(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175692
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】GABAを含有する植物の生産方法
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20241211BHJP
A01G 22/05 20180101ALI20241211BHJP
【FI】
A01G31/00 601C
A01G22/05 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093134
(22)【出願日】2023-06-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)令和4年6月8日に、「https://www.kirinoikeuchi.co.jp/blog/articles/220608_news.html」のウェブサイトにて、公開した。 (2)令和4年6月8日に、「https://www.kirinoikeuchi.co.jp/blog/articles/220608_natsumi.html」のウェブサイトおよびメールマガジン配信にて、公開した。 (3)令和4年6月13日に、「https://www.kirinoikeuchi.co.jp/info/166」のウェブサイトにて、公開した。 (4)令和4年7月8日に、「https://www.kirinoikeuchi.co.jp/lp/kiritoma/」のウェブサイトにて、公開した。 (5)令和4年6月8日に、「https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000020.000015807.html」のウェブサイトにて、公開した。 (6)令和4年7月25日に、「https://agrijournal.jp/renewableenergy/67627/」のウェブサイトにて、公開した。 (7)令和4年6月22日に、放送番組「よんちゃんTV」にて、放送した。 (8)令和4年6月23日に、放送番組「報道ランナー」にて、放送した。 (9)令和4年6月28日に、新聞「農村ニュース 令和4年6月28日付」にて、公開した。 (10)令和4年7月11日に、新聞「農経しんぽう 令和4年7月11日付」にて、公開した。 (11)令和4年7月20日~22日に、「施設園芸・植物工場展2022」の展示会にて、公開した。 (12)令和5年5月24日~26日に、「第1回九州農業WEEK」の展示会にて、公開した。 (13)令和4年7月20日に、「AGRI JOURNAL、vol.24、第14~15頁、株式会社アクセスインターナショナル」の刊行物にて、公開した。 (14)令和5年2月27日に、「国立大学法人千葉大学大学院園芸学研究科修士論文発表会」にて、公開した。 (15)令和5年3月13日に、「柏の葉ライフサイエンス協議会交流会『コウリュウノハ』」にて、公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (16)令和4年6月23日~、添付書面(1)の販売・配布先リストに記載の販売・配布先にて、卸したまたは配布した。
(71)【出願人】
【識別番号】390002118
【氏名又は名称】株式会社いけうち
(71)【出願人】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】彦坂 陽介
(72)【発明者】
【氏名】塚越 覚
(72)【発明者】
【氏名】中野 明正
(72)【発明者】
【氏名】田中 瑞穂
【テーマコード(参考)】
2B022
2B314
【Fターム(参考)】
2B022AA01
2B022AB15
2B314MA17
2B314MA33
2B314MA38
2B314NA19
2B314NC01
2B314NC25
2B314ND09
2B314PB20
2B314PB22
2B314PB49
2B314PB64
(57)【要約】
【課題】GABAを高濃度に含有する植物の生産方法を提供する。
【解決手段】噴霧耕栽培装置1を用いてGABAを含有する植物を生産する方法であって、噴霧耕栽培装置1は、植付穴4を有し、植付穴4に挿入された植物の根が下垂する内部空間3を有する栽培ボックス2と、栽培ボックス2の内部空間3に養液を噴霧するノズル6とを有し、栽培ボックス2の底部に廃液口5が設けられ、ノズル6から噴霧され栽培ボックス2の底部に溜まった養液が廃液口5から排出されるように構成されており、植付穴4に植物を定植する工程と、ノズル6から養液を噴霧して植物を栽培する工程と、植付穴4に植えた植物を収穫する工程とを有し、植物の定植から収穫までの期間を栽培前期、栽培中期、栽培後期に3等分したとき、栽培前期における養液の1日当たりの噴霧量が、栽培中期と栽培後期における養液の1日当たりの噴霧量より多い植物の生産方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴霧耕栽培装置を用いてGABAを含有する植物を生産する方法であって、
前記噴霧耕栽培装置は、
植付穴を有し、前記植付穴に挿入された植物の根が下垂する内部空間を有する栽培ボックスと、
前記栽培ボックスの前記内部空間に養液を噴霧するノズルとを有し、
前記栽培ボックスの底部に廃液口が設けられ、前記ノズルから噴霧され前記栽培ボックスの底部に溜まった養液が前記廃液口から排出されるように構成されており、
前記植付穴に前記植物を定植する工程と、
前記ノズルから養液を噴霧して前記植物を栽培する工程と、
前記植付穴に植えた前記植物を収穫する工程とを有し、
前記植物の定植から収穫までの期間を栽培前期、栽培中期、栽培後期に3等分したとき、栽培前期における前記養液の1日当たりの噴霧量が、栽培中期と栽培後期における前記養液の1日当たりの噴霧量より多いことを特徴とする植物の生産方法。
【請求項2】
栽培中期と栽培後期における前記養液の肥料成分濃度が、栽培前期における前記養液の肥料成分濃度より高い請求項1に記載の植物の生産方法。
【請求項3】
栽培中期と栽培後期において、昼間における前記養液の1時間当たりの噴霧量が、夜間における前記養液の1時間当たりの噴霧量より多い請求項1に記載の植物の生産方法。
【請求項4】
栽培前期において、前記ノズルから前記養液を連続的または断続的に噴霧し、栽培中期と栽培後期において、前記ノズルから前記養液を断続的に噴霧し、
栽培前期における前記ノズルからの1日当たりの噴霧時間が、栽培中期と栽培後期における前記ノズルからの1日当たりの噴霧時間よりも長い請求項1に記載の植物の生産方法。
【請求項5】
前記ノズルから前記養液を断続的に噴霧するときの1回の噴霧中断時間が60分以下である請求項4に記載の植物の生産方法。
【請求項6】
前記ノズルから前記養液を断続的に噴霧するときの1回の噴霧時間が10秒以上300秒以下である請求項4に記載の植物の生産方法。
【請求項7】
GABAを含有する前記植物は果菜類野菜である請求項1に記載の植物の生産方法。
【請求項8】
GABAを含有する前記植物はトマトである請求項1に記載の植物の生産方法。
【請求項9】
前記トマトの果実のGABA含有量は50mg/100g以上である請求項8に記載の植物の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GABA(γ-アミノ酪酸)を含有する植物の生産方法に関するものであり、詳細には、噴霧耕栽培によりGABAを高濃度に産出することができる植物の生産方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、健康意識の高まりから、植物に含まれる機能性成分が注目されている。GABA(γ-アミノ酪酸)は非タンパク質性アミノ酸であり、血圧降下作用、精神安定作用、成長ホルモンの分泌促進作用、記憶学習促進作用など様々な効果があるとされている。
【0003】
従来、GABAを含有する植物や食品の製造方法が様々提案されている。例えば、特許文献1には、GABA等を含有する食用植物体の製造方法が開示されており、特許文献2には、GABAおよび/またはタウリンを含有する土耕栽培野菜の製造方法が開示されており、特許文献3には、GABAを含有する干したくあん製品の製造方法が開示されており、特許文献4には、GABAが含まれるトマト飲料の製造方法が開示されている。また特許文献5には、中空の根圏部を有する栽培ボックスを備え、当該根圏部に養液を霧状にして噴霧する植物栽培装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-89572号公報
【特許文献2】特開2009-201477号公報
【特許文献3】特開2015-159741号公報
【特許文献4】特開2010-136710号公報
【特許文献5】国際公開第2019/069826号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、GABAを含有する植物や食品の製造方法が様々提案されているが、植物の栽培方法そのものに着目してGABAを高濃度に含む植物を生産する方法の検討はほとんどなされていない。本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、GABAを高濃度に含有する植物の生産方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決することができた本発明の植物の生産方法は下記の通りである。
[1] 噴霧耕栽培装置を用いてGABAを含有する植物を生産する方法であって、
前記噴霧耕栽培装置は、
植付穴を有し、前記植付穴に挿入された植物の根が下垂する内部空間を有する栽培ボックスと、
前記栽培ボックスの前記内部空間に養液を噴霧するノズルとを有し、
前記栽培ボックスの底部に廃液口が設けられ、前記ノズルから噴霧され前記栽培ボックスの底部に溜まった養液が前記廃液口から排出されるように構成されており、
前記植付穴に前記植物を定植する工程と、
前記ノズルから養液を噴霧して前記植物を栽培する工程と、
前記植付穴に植えた前記植物を収穫する工程とを有し、
前記植物の定植から収穫までの期間を栽培前期、栽培中期、栽培後期に3等分したとき、栽培前期における前記養液の1日当たりの噴霧量が、栽培中期と栽培後期における前記養液の1日当たりの噴霧量より多いことを特徴とする植物の生産方法。
[2] 栽培中期と栽培後期における前記養液の肥料成分濃度が、栽培前期における前記養液の肥料成分濃度より高い[1]に記載の植物の生産方法。
[3] 栽培中期と栽培後期において、昼間における前記養液の1時間当たりの噴霧量が、夜間における前記養液の1時間当たりの噴霧量より多い[1]または[2]に記載の植物の生産方法。
[4] 栽培前期において、前記ノズルから前記養液を連続的または断続的に噴霧し、栽培中期と栽培後期において、前記ノズルから前記養液を断続的に噴霧し、栽培前期における前記ノズルからの1日当たりの噴霧時間が、栽培中期と栽培後期における前記ノズルからの1日当たりの噴霧時間よりも長い[1]~[3]のいずれかに記載の植物の生産方法。
[5] 前記ノズルから前記養液を断続的に噴霧するときの1回の噴霧中断時間が60分以下である[4]に記載の植物の生産方法。
[6] 前記ノズルから前記養液を断続的に噴霧するときの1回の噴霧時間が10秒以上300秒以下である[4]または[5]に記載の植物の生産方法。
[7] GABAを含有する前記植物は果菜類野菜である[1]~[6]のいずれかに記載の植物の生産方法。
[8] GABAを含有する前記植物はトマトである[1]~[7]のいずれかに記載の植物の生産方法。
[9] 前記トマトの果実のGABA含有量は50mg/100g以上である[8]に記載の植物の生産方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の植物の生産方法によれば、噴霧耕栽培により植物を生育し、植物の生育段階に応じて養液の供給条件を適切に設定することで、根を高度に発達させることができるとともに、植物にストレスを与えてGABAの生成を促進することができる。これにより、GABAを高濃度に含有する植物を生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明で用いられる噴霧耕栽培装置の一例を表し、噴霧耕栽培装置の一部切欠き斜視図を表す。
【
図2】実施例において、噴霧耕栽培(標準条件)によりトマトを生育したときの養液の噴霧時間割合と肥料成分濃度の条件の日次推移を表す。
【
図3】実施例において、噴霧耕栽培(高塩濃度条件)によりトマトを生育したときの養液の噴霧時間割合と肥料成分濃度の条件の日次推移を表す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、噴霧耕栽培装置を用いてGABA(γ-アミノ酪酸)を含有する植物を生産する方法である。噴霧耕栽培では、植物の根を空気中に露出させ、養液を霧状に供給することにより、根から霧状の養液が吸収される。そのため、土耕栽培や水耕栽培と比較して根の養液との接触が減り、植物にかかるストレスが増えるとともに、根が空気中に露出していることにより、根への養液の供給を厳密に制御することが可能となる。
【0010】
植物では、グルタミン酸にグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)が働くことによりGABAが生成される。植物は、生育環境によりストレスを受けると、細胞質内のpHが酸性になる場合がある。この際、グルタミン酸からGABAを生成するためのGADが働くと、水素イオンが消費され、GABAの生成により細胞質内のpHが酸性に傾くのが緩和される。
【0011】
本発明の植物の生産方法では、噴霧耕栽培の特性を活かし、植物の生育段階に応じて養液の供給条件を適切に設定することで、根を高度に発達させることができるとともに、植物にストレスを与えてGABAの生成を促進することができる。これにより、GABAを高濃度に含有する植物を生産することができる。以下、本発明の植物の生産方法について詳しく説明する。
【0012】
本発明で用いられる噴霧耕栽培装置について、
図1を参照して説明する。
図1には、噴霧耕栽培装置の一部切欠き斜視図が示されている。なお、本発明で用いられる噴霧耕栽培装置は図面に示された形態に限定されない。
【0013】
噴霧耕栽培装置1は、植物を植える植付穴4を備えた栽培ボックス2を有する。栽培ボックス2は内部空間3を有し、内部空間3に養液が噴霧され、内部空間3が霧状の養液で満たされる。植付穴4は栽培ボックス2の上面または側面に設けられる。
図1では、植付穴4は栽培ボックス2の上面(傾斜状に形成された上面)に設けられている。植付穴4は、栽培ボックス2の内部空間3と栽培ボックス2の外部を連通している。
【0014】
栽培ボックス2の底部(底面)には廃液口5が設けられる。これにより、栽培ボックス2の内部空間3に噴霧された養液が凝集し余剰液として栽培ボックス2の底部に溜まっても、当該余剰液が廃液口5から栽培ボックス2の外部に排出される。つまり、栽培ボックス2は、ノズル6から噴霧され栽培ボックス2の底部に溜まった養液が廃液口5から排出されるように構成されており、栽培ボックス2の内部空間3には実質的にバルクの液相の養液が存在しないようにすることができる。廃液口5から排出された養液は、廃棄してもよく、回収して養液として再利用してもよい。
【0015】
植付穴4には、噴霧耕栽培装置1で栽培する植物、すなわちGABAを生成する植物が挿入され、挿入された植物の根が内部空間3において下垂する。植付穴4に挿入された植物は、当該植物の根の少なくとも一部が栽培ボックス2の内部空間3において垂れ下がる。植付穴4には、植物をそのまま挿入してもよく、植物を穴あきポットに入れ、これを植付穴4に挿入してもよい。後者の場合、穴あきポットに入れた植物は、当該植物の根がポットの穴を通って栽培ボックス2の内部空間3に下垂する。
【0016】
植付穴4に挿入した植物の根は、栽培ボックス2の内部空間3の上半分から下垂することが好ましく、すなわち栽培ボックス2の内部空間3の上半分のいずれかの地点を起点としてそこから下方に垂れ下がることが好ましい。これにより、少なくとも栽培初期において、植物の根が栽培ボックス2の内面に接しないようにすることができ、根の全体を霧状の養液の雰囲気中にさらすことができる。つまり、栽培初期において、植付穴4に挿入した植物の根がバルクの液相の養液に接しないようにすることができる。
【0017】
噴霧耕栽培装置1は、栽培ボックス2の内部空間3に養液を噴霧するノズル6が設けられる。ノズル6は、栽培ボックス2の内部空間3に設けられてもよく、栽培ボックス2の外部に設けられてもよい。なお後者の場合、ノズル6は、養液を噴射する噴口が、栽培ボックス2の内部空間3に向くように設置される。
図1では、ノズル6は栽培ボックス2の内部空間3に設けられている。
【0018】
養液は肥料成分を含有する溶液であり、養液に含まれる肥料成分は噴霧耕栽培装置1で栽培する植物に応じて適宜設定すればよい。肥料成分としては、窒素、リン酸、カリウムなどが挙げられる。養液は、市販の液肥を適宜水で希釈して用いることが簡便である。
【0019】
ノズル6は、噴口が水平方向に対して30°以内の角度を向くように設置されることが好ましく、当該角度は20°以内がより好ましく、10°以内がさらに好ましく、5°以内がさらにより好ましい。ノズル6は、噴口が水平方向に向くように設置されることが特に好ましい。このようにノズル6を設置することにより、ノズル6から噴霧した養液が栽培ボックス2の内部空間3の広い範囲に拡散しやすくなる。
【0020】
ノズル6としては、一流体ノズルを用いてもよく、二流体ノズルを用いてもよい。一流体ノズルは養液のみを噴霧するノズルであり、二流体ノズルは養液を圧縮気体(例えば、空気や炭酸ガス)と混合して噴霧するノズルである。なお、ノズル6としては一流体ノズルを用いることが好ましく、これにより、栽培ボックス2の内部空間3に養液を噴霧した際、霧状の養液がノズル6から噴出する気体によって希釈されず、養液を霧状に高濃度で充満させることができる。
【0021】
ノズル6から噴霧された養液の平均粒子径は、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、また50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましい。このように養液を噴霧することにより、栽培ボックス2内で養液が霧状に存在しやすくなり、また噴霧した養液が短時間で凝集することが抑えられ、養液が栽培ボックス2の底部に余剰液として溜まりにくくなる。ここで説明した平均粒子径は、ノズルから噴霧された養液に対して、レーザー回折式粒子径分布測定装置を用い、ノズルの先端から30cm先の地点での液滴の粒子径分布を測定したときのザウター平均粒子径を意味する。
【0022】
栽培ボックス2は水平方向に長手方向と短手方向を有し、ノズル6は噴口が栽培ボックス2の長手方向を向くように設置されることが好ましい。また、ノズル6は栽培ボックス2の内部空間3に設置されることが好ましい。このようにノズル6が設置されることにより、ノズル6から噴霧された養液が栽培ボックス2の長手方向の広い範囲に広がりやすくなる。
【0023】
植付穴4は栽培ボックス2の長手方向に複数並んで設けられ、植付穴4の列を形成し、植付穴4の列は、栽培ボックス2の短手方向に複数設けられることが好ましい。その上で、栽培ボックス2を上から見た平面視で、ノズル6が隣接する植付穴4の列の間に配置され、ノズル6の噴口が栽培ボックス2の長手方向を向くように設置されることが好ましい。このようにノズル6が配置されることにより、ノズル6から噴霧した養液が植物の根に直接当たりにくくなり、栽培ボックス2の内部空間3に養液を霧状に均一に充満させることが容易になる。ノズル6は栽培ボックス2の長手方向に複数並んで設けられることが好ましい。
図1では、栽培ボックス2を上から見た平面視で、植付穴4の列(植付穴4が長手方向に複数並んだ列)が短手方向に並んで4列配置されており、短手方向の中央2列の植付穴4の列の間に、ノズル6の列(ノズル6が長手方向に複数並んだ列)が配置されている。換言すれば、ノズル6の列の両側にそれぞれ、植付穴4の列が2列配置されている。ノズル6は、栽培ボックス2の長手方向の一方側に向かって養液を噴霧するものであってもよく、栽培ボックス2の長手方向の一方側と両方側に向かって養液を噴霧するものであってもよい。
【0024】
ノズル6に養液を供給する供給管7は、栽培ボックス2の上面から内部空間3に挿入されてもよく、底面から挿入されてもよく、側面から挿入されてもよい。
図1では、養液の供給管7が、栽培ボックス2の上面から内部空間3に挿入されており、供給管7の下部にノズル6が設置されている。
【0025】
噴霧耕栽培装置1は、屋外に設置してもよく、ビニルハウス等の屋内に設置してもよい。噴霧耕栽培装置1は、太陽光の当たる場所に設置してもよく、人工光の下に設置してもよい。
【0026】
本発明の植物の生産方法は、上記に説明した噴霧耕栽培装置を用いてGABAを含有する植物を生産するものであり、植付穴に植物を定植する工程(定植工程)と、ノズルから養液を噴霧して植物を栽培する工程(栽培工程)と、植付穴に植えた植物を収穫する工程(収穫)とを有する。
【0027】
定植工程では、噴霧耕栽培装置の植付穴に植物を定植する。植付穴には、予め種から育苗した苗を定植する。育苗の方法は特に限定されず、公知の方法により行えばよい。植付穴には植物の苗をそのまま植えてもよく、植物の苗を穴あきポットに入れ、これを植付穴に挿入してもよい。定植工程では、植物の根が栽培ボックスの底面に付かないように、植物を植付穴に定植することが好ましい。
【0028】
植付穴に植える植物の種類は、収穫工程において収穫する段階でGABAを含有するものであれば、特に限定されない。植付穴に植える植物は、定植の時点でGABAを含有していても含有していなくてもよい。なお、GABAを含有する植物は、GABAの効能(例えば、血圧降下作用)を勘案すると食用であることが好ましく、食用の植物としては野菜または穀物が好ましく、野菜がより好ましい。野菜は、果菜類、葉茎菜類、根菜類等が挙げられ、これらの各類に含まれる野菜は総務省の日本標準商品分類により定められる。なお、GABAは根よりも果実、葉、茎により多く含まれることから、果菜類または葉茎菜類が好ましく、特に果実に多く含まれることから、果菜類がより好ましい。果菜類の中でも、トマトにはGABAが多く含まれることから、トマトが特に好ましい。トマトは、大玉や中玉のトマトであっても、ミニトマトであってもよい。
【0029】
栽培工程では、噴霧耕栽培装置に設置したノズルから養液を噴霧して、植付穴に植えた植物を栽培する。植物の栽培は、光合成可能な条件で行う。光合成の光源は太陽光であっても人工光であってもよい。噴霧耕栽培装置の外部の温度、湿度、雰囲気等の生育条件は、植物の種類に応じて、適宜設定すればよい。
【0030】
栽培工程にて植物が収穫段階まで生育したら、収穫工程において、植付穴に植えた植物を収穫する。収穫するのは、植物の一部であっても全部であってもよく、例えば果実、葉、茎、根等が挙げられる。
【0031】
本発明の植物の生産方法では、植物の定植から収穫までの期間を栽培前期、栽培中期、栽培後期に3等分したとき、栽培前期における養液の1日当たりの噴霧量が、栽培中期と栽培後期における養液の1日当たりの噴霧量より多くなるようにしている。以下、定植から収穫までの期間を「栽培期間」と称する。
【0032】
栽培期間は、次のようにして栽培前期、栽培中期、栽培後期に分ける。栽培期間(日数)が3の倍数の日数の場合は、栽培期間の日数を1/3ずつ分けて、栽培前期と栽培中期と栽培後期を定める。栽培期間(日数)が3の倍数に1を加えた日数の場合は、栽培中期の日数が栽培前期と栽培後期よりも1日多くなるように、栽培前期と栽培中期と栽培後期を定める。栽培期間(日数)が3の倍数に2を加えた日数の場合は、栽培前期と栽培後期の日数が栽培中期よりも1日多くなるように、栽培前期と栽培中期と栽培後期を定める。なお、果菜類など1つの植物で収穫の期間が複数日に及ぶ場合は、最初に収穫する日を収穫日(すなわち栽培期間の最後の日)とする。
【0033】
各期間の養液の1日当たりの噴霧量は平均噴霧量を表す。すなわち、各期間における養液の全噴霧量を各期間の日数で除することにより、各期間の養液の1日当たりの噴霧量が求まる。
【0034】
上記のように、栽培前期、栽培中期、栽培後期で養液の1日当たりの噴霧量を設定することで、GABAを高濃度に含有する植物を生産することができる。栽培前期において養液の1日当たりの噴霧量を増やすことで、根を高度に発達させることができる。栽培前期は根が未発達のため、噴霧量を増やして根からの養液の捕集効率を向上させる。噴霧耕栽培では、土耕栽培や水耕栽培と異なり、植物の根は霧状に存在する養液を捕集しないと養分を得られないため、霧状に存在する養液を積極的に捕集できるように側根と根毛が発達し、表面積の広い根が形成される。栽培前期では、より多くの量の養液を噴霧することで、側根と根毛がより発達し、これにより根の養分の吸収効率が高められ、さらに側根と根毛の発達が促進される。また、噴霧耕栽培では根が空気中に露出しているため、酸素の取り込みが促され、植物の呼吸速度が改善する。その結果、養分や水分の吸収が促進され、気孔開度が保たれることで光合成速度の向上にもつながる。一方、栽培中期と栽培後期では養液の1日当たりの噴霧量を減らすことにより、植物にストレスを与えて、GABAの生成を促進することができる。栽培前期で高度に発達した根を形成したことで、植物は優れたGABAの生成能を有するものとなる。栽培中期では、根が既に出来上がっているため、根の活性維持と生育促進に必要な量の養液を過剰にならないように噴霧し、栽培後期では、噴霧量を精密に制御することで、植物に致命的なダメージを与えず、かつ生産量を落とさないようにしながら、適切にストレスを与えるようにする。噴霧耕栽培では、土耕栽培や水耕栽培と比較して根と養液との接触が抑えられており、植物にストレスがかかりやすい条件となっているが、栽培中期と栽培後期で養液の1日当たりの噴霧量を減らすことで、さらに強いストレスが与えられ、GABAの生成が促進される。噴霧耕栽培は、根が空気中に露出していることにより、根への養液の供給を精密に制御することが可能となり、植物へのダメージを回避しながら効果的なストレス栽培を実現できる。
【0035】
栽培前期の中でも、最初の5日間~15日間(すなわち、最短で栽培0日目から5日目の間、最長で栽培0日目から15日目の間)は特に養液の1日当たりの噴霧量を増やすことが好ましい。例えば、栽培前期の最初の10日間における養液の1日当たりの噴霧量を、それより後の栽培期間における養液の1日当たりの噴霧量より多くすることが好ましい。これにより、根をより高度に発達させることができる。栽培前期の最初の10日間における養液の1日当たりの噴霧量は、栽培前期の最初の10日間における養液の全噴霧量を日数の10で除することにより求められる。それ以外の期間における養液の1日当たりの噴霧量も同様にして求められる。栽培前期の最初の10日間における養液の1日当たりの噴霧量は、それより後の栽培前期における養液の1日当たりの噴霧量より多いことがより好ましい。
【0036】
栽培中期における養液の1日当たりの噴霧量は、栽培後期における養液の1日当たりの噴霧量と同じであっても異なっていてもよい。
【0037】
各期間における養液の1日当たりの噴霧量は、ノズルからの養液の噴霧量(瞬時噴霧量)を変えるよりも、ノズルからの1日当たりの噴霧時間を変えることにより調整することが簡便である。この場合、ノズルから養液を噴霧する時間と噴霧しない時間を設定し、ノズルから養液を噴霧するときの噴霧量を変えずに実質一定とすることが好ましい。これにより、養液の1日当たりの噴霧量を任意に変えることを簡便に実現できる。この場合、栽培前期において、ノズルから養液を連続的または断続的に噴霧し、栽培中期と栽培後期において、ノズルから養液を断続的に噴霧し、栽培前期におけるノズルからの1日当たりの噴霧時間が、栽培中期と栽培後期におけるノズルからの1日当たりの噴霧時間よりも長くなることが好ましい。栽培中期における養液の1日当たりの噴霧時間は、栽培後期における養液の1日当たりの噴霧時間と同じであっても異なっていてもよい。
【0038】
各期間の養液の1日当たりの噴霧時間は平均噴霧時間を表す。すなわち、各期間における養液の全噴霧時間を各期間の日数で除することにより、各期間の養液の1日当たりの噴霧時間が求まる。
【0039】
ノズルから養液を断続的に噴霧するときの1回の噴霧中断時間は60分以下であることが好ましい。このように1回の噴霧中断時間を設定することで、栽培ボックスの内部空間に養液が霧状に存在する状態が維持されやすくなる。1回の噴霧中断時間は40分以下がより好ましく、30分以下がさらに好ましい。1回の噴霧中断時間の下限は特に限定されず、例えば20秒以上、30秒以上、または1分以上であってもよい。
【0040】
ノズルから養液を断続的に噴霧するときの1回の噴霧時間は10秒以上が好ましい。このようにノズルから養液を噴霧することにより、栽培ボックスの内部空間の広い範囲に養液を霧状に充満させることが容易になる。一方、ノズルから養液を断続的に噴霧するときの1回の噴霧時間は300秒以下が好ましく、240秒以下がより好ましく、120秒以下が好ましい。これにより、ノズルから噴霧した養液が凝集して栽培ボックスの底部に余剰液として溜まりにくくなり、また栽培ボックスの底部に溜まる余剰液量が抑えられる。
【0041】
栽培中期と栽培後期において、ノズルから養液を断続的に噴霧するときの噴霧時間割合は、50%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、20%以下がさらに好ましい。これにより、ノズルから噴霧した養液が凝集して栽培ボックスの底部に余剰液として溜まりにくくなり、また栽培ボックスの底部に溜まる余剰液量が抑えられる。一方、栽培中期と栽培後期において、ノズルから養液を断続的に噴霧するときの噴霧時間割合は、1%以上が好ましく、3%以上がより好ましく、5%以上がさらに好ましい。これにより、栽培ボックスの内部空間に養液を霧状に維持することが容易になる。噴霧時間割合は、各区間の養液の1日当たりの平均噴霧時間(単位:時間)を24で除することで求まる。
【0042】
栽培前期では、最初の1日間~7日間(すなわち、最短で栽培0日目から1日目の間、最長で栽培0日目から7日目の間)はノズルから養液を連続的に噴霧することが好ましい。また、これ以降はノズルから養液を断続的に噴霧することが好ましい。栽培初期にノズルから養液を連続的に噴霧することにより、根をより高度に発達させることが容易になる。
【0043】
栽培中期と栽培後期では、夜間よりも昼間の方がより多くの量の養液を噴霧することが好ましい。具体的には、栽培中期と栽培後期において、昼間における養液の1時間当たりの噴霧量は、夜間における養液の1時間当たりの噴霧量より多いことが好ましい。このように養液を噴霧することで、昼間は気孔の閉塞が抑えられ、光合成を促進することができ、夜間はより強いストレスを与えることができる。
【0044】
栽培前期では、最初の15日間を除き、昼間における養液の1時間当たりの噴霧量を、夜間における養液の1時間当たりの噴霧量より多くすることが好ましい。栽培前期の最初の15日間は、昼間における養液の1時間当たりの噴霧量が、夜間における養液の1時間当たりの噴霧量より多くなってもよく、昼間における養液の1時間当たりの噴霧量が、夜間における養液の1時間当たりの噴霧量と同じになってもよい。なお上述したように、栽培前期においては養液を連続的に噴霧することが好ましく、この場合は、昼間における養液の1時間当たりの噴霧量が、夜間における養液の1時間当たりの噴霧量と同じになる。
【0045】
昼間における養液の1時間当たりの噴霧量は、各期間における日出から日没までの間における養液の全噴霧量を、各期間における日出から日没までの時間で除することにより求まる。夜間における養液の1時間当たりの噴霧量は、各期間における日没から日出までの間における養液の全噴霧量を、各期間における日没から日出までの時間で除することにより求まる。
【0046】
栽培中期と栽培後期では、日単位で、昼間における養液の1時間当たりの噴霧量が、夜間における養液の1時間当たりの噴霧量より多くなることが好ましい。各期間の60%以上の日が、夜間よりも昼間の方が噴霧量が多くなることが好ましく、各期間の80%以上の日がそのようになることがより好ましく、各期間の全ての日がそのようになることがさらに好ましい。
【0047】
ノズルから噴霧する養液の肥料成分濃度は、植物の生育段階に応じて適宜変えることが好ましい。具体的には、栽培中期と栽培後期における養液の肥料成分濃度は、栽培前期における養液の肥料成分濃度より高いことが好ましい。このように養液の肥料成分濃度を変えることで、栽培中期と栽培後期においてGABAの生成量を増やすことができる。よりGABA含有量の高い植物を生産する点から、栽培後期における養液の肥料成分濃度を、栽培中期における養液の肥料成分濃度より高くすることがより好ましい。
【0048】
養液の肥料成分濃度は、例えば、肥料の3要素である窒素、リン酸、カリウムの含有濃度(各成分の質量基準の合計含有量)として定めることができる。市販の肥料には、窒素、リン酸、カリウムの含有量が示されており、これに基づき養液の肥料成分濃度を定めることができる。
【0049】
養液の肥料成分濃度は、電気伝導率(EC)を指標として用いてもよい。農業分野では、電気伝導率を肥料成分濃度の指標として用いることから、養液の肥料成分濃度の指標として電気伝導率を用いてもよい。電気伝導率を肥料成分濃度の指標として用いることにより、養液の肥料成分濃度を簡便に求めることができる。この場合、栽培中期と栽培後期における養液の電気伝導率が、栽培前期における養液の電気伝導率より高くなることが好ましい。
【0050】
各期間における養液の肥料成分濃度は、各期間の日毎の肥料成分濃度の積算値を各期間の日数で除することにより求めることができる。
【0051】
本発明の植物の生産方法によれば、GABAを高濃度に含有する植物を収穫することができる。GABAを含有する植物としては、果菜類野菜が好ましく、トマトがより好ましい。GABAを含有する植物がトマトの場合、トマトの果実のGABA含有量(FW:フレッシュウェイト)は、例えば50mg/100g以上、60mg/100g以上、または70mg/100g以上とすることができる。当該含有量はさらに高くすることが可能であり、100mg/100g以上、120mg/100g以上、または150mg/100g以上とすることもできる。トマトの果実のGABA含有量の上限は特に限定されず、例えば500mg/100g以下、400mg/100g以下、300mg/100g以下、または200mg/100g以下であってもよい。
【実施例0052】
以下に、実施例を示すことにより本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0053】
(1)栽培方法
トマト(タキイ種苗社製、フルティカ(登録商標))の苗を、ビニルハウス内に設置した噴霧耕栽培装置に定植し、噴霧耕栽培装置の栽培ボックス内に設置したノズルから養液(住友化学社製、ハイテンポAr+Cu)を噴霧することにより、トマトを噴霧耕栽培し、果実を収穫した。ノズルから噴霧する養液は適宜希釈して、電気伝導率(EC)を1.4dS/m~10.0dS/mの範囲で変え、これにより養液の肥料成分濃度を調整した。養液のpHは、pH調整剤(OATアグリオ社製)を加えることにより5.8に調整した。基本的にトマトの生長(栽培日数)に合わせて養液の肥料成分濃度を高めるようにした。養液の肥料成分濃度(塩濃度)の条件は、標準の場合(
図2)と、肥料成分濃度(塩濃度)を高くした場合(
図3)の2通りを検討した。ノズルからの養液の噴霧は連続的または断続的に行い、
図2および
図3に示すように、トマトの生育(栽培日数)に応じて噴霧時間割合を適宜変更するとともに、昼間と夜間の間で噴霧時間割合を変更した。断続的に養液を噴霧する場合、1回の噴霧時間は30秒~60秒の間で設定し、1回の噴霧中断時間は60秒~870秒の間で設定した。基本的にトマトの生長(栽培日数)に合わせて噴霧時間割合を減らすようにした。また、栽培初期(定植直後)を除き、昼間の噴霧時間割合が夜間の噴霧時間割合よりも多くなるように噴霧時間を設定した。ノズルから養液を噴霧する際の噴霧量は一定とした。また比較対照として、トマト(タキイ種苗社製、フルティカ(登録商標))の苗を土耕栽培または点滴ヤシ殻耕栽培し、果実を収穫した。
【0054】
(2)測定方法
(2-1)果実重
噴霧耕栽培(標準)、噴霧耕栽培(高塩濃度)、土耕栽培、点滴ヤシ殻栽培の各栽培法で収穫したトマトの果実を10個取り、その重量を測定し、1個当たりの果実重を求めた。
【0055】
(2-2)糖度
果実重の測定に用いた果実の切片を50mLの遠沈管に入れホモジナイズした後、遠心分離し、得られた上澄み液をポケット糖酸度計(アタゴ社製、PAL-BX ACID3)により測定し、糖度を求めた。
【0056】
(2-3)GABA含有量
糖度の測定に用いた上澄み液を10倍希釈し、これを機能性アミノ酸簡易測定セット(エンザイム・センサ社製、GABAミエール(登録商標))により測定し、トマトの果実100gFW当たりのGABA含有量を求めた。
【0057】
(3)結果
結果を表1に示す。噴霧耕栽培で育てたトマトは、土耕栽培または点滴ヤシ殻栽培で育てたトマトよりもGABA含有量が高くなった。噴霧耕栽培(標準)で育てたトマトの100gFW当たりのGABA含有量は、土耕栽培の2.5倍、点滴ヤシ殻栽培の5.0倍となった。トマト1個に含まれるGABA含有量で見ても、噴霧耕栽培(標準)で育てたトマトは、土耕栽培または点滴ヤシ殻栽培で育てたトマトの2.3~3.8倍のGABA含有量となった。糖度を比較すると、噴霧耕栽培(標準)で育てたトマトの糖度は土耕栽培または点滴ヤシ殻栽培で育てたトマトの1.3~1.4倍であることから、噴霧耕栽培では植物内でGABAが特異的に生成することが分かる。
【0058】
噴霧耕栽培において、養液の肥料成分濃度(塩濃度)の条件が標準の場合と高塩濃度の場合とを比較すると、高塩濃度で栽培することにより、さらにGABA含有量が高くすることができた。噴霧耕栽培(高塩濃度)で育てたトマトは噴霧耕栽培(標準)で育てたトマトと比べて、100gFW当たりのGABA含有量が2.2倍、トマト1個に含まれるGABA含有量が1.3倍となった。
【0059】