(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175694
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】紙製リール
(51)【国際特許分類】
B65H 75/14 20060101AFI20241212BHJP
B65H 75/18 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B65H75/14
B65H75/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093580
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】591030754
【氏名又は名称】旭紙管工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128277
【弁理士】
【氏名又は名称】專徳院 博
(72)【発明者】
【氏名】泉 昌志
【テーマコード(参考)】
3F058
【Fターム(参考)】
3F058AA04
3F058AB03
3F058AC00
3F058BB03
3F058CA09
3F058DA05
3F058DB03
3F058DB05
3F058DC04
(57)【要約】
【課題】剛性に優れフランジが変形し難い紙製リールを提供する。
【解決手段】紙製リール1は、円筒状の紙管からなる巻胴10と、前記巻胴10の内側に配置された円筒状の紙管からなる中芯40と、前記巻胴10の両端及び前記中芯40の両端に連結する板紙からなる一対のフランジ20と、を備え、前記フランジ20は、中心に前記中芯40が嵌る円孔を有し、前記円孔の外側に前記巻胴10が嵌る嵌合孔37を有し、フランジ全体に放射状に凹部29が設けられ、前記凹部29は、周方向に一定の間隔を隔てて複数設けられ、各凹部29の両端部は、それぞれ前記フランジ20の外周縁23及び前記円孔の周縁34につながる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の紙管からなる巻胴と、
前記巻胴の内側に配置された円筒状の紙管からなる中芯と、
前記巻胴の両端及び前記中芯の両端に連結する板紙からなる一対のフランジと、
を備え、
前記フランジは、
中心に前記中芯が嵌る円孔を有し、
前記円孔の外側に前記巻胴が嵌る嵌合孔を有し、
フランジ全体に放射状に凹部又は凸部が設けられ、
前記凹部又は凸部は、周方向に一定の間隔を隔てて複数設けられ、
各凹部又は凸部の両端部は、それぞれ前記フランジの外周縁及び前記円孔の周縁につながることを特徴とする紙製リール。
【請求項2】
前記凹部又は凸部は、板紙をプレス加工し形成されていることを特徴とする請求項1に記載の紙製リール。
【請求項3】
前記凹部又は凸部の断面形状が、台形状又は円弧状又は半円状又はU字状又はV字状であることを特徴とする請求項1に記載の紙製リール。
【請求項4】
前記嵌合孔が、前記凹部又は前記フランジの基部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の紙製リール。
【請求項5】
連結された前記巻胴と前記フランジとの分離を防止する分離防止手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の紙製リール。
【請求項6】
前記分離防止手段が、前記巻胴の端部に設けられ前記嵌合孔から突出し、前記フランジに係止する鉤部を有する凸片であることを特徴とする請求項5に記載の紙製リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接ワイヤなど線材を送り出し可能に巻き付ける紙製のリールに関する。
【背景技術】
【0002】
溶接ワイヤなど線材を送り出し可能に巻き付けるリールは、合成樹脂製のリールが多く使用されているが、環境・コスト意識の高まり等から紙製リールも開発されている。紙材は、合成樹脂材に比較して剛性が低く変形し易いため、紙製リールにおいてはフランジの変形等が課題となる。また紙製リールでは、巻胴(巻芯)からフランジの固定が緩み、また外れ易いことも課題となっている。
【0003】
これまでにも紙製リールにおいて、フランジの変形防止等の取り組みがなされている。例えば、フランジの外周縁の内側に線状・帯状の第1圧縮部を、さらにフランジに設けられた覗き窓の内側に線状・帯状の第2圧縮部を設けることでフランジの変形防止効果を高めたリールがある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
紙製リールにおいて、巻胴からフランジの固定が緩み、また外れ易いとの課題に対しては、巻胴の両端に凸部を、フランジに巻胴の凸部が嵌り込む開口部を設け、巻胴の凸部をフランジの開口部に嵌め入れこれらを接着した紙製リールが提案されている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-76865号公報
【特許文献2】特開2016-179883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおりこれまでにも紙製リールにおいて、フランジの変形、巻胴からフランジの固定が緩み又は外れることに対し対策が講じられているものの十分とは言えず、さらなる改善が待たれている。
【0007】
本発明の目的は、剛性に優れフランジが変形し難い紙製リールを提供することである。また本発明は、フランジが巻胴から外れ難い紙製リールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、円筒状の紙管からなる巻胴と、前記巻胴の内側に配置された円筒状の紙管からなる中芯と、前記巻胴の両端及び前記中芯の両端に連結する板紙からなる一対のフランジと、を備え、前記フランジは、中心に前記中芯が嵌る円孔を有し、前記円孔の外側に前記巻胴が嵌る嵌合孔を有し、フランジ全体に放射状に凹部又は凸部が設けられ、前記凹部又は凸部は、周方向に一定の間隔を隔てて複数設けられ、各凹部又は凸部の両端部は、それぞれ前記フランジの外周縁及び前記円孔の周縁につながることを特徴とする紙製リールである。
【0009】
本発明に係る紙製リールにおいて、前記凹部又は凸部は、板紙をプレス加工し形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る紙製リールにおいて、前記凹部又は凸部の断面形状が、台形状又は円弧状又は半円状又はU字状又はV字状であることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る紙製リールにおいて、前記嵌合孔が、前記凹部又は前記フランジの基部に設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る紙製リールは、連結された前記巻胴と前記フランジとの分離を防止する分離防止手段を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る紙製リールにおいて、前記分離防止手段が、前記巻胴の端部に設けられ前記嵌合孔から突出し、前記フランジに係止する鉤部を有する凸片であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、剛性に優れフランジが変形し難い紙製リールを提供することができる。また本発明によれば、フランジが巻胴から外れ難い紙製リールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態の紙製リール1の斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態の紙製リール1の上フランジ21を取り外した状態を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態の紙製リール1のフランジ20の形状を説明するための図である。
【
図4】本発明の第1実施形態の紙製リール1の平面図である。
【
図5】
図4の切断線A-Aで切断して見た断面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態の紙製リール1の分離防止手段50、55、60を説明するための図である。
【
図7】本発明の実施例に記載の試作した紙製リール1の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の第1実施形態の紙製リール1の斜視図、
図2は、本発明の第1実施形態の紙製リール1の上フランジ21を取り外した状態を示す斜視図、
図3は、本発明の第1実施形態の紙製リール1のフランジ20の形状を説明するための図であり、理解を容易にするために上フランジ21及び下フランジ22の外周縁23に該当する部分にドットを付している。
図4は、本発明の第1実施形態の紙製リール1の平面図、
図5は、
図4の切断線A-Aで切断して見た断面図である。
【0017】
本実施形態において、中心線Mの長手方向を軸線方向、中心線Mに直交する方向を径方向、中心線Mを中心とする円弧方向を周方向とする。図中のXYZ軸は、3次元直交座標系のX軸,Y軸,Z軸に対応し、本実施形態において、中心線MをY軸と平行とし、X軸の矢印方向を左、Y軸の矢印方向を上、Z軸の矢印方向を後とする。また本実施形態において、正面図は、X軸Y軸を含む面を正面としZ軸の矢印方向に見た図、右側面図は、Y軸Z軸を含む面を正面としX軸の矢印方向に見た図である。
【0018】
本発明の第1実施形態1の紙製リール1は、溶接ワイヤなど線材を送り出し可能に巻き付ける紙製のリールであり、線材を巻き付ける巻胴10と、巻胴10の両端に対向配置された一対のフランジ20と、一対のフランジ20と連結する中芯40とを有する。
【0019】
巻胴10は、円筒形状の紙管からなる。巻胴10の長さ、外径は、特に限定されるものでなく、用途に応じて適宜決定すればよい。紙管には公知の紙管を使用することが可能であり、紙管の厚さ(肉厚)は、用途に応じて容易に変形しない厚さが選択される。紙管は、剛性が高く強度を有するので巻胴の素材として好ましい。
【0020】
フランジ20は、巻胴10の両端に配置される一対のフランジ20からなる。ここでは、便宜上、巻胴10の上端部12に配置されるフランジ20を上フランジ21、巻胴10の下端部13に配置されるフランジ20を下フランジ22と記す。本実施形態の紙製リール1は、上下対象であり上フランジ21と下フランジ22とは、同一形状・寸法・構造である。
【0021】
フランジ20は、平面視において円板形状を有し、中心に中芯40が嵌る円孔33、径方向の中間部に巻胴10の上端部12又は下端部13が嵌る嵌合孔37が設けられている。
【0022】
本実施形態の紙製リール1では、フランジ20に厚さのある板紙、例えば厚さ3mmの板紙を使用する。板紙自体は、公知の板紙を使用することができる。板紙は、複数枚のシート状の紙が積層、接着された厚さのある紙であり、剛性が高く変形し難いのでフランジ20の素材として好ましい。
【0023】
フランジ20には、放射状の凹部(凹溝)29が設けられている。この凹部29は、フランジ20の剛性を高め変形防止を目的とするものである。本実施形態において凹部29は、周方向に8個間隔を開けて設けられている。各凹部29は、フランジ20に設けられた円孔33の周縁34及びフランジ20の外周縁23につながるように設けられている。本実施形態において、隣り合う凹部29の間の部分を基部25と記す。
【0024】
紙に凹部を設ける方法としてプレス加工がある。厚さのある板紙をプレス加工し、凹部を設ける場合には、基部と凹部との境界にひび割れ、破損、しわが生じ易く、特に凹部の深さが深い場合にはなおさらである。このため従来の紙製リールに設けられているプレス溝の深さは浅い。例えば公開実用平成1-90763号公報に記載のリールでは、鍔(フランジ)に1.2mmの厚紙を用い、プレス溝の幅が2mm、深さは0.1~0.2mm程度である。以上のように厚さのある板紙をプレス加工して深い凹部を設けるには、ひび割れ、破損対策が必要である。
【0025】
本実施形態のフランジ20は、凹部29の径方向の端部をフランジ20に設けられた円孔33の周縁34及びフランジ20の外周縁23につなげることで長手方向のひび割れ、破損、しわの発生を防止する。凹部29と基部25との境界のひび割れ、破損、しわの発生は、以下の方法で防ぐ。板紙は、複数枚の紙が積層され接着剤で接着され製造される。そこで本発明では、板紙を構成する紙が積層され接着剤で接着された後、接着剤が完全に硬化する前にプレス加工することで凹部29と基部25との境界のひび割れ、破損、しわの発生を防ぐ。
【0026】
これにより本実施形態の紙製リール1は、後述の実施例に示すとおり厚さ3mmの板紙に対し、ひび割れ、破損させることなく又しわを発生させることなく深さ3mmの凹部29を設けることができた。
【0027】
本実施形態のフランジ20は、放射状の凹部29がフランジの周方向に間隔を開けて複数設けられているので、フランジ全体が波打った波板形状・構造のフランジということができる。このような波板構造のフランジは、パプルモールドにより製作することができるが、パプルモールドにより製作される波板構造のフランジは、剛性が低く好ましくない。
【0028】
上記のとおり本実施形態のフランジ20は、波板構造のフランジと捉えることができるので、
図1~
図6において凹部29を基部(ベースとなる部分)と捉えれば、基部25は凸部と言える。よって本実施形態のフランジ20は、複数の放射状の凸部を備えるフランジと捉えることができる。この場合には、基部に嵌合孔37を設け、凸部をプレス加工により設けることとなる。凸部の加工要領は、前記凹部29の加工要領と同じである。
【0029】
本実施形態のフランジ20は、凹部29の断面形状が台形状である。ここで台形状には実質的に台形とみなせる形状を含むものとする。凹部29の底面30は、基部25と平行であり、凹部29の底面30と凹部29の側面31との境界、凹部29の側面31と基部25との境界は、僅かに湾曲している。これら境界を湾曲させることで、この部分でのひび割れ、破損を防ぐことができる。
【0030】
本実施形態では凹部29の断面形状が台形状であるが、凹部29の断面形状を円弧状、半円状、U字状、V字状としてもよい。ここで円弧状、半円状、U字状、V字状には実質的に円弧状、半円状、U字状、V字状とみなせる略円弧状、略半円状、略U字状、略V字状も含まれる。
【0031】
凹部29の個数は、特に限定されるものではないが6個、8個が好ましい。凹部29の幅(周方向)は、特に限定されるものでないが基部25の幅と同程度のものが好ましい。
【0032】
円孔33は、中芯40の外径と略同一の直径を有するフランジ20を貫通する円孔であり、フランジ20の中心に設けられている。
【0033】
嵌合孔37は、巻胴10の上端部12又は下端部13が嵌り込むフランジ20を貫通する孔である。嵌合孔37の幅Wは、巻胴10の肉厚と略同一である。嵌合孔37は、各凹部29に設けられており、フランジ20の中心点Oから等距離に設けられている。各嵌合孔37の結ぶ内側の円及び外側の円の直径は、巻胴10の内径及び外径と略同一である。
【0034】
中芯40は、円筒形状の紙管からなる。中芯40の長さは、巻胴10の長さに一対のフランジ20の厚さを加算した長さである。中芯40の直径は、紙製リール1の用途に応じて適宜決定すればよい。紙管は、剛性が高く強度を有するので中芯40の素材として好ましい。
【0035】
以上、各部材で構成される紙製リール1は、胴巻10の上面15に上フランジ21の基部25の裏面27が突き当たり、巻胴10の上端部12が上フランジ21の嵌合孔37に嵌り込むように、同様に、胴巻10の下面17に下フランジ22の基部25の上面26が突き当たり、巻胴10の下端部13が下フランジ22の嵌合孔37に嵌り込むよう取付けられる。
【0036】
このとき胴巻10と上フランジ21及び下フランジ22の各接触部分に接着剤が塗布され、胴巻10と上フランジ21及び下フランジ22とが接合される。
【0037】
また上フランジ21及び下フランジ22の円孔33の周縁34に接着剤が塗布され、上フランジ21及び下フランジ22の円孔33に中芯40が嵌め込まれ、中芯40と上フランジ21及び下フランジ22とが接合される。
【0038】
上記構成からなる本実施形態の紙製リール1は、フランジ20が厚さのある板紙からなり、さらにフランジ全体に放射状の複数の凹部29が設けられているので、フランジ20が変形し難い。また本実施形態の紙製リール1は、厚さのある板紙に対してもひび割れ又は破損することなく深い凹部29を設けることができるので、凹部29を設けることによる強度低下はない。
【0039】
本実施形態の紙製リール1は、各凹部29の底面30が同じ高さであり、各凹部29の底面30を結ぶ面が各基部25を結ぶ面と平行である。また各凹部29の底面30を結ぶ面は巻胴10と直交するため、凹部29を有しないフランジを使用した紙製リールと同様に線材を巻き付け、また巻き付けた線材を送り出すことができる。
【0040】
本実施形態の紙製リール1は、巻胴10の両端部が部分的にフランジ20の嵌合孔37に嵌り込み、さらに巻胴10の上面15及び下面17がフランジ20の基部25に接触するように取付けられ、各接触部が接着剤で接着されるので巻胴10とフランジ20とがしっかりと固定される。
【0041】
フランジ20に設けられた凹部29は、端部が円孔33の周縁34とつながるように設けられている。このため円孔33の周縁34は、上下方向に波打つ形となる。このためここに嵌り込む中芯40とフランジ20との接触面積が広くなり、中芯40とフランジ20とがしっかりと固定される。
【0042】
また本実施形態の紙製リール1は、素材が紙材であり、構造が単純でまたフランジ20の凹部29をプレス加工により設けることができるので製作工程も少なく安価に製造することができる。
【0043】
次に、巻胴10とフランジ20との他の接合要領を示す。
図6は、本発明の第1実施形態の紙製リール1の分離防止手段50、55、65を説明するための図である。分離防止手段50、55、65は、巻胴10に接合されたフランジ20が胴巻10から外れないようにするためのものである。
【0044】
図6(A)(B)に示す分離防止手段50は、巻胴10の上面15から上方に突出する凸片51であり、凸片51には、上フランジ21に係止する鉤部52が設けられている。鉤部52を有する凸片51は、巻胴10に一体的に設けられている。凸片51は、幅が嵌合孔37の幅Wと略同一であり、嵌合孔37と同数設けられている。鉤部52は、凸片51の一方の側面から中央に向け切欠き53を設け形成されている。
【0045】
切欠き部53の高さは、フランジ20の基部25の厚さと略同一であり、巻胴10に上フランジ21を取付け、上フランジ21を回転させたとき、切欠き部53が上フランジ21の基部25に嵌り込み係止する位置に設けられている。各鉤部52の切欠き53の向きは同じである。巻胴10の下面17にも上面15と同様に、鉤部52を備える凸片51が設けられる。
【0046】
このような凸片51を備える巻胴10は、凸片51が嵌合孔37に嵌り込むよう巻胴10にフランジ20を取付け、フランジ20を回転させると鉤部52がフランジ20の基部25に係止する。巻胴10とフランジ20との各接触部に接着剤が塗布され、胴巻10と上フランジ21及び下フランジ22とが接合される点は、第1実施形態の紙製リール1と同じである。
【0047】
分離防止手段50を備える紙製リール1は、鉤部52がフランジ20の基部25に係止するので巻胴10に接合されたフランジ20は、胴巻10から容易に外れない。鉤部52を備えるこの分離防止手段50は、構造が単純であり製作し易く、また取り付け易い。
【0048】
図6(C)(D)に示す分離防止手段55は、巻胴10の上面15から上方に突出する凸片56が設けられ、凸片56には、抜止片60が挿通する貫通孔57が設けられている。貫通孔57を有する凸片56は、巻胴10に一体的に設けられている。凸片56は、幅が嵌合孔37の幅Wと略同一であり、嵌合孔37と同数設けられている。貫通孔57は、巻胴10に上フランジ21を取付けたとき下面58が凹部29の上面と面一となるように設けられている。巻胴10の下面17にも上面15と同様に、貫通孔57を備える凸片56が設けられる。
【0049】
抜止片60は、貫通孔57と略同一の大きさ・断面を有する板紙であり、長手方向の一方に鍔61を備える。
【0050】
このような凸片56を備える巻胴10は、凸片56が嵌合孔37に嵌り込むよう巻胴10にフランジ20を取付け、貫通孔57に抜止片60を差し込み固定する。巻胴10とフランジ20と抜止片60との各接触部に接着剤が塗布され、胴巻10と上フランジ21及び下フランジ22とが接合される点は、第1実施形態の紙製リール1と同じである。
【0051】
分離防止手段55を備える紙製リール1は、抜止片60がフランジ20の凹部29に係止するので巻胴10に接合されたフランジ20は、胴巻10から容易に外れない。この分離防止手段55は、構造が単純であり製作し易い。
【0052】
図6(E)(F)に示す分離防止手段65は、巻胴10の上面15から上方に突出する僅かに間隔を開けて設けられた2つの小凸片66、67であり、嵌合孔37と同数設けられている。2つ並んだ小凸片66、67は、嵌合孔37に挿通可能であり、巻胴10に一体的に設けられている。巻胴10の下面17にも上面15と同様に、僅かに間隔を開けて設けられた2つの小凸片66、67が、嵌合孔35と同数設けられている。
【0053】
このような小凸片66、67を備える巻胴10は、小凸片66、67が嵌合孔37に嵌り込むよう巻胴10にフランジ20を取付け、嵌合孔37から突出した小凸片66、67を折り曲げフランジ20の凹部29に接着する。巻胴10とフランジ20との各接触部に接着剤が塗布され、胴巻10と上フランジ21及び下フランジ22とが接合される点は、第1実施形態の紙製リール1と同じである。
【0054】
分離防止手段65を備える紙製リール1は、折り曲げられた小凸片66、67がフランジ20の凹部29に接着されているので巻胴10に接合されたフランジ20は、胴巻10から容易に外れない。この分離防止手段65は、構造が単純であり製作し易い。
【0055】
以上、第1実施形態の紙製リール1を用いて本発明に係る紙製リールを説明したが、本発明に係る紙製リールは、上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で変更して使用することができる。
【0056】
第1実施形態の紙製リール1は、フランジ20の平面視における外形が円であるが、フランジ20の平面視における外形は、六角形、八角形など多角形であってもよい。またフランジ20は、板紙を構成する積層前のシート状の紙をプレス加工し凹部29を設け、その後、接着剤で接着させてもよい。この方法は、プレス加工する際の紙材が薄いため深い凹部29を設けることができる。一方で積層する各シート毎に凹部29の大きさ(寸法)を変える必要がある。
【0057】
図面を参照しながら好適な紙製リールについて説明したが、当業者であれば、本件明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。従って、そのような変更及び修正は、請求の範囲から定まる発明の範囲内のものと解釈される。
【実施例0058】
以下の要領で第1実施形態と同様の紙製リールを試作した。
図7は、試作した紙製リールの外観図である。以下、第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付す。
【0059】
厚さ3mm、外径280mmの板紙の中心に55mmの円孔33を設け、さらに中心点Oから外径160mm、内径150mmの位置に円弧の長さが38mmの嵌合孔37を8個設け、これをプレス加工し円孔33の周縁34及び外周縁23につながる8個の凹部29を備えるフランジ20を製作した。凹部29の深さは3mm、凹部29の幅は、フランジ20の外周縁23で約55mmである。なお、板紙のプレス加工は、板紙を構成する紙が積層され接着剤で接着された後、接着剤が完全に硬化する前にプレス加工を行った。
【0060】
外径が160mm、内径150mm、長さ100mmの紙管製の巻胴10の上端部12、下端部13、巻胴10と接触する基部25の接触面に接着剤を塗布し、嵌合孔37に巻胴10を嵌め込みフランジ20と巻胴10とを接合した。またフランジ20の円孔33の周縁34に接着剤を塗布し、ここに中芯40を嵌め込み接合した。
【0061】
以上により凹部29にひび割れ、破損、しわのない紙製リール1を製作した。この紙製リール1は、フランジ20に厚さ3mmの板紙を使用し、さらにフランジ20に8個の台形状の凹部29を設けたので、フランジ20が変形し難く剛性の高い紙製リールとなった。