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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175708
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】鉄道用ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 13/74 20060101AFI20241212BHJP
   B60T 13/66 20060101ALI20241212BHJP
   B60T 13/68 20060101ALI20241212BHJP
   B60T 8/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B60T13/74 A
B60T13/66 A
B60T13/68
B60T8/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093604
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐川 貴憲
【テーマコード(参考)】
3D048
3D246
【Fターム(参考)】
3D048AA04
3D048BB07
3D048CC55
3D048HH18
3D048HH26
3D048HH48
3D048KK16
3D048PP01
3D048PP02
3D246AA17
3D246BA03
3D246BA05
3D246BA08
3D246DA01
3D246EA17
3D246GA01
3D246GC14
3D246LA15Z
3D246LA32Z
(57)【要約】
【課題】ブレーキ装置全体を簡素化する鉄道用ブレーキ装置を提供する。
【解決手段】鉄道用ブレーキ装置は、鉄道車両の被制動部材に摩擦材11を押し付けて鉄道車両を制動するブレーキ機構10と、ブレーキ機構10を駆動する電動機20と、ブレーキ機構10を駆動する空気シリンダ30と、常用ブレーキ指令に従って、鉄道車両を構成する台車と車体との間の空気ばね60の圧力に基づいて電動機20を制御して常用ブレーキ力を制御するブレーキ制御装置40と、常用ブレーキ指令と異なる緊急ブレーキ指令が入力されると、空気ばね60の圧縮空気を空気シリンダ30に供給することで緊急ブレーキを作動させる電磁弁50と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の被制動部材に摩擦材を押し付けて前記鉄道車両を制動するブレーキ機構と、
前記ブレーキ機構を駆動する電動機と、
前記ブレーキ機構を駆動する空気シリンダと、
常用ブレーキ指令に従って、前記鉄道車両を構成する台車と車体との間の空気ばねの圧力に基づいて前記電動機を制御して常用ブレーキ力を制御する制御装置と、
常用ブレーキ指令と異なる緊急ブレーキ指令が入力されると、前記空気ばねの圧縮空気を前記空気シリンダに供給することで緊急ブレーキを作動させる電磁弁と、を備える
鉄道用ブレーキ装置。
【請求項2】
前記緊急ブレーキ指令を伝達する緊急ブレーキ指令線は、前記制御装置を介さずに前記電磁弁と接続される
請求項1に記載の鉄道用ブレーキ装置。
【請求項3】
前記電磁弁は、前記緊急ブレーキ指令が入力されなくなると、前記空気シリンダから前記圧縮空気を排出することで前記緊急ブレーキを緩解させる
請求項1に記載の鉄道用ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道用ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の鉄道用ブレーキ装置では、ブレーキの動力源として油圧や空気圧等の流体圧シリンダと、電力を用いた電動ブレーキ機構と、の2系統で駆動可能である。この鉄道用ブレーキ装置では、電源失陥時に圧縮コイルスプリングとエアシリンダとによって動力を発生させて非常ブレーキを作動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-71133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電動ブレーキ機構は、従来の流体圧シリンダと比較して、配管や圧縮機などを省略することができるため、ブレーキ装置を簡素化することができる。しかしながら、上記特許文献1に記載の鉄道用ブレーキ装置には、非常ブレーキを作動させるための空気源について記載がなく、従来同様の配管や圧縮機を設ける場合には、配管や圧縮機などを省略することができる利点が損なわれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する鉄道用ブレーキ装置は、鉄道車両の被制動部材に摩擦材を押し付けて前記鉄道車両を制動するブレーキ機構と、前記ブレーキ機構を駆動する電動機と、前記ブレーキ機構を駆動する空気シリンダと、常用ブレーキ指令に従って、前記鉄道車両を構成する台車と車体との間の空気ばねの圧力に基づいて前記電動機を制御して常用ブレーキ力を制御する制御装置と、常用ブレーキ指令と異なる緊急ブレーキ指令が入力されると、前記空気ばねの圧縮空気を前記空気シリンダに供給することでブレーキを作動させる電磁弁と、を備える。
【0006】
上記構成によれば、空気ばねの圧縮空気を利用して緊急ブレーキを作動させるため、従来のブレーキ装置に設けられる空気源及び配管などの設置を省略することができ、ブレーキ装置全体を簡素化することができる。
【0007】
上記鉄道用ブレーキ装置について、前記緊急ブレーキ指令を伝達する緊急ブレーキ指令線は、前記制御装置を介さずに前記電磁弁と接続されることが好ましい。
上記鉄道用ブレーキ装置について、前記電磁弁は、前記緊急ブレーキ指令が入力されなくなると、前記空気シリンダから前記圧縮空気を排出することで前記緊急ブレーキを緩解させることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ブレーキ装置全体を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】鉄道車両に設けられた鉄道用ブレーキ装置の第1実施形態の概略構成を示すブロック図。
図2】同実施形態の鉄道用ブレーキ装置の概略構成を示すブロック図。
図3】鉄道用ブレーキ装置の第2実施形態の概略構成を示すブロック図。
図4】鉄道用ブレーキ装置の第3実施形態の概略構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、図1及び図2を参照して、鉄道用ブレーキ装置を備えた鉄道車両の第1実施形態について説明する。鉄道車両は、鉄道用ブレーキ装置によって制動される。鉄道用ブレーキ装置は、鉄道車両に設けられる台車に搭載される。
【0011】
(鉄道車両1)
図1に示すように、鉄道車両1は、1両に第1台車2A及び第2台車2Bが設けられている。鉄道車両1には、駆動装置(図示略)を駆動制御する駆動制御装置3が設けられている。第1台車2A及び第2台車2Bには、鉄道用ブレーキ装置4がそれぞれ搭載されている。第1台車2A及び第2台車2Bには、2軸が設けられ、4個の車輪が備えられるとともに、各車輪を制動するブレーキ機構(図示略)が設けられている。第1台車2A及び第2台車2Bには、ブレーキ制御装置40及び荷重センサ5が設けられている。ブレーキ制御装置40は、鉄道用ブレーキ装置4を制御する。荷重センサ5は、台車に掛かる荷重を検出して、同じ台車に設けられるブレーキ制御装置40に出力する。
【0012】
駆動制御装置3及びブレーキ制御装置40は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサとして構成し得る。なお、駆動制御装置3及びブレーキ制御装置40は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する、特定用途向け集積回路(ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路、またはその組み合わせを含む回路(circuitry)として構成してもよい。プロセッサは、CPU及び、RAM並びにROM等のメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0013】
第1台車2Aに設けられるブレーキ制御装置40を第1ブレーキ制御装置40Aとする。第2台車2Bに設けられるブレーキ制御装置40を第2ブレーキ制御装置40Bとする。駆動制御装置3と第1ブレーキ制御装置40Aとは、互いの制御情報を送受信する。第1ブレーキ制御装置40Aと第2ブレーキ制御装置40Bとは、互いの制御情報を送受信する。第2ブレーキ制御装置40Bの制御情報は、第1ブレーキ制御装置40Aを介して駆動制御装置3に送信される。駆動制御装置3の制御情報は、第1ブレーキ制御装置40Aを介して第2ブレーキ制御装置40Bに送信される。
【0014】
常用ブレーキ指令及び非常ブレーキ指令は、第1ブレーキ制御装置40A及び第2ブレーキ制御装置40Bのそれぞれに入力される。常用ブレーキ指令は、鉄道車両1の減速や停止に使用されるブレーキであって、運転士の操作、又は運転室の制御装置によって出力される指令である。常用ブレーキ指令を伝達する常用ブレーキ指令線は、常時オフで指令があるときにオンとなる。非常ブレーキ指令は、緊急に鉄道車両1を停止させるときに使用されるブレーキであって、運転士又は乗務員の操作、又は運転室の制御装置によって出力される指令である。非常ブレーキ指令を伝達する非常ブレーキ指令線は、常時オンで指令があるときにオフとなる。保安ブレーキ指令は、電磁弁50にそれぞれ入力される。保安ブレーキ指令は、他のブレーキ系統や制御装置が故障等により使えなくなったときに出力される指令である。保安ブレーキ指令を伝達する保安ブレーキ指令線は、常時オンで指令があるときにオフとなる。保安ブレーキは、緊急ブレーキに相当する。保安ブレーキ指令は、緊急ブレーキ指令に相当する。保安ブレーキ指令線は、緊急ブレーキ指令線に相当する。
【0015】
(鉄道用ブレーキ装置4)
図2に示すように、鉄道用ブレーキ装置4は、ブレーキ機構10と、電動機20と、空気シリンダ30と、ブレーキ制御装置40と、電磁弁50と、を備える。ブレーキ機構10は、鉄道車両1の被制動部材である車輪(図示略)に摩擦材11を押し付けて鉄道車両1を制動する。ブレーキ機構10は、踏面ブレーキ装置である。電動機20は、例えば電動モータであって、ブレーキ機構10を駆動する。空気シリンダ30は、ブレーキ機構10を駆動する。
【0016】
ブレーキ機構10の摩擦材11は、伝達軸12の先端に交換可能に取り付けられている。伝達軸12の基端は、減速機21及び回転直動変換部22を介して電動機20に接続されている。電動機20の回転は、減速機21で減速されて、回転直動変換部22で直線運動に変換される。よって、摩擦材11は、電動機20が回転することによって被制動部材に押し付けられる。また、伝達軸12の中間には、空気シリンダ30が設けられている。空気シリンダ30は、圧縮空気が供給されることでシリンダ内を移動するピストン31を備えている。ピストン31は、伝達軸12に固定されている。よって、摩擦材11は、圧縮空気が供給されることによって被制動部材に押し付けられる。
【0017】
鉄道車両1を構成する台車と車体との間には、空気ばね60が設けられている。空気ばね60は、空気ばね60用の圧縮空気タンク(図示略)から圧縮空気が供給される。空気ばね60は、荷重に応じて車体の高さを一定に保つように空気圧を調整する。空気ばね60は、乗客が多いと荷重が大きくなるので、圧縮空気が供給されて空気圧が高くなる。一方、空気ばね60は、乗客が少ないと荷重が小さくなるので、圧縮空気が排出されて空気圧が低くなる。荷重センサ5は、空気ばね60の圧力から車体の荷重を検出する。
【0018】
空気シリンダ30と空気ばね60とは、接続管32で接続されている。空気シリンダ30には、空気ばね60の圧縮空気が直接供給される。接続管32の空気ばね60寄りには、電磁弁50が設けられている。電磁弁50は、空気ばね60と空気シリンダ30との連通と遮断とを切替可能である。電磁弁50は、ブレーキ制御装置40を介さず保安ブレーキ指令線が接続されている。ブレーキ制御装置40と電磁弁50とは、電気的に接続されていない。ブレーキ制御装置40が故障したとしても電磁弁50は影響を受けない。電磁弁50は、空気ばね60と空気シリンダ30とを遮断すると、空気シリンダ30の圧縮空気を排出する。空気シリンダ30の圧縮空気が排出されると、ピストン31とともに伝達軸12が反対方向に駆動されて摩擦材11が被制動部材から離間する。
【0019】
ブレーキ制御装置40には、車両電源41及び非常ブレーキ用バッテリ42が接続されている。車両電源41は、常用ブレーキに用いられる。非常ブレーキ用バッテリ42は、車両電源41が消失した際に用いられる。
【0020】
ブレーキ制御装置40は、常用ブレーキ指令に従って、空気ばね60の圧力に基づいて電動機20を制御して常用ブレーキ力を制御する。ブレーキ制御装置40は、空気ばね60の圧力が高いと重量が大きいので、ブレーキ力を大きくする。ブレーキ制御装置40は、空気ばね60の圧力が低いと重量が小さいので、ブレーキ力を小さくする。
【0021】
ブレーキ制御装置40は、非常ブレーキ指令に従って、電動機20を制御して非常ブレーキを作動させる。電動機20が回転することによって伝達軸12が駆動されることで摩擦材11が被制動部材に押し付けられる。
【0022】
電磁弁50は、通常時は閉弁している。電磁弁50は、保安ブレーキ指令が入力されると開弁して、空気ばね60の圧縮空気を空気シリンダ30に供給することで保安ブレーキを作動させる。電磁弁50が開弁されることで、圧縮空気が空気シリンダ30に供給されて、ピストン31とともに伝達軸12が駆動されることで摩擦材11が被制動部材に押し付けられる。空気ばね60の圧縮空気が直接供給されるため、応荷重弁の代わりとなり、荷重に応じた圧力の圧縮空気が空気シリンダ30に供給される。
【0023】
(作用)
次に、図1及び図2を参照して、上記のように構成された鉄道用ブレーキ装置4の作用について説明する。
【0024】
図2に示すように、常用ブレーキ指令がブレーキ制御装置40に入力された場合には、ブレーキ制御装置40は、常用ブレーキ指令に含まれる制動量及び空気ばね60の圧力に基づいて電動機20を制御して常用ブレーキ力を制御する。よって、電動機20の駆動量に応じて伝達軸12が駆動されて摩擦材11が被制動部材に押し付けられる。常用ブレーキを緩解する場合には、電動機20を反対方向に回転させることで伝達軸12が反対方向に駆動されて摩擦材11が被制動部材から離間する。
【0025】
非常ブレーキ指令がブレーキ制御装置40に入力された場合には、ブレーキ制御装置40は、電動機20を制御して非常ブレーキを作動させる。よって、電動機20が回転することによって伝達軸12が駆動されて摩擦材11が被制動部材に押し付けられる。非常ブレーキを緩解する場合には、電動機20を反対方向に回転させることで伝達軸12が反対方向に駆動されて摩擦材11が被制動部材から離間する。
【0026】
保安ブレーキ指令が電磁弁50に入力された場合には、電磁弁50は、開弁して空気ばね60の圧縮空気を、接続管32を介して空気シリンダ30に供給させる。車両電源41が消失したり、断線したりした場合には、電磁弁50への保安ブレーキ指令線の常時オン信号が消失することで、電磁弁50が開弁する。よって、ピストン31とともに伝達軸12が駆動されて摩擦材11が被制動部材に押し付けられる。保安ブレーキを緩解する場合には、電磁弁50を閉弁させることで、空気シリンダ30の圧縮空気を電磁弁50から排出させる。空気シリンダ30の圧縮空気が排出されると、ピストン31とともに伝達軸12が反対方向に駆動されて摩擦材11が被制動部材から離間する。
【0027】
よって、空気ばね60を、ブレーキ装置を作動させるための空気源として利用するため、ブレーキ装置を作動させるための専用の空気源及び空気源からの接続管を省略することができ、ブレーキ装置全体を簡素化することができる。
【0028】
次に、第1実施形態の効果について説明する。
(1-1)空気ばね60の圧縮空気を利用して保安ブレーキを作動させるため、従来のブレーキ装置に設けられる空気源及び配管などの設置を省略することができ、ブレーキ装置全体を簡素化することができる。
【0029】
(1-2)保安ブレーキ指令線と電磁弁50とがブレーキ制御装置40を介さずに接続される。このため、ブレーキ制御装置40が故障しても確実に保安ブレーキを作動させることができる。
【0030】
(1-3)電磁弁50が空気シリンダ30から圧縮空気を排出することで保安ブレーキを緩解させる。このため、保安ブレーキ指令が入力されなくなると、保安ブレーキを緩解させることができる。
【0031】
(第2実施形態)
以下、図3を参照して、鉄道用ブレーキ装置を備えた鉄道車両の第2実施形態について説明する。この実施形態の鉄道用ブレーキ装置は、保安ブレーキ指令がない点、電磁弁をブレーキ制御装置が制御する点が上記第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0032】
図3に示すように、電磁弁50は、ブレーキ制御装置40によって制御される。電磁弁50は、通常時は閉弁している。電磁弁50は、ブレーキ制御装置40の制御に従って開弁して、空気ばね60の圧縮空気を空気シリンダ30に供給することで非常ブレーキを作動させる。電磁弁50は、空気ばね60と空気シリンダ30とを遮断すると、空気シリンダ30の圧縮空気を排出する。非常ブレーキは、緊急ブレーキに相当する。非常ブレーキ指令は、緊急ブレーキ指令に相当する。非常ブレーキ指令線は、緊急ブレーキ指令線に相当する。
【0033】
(作用)
次に、図3を参照して、上記のように構成された鉄道用ブレーキ装置4の作用について説明する。
【0034】
図3に示すように、常用ブレーキ指令がブレーキ制御装置40に入力された場合には、ブレーキ制御装置40は、常用ブレーキ指令に含まれる制動量及び空気ばね60の圧力に基づいて電動機20を制御して常用ブレーキ力を制御する。よって、電動機20の駆動量に応じて伝達軸12が駆動されて摩擦材11が被制動部材に押し付けられる。常用ブレーキを緩解する場合には、電動機20を反対方向に回転させることで伝達軸12が反対方向に駆動されて摩擦材11が被制動部材から離間する。
【0035】
非常ブレーキ指令がブレーキ制御装置40に入力された場合には、ブレーキ制御装置40は、電磁弁50を開弁させて空気ばね60の圧縮空気を、接続管32を介して空気シリンダ30に供給させる。よって、ピストン31とともに伝達軸12が駆動されて摩擦材11が被制動部材に押し付けられる。非常ブレーキを緩解する場合には、電磁弁50を閉弁させることで、空気シリンダ30の圧縮空気を電磁弁50から排出させる。空気シリンダ30の圧縮空気が排出されると、ピストン31とともに伝達軸12が反対方向に駆動されて摩擦材11が被制動部材から離間する。
【0036】
次に、第2実施形態の効果について説明する。
(2-1)空気ばね60の圧縮空気を利用して非常ブレーキを作動させるため、従来のブレーキ装置に設けられる空気源及び配管などの設置を省略することができ、ブレーキ装置全体を簡素化することができる。
【0037】
(2-2)電動機20が故障したとしても、ブレーキ制御装置40が電磁弁50を開弁させることで非常ブレーキを作動させることができる。
(2-3)電磁弁50が空気シリンダ30から圧縮空気を排出することで非常ブレーキを緩解させる。このため、非常ブレーキ指令が入力されなくなると、非常ブレーキを緩解させることができる。
【0038】
(第3実施形態)
以下、図4を参照して、鉄道用ブレーキ装置を備えた鉄道車両の第3実施形態について説明する。この実施形態の鉄道用ブレーキ装置は、非常ブレーキ指令の入力先が上記第2実施形態と異なっている。以下、第2実施形態との相違点を中心に説明する。
【0039】
図4に示すように、非常ブレーキ指令を伝達する非常ブレーキ指令線は、ブレーキ制御装置40を介さずに電磁弁50と接続される。電磁弁50は、通常時は閉弁している。電磁弁50は、ブレーキ制御装置40からの制御ではなく、非常ブレーキ指令に従って開弁して、空気ばね60の圧縮空気を空気シリンダ30に供給することで非常ブレーキを作動させる。ブレーキ制御装置40を介さないため、非常ブレーキ用バッテリ42が不要である。ブレーキ制御装置40と電磁弁50とは、電気的に接続されていない。ブレーキ制御装置40が故障したとしても電磁弁50は影響を受けない。非常ブレーキは、緊急ブレーキに相当する。非常ブレーキ指令は、緊急ブレーキ指令に相当する。非常ブレーキ指令線は、緊急ブレーキ指令線に相当する。
【0040】
(作用)
次に、図4を参照して、上記のように構成された鉄道用ブレーキ装置4の作用について説明する。
【0041】
図4に示すように、常用ブレーキ指令がブレーキ制御装置40に入力された場合には、ブレーキ制御装置40は、常用ブレーキ指令に含まれる制動量及び空気ばね60の圧力に基づいて電動機20を制御して常用ブレーキ力を制御する。よって、電動機20の駆動量に応じて伝達軸12が駆動されて摩擦材11が被制動部材に押し付けられる。常用ブレーキを緩解する場合には、電動機20を反対方向に回転させることで伝達軸12が反対方向に駆動されて摩擦材11が被制動部材から離間する。
【0042】
非常ブレーキ指令が電磁弁50に入力された場合には、電磁弁50は、開弁して空気ばね60の圧縮空気を、接続管32を介して空気シリンダ30に供給させる。ブレーキ制御装置40の状態に関係なくブレーキ機構10を駆動させることができる。よって、ピストン31とともに伝達軸12が駆動されて摩擦材11が被制動部材に押し付けられる。非常ブレーキを緩解する場合には、電磁弁50を閉弁させることで、空気シリンダ30の圧縮空気を電磁弁50から排出させる。空気シリンダ30の圧縮空気が排出されると、ピストン31とともに伝達軸12が反対方向に駆動されて摩擦材11が被制動部材から離間する。
【0043】
次に、第3実施形態の効果について説明する。
(3-1)空気ばね60の圧縮空気を利用して非常ブレーキを作動させるため、従来のブレーキ装置に設けられる空気源及び配管などの設置を省略することができ、ブレーキ装置全体を簡素化することができる。
【0044】
(3-2)非常ブレーキ指令線と電磁弁50とがブレーキ制御装置40を介さずに接続される。このため、ブレーキ制御装置40が故障しても確実に非常ブレーキを作動させることができる。
【0045】
(3-3)電磁弁50が空気シリンダ30から圧縮空気を排出することで非常ブレーキを緩解させる。このため、非常ブレーキ指令が入力されなくなると、非常ブレーキを緩解させることができる。
【0046】
(他の実施形態)
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0047】
・上記各実施形態では、台車毎にブレーキ制御装置40を設けた。しかしながら、車両毎にブレーキ制御装置40を設け、1つのブレーキ制御装置40が1両に設けられるブレーキ機構10を全て制御してもよい。
【0048】
・上記各実施形態では、緊急ブレーキを緩解する場合に、電磁弁50を閉弁することで空気シリンダ30の圧縮空気を排出した。しかしながら、電磁弁50によって空気シリンダ30の圧縮空気を排出するのではなく、空気シリンダ30に圧縮空気を排出する機構を設けて、空気シリンダ30から圧縮空気を直接排出させてもよい。
【0049】
・上記各実施形態では、空気ばね60の圧縮空気を空気シリンダ30に直接供給した。しかしながら、空気ばね60用の圧縮空気タンクから圧縮空気を空気シリンダ30に供給してもよい。このような構成であっても、従来のブレーキ装置に設けられる空気源及び配管などの設置を省略することができ、ブレーキ装置全体を簡素化することができる。
【0050】
・上記第1実施形態において、ブレーキ制御装置40と電磁弁50とを電気的に接続して、非常ブレーキ指令が入力された場合に、ブレーキ制御装置40が電磁弁50を開弁させてもよい。
【0051】
・上記第1実施形態では、常用ブレーキ指令、非常ブレーキ指令、及び保安ブレーキ指令の3系統を備えた。しかしながら、非常ブレーキ指令と保安ブレーキ指令とを兼ねて、常用ブレーキ指令、及び保安ブレーキ指令の2系統を備えてもよい。
【0052】
・上記各実施形態では、ブレーキ機構10を踏面ブレーキ装置とした。しかしながら、ブレーキ機構10を、車軸に固定されたディスク(被制動部材)に摩擦材を押し付けるディスクブレーキ装置としてもよい。
【0053】
・上記各実施形態において、複数の物体で構成されているものは、当該複数の物体を一体化してもよく、逆に一つの物体で構成されているものを複数の物体に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成することができるように構成されていればよい。
【0054】
・上記各実施形態において、複数の機能が分散して設けられているものは、当該複数の機能の一部又は全部を集約して設けても良く、逆に複数の機能が集約して設けられているものを、当該複数の機能の一部又は全部が分散するように設けることができる。機能が集約されているか分散されているかにかかわらず、発明の目的を達成することができるように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0055】
1…鉄道車両
2A…第1台車
2B…第2台車
3…駆動制御装置
4…鉄道用ブレーキ装置
5…荷重センサ
10…ブレーキ機構
11…摩擦材
12…伝達軸
20…電動機
21…減速機
22…回転直動変換部
30…空気シリンダ
31…ピストン
32…接続管
40…ブレーキ制御装置
41…車両電源
42…非常ブレーキ用バッテリ
50…切替弁としての電磁弁
60…空気ばね
図1
図2
図3
図4