(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175716
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】回転電機用ステータおよび回転電機用ステータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 1/20 20060101AFI20241212BHJP
H02K 15/10 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H02K1/20 C
H02K15/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093626
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅志
【テーマコード(参考)】
5H601
5H615
【Fターム(参考)】
5H601AA16
5H601CC05
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD11
5H601EE03
5H601EE12
5H601EE26
5H601GA02
5H601GB05
5H601GB12
5H601GB33
5H601GC04
5H601GC05
5H601GC08
5H601GC12
5H601GE02
5H601GE12
5H601GE16
5H601JJ04
5H601JJ06
5H601JJ08
5H601KK08
5H601KK10
5H601KK14
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB02
5H615BB07
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP08
5H615PP19
5H615RR02
5H615SS05
5H615SS19
5H615SS24
(57)【要約】
【課題】ステータコアのスロットからロータへの冷却油の漏れを安価な構成で防止することが可能な回転電機用ステータを提供する。
【解決手段】回転電機用ステータ2は、軸線を中心とした内周面20aを有するとともに、径方向に延設された周方向複数のスロット22を有するステータコア20と、スロット22に配置されたコイル21と、内周面20aに対向するように軸線を中心として略円筒形状に構成されたシート状の外部絶縁部材50と、を備える。外部絶縁部材50は、ステータコア20の内側に入り込む発泡体52を一体に有し、ステータコア20は、冷却油をスロット22に導く冷却媒体供給部と、発泡体52がスロット22に入り込むように内周面20aに設けられた開口221と、をさらに有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を中心とした周面を有するとともに、径方向に延設された周方向複数のスロットが設けられたステータコアと、
前記スロットに配置されたコイルと、
前記周面に対向するように前記軸線を中心として略円筒形状に構成されたシート状ないしフィルム状の絶縁部材と、を備え、
前記絶縁部材は、前記ステータコアの内側に入り込む発泡体を一体に有し、
前記ステータコアは、
冷却媒体を前記スロットに導く冷却媒体供給部と、
前記発泡体が前記ステータコアの内側に入り込むように前記周面に設けられた発泡体導入部と、をさらに有することを特徴とする回転電機用ステータ。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機用ステータにおいて、
前記発泡体導入部は、前記周面から径方向に延設された前記スロットの開口により構成されることを特徴とする回転電機用ステータ。
【請求項3】
請求項2に記載の回転電機用ステータにおいて、
前記絶縁部材は、周方向に分割して配置された周方向複数の分割絶縁部材により構成され、
前記分割絶縁部材は、前記開口を介して前記スロットに挿入されるように周方向端部から径方向に向けて屈曲された屈曲部を有することを特徴とする回転電機用ステータ。
【請求項4】
請求項2または3に記載の回転電機用ステータにおいて、
前記ステータコアは、前記周面に設けられた前記開口の周方向の幅が前記スロットの周方向の幅よりも小さくなるように構成されることを特徴とする回転電機用ステータ。
【請求項5】
請求項1に記載の回転電機用ステータにおいて、
前記ステータコアは、前記周方向複数のスロットを形成するように設けられた周方向複数のティースをさらに有し、
前記発泡体導入部は、前記ティースの周面に設けられた切り欠きにより構成されることを特徴とする回転電機用ステータ。
【請求項6】
請求項5に記載の回転電機用ステータにおいて、
前記ステータコアは、前記周面に設けられた前記切り欠きの周方向の幅が、前記周面からの径方向の距離が増加するに従い大きくなるように構成されることを特徴とする回転電機用ステータ。
【請求項7】
請求項1に記載の回転電機用ステータにおいて、
前記ステータコアは、単一または積層された複数枚の電磁鋼板からなる第1鋼板部と単一または積層された複数枚の電磁鋼板からなる第2鋼板部とを軸方向に交互に積層して構成され、
前記周面は、前記第1鋼板部の周面と前記第2鋼板部の周面とを含み、
前記第1鋼板部の周面は、径方向に凹設された第1凹部と径方向に突設された第1凸部とを周方向交互に有し、
前記第2鋼板部の周面は、径方向に凹設された第2凹部と径方向に突設された第2凸部とを周方向交互に有し、
前記第1鋼板部と前記第2鋼板部とは、前記第1凹部と前記第2凸部および前記第2凹部と前記第1凸部がそれぞれ軸方向に隣接するように積層されていることを特徴とする回転電機用ステータ。
【請求項8】
軸線を中心とした周面を有するとともに径方向に延設された周方向複数のスロットが設けられたステータコアと、前記スロットに配置されたコイルと、を有し、前記スロットを冷却媒体が流れるように構成される回転電機用ステータの製造方法であって、
前記スロット側の表面に発泡層が設けられた、前記軸線を中心として略円筒形状に構成されたシート状ないしフィルム状の絶縁部材を、前記周面に対向するように配置する配置工程と、
前記絶縁部材を前記周面に当接させる当接工程と、
前記周面に当接した前記絶縁部材を加熱する加熱工程と、を含む回転電機用ステータの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の回転電機用ステータの製造方法において、
前記当接工程は、加熱部を有する径方向に移動可能な治具を、前記絶縁部材に対向するように配置して、前記加熱部を径方向に移動させることを含み、
前記加熱工程は、前記加熱部を加熱させることを含む回転電機用ステータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機用ステータおよび回転電機用ステータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ステータコアの内周面に設けられたスロットに、軸方向に閉塞部材を係合させてスロットの開口を塞ぐとともに、スロットの内部を冷却油が流通するように構成されたステータが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載のステータのように、スロットの開口に閉塞部材を係合する構成では、スロットと閉塞部材とを互いに精度よく形成する必要があり、コストの増加を伴う。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様である回転電機用ステータは、軸線を中心とした周面を有するとともに、径方向に延設された周方向複数のスロットが設けられたステータコアと、スロットに配置されたコイルと、周面に対向するように軸線を中心として略円筒形状に構成されたシート状ないしフィルム状の絶縁部材と、を備える。絶縁部材は、ステータコアの内側に入り込む発泡体を一体に有し、ステータコアは、冷却媒体をスロットに導く冷却媒体供給部と、発泡体がステータコアの内側に入り込むように周面に設けられた発泡体導入部と、をさらに有する。
【0006】
本発明の他の態様は、軸線を中心とした周面を有するとともに径方向に延設された周方向複数のスロットが設けられたステータコアと、スロットに配置されたコイルと、を有し、スロットを冷却媒体が流れるように構成される回転電機用ステータの製造方法であって、スロット側の表面に発泡層が設けられた、軸線を中心として略円筒形状に構成されたシート状ないしフィルム状の絶縁部材を、周面に対向するように配置する配置工程と、絶縁部材を周面に当接させる当接工程と、周面に当接した絶縁部材を加熱する加熱工程と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、安価な構成で、スロットからロータへの冷却媒体の漏れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る回転電機用ステータを含む回転電機の要部構成を示す断面図。
【
図3】スロットに配置される内部絶縁部材の斜視図。
【
図4】本発明の実施形態に係る回転電機用ステータの製造工程を説明する斜視図。
【
図5】
図4の回転電機用ステータに含まれる絶縁部材の構成を示す図。
【
図6】本発明の実施形態に係る回転電機用ステータの製造方法を説明する図。
【
図9】本発明の実施形態に係る回転電機用ステータに用いられる絶縁部材の変形例を示す図。
【
図10】本発明の実施形態に係る回転電機用ステータの変形例を示す図。
【
図13】本発明の実施形態に係る回転電機用ステータをインナステータとして構成する例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1~
図13を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る回転電機用ステータを含む回転電機100の要部構成を示す断面図である。回転電機100は、ハイブリッド車両や電気自動車に搭載され、車両駆動用の電動機として用いることができ、発電機として用いることもできる。なお、回転電機100は、車両以外に搭載し、種々の用途に用いることもできる。
【0010】
図1は、軸線CL0に対し垂直な回転電機100の断面図である。
図1に示すように、回転電機100は、軸線CL0を中心に回転するロータ1と、ロータ1の外周面1aを包囲するようにロータ1の外側に設けられたステータ2とを備える。ステータ2の周囲にはケース3が配置される。以下では、軸線CL0の延在する方向を軸方向、軸線CL0から放射状に延びる方向を径方向、軸線CL0を中心とした円の円周に沿った方向を周方向と定義する。
【0011】
回転電機100は、例えば埋込磁石型同期モータとして構成される。したがって、ロータ1は、軸線CL0を中心とした略円環形状のロータコア10と、ロータコア10に形成された周方向複数の磁極部(不図示)と、を有する。なお、磁極部には永久磁石が埋設される。ロータコア10の内周面10aには、例えば回転電機100の出力軸を構成する不図示のロータシャフトが嵌合され、ロータ1はロータシャフトと一体に回転する。ロータ1の外周面1aはロータコア10の外周面に相当する。ロータコア10は、磁性体である金属製の複数枚の電磁鋼板を軸方向に積層して形成される。
【0012】
ステータ2は、ロータ1の外周面1aから径方向に所定の間隔を隔てて配置された内周面20aを有する軸線CL0を中心とした略円環状のステータコア20と、ステータコア20に取り付けられたコイル21と、ロータ1の外周面1aとステータコア20の内周面20aとの間に介装された略円筒形状の絶縁部材50と、を有する。ステータコア20は、磁性体である金属製の複数枚の電磁鋼板を軸方向に積層して構成される。
【0013】
ステータコア20の内周面20aには、径方向内側に向けて周方向複数のティース23が突設される。周方向に隣り合うティース23の間には、内周面20aから径方向外側に向けて周方向複数のスロット22が設けられ、各スロット22にコイル21が配置される。コイル21は、略矩形断面を有する導体である。なお、コイル21は円形断面を有する導体であってもよい。ステータコア20の外周面20bは、ケース3の内周面31に液密に嵌合される。
【0014】
コイル21は、U相コイル、V相コイルおよびW相コイルの3相コイルから構成される。U相コイル、V相コイルおよびW相コイルは、それぞれU相引き出し線、V相引き出し線およびW相引き出し線を介して不図示の電力変換装置等と電気的に接続される。回転電機を電動機として用いる際は、電力変換装置から3相のコイルにそれぞれ3相の交流電力が供給される。これにより、ステータ2に磁界が発生するとともに、この磁界とロータ1の磁極部の永久磁石によって発生する磁界とが相互作用することにより、ロータ1が回転する。その結果、走行駆動力が発生し、車両が走行する。回転電機を発電機として用いる際は、回転電機の駆動によって生じた3相の交流電力を、不図示の電力変換装置等に供給する。
【0015】
図2は、スロット内の構成を示す
図1の要部拡大図である。
図2に示すように、スロット22は、ステータコア20の内周面20aに設けられた開口221と、開口221の径方向外側に設けられた収容部222とを有する。収容部222は、互いに対向する一対の側面222a,222bと、一対の側面222a,222bを接続する径方向外側の底面222cとを有する。収容部222の幅、すなわち一対の側面222a,222b間の距離(周方向長さ)は、径方向外側にわたって一定であり、収容部222は、径方向に細長の断面略矩形状に形成される。ティース23は、径方向内側の先端部に、周方向両側に突設された突出部231を有し、一対の突出部231の間に開口221が設けられる。収容部222の幅は、開口221の幅よりも大きい。
【0016】
スロット22には、コイル21を形成する4本の導体セグメント211が径方向に並べて配置される。なお、スロット内の導体セグメント211の本数は4本より多くてもよく、少なくてもよい。以下では、スロット内の4本のコイル21(セグメント211)を、内径側から順番に1段目コイル21a、2段目コイル21b、3段目コイル21c、および4段目コイル21dと呼ぶことがある。
【0017】
スロット22には、絶縁部材(便宜上、内部絶縁部材と呼ぶ)40が配置される。
図3は、内部絶縁部材40の全体構成を示す斜視図である。なお、
図3のX方向は軸方向に相当する。
図3に示すように、内部絶縁部材40は、軸方向に互いに略平行に延在する一対の側壁41,42と、一対の側壁41,42の端部同士を接続する周壁43とを有する。内部絶縁部材40は、軸方向から見ると全体が略コ字状ないし略U字状を呈し、内部絶縁部材40の内側に略ボックス状の収容空間SP1が形成される。周壁43の軸方向中央部には、周壁43を貫通する略矩形状の開口44が設けられる。内部絶縁部材40の軸方向両端部には、略矩形状の開口45,46が設けられる。
【0018】
図2に示すように、内部絶縁部材40の一対の側壁41,42は、それぞれスロット22の一対の側面222a,222bに対向し、周壁43は、スロット22の底面222cに対向する。一対の側壁41,42の内径側端部は、ティース23の突出部231の外形側端面に当接し、1段目コイル21aの内周面よりも内径側に位置する。
【0019】
内部絶縁部材40は、電気絶縁性を有する樹脂を構成材としたシートないしフィルムを、略コ字状に折り曲げて形成される。内部絶縁部材40の軸方向長さはステータコア20の軸方向長さと同一であり、内部絶縁部材40はステータコア20の軸方向端面から突出せずにステータコア20の内側に配置される。なお、内部絶縁部材40の軸方向長さがステータコア20の軸方向長さよりも長くてもよく、短くてもよい。コイル21は、内部絶縁部材40の内側の収容空間SP1に配置される。これにより、コイル21とステータコア20との間に内部絶縁部材40が介装され、コイル21とステータコア20とが互いに電気的に絶縁される。
【0020】
コイル21は、ステータコア20の軸方向一端面および他端面を超えて収容空間内を軸方向に延在する。コイル21は、不図示の固定手段により固定され、これにより収容空間SP1におけるコイル21の位置が規定される。固定手段は、ステータコア20の軸方向端面から突出したコイルエンドに絶縁処理を施してコイルエンドを固定するものであってもよく、スロット内にコイル21の位置を規制する部位(周方向に突出した突出部)を設けるものであってもよい。
【0021】
内部絶縁部材40の内側の収容空間SP1の面積は、コイル全体(4本分)の面積よりも大きく、内部絶縁部材40と各コイル21との間には、空隙25が設けられる。なお、
図2では、各コイル21の全周が内部絶縁部材40から離間しているが、コイル21は、その一部が内部絶縁部材40と接触してもよい。径方向に隣り合うコイル21同士が互いに接触してもよい。
【0022】
ステータコア20の径方向内側には、内周面20aの全周にわたって絶縁部材(便宜上、外部絶縁部材と呼ぶ)50が配置される。外部絶縁部材50は、電気絶縁性を有する樹脂を構成材とした所定厚さのシート状の部材を、略円筒形状に湾曲させて形成される。一例を挙げると、外部絶縁部材50はポリエチレンナフタレートにより構成することができる。外部絶縁部材50は、ステータコア20の軸方向一端面から他端面にかけて軸方向に延在し、外部絶縁部材50により、ステータコア20の内周面20aの全体が覆われる。
【0023】
外部絶縁部材50の一方の表面、すなわち、外部絶縁部材50を略円筒形状に湾曲した際に径方向外側となる表面(
図2の外周面50a)には、その全面にわたって予め所定厚さの発泡層51(
図5)が形成される。発泡層51は、例えばエポキシ系発泡樹脂材料等の熱硬化型発泡性樹脂材料によって構成される。発泡層51は、熱可塑性樹脂材料によって構成されてもよい。発泡層51は、所定温度まで加熱されることにより発泡して膨張し、発泡体52となる。なお、外部絶縁部材の他方の表面(
図2の内周面50b)には、発泡層が存在しない。以下では便宜上、発泡層51が発泡体52となった後は、発泡体52を外部絶縁部材50とは別部材として扱うが、発泡体52を外部絶縁部材50の一部として扱い、外部絶縁部材50が発泡体52を有するとしてもよい。
【0024】
本実施形態では、後述するように発泡層51がステータコア20の内周面20aに当接された状態で加熱される。このため、発泡体52が、開口221を介してスロット22の内部に充填される。これにより、発泡体52がティース23の突出部231に引っ掛かり、外部絶縁部材50が発泡体52を介してステータコア20の内側に保持され、外部絶縁部材50が固定される。このとき、発泡体52の径方向外側の端部は、1段目コイル21aの内周面よりも径方向内側に位置し、1段目コイル21aと発泡体52との間に隙間がある。
【0025】
図2では、外部絶縁部材50の外周面50aがステータコア20の内周面20aから離間し、外周面50aと内周面20aとの間に発泡体52が全周にわたって介装されているが、発泡体52の構成はこれに限らない。例えば、発泡層51をステータコア20の内周面20aに押し付けることにより、外部絶縁部材50の外周面50aをステータコア20の内周面20aに当接させるようにしてもよい。したがって、発泡体52が周方向に断続的に設けられてもよい。すなわち、外周面50aから内周面20aまでの距離Δdは、0であってもよく、0より長くてもよい。なお、距離Δdは、発泡層51の厚さと、外部絶縁部材50の径方向外側への押し付け量ないし押し付け力とを調整することにより変更できる。
【0026】
図4は、ステータコア20に内部絶縁部材40と外部絶縁部材50とを取り付ける工程を説明する斜視図である。この場合、
図4に示すように、まず、内部絶縁部材40が、ステータコア20の軸方向一方から軸方向(
図4の矢印A方向)に沿ってスロット22に挿入される。全てのスロット22に内部絶縁部材40が挿入された後、予め発泡層51が形成された外部絶縁部材50が、ステータコア20の内周面20aの内側に配置される(配置工程)。
【0027】
この配置工程では、
図5に示すように、外部絶縁部材50の端部501,502同士が当接ないし重なるように、発泡層51を径方向外側に位置させて外部絶縁部材50を矢印B方向に略円筒形状に湾曲させる。そして、この外部絶縁部材50を、
図4に示すように、ステータコア20の軸方向一方からステータコア20の内側に収容する。なお、
図4では、外部絶縁部材50の両端部501、502を突き当てているが、両端部501,502が重ねられてもよい。
【0028】
ステータコア20の内側に外部絶縁部材50が収容された後、外部絶縁部材50は、ステータコア20の内周面20aに当接するまで径方向外側に押動され、さらに加熱される(当接工程、加熱工程)。
図6は、この工程を説明する図である。
図6に示すように、この場合、まず、外部絶縁部材50の内側に拡張治具300が配置される。拡張治具300は、周方向複数(例えば4個)の押当ブロック310と、軸線CL0に沿って軸方向に移動可能な軸部材320とを有する。
【0029】
複数の押当ブロック310は、それぞれ軸線CL0を中心として径方向に移動可能に、つまり拡縮可能となるように、例えばばねを介して互いに連結される。押当ブロック310は、略円弧状の外周面311aと内周面311bとを有する周壁311と、周壁311の軸方向端部から軸線CL0に向けて突出する側壁312,313とを有する。周壁311の外周面311aの曲率は、外部絶縁部材50の内周面50bの曲率と同一である。
【0030】
押当ブロック310の側壁312,313の軸線CL0側の端部には、軸線CL0に対し所定角度で傾斜する傾斜面312a,313aが設けられる。軸部材320は、軸方向先端部に傾斜面321aを有する。傾斜面321aの傾斜角と傾斜面312a,313aの傾斜角とは同一である。軸部材320は、不図示のアクチュエータにより、押当ブロック310の内側を軸線CL0に沿って進退可能である。押当ブロック3100の周壁311の内周面311bには加熱部330が設けられ、加熱部330の作動により周壁311が加熱される。加熱部330は、例えば高周波誘導加熱装置により構成される。
【0031】
外部絶縁部材50をステータコア20の内側に取り付ける際は、軸部材320を軸線CL0に沿って矢印B方向に移動させる。すなわち軸部材320を押当ブロック310の内部に進入させる。軸部材320の移動量(進入量)が所定値になると、軸部材320の傾斜面321aが押当ブロック310の傾斜面312a,313aに当接し、この状態からさらに軸部材320が矢印B方向に移動すると、複数の押当ブロック310が同時に径方向外側(矢印C方向)に押動される。その後、軸部材320の移動量が所定値になると、押当ブロック310の外周面311aが外部絶縁部材50の内周面50bに当接する。軸部材320がさらに矢印B方向に移動すると、外部絶縁部材50が拡径され、発泡層51がステータコア20の内周面20aに密接する(当接工程)。なお、
図6では、外部絶縁部材50が押当ブロック310により押し当てられる前に、発泡層51がステータコア20の内周面20aから離間して配置されているが、発泡層51が内周面20aに当接して配置されてもよい。
【0032】
次いで、加熱部330が作動される(加熱工程)。これにより、押当ブロック310の周壁311の温度が上昇し、周壁311から外部絶縁部材50への伝熱により、外部絶縁部材50の温度も上昇する。さらに外部絶縁部材50の温度上昇に伴い発泡層51の温度が上昇し、発泡層51が発泡を開始する。このとき、押当ブロック310により外部絶縁部材50の径方向内側への移動は規制されるため、発泡層51は径方向外側に膨張する。その結果、
図2に示すように、発泡体52が開口221を介してスロット内に入り込み、スロット内の収容空間SP1の一部が発泡体52で充填される。なお、外部絶縁部材50を押当ブロック310により径方向外側に押し当てながら、加熱部330により周壁311を加熱するようにしてもよい。これにより、外部絶縁部材50の外周面50aからステータコア20の内周面20aまでの距離Δd(
図2)を短くすることができる。
【0033】
発泡層51の発泡が完了すると、軸部材320が、矢印Bの反対方向に移動され、押当ブロック310の内側から退避される。軸部材320が退避されると、押当ブロック310が、ばねの付勢力により径方向内側に収縮される。その後、拡張治具300が軸方向外側に取り外される。これにより、ステータコア20の内側に、発泡体52を介して外部絶縁部材50が保持され、外部絶縁部材50が固定される。以上でステータ2の製造が完了する。
【0034】
内部絶縁部材40の内側の収容空間SP1には、ステータ2の外部から冷却油が導かれ、冷却油の流れによりコイル21が冷却される。以下、この点について説明する。
図4に示すように、ステータコア20の外周面20bには、ステータコア20の軸方向中央部に、全周にわたって所定深さの溝200が設けられる。
【0035】
図1に示すように、ステータコア20の外周面20bはケース3の内周面31によって液密に覆われる。これにより、溝200(
図1の点線)とケース3の内周面31との間に、軸線CL0を中心とした円環状の流路PA0が形成される。ケース3の外周面には、冷却油供給用のフランジ部32が設けられる。フランジ部32は、例えばケース3の外周面の重力方向最上部に設けられる。フランジ部32には、ケース3を径方向に貫通する貫通孔32aが穿設され、貫通孔32aを介してケース3の外部空間と流路PA0とが連通する。
【0036】
図7は、
図4のVII-VII線に沿ったステータコア単体の断面図である。なお、
図7では、ステータコア20の周方向の一部のみを示す。
図7に示すように、ステータコア20の溝200の底面には、ステータコア20を径方向に貫通するように、スロット22に向けて周方向複数の貫通孔210が穿設される。これによりケース3の貫通孔32a、流路PA0、およびステータコア20の貫通孔210を介して、ケース3の外部からスロット22の内部に冷却油を導くことができる。
【0037】
図8は、
図1のケース3の貫通孔32aの中心線に沿った、軸線CL0に垂直な回転電機100の要部を拡大して示す断面図であり、ステータコア20の1スロット分を示す。
図8に矢印で示すように、ケース3の外部から供給された冷却油は、ケース3の貫通孔32aを介してステータコア20の外周面に設けられた流路PA0に流入する。流路PA0に流入した冷却油は、流路PA0に沿って周方向に流れるとともに、ステータコア20の周方向複数の貫通孔210および内部絶縁部材40の開口44を介して内部絶縁部材40の内側の収容空間SP1に流入する。
【0038】
スロット22の開口221は発泡体52により閉塞される。このため、収容空間SP1に流入した冷却油は、開口221を通過することなく、内部絶縁部材40とコイル21との隙間および隣り合うコイル21同士の隙間を通り、軸方向に流れる。そして、内部絶縁部材40の軸方向両端部の開口45,46(
図3)を介して収容空間SP1の外部に流出する。これによりコイル21に沿って冷却油が流れるようになり、コイル21を効率よく冷却することができる。
【0039】
以上では、単一のシート状の外部絶縁部材50を、略円筒形状に湾曲させてステータコア20の内側に配置したが(
図5)、複数の絶縁部材(分割絶縁部材と呼ぶ)を周方向に並べて配置するようにしてもよい。
図9は、その一例を示すステータ2の正面図である。
図9に示すように、ステータコア20の内周面20aの内側には、円弧状に湾曲した周方向複数の分割絶縁部材50Aが配置される。
【0040】
複数の分割絶縁部材50Aの周方向両端部には、それぞれ径方向外側に向けて屈曲された屈曲部53が形成され、屈曲部53が開口221を介してスロット22内に挿入される。より詳しくは、周方向に隣り合うスロット22の間隔を1ピッチと定義すると、分割絶縁部材50Aは、周方向に2ピッチ分だけ延在し、屈曲部53は、2ピッチ離れた一対のスロット22にそれぞれ挿入される。このとき、周方向に隣り合う分割絶縁部材50Aの屈曲部53が、互いに当接した状態で、同一のスロット22に挿入される。これにより、ステータコア20の内側に、分割絶縁部材50Aが全周にわたって隙間なく配設され、外部絶縁部材50が構成される、なお、分割絶縁部材50Aが周方向にスロット22の1ピッチ分だけ延在するようにしてもよく、3ピッチ分以上延在するようにしてもよい。
【0041】
このように外部絶縁部材50を周方向に分割して設けることで、ステータコア20の内周面20aに対向して分割絶縁部材50Aを周方向に隙間なく配置することができる。これにより、スロット内の冷却油が外部絶縁部材50の径方向内側に漏れることを防止することができる。すなわち、例えば
図4の外部絶縁部材50の端部501,502の間に隙間があると、その隙間から径方向内側に冷却油が漏れるおそれがある。この点、
図8に示すように外部絶縁部材50を分割して設けることで、分割絶縁部材50Aを周方向に隙間なく配置することが可能であり、これにより外部絶縁部材50の径方向内側への冷却油の漏れを防止することができる。また、分割絶縁部材50Aの屈曲部53が開口221を介してスロット22に挿入されることで、発泡体52を介して外部絶縁部材50(分割絶縁部材50A)をステータコア20に強固に固定することができる。
【0042】
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)回転電機用のステータ2は、軸線CL0を中心とした内周面20aを有するとともに、径方向に延設された周方向複数のスロット22が設けられたステータコア20と、スロット22に配置されたコイル21と、内周面20aに対向するように軸線CL0を中心として略円筒形状に構成されたシート状の外部絶縁部材50と、を備える(
図1)。外部絶縁部材50は、一方の表面に形成された発泡層51からなる発泡体52、すなわちスロット22に入り込む発泡体52を一体に有する(
図4)。ステータコア20は、冷却油をスロット22に導く冷却油の供給部として、溝200と貫通孔210とを有する(
図7)。ステータコア20はさらに、発泡体52がスロット22に入り込むように内周面20aに設けられた開口221を有する(
図2)。
【0043】
これにより、安価な構成で、ステータコア20の内周面20aに対向して、発泡体52を介して外部絶縁部材50をステータコア20に固定することができる。このため、スロット22を流れる冷却油がスロット22の開口221を介して径方向内側に漏れることを防止することできる。外部絶縁部材50は、表面に発泡層51を有するシート状の部材であり、大きさや形状を容易に変更することができる。これにより、種々の寸法のステータコア20の開口221を、容易かつ安価に封止することができる。また、スロット内に別途封止部材を挿入する必要がないため、封止部材がスロット22やコイル21に接触することによってスロット22やコイル21が損傷することを防止できる。さらに、発泡体52による断熱効果が得られ、コイル21からの熱によってロータ1の磁石温度が上昇することを抑制することができる。
【0044】
(2)外部絶縁部材50は、周方向に分割して配置された周方向複数の分割絶縁部材50Aにより構成することができる(
図9)。分割絶縁部材50Aは、開口221を介してスロット22に挿入されるように周方向端部から径方向に向けて屈曲された屈曲部53を有する(
図9)。これにより、ステータコア20の内側で外部絶縁部材50(分割絶縁部材50A)を強固に保持することができる。また、分割絶縁部材50Aを周方向に隙間なく配置することができるため、スロット内の冷却油の漏れを確実に防ぐことができる。
【0045】
(3)ステータコア20は、内周面20aに設けられた開口221の周方向の幅が、スロット22の周方向の幅よりも小さくなるように構成される(
図2)。これにより、発泡体52が開口221を介してステータコア20に凹凸状に係合し、外部絶縁部材50のステータコア20からの脱落を良好に防止することができる。
【0046】
(4)本実施形態は、軸線CL0を中心とした内周面20aを有するとともに径方向に延設された周方向複数のスロット22が設けられたステータコア20と、スロット22に配置されたコイル21と、を有し、スロット22を冷却油が流れるように構成される回転電機用のステータ2の製造方法も含む。この製造方法は、スロット側の表面に発泡層51が設けられた軸線CL0を中心として略円筒形状に構成されたシート状の外部絶縁部材50を、内周面20aに対向するように配置する配置工程と、外部絶縁部材50をステータコア20の内周面20aに当接させる当接工程と、内周面20aに当接した外部絶縁部材50を加熱する加熱工程と、を含む(
図4)。これにより、ステータコア20の内周面20aと外部絶縁部材50との間に、発泡体52を容易に介装することができる。したがって、発泡体52を介してステータコア20の内側に外部絶縁部材50を固定することができ、安価な構成で、スロット内の冷却油が開口221を介してロータ1へ漏れることを防止することができる。
【0047】
(5)当接工程は、加熱部330を有する径方向に移動可能な拡張治具300を、外部絶縁部材50に対向するように配置して、加熱部330を径方向に移動させることを含む(
図6)。加熱工程は、加熱部330を加熱させることを含む。このように拡張治具30を用いることで、ステータコア20の内周面20aと発泡層51とが当接した後、外部絶縁部材50の位置を一定としたまま、あるいは外部絶縁部材50を径方向外側に押動させながら、発泡層51を径方向外側に向けて膨張させることができる。これにより、発泡体52の径方向の厚さを周方向均一に設定することができる。
【0048】
上記実施形態では、ステータコア20の内周面20aに周方向複数のスロット22を設けることで、内周面20aを周方向に凹凸状に形成したが、さらに軸方向に凹凸状に形成してもよい。
図10は、その一例であるステータコア20の一部の断面図(
図1の軸線CL0に沿って切断した断面図)である。
図10に示すように、ステータコア20は、1枚または複数枚の電磁鋼板を積層してなる鋼板部20A,20Bを、軸方向に交互に積層して構成される。
【0049】
図11Aは、鋼板部20Aの構成を示す
図10のA-A線に沿った断面図であり、
図11Bは、鋼板部20Bの構成を示す
図10のB-B線に沿った断面図である。
図11A,
図11Bに示すように、ティース23の先端部の突出部231は、周方向交互に設けられる。そして、突出部231が省略された部位は、突出部231を有する部位よりも、突出部231の径方向の厚さ分だけ、ティース23の先端部が径方向外側に位置する。これによりステータコア20の内周面20aが、周方向に凹凸状に形成される。すなわち、鋼板部20A,20Bの径方向内側の端部には、突出部231を有する凸部26と突出部231を有しない凹部27とが周方向に交互に設けられる。換言すると、鋼板部20A,20Bは、凸状内周面26aと凹状内周面27aとをそれぞれ周方向交互に有する。凸状内周面26aと凹状内周面27aとは、ステータコア20の内周面20aを構成する。
【0050】
鋼板部20A,20Bは互いに同一形状であり、鋼板部20Aの位相をスロット22の1ピッチ分だけずらすと、鋼板部20Bとなる。
図10は、
図11AのX-X線および
図11BのX-X線に沿った断面図に相当する。つまり、凸部26を含む鋼板部20Aと凹部27を含む鋼板部20Bの断面図に相当する。
図10に示すように、鋼板部20A,20Bは、凹部27と凸部26とが軸方向に隣接した状態で配置される。すなわち、鋼板部20A(第1鋼板部)の凹部27(第1凹部)と鋼板部20B(第2鋼板部)の凸部26(第2凸部)とが隣接して配置され、鋼板部20Aの凸部26(第1凸部)と鋼板部20Bの凹部27(第2凹部)とが隣接して配置される。これによりステータコア20の内周面20aが凹凸状になる。
【0051】
このように凹部27と凸部26とを軸方向に隣接した積層することで、凹部27と凸部26とに対応して発泡体52が軸方向に凹凸状に形成される。これにより、外部絶縁部材50が軸方向に移動することを阻止することができ、外部絶縁部材50をステータコア20の内側に、位置ずれすることなく強固に固定することができる。また、ティース23の先端部の突出部231が周方向交互に設けられるので、スロット22の開口221の幅が大きくなる。これにより、発泡層51を加熱した際のスロット内への発泡体52の浸入が容易である。
【0052】
上記実施形態では、ステータコア20の内周面20aに、スロット22に連なる開口221を設けるようにしたが、開口221を介さずにスロット22を設けるようにしてもよい。
図12は、その一例を示す図である。
図12に示すように、ステータコア20には、内周面20aを横断せずに略矩形状のスロット22が設けられ、スロット22は開口221を有しない。なお、
図12のスロット22は、例えば打ち抜き加工により形成される。周方向に隣り合うスロット22の間であるティース23の内径側端部には、ステータコア20の内周面20aから径方向外側に向けて切り欠き28が設けられる。切り欠き28は、内周面20aからの距離が大きくなるに従いその周方向の幅が大きくなるように形成される。
【0053】
図11Bの例では、外部絶縁部材50の表面の発泡層51が加熱された際に、発泡体52がステータコア20の内周面20aから切り欠き28の内部に入り込む。これにより発泡体52が切り欠き28に係合され、発泡体52を介して外部絶縁部材50を固定することができる。この場合、スロット22の開口221がないため、スロット内の冷却油が開口221から漏れることはない。但し、ステータコア20は電磁鋼板を積層して構成されるため、電磁鋼板の積層面からスロット内の冷却油が漏れるおそれがある。仮に積層面から冷却油が漏れたとしても、外部絶縁部材50を設けることで、ロータへの冷却油の漏れを防止することができる。
【0054】
上記実施形態では、ステータ2の径方向内側に、ロータ1を回転可能に配置するようにしたが、ステータ2の径方向外側にロータ1を回転可能に配置するようにしてもよい。すなわちステータ2は、アウタステータでなく、インナステータであってもよい。
図13は、回転電機用のステータ2をインナステータとして構成した場合の回転電機100の概略構成を示す断面図である。
【0055】
図13に示すように、ステータ2の周囲には、軸線CL0を中心とした略円筒形状のロータ1が配置される。なお、
図13では、ロータ1の周方向一部のみを図示する。ロータ1は、アウタロータであり、ロータコア10と、ロータコア10に埋め込まれた永久磁石11とを有する。ステータ2は、ステータコア20と、ステータコア20のスロット22に配置されたコイル21とを有する。コイル21は、例えば集中巻きにより、周方向に隣り合うスロット22の間のティース23に巻回される。
【0056】
ステータコア20の外周面20cの外側には、略円筒形状の外部絶縁部材50が配置される。外部絶縁部材50の内周面には予め発泡層が形成され、発泡層をステータコア20の外周面20cに当接した状態で加熱すると、発泡体52が、スロット22の開口221を介してステータコア20の外周面20cの径方向内側に入り込む。これにより、外部絶縁部材50によりステータコア20の外周面20cの全体が覆われた状態で、発泡体52を介して外部絶縁部材50をステータコア20に固定することができる。
【0057】
本実施形態は種々の形態に変形することができる。以下、いくつの変形例について説明する。上記実施形態では、シート状の外部絶縁部材50を屈曲して用いるようにしたが、絶縁部材はシート状でなくシートよりも薄いフィルム状であってもよい。上記実施形態では、スロット22に導体セグメント211を配置してコイル21を構成したが、スロットに集中巻きや分布巻きによりコイルを設けてもよい。上記実施形態では、ステータコア20の外周面に設けられた溝200と、ステータコア20を径方向に貫通する貫通孔210とを介してスロット22に冷却油を導くようにしたが、冷却媒体供給部の構成は上述したものに限らない。ステータコア20の軸方向複数箇所から冷却媒体(冷却油)を供給するようにしてもよい。
【0058】
上記実施形態では、発泡体52がスロット22の開口221を介してステータコア20の内周面20aの内側に入り込む、あるいは切り欠き28を介してステータコア20の内周面20aの内側に入り込むようにしたが、発泡体がステータコアの内側に導かれるようにステータコアの内周面(アウタステータの場合)または外周面(インナステータの場合)に設けられるのであれば、発泡体導入部の構成はいかなるものでもよい。上記実施形態では、内部絶縁部材40を略コ字状に折り曲げて形成したが、内部絶縁部材の構成は上述したものに限らない。上記実施形態では、外部絶縁部材50の表面に発泡層51を設けるようにしたが、発泡層51が設けられる絶縁部材(上述の外部絶縁部材50)を絶縁基材と呼び、絶縁基材と発泡層とを併せて絶縁部材と称することもできる。
【0059】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0060】
2 ステータ、20 ステータコア、20a 内周面、20A,20B 鋼板部、21 コイル、22 スロット、23 ティース、26 凸部、27 凹部、28 切り欠き、50 絶縁部材、50A 分割絶縁部材、51 発泡層、52 発泡体、53 屈曲部、200 溝、210 貫通孔、221 開口、300 拡張治具、330 加熱部