(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175696
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20241212BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H01F27/29 G
H01F27/29 123
H01F27/29 P
H01F27/28 128
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093584
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100085143
【弁理士】
【氏名又は名称】小柴 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】孝山 康太
【テーマコード(参考)】
5E043
5E070
【Fターム(参考)】
5E043AA01
5E043AB01
5E043EA01
5E043EB05
5E070AA01
5E070AB01
5E070BA03
5E070BB03
5E070EA01
5E070EB03
(57)【要約】
【課題】コイル部品において、コアの鍔部に端子電極および溝が設けられ、端子電極に接続されるワイヤは溝に受け入れられる。この構造において、コアの鍔部に設けられる溝へのワイヤの進入動作の自由度を高め、かつ溝内でのワイヤの位置のばらつきを低減する。
【解決手段】鍔部5の実装面7には、ワイヤ23の端部を受け入れるためのもので、鍔部5の内側端面9と外側端面10とを結ぶ方向に延びる溝25が設けられる。溝25は、内側端面9と外側端面10とを結ぶ方向に延びる第1辺27と第2辺28とに挟まれた底面29を形成しており、第1辺は27、第2辺28に比べて、巻芯部3からのワイヤ23の引き出し位置33により近くに位置している。第1辺27および第2辺28間の間隔は、内側端面9側でより狭く、外側端面10側でより広い。第1辺27が軸線方向Aに対してなす角度は、第2辺28が軸線方向に対してなす角度より小さい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びる巻芯部ならびに前記巻芯部の前記軸線方向における互いに逆の第1端部および第2端部にそれぞれ設けられた第1鍔部および第2鍔部を有する、コアを備え、
前記第1鍔部および前記第2鍔部の各々は、実装時において実装基板側に向く実装面と、前記巻芯部側に向く内側端面と、前記内側端面とは反対側の外側端面と、を有し、さらに、
前記第1鍔部および前記第2鍔部の少なくとも前記実装面にそれぞれ設けられた、第1端子電極および第2端子電極と、
前記第1端子電極および前記第2端子電極間に接続されながら前記巻芯部のまわりに巻回された、少なくとも1本のワイヤと、
を備え、
前記第1鍔部および前記第2鍔部の少なくとも一方の前記実装面には、前記ワイヤの端部を受け入れるためのもので、前記内側端面と前記外側端面とを結ぶ方向に延びる溝が設けられ、
前記溝は、少なくとも前記内側端面側が開口した状態であり、前記内側端面と前記外側端面とを結ぶ方向にそれぞれ延びる第1辺と第2辺とに挟まれた底面、ならびに前記底面から前記第1辺および前記第2辺をそれぞれ介して立ち上がる第1立上がり面および第2立上がり面を形成しており、
前記第1辺は、前記第2辺に比べて、前記巻芯部からの前記ワイヤの引き出し位置により近くに位置しており、
前記第1辺および前記第2辺間の間隔は、前記内側端面側でより狭く、前記外側端面側でより広くされるとともに、
前記第1辺が前記軸線方向に対してなす角度は、前記第2辺が前記軸線方向に対してなす角度より小さい、
コイル部品。
【請求項2】
前記溝は、前記第1鍔部および前記第2鍔部の前記実装面にそれぞれ設けられる、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記溝は前記内側端面側から前記外側端面側に向かってより浅くなるように、前記底面に勾配が付与されている、請求項1または2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第1立上がり面および前記第2立上がり面の各々と前記底面とがなす内側の角度は鈍角である、請求項1または2に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記実装面の延びる方向であって前記軸線方向に直交する方向を幅方向としたとき、前記溝は、前記巻芯部から引き出される前記ワイヤの位置により近くなるように、前記幅方向に片寄って位置している、請求項1または2に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第1辺は、前記軸線方向と平行に延びる、請求項5に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記第1辺と前記第2辺との間隔は、前記ワイヤの直径より広い、請求項1または2に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記実装面と前記底面との高低差で表わされる前記溝の深さは、前記ワイヤの直径より浅い、請求項1または2に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、巻線型のコイル部品に関するもので、特に、コアに設けられる鍔部における、ワイヤとの接続部分の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この発明にとって興味あるコイル部品がたとえば特開2006-100748号公報(特許文献1)に記載されている。特許文献1に記載のコイル部品は、巻芯部ならびにその軸線方向における互いに逆の第1端部および第2端部にそれぞれ設けられた第1鍔部および第2鍔部を有する、コアと、第1鍔部および第2鍔部にそれぞれ設けられた第1端子電極および第2端子電極と、第1端子電極および第2端子電極間に接続されながら巻芯部のまわりに巻回された、ワイヤと、を備えている。
【0003】
第1鍔部および第2鍔部の各々は4つの周面を有する断面四角形である。4つの周面の各々には、溝が設けられている。溝は、巻芯部の軸線方向に平行な2つの辺に挟まれた底面、ならびに当該底面から上記2つの辺をそれぞれ介して立ち上がる2つの立上がり面を形成している。上述した端子電極は、鍔部のいずれかの周面に設けられる。ワイヤの端部は、当該周面に設けられた溝内に受け入れられた状態で、端子電極に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の溝において、底面を規定する2つの辺および2つの立上がり面は、巻芯部の軸線方向に平行に延びている。したがって、巻芯部から溝にまで引き出されて端子電極に接続されるワイヤの引き出し角度が制限される傾向があり、ワイヤの溝への進入動作の自由度が比較的低い。たとえば、ワイヤは、通常、溝に斜めに進入するが、このとき、巻芯部からのワイヤの引き出し位置により遠い溝の立上がり面に、ワイヤの先端が当たることがあり、このことがワイヤの溝への進入動作を制限することがある。
【0006】
また、溝において、底面を規定する2つの辺および2つの立上がり面は、巻芯部の軸線方向に平行に延びているため、ワイヤを受け入れ可能とする溝の幅は広くなる傾向があり、そのため、溝内でのワイヤの位置のばらつきが大きくなってしまう。
【0007】
そこで、この発明の目的は、コアの鍔部に設けられる溝へのワイヤの進入動作の自由度を高め、かつ溝内でのワイヤの位置のばらつきを低減し得る構造を有する、コイル部品を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るコイル部品は、軸線方向に延びる巻芯部ならびに巻芯部の軸線方向における互いに逆の第1端部および第2端部にそれぞれ設けられた第1鍔部および第2鍔部を有する、コアを備える。
【0009】
上記第1鍔部および第2鍔部の各々は、実装時において実装基板側に向く実装面と、巻芯部側に向く内側端面と、内側端面とは反対側の外側端面と、を有する。
【0010】
コイル部品は、さらに、第1鍔部および第2鍔部の少なくとも実装面にそれぞれ設けられた、第1端子電極および第2端子電極と、第1端子電極および第2端子電極間に接続されながら巻芯部のまわりに巻回された、少なくとも1本のワイヤと、を備える。
【0011】
第1鍔部および第2鍔部の少なくとも一方の実装面には、ワイヤの端部を受け入れるためのもので、内側端面と外側端面とを結ぶ方向に延びる溝が設けられ、溝は、少なくとも内側端面側が開口した状態であり、内側端面と外側端面とを結ぶ方向にそれぞれ延びる第1辺と第2辺とに挟まれた底面、ならびに底面から第1辺および第2辺をそれぞれ介して立ち上がる第1立上がり面および第2立上がり面を形成しており、第1辺は、第2辺に比べて、巻芯部からのワイヤの引き出し位置により近くに位置している。
【0012】
このような構成を備えるコイル部品において、この発明では、前述した技術的課題を解決するため、第1辺および第2辺間の間隔は、内側端面側でより狭く、外側端面側でより広くされるとともに、第1辺が軸線方向に対してなす角度は、第2辺が軸線方向に対してなす角度より小さいことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、ワイヤの端部を受け入れる溝の底面の形状を規定する第1辺および第2辺間の間隔は、内側端面側でより狭く、外側端面側でより広くされるとともに、第1辺が軸線方向に対してなす角度は、第2辺が軸線方向に対してなす角度より小さいので、ワイヤの溝への進入動作に対する制限が軽減されるとともに、溝内でのワイヤの位置のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明の第1の実施形態によるコイル部品1の外観を示す正面図である。
【
図2】
図1に示したコイル部品1の実装面7,13側から示す下面図である。
【
図3】
図2に示したコイル部品1に備えるコア2の一部を拡大して実装面7側から示す斜視図である。
【
図4】
図2に示したコイル部品1に備えるコア2の一部であって、
図3に示した部分を実装面7側から拡大して示す下面図である。
【
図5】この発明の第2の実施形態によるコイル部品に備えるコア2aの一部を示す、
図4に相当する図である。
【
図6】この発明の第3の実施形態によるコイル部品に備えるコア2bの一部を示す、
図4に相当する図である。
【
図7】この発明の第4の実施形態によるコイル部品に備えるコア2cの一部を示す、
図4に相当する図である。
【
図8】この発明の第5の実施形態によるコイル部品に備えるコア2dの一部を示す、
図4に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1ないし
図4を参照して、この発明の第1の実施形態によるコイル部品1について説明する。
【0016】
図1および
図2に示すように、コイル部品1は、コア2を備えている。コア2は、代表的にはフェライトから構成されるが、その他、たとえばフェライト粉、アルミナ粉もしくは金属磁性粉を含有する樹脂などから構成されてもよい。コア2は、軸線方向Aに延びる巻芯部3ならびに巻芯部3の軸線方向Aにおける互いに逆の第1端部および第2端部にそれぞれ設けられた第1鍔部5および第2鍔部6を有する。
【0017】
巻芯部3の、軸線方向Aに直交する断面は四角形状である。なお、断面四角形状の巻芯部3の稜線部分は面取りされてもよく、あるいは、巻芯部5の断面形状は、六角形状などの多角形状、円状、もしくは楕円状、またはこれらを適宜組み合わせた形状であってもよい。
【0018】
第1鍔部5および第2鍔部6は、四角柱形状である。第1鍔部5および第2鍔部6は、互いに対称な形状を有している。
【0019】
第1鍔部5は、実装時において実装基板側に向く実装面7と、実装面7とは反対側の天面8と、実装面7および天面8間を連結しかつ巻芯部3側に向く内側端面9と、内側端面9とは反対側の外側端面10と、実装面7および天面8間ならびに内側端面9および外側端面10間を連結しかつ互いに対向する第1側面11および第2側面12と、を有している。
【0020】
同様に、第2鍔部6は、実装時において実装基板側に向く実装面13と、実装面13とは反対側の天面14と、実装面13および天面14間を連結しかつ巻芯部3側に向く内側端面15と、内側端面15とは反対側の外側端面16と、実装面13および天面14間ならびに内側端面15および外側端面16間を連結しかつ互いに対向する第1側面17および第2側面18と、を有している。
【0021】
第1鍔部9および第2鍔部10の稜線部分は面取りされてもよい。また、第1鍔部5および第2鍔部6は、それぞれ、実装面7および13、内側端面9および15ならびに外側端面10および16を有する限り、四角柱形状以外の形状であってもよい。
【0022】
コイル部品1は、天板19を備えていてもよい。天板19は、第1鍔部5の天面8と第2鍔部6の天面14との間に渡され、図示しないが、エポキシ系接着剤などの熱硬化性樹脂によってコア2に固定される。コア2の軸線方向Aの寸法および
図1紙面に直交する方向の寸法に関して、天板19の寸法はコア2の寸法と同等以上であることが望ましい。天板19は、フェライト、またはフェライト粉、アルミナ粉もしくは金属磁性粉を含有する樹脂などから構成される。なお、天板19に代えて、紫外線硬化型樹脂のような樹脂でコア2の天面をコーティングするようにしてもよい。
【0023】
コイル部品1は、第1鍔部5および第2鍔部の少なくとも実装面7および13にそれぞれ設けられる第1端子電極21および第2端子電極22を備える。第1端子電極21および22が形成される領域は、
図1ないし
図4において暗色が施されることによって、それ以外の領域と区別されている。すなわち、端子電極21および22は、実装面7および13に形成されるとともに、実装面7および13に隣接する内側端面9および15、外側端面10および16、第1側面11および17、ならびに第2側面12および18の各々の一部にまで延びるように形成されている。
【0024】
端子電極21および22は、たとえば、銀を導電成分として含む導電性ペーストを塗布し、焼き付けた後に、銅、ニッケル、錫の順にめっきを施すことによって形成される。ここで、たとえば、銀層の厚みは5μm~30μm、銅層の厚みは1μm~5μm、ニッケル層の厚みは1μm~5μm、錫層の厚みは5μm~20μmとされる。
【0025】
コイル部品1は、第1端子電極21および第2端子電極22間に接続されながら巻芯部3のまわりに巻回された、少なくとも1本のワイヤ23をさらに備える。ワイヤ23は、銅、銀または金などの良導電性金属からなる中心線材を備え、中心線材はポリウレタンまたはポリアミドイミドなどの樹脂によって被覆される。ワイヤ23の中心線材の径は特に制限はないが、たとえば60μm以上かつ180μm以下とされる。なお、ワイヤ23の巻芯部3でのターン数は、求められる特性に応じて任意に変更することができる。
【0026】
ワイヤ23の、端子電極21および22への接続には、たとえば、熱圧着が適用される。実装面7および13には、ワイヤ23の端部を受け入れるための溝25および26が設けられている。溝25および26は、内側端面9および15と外側端面10および16とを結ぶ方向に延びている。溝25が設けられた第1鍔部5と溝26が設けられた第2鍔部6とは、
図2に示されるように、実質的に互いに点対称の形状を有している。したがって、以下には、
図3および
図4に図示される溝25の詳細な形状について説明し、溝26の詳細な形状については説明を省略する。
【0027】
図3および
図4を主として参照して、第1鍔部5の実装面7に設けられる溝25は、内側端面9側が開口した状態である。溝25は、内側端面9と外側端面10とを結ぶ方向にそれぞれ延びる第1辺27と第2辺28とに挟まれた底面29、ならびに底面29から第1辺27および第2辺28をそれぞれ介して立ち上がる第1立上がり面31および第2立上がり面32を形成している。ここで、第1辺27は、第2辺28に比べて、巻芯部3からのワイヤ23の引き出し位置33(
図2参照)により近くに位置している。
図3および
図4において、ワイヤ23の引き出し方向が矢印Dで示されている。
【0028】
溝25の底面29に注目すると、第1辺27および第2辺28間の間隔は、内側端面9側でより狭く、外側端面10側でより広くされている。また、
図4に示されるように、第1辺27が軸線方向Aに対してなす角度θ1は、第2辺28が軸線方向Aに対してなす角度θ2より小さくされる。説明の便宜のため、
図4において、軸線方向Aに平行な線が点線Lで示されている。
【0029】
上述したように、ワイヤ23の端部を受け入れる溝25の底面29の形状を規定する第1辺27および第2辺28間の間隔が、内側端面9側でより狭く、外側端面10側でより広くされるとともに、第1辺27が軸線方向A(点線L)に対してなす角度θ1が、第2辺28が軸線方向A(点線L)に対してなす角度θ2より小さいので、ワイヤ23の溝25への進入動作に対する制限が軽減される。したがって、ワイヤ23を供給するノズルの動きやワイヤ23の状態に合わせて、ワイヤ23を高い自由度をもって引き回すことができる。さらに、溝25内でのワイヤ23の位置のばらつきを抑制することができる。
【0030】
ワイヤ23が第1端子電極21に熱圧着されたとき、溝25の底面29において、ワイヤ23は、たとえば高さ15μm、幅200μmの膨らみを形成している。
【0031】
図3からわかるように、好ましくは、溝25は内側端面9側から外側端面10側に向かってより浅くなるように、底面29に勾配が付与されている。これによって、ワイヤ23の圧着時において、ワイヤ23に及ぼされるダメージを低減することができる。よって、圧着部付近でのワイヤ23の断線リスクを抑えることができる。また、ワイヤ23が端部において急激に薄くなるといった不都合を避けることができる。
【0032】
同じく
図3からわかるように、好ましくは、溝25において、第1立上がり面31および第2立上がり面32の各々と底面29とがなす内側の角度は鈍角である。この構成によれば、ワイヤ23を溝25内へ円滑に導入することができる。
【0033】
図2に示されるように、好ましくは、第1鍔部5に関して、実装面7の延びる方向であって軸線方向Aに直交する方向を幅方向としたとき、溝25は、巻芯部3から引き出されるワイヤ23の位置33により近くなるように、幅方向に片寄って位置している。その結果、
図2からわかるように、第1鍔部5に設けられる溝25と第2鍔部6に設けられる溝26とは、幅方向に関して互いに逆側に位置している。
【0034】
ワイヤ23は、巻芯部3から離れて鍔部5に到達するまで、どこにも接触しない状態である。したがって、上述した構成によれば、ワイヤ23を巻芯部3に巻き終わってから溝25に導くまでの距離を比較的短くできるので、ワイヤ23の空中配線の距離を短くすることができ、そのため、断線のリスクを低くすることができる。
【0035】
図2からわかるように、溝25における底面29を規定する第1辺27と第2辺28との間隔は、ワイヤ23の直径より広いことが好ましい。すなわち、溝25の内側端面9側の幅および外側端面16側の幅はともに、ワイヤ23の直径より大きいことが好ましい。この構成によれば、ワイヤ23を溝25の幅方向寸法内に容易に収めることができる。
【0036】
特に図示しないが、
図2ないし
図4から類推されるように、第1鍔部5の実装面7と溝25の底面29との高低差で表わされる溝25の深さは、ワイヤ23の直径より浅いことが好ましい。この構成によれば、ワイヤ23の圧着時にワイヤ23の断面の一部が溝25からはみ出ているので、圧着を容易に達成することができる。
【0037】
詳細な説明を省略するが、第2鍔部5の実装面13に設けられた溝26においても、上述した溝25の場合と同様の構成が採用されている。しかしながら、第1鍔部5側においてのみ溝25が設けられてもよい。また、第1鍔部5および第2鍔部のそれぞれに溝25および26が設けられるが、上述したような特徴的な構成は溝25のみに採用されてもよい。
【0038】
コイル部品1は、たとえば、以下のようにして製造される。
【0039】
ドラム状のコア2を得るため、フェライトの粉末を金型でプレス成形し、得られた成形体を焼成し、焼成後にバレル研磨を行なうことによってバリを取る。このとき、コア2の稜線部分は面取りされて、小さなアール面が付与される。得られたコア2の鍔部5および6の実装面7および13に下地電極を形成し、次いで、電解バレルを適用して、めっき膜を形成する。その後、ノズルを用いて、コア2の巻芯部3にワイヤ23を巻回し、次いで、ヒーターチップを用いて、ワイヤ23の端部を端子電極21および22に熱圧着する。熱圧着において、たとえば温度500℃で1秒間の圧着条件が適用される。圧着後、ヒーターチップの温度を下げていき、300℃以下温度に達したとき、ヒーターチップを引き上げる。次いで、端子電極21および22に接続されたワイヤ23の余分はカット刃によりカットされる。
【0040】
天板19を備える場合は、その後、天板19が接着剤を介してコア2に固着される。天板19に代えて樹脂がコーティングされる場合には、コア2に樹脂が塗布され、次いで硬化される。
【0041】
得られたコイル部品1は、たとえば、軸線方向Aの寸法が3.2mm、
図1紙面に直交する幅方向の寸法が2.5mm、
図2紙面に直交する高さ方向の寸法が2.5mmである。
【0042】
以下、
図5ないし
図8をそれぞれ参照して、この発明の他の実施形態について説明する。
図5ないし
図8は、
図4に相当する図である。
図5ないし
図8において、
図4に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0043】
図5ないし
図8に示した各実施形態においても、図示された第1鍔部5と図示されない第2鍔部とは、実質的に互いに点対称の形状を有している。したがって、図示された第1鍔部5について説明し、図示されない第2鍔部については説明を省略する。
【0044】
前述の
図4に示した第1の実施形態によるコア2では、軸線方向A(点線L)に対して、第1辺27がなす角度θ1は時計方向に測定した角度であり、第2辺28がなす角度θ2は反時計方向に測定した角度であった。
【0045】
これに対して、
図5に示す第2の実施形態によるコア2aでは、軸線方向A(点線L)に対して、第1辺27がなす角度θ1および第2辺28がなす角度θ2はともに、反時計方向に測定した角度である。この場合であっても、第2の実施形態では、第1辺27が軸線方向A(点線L)に対してなす角度θ1は、第2辺28が軸線方向A(点線L)に対してなす角度θ2より小さくされる。
【0046】
図6に示した第3の実施形態によるコア2bでは、引き出し方向を示す矢印Dからわかるように、巻芯部3からのワイヤの引き出し位置により近くに位置している第1辺27は、軸線方向A(点線L)と平行に延びている。前述したように、溝25が、巻芯部3から引き出されるワイヤの位置により近くなるように、幅方向に片寄って位置しているとき、
図6に示した構成が有利に採用されることができる。第3の実施形態の場合、第1立上がり面31と底面29とがなす内側の角度を直角としてもよい。
【0047】
第3の実施形態によれば、コア2bの製造用金型の設計が容易となり、そのため、コア2bの製造が容易になることが期待できる。
【0048】
図7に示した第4の実施形態によるコア2cでは、溝25が内側端面9側だけでなく、外側端面10側においても開口した状態となっている。
【0049】
上述した第1ないし第4の実施形態では、溝25の底面29が巻芯部3の側面35より幅方向における内側に位置していたが、
図8に示した第5の実施形態によるコア2dでは、溝25の底面29が巻芯部3の側面35より幅方向における外側に位置している。第5の実施形態の場合であっても、引き出し方向を示す矢印Dからわかるように、巻芯部3からのワイヤの引き出し位置により近い第1辺27が軸線方向A(点線L)に対してなす角度θ1は、第2辺28が軸線方向A(点線L)に対してなす角度θ2より小さくされる。
【0050】
以上、この発明を図示した実施形態に関連して説明したが、この発明の範囲内において、その他種々の変形例が可能である。
【0051】
たとえば、この発明が向けられるコイル部品は、図示された実施形態のように、単一のコイルを構成するもの以外に、コモンモードチョークコイルを構成するもの、あるいは、トランスやバランなどを構成するものであってもよい。したがって、ワイヤの数についても、コイル部品の機能に応じて変更され、それに応じて、各鍔部に設けられる端子電極の数や溝の数も変更され得る。
【0052】
また、コイル部品に備える巻線用コアおよび天板についての形状は、図示されたものに限らず、望まれる設計に応じて、任意に変更することができる。
【0053】
また、この発明に係るコイル部品を構成するにあたり、この明細書に記載された異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能である。
【0054】
この発明の実施態様には、次のようなものがある。
【0055】
<1>
軸線方向に延びる巻芯部ならびに前記巻芯部の前記軸線方向における互いに逆の第1端部および第2端部にそれぞれ設けられた第1鍔部および第2鍔部を有する、コアを備え、
前記第1鍔部および前記第2鍔部の各々は、実装時において実装基板側に向く実装面と、前記巻芯部側に向く内側端面と、前記内側端面とは反対側の外側端面と、を有し、さらに、
前記第1鍔部および前記第2鍔部の少なくとも前記実装面にそれぞれ設けられた第1端子電極および第2端子電極と、
前記第1端子電極および前記第2端子電極間に接続されながら前記巻芯部のまわりに巻回された、少なくとも1本のワイヤと、
を備え、
前記第1鍔部および前記第2鍔部の少なくとも一方の前記実装面には、前記ワイヤの端部を受け入れるためのもので、前記内側端面と前記外側端面とを結ぶ方向に延びる溝が設けられ、
前記溝は、少なくとも前記内側端面側が開口した状態であり、前記内側端面と前記外側端面とを結ぶ方向にそれぞれ延びる第1辺と第2辺とに挟まれた底面、ならびに前記底面から前記第1辺および前記第2辺をそれぞれ介して立ち上がる第1立上がり面および第2立上がり面を形成しており、
前記第1辺は、前記第2辺に比べて、前記巻芯部からの前記ワイヤの引き出し位置により近くに位置しており、
前記第1辺および前記第2辺間の間隔は、前記内側端面側でより狭く、前記外側端面側でより広くされるとともに、
前記第1辺が前記軸線方向に対してなす角度は、前記第2辺が前記軸線方向に対してなす角度より小さい、
コイル部品。
【0056】
<2>
前記溝は、前記第1鍔部および前記第2鍔部の前記実装面にそれぞれ設けられる、<1>に記載のコイル部品。
【0057】
<3>
前記溝は前記内側端面側から前記外側端面側に向かってより浅くなるように、前記底面に勾配が付与されている、<1>または<2>に記載のコイル部品。
【0058】
<4>
前記第1立上がり面および前記第2立上がり面の各々と前記底面とがなす内側の角度は鈍角である、<1>ないし<3>のいずれかに記載のコイル部品。
【0059】
<5>
前記実装面の延びる方向であって前記軸線方向に直交する方向を幅方向としたとき、前記溝は、前記巻芯部から引き出される前記ワイヤの位置により近くなるように、前記幅方向に片寄って位置している、<1>ないし<4>のいずれかに記載のコイル部品。
【0060】
<6>
前記第1辺は、前記軸線方向と平行に延びる、<5>に記載のコイル部品。
【0061】
<7>
前記第1辺と前記第2辺との間隔は、前記ワイヤの直径より広い、<1>ないし<6>のいずれかに記載のコイル部品。
【0062】
<8>
前記実装面と前記底面との高低差で表わされる前記溝の深さは、前記ワイヤの直径より浅い、<1>ないし<7>のいずれかに記載のコイル部品。
【符号の説明】
【0063】
1 コイル部品
2,2a,2b,2c,2d コア
3 巻芯部
5,6 鍔部
7,13 実装面
9,15 内側端面
10,16 外側端面
21,22 端子電極
23 ワイヤ
25,26 溝
27 第1辺
28 第2辺
29 底面
31 第1立上がり面
32 第2立上がり面
33 引き出し位置
A 軸線方向
D 引き出し方向を示す矢印
θ1 第1辺の角度
θ2 第2辺の角度