(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175722
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】光学系及びそれを有する撮像装置、レンズ装置
(51)【国際特許分類】
G02B 13/00 20060101AFI20241212BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20241212BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
G02B13/00
G02B13/18
G02B5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093642
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 貴洋
【テーマコード(参考)】
2H087
2H249
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087LA01
2H087LA21
2H087MA04
2H087PA04
2H087PA06
2H087PA17
2H087PB04
2H087PB06
2H087QA02
2H087QA03
2H087QA05
2H087QA06
2H087QA12
2H087QA17
2H087QA21
2H087QA22
2H087QA25
2H087QA26
2H087QA36
2H087QA37
2H087QA41
2H087QA42
2H087QA45
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA32
2H087RA42
2H087RA43
2H087RA44
2H087RA46
2H249AA03
2H249AA04
2H249AA13
2H249AA14
(57)【要約】
【課題】小型であり、画面中心から画面周辺にかけての諸収差を良好に補正可能な光学系を提供すること。
【解決手段】光学系は、少なくとも一つ以上のレンズとメタレンズとを有し、メタレンズは、通過する光の波面に位相変化を生じさせるレンズ面を備え、メタレンズの径方向の位置に対応する波面での位相変化量を表すレンズ面の位相関数は、臨界点と変曲点の少なくとも一つを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つ以上のレンズとメタレンズとを有し、
前記メタレンズは、通過する光の波面に位相変化を生じさせるレンズ面を備え、
前記メタレンズの径方向の位置に対応する前記波面での位相変化量を表す前記レンズ面の位相関数は、臨界点と変曲点の少なくとも一つを含むことを特徴とする光学系。
【請求項2】
前記径方向における前記レンズ面の中心から前記位相関数に含まれる少なくとも一つの臨界点又は変曲点に対応する位置までの距離をr、前記レンズ面の有効径をDとするとき、
0.050<r/D<0.425
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記レンズ面は、複数の凸部を含む構造を有し、
前記凸部の大きさは、前記径方向において、所定の規則に応じて変化することを特徴とする請求項1に記載の光学系。
【請求項4】
前記凸部の大きさは、前記凸部の充填率、前記凸部の体積、前記凸部の直径、及び前記レンズ面における前記凸部が占める面積の少なくとも一つであることを特徴とする請求項3に記載の光学系。
【請求項5】
前記構造は、前記径方向において前記レンズ面の中心から離れるにしたがって前記凸部の大きさが大きくなる、又は小さくなるように前記凸部が設けられている構成を含むことを特徴とする請求項3に記載の光学系。
【請求項6】
前記構成は、前記径方向に沿って周期的に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の光学系。
【請求項7】
前記構造は、前記径方向において前記レンズ面の中心から離れるにしたがって前記凸部の大きさが大きくなるように前記凸部が設けられている構成と前記径方向において前記レンズ面の中心から離れるにしたがって前記凸部の大きさが小さくなるように前記凸部が設けられている構成の少なくとも一方の構成を複数含む複数の構成を含み、
前記複数の構成は、第1の構成と第2の構成とを含み、
前記第1の構成の前記径方向における間隔は、前記第2の構成の前記径方向における間隔と異なることを特徴とする請求項3に記載の光学系。
【請求項8】
前記メタレンズ面の少なくとも一部では、前記複数の構成の前記径方向における距離は、前記中心から離れるにしたがって短くなった後、前記中心から離れるにしたがって長くなるように変化することを特徴とする請求項7に記載の光学系。
【請求項9】
前記構造は、前記径方向において前記レンズ面の中心から離れるにしたがって前記凸部の大きさが大きくなるように前記凸部が設けられている構成と前記径方向において前記レンズ面の中心から離れるにしたがって前記凸部の大きさが小さくなるように前記凸部が設けられている構成の少なくとも一方の構成を複数含む複数の構成を含み、
前記複数の構成は、第1の構成と第2の構成とを含み、
前記第1の構成における前記凸部の大きさの変化は、前記第2の構成における前記凸部の大きさの変化と異なることを特徴とする請求項3に記載の光学系。
【請求項10】
前記メタレンズ面の少なくとも一部では、前記径方向において前記第1の構成が周期的に繰り返される構成と前記第2の構成が周期的に繰り返される構成とが設けられていることを特徴とする請求項9に記載の光学系。
【請求項11】
前記凸部は、略相似で略平行な二つの平面図形を上面と下面として持つ柱体であることを特徴とする請求項3に記載の光学系。
【請求項12】
前記光学系の焦点距離をf、前記メタレンズの焦点距離をfMとするとき、
0.1<|fM|/f<10.0
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載の光学系。
【請求項13】
前記光学系は、少なくとも一つの正レンズを有し、
前記光学系の焦点距離をf、前記正レンズの焦点距離をfPとするとき、
0.1<fP/f<10.0
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載の光学系。
【請求項14】
前記光学系は、少なくとも一つの負レンズを有し、
前記光学系の焦点距離をf、前記負レンズの焦点距離をfNとするとき、
-10.0<fN/f<-0.1
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載の光学系。
【請求項15】
前記凸部の光軸に沿った方向の最大の高さをH、設計波長をλとするとき、
1.0<H/λ<3.0
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載の光学系。
【請求項16】
前記複数の凸部の直径のうち最大の直径と最小の直径をそれぞれ、rmaxとrmin、設計波長をλとするとき、
0.3<rmax/λ<0.9
0.05<rmin/λ<0.50
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載の光学系。
【請求項17】
前記光学系は、少なくとも一つの非球面レンズを有し、
該非球面レンズは、臨界点と変曲点の少なくとも一つを含む非球面を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光学系。
【請求項18】
少なくとも一つ以上のレンズとメタレンズとを有し、
前記レンズ面は、複数の凸部を含む構造を有し、
前記凸部の大きさは、前記径方向において、所定の規則に応じて変化することを特徴とする光学系。
【請求項19】
通過する光の波面に位相変化を生じさせるレンズ面を有し、
前記レンズ面の径方向の位置に対応する前記波面での位相変化量を表す前記レンズ面の位相関数は、臨界点と変曲点の少なくとも一つを含むことを特徴とする光学素子。
【請求項20】
請求項1又は2に記載の光学系と、該光学系によって形成される像を受光する撮像素子を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項21】
請求項1又は2に記載の光学系と、前記光学系を保持する保持部とを有することを特徴とするレンズ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系に関し、デジタルビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、放送用カメラ、銀塩フィルム用カメラ、監視用カメラ、車載用カメラ、及び測距用カメラ等に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像装置に用いられる光学系は、小型であることが要求されている。特許文献1には、正の屈折力の所謂メタレンズを有する光学系が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のメタレンズは、色収差を補正するが、屈折力が小さく、他のレンズの屈折力を分担することができない。そのため、特許文献1のメタレンズによる色収差以外の球面収差、コマ収差、像面湾曲、非点収差、及び歪曲収差等の諸収差への補正効果は限定的である。また、特許文献1のメタレンズは中心から周辺にかけて単調に減少する位相関数を有するが、中心から周辺にかけて屈折力が単調に強くなるため、球面収差、像面湾曲、及び非点収差等が発生しやすくなる。なお、位相関数とは、メタレンズの径方向の位置に対応するメタレンズを通過する光の波面での位相変化量(波面のメタレンズ通過前後の位相の変化量)を表す関数である。上述したように、特許文献1の光学系では、画面中心から画面周辺にかけての色収差以外の諸収差を良好に補正することが困難である。
【0005】
本発明は、小型であり、画面中心から画面周辺にかけての諸収差を良好に補正可能な光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としての光学系は、少なくとも一つ以上のレンズとメタレンズとを有し、メタレンズは、通過する光の波面に位相変化を生じさせるレンズ面を備え、メタレンズの径方向の位置に対応する波面での位相変化量を表すレンズ面の位相関数は、臨界点と変曲点の少なくとも一つを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、小型であり、画面中心から画面周辺にかけての諸収差を良好に補正可能な光学系を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1の光学系の無限遠フォーカス時の縦収差図である。
【
図2】実施例1の光学系の無限遠フォーカス時の縦収差図である。
【
図3】実施例1のメタレンズ面の位相関数を示す図である。
【
図4】実施例1のメタレンズ面の位相関数の臨界点近傍の充填率の変化を表す図である。
【
図5】実施例1のメタレンズ面の位相関数の変曲点近傍の充填率の変化を表す図である。
【
図6】実施例2の光学系の無限遠フォーカス時の断面図である。
【
図7】実施例2の光学系の無限遠フォーカス時の縦収差図である。
【
図8】実施例2のメタレンズ面の位相関数を示す図である。
【
図9】実施例2のメタレンズ面の位相関数の変曲点近傍の充填率の変化を表す図である。
【
図10】実施例3の光学系の無限遠フォーカス時の断面図である。
【
図11】実施例3の光学系の無限遠フォーカス時の縦収差図である。
【
図12】実施例3のメタレンズ面の位相関数を示す図である。
【
図13】実施例3のメタレンズ面の位相関数の変曲点近傍の充填率の変化を表す図である。
【
図14】実施例4の光学系の無限遠フォーカス時の断面図である。
【
図15】実施例4の光学系の無限遠フォーカス時の縦収差図である。
【
図16】実施例4のメタレンズ面の位相関数を示す図である。
【
図17】実施例4のメタレンズ面の位相関数の臨界点近傍の充填率の変化を表す図である。
【
図18】実施例4のメタレンズ面の位相関数の変曲点近傍の充填率の変化を表す図である。
【
図19】メタレンズのサブ波長構造の模式図である。
【
図23】変曲点を含む位相関数を有するメタレンズ面の模式図である。
【
図24】臨界点を含む位相関数を有するメタレンズ面の模式図である。
【
図25】基板の大きさに対する柱状構造の長さの比の値と充填率との関係を表す図である。
【
図26】充填率と位相変化量との関係を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
図1,6,10,14はそれぞれ、実施例1乃至4の光学系L0の無限遠にフォーカシングしたときの断面図である。各実施例の光学系L0は、デジタルビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、放送用カメラ、銀塩フィルム用カメラ、監視用カメラ、車載用カメラ、及び測距用カメラ等の撮像装置や交換レンズを含む光学機器に用いられる。
【0011】
各断面図において左方が物体側で、右方が像側である。なお、各実施例の光学系L0をプロジェクター等の光学機器に用いる場合、左方がスクリーン側で、右方が被投写画像側である。
【0012】
各断面図に示した矢印は、無限遠から至近へのフォーカシングに際してのレンズの移動方向を表している。各実施例においては、フォーカシングに際して光学系L0全体が像側から物体側に移動する。また、光学系L0の一部のレンズのみを像側から物体側、又は物体側から像側に移動させることでフォーカシングを行ってもよい。
【0013】
各断面図において、SPは開口絞りである。IPは像面であり、各実施例の光学系L0をデジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラの撮影光学系として使用する際にはCCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子(光電変換素子)の撮像面が配置される。各実施例の光学系L0を銀塩フィルム用カメラの撮影光学系として使用する際には像面IPにはフィルム面に相当する感光面が置かれる。また、FLは、光学フィルター、フェースプレート、水晶ローパスフィルター、及び赤外カットフィルター等に相当する光学ブロックである。
【0014】
各実施例の光学系L0は、少なくとも一つ以上(一つ又は複数)のレンズとメタレンズ(光学素子)MLとを有する。本実施形態において、メタレンズMLは、物体側のレンズ面と像側のレンズ面の少なくとも一つのレンズ面であるレンズ面MLSを備える。レンズ面MLSは、複数のサブ波長サイズの柱状構造(凸部)を含むサブ波長構造を有し、レンズ面MLSを光の進行方向に沿って通過する光の波面に位相変化を生じさせる。
【0015】
ここで、メタレンズMLのサブ波長構造で光線が屈折する原理について説明する。
図19は、メタレンズMLのサブ波長構造の模式図である。サブ波長構造では、サブ波長サイズの柱状構造の大きさ(太さ)がレンズ面の径方向において所定の規則に応じて変化するように、柱状構造が基板表面に設けられている。基板は、平面でもよいし、曲面であってもよい。個々の柱状構造の大きさは、設計波長と同程度かそれ以下の大きさである。光にとっては個々の柱状構造は見えなくなっており、柱状構造は近似の下では空気の屈折率と柱状構造を構成する物質の屈折率とが平均化された平均的な有効媒質として振る舞う。この際、有効媒質の屈折率は、柱状構造の大きさが大きいほど柱状構造を構成する物質の屈折率に近くなり、柱状構造の大きさが小さいほど空気に対する柱状構造の占める割合(充填率)が小さくなるため、空気の屈折率に近くなる。なお、空気の代わりに柱状構造の間を任意の媒質で満たしても同様の効果は得られるため、柱状構造の間を満たす媒質は空気に限定されない。
【0016】
このように、柱状構造の大きさが径方向において変化することで、有効媒質の屈折率が径方向において連続的に変化する効果を得ることができる。すなわち、メタレンズMLは、近似の下では、径方向において屈折率が変化する、一種の屈折率分布型レンズとみなすことができる。屈折率が異なると、同じ厚みでも光学的距離が変化するため、メタレンズMLを通過する光の波面のメタレンズMLを通過する前後の位相の変化量は有効媒質の屈折率によって変化する。メタレンズMLでは、柱状構造の大きさが径方向において変化するため、位相の変化量は径方向の各位置で異なる。すなわち、例えば位相が揃った平面波(平行光束)がメタレンズMLに入射した場合、平面波の波面の位相が、メタレンズMLの径方向の各位置における位相の変化量に応じてずれる。結果として、メタレンズMLは、平面波を収束又は発散させるレンズとして作用する。なお、本実施形態では、簡単のため平面波の例で説明したが、平面波ではない光の波面に対しても同様の原理で、メタレンズMLは光を収束又は発散させるレンズとして作用することは言うまでもない。
【0017】
図2,7,11,15はそれぞれ、実施例1乃至4の光学系の無限遠にフォーカシングしたときの収差図である。
【0018】
球面収差図においてFnoはFナンバーであり、設計波長(各実施例の設計波長は別に示す)に対する球面収差量を示している。非点収差図においてSはサジタル像面における非点収差量、Mはメリディオナル像面における非点収差量を示している。歪曲収差図において設計波長に対する歪曲収差量を示している。
【0019】
次に、各実施例の光学系L0における特徴的な構成について述べる。
【0020】
レンズ面LMSの位相関数Φ(h)は、臨界点と変曲点の少なくとも一つを含む。位相関数φ(h)とは、メタレンズMLの径方向の位置hに対応するメタレンズMLを通過する光の波面での位相変化量(波面のメタレンズ通過前後の位相の変化量。位相変化の積算値)を表す関数である。前述のように、メタレンズ面MLは、サブ波長構造により通過する光の波面に位相変化を生じさせる。光軸上の位相変化量を0としたとき、
図19に示されるように径方向の位置hにおいては光軸上に対して相対的に位相変化が生じる。なお、以下の説明では、特に断らない限り、位相変化量は光軸上の位相変化量を0としたときの相対的な位相変化量を表し、位相は弧度法(ラジアン、radian、rad)で表すものとする。また、臨界点とは、位相関数φ(h)の一階の導関数の値が0となり、その前後で位相関数φ(h)の一階の導関数の値の符号が変化する点である。また、変曲点とは、位相関数φ(h)の二階の導関数の値が0となり、その前後で位相関数φ(h)の二階の導関数の値の符号が変化する点である。
【0021】
図19(A)では、レンズ面MLSのサブ波長構造では、レンズ面MLSの径方向において左端の光軸中心(レンズ面MLSの中心)から離れるにしたがって柱状構造の大きさ(太さ)が大きくなるように柱状構造が基板表面に設けられている。レンズ面MLSの径方向において光軸中心から離れるにしたがって柱状構造の大きさが大きくなる変化は、レンズ面MLSの径方向に沿って周期的に繰り返されている。このとき、位相変化量が-2πとなるまでを1周期とする。-2πだけ位相が変化した波面は位相変化が0の波面と連続的につながるため、-2πより小さい(絶対値が大きい)位相変化を生じさせるには、実際には位相変化が0である柱状構造から順に再度1周期の並びを繰り返せばよい。このように、0から2πの位相変化の繰り返しにより、任意の負の位相変化量を得ることができる。
図19(A)に示されるように、柱状構造を設けると、位相関数は0から始まり負の値をとるため、メタレンズ面MLSは光軸近傍で正の屈折力を持つ。
【0022】
図19(B)では、レンズ面MLSのサブ波長構造では、レンズ面MLSの径方向において左端の光軸中心(レンズ面MLSの中心)から離れるにしたがって柱状構造の大きさ(太さ)が小さくなるように柱状構造が基板表面に設けられている。レンズ面MLSの径方向において光軸中心から離れるにしたがって柱状構造の大きさが大きくなる変化は、レンズ面MLSの径方向に沿って周期的に繰り返されている。このとき、
図19(A)の場合と同様に、0から2πの位相変化の繰り返しにより、任意の正の位相変化量を得ることができ、メタレンズ面MLSは光軸近傍で負の屈折力を持つ。
【0023】
以上説明したように、位相関数φ(h)は、正又は負の位相変化量を、光軸中心からの位相変化の積算値として表現したものである。なお、位相関数φ(h)の値を0とする基準は、必ずしも光軸中心である必要はなく、実際には定数分の不定性があってよい。また、本実施形態では、軸対称な光学系を仮定しているため、位相関数も軸対称として表しているが、非軸対称な光学系では、位相関数も軸対称である必要はない。
【0024】
以下、位相変化量と柱状構造との関係について説明する。前述したように、柱状構造の大きさに応じて柱状構造の占める割合(充填率)が変わると、有効媒質の有効屈折率が変化し位相変化が生じる。なお、柱状構造における位相変化量は、例えば、厳密結合波理論(RCWA)や有限差分時間領域法(FDTD)等に基づいて、電磁場解析を行うことにより得られる。
【0025】
まず、充填率Fの定義について説明する。
図20(A)は、
図19に示される連続的な構造から仮想的に切り出された単位セル(1つの柱状構造とそれに対応する基板のセット)を模式的に示している。
図20(B)は、
図20(A)の単位セルの立面図と平面図である。
【0026】
図20の柱状構造は、底面が正方形の四角柱である。ここで、単位セルの基板の面積をS0とする。また、柱状構造の底面積(基板における柱状構造の占める面積)をS1、柱状構造の高さをHとする。このとき、充填率Fは、(S1×H)/(S0×H)である。また、面積S0と底面積S1はそれぞれ、w0×w0、w1×w1である。すなわち、一般化して説明すれば、単位セルの基板上の高さHの空間内の体積のうち、柱状構造の体積の占める割合を充填率と定義している。この定義に従えば、必ずしも柱体でなくとも充填率を計算することができる。例えば、
図21の底面が円の円柱である柱状構造や、
図22の底面が正六角形の六角柱である柱状構造の場合も充填率を計算することができる。
図21の柱状構造では、充填率Fは、(S1×H)/(S0×H)である。また、面積S0と底面積S1はそれぞれ、w0×w0、(π×w1×w1)/4である。
図22の状構造では、充填率Fは、(S1×H)/(S0×H)である。また、面積S0と底面積S1はそれぞれ、{3×(√3)×w0×w0}/8、{3×(√3)×w1×w1}/8である。
【0027】
なお、
図20乃至
図22の柱状構造は、相似で平行な二つの平面図形を上面と底面として持つ筒状の柱体であるが、実際には二つの平面図形が完全な相似でなくともよいし、また上面と底面が完全に平行でなくともよい。このような場合でも前述した充填率の観点で、有効媒質の有効屈折率を制御することができる。
【0028】
また、
図20乃至
図22の単位セルにおける基板は、メタレンズML全体でみると実際には1つの基板として一体に存在し、その基板上に柱状構造が設けられている。
【0029】
また、
図20乃至
図22では、単位セルにおける基板の中心と柱状構造の中心とが略一致しているが、本発明はこれに限定されない。
【0030】
また、柱状構造の形状は、
図20乃至
図22の形状に限定されない。例えば、底面が多角形の角柱、底面が台形の角柱、底面が凸形状の角柱、底面が略正多角形の角柱、及び底面がL字形状の角柱等の形状でもよい。
【0031】
以下、メタレンズ面MLSの位相関数φ(h)が臨界点と変曲点の少なくとも一つを含む効果について説明する。
【0032】
位相関数φ(h)が臨界点を含む場合、レンズ面MLSの中心の屈折力と周辺の屈折力を大きく変えたり、その符号を変えたりする効果がある。例えば、実施例1や実施例4のように、光学系L0の前側や開口絞りSPの近傍に非球面レンズを多用すると、非球面レンズの屈折力を大きくし小型化を図りながらも、球面収差やコマ収差を補正することができる。しかしながら、この場合、像面湾曲と非点収差が画面(像面)中心から周辺にかけてうねる形状となりやすい。このとき、位相関数φ(h)が臨界点を含むメタレンズを配置することで、中心と周辺の屈折力の差を利用してうねった収差を良好に補正することができる。
【0033】
位相関数φ(h)が変曲点を含む場合、レンズ面MLSの中心の屈折力に対して周辺の屈折力を小さくする効果がある。例えば、実施例2や実施例3のように、レンズ面MLSの中心付近の屈折力を大きくすることで、レンズの小型化を図りつつ、相対的に周辺の屈折力を小さくし、中心付近の光束に対して、周辺の光束を緩やかに屈折することができる。これにより、球面収差やコマ収差を効果的に補正することができる。
【0034】
また、位相関数φ(h)が臨界点や変曲点を含むメタレンズMLSを開口絞りSPより物体側に配置することで、軸上光束と軸外光束が径方向に分離した位置でレンズ面MLSの屈折力を大きく変えることができるため、歪曲収差を効果的に補正することができる。
【0035】
以上説明したように、メタレンズ面MLSの位相関数φ(h)が臨界点と変曲点の少なくとも一つを含むことにより、光学系L0の諸収差を良好に補正することができる。また、上記効果を単に非球面レンズのみで得ようとすると、非球面レンズの分だけ光学系L0の厚みが増すが、メタレンズMLを用いる場合、厚みの増大は最小限で済むため、光学系L0を小型化することができる。
【0036】
次に、各実施例の光学系L0において、満足することが好ましい構成について述べる。
【0037】
柱状構造の大きさは、レンズ面MLSの径方向において所定の規則に応じて変化することが好ましい。これにより、径方向の位置hで任意の位相変化量を得ることができる。なお、柱状構造の大きさとして本実施形態では、充填率を用いるが本発明はこれに限定されない。柱状構造の大きさとして、例えば、柱状構造の体積、柱状構造の直径、及びレンズ面MLSにおける柱状構造が占める面積(柱状構造の底面積)を用いてもよい。
【0038】
サブ波長構造は、レンズ面MLSの径方向においてレンズ面MLSの中心から離れるにしたがって柱状構造の大きさが大きくなる、又は小さくなるように柱状構造が設けられている構成を含むことが好ましい。また、レンズ面MLSの少なくとも一部では、このような構成がレンズ面MLSの径方向に沿って周期的に設けられていることがより好ましい。これにより、メタレンズ面MLSの径方向に0から2π、又は0から-2πの位相変化の繰り返しとして、位相関数φ(h)を連続的に変化させることができ、全体としてメタレンズMLをレンズとして機能させることができる。
【0039】
メタレンズ面MLSの少なくとも一部でレンズ面MLSの径方向に沿って前述した構成が複数設けられている場合、複数の構成に含まれる第1の構成と第2の構成のレンズ面MLSの径方向における距離(間隔、周期)は異なることが好ましい。また、メタレンズ面MLSの少なくとも一部では、複数の構成の径方向における距離は、中心から離れるにしたがって短くなった後、中心から離れるにしたがって長くなるように変化することがより好ましい。このような構成の変化による効果を、
図23を参照して説明する。
【0040】
図23は、変曲点を含む位相関数φ(h)を有するメタレンズ面MLSの模式図である。
図23において、レンズ面MLSには、レンズ面MLSの径方向においてレンズ面MLSの中心から離れるにしたがって柱状構造の充填率が小さくなる構成が複数設けられている。柱状構造は、途中は省略されているが、
図19と同じように設けられている。D(i)は、複数の構成のうちレンズ面の中心から数えて第i番目(iは自然数)の構成のレンズ面MLSの径方向の距離である。
図24では距離D(i)が距離D(i+1)より長く、距離D(i+1)が距離D(i+2)より短い。すなわち、第i番目と第i+1番目の構成では、第i+1番目の周期での0から-2πの位相変化は、第i番目の周期での0から-2πの位相変化より狭い間隔で生じている。このとき、位相関数φ(h)の傾き(の絶対値)は、レンズ面MLSの径方向に沿って急峻になる。また、第i+1番目と第i+2番目の構成では、第i+2番目の周期での0から-2πの位相変化は、第i+1番目の周期での0から-2πの位相変化より広い間隔で生じている。このとき、位相関数φ(h)の傾き(の絶対値)は、レンズ面MLSの径方向に沿って緩やかになる。以上より、
図23では、位相関数φ(h)の傾き(の絶対値)は、レンズ面MLSの径方向に沿って徐々に急峻になった後、途中から徐々に穏やかになる。すなわち、位相関数φ(h)が変曲点を含むことを意味し、位相関数φ(h)が変曲点を含むことによる収差の補正効果を得ることができる。
【0041】
なお、柱状構造は、
図23ではレンズ面MLSの径方向においてレンズ面MLSの中心から離れるにしたがって充填率が小さくなるように設けられているが、大きくなるように設けられていてもよい。
【0042】
実施例1では、
図3と
図5に示されるように、メタレンズMLの位相関数φ(h)は変曲点を含む。実際の柱状構造に対応する充填率は、小さい値から大きい値への変化を周期的に繰り返しながら、その周期の間隔が変曲点の前後で、狭まった(0.0086mmから0.0084mm)後、広がって(0.0084mmから0.0086mm)いる。すなわち、その前後で位相関数φ(h)が変曲点を含むように柱状構造が設けられている。実施例1の位相関数φ(h)の変曲点は、径方向において光軸から1.0058mmだけ離れている。
【0043】
実施例2では、
図8と
図9に示されるように、メタレンズMLの位相関数φ(h)は変曲点を含む。実際の柱状構造に対応する充填率は、大きい値から小さい値への変化を周期的に繰り返しながら、その周期の間隔が変曲点の前後で、狭まった(0.0250mmから0.0245mm)後、広がって(0.0245mmから0.0250mm)いる。すなわち、その前後で位相関数φ(h)が変曲点を含むように柱状構造が設けられている。実施例2の位相関数φ(h)の変曲点は、径方向において光軸から0.7135mmだけ離れている。
【0044】
実施例3では、
図12と
図13に示されるように、メタレンズMLの位相関数φ(h)は変曲点を含む。実際の柱状構造に対応する充填率は、大きい値から小さい値への変化を周期的に繰り返しながら、その周期の間隔が変曲点の前後で、狭まった(0.0126mmから0.0124mm)後、広がって(0.0124mmから0.0126mm)いる。すなわち、その前後で位相関数φ(h)が変曲点を含むように柱状構造が設けられている。実施例3の位相関数φ(h)の変曲点は、径方向において光軸から0.7490mmだけ離れている。
【0045】
実施例4では、
図16と
図18に示されるように、メタレンズMLの位相関数φ(h)は変曲点を含む。実際の柱状構造に対応する充填率は、小さい値から大きな値への変化を周期的に繰り返しながら、その周期の間隔が変曲点の前後で、狭まった(0.0070mmから0.0069mm)後、広がって(0.0069mmから0.0070mm)いる。すなわち、その前後で位相関数φ(h)が変曲点を含むように柱状構造が設けられている。実施例4の位相関数φ(h)の変曲点は、径方向において光軸から0.9342mmだけ離れている。
【0046】
メタレンズ面MLSの少なくとも一部でレンズ面MLSの径方向に沿って前述した構成が複数設けられている場合、複数の構成に含まれる第1の構成と第2の構成における柱状構造の大きさの変化は異なることが好ましい。例えば、第1の構成では、柱状構造は、レンズ面MLSの径方向においてレンズ面MLSの中心から離れるにしたがって柱状構造の大きさが大きくなるように設けられている。また、第2の構成では、柱状構造は、レンズ面MLSの径方向においてレンズ面MLSの中心から離れるにしたがって柱状構造の大きさが小さくなるように設けられている。また、メタレンズ面MLSの少なくとも一部では、レンズ面MLSの径方向において第1の構成が周期的に繰り返される構成と第2の構成が周期的に繰り返される構成とが設けられていることがより好ましい。すなわち、第1の構成が周期的に繰り返される構成と第2の構成が周期的に繰り返される構成とがメタレンズ面MLSの径方向における所定の位置で切り替わる。上記構成による効果を、
図24を参照して説明する。
【0047】
図24は、臨界点を含む位相関数φ(h)を有するメタレンズ面MLSの模式図である。
図24では、0から2π(又は-2π)の位相変化を生じる構成が繰り返し設けられており、レンズ面の中心から数えて第i番目(iは自然数)、第i+1番目、第i+2番目、第i+3番目の構成が示されている。第i+1番目の構成は2πの幅の位相変化が生じる手前で終わり、第i+2番目の構成に切り替わっている。第i+1番目の構成までは、柱状構造はレンズ面MLSの径方向においてレンズ面MLSの中心から離れるにしたがって大きさが小さくなるように設けられている。一方、第i+2番目の構成から柱状構造はレンズ面MLSの径方向においてレンズ面MLSの中心から離れるにしたがって大きさが小さくなるように設けられている。このような構成により、位相関数φ(h)は、レンズ面MLSは、第i+1番目の周期の途中(第i+2番目の周期への切り替わり前)までは位相が減少し、第i+2番目の周期に切り替わった後は位相が増加する。以上より、
図24では、位相関数φ(h)は、レンズ面MLSの径方向に沿って位相が減少した後、途中から増加に転じる。すなわち、位相関数φ(h)が臨界点を含むことを意味し、位相関数φ(h)が臨界点を含むことによる収差の補正効果を得ることができる。
【0048】
なお、柱状構造は、
図24ではレンズ面MLSの径方向においてレンズ面MLSの中心から離れるにしたがって充填率が小さくなるように変化した後、大きくなるように変化するが、本発明はこれに限定されない。柱状構造は、レンズ面MLSの径方向においてレンズ面MLSの中心から離れるにしたがって充填率が大きくなるように変化した後、小さくなるように変化してもよい。この場合、位相関数φ(h)は、増加から減少へと転じる臨界点を含む。
【0049】
実施例1では、
図3と
図4に示されるように、メタレンズMLの位相関数φ(h)は臨界点を含む。実際の柱状構造に対応する充填率は、小さい値から大きい値への変化を周期的に繰り返しながら、途中で大きい値から小さい値への変化を周期的に繰り返す。すなわち、その前後で位相関数φ(h)が臨界点を含むように柱状構造が設けられている。実施例1の位相関数φ(h)の臨界点は、径方向において光軸から2.0417mmだけ離れている。
【0050】
実施例4では、
図16と
図17に示されるように、メタレンズMLの位相関数φ(h)は臨界点を含む。実際の柱状構造に対応する充填率は、小さい値から大きい値への変化を周期的に繰り返しながら、途中で大きい値から小さい値への変化を周期的に繰り返す。すなわち、その前後で位相関数φ(h)が臨界点を含むように柱状構造が設けられている。実施例4の位相関数φ(h)の臨界点は、径方向において光軸から1.8459mmだけ離れている。
【0051】
メタレンズMLの特徴的な構造やその収差補正効果について上述したが、メタレンズMLだけで光学系L0を構成すると、収差補正には限界がある。そこで、メタレンズMLを非球面レンズと組み合わせて収差補正を行うことが好ましい。また、メタレンズMLを非球面レンズと組み合わせて使用することで、収差補正に相乗効果を与えることもできる。そこで、各実施例の光学系L0は、少なくとも一つ以上の非球面レンズを有し、該非球面レンズの物体側のレンズ面又は像側のレンズ面の少なくとも一つの面は非球面であり、該非球面は変曲点と臨界点の少なくとも一つを有する非球面であることが好ましい。
【0052】
実施例1と実施例4では、開口絞りSPの近傍に配置された屈折力の大きい非球面レンズで、球面収差やコマ収差を補正しているが、付随的に像面湾曲がうねりやすくなる。そこで、位相関数φ(h)が臨界点や変曲点を含むメタレンズMLを像面近くに配置することで、像面湾曲を選択的に補正することができる。
【0053】
実施例2と実施例3では、負の屈折力の非球面レンズと正の屈折力のメタレンズMLで球面収差やコマ収差を相殺している。また、メタレンズMLを多数使用して、十分な収差補正効果を得ることもできるが、その場合、サブ波長構造に由来する不要な回折光による効率の低下とフレアによる画質への影響を無視できなくなる。そのため、メタレンズMLを非球面レンズと組み合わせて使用することが好ましい。
【0054】
また、柱状構造の形状は、略相似で略平行な二つの平面図形を上面と下面として持つ筒状の柱体であることが好ましい。柱状構造の形状が、例えば円錐や角錐等に類似した形状であると、リソグラフィ等の半導体製造プロセスを用いた製造が難しくなるため好ましくない。
【0055】
次に、各実施例の光学系L0が満足することが好ましい条件について述べる。各実施例の光学系L0は、以下の条件式(1)乃至(12)のうち1つ以上を満足することが好ましい。
【0056】
0.050<r/D<0.425 (1)
0.1<|fM|/f<10.0 (2)
0.1<fP/f<10.0 (3)
-10.0<fN/f<-0.1 (4)
1.0<H/λ<3.0 (5)
0.3<rmax/λ<0.9 (6)
0.05<rmin/λ<0.5 (7)
ここで、rは、メタレンズ面MLの径方向におけるレンズ面MLSの中心からメタレンズ面MLSの位相関数φ(h)の臨界点又は変曲点に対応するレンズ面MLSの位置までの距離である。Dは、メタレンズ面MLSの有効径(光軸からメタレンズ面MLSを通過する光線のうち径方向において最も光軸から離れた光線までの距離の2倍の距離)である。fは、光学系L0の焦点距離である。fMは、メタレンズMLの焦点距離である。fPは、光学系L0が有する少なくとも一つの正の屈折力のレンズ(正レンズ)の焦点距離である。fNは、光学系L0が有する少なくとも一つの負の屈折力のレンズ(負レンズ)の焦点距離である。Hは、柱状構造の最大の高さ(光軸方向に平行な方向の長さ)である。λは、設計波長であり、例えばメタレンズMLに光軸に沿って入射した光(略平行光)の透過率、すなわち入射光の強度に対する出射光の強度の比が最大となる波長である。rmaxとrminはそれぞれ、メタレンズ面MLSに設けられた柱状構造の直径のうち最大の直径と最小の直径である。なお、柱状構造の直径とは、柱状構造の底面が、略円や略正多角形である場合、底面の形状に外接する円の直径であり、それ以外の形状である場合、底面内の任意の2点を結んでできる直線の長さのうち最大のものである。
【0057】
条件式(1)は、メタレンズ面MLSの有効径に対する、メタレンズ面MLSの径方向におけるレンズ面MLSの中心からメタレンズ面MLSの位相関数φ(h)の臨界点又は変曲点までの距離の比の値を規定している。上述したように、メタレンズMLは、メタレンズ面MLSの光軸近傍と周辺との屈折力を大きく変えたり、屈折力の符号を変化させたりする効果がある。そのため、メタレンズMLを開口絞りSPから離れた像面近傍に配置することで、像面湾曲と非点収差を画面(像面)中心から周辺にかけて、中心と周辺の屈折力の差を利用して良好に補正することができる。また、メタレンズMLを開口絞りSPの近傍に配置した場合、球面収差やコマ収差を良好に補正することができる。更に、メタレンズMLを開口絞りSPより物体側に配置した場合、歪曲収差を良好に補正することができる。条件式(1)の下限値を下回ってレンズ面MLSの中心からメタレンズ面MLSの位相関数φ(h)の臨界点又は変曲点までの距離が短くなると、メタレンズ面MLS内の屈折力の変化が急峻になりすぎ、収差補正効果が過剰となるため好ましくない。条件式(1)の上限値を上回ってレンズ面MLSの中心からメタレンズ面MLSの位相関数φ(h)の臨界点又は変曲点までの距離が長くなると、メタレンズ面MLSの臨界点又は変曲点に対応する位置が周辺に行き過ぎてしまう。このとき、中心と周辺の屈折力の差を利用した収差補正効果が限定的となるため好ましくない。
【0058】
条件式(2)は、光学系L0の焦点距離に対するメタレンズMLの焦点距離の比の値を規定している。一般に、収差を補正したり、収差の発生を抑制したりするためには、複数のレンズで光学系L0の屈折力を分担することが好ましい。したがって、メタレンズMLを用いて収差補正を行うためには、メタレンズMLが光学系L0の屈折力の一定程度の屈折力を分担することが好ましい。これにより、メタレンズML以外のレンズの屈折力を小さくすることができ、収差の発生を抑制しながら、収差補正効果を適切に得ることができる。条件式(2)の下限値を下回ってメタレンズMLの焦点距離の絶対値が小さくなると、メタレンズMLの屈折力が大きくなりすぎ、収差補正が過剰となるため好ましくない。条件式(2)の上限値を上回ってメタレンズMLの焦点距離の絶対値が大きくなると、屈折力の分担効果が小さくなるため、他のレンズの屈折力が相対的に大きくなる。このとき、発生する収差が大きくなると共に、メタレンズMLの収差補正効果も小さくなるため好ましくない。
【0059】
条件式(3)は、光学系L0の焦点距離に対する光学系L0が有する少なくとも一つの正の屈折力のレンズの焦点距離の比の値を規定している。正の屈折力のレンズとメタレンズMLを組み合わせることで、屈折力を分担し収差の発生を抑制したり、それぞれの収差を相殺したりすることで、より良好に収差補正を行うことができる。条件式(3)の下限値を下回って正の屈折力のレンズの焦点距離が短くなると、正の屈折力のレンズの屈折力が大きくなりすぎ、球面収差や像面湾曲がアンダーに大きく発生するため好ましくない。条件式(3)の上限値を上回って正の屈折力のレンズの焦点距離が長くなると、屈折力の分担効果や正の屈折力のレンズの収差補正効果が小さくなるため好ましくない。
【0060】
条件式(4)は、光学系L0の焦点距離に対する光学系L0が有する少なくとも一つの負の屈折力のレンズの焦点距離の比の値を規定している。負の屈折力のレンズとメタレンズMLを組み合わせることで、屈折力を分担し収差の発生を抑制したり、それぞれの収差を相殺したりすることで、より良好に収差補正を行うことができる。条件式(4)の下限値を下回って負の屈折力のレンズの焦点距離が短くなると、負の屈折力のレンズの屈折力が大きくなりすぎ、球面収差や像面湾曲がオーバーに大きく発生するため好ましくない。条件式(4)の上限値を上回って負の屈折力のレンズの焦点距離が大きくなると、屈折力の分担効果や負の屈折力のレンズの収差補正効果が小さくなるため好ましくない。
【0061】
条件式(5)は、設計波長に対する柱状構造の最大の高さの比の値を規定している。条件式(5)を満足することで、設計波長以上に相当する光路長をメタレンズ面MLで生じさせ、メタレンズMLは、前述したように0から2πの位相変化を生じる周期的な構成の繰り返しにより連続的な所望の位相変化を実現することができる。条件式(5)の下限値を下回って柱状構造の最大の高さが低くなると、0から2π(幅で2π)の位相変化を生じさせることができず、周期の繰り返しの境界で位相が不連続に飛び、設計波長の波面が連続的につながらないため好ましくない。条件式(5)の上限値を上回って柱状構造の最大の高さが高くなると、柱状構造の最大の高さが高くなりすぎ製造が難しくなるため好ましくない。
【0062】
条件式(6)は、設計波長に対するメタレンズ面MLSに設けられた柱状構造の直径のうち最大の直径の比の値を規定している。条件式(6)を満足することで、メタレンズMLは光に対して平均的な有効媒質として振る舞うことができる。条件式(6)の下限値を下回って最大の直径が小さくなると、0から2π(幅で2π)の位相変化を生じさせるために必要な充填率を稼ぐことができず、設計波長の波面が連続的につながらないため好ましくない。条件式(6)の上限値を上回って最大の直径が大きくなると、設計波長の光に対して柱状構造が大きくなりすぎ、意図しない回折光、フレア、及び反射光が生じるため好ましくない。
【0063】
条件式(7)は、設計波長に対するメタレンズ面MLSに設けられた柱状構造の直径のうち最小の直径の比の値を規定している。条件式(7)を満足することで、メタレンズMLは光に対して平均的な有効媒質として振る舞うことができる。条件式(7)の下限値を下回って最小の直径が小さくなると、柱状構造が細くなりすぎ製造が困難となるため好ましくない。条件式(7)の上限値を上回って最小の直径が大きくなると、0から2π(幅で2π)の位相変化を生じさせるために必要な充填率を稼ぐことができず、設計波長の波面が連続的につながらないため好ましくない。
【0064】
なお、条件式(1)乃至(7)の数値範囲を以下の条件式(1a)乃至(7a)の数値範囲とすることが好ましい。
【0065】
0.085<r/D<0.415 (1a)
0.3<|fM|/f<9.0 (2a)
0.15<fP/f<9.70 (3a)
-9.5<fN/f<-0.4 (4a)
1.1<H/λ<2.5 (5a)
0.35<rmax/λ<0.87 (6a)
0.07<rmin/λ<0.45 (7a)
また、条件式(1)乃至(7)の数値範囲を以下の条件式(1b)乃至(7b)の数値範囲とすることがより好ましい。
【0066】
0.095<r/D<0.405 (1b)
0.6<|fM|/f<8.0 (2b)
0.30<fP/f<9.50 (3b)
-9.0<fN/f<-0.7 (4b)
1.15<H/λ<2.20 (5b)
0.40<rmax/λ<0.85 (6b)
0.09<rmin/λ<0.40 (7b)
また、条件式(1)乃至(7)の数値範囲を以下の条件式(1c)乃至(7c)の数値範囲とすることが更に好ましい。
【0067】
0.110<2×r/D<0.395 (1c)
0.8<|fM|/f<7.0 (2c)
0.40<fP/f<9.20 (3c)
-8.0<fN/f<-1.0 (4c)
1.2<H/λ<2.0 (5c)
0.45<rmax/λ<0.83 (6c)
0.14<rmin/λ<0.35 (7c)
次に、各実施例の光学系L0について詳細に述べる。
【0068】
実施例1において、光学系L0は、物体側から像側へ順に配置された、正、負、正、正、負、負の屈折力の第1レンズG1乃至第6レンズG6を含む。実施例1において、設計波長は940nmである。実施例1のメタレンズMLは第6レンズG6であり、メタレンズ面MLSは第6レンズG6の像側のレンズ面である。また、メタレンズMLは、光軸近傍で負の屈折力を有する。メタレンズ面MLSの柱状構造の屈折率は、設計波長で2.0164である。メタレンズ面MLSには、
図21に示される円柱の柱状構造が、
図3の位相変化を生じるように、円の直径w1を変化させながら、
図25と
図26に則って設けられている。実施例1では、基板の長さw0は0.75μm、柱状構造の高さHは1.45μmであり、直径w1は0.200μmから0.685μmの範囲で変化する。
【0069】
実施例2において、光学系L0は、物体側から像側へ順に配置された、負、正、負、正、正、負の屈折力の第1レンズG1乃至第6レンズG6を含む。実施例2において、設計波長は587.56nmである。実施例2のメタレンズMLは第4レンズG4であり、メタレンズ面MLSは第4レンズG6の物体側のレンズ面である。また、メタレンズMLは、光軸近傍で正の屈折力を有する。メタレンズ面MLSの柱状構造の屈折率は、設計波長で2.0458である。メタレンズ面MLSには、
図20に示される四角柱の柱状構造が、
図8の位相変化を生じるように、四角形の辺の長さw1を変化させながら、
図25と
図26に則って設けられている。実施例2では、基板の長さw0は0.40μm、柱状構造の高さHは0.84μmであり、辺の長さw1は0.100μmから0.335μmの範囲で変化する。
【0070】
実施例3において、光学系L0は、物体側から像側へ順に配置された、正、正、負、負の屈折力の第1レンズG1乃至第4レンズG4を含む。実施例3において、設計波長は、940nmである。実施例3のメタレンズMLは第2レンズG2であり、メタレンズ面MLSは第2レンズG2の像側のレンズ面である。また、メタレンズMLは、光軸近傍で正の屈折力を有する。メタレンズ面MLSの柱状構造の屈折率は、設計波長で2.0164である。メタレンズ面MLSには、
図22に示される六角柱の柱状構造が、
図12の位相変化を生じるように、六角形の一辺の長さw1を変化させながら、
図25と
図26に則って設けられている。実施例3では、基板の長さw0は0.75μm、柱状構造の高さHは1.45μmであり、辺の長さw1は0.180μmから0.607μmの範囲で変化する。
【0071】
実施例4において、光学系L0は、物体側から像側へ順に配置された、正、負、正、正、負、負の屈折力の第1レンズG1乃至第6レンズG6を含む。実施例4において、設計波長は、587.56nmである。実施例4のメタレンズMLは第6レンズG6であり、メタレンズ面MLSは第6レンズG6の像側のレンズ面である。また、メタレンズMLは、光軸近傍で負の屈折力を有する。メタレンズ面MLSの柱状構造の屈折率は、設計波長で2.0458である。メタレンズ面MLSには、
図21に示される円柱の柱状構造が、
図16の位相変化を生じるように、円の直径w1を変化させながら、
図25と
図26に則って設けられている。実施例4では、基板の長さw0は0.40μm、柱状構造の高さHは0.84μmであり、直径w1は0.180μmから0.367μmの範囲で変化する。
【0072】
以下に、実施例1乃至4にそれぞれ対応する数値実施例1乃至4を示す。
【0073】
各数値実施例の面データにおいて、rは各光学面の曲率半径、d(mm)は第m面と第(m+1)面との間の軸上間隔(光軸上の距離)を表わしている。ただし、mは光入射側から数えた面の番号である。また、ndは各光学部材のd線に対する屈折率、νdは光学部材のアッベ数を表わしている。また、n940は、各光学部材の波長940nmに対する屈折率である。なお、ある材料のアッベ数νdは、フラウンホーファ線のd線(587.6nm)、F線(486.1nm)、C線(656.3nm)における屈折率をNd,NF,NCとするとき、
νd=(Nd-1)/(NF-NC)
で表される。
【0074】
なお、各数値実施例において、d、焦点距離(mm)、Fナンバー、半画角(°)は全て各実施例の光学系L0が無限遠物体に焦点を合わせたときの値である。バックフォーカスBFは、光学系L0の最終レンズ面(最も像側のレンズ面)から像面までの光軸上の距離を空気換算長により表記したものである。レンズ全長は、光学系L0の最前面(最も物体側のレンズ面)から最終レンズ面(光学ブロックFLは含まない)までの距離にバックフォーカスを加えた長さである。
【0075】
また、光学面が非球面の場合は、面番号の右側に、*の符号を付している。非球面形状は、Xを光軸方向の面頂点からの変位量、hを光軸と垂直な方向の光軸からの高さ、Rを近軸曲率半径、Kを円錐定数、A4,A6,A8,A10,A12を各次数の非球面係数とするとき、
X=(h2/R)/[1+{1-(1+K)(h/R)2}1/2 +A4×h4+A6×h6
+A8×h8+A10×h10+A12×h12]
で表している。なお、各非球面係数における「e±XX」は「×10±XX」を意味している。
【0076】
また、MLSは、当該面がメタレンズ面であることを示す。メタレンズ面の位相関数をφは、B4,B6,B8,B10,B12を、位相関数φを冪級数多項式で表したときの、各次数の係数とするとき、
φ=B2×h2+B4×h4+B6×h6+B8×h8+B10×h10+B12×h12
+B14×h14
で表している。
【0077】
同様に、メタレンズ面の光路差関数をΦ、設計波長をλ、C4、C6、C8、C10、C12を、光路差関数を冪級数多項式で表したときの、各次数の係数とするとき、
Φ=φ×λ/(2π)=C2×h2+C4×h4+C6×h6+C8×h8+C10×h10
+C12×h12+C14×h14
で表している。このとき、メタレンズ面の焦点距離をfMとするとき、
1/fM=-2×C2=-2×λ×B2/(2π)
である。
【0078】
なお、各係数における「e±XX」は「×10±XX」を意味している。
【0079】
[数値実施例1]
単位 mm
面データ
面番号 r d n940 νd 有効径
1* -3.433 0.50 1.52639 55.7 3.38
2* -2.603 0.10 2.53
3* 1.322 0.40 1.63455 20.4 2.04
4* 0.961 0.29 1.61
5(絞り) ∞ 0.00 1.61
6* 6.494 0.42 1.52639 55.7 1.54
7* -27.169 0.11 1.53
8* -19.890 0.65 1.52639 55.7 1.56
9* -1.623 0.74 1.61
10* 3.480 0.40 1.64307 19.3 2.62
11* 1.970 1.40 3.18
12 ∞ 0.50 1.50792 64.1 6.91
13(MLS) ∞ 0.40 7.61
像面 ∞
非球面データ
第1面
K = 0.00000e+00 A 4= 8.31829e-02 A 6=-6.80816e-03 A 8= 4.96011e-05
第2面
K =-7.83575e+00 A 4= 1.39114e-01 A 6=-2.53752e-02 A 8= 1.68533e-02
第3面
K =-4.53662e+00 A 4= 1.33684e-01 A 6=-4.83426e-02 A 8= 1.34721e-02
第4面
K =-3.57529e+00 A 4= 1.07508e-01 A 6=-2.00095e-02 A 8=-4.70803e-02
第6面
K = 1.00000e+01 A 4= 9.41213e-03 A 6= 6.12387e-02 A 8=-1.55783e-01 A10=-2.77809e-03
第7面
K =-1.86654e+01 A 4= 1.49386e-01 A 6= 1.09103e-01 A 8=-8.78459e-02 A10= 8.49814e-03
第8面
K = 0.00000e+00 A 4= 7.25912e-02 A 6= 5.61224e-02 A 8=-2.60104e-02
第9面
K = 0.00000e+00 A 4=-3.42408e-02 A 6= 1.36192e-02 A 8=-2.08664e-02
第10面
K = 0.00000e+00 A 4=-1.22987e-01 A 6= 2.69464e-02 A 8= 4.87787e-03 A10=-3.34934e-03
第11面
K = 0.00000e+00 A 4=-1.24895e-01 A 6= 3.36893e-02 A 8=-5.67529e-03
第13面(MLS)
C 2= 8.55017e-02 C 4=-1.73660e-02 C 6= 1.38018e-03 C 8=-4.37175e-05
焦点距離 4.11
Fナンバー 2.57
半画角(°) 43.35
像高 3.88
レンズ全長 5.90
BF 0.40
単レンズデータ
レンズ 始面 焦点距離
1 1 16.93
2 3 -9.73
3 6 10.00
4 8 3.32
5 10 -7.88
6 12 -5.85
[数値実施例2]
単位 mm
面データ
面番号 r d nd νd 有効径
1* 16.001 0.44 1.53504 55.7 1.85
2* 2.788 0.12 1.66
3* 1.746 0.77 1.53504 55.7 1.72
4* -3.594 -0.07 1.72
5(絞り) ∞ 0.23 1.67
6* -5.055 0.40 1.66080 20.4 1.61
7* 55.707 0.19 1.91
8(MLS) ∞ 0.40 1.51633 64.1 2.30
9 ∞ 0.34 2.72
10* 2.141 0.40 1.53499 55.8 3.65
11* 2.257 0.94 4.26
12* 2.031 0.50 1.53504 55.7 4.57
13* 1.357 0.43 6.01
14 ∞ 0.40 1.51633 64.1 7.31
15 ∞ 0.40 7.67
像面 ∞
非球面データ
第1面
K = 0.00000e+00 A 4=-1.91087e-02 A 6= 1.37174e-03 A 8= 3.95640e-04
第2面
K =-3.18548e+00 A 4=-2.03665e-02 A 6= 9.72944e-03 A 8= 1.63619e-02
第3面
K =-4.74707e+00 A 4= 4.76470e-02 A 6=-6.23112e-02 A 8= 6.19068e-03 A10=-1.74582e-02
第4面
K = 1.00000e+01 A 4=-9.55121e-02 A 6= 7.92232e-02 A 8=-4.93316e-02 A10= 2.73523e-02
第6面
K = 9.96250e+00 A 4=-1.14053e-01 A 6= 1.84047e-01 A 8=-3.60989e-02 A10= 6.22275e-03
第7面
K = 1.99999e+01 A 4=-7.25652e-02 A 6= 1.37502e-01 A 8=-5.40950e-02 A10= 2.59535e-02
第8面(MLS)
C 2=-2.50984e-02 C 4= 8.41972e-03 C 6= 5.93566e-04 C 8=-7.84988e-04
C10=-1.55749e-04
第10面
K = 0.00000e+00 A 4=-9.20501e-02 A 6= 1.21058e-02 A 8=-2.32952e-03
第11面
K = 0.00000e+00 A 4=-8.08606e-02 A 6= 9.29348e-03 A 8=-1.34130e-03
第12面
K =-1.00000e+01 A 4=-6.35885e-02 A 6=-1.18290e-02 A 8= 2.86576e-03
第13面
K =-4.66528e+00 A 4=-3.78185e-02 A 6= 2.45314e-03 A 8=-9.86812e-05
焦点距離 4.28
Fナンバー 2.57
半画角(°) 42.15
像高 3.88
レンズ全長 5.76
BF 1.10
単レンズデータ
レンズ 始面 焦点距離
1 1 -6.38
2 3 2.31
3 6 -6.99
4 8 19.92
5 10 35.26
6 12 -10.31
[数値実施例3]
単位 mm
面データ
面番号 r d n940 νd 有効径
1* 2.085 0.50 1.83150 40.1 1.90
2* 2.845 0.31 1.58
3(絞り) ∞ 0.10 1.53
4 ∞ 0.50 1.50792 64.1 1.50
5(MLS ) ∞ 0.74 1.99
6* -24.138 0.45 1.64307 19.3 3.25
7* -27.261 0.87 3.75
8* 3.912 0.50 1.64307 19.3 5.09
9* 3.080 0.33 5.71
10 ∞ 0.50 1.50792 64.1 7.34
11 ∞ 0.40 7.77
像面 ∞
非球面データ
第1面
K = 0.00000e+00 A 4=-8.51198e-03 A 6=-1.87386e-03 A 8=-8.21259e-03
第2面
K = 0.00000e+00 A 4=-8.82492e-03 A 6=-1.39205e-02 A 8=-1.00226e-02
第5面(MLS)
C 2=-6.42581e-02 C 4= 5.80317e-03 C 6= 8.18128e-03 C 8=-3.64839e-03
C10= 5.41249e-03
第6面
K = 0.00000e+00 A 4=-1.32164e-02 A 6= 3.81982e-03
第7面
K = 0.00000e+00 A 4=-1.66429e-02 A 6= 1.04823e-02 A 8=-1.22743e-03
第8面
K = 0.00000e+00 A 4=-7.50759e-02 A 6= 4.47157e-03 A 8= 7.75616e-04 A10=-7.39618e-05
第9面
K = 0.00000e+00 A 4=-6.50080e-02 A 6= 6.71184e-03 A 8=-4.14732e-04
焦点距離 4.17
Fナンバー 2.40
半画角(°) 42.91
像高 3.88
レンズ全長 5.03
BF 1.06
単レンズデータ
レンズ 始面 焦点距離
1 1 7.22
2 4 7.78
3 6 -347.26
4 8 -29.43
5 10 0.00
[数値実施例4]
単位 mm
面データ
面番号 r d nd νd 有効径
1* -3.896 0.50 1.53504 55.7 3.31
2* -3.046 0.10 2.55
3* 1.403 0.46 1.66080 20.4 2.11
4* 1.017 0.29 1.64
5(絞り) ∞ 0.00 1.64
6* 10.150 0.44 1.53504 55.7 1.60
7* -10.748 0.11 1.63
8* -27.778 0.70 1.53504 55.7 1.67
9* -1.670 0.78 1.71
10* 3.880 0.40 1.67070 19.3 2.61
11* 1.944 1.51 3.13
12 ∞ 0.50 1.51633 64.1 6.94
13(MLS) ∞ 0.40 7.62
像面 ∞
非球面データ
第1面
K = 0.00000e+00 A 4= 7.76296e-02 A 6=-5.96239e-03
第2面
K = 0.00000e+00 A 4= 1.58973e-01 A 6=-2.43158e-02 A 8= 1.36084e-02
第3面
K =-3.59362e+00 A 4= 8.65247e-02 A 6=-2.20609e-02 A 8= 7.58096e-03
第4面
K =-3.07327e+00 A 4= 8.03389e-02 A 6=-1.81655e-02 A 8=-2.75557e-02
第6面
K = 0.00000e+00 A 4= 2.52416e-02 A 6=-1.56320e-03 A 8=-7.66220e-02
第7面
K = 0.00000e+00 A 4= 1.48521e-01
第8面
K = 0.00000e+00 A 4= 8.55980e-02 A 6=-4.07608e-03 A 8= 4.28876e-03
第9面
K = 0.00000e+00 A 4=-1.84767e-02 A 6= 3.70582e-03 A 8=-5.13414e-03
第10面
K = 0.00000e+00 A 4=-1.10959e-01 A 6= 2.08304e-02 A 8= 7.15666e-03 A10=-3.97014e-03
第11面
K = 0.00000e+00 A 4=-1.21890e-01 A 6= 3.34359e-02 A 8=-6.00247e-03
第13面(MLS)
C 2= 7.06468e-02 C 4=-1.63034e-02 C 6= 1.36101e-03 C 8=-4.39037e-05
焦点距離 4.39
Fナンバー 2.57
半画角(°) 41.42
像高 3.88
レンズ全長 6.20
BF 0.40
単レンズデータ
レンズ 始面 焦点距離
1 1 21.65
2 3 -10.68
3 6 9.83
4 8 3.29
5 10 -6.33
6 12 -7.08
各数値実施例における種々の値を、以下の表1にまとめて示す。
【0080】
【0081】
[撮像装置]
次に、各実施例の光学系L0を撮像光学系として用いたデジタルスチルカメラ(撮像装置)の実施例について、
図27を用いて説明する。
図27において、10はカメラ本体、11は実施例1乃至4で説明したいずれかの光学系L0によって構成された撮影光学系である。12はカメラ本体に内蔵され、撮影光学系11によって形成された光学像を受光して光電変換するCCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子(光電変換素子)である。なお、カメラ本体10は、クイックターンミラーを有する所謂一眼レフカメラでもよいし、クイックターンミラーを有さない所謂ミラーレスカメラでもよい。また、撮像素子12により取得された画像の歪曲収差や色収差等の諸収差を電気的に補正することにより、出力画像を高画質化してもよい。
【0082】
このように各実施例の光学系L0をデジタルスチルカメラ等の撮像装置に適用することにより、レンズが小型である撮像装置を得ることができる。
[レンズ装置]
図14は、各実施例の光学系L0を撮影光学系として用いたレンズ装置20の外観概略図である。レンズ装置20は、不図示のカメラ本体に着脱可能に装着される、いわゆる交換レンズである。21は、実施例1乃至4で説明したいずれかの光学系L0によって構成された撮影光学系である。撮影光学系21は、不図示の保持部により保持されている。また、レンズ装置20は、フォーカス操作手段22と撮影モードを変化させるための操作手段23とを有する。
【0083】
ユーザがフォーカス操作手段22を操作することにより、機械的又は電気的に撮影光学系21の配置が変化し、焦点位置を変化させることができる。
【0084】
また、ユーザが操作手段23を操作することにより、フォーカシング以外の目的で撮影光学系21のレンズ群の配置を変化させるようにしてもよい。例えば、操作手段23の操作に伴い撮影光学系21のレンズ群の配置を機械的又は電気的に変化させ、撮影光学系21の収差を変化させてもよい。この際、ピント位置は実質的に変化しないことが好ましい。
【0085】
本実施形態の開示は、以下の構成を含む。
(構成1)
少なくとも一つ以上のレンズとメタレンズとを有し、
前記メタレンズは、通過する光の波面に位相変化を生じさせるレンズ面を備え、
前記メタレンズの径方向の位置に対応する前記波面での位相変化量を表す前記レンズ面の位相関数は、臨界点と変曲点の少なくとも一つを含むことを特徴とする光学系。
(構成2)
前記径方向における前記レンズ面の中心から前記位相関数に含まれる少なくとも一つの臨界点又は変曲点に対応する位置までの距離をr、前記レンズ面の有効径をDとするとき、
0.050<r/D<0.425
なる条件式を満足することを特徴とする構成1に記載の光学系。
(構成3)
前記レンズ面は、複数の凸部を含む構造を有し、
前記凸部の大きさは、前記径方向において、所定の規則に応じて変化することを特徴とする構成1又は2に記載の光学系。
(構成4)
前記凸部の大きさは、前記凸部の充填率、前記凸部の体積、前記凸部の直径、及び前記レンズ面における前記凸部が占める面積の少なくとも一つであることを特徴とする構成3に記載の光学系。
(構成5)
前記構造は、前記径方向において前記レンズ面の中心から離れるにしたがって前記凸部の大きさが大きくなる、又は小さくなるように前記凸部が設けられている構成を含むことを特徴とする構成3又は4に記載の光学系。
(構成6)
前記構成は、前記径方向に沿って周期的に設けられていることを特徴とする構成5に記載の光学系。
(構成7)
前記構造は、前記径方向において前記レンズ面の中心から離れるにしたがって前記凸部の大きさが大きくなるように前記凸部が設けられている構成と前記径方向において前記レンズ面の中心から離れるにしたがって前記凸部の大きさが小さくなるように前記凸部が設けられている構成の少なくとも一方の構成を複数含む複数の構成を含み、
前記複数の構成は、第1の構成と第2の構成とを含み、
前記第1の構成の前記径方向における間隔は、前記第2の構成の前記径方向における間隔と異なることを特徴とする構成3乃至6の何れか一つの構成に記載の光学系。
(構成8)
前記メタレンズ面の少なくとも一部では、前記複数の構成の前記径方向における距離は、前記中心から離れるにしたがって短くなった後、前記中心から離れるにしたがって長くなるように変化することを特徴とする構成7に記載の光学系。
(構成9)
前記構造は、前記径方向において前記レンズ面の中心から離れるにしたがって前記凸部の大きさが大きくなるように前記凸部が設けられている構成と前記径方向において前記レンズ面の中心から離れるにしたがって前記凸部の大きさが小さくなるように前記凸部が設けられている構成の少なくとも一方の構成を複数含む複数の構成を含み、
前記複数の構成は、第1の構成と第2の構成とを含み、
前記第1の構成における前記凸部の大きさの変化は、前記第2の構成における前記凸部の大きさの変化と異なることを特徴とする構成3乃至8の何れか一つの構成に記載の光学系。
(構成10)
前記メタレンズ面の少なくとも一部では、前記径方向において第1の構成が周期的に繰り返される構成と第2の構成が周期的に繰り返される構成とが設けられていることを特徴とする構成9に記載の光学系。
(構成11)
前記凸部は、略相似で略平行な二つの平面図形を上面と下面として持つ筒状の柱体であることを特徴とする構成3乃至10の何れか一つの構成に記載の光学系。
(構成12)
前記光学系の焦点距離をf、前記メタレンズの焦点距離をfMとするとき、
0.1<|fM|/f<10.0
なる条件式を満足することを特徴とする構成1乃至11の何れか一つの構成に記載の光学系。
(構成13)
前記光学系は、少なくとも一つの正レンズを有し、
前記光学系の焦点距離をf、前記正レンズの焦点距離をfPとするとき、
0.1<fP/f<10.0
なる条件式を満足することを特徴とする構成1乃至12の何れか一つの構成に記載の光学系。
(構成14)
前記光学系は、少なくとも一つの負レンズを有し、
前記光学系の焦点距離をf、前記負レンズの焦点距離をfNとするとき、
-10.0<fN/f<-0.1
なる条件式を満足することを特徴とする構成1乃至13の何れか一つの構成に記載の光学系。
(構成15)
前記凸部の光軸に沿った方向の最大の高さをH、設計波長をλとするとき、
1.0<H/λ<3.0
なる条件式を満足することを特徴とする構成1乃至14の何れか一つの構成に記載の光学系。
(構成16)
前記複数の凸部の直径のうち最大の直径と最小の直径をそれぞれ、rmaxとrmin、設計波長をλとするとき、
0.3<rmax/λ<0.9
0.05<rmin/λ<0.50
なる条件式を満足することを特徴とする構成1乃至15の何れか一つの構成に記載の光学系。
(構成17)
前記光学系は、少なくとも一つの非球面レンズを有し、
該非球面レンズは、臨界点と変曲点の少なくとも一つを含む非球面を備えることを特徴とする、構成1乃至16の何れか一つの構成に記載の光学系。
(構成18)
少なくとも一つ以上のレンズとメタレンズとを有し、
前記レンズ面は、複数の凸部を含む構造を有し、
前記凸部の大きさは、前記径方向において、所定の規則に応じて変化することを特徴とする光学系。
(構成19)
通過する光の波面に位相変化を生じさせるレンズ面を有し、
前記レンズ面の径方向の位置に対応する前記波面での位相変化量を表す前記レンズ面の位相関数は、臨界点と変曲点の少なくとも一つを含むことを特徴とする光学素子。
(構成20)
構成1乃至18の何れか一つの構成に記載の光学系と、該光学系によって形成される像を受光する撮像素子を有することを特徴とする撮像装置。
(構成21)
構成1乃至18の何れか一つの構成に記載の光学系と、前記光学系を保持する保持部とを有することを特徴とするレンズ装置。
【0086】
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について説明したが、本発明はこれらの実施形態及び実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の組合せ、変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0087】
L0 光学系
ML メタレンズ
MLS メタレンズ面
【手続補正書】
【提出日】2023-06-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】