(3)にコスト成分を割り当て、前記潜在的シーケンス(4)の前記コストが、それぞれの前記潜在的シーケンス(4)を定める前記活性化候補(3)の前記コスト成分を有する、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記制御システムにより、活性化候補(3)間のジャンプ(6)にコスト成分を割り当て、前記潜在的シーケンス(4)の前記コストは、それぞれの前記潜在的シーケンス(4)を定める活性化候補(3)間の前記ジャンプ(6)の前記コスト成分を有し、好ましくは、ジャンプ(6)に割り当てられた前記コスト成分は、前記ジャンプ(6)長さ間の差分と、平均ジャンプ長(CL)の推定値とに依存する、ことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1チャネル(K_a)の前記潜在的シーケンス(4)の前記コスト、特に活性化候補(3)に割り当てられた前記コスト成分は、第2チャネル(K_b)から導出したデータに依存するコスト成分を有し、好ましくは、前記第1チャネル(K_a)および前記第2チャネル(K_b)は、同じ前記カテーテルおよび/または双極チャネル(K)および/または心房チャネル(L)の電極からのチャネル(K)であり、かつ/または前記第1チャネル(K_a)および前記第2チャネル(K_b)のどちらも冠静脈洞チャネル(M)ではない、ことを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
第2チャネル(K_b)から導出したデータに依存する前記コスト成分は、時間非依存のコスト成分および/または時間依存のコスト成分を有し、
好ましくは、前記時間非依存のコスト成分は、前記第1チャネル(K_a)のジャンプ長(CL)間の差分と、前記第2チャネル(K_b)の平均ジャンプ長(CL)の推定値とに依存し、かつ/または、
前記時間依存のコスト成分が、前記第2チャネル(K_b)の活性化候補(3)のタイミングと比較して、前記第1チャネル(K_a)の活性化候補(3)のタイミングに依存する、ことを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記第2チャネル(K_b)が、前記第1チャネル(K_a)の隣接チャネル(K)であり、好ましくは、前記制御システムは、どのチャネル(K)が隣接チャネル(K)であるかを導出するために前記電極の順序を使用する、ことを特徴とする、請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
前記第1チャネル(K_a)は、双極チャネル(K)であり、前記第1チャネル(K_a)の前記潜在的シーケンス(4)の前記コスト、特に活性化候補(3)に割り当てられた前記コスト成分が、前記双極チャネル(K)の前記電極の1つまた2つの単極チャネル(K)から導出したデータに、特に前記電極の極性に関するデータに依存するコスト成分を有する、ことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記第1チャネル(K_a)の前記潜在的シーケンス(4)の前記コスト、特に、活性化候補(3)に割り当てられた前記コスト成分は、冠静脈洞チャネル(M)および/または表面ECG電極から導出したデータに依存するコスト成分に依存し、特に前記第1チャネル(K_a)における活性化候補(3)間の時間距離と、前記冠静脈洞チャネル(M)および/または前記表面ECG電極において検出した心室拍動とに関するデータに依存する、ことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
活性化候補(3)に割り当てられた前記コスト成分は、それぞれの前記活性化候補(3)の形態に依存するコスト成分を有する、ことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記潜在的シーケンス(4)の前記コストは、前記第1チャネル(K_a)の活性化候補(3)間の、特に形態的な類似性の尺度に依存するコスト成分を有する、ことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記第1チャネル(K_a)の前記潜在的シーケンス(4)の前記コスト、特に活性化候補(3)および/またはジャンプ(6)に割り当てられた前記コスト成分は、前記潜在的シーケンス(4)に依存しない静的コスト成分および/または前記潜在的シーケンス(4)に依存する動的コスト成分を有し、好ましくは、ジャンプ(6)に割り当てられた前記動的コスト成分は、それぞれの前記潜在的シーケンス(4)のジャンプ長(CL)の類似性の尺度に依存し、かつ/または活性化候補(3)に割り当てられた前記動的コスト成分は、それぞれの前記潜在的シーケンス(4)の活性化候補(3)の類似性の尺度に依存する、ことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記制御システムにより、チャネル(K)を繰り返して分析し、チャネル(K)の前記分析は、前に分析したチャネル(K)の前記分析に依存し、好ましくは、チャネル(K)の前記潜在的シーケンス(4)の前記コスト成分は、前に分析したチャネル(K)の分析に依存し、好ましくは、少なくとも時々、特に前記分析の精度の尺度が満たされていない場合に2回、少なくとも1つのチャネル(K)を分析し、第2の前記分析は、第1の前記分析の後に分析したチャネル(K)の分析に依存する、ことを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記時間依存のコスト成分が、前に分析した第2チャネル(K_b)の選択したシーケンス(2)の活性化候補(3)のタイミングと比較して、前記第1チャネル(K_a)の活性化候補(3)の前記タイミングに依存する、ことを特徴とする、請求項4および請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記制御システムにより、周期的に更新チャネル(K)を受信し、前記更新チャネル(K)を分析し、更新チャネル(K)が、前に分析した部分と新たな部分とを有し、前記前に分析した部分における活性化候補(3)の前記選択が、前記更新チャネル(K)の前記分析に伴って時として変化し、好ましくは、前記更新チャネル(K)の前記分析における前記潜在的シーケンス(4)の前記コスト成分は、前記前に分析した部分における活性化候補(3)の前記選択に依存するコスト成分を有する、ことを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項記載の方法を実施するように構成された制御システムであって、前記制御システムは、前記電位図(1)を受信および/または測定するように構成されている、制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の一般部記載の、電位図を分析する方法と、提案する方法を実施するように構成された、請求項14記載の制御システムとに関する。
【0002】
本方法は特に、心房細動および心房粗動に関する。電気的には、心房細動は心房の筋細胞の無秩序な活性化である。心房細動の間、心房は、心臓の機能に最小限にしか寄与しない。したがって、心房細動は心臓の排出量を低下させるが、切迫した危険性はない。しかしながら、慢性化すると、心房細動は、罹病率および死亡率の上昇と相関する。
【0003】
心房細動の間、競合する活性化リズムが心房に生じることがある。これらのリズムの一部は、安定しているが、別のリズムの一部は急速に出現して消失することがある。心房細動の重症度を査定し、治療選択肢を評価する様々な方法には、リズムを表すシーケンスを検出することによって片側または両側の心房のリズムを検出することが含まれる。しかしながら、心房細動がより無秩序かつ複雑である、心房における特定の領域には、より多くの競合するリズムが存在することがある。したがって、心房に配置された電極の測定値には、局所的な細胞脱分極と、細胞脱分極に基づかない電気伝導を介して伝導される電流との様々なリズムが含まれることになる。局所的な活性化を検出し、1つまたは複数の優位なリズムを導出することにより、例えば3Dマッピング手順の間に、心房細動をより良好に理解することができる。しかしながら、どの活性化が局所的であり、またどのリズムがこれらの活性化につながるかを検出することは、特に心房細動の間は困難である。
【0004】
本発明の基礎を成す公知の従来技術(国際公開第2015/149153号)は、請求項1の一般部記載の方法に関する。
【0005】
国際公開第2015/149153号により、第1計算ステップにおいて活性化候補を識別し、平均活性化間隔(以下では「ジャンプ長」)の全体推定値を計算する、アノテーション方法が提案されている。次いで、第2計算ステップにおいて、活性化候補のシーケンスを識別し、これにより、個々の活性化間隔と、全体活性化間隔の推定値と間の全体的な差分が、活性化候補によって最小化されるようにする。この従来技術は、活性化候補間のジャンプにコストを割り当てるコスト関数を用いてこれを実現している。特に、活性化候補の間の考えられるあらゆるジャンプにコストが割り当てられ、最小コストを有する時間を介して経路が識別される。この全体的な最小化は、計算グラフ理論から公知の最短経路探索のための計算法によって達成可能である。適切な最短経路探索の一例は、Djikstraアルゴリズムである。
【0006】
公知のこのアルゴリズムにより、電位図、ここでは心内電位図の1つのチャネルにおける優位なリズムをアノテートするための有効な基礎が提供される。それにもかかわらず、局所的なリズムの検出を改善するために、このアルゴリズムを改善する余地が依然としてある。
【0007】
本発明は、上で挙げた難題に関してさらなる最適化が得られるように公知の方法を改善するという課題に基づいている。
【0008】
上述の課題は、請求項1の特徴部の特徴によって解決される。
【0009】
本発明の主たる実現は、どの活性化候補により、生理学的に有効なシーケンスが形成されるかを決定するために、別の情報を使用することができることである。この別の情報は、活性化候補それ自体の特性の形態で得られる。ここでは、活性化候補のコストにこれらの特性を変換することが提案される。例示的に、求めるシーケンスを見つけるためにコスト関数を使用すると、時間による経路はこのとき、活性化候補間のジャンプについてのコストの代わりに、またはこれに加えて、シーケンスの一部であるそれぞれの活性化候補のコストに依存する。
【0010】
このようなコストに使用可能ないくつかの特性が特定されている。例えば、リズムの活性化候補の形態は、異なるリズムの活性化候補の形態よりも高い類似性を有することがある。さらに、活性化候補の間のクロスチャネル類似性、特にそのタイミングが使用可能である。局所的な活性化は、一部のチャネルまたは全てのチャネルにおいて基本的に同時に出現することが多いファーフィールド電位よりも緩慢にチャネルを通って移動する。これと競合して、2つ以上のチャネルに出現しない、または少数のチャネルにしか出現しない局所的な活性化シーケンスは、領域的に限定された活性化シーケンスであり得るのに対し、より多くのチャネルに、またはより離隔されたチャネルに見られる局所的な活性化シーケンスは、求める優位な活性化リズムであり得る。どのリズムを求めるかという問題はまた、臨床用途にも依存する可能性があり、これもコストにコーディング可能である。
【0011】
したがって、活性化候補の特性に基づいてシーケンスを識別するために、活性化候補にコスト成分を割り当てることが提案される。
【0012】
ここでは、また好ましくは、電位図は心内電位図である。「心内」という用語は、広義に理解され、ヒトの心臓内部における、またこれのすぐ近くにおける、例えば肺静脈における、内側からの測定に関連する。電位図は択一的に、任意の別の侵襲性の手法によって記録されていてもよい。特に、心外膜測定が含まれる。
【0013】
詳細には、制御システムにより、活性化候補にコスト成分を割り当て、潜在的シーケンスのコストが、それぞれの潜在的シーケンスを定める活性化候補のコスト成分を有することが提案される。
【0014】
請求項2記載の好ましい1つの実施形態では、活性化候補間のジャンプにもコスト成分を割り当てる。これにより、周期的なシーケンスを探すのと同時に、活性化候補の特性を考慮する場合に、一貫したジャンプ長についての最適化が可能である。
【0015】
請求項3記載の好ましい1つの実施形態では、一部のコスト成分は、第2チャネルからのデータに依存する。特に、活性化候補に割り当てられたコスト成分は、これらの活性化候補と、別のチャネルからの活性化候補との間の時間的な距離に依存し得る。このようにしてコストを定めることにより、電極間の一貫性が最適化される。このような一貫性は、競合する活性化リズムが存在する状況において特に有利である。
【0016】
請求項4によると、第2チャネルに依存するコスト成分は、時間依存のコスト成分および/または時間非依存のコスト成分を有することができる。時間依存のコスト成分は、活性化候補のタイミングに依存するコスト成分であり、これにより、他の全てが等しいという状況で、活性化候補のタイムスタンプを仮に変化させると、コスト成分に影響を与えることになる。活性化候補のタイムスタンプだけを変更した場合、時間非依存のコスト成分は変更されないことになる。
【0017】
マッピングシステムを使用しない場合、制御システムは、電極と、それぞれのチャネルの相対位置に関するいかなるデータも有さないことがある。電極およびチャネルの順序を使用することにより、どの電極が物理的に互いに近いかを導出することがなお可能である(請求項5)。例えば、チャネルI~IIIを通して追跡可能であるが、チャネルIVおよびVを通して追跡できないリズムは、チャネルVIに再び出現する可能性はかなり低い。
【0018】
請求項6は、双極チャネルにおける活性化候補のコスト成分として、単極チャネルに依存するコスト成分を使用することにより、単極信号と双極信号とを合成してリズムを検出する好ましい1つの実施形態に関する。この着想は、細胞脱分極は常にマイナスであり、したがって、有利には局所的な活性化を検出するために単極電極の下方偏向をコスト成分に含めることができるという事実に基づいている。
【0019】
ファーフィールド電位を検出し、分析の結果へのそれらの影響を小さくするために、コスト成分は、冠静脈洞電極および/または表面ECG電極からのデータに依存し得る(請求項7)。冠静脈洞電極は、心臓の実際の拍動を検出して、ファーフィールド干渉である可能性の高い心拍の直後に、活性化候補のコスト成分を増大させるために使用することができる。
【0020】
請求項8記載の実施形態は、活性化候補についてのコスト成分を、活性化候補の形態に基づかせることに関する。請求項9によると、活性化候補間の、特に形態的な類似性は、例えば、ジャンプによって接続される2つの活性化候補の形態的な類似性に、活性化候補間のジャンプのコスト成分を基づかせることにより、コスト成分に含まれる。
【0021】
請求項10は、静的コスト成分および/または動的コスト成分の可能性に関する。静的コスト成分はシーケンスに依存しないのに対し、動的コスト成分はシーケンスに伴って変化する。例えば、ジャンプのコスト成分は、このシーケンスにおける別のジャンプの平均ジャンプ長に依存することがあり、これにより、あらかじめ定めた平均ジャンプ長に対するジャンプ長の類似性ではなく、シーケンスにおけるジャンプ長の全体的な類似性が最適化される。
【0022】
請求項11および12によると、チャネルは、繰り返し分析されてよく、チャネルの処理は、以前に処理されたチャネルに依存してよい。場合により、少なくとも1つのチャネルについて2回以上の繰り返しを行うことができる。
【0023】
請求項13記載の1つの実施形態では、周期的に、特にリアルタイムに分析を行い、制御システムにより、例えば1秒ごとに、チャネルを周期的に分析する。優位なリズムは変化し得るため、好ましくは、検出したシーケンスが、過去に遡り、新たな分析サイクルによって変化する可能性がある。異なる2つのリズムを検出することと、どちらが検出されるかが頻繁に変化することとの確率を下げるために、前の分析の結果がコストに含まれてよい。過去の分析をコストに含めることにより、検出されるリズム間の変化に人為的なハードルが形成される。
【0024】
同様に重要な、請求項14記載の別の1つの教示は、提案した方法を実施するように構成された制御システムに関し、この制御システムは、電位図を受け取り、かつ/または測定するように構成されている。
【0025】
提案した方法に関連して示した全ての説明は、全面的に適用可能である。
【0026】
以下では、図面について、本発明の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】コスト成分の分析を介してシーケンスを見つけることを示す図である。
【
図2】1つの実施形態にしたがい、複数のチャネルについてコスト成分を繰り返して導出することを示す図である。
【
図3】別のチャネルに依存し、時間依存でコスト成分を導出することを示す図である。
【0028】
図は、ここでは、また好ましくは心内電位図である電位
図1を分析する、提案された方法の1つの実施形態を示している。
図1には一般に、複数のノードと、ノード間のエッジとからシーケンス2を決定するために、コスト関数をどのように使用するかが示されている。
図2および
図3には心内電位
図1の例示的な部分が、かなり概略的に示されている。図示した心内電位
図1は、最上部に極めて概略的にのみ描画されている冠静脈洞チャネルMと、純粋に例示的に8つの双極心房チャネルLとを有する。対応する心内電位
図1は、マッピング手順の間に記録されたものであってよい。心内電位
図1は好ましくは、心房細動の間に記録されている。
【0029】
分析は、制御システム、例えば、汎用コンピュータ、マッピングシステム、またはプロセッサを含んでいる専用ハードウェア装置によって実行される。したがって、提案する方法は、コンピュータ実装式の方法である。したがって、本明細書に記載した任意のステップは、制御システムによって実行可能であり、制御システムはそれ相応に適合されていてよい。
【0030】
電位
図1は、人体に挿入されたカテーテルを介して記録されている。カテーテルは、複数の電極を有する。電位
図1の少なくとも1つのチャネルKは、電極により、好ましくは電極の間で記録されている。チャネルKは、カテーテルの1つの電極によって記録される単極性のものであってもよく、またはカテーテルの2つの電極間で記録される双極性のものであってもよい。
【0031】
提案する方法は一般に、電位
図1においてシーケンス2の形態で、特に手術の間に準リアルタイムにリズムを検出することに関する。制御システムは、ユーザ、特に外科医に分析の結果を表示することができる。この情報は、診断目的および/または治療計画を案出するためにユーザによって使用されてよい。
【0032】
心房に配置された電極によって常に、細胞の局所的な電気脱分極と、ファーフィールド電位またはファーフィールド干渉としても公知である、電気伝導を介して電極に到達する電位が測定される。健康な心房における正常な心臓活動の間、局所的な活性化は、心房の拍動に対応する1つのリズムを有する。心房細動の間、部位が異なれば、リズムが異なることがあり、1つの部位が競合するリズムを生じることさえもある。さらに、特定の電極のチャネルKでは、ランダムな活性化および隣接組織からの活性化が見えることになる。心房細動の複雑な複合画像をより良く理解するために、例えば、心房の電気的な活性化のマップを後で作成するために、特定のチャネルKについて、1つまたは少数のリズムにアノテートすることが望ましい。
【0033】
提案する方法の一部として、制御システムにより、第1チャネルK_aにおいて活性化候補3を検出する。「第1の」および「第2の」という用語は、限定的なものではなく、説明の理解を助けるためだけに使用される。任意のチャネルKが、第1チャネルK_aであってよく、任意の別のチャネルKが、まだ説明していない第2チャネルK_bであってよい。活性化候補3は、それぞれのチャネルKの信号の部分であって、特定の特性を備えたピークを有するか、またはそうでなければ、局所的な脱分極を表し得るものとして選択される部分である。
図2および
図3の心内電位
図1には、いくつかのこのような活性化候補3が示されている。
【0034】
活性化候補3の複数の異なる潜在的シーケンス4は、第1チャネルK_aの時間の次元5に沿って定めることができる。基本的に、全ての活性化候補3のサブグループである、少なくとも3個の、好ましくは少なくとも5個の、より好ましくは少なくとも10個の活性化候補3の任意の組み合わせが、潜在的シーケンス4を形成することができる。潜在的シーケンス4の数は1よりも大きく、活性化候補3のサブグループであるシーケンス2は、チャネルKの全ての活性化候補3を有しないことを理解すべきである。
【0035】
制御システムにより、1つまたは複数の独立したコスト成分を有するコストを潜在的シーケンス4に割り当てる。一般的に言うと、潜在的シーケンス4のコストは、潜在的シーケンス4のコスト成分、特に潜在的シーケンス4の要素のコスト成分によって構成される。例えば、時間の次元5にわたって分散された、いくつかの活性化候補3を有するシーケンス2は、活性化候補3間のジャンプ6に割り当てられたコスト成分を有することができ、それぞれのジャンプ6は、活性化候補3と、潜在的シーケンス4から選択される次の活性化候補3との間の時間距離である。ジャンプ6に割り当てられるコスト成分は、単純にジャンプ6の長さであってよい。例示的にはさらに、コストは、コスト成分の和であってよい。しかしながら、ジャンプ6の長さだけでは、有効なコスト関数にならないことに注意すべきである。というのはこの場合、コストの和は、最初の活性化候補3と、最後の活性化候補3との間の時間差になるだけだからである。
【0036】
制御システムにより、例えば、最低のコストを有する潜在的シーケンス4を選択することにより、第1チャネルK_aの潜在的シーケンス4から優位な活性化のシーケンス2を選択する。より一般的には、制御システムにより、潜在的シーケンス4のコストに基づいて、最適化判定基準を満たす優位な活性化のシーケンス2を選択する。特に、最小コストを見つけることと数学的に同等の、または類似の最適化判定基準が可能である。
【0037】
ここでは、また好ましくは、第1チャネルK_aは、双極チャネルKおよび/または心房チャネルLであり、かつ/または冠静脈洞チャネルMではない。
【0038】
提案されるのは、制御システムにより、活性化候補3にコスト成分を割り当てることである。このとき、潜在的シーケンス4のコストは、それぞれの潜在的シーケンス4を定める活性化候補3のコスト成分を有する。
図1には、シーケンス2がどのように選択され得るかの一般的な実施例が示されている。
図1には、ノードとして示された7つの活性化候補3と、ノード間のいくつかの考えられるジャンプ6とが示されている。図をよりよくわかり易くするために、全ての可能なジャンプ6を示してはいない。あらかじめ定めた長さを上回るジャンプ6および/またはあらかじめ定めた長さを下回るジャンプ6が、潜在的シーケンス4の数を減らすために選り抜かれる場合がある。活性化候補3のそれぞれは、割り当てられたコスト成分「c」を有し、添え字は、活性化候補3の番号である。選択的な付加として
図1には、ノード間のジャンプ6に割り当てられており、ジャンプ6によってどのノードからどのノードに導かれるかを示す添え字を有する「j」でマーキングされているコスト成分も示されている。例えば、実線で示した、選択されたシーケンス2は、番号1、2、4、5および7を有する活性化候補3のコスト成分と、ノード1および2,2および4,4および5,5および7の間のジャンプ6のコスト成分との和から成るコストを有することになる。
【0039】
例えば、ジャンプ6のコスト成分をその開始ノードおよび目標ノードに依存させることにより、ノードにコスト成分を割り当てる任意の数学的に同等なものを使用し、引き続いて活性化候補3にコスト成分を割り当て、これにより、ジャンプ6のコスト成分におけるノードのコスト成分を隠すことは可能であるが、なお理解されるべきであるのは、活性化候補3のコスト成分は、それらの数学的表現に関係なく、それぞれの活性化候補3に依存し、またジャンプ6に、特にジャンプ長CLに依存するコスト成分から区別することができ、ただし次ジャンプCLは、活性化候補3自体に依存しないことである。ここでは、または好ましくは、活性化候補3のコスト成分は、チャネルK内の活性化候補3のタイミングに依存せず、かつ/またはシーケンス2内の活性化候補3の位置に依存しない。
【0040】
好ましくは、チャネルK内では活性化候補3のコスト成分は時間不変である。したがって、例えば、異なる形態を有する3つの活性化候補3が、仮想的なチャネルKの0ms、100msおよび200msに配置された場合、全てのコスト成分が時間不変であれば、シーケンス2のコストは、仮に、活性化候補3のうちの2つの位置を入れ換えることによって活性化候補3の順序が変更され、他の全てが等しい場合、同じである。当然のことながら、実際の信号においてこのような入換えを実現することは困難である。
【0041】
また、本明細書で言及したコスト成分を含むコストは、ゼロではなくかつ無限ではなく、または法外に大きく、したがって実質的に無限であることにも注意されたい。このような無限のコストまたはゼロのコストは、上述のコストに加えて存在してよく、本方法の異なる反復において、コストの様々な部分は、ゼロまたは無限になることもあるが、ここで言及しかつ本明細書に関連するコストは常に、設計によって、シーケンス2のそれぞれの要素の選択に現実的につながり得るコストである。
【0042】
図2および
図3には、いくつかの活性化候補3からシーケンス2を選択するためのアルゴリズムの好ましい1つの実施形態が示されている。以下では、本発明のさらに有利な実施形態を説明するための1つの実施例として、この実施形態を使用する。
図2では、第1ステップとして、第1チャネルK_a、ここでは最上部の心房チャネルLを選択して最初に処理する(右側の最上部の矢印)。制御システムにより、第1チャネルK_aにおいて(丸で印をつけた)活性化候補3を検出し、選択的には、例えば活性化候補3の主ピークの位置に基づいて、活性化候補3それぞれに時間における位置を割り当てる。活性化候補3の検出は、公知のアルゴリズムを用いて、例えば、ピーク検出、形態検出または別の手法に基づいて行うことができる。
図2においてさらに下に移動すると、制御システムにより、活性化候補3にコスト成分cが割り当てられる。
【0043】
1つの実施形態によると、制御システムにより、活性化候補3間のジャンプ6にコスト成分を割り当てることが提案される。この実施形態も、
図2においてコスト成分jによって見ることができる。このとき、潜在的シーケンス4のコストは、それぞれの潜在的シーケンス4を定める活性化候補3間のジャンプ6のコスト成分を有する。ジャンプ6に割り当てられた成分は、ジャンプ6の長さの差分と、平均ジャンプ長CLの推定値(サイクル長とも称される)とに依存し得る。平均ジャンプ長CLは、予想される優位なリズムについての予想されるジャンプ長CLであってよい。平均ジャンプ長CLを推定する公知の手法には、優位周波数の計算と、例えばフーリエ変換を使用する別の方法とが含まれる。
図2には、第1チャネルK_aについての平均ジャンプ長CLが、全ての心房チャネルLから推定可能であることが示されている。チャネルKについての平均ジャンプ長CLは、第2チャネルK_bについて説明するように、同じチャネルKから、または複数のチャネルKから、または別の1つのチャネルKから推定可能であるのが一般的である。
【0044】
1つの実施形態では、シーケンス2の開始ゾーンおよび/または終了ゾーンを定めて、それぞれのゾーン内の最初および/または最後の活性化候補3を有するシーケンス2だけを考慮することにより、潜在的シーケンス4が制限される。
【0045】
特定の情報によって既に、潜在的シーケンス4からシーケンス2を選択することが可能である。全てのチャネルKをこのように処理し、したがって電位
図1を分析することも可能である。
【0046】
しかしながら、1つの実施形態によると、第1チャネルK_aの潜在的シーケンス4のコスト、特に活性化候補3に割り当てられたコスト成分は、第2チャネルK_bから導出したデータに依存するコスト成分を含むことが提案される。この実施形態では、上で示した実施例とは相容れないが、
図2において最初に分析したチャネルKは第2チャネルK_bであり、別のチャネルKのいずれかが第1チャネルK_aである。択一的に、以下に説明するように、最上部のチャネルKを2回分析することができ、この場合、どちらのチャネルKを第1チャネルK_aとして定めるかは関係ない。
図2には、最上部のチャネルK(ここでは第2チャネルK_b)を分析した後、平均ジャンプ長CL推定値が、第2チャネルK_bの選択したシーケンス2から導出可能であることが示されている。この推定値は次いで、別のチャネルKからのデータ、ここでは平均ジャンプ長CL推定値を使用することにより、第1チャネルK_aにおけるシーケンス2を見つけるために使用される。
【0047】
図3には、第2チャネルK_b(前に分析した、番号Iを有するチャネルK)に依存して、第1チャネルK_aの活性化候補3にコスト成分を割り当てることにより、第1チャネルK_a、ここでは番号IIを有するチャネルKを分析する別の好ましい1つの実施形態が示されている。ここでは、また好ましくは、第1チャネルK_aの活性化候補3に割り当てられたコスト成分は、前に分析した第2チャネルK_bの選択されたシーケンス2の活性化候補3に依存する。
図3には、活性化候補3のコスト成分が、第2チャネルK_bの活性化候補3との時間的な距離にどのように依存し得るかが示されている。別のチャネルKにおいて類似のシーケンス2が見つけられる場合、シーケンス2が実際に優位なリズムを表す可能性が高くなる。
【0048】
ここでは、また好ましくは、第1チャネルK_aおよび第2チャネルK_bは、同じカテーテルおよび/または双極チャネルKおよび/または心房チャネルLの電極からのチャネルKであり、かつ/または第1チャネルK_aおよび第2チャネルK_bのどちらも冠静脈洞チャネルMではない。
【0049】
1つの実施形態によると、第2チャネルK_bから導出したデータに依存するコスト成分は、時間非依存のコスト成分および/または時間依存のコスト成分を有することが提案される。時間非依存のコスト成分は、コスト成分が割り当てられた潜在的シーケンス4のそれぞれの要素のタイミングに依存することなく同じである。平均ジャンプ長さCLを有する上の実施例は、時間非依存である。
【0050】
一般的に言うと、時間非依存のコスト成分は好ましくは、第1チャネルK_aのジャンプ長CL間の差分と、第2チャネルK_bの平均ジャンプ長CLの推定値とに依存する。
【0051】
活性化候補3のコスト成分に有する上の実施例は時間依存である。というのは、このコスト成分は、別のチャネルKの活性化候補3に関して、活性化候補3のタイミングに依存しているからである。一般的に言うと、時間依存のコスト成分は好ましくは、第2チャネルK_bの活性化候補3のタイミングと比較して、第1チャネルK_aの活性化候補3のタイミングに依存する。
【0052】
好ましいのは、第2チャネルK_bが、第1チャネルK_aの隣接チャネルKである場合である。制御システムは、どのチャネルKが隣接チャネルKであるかを導出するために電極の順序を使用することができる。通常、チャネルKまたは電極番号は、カテーテルにおける電極の物理的位置に基づいて選択される。したがって、電極の物理的な隣りを推定する容易な仕方は、提供されたチャネルKの順序を使用することである。
【0053】
潜在的シーケンス4にコスト成分を割り当てる別の仕方は、双極チャネルKの単極信号に基づく。第1チャネルK_aが双極チャネルKであり、第1チャネルK_aの潜在的シーケンス4のコスト、特に活性化候補3に割り当てられたコスト成分が、双極チャネルKの電極の1つまた2つの単極チャネルKから導出したデータに、特に電極の極性に関するデータに依存するコスト成分を有する場合がある。この実施形態は、細胞脱分極が常にマイナスであり、したがって電極の下方偏向により、活性化が局所的であるか否かを示されるという認識に基づいている。
【0054】
別の1つの実施形態に従って提案されるのは、第1チャネルK_aの潜在的シーケンス4のコスト、特に活性化候補3に割り当てられたコスト成分が、冠静脈洞チャネルMおよび/または表面ECG電極から導出したデータに依存するコスト成分を有することである。どの活性化候補3が、ファーフィールド干渉である可能性が高いかを推定するために冠静脈洞電極を使用することができる。したがって、冠静脈洞チャネルMおよび/または表面ECG電極から導出したデータに依存するコスト成分は、第1チャネルK_aにおける活性化候補3間の時間距離と、冠静脈洞チャネルMおよび/または表面ECG電極において検出した心室拍動とに関するデータに依存し得る。これらのコスト成分を増加させるのとは択一的に、ファーフィールド干渉である可能性が高い活性化候補3を完全に除去して、これらがシーケンス2の一部として選択されることがないようにすることができる。
【0055】
また、活性化候補3に割り当てられたコスト成分が、それぞれの活性化候補3の形態に依存するコスト成分を有する場合もある。この形態には、例えば、振幅および/またはdV/dt勾配および/またはRMS値および/または周波数コンテンツおよび/または相関係数等の記述的特徴が含まれてよいか、またはコストは、アルゴリズムの出力、例えば、入力の少なくとも1つとして電位図間隔を採用した機械学習モデル等の出力から導出することができる。
【0056】
別の1つの実施形態では、分析の臨床用途が、コスト成分、特に活性化候補3に割り当てられたコスト成分にコーディングされる場合がある。臨床用途は、特にリストから選択される、ユーザによる入力であってよい。
【0057】
潜在的シーケンス4のコストはさらに、第1チャネルK_aの、かつ/または前に分析した第2チャネルK_bの選択したシーケンス2の活性化候補3間の、特に形態的な類似性の尺度に依存するコスト成分を有していてよい。類似した活性化候補3は、有効なシーケンス2を形成する可能性が高い。既に有効であると定められているシーケンス2の活性化候補3を使用することにより、比較における不良な形態の数が少なくなる。
【0058】
別の1つの可能性は、第1チャネルK_aの潜在的シーケンス4のコスト、特に、活性化候補3および/またはジャンプ6に割り当てられたコスト成分が、潜在的シーケンス4に依存しない静的コスト成分および/または潜在的シーケンス4に依存する動的コスト成分を含むことである。計算上でより容易であるのは、多くの場合に、シーケンス2自体に依存するコスト成分を使用しないことであるが、特に形態的な比較のために、シーケンス2の活性化候補3の形態を比較し、次いでそのシーケンス2のコストを適合化することは有利になり得る。
【0059】
好ましくは、ジャンプ6に割り当てられた動的コスト成分は、それぞれの潜在的シーケンス4のジャンプ長CLの類似性の尺度に依存し、それによって類似した長さのジャンプ6に報酬を与える。付加的または択一的には、活性化候補3に割り当てられた動的コスト成分は、それぞれの潜在的シーケンス4の活性化候補3の類似性の尺度に依存し得る。
【0060】
ここでもまた好ましくは、チャネルKの分析は、厳格な前方探索ではなく、むしろ大域的な最適化を使用すると要約することができる。ここでは、また好ましくは、最適化判定基準を満たすシーケンスを選択するために、グラフ探索アルゴリズム、例えばDijkstra等が使用される。一般に、好ましくは、最適化判定基準を満たすシーケンスを選択するために、特定のチャネルのコストに大域的な最適化アルゴリズムが使用される。
【0061】
それにもかかわらず、計算効率のために、制御システムにより、チャネルKを繰り返して分析し、チャネルKの分析が、前に分析したチャネルKの分析に依存する場合がある。好ましくは、チャネルKの潜在的シーケンス4のコスト成分は、前に分析したチャネルKの分析に依存する。より好ましくは、少なくとも時々、特に分析の精度の尺度が満たされていない場合に2回、少なくとも1つのチャネルKを分析し、第2の分析は、第1の分析後に分析したチャネルKの分析に依存する。これは特に、最初に分析したチャネルKについての場合であってよい。
【0062】
上述したように、1つの実施形態では、時間依存のコスト成分が、前に分析した第2チャネルK_bの選択したシーケンス2の活性化候補3のタイミングと比較して、第1チャネルK_aの活性化候補3のタイミングに依存することが提案される。
【0063】
臨床用途に目を向けると、制御システムにより、周期的に更新チャネルKを受信し、更新チャネルKを分析し、更新チャネルKが、前に分析した部分と新たな部分とを有し、前に分析した部分における活性化候補3の選択が、更新チャネルKの分析に伴って時として変化するという場合がある。この実施形態は、非常にまれであると考えられる。通常、分析により、前の分析ラウンドで行われたアノテーションが変更されることはない。しかしながら、特定の領域における優位リズムは、時間と共に変化することがあり、この変化は、選択したシーケンス2にはまだ間に合っていないものの、前のデータでは現れている可能性がある。遡ってデータを再ラベル付けすることにより、このような変化に対するより迅速な反応およびより良好な検出が可能になる。
【0064】
好ましくは、更新チャネルKの分析における潜在的シーケンス4のコスト成分は、前に分析した部分における活性化候補3の選択に依存するコスト成分を有する。コスト成分における前のラベルの一種の記憶のようなものを提供することにより、同様に優位な2つのリズムの間で切り換わる頻繁な変化が起こりにくくなる。
【0065】
同じく重要な別の教示は、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法を実施するように構成された制御システムであって、電位
図1を受け取り、かつ/または測定するように構成されている制御システムに関する。制御システムは、プロセッサおよび/またはメモリを有していてよい。制御システムは、プロセッサ、場合によってはユーザインタフェース等を備えたローカルユニットであってよい。制御システムはまた、1つの実施形態において、クラウドプロセッサを有していてもよい。したがって、制御システムを1つの装置に限定する必要はない。この制御システムは、カテーテルに対するインタフェースを有していてよい。この制御システムは、提案した方法を実施するように構成されている。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御システムを介して、電位図(1)を分析する方法であって、前記電位図(1)は、人体に挿入されたカテーテルを介して記録されており、前記カテーテルは、複数の電極を有し、前記電位図(1)の少なくとも1つのチャネル(K)は、前記電極により、好ましくは前記電極の間で記録されており、
前記制御システムにより、第1チャネル(K_a)において活性化候補(3)を検出し、
前記第1チャネル(K_a)の時間の次元(5)に沿って、活性化候補(3)の複数の異なる潜在的シーケンス(4)を定めることができ、前記制御システムにより、1つまたは複数の独立したコスト成分を有するコストを前記潜在的シーケンス(4)に割り当て、
前記制御システムにより、前記第1チャネル(K_a)の前記潜在的シーケンス(4)から、優位な活性化のシーケンス(2)を選択し、前記制御システムにより、前記潜在的シーケンス(4)の前記コストに基づいて、最適化判定基準を満たす前記優位な活性化のシーケンス(2)を選択する、方法において、
前記制御システムにより、活性化候補(3)にコスト成分を割り当て、前記潜在的シーケンス(4)の前記コストが、それぞれの前記潜在的シーケンス(4)を定める前記活性化候補(3)の前記コスト成分を有する、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記制御システムにより、活性化候補(3)間のジャンプ(6)にコスト成分を割り当て、前記潜在的シーケンス(4)の前記コストは、それぞれの前記潜在的シーケンス(4)を定める活性化候補(3)間の前記ジャンプ(6)の前記コスト成分を有し、好ましくは、ジャンプ(6)に割り当てられた前記コスト成分は、前記ジャンプ(6)長さ間の差分と、平均ジャンプ長(CL)の推定値とに依存する、ことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1チャネル(K_a)の前記潜在的シーケンス(4)の前記コスト、特に活性化候補(3)に割り当てられた前記コスト成分は、第2チャネル(K_b)から導出したデータに依存するコスト成分を有し、好ましくは、前記第1チャネル(K_a)および前記第2チャネル(K_b)は、同じ前記カテーテルおよび/または双極チャネル(K)および/または心房チャネル(L)の電極からのチャネル(K)であり、かつ/または前記第1チャネル(K_a)および前記第2チャネル(K_b)のどちらも冠静脈洞チャネル(M)ではない、ことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
第2チャネル(K_b)から導出したデータに依存する前記コスト成分は、時間非依存のコスト成分および/または時間依存のコスト成分を有し、
好ましくは、前記時間非依存のコスト成分は、前記第1チャネル(K_a)のジャンプ長(CL)間の差分と、前記第2チャネル(K_b)の平均ジャンプ長(CL)の推定値とに依存し、かつ/または、
前記時間依存のコスト成分が、前記第2チャネル(K_b)の活性化候補(3)のタイミングと比較して、前記第1チャネル(K_a)の活性化候補(3)のタイミングに依存する、ことを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記第2チャネル(K_b)が、前記第1チャネル(K_a)の隣接チャネル(K)であり、好ましくは、前記制御システムは、どのチャネル(K)が隣接チャネル(K)であるかを導出するために前記電極の順序を使用する、ことを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記第1チャネル(K_a)は、双極チャネル(K)であり、前記第1チャネル(K_a)の前記潜在的シーケンス(4)の前記コスト、特に活性化候補(3)に割り当てられた前記コスト成分が、前記双極チャネル(K)の前記電極の1つまた2つの単極チャネル(K)から導出したデータに、特に前記電極の極性に関するデータに依存するコスト成分を有する、ことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記第1チャネル(K_a)の前記潜在的シーケンス(4)の前記コスト、特に、活性化候補(3)に割り当てられた前記コスト成分は、冠静脈洞チャネル(M)および/または表面ECG電極から導出したデータに依存するコスト成分に依存し、特に前記第1チャネル(K_a)における活性化候補(3)間の時間距離と、前記冠静脈洞チャネル(M)および/または前記表面ECG電極において検出した心室拍動とに関するデータに依存する、ことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項8】
活性化候補(3)に割り当てられた前記コスト成分は、それぞれの前記活性化候補(3)の形態に依存するコスト成分を有する、ことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記潜在的シーケンス(4)の前記コストは、前記第1チャネル(K_a)の活性化候補(3)間の、特に形態的な類似性の尺度に依存するコスト成分を有する、ことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記第1チャネル(K_a)の前記潜在的シーケンス(4)の前記コスト、特に活性化候補(3)および/またはジャンプ(6)に割り当てられた前記コスト成分は、前記潜在的シーケンス(4)に依存しない静的コスト成分および/または前記潜在的シーケンス(4)に依存する動的コスト成分を有し、好ましくは、ジャンプ(6)に割り当てられた前記動的コスト成分は、それぞれの前記潜在的シーケンス(4)のジャンプ長(CL)の類似性の尺度に依存し、かつ/または活性化候補(3)に割り当てられた前記動的コスト成分は、それぞれの前記潜在的シーケンス(4)の活性化候補(3)の類似性の尺度に依存する、ことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記制御システムにより、チャネル(K)を繰り返して分析し、チャネル(K)の前記分析は、前に分析したチャネル(K)の前記分析に依存し、好ましくは、チャネル(K)の前記潜在的シーケンス(4)の前記コスト成分は、前に分析したチャネル(K)の分析に依存し、好ましくは、少なくとも時々、特に前記分析の精度の尺度が満たされていない場合に2回、少なくとも1つのチャネル(K)を分析し、第2の前記分析は、第1の前記分析の後に分析したチャネル(K)の分析に依存する、ことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記時間依存のコスト成分が、前に分析した第2チャネル(K_b)の選択したシーケンス(2)の活性化候補(3)のタイミングと比較して、前記第1チャネル(K_a)の活性化候補(3)の前記タイミングに依存する、ことを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項13】
前記制御システムにより、周期的に更新チャネル(K)を受信し、前記更新チャネル(K)を分析し、更新チャネル(K)が、前に分析した部分と新たな部分とを有し、前記前に分析した部分における活性化候補(3)の前記選択が、前記更新チャネル(K)の前記分析に伴って時として変化し、好ましくは、前記更新チャネル(K)の前記分析における前記潜在的シーケンス(4)の前記コスト成分は、前記前に分析した部分における活性化候補(3)の前記選択に依存するコスト成分を有する、ことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項記載の方法を実施するように構成された制御システムであって、前記制御システムは、前記電位図(1)を受信および/または測定するように構成されている、制御システム。
【外国語明細書】