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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175700
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】基板収納容器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/673 20060101AFI20241212BHJP
   B65D 85/30 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H01L21/68 T
B65D85/30 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093591
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】飯田 拓也
【テーマコード(参考)】
3E096
5F131
【Fターム(参考)】
3E096AA03
3E096BA16
3E096BB04
3E096CA02
3E096CB03
3E096CC02
3E096DA17
3E096DC04
3E096EA02X
3E096EA02Y
3E096EA07Y
3E096FA03
3E096FA22
3E096GA04
3E096GA07
5F131CA09
5F131CA12
5F131CA18
5F131GA13
5F131GA84
5F131GA87
5F131GA92
(57)【要約】
【課題】 外箱とパッキンの隙間を減少させることにより、パッキンの位置ずれや脱落、基板の破損、塵埃の増加を防止したり、払拭できる基板収納容器及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 半導体ウェーハを収納する外箱1の開口した上部2と上蓋の間に、エンドレスのパッキン20を挟む基板収納容器であり、上部2の周縁部分3にパッキン20用の取付溝4を形成し、取付溝4にパッキン20用の被密接穴5を穿孔し、被密接穴5を、取付溝4に連接される被幅狭部6と、被幅狭部6に連接されて幅の広がる被幅広部7と、被幅広部7に連接されて幅の狭まる被最幅狭部8とに分割し、パッキン20を、取付溝4に嵌合される基部21と、基部21に連接されて被幅狭部6に密嵌する幅狭部22と、幅狭部22に連接されて被幅広部7に密嵌する幅広部23と、幅広部23に連接されて被最幅狭部8に密嵌する最幅狭部24とから成形する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収納可能な外箱の開口部と蓋体との間に、パッキンを挟む基板収納容器であって、
外箱の開口部の周縁部分にパッキン用の取付溝を形成し、この取付溝にはパッキン用の被密接穴を形成し、この被密接穴を、取付溝に連接される被幅狭部と、この被幅狭部に連接されて幅の広がる被幅広部と、この被幅広部に連接されて幅の狭まる被最幅狭部とに分割し、
パッキンは、外箱の取付溝に取り付けられる基部と、この基部に連接されて外箱の被密接穴の被幅狭部に密接する幅狭部と、この幅狭部に連接されて被密接穴の被幅広部に密接する幅広部と、この幅広部に連接されて被密接穴の被最幅狭部に密接する最幅狭部とを含んでなることを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
外箱を熱可塑性樹脂含有の成形材料により成形し、パッキンを弾性に優れる熱硬化性樹脂含有の成形材料により成形した請求項1記載の基板収納容器。
【請求項3】
パッキンの幅狭部、幅広部、及び最幅狭部の断面を略多角形とし、最幅狭部を鋭利に形成してパッキンの内方向に向けた請求項2記載の基板収納容器。
【請求項4】
請求項1又は2に記載した基板収納容器の製造方法であって、弾性を有する熱硬化性樹脂含有の成形材料によりパッキンを成形し、このパッキンを外箱成形用の金型にインサートして型締めし、この金型に熱可塑性樹脂含有の成形材料を充填した後、この成形材料を冷却固化して外箱を形成することを特徴とする基板収納容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等の基板を収納する基板収納容器及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における基板収納容器は、図8ないし図10に示すように、複数枚の半導体ウェーハを収納可能な外箱1と、この外箱1の開口した上部2を嵌合被覆する上蓋10と、これら外箱1と上蓋10との間に挟持されるエンドレスのパッキン30とを備え、複数枚の半導体ウェーハの保管、搬送、輸送に使用される(特許文献1参照)。
【0003】
外箱1は、図8ないし図10に示すように、樹脂含有の成形材料により有底筒形のトップオープンボックスに成形され、複数枚の半導体ウェーハを整列収納したカセットを収納する。この外箱1は、開口した上部2の周縁部分3に、パッキン30用の取付溝4がエンドレスの枠形に凹み形成され、両側壁外面の上部には、上蓋10用の被係止突起9がそれぞれ複数形成されている。
【0004】
上蓋10は、図8に示すように、樹脂含有の成形材料により背の低い略箱形に成形され、両側壁の下部に、外箱1の被係止突起9に嵌合係止する横長の係止片11がそれぞれ屈曲可能に形成されている。
【0005】
パッキン30は、図9図10に示すように、樹脂含有の成形材料で弾性変形可能な枠形に成形され、外箱1の取付溝4に隙間をおいて遊嵌される。このパッキン30は、例えば断面略h字形に形成されてその二股の下部31が取付溝4の底面に接触し、中央部付近から内方向に板片32が水平に伸長されて取付溝4の内壁面に位置決め接触し、起立した上部33が上蓋10の開口した下部の周縁部分に圧接して変形する。このようなパッキン30は、成形された後に外箱1の取付溝4に隙間を介して遊嵌され、外箱1の上部2と上蓋10との間で変形してシール効果を発揮し、収納された半導体ウェーハが外部からのパーティクルで汚染するのを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平2‐106831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来における基板収納容器は、以上のように構成され、外箱1の取付溝4に別部品のパッキン30がクリアランスをおいて単に遊嵌されることにより、組み立てられるので、パッキン30ががたついて位置ずれし、その結果、パッキン30が外箱1の取付溝4から外れ易くなったり、パッキン30が外箱1の取付溝4から外れて半導体ウェーハの破損を招いたり、パッキン30のシール性能が低下して外部からのパーティクルが増加するという問題が生じる可能性がある。
【0008】
本発明は上記に鑑みなされたもので、外箱とパッキンの隙間を減少させることにより、パッキンの位置ずれや脱落、基板の破損、塵埃の増加のおそれを防いだり、払拭することのできる基板収納容器及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明においては上記課題を解決するため、基板を収納可能な外箱の開口部と蓋体との間に、パッキンを挟むものであって、
外箱の開口部の周縁部分にパッキン用の取付溝を形成し、この取付溝にはパッキン用の被密接穴を形成し、この被密接穴を、取付溝に連接される被幅狭部と、この被幅狭部に連接されて幅の広がる被幅広部と、この被幅広部に連接されて幅の狭まる被最幅狭部とに分割し、
パッキンは、外箱の取付溝に取り付けられる基部と、この基部に連接されて外箱の被密接穴の被幅狭部に密接する幅狭部と、この幅狭部に連接されて被密接穴の被幅広部に密接する幅広部と、この幅広部に連接されて被密接穴の被最幅狭部に密接する最幅狭部とを含んでなることを特徴としている。
【0010】
なお、外箱を上部の開口したトップオープンボックスとすることができる。
また、外箱を熱可塑性樹脂含有の成形材料により成形し、パッキンを弾性に優れる熱硬化性樹脂含有の成形材料により成形することができる。
また、パッキンの幅狭部、幅広部、及び最幅狭部の断面を略多角形とし、最幅狭部を鋭利に形成してパッキンの内方向に向けることができる。
【0011】
また、本発明においては上記課題を解決するため、請求項1又は2に記載した基板収納容器の製造方法であって、
弾性を有する熱硬化性樹脂含有の成形材料によりパッキンを成形し、このパッキンを外箱成形用の金型にインサートして型締めし、この金型に熱可塑性樹脂含有の成形材料を充填した後、この成形材料を冷却固化して外箱を形成することを特徴としている。
【0012】
ここで、特許請求の範囲における基板には、少なくともφ125mm、150mm、200mm、300mmの半導体ウェーハ、フォトマスク材の矩形の石英ガラス、液晶基板等が含まれる。また、外箱と蓋体は、必要に応じ、透明、不透明、半透明に形成することができる。外箱の被密接穴は、断面が略多角形、略楕円形、略トラック形、略矢じり形等に形成することができる。パッキンの幅狭部、幅広部、及び最幅狭部についても、断面が略多角形、略楕円形、略トラック形、略矢じり形等に形成することが可能である。
【0013】
本発明によれば、外箱の開口部の被密接穴にパッキンの幅狭部、幅広部、及び最幅狭部が略隙間なく嵌め入れられて密接するので、パッキンががたついて位置ずれするのを防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、外箱とパッキンの隙間を減少させることができるので、パッキンの位置ずれや脱落、基板の破損、塵埃の増加のおそれを防いだり、払拭することができるという効果がある。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、外箱成形用の金型にパッキンをインサートして外箱を後から成形する場合に、パッキンが熱硬化性樹脂により成形されているので、外箱を形成する成形材料の熱可塑性樹脂がパッキンに溶着するのを防止することができる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、パッキンが断面略多角形、特にパッキンの幅狭部、幅広部、及び最幅狭部が断面略五角形あるいは変形した略菱形の場合には、外箱を形成する熱可塑性樹脂の流動に支障を来すのを抑制することができる。また、パッキンの最幅狭部がパッキンの内方向、すなわち、外箱を成形する熱可塑性樹脂の流れて来る方向に向くので、最幅狭部が外箱を成形する熱可塑性樹脂の樹脂圧の影響を受け、動揺することが少なくなる。したがって、パッキンの近傍に外箱の被密接穴を略隙間なく同形に形成することができる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、予めパッキンを成形して外箱成形用の金型にインサートし、パッキン付きの外箱を成形するので、外箱の被密接穴に幅の異なる被幅狭部と被幅広部とを連続して形成することが可能となる。さらに、外箱の被密接穴のアンダーカットに鑑み、外箱成形用の金型を分割してスライド機構等の特殊な機構を設ける手間を省いたり、金型の構成の簡素化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る基板収納容器及びその製造方法の実施形態における外箱を部分的に示す断面斜視図である。
図2】本発明に係る基板収納容器及びその製造方法の実施形態における外箱の上部周縁部分とパッキンを部分的に示す断面斜視図である。
図3】本発明に係る基板収納容器及びその製造方法の実施形態における外箱の上部周縁部分とパッキンを部分的に示す断面説明図である。
図4】本発明に係る基板収納容器の実施形態における外箱の上部周縁部分から製造時に用いたパッキンを引き抜く状態を示す断面説明図である。
図5】本発明に係る基板収納容器の実施形態における外箱の上部周縁部分に未使用の新たなパッキンを嵌挿する状態を示す断面説明図である。
図6】本発明に係る基板収納容器の実施形態における外箱の上部周縁部分に未使用の新たなパッキンを嵌挿した状態を示す断面斜視図である。
図7】本発明に係る基板収納容器の実施形態における外箱の上部周縁部分と新たなパッキンの関係を示す断面斜視図である。
図8】基板収納容器を示す斜視説明図である。
図9図8の基板収納容器の外箱を部分的に示す断面斜視図である。
図10図9の外箱の取付溝とパッキンとを部分的に示す断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、図1ないし図8に示すように、基板である半導体ウェーハを収納する外箱1と、この外箱1に収納されるカセットと、外箱1の開口した上部2を着脱自在に嵌合被覆する上蓋10と、カセットに収納された半導体ウェーハの周縁上部を保持するリテーナと、外箱1と上蓋10との間に挟持されるエンドレスのパッキン20とを備えた収納容器であり、外箱成形用の金型で外箱1を成形する際に予め成形しておいたパッキン20をインサートし、パッキン20付きの外箱1をインサート成形することにより、国連サミットで採択されたSDGs(国連の持続可能な開発のための国際目標であり、17のグローバル目標と169のターゲット(達成基準)からなる持続可能な開発目標)の目標9の達成に貢献する。
【0020】
外箱1は、図1ないし図3図6図7に示すように、熱可塑性樹脂含有の成形材料により、上部2の開口した有底角筒形のトップオープンボックスに射出成形され、複数枚の半導体ウェーハ(例えば、φ200mmのシリコンウェーハ等)を整列収納した角筒形のカセットを着脱自在に収納する。この外箱1を成形する成形材料の熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えばポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等があげられる。
【0021】
成形材料は、上記熱可塑性樹脂だけでも良いが、カーボン繊維、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー等からなる導電物質、アニオン、カチオン、非イオン系等の各種帯電防止剤、剛性を向上させるガラス繊維や炭素繊維、紫外線吸収剤等が必要に応じて添加される。
【0022】
外箱1は、開口した上部2の周縁部分3に、パッキン20用の取付溝4がエンドレスの枠形に凹み形成され、この取付溝4にはパッキン20用の被密接穴5が穿孔されており、両側壁外面の上部には、上蓋10用の被係止突起9がそれぞれ複数並べて形成される。外箱1の被密接穴5は、図2図3に示すように、取付溝4の底面中央部付近に連接される被幅狭部6と、この被幅狭部6に連接されて下方に向かうにしたがい幅の広がる被幅広部7と、この被幅広部7に連接されて下方に向かうにしたがい幅の狭まる被最幅狭部8とを備えた断面多角形(五角形、変形した菱形等)、あるいは矢じり形に形成される。被最幅狭部8は、リードイン形状の鋭利に形成され、外箱1の内方向に傾いて指向する。
【0023】
上蓋10は、図8に示すように、熱可塑性樹脂含有の成形材料により背の低い略箱形に射出成形され、両側壁の下部に、外箱1の被係止突起9に嵌合係止する横長の係止片11がそれぞれ屈曲可能に一体形成されており、各係止片11がストライプ模様に形成される。この上蓋10を成形する成形材料の熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えばポリカーボネート樹脂やポリプロピレン樹脂等があげられる。成形材料には、上記外箱1同様、導電物質、帯電防止剤、ガラス繊維、炭素繊維、紫外線吸収剤等が選択的に添加される。上蓋10の内部天井には、半導体ウェーハの周縁上部を複数の屈曲保持材で弾発的に保持する押さえ用のリテーナが着脱自在に装着される。
【0024】
パッキン20は、図1ないし図3に示すように、熱硬化性樹脂含有の成形材料で弾性変形可能な枠形に成形され、外箱1の取付溝4と被密接穴5に着脱自在に嵌合される。このパッキン20を成形する成形材料に熱硬化性樹脂が使用されるのは、熱可塑性樹脂を使用する場合には、外箱1の成形時に外箱1の成形材料と相溶してパッキン20を後から取り外すことができなくなるからである。パッキン20を成形する成形材料の熱硬化性樹脂としては、特に限定されるものではないが、パッキン20の取り外しや交換を可能にするエラストマー、具体的には耐熱性や弾性に優れるウレタンゴムやフッ素ゴム等が使用される。成形材料には、熱硬化性樹脂の他、各種のフィラーが選択的に添加される。
【0025】
パッキン20は、外箱1の取付溝4に嵌合される断面板形の基部21と、この基部21の下面に連接されて外箱1の被密接穴5の被幅狭部6内に嵌挿・密接する幅狭部22と、この幅狭部22に連接されて被密接穴5の被幅広部7内に嵌挿・密接する幅広部23と、この幅広部23に連接されて被密接穴5の被最幅狭部8内に嵌挿・密接する最幅狭部24とを備え、幅狭部22、幅広部23、及び最幅狭部24が隙間の発生を防止するため、外箱1の被密接穴5と同様の断面多角形(五角形、変形した菱形等)、あるいは矢じり形に形成されてがたつきや位置ずれ、被密接穴5からの脱落を防止するよう機能する。
【0026】
パッキン20の幅狭部22、幅広部23、最幅狭部24は、図2に示すように、最幅狭部24がリードイン形状の鋭利に形成され、少なくとも最幅狭部24がパッキン20の内方向、換言すれば、外箱1を成形する熱可塑性樹脂が成形時に流動して来る方向(図2の矢印参照)に傾いて指向する。
【0027】
パッキン20の硬度は、タイプAのデュロメータで測定した場合、A70°以上A90°以下、好ましくはA80°以上A90°以下、より好ましくはA85°以上A90°以下が良い。これは、パッキン20の硬度がA70°以上A90°以下の範囲であれば、パッキン20の取り外しや交換が容易になるからである。
【0028】
上記構成において、基板収納容器の外箱1を製造する場合には、先ず、耐熱性と弾性に優れる熱硬化性樹脂含有の成形材料を用意し、この成形材料を型締めしたパッキン成形用の高温の金型に充填し、この成形材料を冷却固化させてパッキン20を形成し、その後、金型を型開きしてパッキン20を脱型する。
【0029】
次いで、パッキン20を成形したら、このパッキン20を外箱成形用の金型にインサートして型締めする。パッキン20を予め射出成形して外箱成形用の金型にインサートするのは、パッキン20を用いることなく外箱1を通常の射出成形法で成形しようとすると、外箱1の被密接穴5の被幅狭部6と被幅広部7との間のくぼんだ部分(図3の複数の点線間)がアンダーカットとなり、外箱成形用の金型を分割してスライド機構等の特殊な機構を設置しなければ、外箱1を成形して脱型するのがきわめて困難となるからである。
【0030】
外箱成形用の金型を型締めしたら、この金型に熱可塑性樹脂含有の溶融した成形材料を射出して充填し、溶融した成形材料を後充填し、成形材料を冷却固化させて取付溝4や被密接穴5を有する外箱1を形成した後、金型を型開きして外箱1を脱型すれば、パッキン20を開口した上部2に有する外箱1を製造することができる。
【0031】
この際、パッキン20が熱可塑性樹脂ではなく、熱硬化性樹脂により成形されているので、外箱1を形成する成形材料の熱可塑性樹脂が溶着するのを防止し、パッキン20を後に取り外して交換することができる。また、パッキン20の最幅狭部24が外箱1を成形する熱可塑性樹脂の流れて来る方向に傾いて指向しているので、抵抗が少なくなり、最幅狭部24が外箱1を成形する熱可塑性樹脂の樹脂圧の影響を受け、ふらつくことがない。したがって、パッキン20を型としてその周囲に取付溝4や被密接穴5を後から適切に形成することができる。
【0032】
基板収納容器を長期に亘り使用して製造時に用いたパッキン20が劣化したり、損傷等した場合には、外箱1の上部2から製造時に用いたパッキン20を摘まんで引き抜けば良い(図4参照)が、パッキン20が弾性に優れるので、簡単に引き抜いて取り外すことができる。製造時に用いたパッキン20を引き抜いて除去したら、外箱1の被密接穴5に未使用のパッキン20Aを密嵌して隙間なく密接させれば良い(図5ないし図7参照)。
【0033】
この際の未使用の新たなパッキン20Aは、外箱1の成形とは無関係であるので、弾性の熱硬化性樹脂含有の成形材料で成形されても良いし、弾性の熱可塑性樹脂含有の成形材料で成形されても良い。また、パッキン20Aの幅狭部22、幅広部23、及び最幅狭部24が同形であるならば、パッキン20Aの基部21Aが多角形でも良いし、基部21Aから変形可能な起立片25を上方に向けて伸張形成し、この起立片25を上蓋10の開口下部の周縁部分に圧接するようにしても良い。
【0034】
上記によれば、外箱1の被密接穴5にパッキン20の幅狭部22、幅広部23、及び最幅狭部24が隙間なくきつく密嵌され、幅狭部22と幅広部23との間が引っ掛かり機能を発揮するので、パッキン20ががたついて位置ずれするのを防止することができる。したがって、パッキン20が外箱1の取付溝4から外れ易くなったり、パッキン20が外箱1の取付溝4から外れて半導体ウェーハの破損を招いたり、パッキン20のシール性能が低下して外部からのパーティクルが増加するおそれを払拭することができる。
【0035】
また、被密接穴5の被最幅狭部8とパッキン20の最幅狭部24がそれぞれ先細りの鋭利なリードイン形状なので、外箱1の被密接穴5にパッキン20を後から容易に挿入することができる。また、成形した外箱1にパッキン20を後から遊嵌するのではなく、パッキン20を先に成形し、外箱1を後から射出成形するので、外箱1の上部周縁部分3に複雑な形の被密接穴5を成形しても、外箱1を容易に脱型することが可能となる。さらに、パッキン20の幅狭部22、幅広部23、及び最幅狭部24が断面五角形あるいは変形した菱形なので、尖った先細り形状となり、外箱1用の熱可塑性樹脂の流動の障害となることがない。
【0036】
なお、上記実施形態では外箱1をトップオープンボックスに射出成形したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、φ300mmのシリコンウェーハを直接整列収納するフロントオープンボックスの容器本体に成形し、この容器本体の開口した正面の内周縁部分にパッキン用の取付溝をエンドレスの枠形に凹み形成したりしても良い。この場合、上蓋10を、熱可塑性樹脂含有の成形材料により、容器本体の開口した正面を着脱自在に開閉する略板形の蓋体に射出成形すると良い。さらに、上記実施形態における基板収納容器の上下前後左右方向は、図面を基準にした方向であり、必要に応じ、適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係る基板収納容器及びその製造方法は、電気、電子、半導体の製造分野で使用される。
【符号の説明】
【0038】
1 外箱
2 上部(開口部)
3 周縁部分
4 取付溝
5 被密接穴
6 被幅狭部
7 被幅広部
8 被最幅狭部
10 上蓋(蓋体)
20 パッキン
20A パッキン
21 基部
21A 基部
22 幅狭部
23 幅広部
24 最幅狭部
25 起立片
30 パッキン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10