(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175715
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】位置調整治具及び対象機器の位置調整方法
(51)【国際特許分類】
E03B 11/00 20060101AFI20241212BHJP
F16K 27/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
E03B11/00 Z
F16K27/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093625
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】森村 克
(72)【発明者】
【氏名】塚原 尚起
(72)【発明者】
【氏名】辻田 啓志
【テーマコード(参考)】
3H051
【Fターム(参考)】
3H051AA02
3H051BB02
3H051BB03
3H051CC08
3H051FF02
(57)【要約】
【課題】対象機器の位置調整を好適に行うことが可能な位置調整治具を提供する。
【解決手段】地中に埋設されたバルブ10の上方に配置されるバルブボックス10の内側面に設けられ、通信部20及びバッテリ30の位置を調整可能な位置調整治具140であって、通信部20及びバッテリ30の水平方向における位置を調整可能な水平方向調整部と、通信部20及びバッテリ30の高さ方向における位置を調整可能な高さ方向調整部と、を具備する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設されたバルブの上方に配置されるバルブボックスの内側面に設けられ、対象機器の位置を調整可能な位置調整治具であって、
前記対象機器の水平方向における位置を調整可能な水平方向調整部と、
前記対象機器の高さ方向における位置を調整可能な高さ方向調整部と、
を具備する、
位置調整治具。
【請求項2】
前記水平方向調整部及び前記高さ方向調整部のうち、少なくとも一方は、
長手状に形成された調整孔と、
前記調整孔内を相対的に移動可能となるように配置された移動部材と、
を具備する、
請求項1に記載の位置調整治具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の位置調整治具を用いた対象機器の位置調整方法であって、
前記対象機器を、前記バルブボックスの上部に取り付けられる蓋に形成された孔部に対して近づける、又は、遠ざけるように、前記対象機器の位置調整を行う、
対象機器の位置調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象機器の位置を調整可能な位置調整治具及び対象機器の位置調整方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水道管等の管路に設けられ、流体の流路を開閉するバルブの技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このようなバルブは管路網において多数設置されているため、このバルブに管路(流路)内の情報を取得するための各種センサ(例えば、水質監視装置や流量計等)を設けることで、管路網の情報を広範囲にかつ恒久的に取得することができると考えられる。
【0004】
ここで、バルブに上述のような各種センサを設ける場合、当該センサだけでなく、当該センサに付随する各種機器(例えば、バッテリや、検出結果を送信するための通信端末装置等)をバルブの上方に配置されるバルブボックスに設ける必要がある。
【0005】
しかしながら、バルブボックス内のスペースには限りがあるため、バッテリ等の機器をバルブボックス内に配置すると、バルブの操作やメンテナンスのためのスペースを確保することが困難となることが懸念される。
【0006】
また、通信端末装置の通信性能(電波強度)は設置環境に応じてバラつきがあるため、通信性能を確保できる適切な位置に通信端末装置を設置する必要がある。また通信性能は、周辺環境の変化によって通信端末装置の設置後に変化する場合もある。
【0007】
このため、バッテリや通信端末装置等の対象機器の位置調整を好適に行うことができる技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示の一態様は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、対象機器の位置調整を好適に行うことが可能な位置調整治具及び対象機器の位置調整方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
本開示の一態様においては、地中に埋設されたバルブの上方に配置されるバルブボックスの内側面に設けられ、対象機器の位置を調整可能な位置調整治具であって、前記対象機器の水平方向における位置を調整可能な水平方向調整部と、前記対象機器の高さ方向における位置を調整可能な高さ方向調整部と、を具備するものである。
本開示の一態様によれば、対象機器の位置調整を好適に行うことができる。
【0012】
本開示の一態様においては、前記水平方向調整部及び前記高さ方向調整部のうち、少なくとも一方は、長手状に形成された調整孔と、前記調整孔内を相対的に移動可能となるように配置された移動部材と、を具備するものである。
本開示の一態様によれば、位置調整治具を簡単な構成とすることができる。
【0013】
本開示の一態様においては、前記位置調整治具を用いた対象機器の位置調整方法であって、前記対象機器を、前記バルブボックスの上部に取り付けられる蓋に形成された孔部に対して近づける、又は、遠ざけるように、前記対象機器の位置調整を行うものである。
本開示の一態様によれば、孔部を基準として対象機器の位置調整を行うことで、孔部を介した対象機器の通信性能の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示の一態様によれば、対象機器の位置調整を好適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】第一実施形態に係るバルブボックス及びバルブの一部断面図。
【
図4】(a)バルブボックス本体及び位置調整治具の一部平面断面図。(b)同じく、径方向視における一部断面図。
【
図6】バルブボックス本体及びプレートの径方向視における一部断面図。
【
図7】第二実施形態に係る位置調整治具を示す断面図。
【
図8】(a)バルブボックス本体及び第三実施形態に係る位置調整治具の一部平面断面図。(b)同じく、径方向視における一部断面図。
【
図9】バルブボックス本体及び第三実施形態に係るプレートの径方向視における一部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、図中の矢印U及び矢印Dで示した方向を、それぞれ上方向及び下方向と定義して説明を行う。なお、説明の便宜ため、図には各部材を模式的に示しており、具体的な形状や寸法等は図示されたものに限定されない。
【0017】
以下では、本発明の一実施形態に係る位置調整治具140について説明する。まず
図1及び
図2を参照し、位置調整治具140が設けられるバルブボックス100を用いた管理システム1について説明する。
【0018】
管理システム1は、後述するバルブ10を用いて流路内の流体の管理を行うものである。より詳細には、管理システム1は、上下水道施設に設けられ、送配水施設Pから供給され、水道管P1(流路)内を流通する水の管理を行う。例えば、管理システム1は、水道管P1内の情報(例えば、水圧等)を取得して確認することができる。管理システム1は、バルブ10、バルブボックス100、通信部20、バッテリ30、携帯型端末40、サーバ50及び管理者端末60を具備する。
【0019】
バルブ10は、水道管P1内の水の流通を制御するためのものである。バルブ10は、弁体によって水道管P1内の流路を開閉する弁(例えば、仕切り弁、バタフライ弁等)によって構成される。バルブ10は地中に埋設され、水道管P1の中途部に設けられる。バルブ10には、水道管P1内の情報を測定可能な各種のセンサS(例えば、圧力センサ、振動センサ、マイク等)が設けられる。
【0020】
バルブボックス100は、バルブ10の上方に空間を形成するためのものである。バルブボックス100は地中に埋設され、バルブ10の上方に配置される。バルブ10の上部(弁体を操作するための弁棒11の上部等)は、バルブボックス100内に露出するように配置される。
【0021】
通信部20は、バルブ10と他の機器(本実施形態では、サーバ50)との間で情報のやり取りを行うための機器である。通信部20は、無線通信可能に構成される。通信部20は、例えば近くの無線基地局との間で電波を送受信することで、携帯電話回線を介してサーバ50と情報のやり取りを行うことができる。通信部20は、電源となるバッテリ30に接続される。バッテリ30からの電力は、通信部20を介してセンサSへと供給することができる。通信部20及びセンサSは、バッテリ30からの電力を用いて作動することができる。通信部20及びバッテリ30は、バルブボックス100内に配置される。
【0022】
携帯型端末40は、水道管P1に関する作業(例えば、メンテナンス作業等)を行う作業者A1が所持する端末である。携帯型端末40は、作業者A1が携帯可能な機器(例えば、スマートフォンやタブレット端末等)によって構成される。携帯型端末40は、サーバ50で処理された情報(通信部20を介して受信したバルブ10の情報)を閲覧することで、バルブ10が取得した水道管P1内の情報を得ることができる。
【0023】
サーバ50は、他の機器からの要求に応じて適宜処理を行うものである。サーバ50は、例えばクラウドサーバ(厳密には、クラウドサーバ内に仮想的に構築されたサーバ)によって構成される。サーバ50は、通信部20を介してバルブ10からの信号を受信することで、当該バルブ10が取得した水道管P1内の情報を得ることができる。また、サーバ50は、当該水道管P1内の情報に対して処理を行うことができる。
【0024】
管理者端末60は、水道管P1の管理を行う管理者A2が使用する端末である。管理者端末60は、演算装置(例えば、CPU等)、記憶装置(例えば、HDD等)及び入出力装置(例えば、マウス、キーボード及びディスプレイ等)を具備する。管理者端末60は、ネットワーク回線を介してサーバ50と接続される。管理者端末60は、サーバ50に信号を送信することで、サーバ50から所定の情報(例えば、水道管P1内の情報や当該情報をサーバ50で処理した結果等)を取得することができる。
【0025】
次に、
図1及び
図2を参照してサーバ50の処理について説明する。
【0026】
上述の如く、サーバ50には、通信部20を介してセンサSによる測定結果が送信される。この際、サーバ50には、バルブ10を一意に特定する情報(例えば、所定のID等)及び測定日時が測定結果と関連付けて送信される。サーバ50は、こうして送信された情報を適宜記憶する。具体的には、例えば、サーバ50は、予め構築された所定のデータベースにセンサSの測定結果を登録する。
【0027】
サーバ50は、こうして記憶されたセンサSの測定結果に対して適宜処理を行う。具体的には、例えば、サーバ50は、管理者端末60等からの要求に応じて、データベースからデータを抽出して画面(例えば、html(HyperText Markup Language)ドキュメント等で作成された画面)を生成し、生成した画面を管理者端末60等から閲覧可能とする。
【0028】
より具体的には、サーバ50は、管理者端末60からの要求に応じて、水道管P1に接続された各バルブ10のセンサSで測定された結果(以下では、一例として「圧力」が測定されたものとする)を表示する画面を生成する。管理者端末60において当該画面を表示することで、管理者A2は、複数の場所における圧力を確認することができる。管理者A2は、当該確認結果に基づいて、送配水施設Pのポンプ運転の最適化を図ることができる。また、管理者A2は、圧力の異常の有無に基づいて、水道管P1において大規模な漏水が発生しているか否かを判断することもできる。
【0029】
また、サーバ50は、管理者端末60からの要求に応じて、地図情報にバルブ10の位置情報(例えば、緯度及び経度)及び圧力の測定結果を重畳させた画面を作成する。管理者端末60において当該画面を表示することで、管理者A2は、圧力と位置情報との関係を確認可能となる。これにより、管理者A2は、漏水場所及び漏水に対する対策(例えば、どのバルブ10で流路を閉じるのか等)を速やかに判断することができる。
【0030】
また、サーバ50は、携帯型端末40からの要求に応じて、所定のバルブ10で測定した圧力を表示する画面を生成する。携帯型端末40において当該画面を表示することで、作業者A1は、圧力の測定結果に基づいてバルブ10を開閉動作させるか否かを判断することができる。
【0031】
次に、バルブボックス100の構成について説明する。
【0032】
図2及び
図3に示すバルブボックス100は、バルブ10の上方に空間を形成する箱状の部材である。バルブボックス100は、主としてバルブボックス本体110、底板120、蓋部材130、位置調整治具140及び収容部材150を具備する。
【0033】
バルブボックス本体110は、主にバルブボックス100の側面を形成する部材である。バルブボックス本体110は、中空状に形成される。本実施形態のバルブボックス本体110は、軸線方向を上下方向に向けた円筒状に形成される。
図4(a)及び
図5に示すように、バルブボックス本体110は、雌ネジ部111を具備する。
【0034】
雌ネジ部111は、後述する第一ボルト142と螺合可能に形成される。雌ネジ部111は、バルブボックス本体110の上下中途部に形成される。雌ネジ部111は、バルブボックス本体110の周方向CDに沿って複数(本実施形態では2つ)形成される。
【0035】
図2及び
図3に示す底板120は、主にバルブボックス100の底面を形成する部材である。底板120は、板状の部材により形成される。図例では、底板120は、バルブボックス本体110より一回り大きい平面視円形状に形成されている。底板120の中央部には、当該底板120を上下に貫通する開口部が形成されている。この底板120の開口部を介して、バルブ10の弁棒11の上部がバルブボックス100内に露出するように配置されている。底板120は、バルブボックス本体110の下部に設けられる。
【0036】
蓋部材130は、主にバルブボックス100の上面を形成する部材である。蓋部材130は、板状の部材により形成される。図例では、蓋部材130は、バルブボックス本体110の上部の開口部を覆うことができる程度の径を有する平面視円形状に形成されている。蓋部材130は、バルブボックス本体110の上部に設けられる。蓋部材130は、バルブボックス本体110に対して開閉することができるように設けられる。蓋部材130を開放することで、地上からバルブボックス100内の各種作業(バルブ10の操作、メンテナンス等)を行うことができる。
【0037】
蓋部材130は、孔部131を具備する。孔部131は、蓋部材130を上下方向に貫通するように形成される。こうして孔部131が形成されることにより、バルブボックス本体110と地上との間で空気が出入りすることができる。これにより、例えばバルブボックス本体110内に浸入する地下水の水位(地下水位)が変化した場合に、バルブボックス本体110と地上との間で空気を出入りさせ、バルブボックス本体110内の圧力変動を抑制することができる。
【0038】
図3に示すように、孔部131は、蓋部材130に複数形成される。複数の孔部131は、バルブボックス本体110の周方向CDに等間隔に形成される。作業者A1は、孔部131に工具を引っ掛けることにより、蓋部材130を開くことができる。
【0039】
図4及び
図5に示す位置調整治具140は、対象となる機器(対象機器)の位置を調整するためのものである。位置調整治具140は、バルブボックス100(バルブボックス本体110)の内側面に設けられる。なお本実施形態における対象機器としては、バルブボックス100内に配置される通信部20及びバッテリ30を想定している。位置調整治具140は、プレート141、第一ボルト142、ブラケット143及び第二ボルト144を具備する。
【0040】
プレート141は、上下方向に沿った長手状の部材である。プレート141は、板面をバルブボックス本体110の径方向RDに向けて配置される。またプレート141は、バルブボックス本体110の内側面に対して、径方向RDの内側に隣接するように配置される。プレート141は、周方向CDに沿って2つ配置される。
図6に示すように、プレート141は、長孔141a及び雌ネジ部141bを具備する。
【0041】
長孔141aは、上下方向に沿って延びるように形成される。また長孔141aは、プレート141を厚み方向(径方向RD)に貫通するように形成される。長孔141aは、径方向RD視において、雌ネジ部111と重複する。
【0042】
雌ネジ部141bは、後述する第二ボルト144と螺合可能に形成される。雌ネジ部141bは、長孔141aの上方に形成される。
【0043】
図4(b)及び
図5に示す第一ボルト142は、プレート141をバルブボックス本体110に固定するためのものである。第一ボルト142の頭部の幅は、長孔141aの幅よりも大きい。一方第一ボルト142の軸部の外径は、長孔141aの幅よりも小さい。第一ボルト142は、軸部が長孔141aに挿通され、当該長孔141aを介してバルブボックス本体110の2つの雌ネジ部111にそれぞれ螺合される。なお
図4(a)では、説明の便宜上、第一ボルト142及び第二ボルト144の記載が省略されている。
【0044】
図4及び
図5に示すブラケット143は、対象機器を支持するためのものである。ブラケット143は、2つのプレート141に対して、径方向RDの内側に隣接するように配置される。ブラケット143は、連結部143a、長孔143b及び取付部143cを具備する。
【0045】
連結部143aは、周方向CDに沿って延びる板状の部分である。連結部143aは、2つのプレート141の周方向CDに沿った距離よりも長くなるように形成される。
【0046】
長孔143bは、周方向CDに沿って延びるように形成される。また長孔143bは、連結部143aを厚み方向(径方向RD)に貫通するように形成される。長孔143bは、周方向CDに沿って2つ形成される。2つの長孔143bは、径方向RD視において、2つの雌ネジ部141b(
図6参照)とそれぞれ重複する。
【0047】
取付部143cは、後述する収容部材150が取り付けられる部分である。
図5に模式的に示すように、取付部143cは、収容部材150を載置可能に形成される。当該取付部143cには、ボルト等の適宜の固定部材により、収容部材150を取り付けることができる。
【0048】
図4(b)及び
図5に示す第二ボルト144は、ブラケット143を2つのプレート141に固定するためのものである。第二ボルト144の頭部の幅は、長孔143bの幅よりも大きい。一方第二ボルト144の軸部の外径は、長孔143bの幅よりも小さい。第二ボルト144は、軸部が長孔143bに挿通され、当該長孔143bを介して2つのプレート141の雌ネジ部141bにそれぞれ螺合される。
【0049】
図2及び
図5に示す収容部材150は、対象機器(通信部20及びバッテリ30)を収容するものである。収容部材150は、中空の箱状に形成される。収容部材150は、対象機器が収容された状態で、ボルト等の適宜の固定部材により、取付部143cに固定される。収容部材150によって、埃や水から対象機器を保護することができる。
【0050】
以下では、上述の如く構成される位置調整治具140を用いて対象機器の位置を調整する手順を説明する。位置調整治具140は、対象機器の周方向CDにおける位置及び上下方向における位置をそれぞれ調整することができる。
【0051】
以下ではまず、周方向CDにおける位置調整の手順の一例を説明する。本実施形態では、位置調整治具140のブラケット143の取り付け位置を調整することで、周方向CDにおける対象機器の位置を調整することができる。
【0052】
具体的には、
図4(b)に示す第二ボルト144が緩められる。これによりブラケット143のプレート141に対する固定が解除される。この状態では、ブラケット143の長孔143bの範囲で、プレート141及び第二ボルト144に対してブラケット143を周方向CDに相対移動させることができる。また所定の周方向位置で第二ボルト144による締結を行うことにより、ブラケット143を当該周方向位置で固定することができる。
【0053】
こうしてブラケット143の取り付け位置が調整される。対象機器はブラケット143に取り付けられるため、ブラケット143の取り付け位置の調整により、対象機器の周方向CDにおける位置が調整される。このように、本実施形態では長孔143b及び第二ボルト144によって、対象機器の周方向CDにおける位置を調整することができる。なお本実施形態では、蓋部材130の孔部131(
図2参照)の真下に通信部20を配置可能となるように、長孔143bの長さやプレート141の周方向位置が適宜設定されている。
【0054】
次に、上下方向(高さ方向)における対象機器の位置調整の手順を説明する。本実施形態では、位置調整治具140のプレート141の取り付け位置を調整することで、対象機器の高さ位置を調整することができる。
【0055】
具体的には、
図4(b)に示す第一ボルト142が緩められる。これによりプレート141の固定が解除される。この状態では、プレート141の長孔141aの範囲で、バルブボックス本体110及び第一ボルト142に対してプレート141を上下方向に相対移動させることができる。また所定の高さ位置で第一ボルト142による締結を行うことにより、プレート141を当該高さ位置で固定することができる。
【0056】
こうしてプレート141の取り付け位置が調整される。プレート141にはブラケット143が取り付けられるため、プレート141の取り付け位置の調整により、対象機器の高さ位置が調整される。このように、本実施形態では長孔141a及び第一ボルト142によって、対象機器の高さ位置を調整することができる。
【0057】
上述した手順によって対象機器の周方向位置及び高さ位置をそれぞれ調整することで、対象機器の位置調整を好適に行うことができる。
【0058】
例えば、対象機器の高さ位置を調整することで、
図2に示す弁棒11に対して遠い位置に対象機器を配置することができる。これによってバルブ10の操作やメンテナンスのためのスペースを確保し易くなり、作業性を向上させることができる。また設計変更によりバルブ10とバルブボックス本体110との相対位置が変わった場合でも、対象機器の高さ位置及び周方向位置を調整することで、前記相対位置の変化に対応することができる。
【0059】
またバルブボックス本体110内に浸入する地下水の状態は、周辺環境の変化等によって変わる場合がある。例えば周辺環境の変化により、当初(バルブボックス100の設置時)よりも地下水の最大水位が上昇する場合がある。こうした最大水位の上昇に応じて対象機器の高さ位置を上げることで、対象機器が水没するのを抑制することができる。
【0060】
また
図2に示す蓋部材130(孔部131)を基準として対象機器の位置を調整することにより、通信部20の電波強度(通信性能)を向上させることができる。より詳細には、通信部20と無線基地局との間で送受信される電波が蓋部材130に遮られ難くなるように対象機器の位置を調整することで、通信部20の電波強度を向上させることができる。例えば、蓋部材130の孔部131の真下に通信部20が位置するように、周方向CDにおける対象機器の位置を調整することで、通信部20の電波強度を向上させることができる。
【0061】
また通信部20は、孔部131からの深さ(設置深さ)に応じて電波強度が変化する場合がある。本実施形態では対象機器の高さ位置を調整することによって、孔部131に対して通信部20を近接又は離間させ、前記孔部131からの深さを変更することができる。例えば作業者A1は、通信部20の電波強度を測定しながら対象機器の高さ位置を調整することで、電波強度が良好となるような適切な高さ位置に通信部20を配置することができる。また作業者A1は、通信部20の周方向位置についても高さ位置と同様に、通信部20の電波強度を測定しながら位置調整を行うことで、適切な周方向位置に通信部20を配置することができる。
【0062】
また前記孔部131からの深さは、バルブボックス100の設置後に変化する場合がある。例えばバルブボックス100周辺の舗装の状態の変化により、前記孔部131からの深さが変化する場合がある。そこで、こうした深さの変化に応じて対象機器の高さ位置を調整することで、前記孔部131からの深さを適切なものにして、電波強度の悪化を抑制することができる。
【0063】
また通信部20の電波強度は、周辺環境の変化(地下水位の状態、建築物の有無等)によって変わる場合がある。例えば通信部20の電波強度は、上述した最大水位の変化等によって悪化する場合がある。また例えば通信部20の電波強度は、バルブボックス100の周囲にビル等の建築物がある場合(建てられた場合)に悪化する場合がある。
【0064】
そこで作業者A1は、通信部20の電波強度を測定しながら対象機器の高さ位置を調整することで、こうした周辺環境の変化に応じて対象機器を適切な高さ位置に配置することができる。これによって電波強度の悪化を抑制することができる。
【0065】
以上の如く、本実施形態に係る位置調整治具140は、地中に埋設されたバルブ10の上方に配置されるバルブボックス100の内側面に設けられ、対象機器(通信部20及びバッテリ30)の位置を調整可能な位置調整治具140であって、前記対象機器の水平方向(本実施形態では周方向CD)における位置を調整可能な水平方向調整部(長孔143b及び第二ボルト144)と、前記対象機器の高さ方向における位置を調整可能な高さ方向調整部(長孔141a及び第一ボルト142)と、を具備するものである。
【0066】
このように構成することにより、対象機器の位置調整を好適に行うことができる。例えば、対象機器として通信可能な通信部20を用いる場合、当該対象機器の電波強度(通信性能)を確保できるように、対象機器を位置調整することができる。また、地下水位に応じて対象機器の高さ位置を調整することができる。
【0067】
また、前記水平方向調整部及び前記高さ方向調整部のうち、少なくとも一方は、長手状に形成された調整孔(長孔141a・143b)と、前記調整孔内を相対的に移動可能となるように配置された移動部材(第一ボルト142及び第二ボルト144)と、を具備するものである。
【0068】
このように構成することにより、位置調整治具140を簡単な構成とすることができる。
【0069】
また、以上の如く、本実施形態に係る対象機器の位置調整方法は、前記位置調整治具140を用いた対象機器の位置調整方法であって、前記対象機器を、前記バルブボックス100の上部に取り付けられる蓋部材130(蓋)に形成された孔部131に対して近づける、又は、遠ざけるように、前記対象機器の位置調整を行うものである。
【0070】
このように構成することにより、孔部131を基準として対象機器の位置調整を行うことで、孔部131を介した対象機器の通信性能の向上を図ることができる。
【0071】
なお、本実施形態に係る通信部20及びバッテリ30は、本発明に係る対象機器の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る長孔143b及び第二ボルト144は、本発明に係る水平方向調整部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る長孔141a及び第一ボルト142は、本発明に係る高さ方向調整部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る長孔141a・143bは、本発明に係る調整孔の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る第一ボルト142及び第二ボルト144は、本発明に係る移動部材の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る蓋部材130は、本発明に係る蓋の実施の一形態である。
【0072】
以下では、本願発明の別実施形態について説明する。なお別実施形態の説明では、第一実施形態と同様に構成される部材については第一実施形態と同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0073】
上述の第一実施形態では、
図5に示すように、プレート141の雌ネジ部141bに第二ボルト144が螺合されるものとしたが、
図7に示す第二実施形態のように、第二ボルト144がナット246に螺合される構成とすることも可能である。第二実施形態の位置調整治具240は、プレート241、第一ボルト142、ブラケット143、第二ボルト144、スペーサ245及びナット246を具備する。
【0074】
第二実施形態のプレート241は、第一実施形態のプレート141よりも厚みが薄くなるように形成される。当該プレート241には、第一実施形態のような雌ネジ部141bが形成されていない。
【0075】
スペーサ245は、プレート241とバルブボックス本体110との間に配置される。スペーサ245は、貫通孔245aを具備する。貫通孔245aは、スペーサ245を径方向RDに貫通するように形成される。また貫通孔245aは、第一ボルト142の軸部を挿通可能に形成される。スペーサ245は、第一ボルト142が雌ネジ部111に螺合されることにより、プレート141とバルブボックス本体110との間で挟まれて固定される。
【0076】
こうしてスペーサ245がプレート141とバルブボックス本体110との間に介在することで、プレート241は、バルブボックス本体110の表面(内側面)に対して径方向RDに離れた位置に配置される。
【0077】
ナット246は、プレート241とバルブボックス本体110との間に配置される。当該ナット246に第二ボルト144が螺合されることにより、プレート241にブラケット143を固定することができる。
【0078】
第二実施形態の位置調整治具240によれば、雌ネジ部141bを形成することなく、プレート241にブラケット143を固定することができる。これによってプレート141を簡単な形状にすることができる。
【0079】
また上述の第一実施形態では、
図5及び
図6に示すように、バルブボックス本体110に対してプレート141の上下方向における位置(高さ位置)を調整可能であるものとした。また第一実施形態では、
図4に示すように、プレート141に対してブラケット143の周方向CDにおける位置を調整可能であるものとした。これは一例であり、バルブボックス本体110に取り付けられるプレート141の位置調整をする方向と、当該プレート141に取り付けられるブラケット143の位置調整をする方向とは、適宜変更可能である。
図8には、こうしたプレート141等を位置調整する方向が第一実施形態とは異なる、第三実施形態に係る位置調整治具340が記載されている。
【0080】
第三実施形態に係る位置調整治具340は、バルブボックス本体110に取り付けられるプレート341の周方向位置と、当該プレート341に取り付けられるブラケット343の上下方向における位置とを調整可能に構成される。位置調整治具340は、プレート341、第一ボルト142、ブラケット343及び第二ボルト144を具備する。
【0081】
図8(a)及び
図9に示すプレート341は、周方向CDに沿って延びる板状に形成される。
図9に示すように、プレート341は、長孔341a及び雌ネジ部341bを具備する。
【0082】
長孔341aは、周方向CDに沿って延びるように形成される。また長孔341aは、プレート341を厚み方向(径方向RD)に貫通するように形成される。長孔341aは、第一ボルト142の軸部が挿通可能に形成される。長孔341aは、周方向CDに沿って2つ形成される。2つの長孔341aは、径方向RD視において、2つの雌ネジ部111(
図8(a)参照)と重複する。
【0083】
雌ネジ部341bは、第二ボルト144と螺合可能に形成される。雌ネジ部141bは、周方向CDに沿って2つ形成される。なお
図8(a)では説明の便宜上、プレート341を薄板状に記載しているが、雌ネジ部141bに第二ボルト144を締結できる程度の厚みを有するようにプレート341を形成可能である。
【0084】
プレート341は、長孔341aを介して第一ボルト142が雌ネジ部111に螺合されることにより、バルブボックス本体110に固定される。またプレート341は、第一ボルト142が緩められることにより、長孔341aの範囲で、バルブボックス本体110に対して周方向CDに相対移動することができる。
【0085】
図8に示すブラケット343は、連結部343a、長孔343b、接続部343c及び取付部343dを具備する。
【0086】
連結部343aは、上下方向に沿って延びる板状に形成される。連結部343aは、プレート341に対して、径方向RDの内側に隣接するように配置される。連結部343aは、周方向CDに沿って2つ配置される。
【0087】
長孔343bは、上下方向に沿って延びるように形成される。また長孔343bは、連結部343aを厚み方向(径方向RD)に貫通するように形成される。長孔343bは、第二ボルト144の軸部が挿通可能に形成される。長孔343bは、径方向RD視において、雌ネジ部341b(
図9参照)と重複する。
【0088】
接続部343cは、2つの連結部343aを接続するように形成される。接続部343cは、第一ボルト142と干渉しないように、プレート341に対して適宜間隔をあけて配置される。
【0089】
取付部343dは、収容部材150を載置可能に形成される。例えば取付部343dは、
図8(b)に示すように、バルブボックス本体110の径方向RD視において、上部が開口する略U字状に形成される。取付部343dは、接続部343cに適宜固定される。収容部材150は、取付部343dに載置された状態でバンド343eが巻き付けられることにより、取付部343dに固定される。
【0090】
ブラケット343は、長孔343bを介して第二ボルト144が雌ネジ部341bに螺合されることにより、プレート341に固定される。またブラケット343は、第二ボルト144が緩められることにより、長孔343bの範囲で、プレート341に対して上下方向に相対移動することができる。
【0091】
本実施形態では、2つの連結部343aが接続部343cによって互いに接続されているため、接続部343cの上下動により、2つの連結部343aをまとめて移動させることができる。これによって、ブラケット343(対象機器)の高さ位置を調整する作業を効率的に行うことができる。
【0092】
以上、本発明の第一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0093】
例えば、管理システム1(バルブ10)は、上下水道設備に設けられるものとしたが、バルブ10の適用対象は上下水道設備に限定されるものではなく、種々の設備に適用可能である。
【0094】
また、上記実施形態では、通信部20は携帯電話回線を介してサーバ50と情報をやり取りする構成を例示したが、通信部20の通信経路はこれに限るものではない。例えば、災害等の発生により携帯電話回線が使用できなくなった場合等に備えて、別途の通信手段(Wi-Fi等)を介して通信部20と外部との通信を可能としてもよい。これによって、例えばデータロガーと通信部20とを直接通信させて、サーバ50等を介することなく流路内の情報を直接取得することも可能である。
【0095】
また上記実施形態では、一例として通信部20及びバッテリ30の位置を調整するものとしたが、本発明の対象機器は通信部20及びバッテリ30に限るものではなく、任意の機器を位置調整することが可能である。
【0096】
また上記実施形態では、バルブボックス100は平面視円状に形成されるものとしたが、バルブボックス100の形状は特に限定されるものではない。例えばバルブボックス100は、平面視四角形状に形成されるものであってもよい。
【0097】
また上記実施形態では、対象機器の周方向CDにおける位置を調整可能であるものとしたが、本発明に係る水平方向調整部は、対象機器の水平方向における位置を調整可能であればよく、周方向CDとは異なる方向に対象機器の位置を調整することも可能である。例えば水平方向調整部は、対象機器の径方向RDにおける位置を調整可能であってもよい。このように、水平方向調整部によって対象機器の位置を調整する方向は、適宜変更可能である。
【0098】
また上記実施形態では、長孔141a、第一ボルト142等によって対象機器の位置を調整するものとしたが、本発明はこれに限るものではなく、対象機器の位置を調整可能であれば、位置調整治具の具体的な構造は限定されるものではない。例えば、レール部材をバルブボックス本体110の内側面に取り付け、このレール部材に沿って対象機器を移動させることで、対象機器の位置を調整することも可能である。また例えば、長孔141a・143bとは異なる形状の孔部を利用して、対象機器の位置を調整することも可能である。例えば、
図4(b)に示す長孔141aにかえて、第一ボルト142の軸部を挿通可能な円状の孔部をプレート141に複数形成し、当該複数の孔部のいずれかを介して第一ボルト142を雌ネジ部111に螺合することで、対象機器の位置を段階的に調整することも可能である。
【0099】
また上記実施形態では、対象機器の周方向CDにおける位置を調整することによって孔部131の真下に通信部20を配置する例を示したが、これは一例であり、必ずしも孔部131の真下に通信部20を配置する必要はない。
【符号の説明】
【0100】
10 バルブ
20 通信部
30 バッテリ
100 バルブボックス
140 位置調整治具
141a 長孔
142 第一ボルト
143a 長孔
144 第二ボルト