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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175719
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】高周波バラン
(51)【国際特許分類】
   H01P 5/10 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
H01P5/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093634
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 辰彦
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低損失な不平衡平衡変換を行いながら、平衡側と不平衡側のインピーダンス比の制限を緩和し、高周波に対応可能な高周波バランを提供する。
【解決手段】高周波バラン1は、第1外導体分断部GAP1を備える第1同軸ケーブル10と、第2外導体分断部GAP2を備える第2同軸ケーブル20と、を備える。第2同軸ケーブル20において、第3端201と第2外導体分断部GAP2との間の長さと、第4端202と第2外導体分断部GAP2との長さは、同じであり、第3端201と第2端102とが揃えて配置された状態で、第1同軸ケーブル10に平行に配置される。第1外導体と第2外導体は、導電性接合材70で電気的に接続され、第2端102は開放端であり、第3端201および第4端202では、第2中心導体が第2外導体に接続される。第1端101は不平衡端子であり、第2外導体分断部GAP2の両端部は平衡端子である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1中心導体、第1誘電体層、および、第1外導体を備え、第1端と第2端を有する第1同軸ケーブルと、
第2中心導体、第2誘電体層、および、第2外導体を備え、第3端と第4端とを有する第2同軸ケーブルと、
を備え、
前記第1同軸ケーブルは、前記第2端から前記第1端方向へ所定長さの位置において、前記第1外導体を備えない第1外導体分断部を備え、
前記第2同軸ケーブルは、前記第3端から前記第4端方向へ前記所定長さの位置において、前記第2外導体を備えない第2外導体分断部を備え、
前記第2同軸ケーブルにおける前記第3端と前記第2外導体分断部との間の長さと、前記第4端と前記第2外導体分断部との長さは、同じであり、
前記第2同軸ケーブルは、前記第3端と前記第1同軸ケーブルの前記第2端とが揃えて配置された状態で、前記第1同軸ケーブルに平行に配置され、
前記第1外導体、および、前記第2外導体は、導電性接合材で電気的に接続され、
前記第1同軸ケーブルの前記第2端は開放端であり、
前記第2同軸ケーブルの前記第3端および前記第4端では、前記第2中心導体が前記第2外導体に接続され、グランド電位と略同電位であり、
前記第1同軸ケーブルの前記第1端は、不平衡端子であり、
前記第2外導体における前記第2外導体分断部の前記第3端側の端部と、前記第2外導体分断部の前記第4端側の端部とは、平衡端子である、
高周波バラン。
【請求項2】
請求項1に記載の高周波バランであって、
前記第1誘電体層の誘電率と前記第2誘電体層の誘電率は、同じである、
高周波バラン。
【請求項3】
請求項1に記載の高周波バランであって、
前記第2同軸ケーブルの第2特性インピーダンスと前記第1同軸ケーブルの第1特性インピーダンスとは、同じである、
高周波バラン。
【請求項4】
請求項1に記載の高周波バランであって、
前記第2同軸ケーブルの第2特性インピーダンスは、前記第1同軸ケーブルの第1特性インピーダンスよりも高い、
高周波バラン。
【請求項5】
請求項1に記載の高周波バランであって、
前記第2端の位置と前記第3端の位置とのずれ量は、前記所定長さの10%以下である、
高周波バラン。
【請求項6】
請求項1に記載の高周波バランであって、
前記所定長さは、前記第1同軸ケーブルおよび前記第2同軸ケーブルを伝送する高周波信号の波長の約0.367倍である、
高周波バラン。
【請求項7】
請求項1に記載の高周波バランであって、
前記第1同軸ケーブル、および、前記第2同軸ケーブルからなる構造体は、環状であり、
前記第4端は、前記第2端および前記第3端に近接して電気的に接続されている、
高周波バラン。
【請求項8】
請求項1に記載の高周波バランであって、
グランド用導電体を備え、
前記第2端および前記第3端と前記第4端とは、前記グランド用導電体を通じて電気的に接続されている、
高周波バラン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波信号の不平衡平衡変換を行う高周波バランに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バランおよびアンテナ給電回路が記載されている。特許文献1に示すように、平衡型のアンテナを用い、不平衡型の回路から信号を給電する場合、バランを備える。
【0003】
このようなバランとしては、従来、フェライトと巻線を用いたバラン、同軸ケーブルを用いてQマッチングを行うバランがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/155624号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来のバランでは、低損失な不平衡平衡変換を行う際に、平衡側のインピーダンスと不平衡側のインピーダンスとの比に厳しい制限があり、さらには超短波以上の高周波には不向きである。
【0006】
したがって、本発明の目的は、低損失な不平衡平衡変換を行いながら、平衡側のインピーダンスと不平衡側のインピーダンスの比の制限を緩和でき、かつ、高周波に対応可能な高周波バランを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の高周波バランは、第1中心導体、第1誘電体層、および、第1外導体を備え、第1端と第2端を有する第1同軸ケーブルと、第2中心導体、第2誘電体層、および、第2外導体を備え、第3端と第4端とを有する第2同軸ケーブルと、を備える。
【0008】
第1同軸ケーブルは、第2端から第1端方向へ所定長さの位置において、第1外導体を備えない第1外導体分断部を備える。第2同軸ケーブルは、第3端から第4端方向へ所定長さの位置において、第2外導体を備えない第2外導体分断部を備える。第2同軸ケーブルにおける第3端と前記第2外導体分断部との間の長さと、第4端と第2外導体分断部との長さは、同じである。
【0009】
第2同軸ケーブルは、第3端と第1同軸ケーブルの第2端とが揃えて配置された状態で、第1同軸ケーブルに平行に配置される。第1外導体、および、第2外導体は、導電性接合材で電気的に接続される。第1同軸ケーブルの第2端は開放端である。第2同軸ケーブルの第3端および第4端では、第2中心導体が第2外導体に接続され、グランド電位と略同電位である。
【0010】
第1同軸ケーブルの第1端は、不平衡端子である。第2外導体における第2外導体分断部の第3端側の端部と、第2外導体分断部の第4端側の端部とは、平衡端子である。
【0011】
この構成では、所定長さを適宜設定することによって、第1周波数帯域において平衡側のインピーダンスと不平衡側のインピーダンスとの比が2:1のバラン(2:1バラン)を、低損失な特性で実現できる。また、第1周波数帯域よりも低い第2周波数帯域において平衡側のインピーダンスと不平衡側のインピーダンスとの比が1:1のバラン(1:1バラン)を、低損失で広帯域な特性で実現できる。例として第1同軸ケーブルと第2同軸ケーブルを共に特性インピーダンス50Ω、短縮率70%の同軸ケーブルを用いて、前記所定長さを80mmとした形状にて、2:1バランであれば、第1周波数帯域の中心周波数は、約955.4MHzに設定でき、1:1バランであれば、第2周波数帯域の中心周波数は、約570.4MHzに設定できる。
【0012】
これにより、高周波バランは、低損失な不平衡平衡変換を行いながら、平衡側のインピーダンスと不平衡側のインピーダンスの比の制限を緩和でき、かつ、高周波に対応可能である。
【0013】
この発明の高周波バランでは、第1誘電体層の誘電率と第2誘電体層の誘電率は、同じである。この構成では、第1同軸ケーブルの波長短縮率と第2同軸ケーブルの波長短縮率とが同じであり、より簡素な構成で、より高精度に上述の特性を実現できる。
【0014】
この発明の高周波バランでは、第2同軸ケーブルの第2特性インピーダンスと第1同軸ケーブルの第1特性インピーダンスとは、同じである。この構成では、上述の2:1バランおよび1:1バランをより確実に実現できる。
【0015】
この発明の高周波バランでは、第2同軸ケーブルの第2特性インピーダンスは、第1同軸ケーブルの第1特性インピーダンスよりも高い。この構成では、より多様なインピーダンス比のバランを構成できる。
【0016】
この発明の高周波バランでは、第2端の位置と第3端の位置とのずれ量は、所定長さの10%以下である。この構成では、上述の特性を実現しながら、製造時の位置ずれ誤差を許容でき、より製造し易い。
【0017】
この発明の高周波バランでは、所定長さは、第1同軸ケーブルおよび第2同軸ケーブルを伝送する高周波信号の波長の略0.367倍である。この発明の平衡側インピーダンスが第2同軸ケーブルの特性インピーダンスの2倍を要求する際には、第1同軸ケーブルと第2同軸ケーブルのインピーダンスが同じ場合と異なる場合とでは所定長さは若干変動する。例として第1同軸ケーブルの特性インピーダンスを50Ωとし、第2同軸ケーブルの特性インピーダンスを75Ωとして平衡側インピーダンスに150Ωを要求する場合には、所定長さは伝送する高周波信号の中心周波数の波長の約0.381倍となる。
【0018】
この発明の高周波バランでは、第1同軸ケーブル、および、第2同軸ケーブルからなる構造体は、環状である。第4端は、第2端および第3端に近接して電気的に接続されている。この構成では、第4端のグランド電位と第2端および第3端のグランド電位との差が小さくなる。これにより、さらに優れた伝送特性を実現できる。
【0019】
この発明の高周波バランは、グランド用導電体を備える。第2端および第3端と第4端とは、グランド用導電体を通じて電気的に接続されている。この構成では、この構成では、グランド用導電体によって第2端および第3端と第4端との高周波的な接続距離が短くなり、第4端のグランド電位と第2端および第3端のグランド電位との差が小さくなる。これにより、優れた伝送特性を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1(A)は、第1の実施形態に係る高周波バランの第1側面図であり、図1(B)は、第1の実施形態に係る高周波バランの第2側面図であり、図1(C)は、第1の実施形態に係る高周波バランの上面図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る高周波バランの外観斜視図である。
図3図3(A)は、第1の実施形態に係る高周波バランを形作るための直線状の構造体を示す側面図であり、図3(B)は、その側面断面図である。
図4図4(A)、図4(B)は、第1の実施形態に係る高周波バランの反射特性を示すグラフである。
図5図5(A)、図5(B)、図5(C)は、第1の実施形態に係る高周波バランの伝送特性を示すグラフである。
図6図6は、第2の実施形態に係る高周波バランの外観斜視図である。
図7図7は、第3の実施形態に係る高周波バランの外観斜視図である。
図8図8は、第4の実施形態に係る高周波バランの外観斜視図である。
図9図9は、第5の実施形態に係る高周波バランの外観斜視図である。
図10図10(A)、図10(B)は、第5の実施形態に係る高周波バランの反射特性を示すグラフである。
図11図11は、第6の実施形態に係る高周波バランの外観斜視図である。
図12図12(A)、図12(B)は、第6の実施形態に係る高周波バランと比較対象の高周波バランの反射特性を示すグラフである。
図13図13は、第7の実施形態に係る高周波バランの外観斜視図である。
図14図14は、第8の実施形態に係る高周波バランを形作るための直線状の構造体を示す側面断面図である。
図15図15は、第9の実施形態に係る高周波バランの外観斜視図である。
図16図16(A)、図16(B)は、第9の実施形態に係る高周波バランと比較対象の高周波バランの反射特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る高周波バランについて、図を参照して説明する。図1(A)は、第1の実施形態に係る高周波バランの第1側面図であり、図1(B)は、第1の実施形態に係る高周波バランの第2側面図であり、図1(C)は、第1の実施形態に係る高周波バランの上面図である。なお、ここでの第1側面図、第2側面、上面図の名称は、使用時の方向を規定する名称ではなく、高周波バランの構成を説明するために便宜的に付けた名称である。すなわち、例えば、上面図で見える面を上側として使用しなければならないものではない。図2は、第1の実施形態に係る高周波バランの外観斜視図である。図3(A)は、第1の実施形態に係る高周波バランを形作るための直線状の構造体を示す側面図であり、図3(B)は、その側面断面図である。
【0022】
図1(A)、図1(B)、図1(C)、図2図3(A)、図3(B)に示すように、高周波バラン1は、第1同軸ケーブル10、および、第2同軸ケーブル20、同軸コネクタ80を備える。
【0023】
(第1同軸ケーブル10)
第1同軸ケーブル10は、第1中心導体11、第1誘電体層12、および、第1外導体13を備える。第1中心導体11は、例えば銅等の金属からなり、線状導体である。第1誘電体層12は、所定の誘電率を有する。第1誘電体層12は、第1中心導体11の周部を所定厚みで覆う。第1外導体13は、例えば銅等の金属であり、所定厚みの筒状である。第1外導体13は、第1誘電体層12の外周面を覆う。
【0024】
第1誘電体層12の誘電率(比誘電率)は、第1誘電率εr1である。第1同軸ケーブル10の特性インピーダンスは、第1特性インピーダンスZ10に設定されている。例えば、第1特性インピーダンスZ10は、50Ωに設定されている。
【0025】
第1同軸ケーブル10は、延びる方向の一方端に第1端101を有し、他方端に第2端102を有する。第1同軸ケーブル10の第1端101は、同軸コネクタ80に接続される。第1中心導体11と第1外導体13とは離間しており、第1同軸ケーブル10の第2端102は、高周波的な開放端である。
【0026】
第1同軸ケーブル10は、第2端102から第1端101の方向へ所定長さLAの位置において、第1外導体分断部GAP1を備える。第1外導体分断部GAP1は、第1外導体13が全周にわたって形成されていない部分であり、第1誘電体層12が露出している。
【0027】
これにより、第1同軸ケーブル10は、第1外導体分断部GAP1よりも第1端101側の第1部分SEC11と、第1外導体分断部GAP1よりも第2端102側の第2部分SEC12とを備える。第1部分SEC11と第2部分SEC12とは、第1外導体分断部GAP1によって接続されている。
【0028】
第1外導体分断部GAP1の第1部分SEC11側の端部(第1部分SEC11との接続端部)は、第1外導体分断部GAP1の一方端103である。第1外導体分断部GAP1の第2部分SEC12側の端部(第2部分SEC12との接続端部)は、第1外導体分断部GAP1の他方端104である。
【0029】
第2部分SEC12の長さは、所定長さLAである。言い換えれば、第1外導体分断部GAP1の他方端104は、第2端102から所定長さLAの位置にある。長さLAは、高周波バラン1で伝送する高周波信号の波長λに基づいて設定される。具体的には、長さLAは、例えば、(2:1バランとして用いる場合)波長λの約0.367倍である。
【0030】
第1外導体分断部GAP1の長さ(一方端103と他方端104との距離)は、できる限り短いことが好ましく、少なくとも、後述する第1平衡端子31と第2平衡端子32とが接触しない距離である。
【0031】
第1部分SEC11の長さLDは、第2部分SEC12の長さLAよりも長ければよく、高周波バラン1の配置態様、他の回路素子(平衡アンテナや高周波フロントエンド回路等)への接続態様等に基づいて適宜設定できる。
【0032】
(第2同軸ケーブル20)
第2同軸ケーブル20は、第2中心導体21、第2誘電体層22、および、第2外導体23を備える。第2中心導体21は、例えば銅等の金属からなり、線状導体である。第2誘電体層22は、所定の誘電率を有する。第2誘電体層22は、第2中心導体21の周部を所定厚みで覆う。第2外導体23は、例えば銅等の金属であり、所定厚みの筒状である。第2外導体23は、第2誘電体層22の外周面を覆う。
【0033】
第2誘電体層22の誘電率(比誘電率)は、第2誘電率εr2である。第2誘電率εr2は、第1誘電率εr1と同じである。これにより、第2同軸ケーブル20の線路内の波長短縮率は、第1同軸ケーブル10の線路内の波長短縮率と同じである。第2同軸ケーブル20の特性インピーダンスは、第2特性インピーダンスZ20に設定されている。第2特性インピーダンスZ20は、第1特性インピーダンスZ10と同じである。例えば、第2同軸ケーブル20の第2特性インピーダンスZ20は、第1特性インピーダンスZ10と同様に、50Ωに設定されている。
【0034】
第2同軸ケーブル20は、延びる方向の一方端に第3端201を有し、他方端に第4端202を有する。第2同軸ケーブル20の第3端201および第4端202では、第2中心導体21と第2外導体23とが接続されており、第2同軸ケーブル20の第3端201および第4端202は、高周波的に短絡端である。
【0035】
第2同軸ケーブル20は、第3端201から第4端202の方向へ所定長さLBの位置において、第2外導体分断部GAP2を備える。第2外導体分断部GAP2は、第2外導体23が全周にわたって形成されていない部分であり、第2誘電体層22が露出している。
【0036】
これにより、第2同軸ケーブル20は、第2外導体分断部GAP2よりも第3端201側の第3部分SEC21と、第2外導体分断部GAP2よりも第4端202側の第4部分SEC22とを備える。第3部分SEC21と第4部分SEC22とは、第2外導体分断部GAP2によって接続されている。
【0037】
第2外導体分断部GAP2の第3部分SEC21側の端部(第3部分SEC21との接続端部)は、第2外導体分断部GAP2の一方端203である。第2外導体分断部GAP2の第4部分SEC22側の端部(第4部分SEC22との接続端部)は、第2外導体分断部GAP2の他方端204である。
【0038】
第3部分SEC21の長さは、所定長さLBである。言い換えれば、第2外導体分断部GAP2の一方端203は、第3端201から所定長さLBの位置にある。第4部分SEC22の長さは、所定長さLCである。言い換えれば、第2外導体分断部GAP2の他方端204は、第4端202から所定長さLCの位置にある。長さLBおよび長さLCは、長さLAと同じである。
【0039】
(第1同軸ケーブル10と第2同軸ケーブル20の固定構造、および、平衡端子の接続構造)
まずは、固定構造を分かり易くするため、図3に示す直線状の構造体1Sを参照して説明する。
【0040】
第2同軸ケーブル20は、第1同軸ケーブル10に平行に配置される。第2同軸ケーブル20は、第3端201が第1同軸ケーブル10の第2端102と揃う位置、より具体的には、第3端201と第2端102とが面一となる位置に配置される。
【0041】
なお、ここでの面一とは、高周波バラン1としての特性に影響を与えない程度の取り付け誤差を含むものであり、この取り付け位置のずれ量は、所定長さLAの約10%以下であればよい。
【0042】
第2同軸ケーブル20は、第4端202が第3端201よりも第1同軸ケーブル10の第1端101側になるように、第1同軸ケーブル10に沿って配置される。
【0043】
これにより、第2同軸ケーブル20の第2外導体分断部GAP2は、第1同軸ケーブル10の第1外導体分断部GAP1と並走する。第2外導体分断部GAP2の一方端203と第1外導体分断部GAP1の他方端104とは、略同じ位置になる。第2外導体分断部GAP2の他方端204と第1外導体分断部GAP1の一方端103とは、略同じ位置になる。
【0044】
このような構成において、第2同軸ケーブル20の第2外導体23は、第1同軸ケーブル10の第1外導体13に対して、はんだ等の導電性接合材70を用いて固定され、電気的に接続される。
【0045】
より具体的には、第2外導体23と第1外導体13とは、少なくとも次の箇所で導電性接合材70を用いて固定され、電気的に接続される。
【0046】
第2同軸ケーブル20における第3端201の位置およびその近傍領域の第2外導体23は、第1同軸ケーブル10における第2端102の位置およびその近傍領域の第1外導体13に導電性接合材70を用いて固定され、電気的に接続される。
【0047】
第2同軸ケーブル20における第4端202の位置およびその近傍領域の第2外導体23は、これに近接する第1外導体13に導電性接合材70を用いて固定され、電気的に接続される。
【0048】
第2同軸ケーブル20における第2外導体分断部GAP2の一方端203の位置およびその近傍領域の第2外導体23は、第1同軸ケーブル10における第1外導体分断部GAP1の他方端104の位置およびその近傍領域の第1外導体13に導電性接合材71を用いて固定され、電気的に接続される。
【0049】
第2同軸ケーブル20における第2外導体分断部GAP2の他方端204の位置およびその近傍領域の第2外導体23は、第1同軸ケーブル10における第1外導体分断部GAP1の一方端103の位置およびその近傍領域の第1外導体13に導電性接合材72を用いて固定され、電気的に接続される。
【0050】
このような構造体1Sを湾曲させて、図1(A)、図1(B)、図1(C)、図2に示すように、環状体とすることで、高周波バラン1の形状が実現される。
【0051】
この際、第1同軸ケーブル10の第2端102、第2同軸ケーブル20の第3端201、および、第2同軸ケーブル20の第4端202は、互いに近接する位置に配置される。そして、第2端102、第3端201、および、第4端202が近接する位置を含む第1外導体13、および、第2外導体23は、導電性接合材70を用いて固定され、電気的に接続される。
【0052】
(高周波バラン1の特性)
このような構成において、第1外導体13、および、第2外導体23は、グランド電位に接続される。
【0053】
同軸コネクタ80を通じて入力された不平衡信号である高周波信号は、第1同軸ケーブル10を伝送する。上述の構成によって、第2同軸ケーブル20の第3部分SEC21と第2部分SEC122は、それぞれに第1同軸ケーブル10に電磁気的(高周波的)に結合している。
【0054】
これにより、第1同軸ケーブル10を伝送する高周波信号の発生する電磁界に結合して、第2同軸ケーブル20の第3部分SEC21と第2部分SEC122に所定の位相差の高周波信号が伝送する。第2同軸ケーブル20の第3部分SEC21と第2部分SEC122に伝送する高周波信号は、所定の位相差を有し、第2外導体分断部GAP2の一方端203に接続された第1平衡端子31と第2外導体分断部GAP2の他方端204に接続された第2平衡端子32から外部に取り出し可能である。すなわち、第2同軸ケーブル20を伝送する平衡信号の高周波信号は、第2外導体分断部GAP2の両端の第2外導体23から出力される。
【0055】
このように、同軸コネクタ80が接続する第1同軸ケーブル10の第1端101が、高周波バラン1の不平衡端子となる。また、第2同軸ケーブル20の第2外導体分断部GAP2の両端の第2外導体23が、高周波バラン1の平衡端子となる。これにより、高周波バラン1は、不平衡平衡変換機能を実現できる。
【0056】
さらに、この構成によって、高周波バラン1は、平衡端子のインピーダンスを、不平衡端子のインピーダンス(第1同軸ケーブル10の第1特性インピーダンスZ10と同じ)の2倍にできる。これにより、高周波バラン1は、平衡端子のインピーダンスと不平衡端子のインピーダンスとの比を2:1に設定できる。すなわち、高周波バラン1は、2:1バランを実現する。
【0057】
図4(A)、図4(B)は、第1の実施形態に係る高周波バランの反射特性を示すグラフである。図4(A)は、縦軸がdBで示されており、図4(B)は、縦軸がVSWRで示されている。図4(A)、図4(B)における周波数ftは、高周波バラン1で伝送する高周波信号の中心周波数である。この周波数ftの波長が、上述の長さLAを決定する波長である。
【0058】
図4(A)の実線は、第1平衡端子31および第2平衡端子32の端子対に100Ωの終端抵抗を接続した特性であり、図4(B)の破線は、第1平衡端子31および第2平衡端子32の端子対に50Ωの終端抵抗を接続した特性である。図4(A)、図4(B)は、第1同軸ケーブル10の第1特性インピーダンスZ10および第2同軸ケーブル20の第2特性インピーダンスZ20が50Ωの場合を示す。
【0059】
図4(A)に示すように、周波数ftにおいて、反射損失は大幅に低減する。また、周波数ft(例えば、この場合、955.4MHz)において、100Ωの終端抵抗を接続した場合のVSWRは、1.0になり、50Ωの終端抵抗を接続した場合のVSWRは、2.0になる。
【0060】
このように、高周波バラン1は、平衡側と不平衡側のインピーダンス比を2:1として、周波数ftで低損失に不平衡平衡変換を実現できる。
【0061】
この際、純抵抗接続時にVSWRが2.0以下を許容すれば、高周波バラン1は300MHzから1030.4MHzの広帯域にて使用可能である。また、高周波バラン1では、中心周波数の955.4MHz以外に2:1バランとして300MHzから570MHz間で、VSWRが低下している。したがって、この程度のVSWRが許容されるなら、周波数ftをさらに高くでき、高周波バラン1を小型化できる。
【0062】
高周波バラン1は、さらに次の特性を有する。図5(A)、図5(B)、図5(C)は、第1の実施形態に係る高周波バランの伝送特性を示すグラフである。図5(A)は、反射特性であり、縦軸がdBで示されており、図5(B)は、反射特性であり、縦軸がVSWRで示されおり、図5(C)は、通過特性であり、縦軸がdBで示されている。図5(A)の実線は、第1平衡端子31および第2平衡端子32の端子対に50Ωの終端抵抗を接続した反射特性であり、図5(B)の破線は、第1平衡端子31および第2平衡端子32の端子対に100Ωの終端抵抗を接続した反射特性である。図5(C)は、平衡側のインピーダンスが50Ωの場合の通過特性である。
【0063】
図5(A)、図5(B)、図5(C)に示すように、平衡側のインピーダンスを50Ωとすると、上述の周波数ftよりも低周波数の領域において、低損失な通過特性を実現できる。例えば、図5(A)、図5(B)、図5(C)の場合、純抵抗接続時にVSWRが2.0以下を許容すれば、高周波バラン1は、1:1バランとして338.4MHzから955.4MHzの広い周波数帯域で使用可能である。また、純抵抗接続時にVSWRが1.5以下を許容すれば、高周波バラン1は、1:1バランとして396.4MHzから862.4MHzの広い周波数帯域で使用可能である。
【0064】
また、高周波バラン1の周波数ftと、高周波バラン1の物理的なサイズ(大きさ)とは、反比例する関係にある。したがって、高周波バラン1のサイズを適切に変更することで、所望の周波数ftを含む周波数帯域において、同様の特性を得られる。例えば、中心周波数(周波数ft)を570.4MHzとして広い周波数帯域の1:1バランを構成するためには、長さLA、LB、LCは、第1同軸ケーブル10および第2同軸ケーブル20の線路内波長の略0.2173倍にすればよい。また、VSWRが1.5以下の中心周波数を629.4MHzとして広い周波数帯域の1:1バランを構成するためには、長さLA、LB、LCは、第1同軸ケーブル10および第2同軸ケーブル20の線路内波長の略0.2398倍にすればよい。
【0065】
なお、高周波バラン1が形作る環状は、真円に近いことが好ましいが、ある程度扁平した円であってもよい。例えば、高周波バラン1は、円形(楕円形)の縦横比が1:2から2:1(縦の直径が横の直径の1/2倍以上2倍以下)であれば、真円(1:1)と同様の特性を得られる。
【0066】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る高周波バランについて、図を参照して説明する。図6は、第2の実施形態に係る高周波バランの外観斜視図である。
【0067】
図6に示すように、第2の実施形態に係る高周波バラン1Aは、第1の実施形態に係る高周波バラン1に対して、グランド用導電体90を備える点、全体の形状において異なる。高周波バラン1Aの他の構成は、高周波バラン1と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0068】
高周波バラン1Aは、グランド用導電体90を備える。グランド用導電体90は、例えば金属の平板である。
【0069】
第1同軸ケーブル10、および、第2同軸ケーブル20からなる構造体は、環状を形成しておらず、延びる方向の途中位置で屈曲する形状である。
【0070】
第1同軸ケーブル10の第1外導体13における第2端102の部分およびその近傍部分、第2同軸ケーブル20の第2外導体23における第3端201の部分およびその近傍部分、第2同軸ケーブル20の第2外導体23における第4端202の部分およびその近傍部分は、導電性接合材70によってグランド用導電体90に固定され、電気的に接続される。第1同軸ケーブル10の第1外導体13における第4端202に近接する部分も、導電性接合材70によってグランド用導電体90に固定され、電気的に接続される。
【0071】
第1外導体分断部GAP1の一方端103および他方端104の第1外導体13、および、第2外導体分断部GAP2の一方端203および他方端204の第2外導体23は、グランド用導電体90に対して所定距離(グランド用導電体90に対して電磁界的に略結合しない程度の距離)で離間している。
【0072】
この構成により、第1外導体13の第2端102、第2外導体23の第3端201、および、第2外導体23の第4端202は、高周波バラン1Aで伝送する高周波信号の周波数において、グランド用導電体90を通じて同電位とみなせる。
【0073】
これにより、高周波バラン1Aは、高周波バラン1と同様の作用効果を奏する。
【0074】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係る高周波バランについて、図を参照して説明する。図7は、第3の実施形態に係る高周波バランの外観斜視図である。
【0075】
図7に示すように、第3の実施形態に係る高周波バラン1Bは、第1の実施形態に係る高周波バラン1に対して、第2端102および第3端201の固定態様(接続態様)において異なる。高周波バラン1Bの他の構成は、高周波バラン1と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0076】
高周波バラン1Bでは、第2端102および第3端201が第1端101側を向くように配置され、導電性接合材70に固定されて、電気的に接続される。このような固定態様(接続態様)であっても、高周波バラン1Bは、高周波バラン1と同様の作用効果を奏する。
【0077】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態に係る高周波バランについて、図を参照して説明する。図8は、第4の実施形態に係る高周波バランの外観斜視図である。
【0078】
図8に示すように、第4の実施形態に係る高周波バラン1Cは、第1の実施形態に係る高周波バラン1に対して、第2端102および第3端201の固定態様(接続態様)において異なる。高周波バラン1Cの他の構成は、高周波バラン1と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0079】
高周波バラン1Cでは、第2端102および第3端201が第1外導体13の表面に対向するように配置され、導電性接合材70に固定されて、電気的に接続される。このような固定態様(接続態様)であっても、高周波バラン1Cは、高周波バラン1と同様の作用効果を奏する。
【0080】
[第5の実施形態]
本発明の第5の実施形態に係る高周波バランについて、図を参照して説明する。図9は、第5の実施形態に係る高周波バランの外観斜視図である。
【0081】
図9に示すように、第5の実施形態に係る高周波バラン1Dは、第1の実施形態に係る高周波バラン1に対して、第2同軸ケーブル20Dを備える点で異なる。高周波バラン1Dの他の構成は、高周波バラン1と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0082】
第2同軸ケーブル20Dは、第2特性インピーダンスZ20Dを備える。第2特性インピーダンスZ20Dは、第1同軸ケーブル10の第1特性インピーダンスZ10と異なる。具体的には、第2特性インピーダンスZ20Dは、第1特性インピーダンスZ10とは異なり、一例として、第1特性インピーダンスZ10が50Ωであるのに対して、第2特性インピーダンスZ20Dは75Ωである。なお、第2同軸ケーブル20Dの第2誘電体層22の誘電率(比誘電率)は、第1同軸ケーブル10の第1誘電体層12の誘電率(比誘電率)と同じであることが好ましい。
【0083】
この構成では、高周波バラン1Dの平衡側のインピーダンスは、150Ω(=75Ω×2)となる。また、前述の所定長さは伝送する高周波信号の中心周波数の波長の約0.392倍となる。
【0084】
図10(A)、図10(B)は、第5の実施形態に係る高周波バランの反射特性を示すグラフである。図10(A)は、縦軸がdBで示されており、図10(B)は、縦軸がVSWRで示されている。図10(A)の実線は、第1平衡端子31および第2平衡端子32の端子対に75Ωの終端抵抗を接続した特性であり、図10(B)の破線は、第1平衡端子31および第2平衡端子32の端子対に150Ωの終端抵抗を接続した特性である。図10(A)、図10(B)は、第1同軸ケーブル10の第1特性インピーダンスZ10、すなわち、不平衡側のインピーダンスが50Ωであり、第2同軸ケーブル20Dの第2特性インピーダンスZ20Dが75Ωの場合を示す。
【0085】
図10(A)、図10(B)に示すように、高周波バラン1Dは、中心周波数を537.6MHz(線路内波長の約0.381倍)にて、純抵抗接続時にVSWRが1.5以下を許容すれば、短縮率70%の同軸ケーブルを用いると長さLA、LB、LCを150mmとして、507.0MHzから557.5MHzが通過帯域の3:1バランを実現できる。
【0086】
なお、高周波バラン1Dのように、第2特性インピーダンスZ20Dを75Ωとした場合でも、上述の第2特性インピーダンスZ20が50Ω時と同様に、中心周波数よりも低い周波数であり広い周波数域で、低VSWRを実現できる。これにより、高周波バラン1Dは、200.0MHz(線路内波長の0.143倍)を最良特性の周波数として、純抵抗接続時にVSWRが1.5以下を許容することで、161.6MHzから517.1MHzの周波数帯域で、75:50バランを実現できる。
【0087】
[第6の実施形態]
本発明の第6の実施形態に係る高周波バランについて、図を参照して説明する。図11は、第6の実施形態に係る高周波バランの外観斜視図である。
【0088】
図11に示すように、第6の実施形態に係る高周波バラン1Eは、第1の実施形態に係る高周波バラン1に対して、第1同軸ケーブル10Eを備える点で異なる。高周波バラン1Eの他の構成は、高周波バラン1と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0089】
第1同軸ケーブル10Eは、第1部分SEC11Eと第2部分SEC12Eを備える。
【0090】
第1部分SEC11Eにおける第1外導体分断部GAP1の一方端103と第2端102が接続する位置との間の長さLD(図3参照)は、第2同軸ケーブル20の第4部分SEC22の長さLCよりも短い。例えば、長さLDは、長さLCの90%程度である。
【0091】
第2部分SEC12Eにおける第1外導体分断部GAP1の他方端104と第2端102との間の長さLA(図3参照)は、第2同軸ケーブル20の第4部分SEC22の長さLBよりも短い。例えば、長さLAは、長さLBの90%程度である。長さLAと長さLDは、略同じである。
【0092】
このような構成によって、高周波バラン1Eは、次に示す特性を有する。図12(A)、図12(B)は、第6の実施形態に係る高周波バランと比較対象の高周波バランの反射特性を示すグラフである。図12(A)は、縦軸がdBで示されており、図12(B)は、縦軸がVSWRで示されている。比較対象の高周波バランは、長さLA、長さLB、長さLC、および長さLDが同じ構成を備える。図12(A)、図12(B)において、実線が高周波バラン1E(短縮あり)の特性を示し、破線が比較対象のバラン(短縮なし)の特性を示す。
【0093】
図12(A)、図12(B)に示すように、高周波バラン1Eも比較対象の高周波バランも、反射特性において、反射損失が低いピークを異なる周波数で2つ有する。上述の各実施形態に対応する比較対象の高周波バランでは、高周波数側のピークの方が低周波数側のピークよりも反射損失が低い。
【0094】
一方、本実施形態の高周波バラン1Eでは、低周波数側のピークの方が高周波数側のピークよりも反射損失が低い。したがって、高周波バラン1Eでは、低周波数側のピークを含むように、高周波バラン1Eで伝送する高周波信号の周波数帯域を設定する。
【0095】
これにより、高周波バラン1Eは、第1同軸ケーブル10Eを短くでき、小型化を実現できる。
【0096】
[第7の実施形態]
本発明の第7の実施形態に係る高周波バランについて、図を参照して説明する。図13は、第7の実施形態に係る高周波バランの外観斜視図である。
【0097】
図13に示すように、第7の実施形態に係る高周波バラン1Fは、第1の実施形態に係る高周波バラン1に対して、第1同軸ケーブル10と第2同軸ケーブル20との配置関係において異なる。高周波バラン1Fの他の構成は、高周波バラン1と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0098】
高周波バラン1Fでは、第1同軸ケーブル10と第2同軸ケーブル20とが並走して配置されていない。第2同軸ケーブル20の第3端201と第4端202とは、第1同軸ケーブル10から離間しており、第1同軸ケーブル10の第1外導体13に物理的にも電気的にも接続されていない。
【0099】
このような構成であっても、高周波バラン1Fは、高周波バラン1と同様の作用効果を奏することができる。
【0100】
[第8の実施形態]
本発明の第8の実施形態に係る高周波バランについて、図を参照して説明する。図14は、第8の実施形態に係る高周波バランを形作るための直線状の構造体を示す側面断面図である。
【0101】
図14に示すように、第8の実施形態に係る高周波バランの構造体1GSは、第1の実施形態に係る高周波バラン1の構造体1Sに対して、絶縁性シールド膜を備える点で異なる。高周波バランの構造体1GSの他の構成は、高周波バラン1の構造体1Sと同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0102】
構造体1Sは、第1同軸ケーブル10Gと第2同軸ケーブル20Gとを備える。
【0103】
第1同軸ケーブル10Gは、第1の実施形態に係る第1同軸ケーブル10に対して、絶縁性シールド膜19を備える点で異なる。第1同軸ケーブル10Gは、第1外導体13の外周面に対して、一部を除いて絶縁性シールド膜19で覆っている。絶縁性シールド膜19は、第1同軸ケーブル10Gの第1外導体13における第2同軸ケーブル20Gとの接続を必要としない箇所に形成される。
【0104】
第2同軸ケーブル20Gは、第1の実施形態に係る第2同軸ケーブル20に対して、絶縁性シールド膜29を備える点で異なる。第2同軸ケーブル20Gは、第2外導体23の外周面に対して、一部を除いて絶縁性シールド膜29で覆っている。絶縁性シールド膜29は、第2同軸ケーブル20Gの第2外導体23における第1同軸ケーブル10Gとの接続を必要としない箇所に形成される。
【0105】
第1同軸ケーブル10Gの第1外導体13と第2同軸ケーブル20Gの第2外導体23との接続を必要とする箇所は、例えば、図14に示すように、導電性ワイヤWRによって括られている。
【0106】
このような構成であっても、構造体1GSからなる高周波バランは、高周波バラン1と同様の作用効果を奏する。
【0107】
[第9の実施形態]
本発明の第9の実施形態に係る高周波バランについて、図を参照して説明する。図15は、第9の実施形態に係る高周波バランの外観斜視図である。
【0108】
図15に示すように、第9の実施形態に係る高周波バラン1Hは、第5の実施形態に係る図9に対して、第2同軸ケーブル20Hの第4部分SEC22の長さLCよりも短くSEC21の長さLBも同様に短い。例えば、長さLCは、長さLDの90%程度で長さLBは、長さLAの90%程度である。高周波バラン1Hの他の構成は、高周波バラン1Dと同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0109】
このような構成によって、高周波バラン1Hは、次に示す特性を有する。図16(A)、図16(B)は、第9の実施形態に係る高周波バランと比較対象の高周波バランにおける平衡側のインピーダンスが75Ωの反射特性を示すグラフである。図16(A)は、縦軸がdBで示されており、図16(B)は、縦軸がVSWRで示されている。比較対象の高周波バランは、長さLA、長さLB、長さLC、および長さLDが同じ構成を備える。図16(A)、図16(B)において、破線が比較対象のバラン(短縮なし)の特性を示し、実線が高周波バラン1H(LCとLBの短縮あり)の特性を示す。
【0110】
図16(A)、図16(B)に示すように、比較対象の高周波バランは短縮なしの状態では、反射特性において、反射損失が低いピークを異なる周波数で2つ有する。低周波数側のピークの方が高周波数側のピークよりも反射損失が低い。
【0111】
このとき、低周波数側のピークの反射損失も-∞dBではなくVSWRも1ではない。しかし、第9の実施形態に係る形態により図16(A)、図16(B)の実線に示すように、低周波数側のピークの反射損がより少なく改善され、周波数帯域は狭くなるが低損失化を実現できる。
【0112】
なお、上述の各実施形態では、はんだ等の導電性接合材70を用いる態様を示した。しかしながら、所定強度での固定と低抵抗な電気的接続を実現できる態様であれば、はんだ等の導電性接合材70に限るものではない。例えば、スポット溶接、圧着等を採用でき、さらには、導電ワイヤ等で縛り付ケーブル固定方法を採用してもよい。
【0113】
<1> 第1中心導体、第1誘電体層、および、第1外導体を備え、第1端と第2端を有する第1同軸ケーブルと、
第2中心導体、第2誘電体層、および、第2外導体を備え、第3端と第4端とを有する第2同軸ケーブルと、
を備え、
前記第1同軸ケーブルは、前記第2端から前記第1端方向へ所定長さの位置において、前記第1外導体を備えない第1外導体分断部を備え、
前記第2同軸ケーブルは、前記第3端から前記第4端方向へ前記所定長さの位置において、前記第2外導体を備えない第2外導体分断部を備え、
前記第2同軸ケーブルにおける前記第3端と前記第2外導体分断部との間の長さと、前記第4端と前記第2外導体分断部との長さは、同じであり、
前記第2同軸ケーブルは、前記第3端と前記第1同軸ケーブルの前記第2端とが揃えて配置された状態で、前記第1同軸ケーブルに平行に配置され、
前記第1外導体、および、前記第2外導体は、導電性接合材で電気的に接続され、
前記第1同軸ケーブルの前記第2端は開放端であり、
前記第2同軸ケーブルの前記第3端および前記第4端では、前記第2中心導体が前記第2外導体に接続され、グランド電位と略同電位であり、
前記第1同軸ケーブルの前記第1端は、不平衡端子であり、
前記第2外導体における前記第2外導体分断部の前記第3端側の端部と、前記第2外導体分断部の前記第4端側の端部とは、平衡端子である、高周波バラン。
【0114】
<2> <1>の高周波バランであって、
前記第1誘電体層の誘電率と前記第2誘電体層の誘電率は、同じである、高周波バラン。
【0115】
<3> <1>または<2>の高周波バランであって、
前記第2同軸ケーブルの第2特性インピーダンスと前記第1同軸ケーブルの第1特性インピーダンスとは、同じである、高周波バラン。
【0116】
<4> <1>または<2>の高周波バランであって、
前記第2同軸ケーブルの第2特性インピーダンスは、前記第1同軸ケーブルの第1特性インピーダンスよりも高い、高周波バラン。
【0117】
<5> <1>乃至<4>のいずれかの高周波バランであって、
前記第2端の位置と前記第3端の位置とのずれ量は、前記所定長さの10%以下である、高周波バラン。
【0118】
<6> <1>乃至<5>のいずれかの高周波バランであって、
前記所定長さは、前記第1同軸ケーブルおよび前記第2同軸ケーブルを伝送する高周波信号の波長の約0.367倍である、高周波バラン。
【0119】
<7> <1>乃至<6>のいずれかの高周波バランであって、
前記第1同軸ケーブル、および、前記第2同軸ケーブルからなる構造体は、環状であり、
前記第4端は、前記第2端および前記第3端に近接して電気的に接続されている、高周波バラン。
【0120】
<8> <1>乃至<6>のいずれかの高周波バランであって、
グランド用導電体を備え、
前記第2端および前記第3端と前記第4端とは、前記グランド用導電体を通じて電気的に接続されている、高周波バラン。
【符号の説明】
【0121】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F、1H:高周波バラン
1S、1GS:構造体
10、10E、10G:第1同軸ケーブル
11:第1中心導体
12:第1誘電体層
13:第1外導体
19、29:絶縁性シールド膜
20、20D、20G、20H:第2同軸ケーブル
21:第2中心導体
22:第2誘電体層
23:第2外導体
31:第1平衡端子
32:第2平衡端子
70、71、72:導電性接合材
80:同軸コネクタ
90:グランド用導電体
101:第1端
102:第2端
103:一方端
104:他方端
201:第3端
202:第4端
203:一方端
204:他方端
GAP1:第1外導体分断部
GAP2:第2外導体分断部
SEC11、SEC11E:第1部分
SEC12、SEC12E:第2部分
SEC21、SEC21H:第3部分
SEC22、SEC22H:第4部分
Z10:第1特性インピーダンス
Z20、Z20D、Z20H:第2特性インピーダンス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16