(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175693
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ソフトテニス用ラケットフレーム
(51)【国際特許分類】
A63B 60/02 20150101AFI20241212BHJP
A63B 49/022 20150101ALI20241212BHJP
A63B 60/16 20150101ALI20241212BHJP
A63B 102/02 20150101ALN20241212BHJP
【FI】
A63B60/02
A63B49/022
A63B60/16
A63B102:02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093579
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】390010917
【氏名又は名称】ヨネックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100120444
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】加藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】長澤 康史
(72)【発明者】
【氏名】石井 崇大
(57)【要約】
【課題】重心位置を維持しつつ打球のパワー向上を図ること。
【解決手段】ソフトテニス用のラケットフレーム(10)の全体の質量MAが215g以上265g以下、グリップ(13)の下端と、ラケットフレームの全体の重心位置との距離となる重心位置BPが280mm以上295mm以下、グリップの下端側を支点としたラケットフレームの慣性モーメントとなるスイングウエイトSW(kg・cm
2)が225以下、スイングウエイトSWに対する下記数式1によって演算されるスイング時の重量感の指標値となるパフォーマンススウィングウェイトPSWの比率A1が1.12以下であるソフトテニス用のラケットフレーム。
(数式1)PSW=C1・SW+C2・MA+C3・BP
但し、前記数式1において、0.37≦C1≦0.48、0.41≦C2≦0.52、0≦C3≦0.11であり、C1+C2+C3=1
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方から下方に向かって順に、環状に延在するフレーム本体、シャフト及びグリップを備えたソフトテニス用ラケットフレームであって、
前記ソフトテニス用ラケットフレームの全体の質量MAが215g以上265g以下、
前記グリップの下端と、前記ソフトテニス用ラケットフレームの全体の重心位置との距離となる重心位置BPが280mm以上295mm以下、
前記グリップの下端側を支点とした前記ソフトテニス用ラケットフレームの慣性モーメントとなるスイングウエイトSW(kg・cm2)が225以下、であり、
前記スイングウエイトSWに対する下記数式1によって演算されるスイング時の重量感の指標値となるパフォーマンススウィングウェイトPSWの比率A1が1.12以下であることを特徴とするソフトテニス用ラケットフレーム。
(数式1)PSW=C1・SW+C2・MA+C3・BP
但し、前記数式1において、0.37≦C1≦0.48、0.41≦C2≦0.52、0≦C3≦0.11であり、C1+C2+C3=1
【請求項2】
上方から下方に向かって順に、環状に延在するフレーム本体、シャフト及びグリップを備えたソフトテニス用ラケットフレームであって、
前記ソフトテニス用ラケットフレームの全体の質量MAが215g以上265g以下、
前記グリップの下端と、前記ソフトテニス用ラケットフレームの全体の重心位置との距離となる重心位置BPが250mm以上280mm以下、
前記グリップの下端側を支点とした前記ソフトテニス用ラケットフレームの慣性モーメントとなるスイングウエイトSW(kg・cm2)が215以下、であり、
前記スイングウエイトSWに対する下記数式1によって演算されるスイング時の重量感の指標値となるパフォーマンススウィングウェイトPSWの比率A1が1.17以下であることを特徴とするソフトテニス用ラケットフレーム。
(数式1)PSW=C1・SW+C2・MA+C3・BP
但し、前記数式1において、0.37≦C1≦0.48、0.41≦C2≦0.52、0≦C3≦0.11であり、C1+C2+C3=1
【請求項3】
上方から下方に向かって順に、環状に延在するフレーム本体、シャフト及びグリップを備えたソフトテニス用ラケットフレームであって、
前記ソフトテニス用ラケットフレームの全体の質量MAが200g以上245g以下、
前記グリップの下端と、前記ソフトテニス用ラケットフレームの全体の重心位置との距離となる重心位置BPが270mm以上300mm以下、
前記グリップの下端側を支点とした前記ソフトテニス用ラケットフレームの慣性モーメントとなるスイングウエイトSW(kg・cm2)が205以下、であり、
前記スイングウエイトSWに対する下記数式1によって演算されるスイング時の重量感の指標値となるパフォーマンススウィングウェイトPSWの比率A1が1.15以下であることを特徴とするソフトテニス用ラケットフレーム。
(数式1)PSW=C1・SW+C2・MA+C3・BP
但し、前記数式1において、0.37≦C1≦0.48、0.41≦C2≦0.52、0≦C3≦0.11であり、C1+C2+C3=1
【請求項4】
前記フレーム本体は、その延在方向に直交する面にて断面視した状態で、表裏方向一端が前記フレーム本体の最も表寄りに位置し、表裏方向他端が前記フレーム本体の最も裏寄りに位置して前記フレーム本体の内周面を形成する膨出面部を備え、
前記膨出面部は、前記フレーム本体の延在方向に直交する面で断面視した状態で、前記フレーム本体の内外方向にて、前記フレーム本体の全体幅の1/3以下の幅に形成されることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載のソフトテニス用ラケットフレーム。
【請求項5】
前記フレーム本体と前記シャフトとを接合する接合部が左右両側に形成され、
前記膨出面部は、前記フレーム本体における左右両側の前記接合部の一方から前記フレーム本体の上部を通って左右両側の前記接合部の他方に亘る領域に形成されることを特徴とする請求項4に記載のソフトテニス用ラケットフレーム。
【請求項6】
前記フレーム本体の外周面に沿う領域を有するグロメットと、
前記グリップの下端を形成するキャップとを更に備え、
前記グロメットには、表裏方向にて前記フレーム本体の全体幅に応じた幅を有する上側重量増加部が前記フレーム本体の上半部に設けられ、
前記キャップには、板状の下側重量増加部が下端面に取り付けられることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載のソフトテニス用ラケットフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾力性に富むゴム製のボールを用いるソフトテニス用のラケットフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
ソフトテニスにあっては、プレーヤがラケットをスイングしてボールを打撃することによってプレーされる。ラケットは、プレーヤが把持するグリップと、このグリップが一端側に設けられたシャフトと、シャフトの他端側に設けられてループ状に形成されたフレームとを備えている。フレームの内側には格子状にストリングが張設され、かかるストリングによってボールを打撃する打球面が形成される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ソフトテニス用ラケットにあっては、プレーの優位性を高めるべく、打球のパワー(威力)を向上することが求められている。パワー向上には、遠心力を利用して強く打球できるよう、重心位置をラケットの上端側に寄せ、いわゆるトップヘビーとなるよう構成することが考えられる。
【0005】
しかし、トップヘビーのラケットは、操作性が低下して打球のコントロールが難しくなるので、重心位置を変化させずに維持したいという相反する要求もある。そこで、本発明者は、重心位置を維持しつつ、グリップ側における質量変化に応じたスイング時の重量感の指標値を所定範囲とすることで、打球のパワー向上を図ることができることを知見した。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、重心位置を維持しつつ、打球のパワー向上を図ることができるソフトテニス用ラケットフレームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における一態様のソフトテニス用ラケットフレームは、上方から下方に向かって順に、環状に延在するフレーム本体、シャフト及びグリップを備えたソフトテニス用ラケットフレームであって、前記ソフトテニス用ラケットフレームの全体の質量MAが215g以上265g以下、前記グリップの下端と、前記ソフトテニス用ラケットフレームの全体の重心位置との距離となる重心位置BPが280mm以上295mm以下、前記グリップの下端側を支点とした前記ソフトテニス用ラケットフレームの慣性モーメントとなるスイングウエイトSW(kg・cm2)が225以下、であり、前記スイングウエイトSWに対する下記数式1によって演算されるスイング時の重量感の指標値となるパフォーマンススウィングウェイトPSWの比率A1が1.12以下であることを特徴とする。
【0008】
本発明における他の一態様のソフトテニス用ラケットフレームは、上方から下方に向かって順に、環状に延在するフレーム本体、シャフト及びグリップを備えたソフトテニス用ラケットフレームであって、前記ソフトテニス用ラケットフレームの全体の質量MAが215g以上265g以下、前記グリップの下端と、前記ソフトテニス用ラケットフレームの全体の重心位置との距離となる重心位置BPが250mm以上280mm以下、前記グリップの下端側を支点とした前記ソフトテニス用ラケットフレームの慣性モーメントとなるスイングウエイトSW(kg・cm2)が215以下、であり、前記スイングウエイトSWに対する下記数式1によって演算されるスイング時の重量感の指標値となるパフォーマンススウィングウェイトPSWの比率A1が1.17以下であることを特徴とする。
【0009】
本発明における更に他の一態様のソフトテニス用ラケットフレームは、上方から下方に向かって順に、環状に延在するフレーム本体、シャフト及びグリップを備えたソフトテニス用ラケットフレームであって、前記ソフトテニス用ラケットフレームの全体の質量MAが200g以上245g以下、前記グリップの下端と、前記ソフトテニス用ラケットフレームの全体の重心位置との距離となる重心位置BPが270mm以上300mm以下、前記グリップの下端側を支点とした前記ソフトテニス用ラケットフレームの慣性モーメントとなるスイングウエイトSW(kg・cm2)が205以下、であり、前記スイングウエイトSWに対する下記数式1によって演算されるスイング時の重量感の指標値となるパフォーマンススウィングウェイトPSWの比率A1が1.15以下であることを特徴とする。
(数式1)PSW=C1・SW+C2・MA+C3・BP
但し、前記数式1において、0.37≦C1≦0.48、0.41≦C2≦0.52、0≦C3≦0.11であり、C1+C2+C3=1
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来のソフトテニス用ラケットと同様の重心位置を維持しつつ、プレーヤが体感するスイング時の重量感を増大させることができ、打球のパワー向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態に係るラケットフレームの外観図であり、
図1Aは、前記ラケットフレームの正面図、
図1Bは、前記ラケットフレームの側面図である。
【
図2】
図1のラケットフレームのバリエーションの1つを示す
図1Aと同様の正面図である。
【
図3】
図1のラケットフレームのバリエーションの1つを示す
図1Aと同様の正面図である。
【
図4】実施の形態に係るラケットフレームを上方から見た図である。
【
図5】グリップを形成するキャップの概略分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施できるものである。以下の図においては、説明の便宜上、一部の構成を省略している。
【0013】
図1は、実施の形態のラケットフレームに係る一態様の外観図であり、
図1Aは、前記ラケットフレームの正面図、
図1Bは、前記ラケットフレームの側面図である。
図1に示すように、ソフトテニス用ラケットフレーム(以下、「ラケットフレーム」とする)10は、長手方向に順に、環状に延在するフレーム本体11と、シャフト12と、グリップ13とを備えている。
【0014】
ここで、本実施の形態では、ラケットフレーム10は、場合によっては「ラケット」と称され、フレーム本体11の内側にはストリング(不図示)が張設されていない状態で構成される。フレーム本体11の内側に格子状にストリングが張設されると、該ストリングによってボールを打撃する打球面が形成される。
【0015】
なお、特許請求の範囲及び本明細書の説明において、特に明示しない限り、
図1中矢印にて示すように、ラケットフレーム10の長手方向を上下方向とし、フレーム本体11が位置する側を上側とし、グリップ13が位置する側を下側とする。よって、上方から下方に向かって順にフレーム本体11、シャフト12及びグリップ13が設けられる。また、上述した打球面に直交する方向を表裏方向とし、
図1Aの紙面手前側(
図1Bの紙面左側)を表側とし、その反対側を裏側とする。更に、打球面上において(即ち打球面に沿う平面上において)、上下方向に直交する方向を左右方向とし、左側及び右側は、
図1Aに示すように、ラケットフレーム10の表側を手前にして見たときを基準とする。
【0016】
フレーム本体11は、表裏方向から見て上下方向に長い楕円に類似したループ形状に形成され、ヘッドと称される場合もある。フレーム本体11の外周面11aには、表裏方向における中央部が凹む溝部11bが設けられている。溝部11bは、フレーム本体11の周方向に沿って連続して設けられている。フレーム本体11には、ストリングが挿通される複数の穴(不図示)が設けられる。かかる複数の穴は、フレーム本体11の外周面11aにおける溝部11bの底側から内周面11cまで貫通して形成され、フレーム本体11の周方向に並んで設けられている。
【0017】
フレーム本体11には、その外周側から複数のグロメット21~24が装着されている。例えば、本実施の形態では、上側のグロメット21、左側のグロメット22、右側のグロメット23、下側のグロメット24で4体設けられる。それらの装着領域としては、表裏方向から見て、上側のグロメット21がフレーム本体11の約10時方向の個所から約2時方向の個所に亘って設けられる。左側及び右側のグロメット22、23は、上側のグロメット21の左右両端近傍からフレーム本体11の左右の側面に形成された最下位の穴に達する位置に亘って設けられている。下側のグロメット24は、後述するヨーク16に設けられている。なお、下側のグロメット24を除く各グロメット21~23は、各種条件に応じ、フレーム本体11の周方向に沿う長さを変えてもよい。
【0018】
各グロメット21~24は、熱可塑性樹脂を射出成形した成形体とすることが例示できる。各グロメット21~24は、フレーム本体11に形成される穴を貫通する複数の筒部(不図示)と、各筒部の基部に連なってフレーム本体11の周方向に延在する帯状部21a~24aを備えている。筒部の内部にはストリングが挿通される。
【0019】
下側のグロメット24を除く各グロメット21~23の帯状部21a~23aは、フレーム本体11の外周面11aにおける溝部11bに嵌るように設けられ、フレーム本体11の外周面11aに沿う領域を形成する。帯状部21a~23aの表裏方向の幅は、溝部11bの表裏方向の幅より大きく又は同一とされ、フレーム本体11の表裏方向の幅より小さく設定されている。なお、上側のグロメット21にあっては、帯状部21aの表裏方向の幅を拡大するように形成される部分を備えた構成とされるが、かかる構成については後述する。
【0020】
シャフト12は、前後方向から見て、グリップ13からフレーム本体11に向かって二股に分岐するスロート15を備え、左右のスロート15の間にはフレーム本体11の一部を形成するヨーク16が形成されている。スロート15は、グリップ13とフレーム本体11との間で円弧状に湾曲する形状に形成されている。フレーム本体11におけるヨーク16と、シャフト12における左右のスロート15とに囲まれて前後方向に開通する開口が形成される。
【0021】
ここで、スロート15の上端と、フレーム本体11の下方における左右両側(ヨーク16の左右両側)との間には、これらを接合する接合部17が一体となって形成される。接合部17は、上下方向において、フレーム本体11の形成位置と重なるように形成されるとともに、フレーム本体11の下部を外側に膨出するように形成される。また、接合部17は、ヨーク16の延出方向両端側に設けられている。
【0022】
フレーム本体11、シャフト12及び接合部17は、例えば繊維強化樹脂や金属等からなる中空の筒状体を成形する他、中空体の内部に発泡材を充填したり木製としたりすることで中実構造としてもよい。
【0023】
グリップ13は、プレーヤがラケットフレーム10を把持する部位とされる。グリップ13は、上下方向に直交する断面形状が八角形状に形成される。グリップ13は、該八角形状に応じた断面形状となる芯部13aと、芯部13aの外周に巻回された合成皮革または天然皮革からなるレザー13bとを備えている。グリップ13の下端側は、キャップ19により形成される。キャップ19周りの構成については後述する。
【0024】
図2及び
図3は、
図1のラケットフレームのバリエーションの1つを示す
図1Aと同様の正面図である。
図1のラケットフレーム10に対し、
図2のラケットフレーム10は、表裏方向から見たシャフト12の形状が異なっている。更に述べると、
図2のラケットフレーム10に比べ、
図1のラケットフレーム10の方が、シャフト12のスロート15の長さが短く形成され、ラケットフレーム10全体の重心点が上方寄り(フレーム本体11の上端寄り)となる。これにより、
図1のラケットフレーム10は、ソフトテニスのプレーにて上部の重量感を重くできるストロークを重視したバリエーションとなり、対象プレーヤとしては後衛向きのバリエーションとなる。以下においては、
図1のラケットフレーム10について、「ストローク重視ラケットフレーム」と称する場合がある。
【0025】
なお、
図1及び
図2のラケットフレーム10は、シャフト12以外の形状は概ね同一に形成される。
【0026】
図1及び
図2のラケットフレーム10の対比にて、
図1のラケットフレーム10に比べ、
図2のラケットフレーム10の方が、スロート15の長さが長く形成され、ラケットフレーム10全体の重心点が下方寄り(グリップ13寄り)となる。これにより、
図2のラケットフレーム10は、ソフトテニスのプレーにて上部の重量感を軽くできるボレーを重視したバリエーションとなり、対象プレーヤとしては前衛向きのバリエーションとなる。以下においては、
図2のラケットフレーム10について、「ボレー重視ラケットフレーム」と称する場合がある。
【0027】
また、
図1のラケットフレーム10に対し、
図3のラケットフレーム10は、表裏方向から見たフレーム本体11の形状が異なっている。更に述べると、
図1のラケットフレーム10に比べ、
図3のラケットフレーム10は、左右幅が最大となる位置が下方に位置し、ラケットフレーム10全体の重心点が若干下方寄り(グリップ13寄り)となる。一方、
図3のラケットフレーム10は、
図2のラケットフレーム10と比べると、ラケットフレーム10全体の重心点が若干上方寄り(フレーム本体11の上端寄り)となる。よって、
図3のラケットフレーム10は、
図1及び
図2のラケットフレーム10の各重心点の中間に重心点が位置し、ソフトテニスのプレーにてストローク及びボレーの両方に平均して良好に対応できるバリエーションとなる。以下においては、
図3のラケットフレーム10について、「アベレージ重視ラケットフレーム」と称する場合がある。
【0028】
図1から
図3の各ラケットフレーム10にて、全体の質量MA、重心位置BP、スイングウエイトSW、スイングウエイトSWに対するパフォーマンススウィングウェイトPSWの比率A1(PSW/SW)は、以下に述べる範囲内に設定される。なお、各値は、ラケットフレーム10にストリングを張設していない状態の測定値または演算値である。
【0029】
[ストローク重視ラケットフレーム(
図1参照)]
質量MA:215g以上265g以下
重心位置BP:280mm以上295mm以下
スイングウエイトSW:225以下
比率A1:1.12以下
[ボレー重視ラケットフレーム(
図2参照)]
質量MA:215g以上265g以下
重心位置BP:250mm以上280mm以下
スイングウエイトSW:215以下
比率A1:1.17以下
[アベレージ重視ラケットフレーム(
図3参照)]
質量MA:200g以上245g以下
重心位置BP:270mm以上300mm以下
スイングウエイトSW:205以下
比率A1:1.15以下
【0030】
質量MAは、ラケットフレーム10全体の質量である。
【0031】
重心位置BPは、上下方向において、グリップ13の下端と、ラケットフレーム10の全体の重心位置(重心点)との距離である。
【0032】
スイングウエイトSWは、グリップ13の下端側を支点としたラケットフレーム10の慣性モーメントである。スイングウエイトSWの単位は(kg・cm2)である。スイングウエイトSWの測定は、回転軸付きのクランプでグリップ13の下端側を保持し、回転軸に設けられた弾性体の力に抗して所定角度回転変位させてから、弾性体の力によって回転軸を支点にラケットフレーム10を振り子状に揺動させる。かかる揺動時における振動周期の値を測定し、該振動周期からスイングウエイトSWが演算される。
【0033】
パフォーマンススウィングウェイトPSWは、スイング時の重量感の指標値であり、ラケットフレーム10における上述したスイングウエイトSW、質量MA及び重心位置BPと、以下の数式1とを用いて演算される値である。
PSW=C1・SW+C2・MA+C3・BP・・・(数式1)
C1:第1寄与率
C2:第2寄与率
C3:第3寄与率
但し、C1+C2+C3=1
【0034】
ここで、第1~第3寄与率C1~C3は、スイング時の重量感としてスイングウエイトSWよりパフォーマンススウィングウェイトPSWの方が精度良く対応する値とするため、以下の範囲に設定される。
0.37≦C1≦0.48
0.41≦C2≦0.52
0≦C3≦0.11
但し、C1+C2+C3=1
【0035】
第1~第3寄与率C1~C3を上記範囲内にて設定する際の優先順位は、第1寄与率C1、第2寄与率C2、第3寄与率C3の順とされる。
【0036】
数式1にあっては、ラケットフレーム10の質量MA、重心位置BP、スイングウエイトSWに第1~第3寄与率C1~C3を乗じてパフォーマンススウィングウェイトPSWを演算している。よって、数式1では、グリップ13側の質量が変化した場合の重心位置BPの変化に応じてパフォーマンススウィングウェイトPSWの演算結果が増減する。これにより、パフォーマンススウィングウェイトPSWは、プレーヤが体感するスイング時の重量感と精度良く対応する値となっている。
【0037】
本実施の形態のラケットフレーム10は、ストローク重視、ボレー重視及びアベレージ重視の何れのバリエーションでも、質量MA及び重心位置BPは、対応するバリエーションの従来のラケットフレーム10と同一ないし近似した値としている。一方、スイングウエイトSW、スイング時の重量感のパフォーマンススウィングウェイトPSWは、何れのバリエーションでも従来のラケットフレーム10より大きい値としている。また、本実施の形態のラケットフレーム10にて、スイングウエイトSWをパフォーマンススウィングウェイトPSWで除算した比率A1は、何れのバリエーションでも従来のラケットフレーム10より小さい値としている。
【0038】
これにより、本実施の形態の各バリエーションのラケットフレーム10は、プレーヤが体感するスイング時の重量感を増大させ、遠心力を利用して強く打球できるようになり、打球のパワー(威力)を向上することができる。しかも、質量MA及び重心位置BPは、従来のラケットフレーム10と近い値として維持できるので、操作性が低下することを抑制して打球のコントロール性能を良好に保つことができる。このように、本実施の形態では、コントロール性能の維持と、打球のパワー向上とを同時に実現することができる。
【0039】
本実施の形態にて、質量MA、重心位置BP、スイングウエイトSW、パフォーマンススウィングウェイトPSW及び比率A1を上述した範囲に設定するにあたり、従来に比べ、上側のグロメット21及びグリップ13の重量を増加している。更に、かかる重量の増加と併せ、増加した重量分を上側のグロメット21及びグリップ13以外の構成にて軽量化し、該軽量化に伴いフレーム本体11の強度向上を図っている。以下、上側のグロメット21の重量を増加する構造、グリップ13の重量を増加する構造、フレーム本体11の強度向上を図る構造について説明する。
【0040】
図4は、実施の形態に係るラケットフレームを上方から見た図である。
図1A及び
図4に示すように、フレーム本体11の上半部に設けられる上側のグロメット21にあっては、左右両側に形成されるバンパー部21bを備えている。
【0041】
バンパー部21bは、帯状部21aの表裏方向両側に形成され、表裏方向にてフレーム本体11の全体幅と同一または該全体幅に対して若干大小する幅に形成され、フレーム本体11の全体幅に応じた幅を有している。ここで、従来のソフトテニス用ラケットフレームにあっては、上側のグロメット21にてフレーム本体11の外周面11aに沿う領域は帯状部21aだけで形成される。よって、本実施の形態のように、上側のグロメット21にバンパー部21bが形成されることで、バンパー部21b分の重量を増加させることができ、バンパー部21bによって上側重量増加部が構成される。
【0042】
本実施の形態にて、バンパー部21bは、表裏方向から見て、フレーム本体11の約10時から約11時方向の間の範囲と、約1時から約2時方向の間の範囲とに形成される。これにより、ラケットフレーム10にて、テニスコートのサーフェイスに特に接触し易い部分を効果的に保護することができる。また、上側のグロメット21の外周面には、複数のディンプルが形成され、空気抵抗の低減、ひいては、振り抜き易さの向上を図っている。
【0043】
図1に戻り、グリップ13の下端側を形成するキャップ19は、グリップ13の芯部13aの下端側に被せるよう装着され、外周面にはレザー13bが巻回される。
図5は、グリップを形成するキャップの概略分解斜視図である。
図5に示すように、キャップ19は、下端面を陥没して形成される凹み部19aを備え、凹み部19aの内部(底部)に板状部材Bが取り付けられる。板状部材Bには、図示省略したがロゴマーク等が表される。
【0044】
ここで、従来のソフトテニス用ラケットフレームにおいても、キャップ19に板状部材が取り付けられる。本実施の形態の板状部材Bは、従来の板状部材に比べ、厚みや比重を増加したり、2枚重ねて形成することで重量を増加させることができ、板状部材Bによって下側重量増加部が構成される。
【0045】
図6Aは、
図1AのA-A線断面図である。
図6Aは、フレーム本体11の延在方向に直交する面でフレーム本体11を断面視した図である。
図6Aに示すように、フレーム本体11の内周面11cが膨出面部31によって形成される。また、フレーム本体11の外周面11aが一対の傾斜面部32によって形成され、フレーム本体11の溝部11bが溝形成面33によって形成される。よって、フレーム本体11は、表側及び裏側の両方向に向かってフレーム本体11の内外方向の幅が次第に細くなる尖った形状を有している。
【0046】
図6Aの断面視した状態で、膨出面部31は、表側の端部(表裏方向一端)がフレーム本体11の最も表寄りに位置し、裏側の端部(表裏方向他端)がフレーム本体11の最も裏寄りに位置している。膨出面部31は、表裏方向中間部が最も内方に膨出する円弧状に形成されている。一対の傾斜面部32は、表裏方向両側から溝形成面33に向かうに従って接近するように形成される。
【0047】
膨出面部31は、ループ状のフレーム本体11の周方向に連続して形成される。例えば、膨出面部31は、フレーム本体11の全周に亘って形成したり、左右両側の接合部17の一方からフレーム本体11の上部を通って左右両側の接合部17の他方に亘る領域に形成したりすることができる。
【0048】
図6Aの断面視した状態で、フレーム本体11の内外方向にて、膨出面部31の幅Wbは、フレーム本体11の全体幅Waの1/3以下に形成されている。ここで、
図6Bにて、比較構造のフレーム本体111における断面図を示す。
図6Bの比較構造にて、フレーム本体111の内周面を形成する膨出面部131は、フレーム本体111の内外方向にて、膨出面部131の幅Wdは、フレーム本体111の全体幅Wcの1/2に形成されている。
【0049】
図6Bの比較構造及び上記実施の形態それぞれのフレーム本体111、11全体に対し、左右両側から中央に向かう方向(たわみ方向)に荷重を加えるシミュレーションを行った。すると、該たわみ方向における剛性は、
図6Bの比較構造に比べて上記実施の形態の方が19%増加することが確認できた。これにより、フレーム本体11の強度向上を図ることができ、フレーム本体11を軽量化しても強度を維持することが可能となる。
【0050】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状、方向などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0051】
例えば、シャフト12は、上記実施の形態の構成に限らず、二股に分岐しないものとしてもよい。
【0052】
また、上側のグロメット21におけるバンパー部21bの形状は、上記実施の形態に形状に限られるものでなく、フレーム本体11の周方向や表裏方向に適宜形成位置を変更してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、スイング時の重量感の指標値を増大して打球のパワー向上を図ることができるソフトテニス用ラケットフレームに関する。
【符号の説明】
【0054】
10 :ラケットフレーム(ソフトテニス用ラケットフレーム)
11 :フレーム本体
11a :外周面
11c :内周面
12 :シャフト
13 :グリップ
17 :接合部
19 :キャップ
21 :上側のグロメット(グロメット)
21b :バンパー部(上側重量増加部)
31 :膨出面部
B :板状部材(下側重量増加部)