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特開2024-175727ユニフォミティ推定方法およびユニフォミティ試験装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175727
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ユニフォミティ推定方法およびユニフォミティ試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 1/16 20060101AFI20241212BHJP
   G01M 17/02 20060101ALI20241212BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
G01M1/16
G01M17/02
B60C19/00 H
B60C19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093660
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000150729
【氏名又は名称】株式会社長浜製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永嶋 仁
(72)【発明者】
【氏名】萬代 倫之
【テーマコード(参考)】
2G021
3D131
【Fターム(参考)】
2G021AB01
2G021AC03
2G021AC19
2G021AF03
2G021AG06
2G021AK10
3D131LA21
3D131LA34
(57)【要約】
【課題】第2回転数におけるユニフォミティの測定結果に基づいて、第2回転数よりも大きい第1回転数におけるユニフォミティを高精度に推定できるユニフォミティ推定方法およびユニフォミティ試験装置を提供する。
【解決手段】ユニフォミティ試験装置の演算装置は、測定部が取得した中速時間領域波形データを、中速周波数領域波形データにフーリエ変換し、それを1次成分~7次成分に分解する(S3:解析工程)。演算装置は、分解後の1次成分~7次成分の振幅を、1次成分~7次成分のそれぞれについて個別に定められた補正用振幅比を用いて補正する(S4:補正工程)。演算装置は、補正後の1次成分~7次成分を合成して高速周波数領域波形データを作成し、作成した高速周波数領域波形データを逆フーリエ変換して、高速時間領域波形データを算出する(S5:成分合成工程、S6:逆フーリエ変換、S7:高速時間領域波形データ算出工程)。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転数よりも小さい第2回転数で回転しているタイヤまたはタイヤ付きホイールを測定して、当該タイヤまたは当該タイヤ付きホイールのユニフォミティの時間領域における波形データであって前記第2回転数に対応する第2回転数時間領域波形データを取得する第2回転数時間領域波形データ取得工程と、
取得した前記第2回転数時間領域波形データを、当該波形データの周波数領域のデータである第2回転数周波数領域波形データに変換して解析する解析工程と、
前記第2回転数周波数領域波形データに含まれていた1次成分~n次成分(n:4以上の予め定める自然数)の振幅を、1次成分~n次成分のそれぞれについて個別に定められた補正用振幅比であって補正前の前記第2回転数および補正後の前記第1回転数の双方に対応する補正用振幅比を乗じて前記第2回転数周波数領域波形データを補正する補正工程と、
補正後の1次成分~n次成分を合成して作成された第1回転数周波数領域波形データを時間領域に変換して、前記タイヤまたは前記タイヤ付きホイールのユニフォミティの時間領域における波形データであって前記第1回転数に対応する第1回転数時間領域波形データを算出する第1回転数時間領域波形データ算出工程とを含む、ユニフォミティ推定方法。
【請求項2】
前記タイヤと同じ種類の同種タイヤまたは前記タイヤ付きホイールと同じ種類の同種タイヤ付きホイールを前記第1回転数で回転させたときのユニフォミティの波形データを取得する第1回転数波形データ取得工程と、
前記同種タイヤまたは前記同種タイヤ付きホイールを前記第2回転数で回転させたときのユニフォミティの波形データを取得する第2回転数波形データ取得工程と、
第1回転数波形データ取得工程において取得した波形データ、および第2回転数波形データ取得工程において取得した波形データに基づいて、1次成分~n次成分のそれぞれについての振幅比であって前記第2回転数に対応する振幅に対する前記第1回転数に対応する振幅の比を演算する振幅比演算工程とをさらに含み、
1次成分~n次成分のそれぞれについての前記振幅比を、それぞれ、前記補正工程において1次成分~n次成分の前記補正用振幅比として用いる、請求項1に記載のユニフォミティ推定方法。
【請求項3】
前記振幅比演算工程は、1次成分~3次成分の前記補正用振幅比をいずれも1.0に固定し、4次成分~n次成分についての前記振幅比を変化させ、前記第2回転数波形データ取得工程において取得した波形データが前記第1回転数波形データ取得工程において取得した波形データに近似するときの4次成分~n次成分についての前記振幅比を、4次成分~n次成分についての前記補正用振幅比とする、請求項1または2に記載のユニフォミティ推定方法。
【請求項4】
前記第1回転数は、高速であり、
前記第2回転数は、中速である、請求項1または2に記載のユニフォミティ推定方法。
【請求項5】
タイヤまたはタイヤ付きホイールを保持して回転させる保持回転装置と、
前記保持回転装置によって第1回転数よりも小さい第2回転数で回転している前記タイヤまたは前記タイヤ付きホイールを測定して、当該タイヤまたは当該タイヤ付きホイールのユニフォミティの時間領域における波形データであって前記第2回転数に対応する第2回転数時間領域波形データを取得する測定部と、
前記測定部が取得した前記第2回転数時間領域波形データに基づいて、前記タイヤまたは前記タイヤ付きホイールのユニフォミティの時間領域における波形データであって前記第1回転数に対応する第1回転数時間領域波形データを演算する演算装置とを含み、
前記演算装置が、前記測定部が取得した前記第2回転数時間領域波形データを、当該波形データの周波数領域のデータである第2回転数周波数領域波形データに変換して解析する解析工程と、前記第2回転数周波数領域波形データに含まれていた1次成分~n次成分(n:4以上の予め定める自然数)の振幅を、1次成分~n次成分のそれぞれについて個別に定められた補正用振幅比であって補正前の前記第2回転数および補正後の前記第1回転数の双方に対応する補正用振幅比を乗じて前記第2回転数周波数領域波形データを補正する補正工程と、補正後の1次成分~n次成分を合成して作成された第1回転数周波数領域波形データを時間領域に変換して、前記タイヤまたは前記タイヤ付きホイールのユニフォミティの時間領域における波形データであって前記第1回転数に対応する第1回転数時間領域波形データを算出する第1回転数時間領域波形データ算出工程とを実行する、ユニフォミティ試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タイヤまたはホイール付タイヤのユニフォミティを推定する方法、およびタイヤまたはホイール付タイヤに対しユニフォミティ試験を行う試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤまたはタイヤ付きホイールに起因する車両振動を改善するために、タイヤ製造時等においてユニフォミティ試験が行われている。近年、高速(たとえば100km/h等)での自動車の走行における振動、騒音等が問題になっており、これらに、高速でのユニフォミティが強く関与していることが知られている。ユニフォミティ試験において高速のユニフォミティを測定するには長時間を要するし、試験装置の性能によっては高速のユニフォミティを測定できない場合もある。したがって、検査対象のすべてのタイヤまたはタイヤ付きホイールについて高速のユニフォミティを測定するのは困難である。すなわち、高速のユニフォミティについて、全数測定検査を行うことは困難である。一方、高速以外の速度でのユニフォミティ試験、つまり低速(たとえば10km/h以下)や中速(たとえば45km/h以上60km/h以下)でのユニフォミティ試験については、全数測定検査が行われる場合が多い。
【0003】
検査対象のタイヤまたはタイヤ付きホイールに対し、高速以外の速度の回転数でユニフォミティの測定を行い、その測定結果に基づいて、高速の回転数におけるユニフォミティを推定することが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7188010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
第2回転数(高速以外の速度)におけるユニフォミティの測定結果に基づいて、第1回転数(高速)におけるユニフォミティを、より一層高精度に推定することが望まれている。
【0006】
この発明の目的は、第2回転数におけるユニフォミティの測定結果に基づいて、第2回転数よりも大きい第1回転数におけるユニフォミティを高精度に推定できる、ユニフォミティ推定方法およびユニフォミティ試験装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一実施形態は、次のような特徴を有する、ユニフォミティ推定方法およびユニフォミティ試験装置を提供する。
【0008】
1.
第1回転数よりも小さい第2回転数で回転しているタイヤまたはタイヤ付きホイールを測定して、当該タイヤまたは当該タイヤ付きホイールのユニフォミティの時間領域における波形データであって前記第2回転数に対応する第2回転数時間領域波形データを取得する第2回転数時間領域波形データ取得工程と、
取得した前記第2回転数時間領域波形データを、当該波形データの周波数領域のデータである第2回転数周波数領域波形データに変換して解析する解析工程と、
前記第2回転数周波数領域波形データに含まれていた1次成分~n次成分(n:4以上の予め定める自然数)の振幅を、1次成分~n次成分のそれぞれについて個別に定められた補正用振幅比であって補正前の前記第2回転数および補正後の前記第1回転数の双方に対応する補正用振幅比を乗じて前記第2回転数周波数領域波形データを補正する補正工程と、
補正後の1次成分~n次成分を合成して作成された第1回転数周波数領域波形データを時間領域に変換して、前記タイヤまたは前記タイヤ付きホイールのユニフォミティの時間領域における波形データであって前記第1回転数に対応する第1回転数時間領域波形データを算出する第1回転数時間領域波形データ算出工程とを含む、ユニフォミティ推定方法。
【0009】
本件発明者は、タイヤまたはタイヤ付きホイールのユニフォミティ試験において、周波数領域における波形の1次成分~n次成分における各次成分の振幅が、被試験体であるタイヤまたはタイヤ付きホイールの回転数に依存していることを見出した。
【0010】
この構成によれば、タイヤまたはタイヤ付きホイールを測定して取得した第2回転数時間領域波形データを周波数領域に変換し、そのときの1次成分~n次成分の振幅のそれぞれを、個々の成分について定められた補正用振幅比を用いて補正する。そして、補正後の周波数領域における波形が合成されて、時間領域における第1回転数時間領域波形データが算出される。算出された第1回転数時間領域波形データに基づいて、タイヤまたはタイヤ付きホイールを第1回転数で回転させたときのユニフォミティが求められる。
【0011】
前述のように、周波数領域における波形の1次成分~n次成分における各次成分の振幅は、被試験体であるタイヤまたはタイヤ付きホイールの回転数に依存している。そのため、1次成分~n次成分の個々の補正用振幅比を、第2回転数から第1回転数への補正のために定められた補正用振幅比とすることにより、第2回転数時間領域波形データに基づいて、時間領域における第1回転数時間領域波形データを推定できる。
【0012】
これにより、第2回転数で回転しているタイヤまたはタイヤ付きホイールの測定に基づいて、第1回転数におけるユニフォミティを高精度に推定できる。
【0013】
2.
前記タイヤと同じ種類の同種タイヤまたは前記タイヤ付きホイールと同じ種類の同種タイヤ付きホイールを前記第1回転数で回転させたときのユニフォミティの波形データを取得する第1回転数波形データ取得工程と、
前記同種タイヤまたは前記同種タイヤ付きホイールを前記第2回転数で回転させたときのユニフォミティの波形データを取得する第2回転数波形データ取得工程と、
第1回転数波形データ取得工程において取得した波形データ、および第2回転数波形データ取得工程において取得した波形データに基づいて、1次成分~n次成分のそれぞれについての振幅比であって前記第2回転数に対応する振幅に対する前記第1回転数に対応する振幅の比を演算する振幅比演算工程とをさらに含み、
1次成分~n次成分のそれぞれについての前記振幅比を、それぞれ、前記補正工程において1次成分~n次成分の前記補正用振幅比として用いる、項1に記載のユニフォミティ推定方法。
【0014】
3.
前記振幅比演算工程は、1次成分~3次成分の前記補正用振幅比をいずれも1.0に固定し、4次成分~n次成分についての前記振幅比を変化させ、前記第2回転数波形データ取得工程において取得した波形データが前記第1回転数波形データ取得工程において取得した波形データに近似するときの4次成分~n次成分についての前記振幅比を、4次成分~n次成分についての前記補正用振幅比とする、項1または2に記載のユニフォミティ推定方法。
一般的に、第1回転数(たとえば高速)のユニフォミティと第2回転数(たとえば中速)のユニフォミティとの間で、1次成分~3次成分の振幅に差異がない。そのため、1次成分~3次成分に対応する補正用振幅比をいずれも1.0に固定する。パラメータの数を少なく抑えることができるので、4次成分~n次成分の各次成分に対応する補正用振幅比を高精度に演算することが可能である。高精度な補正用振幅比を用いて補正するので、第1回転数時間領域波形データをより高精度に推定できる。
【0015】
4.
前記第1回転数は、高速であり、
前記第2回転数は、中速である、項1~3に記載のユニフォミティ推定方法。
前記第1回転数は、高速であり、
前記第2回転数は、中速である、請求項1または2に記載のユニフォミティ推定方法。
【0016】
5.
タイヤまたはタイヤ付きホイールを保持して回転させる保持回転装置と、
前記保持回転装置によって第1回転数よりも小さい第2回転数で回転している前記タイヤまたは前記タイヤ付きホイールを測定して、当該タイヤまたは当該タイヤ付きホイールのユニフォミティの時間領域における波形データであって前記第2回転数に対応する第2回転数時間領域波形データを取得する測定部と、
前記測定部が取得した前記第2回転数時間領域波形データに基づいて、前記タイヤまたは前記タイヤ付きホイールのユニフォミティの時間領域における波形データであって前記第1回転数に対応する第1回転数時間領域波形データを演算する演算装置とを含み、
前記演算装置が、前記測定部が取得した前記第2回転数時間領域波形データを、当該波形データの周波数領域のデータである第2回転数周波数領域波形データに変換して解析する解析工程と、前記第2回転数周波数領域波形データに含まれていた1次成分~n次成分(n:4以上の予め定める自然数)の振幅を、1次成分~n次成分のそれぞれについて個別に定められた補正用振幅比であって補正前の前記第2回転数および補正後の前記第1回転数の双方に対応する補正用振幅比を乗じて前記第2回転数周波数領域波形データを補正する補正工程と、補正後の1次成分~n次成分を合成して作成された第1回転数周波数領域波形データを時間領域に変換して、前記タイヤまたは前記タイヤ付きホイールのユニフォミティの時間領域における波形データであって前記第1回転数に対応する第1回転数時間領域波形データを算出する第1回転数時間領域波形データ算出工程とを実行する、ユニフォミティ試験装置。
【0017】
6.
前記ユニフォミティが、RFV、LFVおよびTFVの少なくとも一つである、項1~4のいずれか一項に記載のユニフォミティ推定方法。
【0018】
7.
1次成分~3次成分の前記補正用振幅比はいずれも1.0であり、
4次成分~n次成分の少なくとも一つの前記補正用振幅比は、1.0以外の実数である、項1~4,6のいずれか一項に記載のユニフォミティ推定方法。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、この発明の一実施形態に係るユニフォミティ試験装置の概略的な構成を説明するための図である。
図2図2は、前記ユニフォミティ試験装置に含まれる保持フレームを説明するための平面図である。
図3図3は、図1に示す測定部の電気的構成を説明するためのブロック図である。
図4図4は、図1に示す演算装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
図5図5は、図4に示す補正用振幅比記憶部における第1補正用振幅比群の記憶内容を説明するための図である。
図6図6は、前記補正用振幅比記憶部における第2補正用振幅比群の記憶内容を説明するための図である。
図7図7は、前記補正用振幅比記憶部における第3補正用振幅比群の記憶内容を説明するための図である。
図8図8は、前記補正用振幅比記憶部における第4補正用振幅比群の記憶内容を説明するための図である。
図9図9は、前記補正用振幅比記憶部における第5補正用振幅比群の記憶内容を説明するための図である。
図10図10は、前記演算装置による演算内容を示す流れ図である。
図11図11は、補正前のユニフォミティの波形データの一例を示す図である。図(a)は、ユニフォミティ(RFV、LFV)の中速時間領域波形データの一例を示す図である。図(b)は、ユニフォミティ(RFV)の中速周波数領域波形データの一例を示す図である。
図12図12は、補正後のユニフォミティの波形データの一例を示す図である。図(a)は、ユニフォミティ(RFV、LFV)の高速時間領域波形データの一例を示す図である。図(b)は、ユニフォミティ(RFV)の高速時間領域波形データの一例を示す図である。
図13図13は、補正用振幅比の決定を説明するための流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下には、図面を参照して、この発明に係る実施形態について具体的に説明する。
【0021】
図1は、この発明の一実施形態に係るユニフォミティ試験装置1の概略的な構成を説明するための図である。図1において紙面に直交する方向を第1方向Xとし、図1の左右方向を第2方向Yとする。第1方向Xおよび第2方向Yは、ユニフォミティ試験装置1の水平方向に含まれる。図1の上下方向は、ユニフォミティ試験装置1の鉛直方向である。
【0022】
ユニフォミティ試験装置1は、タイヤ2、またはタイヤ2が装着されたホイール3(タイヤ付きホイール4)のユニフォミティ試験を行うための装置である。ユニフォミティ試験は、予め定める荷重を受けた状態でタイヤ2またはタイヤ付きホイール4を予め定める回転数で回転させ、このときのタイヤ2またはタイヤ付きホイール4が発生する力のユニフォミティ(uniformity、不均一性)を測定する試験である。ユニフォミティ試験装置1によるユニフォミティ試験では、タイヤ接地面におけるラジアルフォースバリエーション(Radial Force Variation:以下、単に「RFV」という)、ラテラルフォースバリエーション(Lateral Force Variation:以下、単に「LFV」という)およびトラクティブフォースバリエーション(Tractive Force Variation:以下、単に「TFV」という)という3つの値が主に検査される。RFVは、タイヤ2またはタイヤ付きホイール4の半径方向の力の変動の大きさである。LFVは、タイヤ2またはタイヤ付きホイール4の幅方向の力の変動の大きさである。TFVは、タイヤ2またはタイヤ付きホイール4の進行方向の力の変動の大きさである。
【0023】
ユニフォミティ試験装置1は、被試験体であるタイヤ2またはタイヤ付きホイール4(図1の例では、タイヤ付きホイール4)を回転可能に保持するための保持装置5と、保持装置5によって回転可能に保持されているタイヤ2またはタイヤ付きホイール4(図1の例では、タイヤ付きホイール4)に対し第2方向Yから接地荷重を与える負荷装置6と、保持装置5において回転しているタイヤ2またはタイヤ付きホイール4(図1の例では、タイヤ付きホイール4)のユニフォミティを測定する測定部7と、測定部7による測定結果に基づいて、被試験体であるタイヤ2またはタイヤ付きホイール4(図1の例では、タイヤ付きホイール4)のユニフォミティを演算する演算装置8とを備えている。
【0024】
保持装置5は、タイヤ付きホイール4を、水平方向に寝た状態で回転可能に支持する。保持装置5は、タイヤ付きホイール4を支持する支持装置9と、支持装置9から鉛直下方に延びる回転軸10とを備えている。回転軸10の中心軸線は、鉛直方向に延びるように設定された回転軸線Jである。回転軸10には、第1プーリ11が同軸状に外嵌されている。保持装置5は、マシンベースBに固定された第1基台12と、第1基台12の上端部に固定され、回転軸10を振動可能に保持する保持フレーム13とをさらに備えている。
【0025】
図2は、ユニフォミティ試験装置1に含まれる保持フレーム13を説明するための平面図である。
【0026】
図2を参照して、保持フレーム13は、回転軸10を鉛直方向に保った状態で保持する軸保持フレーム16と、第1ばね17を介して、軸保持フレーム16を、水平な第1方向Xへ振動可能に保持する第1保持フレーム18と、第2ばね19を介して、第1保持フレーム18を、第1方向Xと直交する水平な第2方向Yへ振動可能に保持する第2保持フレーム20とを含む。第2保持フレーム20は、第1基台12(図1参照)に固定されている。保持フレーム13は、たとえば特開2016-45048号公報等に開示された公知の構成である。
【0027】
回転軸10は、軸保持フレーム16に固定されている。第2保持フレーム20は、第1基台12(図1参照)に固定されている。そのため、回転軸10は、第1基台12に対し、第1方向Xおよび第2方向Yと、第2方向Yに延びる軸まわりのねじれ方向Nという合計3つの方向に振動可能である。したがって、回転軸10の上端に配置された支持装置9(図1参照)に取り付けられたタイヤ付きホイール4(図1参照)は、第1基台12に対し、第1方向X、第2方向Yおよびねじれ方向Nの合計3つの方向に振動可能である。
【0028】
図1を参照して、保持装置5は、マシンベースBに固定された駆動装置21をさらに備えている。駆動装置21は、第1モータ22を含む。第1モータ22の第1出力軸23は、鉛直方向に沿って上方へ突出している。第1出力軸23には、第2プーリ24が固定されていて、第2プーリ24と回転軸10の第1プーリ11とは、第1ベルト25によって連結されている。第1モータ22が駆動されて第1出力軸23が回転すると、第1出力軸23の回転が第1ベルト25を介して回転軸10に伝達される。これにより、回転軸10が回転するので、タイヤ付きホイール4は、予め定める回転速度で回転可能である。
【0029】
図1を参照して、負荷装置6は、保持装置5に対し第2方向Yに並んで配置されている。負荷装置6は、第2基台26と、一対のガイドレール27と、摺動機構28とを備えている。第2基台26は、マシンベースB上に設置された、第2方向Yに長手のブロックである。一対のガイドレール27は、第2基台26の上面に固定されている。一対のガイドレール27は、第1方向Xに並んだ状態で、第2方向Yに延びている。
【0030】
図1を参照して、摺動機構28は、ガイドレール27の上方で水平方向に延びる載置板29と、載置板29の下面に設けられてガイドレール27に上から係合する複数のスライド脚30とを備えている。摺動機構28は、載置板29に固定された送りナット31と、送りナット31に組み付けられた送りネジ32と、送りネジ32に連結された送り用モータ33とをさらに備えている。送り用モータ33は、取付部材34によって第2基台26に固定されている。送り用モータ33が駆動されると、送りネジ32が回転するので、送りナット31が、載置板29を伴って、ガイドレール27に沿って第2方向Yにスライドする。
【0031】
図1を参照して、載置板29には、鉛直方向に沿って延びるスピンドル35が固定されている。スピンドル35において載置板29から上方にはみ出た部分の上端部には、回転ドラム36が搭載されている。回転ドラム36は、スピンドル35を円中心とする円筒状であり、その外周面は、タイヤ付きホイール4に接地荷重をかけるための代用路面として機能する。回転ドラム36は、載置板29とともに第2方向Yにスライドする。
【0032】
図1を参照して、負荷装置6は、第2モータ37をさらに備えている。第2モータ37の第2出力軸38は、鉛直方向に沿って延びていて、第2出力軸38には、第3プーリ39が固定されている。スピンドル35にも第4プーリ40が固定されていて、第3プーリ39と第4プーリ40とは、第2ベルト41によって連結されている。第2モータ37が駆動されて第2出力軸38が回転すると、第2出力軸38の回転が第2ベルト41を介してスピンドル35に伝達される。これにより、スピンドル35が回転するので、回転ドラム36は、予め定める回転速度で回転する。第2モータ37、回転ドラム36および保持装置5によって、保持回転装置が構成されている。
【0033】
図1および図2を参照して、測定部7は、測定センサ70を含む。測定センサ70は、複数の力センサを含む。この実施形態では、測定センサ70は、第1センサ71、第2センサ72および第3センサ73を含む。第1センサ71、第2センサ72および第3センサ73は、回転軸10が第1基台12に対して振動可能な上記の3つの方向のいずれかの振動を独立して検出する。第1センサ71は、回転軸10の第1方向Xの振動を検出する。第2センサ72は、回転軸10のねじり振動(たとえば、第2方向Yに延びる軸まわりのねじれ方向Nの振動)を検出する。第3センサ73は、回転軸10の第2方向Yの振動を検出する。第1センサ71、第2センサ72および第3センサ73は、いずれもたとえば加速度センサである。第1センサ71、第2センサ72および第3センサ73は、保持フレーム13(より具体的には、第2保持フレーム20)に固定されている。
【0034】
図2を参照して、第1センサ71は、第1センサ71から第1方向Xに延びて軸保持フレーム16に接触した第1換振棒43を介して、軸保持フレーム16の第1方向Xの振動を検出する。第2センサ72に関連して、軸保持フレーム16には、軸保持フレーム16から第1方向Xに延び出た第1振動伝達ロッド44の一端部が固定されている。第2センサ72は、第2センサ72から鉛直上方に延びて第1振動伝達ロッド44の他端部に接触した第2換振棒45を介して、軸保持フレーム16のねじり振動を検出する。第3センサ73は、第3センサ73から第2方向Yに延びて第1保持フレーム18に接触した第3換振棒46を介して、第1保持フレーム18の第2方向Yの振動を検出する。第2センサ72によって検出された軸保持フレーム16のねじり振動と、第1センサ71によって検出された第1方向Xの振動とに基づいて、軸保持フレーム16の鉛直方向の振動を演算する。第1センサ71、第2センサ72および第3センサ73は、被試験体であるタイヤ付きホイール4に発生する反力に応じて、検出信号を出力する。第1センサ71、第2センサ72および第3センサ73は、たとえば特開2016-45048号公報等に開示された公知の構成である。
【0035】
演算装置8は、CPUやROMやRAM等を含むコンピュータによって構成されている。ユニフォミティ試験において、演算装置8は、第1センサ71、第2センサ72および第3センサ73からの検出出力に基づいて、タイヤ付きホイール4のユニフォミティ(RFV、LFVおよびTFV)を演算する。
【0036】
図3は、測定部7の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【0037】
測定部7は、複数のセンサ71,72,73と、複数のアンプフィルタと、複数のローパスフィルタと、アナログ‐デジタル変換器87と、パルスジェネレータ88とを備えている。複数のアンプフィルタは、第1アンプフィルタ81、第2アンプフィルタ82および第3アンプフィルタ83を含む。第1アンプフィルタ81、第2アンプフィルタ82および第3アンプフィルタ83には、それぞれ第1センサ71、第2センサ72および第3センサ73から検出信号が入力される。アンプフィルタ81,82,83に入力される検出信号には、回転軸10が第1基台12に対して振動可能な上記の3つの方向に加わる力の大きさを示すDC成分と、タイヤ付きホイール4の回転により変動する力のAC成分とが含まれる。各アンプフィルタ81,82,83は、入力される検出信号からDC成分を分離する。また、各アンプフィルタ81,82,83は、入力される検出信号に含まれるAC成分の成分信号を増幅する。
【0038】
複数のローパスフィルタは、第1ローパスフィルタ84、第2ローパスフィルタ85および第3ローパスフィルタ86を含む。第1ローパスフィルタ84、第2ローパスフィルタ85および第3ローパスフィルタ86には、それぞれ、第1アンプフィルタ81、第2アンプフィルタ82および第3アンプフィルタ83によって増幅された成分信号が入力される。各ローパスフィルタ84,85,86は、増幅後の成分信号のうち必要な周波数成分を取り出す。取り出された信号は、アナログ‐デジタル変換器87に与えられる。
【0039】
パルスジェネレータ(PG)88は、保持フレーム13に配置されている。パルスジェネレータ88によって発生させられたパルスは、アナログ‐デジタル変換器87に入力される。アナログ‐デジタル変換器87は、パルスジェネレータ88によって発生させられたパルスをサンプリングクロックとして、AD変換処理を行う。アナログ‐デジタル変換器87によってデジタル化された信号データ(デジタルデータ)は、演算装置8に与えられる。
【0040】
図4は、演算装置8の電気的構成を説明するためのブロック図である。図5は、補正用振幅比記憶部94における第1補正用振幅比群97Aの記憶内容を説明するための図である。図6は、補正用振幅比記憶部94における第2補正用振幅比群97Bの記憶内容を説明するための図である。図7は、補正用振幅比記憶部94における第3補正用振幅比群97Cの記憶内容を説明するための図である。図8は、補正用振幅比記憶部94における第4補正用振幅比群97Dの記憶内容を説明するための図である。図9は、補正用振幅比記憶部94における第5補正用振幅比群97Eの記憶内容を説明するための図である。
【0041】
図4に示すように、演算装置8は、たとえばマイクロコンピュータを用いて構成されている。演算装置8はCPU等のプロセッサからなる演算部91、固定メモリデバイス(図示しない)、ハードディスクドライブ等の記憶部92、および入出力ユニット(図示しない)を有している。記憶部92には、演算部91が実行するプログラム93や、タイヤ付きホイール4に対する測定処理の内容を規定するレシピが記憶されている。また、記憶部92には、後述する補正用振幅比を記憶するための補正用振幅比記憶部94が設けられている。補正用振幅比記憶部94は、電気的にデータを書き換え可能な不揮発性メモリからなる。
【0042】
演算装置8は、ユニフォミティ試験装置1の測定動作を司る制御装置として機能する。演算装置8は、第1モータ22、送り用モータ33、第2モータ37等の動作を制御する。演算装置8には、マウス、キーボード等の入力装置96が接続されている。入力装置96による入力内容が演算装置8に入力される。演算装置8には、モニタ等の表示装置95が接続されている。演算装置8は、表示装置95における表示動作を制御する。
【0043】
演算装置8には、測定部7のアナログ‐デジタル変換器87からの検出信号が入力される。演算装置8は、アナログ‐デジタル変換器87によってデジタル化されたデータに対し、ローパスフィルタ84,85,86のゲイン遅れの補正を行う。演算装置8は、入力された検出信号に基づいて、時間領域における波形データおよび周波数領域における波形データを取得する。
【0044】
被試験体であるタイヤ付きホイール4のユニフォミティは、回転数に依存している。中速(45km/h以上60km/h以下の予め定める速度)のユニフォミティおよび高速(80km/h以上の予め定める速度)のユニフォミティは、互いに異なる。また、同じ高速のユニフォミティであっても、80km/hのユニフォミティと、100km/hのユニフォミティと、120km/hのユニフォミティとは互いに異なる。
【0045】
被試験体(タイヤ2またはタイヤ付きホイール4)のユニフォミティの回転数に伴う変化は、保持装置5や被試験体等が有する複数の固有振動数が原因であると、一般的に考えられている。すなわち、振れ等による振動が、保持装置5や被試験体の固有周波数により回転数に応じて拡大することが原因であると考えられている。そのため、被試験体のユニフォミティの周波数領域の各次成分の振幅は、当該被試験体の回転数に依存している。すなわち、周波数領域における波形の1次成分~n次成分(n:4以上の予め定める自然数)における各次成分の振幅が、被試験体(タイヤ2またはタイヤ付きホイール4)の回転数に依存している。また、周波数領域における波形の1次成分~n次成分のうち4次成分以上における各次成分の振幅が、とくに、被試験体の回転数に依存している。
【0046】
ユニフォミティ試験装置1では、中速周波数領域波形データ101B(後述する図11(b)参照)のユニフォミティ(RFV、LFV)を1次成分~7次成分に分解し、分解した1次成分~7次成分の振幅を、個別に定められた補正用振幅比AR,AR,AR,AR,AR,AR,AR図5参照)を用いて補正している。そして、ユニフォミティ試験装置1は、中速時間領域波形データ101A(後述する図11(a)参照)に基づいて、高速時間領域波形データ102A(後述する図12(a)参照)を算出する。
【0047】
補正用振幅比記憶部94は、補正用振幅比群(補正用振幅比AR~AR)を複数記憶している。記憶されている複数の補正用振幅比群として、図4の例では、第1補正用振幅比群97A(図5参照)、第2補正用振幅比群97B(図6参照)、第3補正用振幅比群97C(図7参照)、第4補正用振幅比群97D(図8参照)、第5補正用振幅比群97E(図9参照)を例示している。個々の補正用振幅比群97A~97Eは、被試験体の種別(この実施形態では、タイヤ付きホイール4の種別)と、補正前の回転数(中速の回転数)および補正後の回転数(高速の回転数)との双方に対応している。図5図9に示すように、個々の補正用振幅比群97A~97Eは、第1次成分用の第1補正用振幅比ARと、第2次成分用の第2補正用振幅比ARと、第3次成分用の第3補正用振幅比ARと、第4次成分用の第4補正用振幅比ARと、第5次成分用の第5補正用振幅比ARと、第6次成分用の第6補正用振幅比ARと、第7次成分用の第7補正用振幅比ARとを含む。
【0048】
図5に示す第1補正用振幅比群97Aに含まれる補正用振幅比AR~ARは、被試験体の種別がタイヤ付きホイール4Aに対応し、かつ補正前の回転数および補正後の回転数がそれぞれ45km/hおよび120km/hに対応する補正用振幅比である。タイヤ付きホイール4Aは、特定メーカーの特定種類のタイヤと特定のホイール(たとえばスチール製)とを組み合わせたタイヤ付きホイールである。第1補正用振幅比群97Aに含まれる補正用振幅比AR,AR,AR,AR,AR,AR,ARは、たとえば、それぞれ、1.0、1.0、1.0、2.0、1.0、9.0および1.0である。
【0049】
図6に示す第2補正用振幅比群97Bに含まれる補正用振幅比AR~ARは、被試験体の種別がタイヤ付きホイール4Aに対応し、かつ補正前の回転数および補正後の回転数がそれぞれ45km/hおよび100km/hに対応する補正用振幅比である。第2補正用振幅比群97Bに含まれる補正用振幅比AR,AR,AR,AR,AR,AR,ARは、たとえば、それぞれ、1.0、1.0、1.0、1.0、6.0、8.0および1.0である。
【0050】
図7に示す第3補正用振幅比群97Cに含まれる補正用振幅比AR~ARは、被試験体の種別がタイヤ付きホイール4Bに対応し、かつ補正前の回転数および補正後の回転数がそれぞれ45km/hおよび120km/hに対応する補正用振幅比である。タイヤ付きホイール4Bは、特定メーカーの特定種類のタイヤと特定のホイール(たとえばアルミ製)とを組み合わせたタイヤ付きホイールである。タイヤ付きホイール4Bは、上記の特定種類のタイヤと特定のアルミホイールとを組み合わせたタイヤ付きホイールである。第3補正用振幅比群97Cに含まれる補正用振幅比AR,AR,AR,AR,AR,AR,ARは、たとえば、それぞれ、1.0、1.0、1.0、1.0、10.0、5.0および3.0である。
【0051】
図8に示す第4補正用振幅比群97Dに含まれる補正用振幅比AR~ARは、被試験体の種別がタイヤ付きホイール4Bに対応し、かつ補正前の回転数および補正後の回転数がそれぞれ45km/hおよび100km/hに対応する補正用振幅比である。第4補正用振幅比群97Dに含まれる補正用振幅比AR,AR,AR,AR,AR,AR,ARは、たとえば、それぞれ、1.0、1.0、1.0、2.0、10.0、1.0および2.0である。
【0052】
図9に示す第5補正用振幅比群97Eに含まれる補正用振幅比AR~ARは、被試験体の種別がタイヤ付きホイール4Bに対応し、かつ補正前の回転数および補正後の回転数がそれぞれ45km/hおよび80km/hに対応する補正用振幅比である。第5補正用振幅比群97Eに含まれる補正用振幅比AR,AR,AR,AR,AR,AR,ARは、たとえば、それぞれ、1.0、1.0、1.0、1.0、11.0、1.0、1.0である。
【0053】
複数の補正用振幅比群97A~97Eにおいて、補正用振幅比AR,AR,ARは、いずれも1.0である。補正用振幅比AR,AR,AR,ARの少なくとも一つは、1.0以外の実数であってもよい。補正用振幅比AR,AR,AR,ARの上記の少なくとも一つは、小数点以下の端数を含んでいてもよい。補正用振幅比AR,AR,AR,ARの上記の少なくとも一つは、1.0より大きくてもよいし、1.0より小さくてもよい。
【0054】
補正用振幅比AR~ARのすべてが、1.0であってもよい。
【0055】
図1を参照して、ユニフォミティ試験装置1において行われるユニフォミティ試験では、演算装置8は、第2モータ37を駆動して回転ドラム36を回転させ、かつ送り用モータ33を回転させて、回転ドラム36を、支持装置9に接近するように第2方向Yに沿ってスライドさせる。そして、回転ドラム36の外周面が、支持装置9に取り付けられたタイヤ付きホイール4のタイヤ2の外周面に第2方向Y(タイヤ2の半径方向でもある)から圧接する。そして、回転する回転ドラム36が圧接することによって、タイヤ付きホイール4が予め定める回転数で従動回転する。
【0056】
つまり、タイヤ付きホイール4は、タイヤ付きホイール4の半径方向の予め定める荷重(たとえば、約5000N~10000N)を受けながら定常回転する。この状態におけるタイヤ付きホイール4の振動が測定部7に検出されることによって、ユニフォミティ試験が実行される。タイヤ付きホイール4(より具体的には、スチール製のタイヤ付きホイール4A)を中速(たとえば45km/h)で回転させてユニフォミティ試験を実行する場合を例に挙げて、以下、説明する。
【0057】
測定部7は、中速で回転しているタイヤ付きホイール4のユニフォミティを測定する。具体的には、測定センサ70(第1センサ71、第2センサ72および第3センサ73)によって上記の3つの方向の振動が検出される。そして、測定センサ70からの検出信号が、演算装置8に与えられる。なお、回転ドラム36がタイヤ付きホイール4に与える第2方向Yの荷重は、送りナット31と載置板29との間に設けられたセンサ42によって検出される。
【0058】
図10は、演算装置8による演算内容を示す流れ図である。図11(a)は、ユニフォミティ(RFV、LFV)の中速時間領域波形データ101Aの一例を示す図である。図11(b)は、ユニフォミティ(RFV)の中速周波数領域波形データ101Bの一例を示す図である。図12(a)は、ユニフォミティ(RFV、LFV)の高速時間領域波形データ102Aの一例を示す図である。図12(b)は、ユニフォミティ(RFV)の高速周波数領域波形データ102Bの一例を示す図である。図11(b)および図12(b)では、図示の便宜上、LFVの図示を省略している。演算装置8による演算内容について、図1図3および図10図12を参照しながら説明する。
【0059】
被試験体であるタイヤ付きホイール4Aが中速(たとえば45km/h)で回転している状態で、演算装置8は、アナログ‐デジタル変換器87から与えられる信号データ(デジタル化されたデータ)に基づき、ユニフォミティ(RFV、LFV)の中速時間領域波形データ101A(図11(a)参照)を取得する(図10のS1:中速時間領域波形データ取得工程(第2回転数時間領域波形データ取得工程))。ユニフォミティ試験装置1の作業者の操作により、演算装置8は、ユニフォミティ(RFV、LFV)の中速時間領域波形データ101Aを表示装置95に表示してもよい。
【0060】
また、演算装置8は、取得したユニフォミティ(RFV、LFV)の中速時間領域波形データ101Aをフーリエ変換によって周波数領域に変換する。これにより、演算装置8は、ユニフォミティ(RFV、LFV)の中速周波数領域波形データ101B(図11(b)参照)を取得する(図10のS2:中速周波数領域波形データ取得工程)。ユニフォミティ試験装置1の作業者の操作により、演算装置8は、中速周波数領域波形データ101Bを表示装置95に表示してもよい。
【0061】
演算装置8は、取得したユニフォミティ(RFV、LFV)の中速周波数領域波形データ101Bを解析する。具体的には、演算装置8は、取得したユニフォミティ(RFV、LFV)の中速周波数領域波形データ101Bを1次成分~7次成分に解析(分解)し、それら1次成分~7次成分の振幅および位相を算出する(図10のS3:解析工程)。
【0062】
次いで、演算装置8は、算出した1次成分~7次成分の振幅に、それぞれ、個別に定められた補正用振幅比AR~AR図5図9参照)を乗じる。これにより、ユニフォミティ(RFV、LFV)の中速周波数領域波形データ101Bが、予め定める高速に対応する周波数領域の波形データに補正される(図10のS4:補正工程)。
【0063】
具体的には、図10のS4において、支持装置9によって支持されている被試験体の種別がタイヤ付きホイール4Aであり、かつ補正前の中速(第2回転数)および補正後の高速(第1回転数)がそれぞれ45km/hおよび120km/hである場合には、演算装置8は、補正用振幅比記憶部94から、45km/h→120km/hの補正用振幅比AR~AR図5参照)を読み出す。そして、演算装置8は、ユニフォミティ(RFV、LFV)の中速周波数領域波形データ101Bに含まれていた各次成分の振幅に、対応する補正用振幅比AR~ARを乗じる。中速周波数領域波形データ101Bに含まれていた1次成分の振幅、2次成分の振幅、3次成分の振幅、4次成分の振幅、5次成分の振幅、6次成分の振幅および7次成分の振幅に、それぞれ第1補正用振幅比AR図5の例では、1.0)、第2補正用振幅比AR図5の例では、1.0)、第3補正用振幅比AR図5の例では、1.0)、第4補正用振幅比AR図5の例では、2.0)、第5補正用振幅比AR図5の例では、1.0)、第6補正用振幅比AR図5の例では、9.0)および第7補正用振幅比AR図5の例では、1.0)が乗じられる。これにより、中速周波数領域波形データ101Bに含まれていた各次成分の振幅が変更される(図10のS4:補正工程)。
【0064】
次いで、演算装置8は、補正後の1次成分~7次成分を合成する(図10のS5:成分合成工程)。これにより、高速周波数領域波形データ102B(図12(b)参照)が作成される。
【0065】
次いで、演算装置8は、合成後の波形データを、逆フーリエ変換によって時間領域に変換する。これにより、ユニフォミティ(RFV、LFV)の高速周波数領域波形データ102B(図12(b)参照)を時間領域に変換した波形データが得られる(図10のS6:逆フーリエ変換)。
【0066】
これにより、ユニフォミティ(RFV、LFV)の高速時間領域波形データ102A(図12(a)参照)が算出される(図10のS7:高速時間領域波形データ算出工程(第1回転数時間領域波形データ算出工程))。
【0067】
その後、演算装置8は、算出された高速時間領域波形データ102Aに基づいて、ユニフォミティ(RFV、LFV)を算出する。算出されたユニフォミティ(RFV、LFV)は、表示装置95に表示される。
【0068】
中速(たとえば45km/h)で回転しているタイヤ付きホイール4のユニフォミティの測定完了により、ユニフォミティ試験が終了する。ユニフォミティ試験の終了後には、演算装置8は、送り用モータ33を制御して、回転ドラム36がタイヤ付きホイール4から離れるように回転ドラム36をスライドさせる。そのため、タイヤ付きホイール4は、荷重を受けずに回転する状態に切り換えられる。その後、第2モータ37の回転が停止する。
【0069】
その後、演算装置8は、保持装置5の第1モータ22を駆動し、第1モータ22をブレーキとして機能させる。これにより、タイヤ付きホイール4の回転が減速させられる。その後、タイヤ付きホイール4の回転が停止する。
【0070】
以上のように、この実施形態によれば、タイヤ付きホイール4を測定して取得した中速時間領域波形データ101Aを周波数領域に変換し、そのときの1次成分~7次成分の振幅のそれぞれを、個々の成分について定められた補正用振幅比AR~ARを用いて補正する。そして、補正後の1次成分~7次成分の波形を合成して、高速周波数領域波形データ102Bを演算する。そして、これに基づき、高速時間領域波形データ102Aを算出する。算出された高速時間領域波形データ102Aに基づいて、タイヤ2またはタイヤ付きホイール4を高速で回転させたときのユニフォミティ(RFVおよびLFV)が算出される。
【0071】
前述のように、周波数領域における波形データの1次成分~n次成分における各次成分の振幅は、被試験体であるタイヤ付きホイール4の回転数に依存している。そのため、中速から高速への補正のために定められた補正用振幅比AR~ARとすることにより、中速時間領域波形データ101Aに基づいて、高速時間領域波形データ102Aを推定できる。
【0072】
これにより、ユニフォミティ試験装置1による、中速で回転しているタイヤ付きホイール4の測定に基づいて、高速におけるユニフォミティ(RFVおよびLFV)を高精度に推定できる。
【0073】
図13は、補正用振幅比AR~ARの決定を説明するための流れ図である。補正用振幅比AR~ARの決定および設定は、次のように行う。以下、補正用振幅比群97A(図5参照)に含まれる補正用振幅比AR~ARを決定する場合を例に挙げて説明する。むろん、図13に示す補正用振幅比AR~ARの決定は、ユニフォミティ試験の開始の前に実行される。
【0074】
まず、作業者は、被試験体であるタイヤ2またはタイヤ付きホイール4と同じ種類の同種タイヤまたは同種タイヤ付きホイール(この例では、タイヤ付きホイール4Aと同種の同種タイヤ付きホイール)を45km/hで回転させたときのRFVおよびLFVの時間領域における波形データを取得する(S11:中速波形データ取得工程(第2回転数波形データ取得工程))。中速波形データ取得工程(S11)は、たとえばユニフォミティ試験装置1を用いた実験により行われる。
【0075】
次に、作業者は、同種タイヤまたは同種タイヤ付きホイール(この例では、タイヤ付きホイール4Aと同種の同種タイヤ付きホイール)を120km/h(高速)で回転させたときのRFVおよびLFVの時間領域の波形データを取得する(S12:高速波形データ取得工程(第1回転数波形データ取得工程))。高速波形データ取得工程(S12)は、たとえばユニフォミティ試験装置1を用いた実験により行われる。ユニフォミティ試験装置1において同種タイヤ付きホイールを高速で回転させることが難しい場合には、たとえば、タイヤメーカー等から公表されている、当該タイヤ付きホイールの時間領域の120km/h(高速)における波形データを取得するようにしてもよい。
【0076】
そして、作業者は、計算装置を用いて、中速波形データ取得工程(S11)で得られた時間領域の波形データと高速波形データ取得工程(S12)で得られた時間領域の波形データとを計算装置を用いて、補正用振幅比AR~ARを演算する(S13:振幅比演算工程)。
【0077】
具体的には、中速波形データ取得工程(S11)で得られた波形データをフーリエ変換して1次成分~7次成分に分解する。分解した1次成分~7次成分のそれぞれに、振幅比を乗じ、その振幅比を変化させる。そして、中速波形データ取得工程(S11)で得られた波形データが高速波形データ取得工程(S12)で得られた波形データに近似するときの1次成分~7次成分の振幅比を、それぞれ1次成分~7次成分の補正用振幅比(補正用振幅比AR~AR)とする。
【0078】
このとき、1次成分~7次成分の振幅比のうち4次成分~7次成分の振幅比のみを変化させる。そして、演算装置8は、4次成分~7次成分に振幅比を乗じて得られたRFVおよびLFVの波形データが、それぞれ高速波形データ取得工程(S12)で得られたRFVおよびLFVの波形データに近似するように、補正用振幅比AR,AR,AR,ARの値を算出する。より具体的には、補正用振幅比AR,AR,AR,ARの値を、0から12.0までの範囲で、予め定める単位(たとえば0.5単位)で総当たりで変更させ、最適な補正用振幅比AR,AR,AR,ARの値を算出する。これにより、補正用振幅比AR,AR,AR,ARを、高精度に得ることができる。
【0079】
そして、演算結果である補正用振幅比AR,AR,AR,ARが、補正用振幅比群97Aとして、補正用振幅比記憶部94に記憶される。
【0080】
1次成分~3次成分に対応する補正用振幅比AR,AR,ARをいずれも1.0に固定することにより、パラメータの数を4つに抑えることができるので、4次成分~7次成分に対応する補正用振幅比AR,AR,AR,ARを高精度に演算することが可能である。高精度な補正用振幅比AR,AR,AR,ARを用いて補正するので、ユニフォミティ(RFVおよびLFV)の高速時間領域波形データ102Aをより高精度に推定できる。
【0081】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、他の形態で実施することもできる。
【0082】
演算装置8によって算出するユニフォミティとしてRFVおよびLFVを例に挙げて説明したが、このユニフォミティにTFVが含まれていてもよい。このとき、補正用振幅比AR~AR(補正用振幅比AR~AR)の値は、補正用振幅比を乗じて得られたRFV、LFVおよびTFVの波形データがそれぞれ高速波形データ取得工程(S12)で得られたRFV、LFVおよびTFVの波形データに近似するときの、補正用振幅比AR,AR,AR,ARの値を算出してもよい。
【0083】
また、前述の説明では、時間領域と周波数領域との変換に、フーリエ変換(逆フーリエ変換)を用いたが、これに代えてウェーブレット変換(逆ウェーブレット変換)を用いてもよい。
【0084】
また、測定対象の被試験体が、タイヤ付きホイール4でなく、タイヤ2であってもよい。
【0085】
周波数領域のデータに基づいて分解した1次成分~7次成分に補正用振幅比を乗じて補正するとして説明したが、成分の次数の上限は、4次~6次のいずれでもよいし、8次以上であってもよい。
【0086】
その他、特許請求の範囲内において、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 :ユニフォミティ試験装置
2 :タイヤ
4 :タイヤ付きホイール
5 :保持装置(保持回転装置)
7 :測定部
8 :演算装置
36 :回転ドラム(保持回転装置)
37 :第2モータ(保持回転装置)
71 :第1センサ(センサ)
72 :第2センサ(センサ)
73 :第3センサ(センサ)
84 :第1ローパスフィルタ(ローパスフィルタ)
85 :第2ローパスフィルタ(ローパスフィルタ)
86 :第3ローパスフィルタ(ローパスフィルタ)
101A :中速時間領域波形データ(第2回転数時間領域波形データ)
101B :中速周波数領域波形データ(第2回転数周波数領域波形データ)
102A :高速時間領域波形データ(第1回転数時間領域波形データ)
102B :高速周波数領域波形データ(第1回転数周波数領域波形データ)
AR :第1補正用振幅比(補正用振幅比)
AR :第2補正用振幅比(補正用振幅比)
AR :第3補正用振幅比(補正用振幅比)
AR :第4補正用振幅比(補正用振幅比)
AR :第5補正用振幅比(補正用振幅比)
AR :第6補正用振幅比(補正用振幅比)
AR :第7補正用振幅比(補正用振幅比)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13