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特開2024-175725ガス検知システム、情報管理装置、その制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175725
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ガス検知システム、情報管理装置、その制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08B 21/12 20060101AFI20241212BHJP
   G08B 25/10 20060101ALI20241212BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
G08B21/12
G08B25/10 A
H04Q9/00 311J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093652
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】390013608
【氏名又は名称】高千穂産業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592185666
【氏名又は名称】管清工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【弁理士】
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】山田 竜也
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 基喜
(72)【発明者】
【氏名】南 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】岡部 貴臣
【テーマコード(参考)】
5C086
5C087
5K048
【Fターム(参考)】
5C086AA02
5C086CA01
5C086CB11
5C086DA08
5C086DA14
5C086FA18
5C087AA02
5C087AA03
5C087AA25
5C087BB20
5C087BB74
5C087DD07
5C087DD49
5C087EE07
5C087EE14
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087FF16
5C087GG08
5C087GG66
5C087GG83
5K048BA34
(57)【要約】
【課題】ガス検知器を使用する場所を特定することで、使用場所固有の状況に対応を促すことが可能なガス検知システムを提供すること。
【解決手段】
ガス検知器に設けられた位置情報取得手段が取得した現在位置情報と情報管理装置に設けられた記憶手段に記憶された現在地情報に基づいてガス検知器の近くに位置するマンホールを特定し(ステップS120)、このマンホールに関するマンホール情報を記憶手段から抽出し(ステップS130)、ガス検知器に設けられ表示手段に表示することにより、ガス検知器の近くに位置するマンホールのマンホール情報を報知することで使用者に注意を促し、事故が発生する可能性を未然に低減するガス検知システムを提供することができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを検知するガス検知手段と、位置情報を取得し現在位置に関する情報を現在位置情報として出力する位置情報取得手段と、前記現在位置情報を含む情報を送信する第一送受信手段と、を有するガス検知器と、
前記第一送受信手段から送信された前記現在位置情報を含む情報を送受信する第二送受信手段と、前記現在位置情報に基づいてガス検知器の近くに位置するマンホールを特定するマンホール特定手段と、を有する情報管理装置と、
を備えることを特徴とする、
ガス検知システム。
【請求項2】
前記情報管理装置は、マンホールに関する情報であるマンホール情報を記憶する記憶手段と、を有し、前記マンホール特定手段が前記現在位置情報に基づいて前記マンホールを特定し、前記マンホール情報の少なくとも一部を前記ガス検知器に送信することを特徴とする、
請求項1に記載のガス検知システム。
【請求項3】
前記現在位置情報及び前記マンホール情報は、緯度経度に関する情報である緯度経度情報を含み、
前記マンホール特定手段は、前記現在位置情報に含まれる緯度経度情報と前記マンホール情報に含まれる緯度経度情報を比較し、前記現在位置情報に含まれる緯度経度情報が前記マンホール情報に含まれる緯度経度情報から予め定められた所定の範囲内である場合に前記ガス検知器の近くに位置するマンホールを前記マンホール情報に記憶されたマンホールであると特定することを特徴とする、
請求項2に記載のガス検知システム。
【請求項4】
前記ガス検知器は、前記マンホール情報を前記情報管理装置から受信した際、前記マンホール情報を報知する報知手段を有することを特徴とする、
請求項2又は3に記載のガス検知システム。
【請求項5】
前記マンホール情報は、前記ガス検知手段が異常を検知したことを示す異常検知情報を含む情報であることを特徴とする、
請求項4に記載のガス検知システム。
【請求項6】
請求項5に記載のガス検知システムにおいて、
前記ガス検知器でガスを検知した際、前記ガスの濃度が所定の濃度以上の場合に警告を報知する警告手段と、
を備え、
前記所定の濃度は、前記異常検知情報の有無に基づいて定められることを特徴とする、
ガス検知システム。
【請求項7】
ガスを検知するガス検知手段と、位置情報を取得し現在位置に関する情報を現在位置情報として出力する位置情報取得手段と、前記現在位置情報を含む情報を送信する第一送受信手段と、を有するガス検知器の現在位置に関する情報である現在位置情報を含む情報を受信し、前記現在位置情報に基づいてガス検知器の近くに位置するマンホールを特定するマンホール特定手段と、
を備えることを特徴とする、
情報管理装置。
【請求項8】
ガスを検知するガス検知手段と、位置情報を取得し現在位置に関する情報を現在位置情報として出力する位置情報取得手段と、前記現在位置情報を含む情報を送信する第一送受信手段と、を有するガス検知器の現在位置に関する情報である現在位置情報を含む情報を受信し、前記現在位置情報に基づいてガス検知器の近くに位置するマンホールを特定するマンホール特定手段と、を備える情報管理装置の制御方法であって、
前記現在位置情報を含む情報を受信する情報受信ステップと、
前記情報受信ステップで受信した位置情報に基づいてガス検知器の近くに位置するマンホールを特定するマンホール特定ステップと、
を含むことを特徴とする、
情報管理装置の制御方法。
【請求項9】
請求項8に記載の情報管理装置の制御方法を1又は2以上のコンピュータで実行するためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス検知システム、情報管理装置、その制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスセンサを用いてガス濃度を検知して警報を発する携帯型のガス警報送信装置およびこれを用いたガス異常検知システムが知られている。例えば、特許文献1では、ガス濃度を検知して警報を発する携帯型のガス検知警報器と、このガス検知警報器が接続手段を介して接続されて警報を受信して無線信号として送出する通信携帯端末とを有し、接続手段による接続が未接続の状態であってガス濃度が所定レベルを越えたときに警報を発信し元のレベルに戻るとその警報を消滅させて自動復帰し、接続手段による接続が接続状態であって所定レベルを越えたときに警報を発信し続けて自己保持するようにしたガス異常検知システムが記載されている。このガス異常検知システムは、ガス検知警報器と通信携帯端末とが接続された状態でガス濃度が所定レベルを超えたときに警報が発せられると、通信携帯端末から無線信号により外部に警報を発信し続けてこれが自己保持されているので、第三者に危険を連続して通知することができ、第三者の助けを容易に借りることができ、オペレータの安全を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-92770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のガス異常検知システムでは、異常の検知をすることができるが、異常状態であるか否かの判断には、環境に対する依存性がある場合がある。例えば、マンホール内のガスを検知する際には、過去に異常が検知された場合には、同様に異常が発生する可能性が高いことが知られているが、特許文献1に記載のガス異常検知システムでは、このような現場固有の状況に対して対応することができないという課題がある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、ガス検知器を使用する場所を特定することで、使用場所に固有の状況に対応を促すことが可能なガス検知システムを提供することを主目的とする。また、使用場所に固有の状況に対応を促すことが可能なガス検知システムの制御方法及びプログラムを提供することも目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の目的の少なくとも一つを達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のガス検知システムは、
ガスを検知するガス検知手段と、位置情報を取得し現在位置に関する情報を現在位置情報として出力する位置情報取得手段と、前記現在位置情報を含む情報を送信する第一送受信手段と、を有するガス検知器と、
前記第一送受信手段から送信された前記現在位置情報を含む情報を送受信する第二送受信手段と、前記現在位置情報に基づいてガス検知器の近くに位置するマンホールを特定するマンホール特定手段と、を有する情報管理装置と、
を備えることを趣旨とする、
ものである。
【0008】
このガス検知システムは、ガス検知器に設けられた位置情報取得手段がガス検知器の現在位置に関する情報を現在位置情報として取得し、第一送受信手段を介して情報管理装置に現在位置情報を送信する。情報管理装置が第二送受信手段を介して現在位置情報を受信すると、現在位置情報に基づいてガス検知器の近くに位置するマンホールをマンホール特定手段が特定する。こうすることにより、ガス検知器の現在位置近くにあるマンホールを特定することができるため、このマンホールに関する情報が蓄積されている場合には、マンホールに関する情報を取得することができる。
【0009】
本発明の情報管理装置は、
ガスを検知するガス検知手段と、位置情報を取得し現在位置に関する情報を現在位置情報として出力する位置情報取得手段と、前記現在位置情報を含む情報を送信する第一送受信手段と、を有するガス検知器の現在位置に関する情報である現在位置情報を含む情報を受信し、前記現在位置情報に基づいてガス検知器の近くに位置するマンホールを特定するマンホール特定手段と、
を備えることを趣旨とする、
ものである。
【0010】
この情報管理装置は、ガス検知器の現在位置に関する情報である現在位置情報を受信すると、現在位置情報に基づいてガス検知器の近くに位置するマンホールをマンホール特定手段が特定する。こうすることにより、ガス検知器の現在位置近くにあるマンホールを特定することができるため、このマンホールに関する情報が蓄積されている場合には、マンホールに関する情報を取得することができる。
【0011】
本発明のガス検知システムにおいて、前記情報管理装置は、マンホールに関する情報であるマンホール情報を記憶する記憶手段と、を有し、前記マンホール特定手段が前記現在位置情報に基づいて前記マンホールを特定し、前記マンホール情報の少なくとも一部を前記ガス検知器に送信することを特徴としてもよい。こうすることにより、マンホール情報記憶手段に記憶されたマンホールの位置情報と現在位置情報に基づいて、ガス検知器の近くのマンホールを特定し、このマンホールに関する情報を送信することができる。このマンホール情報に、例えば、過去のガス検知においてガス濃度の異常が検知されたことを示す異常検知情報が含まれている場合には、異常検知情報に基づいて警告を報知することで、使用者に注意を促し、事故が発生する可能性を未然に低減することができる。
【0012】
本発明のガス検知システムにおいて、前記現在位置情報及び前記マンホール情報は、緯度経度に関する情報である緯度経度情報を含み、前記マンホール特定手段は、前記現在位置情報に含まれる緯度経度情報と前記マンホール情報に含まれる緯度経度情報を比較し、前記現在位置情報に含まれる緯度経度情報が前記マンホール情報に含まれる緯度経度情報から予め定められた所定の範囲内である場合に前記ガス検知器の近くに位置するマンホールを前記マンホール情報に記憶されたマンホールであると特定することを特徴としてもよい。こうすることにより、マンホール情報記憶手段に記憶されたマンホールの緯度経度情報と現在位置情報に含まれる緯度経度情報に基づいて、ガス検知器の近くのマンホールを特定し、このマンホールに関する情報を送信することができる。このマンホール情報に、例えば、過去のガス検知においてガス濃度の異常が検知されたことを示す異常検知情報が含まれている場合には、異常検知情報に基づいて警告を報知することで、使用者に注意を促し、事故が発生する可能性を未然に低減することができる。
【0013】
本発明のガス検知システムにおいて、前記ガス検知器は、前記マンホール情報を前記情報管理装置から受信した際、前記マンホール情報を報知する報知手段を有することを特徴としてもよい。こうすることにより、マンホールに関する情報を報知することができるため、このマンホール情報に、例えば、過去のガス検知においてガス濃度の異常が検知されたことを示す異常検知情報が含まれている場合には、異常検知情報を報知することで、使用者に注意を促し、事故が発生する可能性を未然に低減することができる。
【0014】
本発明のガス検知システムにおいて、前記マンホール情報は、前記ガス検知手段が異常を検知したことを示す異常検知情報を含む情報であることを特徴としてもよい。こうすることにより、過去のガス検知においてガス濃度の異常が検知されたことを示す異常検知情報が含まれている場合には、異常検知情報を報知することで、使用者に注意を促し、事故が発生する可能性を未然に低減することができる。
【0015】
この態様を採用した本発明のガス検知システムは、前記ガス検知器でガスを検知した際、前記ガスの濃度が所定の濃度以上の場合に警告を報知する警告手段と、を備え、前記所定の濃度は、前記異常検知情報の有無に基づいて定められることを特徴としてもよい。こうすることにより、ガス検知器が検知したガスの濃度に異常がある場合には、使用者に警告を報知することができる。このとき、過去に異常が発生した場所では、同様の異常が発生する可能性が高いことが経験的に知られているため、過去に異常が発生した場所を意味する異常検知情報を有する場合には、警告を報知するガスの濃度を変更することにより、使用者に注意を促し、事故が発生する可能性を未然に低減することができる。
【0016】
本発明の情報管理装置の制御方法は、
ガスを検知するガス検知手段と、位置情報を取得し現在位置に関する情報を現在位置情報として出力する位置情報取得手段と、前記現在位置情報を含む情報を送信する第一送受信手段と、を有するガス検知器の現在位置に関する情報である現在位置情報を含む情報を受信し、前記現在位置情報に基づいてガス検知器の近くに位置するマンホールを特定するマンホール特定手段と、を備える情報管理装置の制御方法であって、
前記現在位置情報を含む情報を受信する情報受信ステップと、
前記情報受信ステップで受信した位置情報に基づいてガス検知器の近くに位置するマンホールを特定するマンホール特定ステップと、
を含むことを趣旨とする、
ものである。
【0017】
この情報管理装置の制御方法は、ガス検知器に設けられた位置情報取得手段がガス検知器の現在位置に関する情報を現在位置情報として取得し、第一送受信手段を介して情報管理装置に現在位置情報を送信する。情報管理装置が第二送受信手段を介して現在位置情報を受信すると、現在位置情報に基づいてガス検知器の近くに位置するマンホールをマンホール特定手段が特定する。こうすることにより、ガス検知器の現在位置近くにあるマンホールを特定することができるため、このマンホールに関する情報が蓄積されている場合には、マンホールに関する情報を取得することができる。
【0018】
本発明のプログラムは、1又は複数のコンピュータに、情報管理装置の制御方法の各ステップを実行させるためのプログラムである。このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体(例えば、ハードディスク、ROM、CD、DVD、フラッシュメモリなど)に記録されていても良いし、伝送媒体(インターネットや有線/無線LANなどの通信網)を介してあるコンピュータから別のコンピュータへ送信されても良いし、その他どのような形で授受されても良い。また、制御方法の各ステップを実行する装置で実行されるものであっても、プログラムが実行される装置と処理が行われる装置とが異なっていてもよい。いずれの場合であっても、このプログラムを1つのコンピュータに実行させるか又は複数のコンピュータに各ステップを分担して実行させれば、上述した制御方法と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、ガス検知システム20の構成の概略を示す説明図である。
図2図2は、ガス検知システム20の電気的接続を説明するためのブロック図である。
図3図3は、マンホール情報テーブル46の一例を示す説明図である。
図4図4は、マンホール情報抽出処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態の一例として、ガス検知システム20について詳しく説明する。以下に説明する実施の形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。なお、各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号を付す。また、ガス検知システム20の制御方法の一例を示すことで、本発明のガス検知システムの制御方法の一例も明らかにする。
【0021】
本発明の実施の形態の一例であるガス検知システム20は、図1に示すように、複数種類のガスを検知する複数のガス検知器30と情報管理装置40とが互いに電気通信ネットワーク10を介して電気的に接続されており、ガス検知器30が検知したガスに関する情報及びガス検知器30の現在位置情報が電気通信ネットワーク10を介して情報管理装置40に送信される。ガス検知器30の現在位置情報を情報管理装置40が受信すると、ガス検知器30の現在位置情報に基づいてガス検知器30の近くのマンホールを特定し、マンホールに関する情報をガス検知器30に送信する。このとき、ガス検知器30には、マンホールに関する情報を表示する表示手段36(図2参照)が設けられているため、ガス検知器30の使用者に対して、マンホールに関する情報を報知することができる。
【0022】
ガス検知器30は、図2に示すように、各種ガスを検知してガスに関する情報を出力するガス検知手段32と、現在位置に関する情報である現在位置情報を取得する位置情報取得手段34と、情報管理装置40から送信されたマンホール情報を含む各種情報を表示する表示手段36と、ガスに関する情報及び現在位置情報を情報管理装置40に送信し、マンホールに関する情報を受信する第一送受信手段38と、を備えている。こうすることにより、ガス検知手段32が検知したガスに関する情報と現在位置に関する情報とを情報管理装置40に送信することができる。一方、情報管理装置40がガス検知器30の現在地に関する情報を受信すると、情報管理装置40に設けられた記憶手段44に記憶されたマンホール情報に基づいてガス検知器30の現在位置近くに位置するマンホールの情報を取り出し、ガス検知器30に送信する。こうすることにより、ガス検知器30の使用者は、現在位置の近くのマンホールに関する情報を得ることができる。なお、ここで、マンホールに関する情報とは、マンホールの位置を示す緯度経度情報を含む現在位置情報やマンホールで過去に異常を検知したことを示す異常検知情報を含む情報を意味する。
【0023】
ガス検知手段32は、公知のガス検知センサで、例えば、酸素、可燃性ガス、一酸化炭素、硫化水素のガス濃度を検知するとともに、温度及び湿度を検知するセンサである。このガス検知手段32は、これらのガス等の濃度や温度、湿度を検知し、ガスに関する情報として出力する。ガス検知手段32から出力されたガスに関する情報は、表示手段36に表示することで使用者に報知するとともに、第一送受信手段38を介して情報管理装置40に送信され、記憶される。こうすることにより、ガスに関する情報を使用者に報知するとともに、情報管理装置40に情報を蓄積することができる。
【0024】
位置情報取得手段34は、公知の位置情報取得手段であり、例えば、全地球測位システム(GPS)を用いた位置情報取得手段である。この位置情報取得手段34は、GPS衛星から受信した情報に基づいて、現在位置に関する情報を取得し、緯度経度情報を含む現在位置情報として出力する。こうすることにより、現在位置情報に基づいて情報管理装置40が現在位置に近いマンホールを特定することができる。
【0025】
表示手段36は、本発明の報知手段及び警告手段に相当する公知の表示手段であり、例えば、液晶ディスプレイである。この表示手段36は、ガス検知手段32から出力されたガスに関する情報や第一送受信手段38を介して情報管理装置40から受信したマンホールに関する情報であるマンホール情報、検出されたガスの濃度に関する情報を含む各種情報を表示したり、ガスの濃度に基づいて警告を表示したりすることで、使用者に情報を報知することができる。
【0026】
ここで、ガスの濃度に基づいて表示される警告の表示について詳しく説明する。この表示手段36には、ガス検知手段32が検知したガス等の濃度が所定の濃度以上又は以下である場合には、例えば、「注意」や「熱中症注意」と、使用者に対する注意喚起情報が表示される。具体的には、例えば、ガス検知手段32が硫化水素ガスの濃度が予め定められた所定の値以上の濃度を検知した場合には、「硫化水素ガス中毒注意」と表示する。こうすることにより、使用者に危険を報知する。
【0027】
加えて、この表示手段36に表示される基準となる所定の値は、情報管理装置40から受信したマンホールに関する情報に異常検知情報が含まれている場合には、第二の値に変更され、ガス検知手段32が検知したガス等の濃度が第二の値以上又は以下である場合には、使用者に対する注意喚起情報が表示される。具体的には、例えば、硫化水素警告情報が含まれるマンホール情報を情報管理装置40から受信した場合には、ガス検知手段32が検知した硫化水素濃度が第二の値以上の場合に、「硫化水素ガス中毒注意」と表示する。硫化水素警告情報がマンホール情報に含まれる場合には、過去に現在検査中のマンホールで硫化水素に関する異常が確認されたことを意味し、このような場合には、経験的に同一の異常が確認されることが多いため、警告の基準を所定の値よりも厳しい(濃度が低い)値とすることにより、事故が生じる可能性を未然に低減することができる。なお、ここでは、硫化水素の場合を例に説明したが、酸素濃度や一酸化炭素濃度、可燃性ガスの濃度であっても同様である。また、ここで所定の値とは、例えば、労働安全衛生法等に定められた安全基準を示す濃度であり、この基準を超える場合には、直ちに警告を報知することが必要な基準である。この基準としては、例えば、酸素濃度が18%、硫化水素濃度が10ppm、一酸化炭素濃度が50ppm、可燃性ガスが30%LELを用いることができる。一方、第二の値とは、所定の値よりも厳しい値であり、例えば、酸素濃度が16%、硫化水素濃度が5ppm、一酸化炭素濃度が40ppm、可燃性ガスが25%LELを用いることができる。
【0028】
情報管理装置40は、ガス検知器30から送信されたガスに関する情報やガス検知器30の現在位置情報等を送受信する第二送受信手段42と、マンホールに関する情報を記憶する記憶手段44と、第二送受信手段42が受信したガス検知器30の現在位置情報に基づいてガス検知器30の近くのマンホール情報を抽出し、情報管理装置40を制御する制御手段50と、を備えた公知の計算機である。この情報管理装置40は、第二送受信手段42を介してガス検知器30からガス検知器30の現在位置情報を受信すると、制御手段50が記憶手段44からガス検知器30の近くに位置するマンホールを特定すると共に、このマンホールに関する情報を取得して、ガス検知器30にマンホール情報を送信する。こうすることにより、ガス検知器30の近くに位置するマンホール情報をガス検知器30の使用者に報知することができる。
【0029】
記憶手段44は、公知の記憶手段であり、例えば、公知のハードディスクドライブ等の磁気ディスクやソリッド・ステート・ドライブ等のフラッシュメモリである。この記憶手段44には、図3に示すように、マンホールの位置情報とマンホールの過去情報(例えば、事故情報や過去に測定したガス濃度に関する情報、ガス濃度が異常であったことを示す異常検知情報等)とが関連付けて記憶するマンホール情報テーブル46を有し、それぞれのカラムにこれらの情報を記憶する。具体的には、マンホールの位置を示す緯度経度情報が保存される座標情報カラム、ガス検知器が検知した酸素濃度が基準値より低いことを意味する酸素警告情報の有無に関する情報である酸素の異常検知情報が保存される酸素警告カラム、ガス検知器が検知した硫化水素濃度が基準値より低いことを意味する硫化水素警告情報の有無に関する情報である硫化水素の異常検知情報が保存される硫化水素警告カラム、ガス検知器が検知した一酸化炭素濃度が基準値より低いことを意味する一酸化炭素警告情報の有無に関する情報である一酸化炭素の異常検知情報が保存される一酸化炭素警告カラム、ガス検知器が検知した可燃性ガス濃度が基準値より低いことを意味する可燃性ガス警告情報の有無に関する情報である可燃性ガスの異常検知情報が保存される可燃性ガス警告カラム、ガス検知器が検知した温度及び湿度が基準値より低いことを意味する熱中症警告情報の有無に関する情報である温度及び湿度の異常検知情報が保存される熱中症警告カラムが、それぞれ設けられており、マンホールの位置情報とマンホールの過去情報とがマンホール情報テーブル46に関連付けて記憶される。こうすることにより、マンホールの位置情報とマンホールの過去情報とを関連付けて記憶することができるため、マンホールの位置を特定することにより、特定されたマンホールに関する情報を抽出することができる。
【0030】
制御手段50は、本発明のマンホール特定手段に相当する。この制御手段50は、図2に示すように、CPU51を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、記憶手段44からマンホール情報を抽出するマンホール情報抽出処理ルーチンを含む各種プログラムや、情報管理装置40を制御する各種制御プラグラムが記憶されたROM52と、ガス検知器30から送信された各種情報等を一時的に記憶するRAM53と、第二送受信手段42や記憶手段44等との間の各種信号の送受信を行うインタフェース54(以下、「I/F54」と言う。)がそれぞれバス55を介して電気的に接続されている。この制御手段50は、ガス検知器30から出力されたガス検知器30の現在位置情報に基づいてガス検知器30の近くに位置するマンホールに関する情報を抽出し、ガス検知器30に送信する。
【0031】
次に、ガス検知器30の近くに位置するマンホールに関する情報を抽出する際の動作について、制御手段50によって実行されるマンホール情報抽出処理ルーチンを一例に説明する。このマンホール情報抽出処理ルーチンは、ガス検知器30からガス検知器30の現在位置情報を受信した際に、繰り返し実行され、ガス検知器30に設けられた表示手段36にマンホールに関する情報を送信する。なお、ここで、図4は、マンホール情報抽出処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【0032】
ガス検知器30に設けられた図示しない電源ボタンが押下されると、図示しないバッテリーから電力がガス検知器30に供給される。ガス検知器30に供給された電力は位置情報取得手段34に供給され、衛星測位システム(GPS)を用いて、ガス検知器30の現在位置に関する緯度経度情報を位置情報取得手段34が取得する。また、ガス検知器30に供給された電力はガス検知手段32にも供給され、ガス検知手段32が酸素濃度、硫化水素濃度、一酸化炭素濃度、可燃性ガス濃度及び温度と湿度を測定し、ガスに関する情報を取得する。この現在位置情報及びガスに関する情報は、第一送受信手段38を介して情報管理装置40に送信される。
【0033】
情報管理装置40の制御手段50に設けられたCPU51は、ガス検知器30から現在位置情報及びガスに関する情報を受信すると(ステップS110)、現在位置情報及びガスに関する情報を一時的にRAM53に記憶する。続いて、RAM53に一時的に記憶された現在位置情報に含まれる緯度経度情報に相当する緯度経度情報が記憶手段44に記憶されているか否かを判定し(ステップS120)、記憶手段44に記憶されていないと判定した場合には、本ルーチンを終了する。具体的には、RAM53に一時的に記憶された緯度経度情報と同一又は所定の範囲内(例えば、プラスマイナス5の範囲内)に含まれる緯度経度情報がマンホール情報テーブル46の座標情報カラムに記憶されているか否かを判定し、座標情報カラムに該当する緯度経度情報がない場合に、記憶手段44に該当する緯度経度情報が記憶されていないと判定する。
【0034】
一方、CPU51が現在位置情報に含まれる座標情報に該当する座標情報が記憶手段44に記憶されていると判定した場合には、記憶手段44からマンホール情報を読み出す(ステップS130)。具体的には、マンホール情報テーブル46の座標カラムに該当する座標情報に対応する酸素警告情報、硫化水素警告情報、一酸化炭素警告情報、可燃性ガス警告情報及び熱中症警告情報が記憶されている場合には、それぞれの情報を異常検知情報として含むマンホール情報として読み出す。
【0035】
続いて、CPU51は、ステップS130で読み出したマンホール情報をガス検知器30に送信し(ステップS140)、本ルーチンを終了する。ガス検知器30に送信されたマンホール情報は、表示手段36によって表示されるため、使用者は、現在位置にあるマンホールに関する情報を得ることができる。
【0036】
次に、マンホールに関する情報を記憶手段44に記憶する際の動作、特に、マンホールの位置情報を記憶する際の動作について、説明する。マンホールの位置情報に関する情報は、例えば、地方自治体等から提供される地図データに含まれる座標情報を抽出し、記憶手段44に記憶する。このとき、地方自治体等から提供される地図データが、平面直角座標系で記憶されたデータである場合には、緯度経度座標系に変更して、記憶手段44に含まれるマンホール情報テーブル46の位置情報カラムに記憶する。平面直角座標系の場合には、基準点が複数存在するため、緯度経度座標系に変更することにより、日本全国いずれの場所の座標であっても、マンホールの座標を特定することができる。
【0037】
続いて、マンホール情報テーブル46の位置情報カラムに対応する過去情報カラムにマンホール情報を記憶する。具体的には、過去に同じマンホールで発生した事故に関する情報や、事故に至る可能性のある情報、ガス検知器30から送信された各種情報を記憶する。具体的には、ガス検知器30がガス検知を行った際に得られた、酸素、硫化水素、一酸化窒素、可燃性ガスの異常検知情報や測定値、温度及び湿度の異常検知情報や測定値、その他事故情報を記憶する。このようにマンホール情報テーブル46に、マンホールの位置座標とマンホール情報とを関連付けて記憶することにより、過去の情報を容易に参照することができ、事故を防止することができる。
【0038】
以上詳述した実施の形態のガス検知システム20によれば、ガス検知器30に設けられた位置情報取得手段34が取得した現在位置情報と情報管理装置40に設けられた記憶手段44に記憶された現在地情報に基づいてガス検知器30の近くに位置するマンホールを特定し、このマンホールに関するマンホール情報を記憶手段44から抽出し、ガス検知器30に設けられ表示手段36に表示する。こうすることにより、ガス検知器30の近くに位置するマンホールのマンホール情報を報知することで使用者に注意を促し、事故が発生する可能性を未然に低減することができる。
【0039】
また、ステップS120において、RAM53に一時的に記憶された緯度経度情報と同一又は所定の範囲内に含まれる緯度経度情報がマンホール情報テーブル46の座標情報カラムに記憶されているか否かを判定することにより、緯度経度情報に基づいてガス検知器30の近くのマンホールを特定し、このマンホールに関連付けられたマンホール情報を報知することで使用者の注意を促し、事故が発生する可能性を未然に低減することができる。
【0040】
更に、ガス検知器30には、表示手段36が設けられているため、表示手段36にマンホール情報を表示することでマンホール情報を使用者に伝え、使用者の注意をうながすことで、事故が発生する可能性を未然に低減することができる。
【0041】
更にまた、記憶手段44のマンホール情報テーブル46に記憶される情報に酸素警告情報、硫化水素警告情報、一酸化炭素警告情報、可燃性ガス警告情報が異常検知情報としてマンホールの座標情報と関連付けて記憶されているため、過去のガス検知においてガス濃度の異常が検知されたことを示す異常検知情報が含まれている場合には、異常を報知することで、使用者に注意を促し、事故が発生する可能性を未然に低減することができる。
【0042】
そして、この表示手段36には、ガス検知手段32が検出したガス等の濃度が所定の値以上又は以下の際に注意喚起情報が表示されるが、情報管理装置40から受信したマンホールに関する情報に異常検知情報が含まれている場合には、所定の値は第二の値に変更され、ガス検知手段32が検知したガス等の濃度が第二の値以上又は以下である場合に、使用者に対する注意喚起情報が表示される。過去に異常が検出された場合には、経験的に同一の異常が確認されることが多いため、警告の基準を所定の値よりも厳しい(濃度が低い)値とすることにより、使用者に注意を促し、事故が発生する可能性を未然に低減することができる。
【0043】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0044】
例えば、上述した実施の形態では、ガス検知手段32は、4種類のガス、温度及び湿度を検知する公知のガス検知センサであるものとしたが、ガスの検知が可能であればこれに限定されるものではなく、温度又は湿度を検知しないものであってもよいし、検知するガスの種類は4種類以上又は3種類未満であってもよい。いずれの場合であっても、上述した実施の形態と同様に、ガスを検知することができる。
【0045】
上述した実施の形態では、表示手段36は液晶ディスプレイであるものとしたが、情報を報知できるものであればこれに限定されるものではなく、例えば、有機ELディスプレイやLEDディスプレイであってもよいし、スピーカ等の報音手段であってもよい。また、WiFiやBlueTooth(登録商標)等の無線通信手段を介して種々のディスプレイや報音手段に情報を送信するものであってもよい。いずれの場合も、上述した実施の形態と同様に、各種情報を使用者に報知することができる。
【0046】
上述した実施の形態では、情報管理装置40は公知の計算機であるものとしたが、演算能力を有するものであればこれに限定されるものではなく、例えば、マイクロプロセッサや集積回路等であってもよい。いずれの場合も、上述した実施の形態と同様に、記憶手段44からマンホールに関する情報を抽出し、ガス検知器30の近くのマンホールの情報を使用者に報知することができる。
【0047】
上述した実施の形態では、記憶手段44は情報管理装置40に備えられるものとしたが、情報管理装置40と記憶手段44は情報の送受信が可能な状態であればこれに限定されるものではなく、例えば、有線又は無線で互いに接続されているものであってもよいし、電気通信ネットワーク10を介して接続されているもの(例えば、クラウドドライブ等)であってもよい。いずれの場合であっても、上述した実施の形態と同様に、各種情報を記憶し、抽出することができる。
【0048】
上述した実施の形態では、ステップS140を実行するものとしたが、ステップS140は省略してもよい。こうすることにより、ガス検知器30が異常を検知した場合のみ警告が報知されるため、使用者がマンホール情報を意識すること無く、事故の発生を未然に低減することができる。
【0049】
上述した実施の形態では、第一基準濃度として、労働安全衛生法等に定められた安全基準を示す濃度、例えば、酸素濃度が18%、硫化水素濃度が10ppm、一酸化炭素濃度が50ppm、感染性ガスが30%LELを用いるものとしたが、これらの濃度に限定されるものではなく、例えば、酸素濃度が20%、硫化水素濃度が5ppm、一酸化炭素濃度が10ppm、感染性ガスが5%LELとしてもよいし、安全性を基準とした種々の濃度としてもよい。こうすることにより、より安全な基準で、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【0050】
上述した実施の形態では、第二基準濃度として、例えば、酸素濃度が20%、硫化水素濃度が5ppm、一酸化炭素濃度が10ppm、感染性ガスが5%LELを用いるものとしたが、第一基準濃度よりも低いものであればこれらの濃度に限定されるものではなく、種々の濃度を用いることができる。こうすることにより、より安全な基準で、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
上述した実施の形態で示すように、ガス検知分野、特にガス検知器として利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
10…電気通信ネットワーク、20…ガス検知システム、30…ガス検知器、32…ガス検知手段、34…位置情報取得手段、36…表示手段、38…第一送受信手段、40…情報管理装置、42…第二送受信手段、44…記憶手段、46…マンホール情報テーブル、50…制御手段、51…CPU、52…ROM、53…RAM、54…インタフェース、55…バス。
図1
図2
図3
図4