(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175730
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】扁平形電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/533 20210101AFI20241212BHJP
H01M 50/528 20210101ALI20241212BHJP
H01M 50/536 20210101ALI20241212BHJP
【FI】
H01M50/533
H01M50/528
H01M50/536
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093668
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100194777
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 憲治
(72)【発明者】
【氏名】北川 瑛久
(72)【発明者】
【氏名】久語 哲平
【テーマコード(参考)】
5H043
【Fターム(参考)】
5H043AA19
5H043BA19
5H043CA07
5H043CA13
5H043EA13
5H043HA06E
5H043JA02E
5H043JA12E
5H043JA13E
5H043KA01E
5H043LA03E
5H043LA11E
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡易な形状の環状集電体を用いながら、効果的に集電することができる扁平形電池を提供する。
【解決手段】扁平形電池1は、底部21を有する外装缶2と、平面部31を有する外装缶3と、電極体4と、2つの環状集電体5とを備える。2つの環状集電体5は各々、底部21及び電極体4の間、並びに、平面部31及び電極体4の間に配置される。2つの環状集電体5の一部は、厚み方向に電極体4に埋設されている。また、環状集電体5は、平面視において、電極体4の直径D1に対して40%~85%の外径D2と30%~75%の内径D3とを有している。このように、電極体4の直径D1、環状集電体5の外径D2及び内径D3の関係を適切に設定することにより、簡易な形状の環状集電体を用いた場合であっても、効果的に集電することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部を有する外装缶と、
平面部を有する封口缶と、
前記外装缶と前記封口缶との間に収容される電極体と、
前記底部及び前記電極体の間、並びに、前記平面部及び前記電極体の間のいずれか一方に配置される環状集電体とを備え、
前記環状集電体の一部は、前記環状集電体の厚み方向に前記電極体の主面に埋設されており、
前記環状集電体は、平面視において、前記環状集電体の一部が埋設される前記電極体の主面の直径に対して40%~85%の外径と30%~75%の内径とを有する、扁平形電池。
【請求項2】
請求項1に記載の扁平形電池であって、
前記環状集電体は、65%以上の開口率を有する、扁平形電池。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の扁平形電池であって、
前記環状集電体の前記電極体の主面に埋設される深さは、50μm以上である、扁平形電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極体を収容した扁平形電池に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、扁平形電池は、負極、正極並びに正極及び負極の間に配置されたセパレータを有する電極体と、非水電解液とを、外装缶及び封口缶からなるケースの内部に収容した構造をしている。このような扁平形電池には、外装缶と電極体との間、或いは、封口缶と電極体との間に金属製薄板からなる集電体が配置されている。
【0003】
特開2004-186073号公報(特許文献1)は、扁平形非水電解質二次電池を開示している。扁平形非水電解質二次電池は、正負極ケースの内部に電極群を有し、かつ、正極ケースまたは負極ケースと電極群との間に金属製薄板を有する。金属製薄板は、厚さ方向に貫通口を有し、10%~60%空隙率を有する。金属製薄板は、例えば、菱形網目形状を有する。これにより、扁平形非水電解質二次電池は、電池内部抵抗を低減かつ安定化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の扁平形非水電解質二次電池において、菱形網目形状を有する金属製薄板は、網目形状に加工する際に網目の隅部等にバリを生じさせる場合がある。このバリを有する金属製薄板を扁平形非水電解質二次電池の正負極の内部に配置すると、バリが脱落して電極群の内部に入り込んでマイクロショートを生じさせ、その結果、異常な電圧低下を引き起こすおそれがあった。
【0006】
本開示は、加工時にバリを生じさせない簡易な形状の集電体を用いながら、効果的に集電することができる扁平形電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示は次のように構成した。すなわち、本開示に係る扁平形電池は、底部を有する外装缶と、平面部を有する封口缶と、外装缶と封口缶との間に収容される電極体と、底部及び電極体の間、並びに、平面部及び電極体の間のいずれか一方に配置される環状集電体とを備えてよい。環状集電体の一部は、環状集電体の厚み方向に電極体の主面に埋設されてよい。環状集電体は、平面視において、環状集電体の一部が埋設される電極体の主面の直径に対して40%~85%の外径と30%~75%の内径とを有してよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示の扁平形電池によれば、簡易な形状の集電体を用いながら、効果的に集電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示に係る第1実施形態の扁平形電池を示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す電極体及び環状集電体の平面図である。
【
図6】
図6は、本開示に係る第2実施形態の扁平形電池を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者らは、上述した集電体の加工時に発生するバリを抑制するために、集電体を簡易な形状である環状、すなわち、リング状に形成することを考えた。ただし、簡易な形状の環状集電体は、菱形網目状等を有する集電体に比べて集電面積が減少するため、集電効率は低下する。本発明者らは、鋭意検討の結果、環状集電体の一部を電極体に埋設させ、かつ、平面視における電極体の直径、並びに、環状集電体の外径及び内径の関係を適切に設定すれば、効果的に集電することができることを見出した。本発明者らは、このような知見に基づき本発明を完成させた。
【0011】
(構成1)
本開示の実施形態に係る扁平形電池は、底部を有する外装缶と、平面部を有する封口缶と、外装缶と封口缶との間に収容される電極体と、底部及び電極体の間、並びに、平面部及び電極体の間のいずれか一方に配置される環状集電体とを備えてよい。環状集電体の一部は、環状集電体の厚み方向に電極体の主面に埋設されてよい。環状集電体は、平面視において、環状集電体が埋設される電極体の主面の直径に対して40%~85%の外径と30%~75%の内径とを有してよい。
【0012】
このように、簡易な形状の環状集電体の一部を電極体に埋設させ、かつ、平面視における電極体の直径に対する環状集電体の内径及び外径を適切に設定したことにより、効果的に集電することができる。
【0013】
(構成2)
構成1の扁平形電池において、環状集電体は、65%以上の開口率を有してよい。これにより、環状集電体の加工時にバリの発生を抑制することができ、また、より効果的に集電することができる。
【0014】
(構成3)
構成1又は2の扁平形電池において、環状集電体の電極体の主面に埋設される深さは、50μm以上であってよい。これにより、さらに効果的に集電することができる。
【0015】
(第1実施形態)
以下、本開示に係る第1実施形態の扁平形電池1について、
図1~2を用いて具体的に説明する。なお、図中同一及び相当する構成については同一の符号を付し、同じ説明を繰り返さない。なお、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。
【0016】
図1に示すように、扁平形電池1は、外装缶2、封口缶3、電極体4、環状集電体5及びガスケット6を有する。外装缶2、封口缶3及びガスケット6は、扁平形電池1のケースである。電極体4及び環状集電体5は、ケースに収容されている。本第1実施形態において、扁平形電池1は、リチウムイオン二次電池である。
【0017】
外装缶2は、平面視円形状の底部21と、底部21の外周から連続して形成される円筒状の周壁部22とを備えている。周壁部22は、縦断面視で、底部21に対して略垂直に延びるように設けられている。外装缶2は、ステンレス、ニッケル及び鉄等の金属材料によって形成されている。
【0018】
封口缶3は、平面視円形状の平面部31と、平面部31の外周から連続して形成される円筒状の周壁部32とを備える。封口缶3の開口は、外装缶2の開口と対向する。封口缶3は、ステンレスなどの金属材料によって形成されている。
【0019】
外装缶2と封口缶3とは、電極体4、図示しない非水電解液及び環状集電体5を収容したのち、外装缶2の周壁部22と封口缶3の周壁部32との間にガスケット6を介してカシメられる。すなわち、外装缶2と封口缶3とは、外装缶2と封口缶3の互いの開口を対向させ、外装缶2の周壁部22の内側に封口缶3の周壁部32を挿入したのち、周壁部22と周壁部32との間にガスケット6を介してカシメられる。このようにして電極体4を収容するための扁平形電池1の内部空間が形成される。
【0020】
電極体4は、正極41と負極42とを交互に複数積層して形成される。正極41は、袋状のセパレータ43に収容されている。正極41と負極42との積層数は、所望する電池容量によって決定される。したがって、これらの積層数は、図示のものに限られない。なお、複数の負極42のうち、外装缶2の底部21の内面に最も近い負極42と封口缶3の平面部31の内面に最も近い負極42は各々、一方の面にのみ負極活物質層が設けられており、封口缶3の平面部31の内面に最も近い負極42は、平面部31に接触している。また、外装缶2の底部21の内面に最も近い負極42と外装缶2の底部21との間には、絶縁シート44が設けられている。絶縁シート44は、外装缶2の底部21の内面に最も近い負極42と外装缶2の底部21とを絶縁している。
【0021】
扁平形電池1の内部空間には、さらに、正極リード411と負極リード421とが収容されている。図示では省略しているが、正極リード411及び負極リード421は、複数の正極41及び負極42の各々から延びるリード線の束である。
【0022】
正極リード411は、各々の正極41の周端部から連続して延びている。複数の正極リード411は、互いに束ねられて外装缶2の底部21に向かって折り曲げられている。束ねられた正極リード411は、絶縁シート44と環状集電体5との間に配置される正極集電箔412に接続される。このように、正極41は、正極リード411及び正極集電箔412を介して外装缶2に接続される。したがって、外装缶2は、正極缶として機能する。なお、正極集電箔412は、アルミニウム又はアルミニウム合金等の金属箔などである。
【0023】
負極リード421は、各々の負極42の周端部から連続して延びている。各々の負極リード421は、封口缶3の平面部31に最も近い負極42と環状集電体5との間に配置された負極集電箔422に接続される。このように、負極42は、負極リード421及び負極集電箔422を介して封口缶3に接続される。したがって、封口缶3は、負極缶として機能する。なお、負極集電箔422は、銅又はニッケル等の金属箔などである。
【0024】
正極41は各々、正極活物質層を含む。正極活物質層は、例えば、コバルト酸リチウム等の正極活物質とバインダや導電助剤等を圧縮成形した層である。負極42は各々、負極活物質層を含む。負極活物質層は、例えば、黒鉛等の負極活物質とバインダや導電助剤等を圧縮成形した層である。
【0025】
袋状のセパレータ43は各々、例えば、絶縁性に優れたポリエチレン製の微多孔性フィルム等である。これにより、セパレータ43は、リチウムイオンを透過させることができる。
【0026】
環状集電体5は、外装缶2の底部21及び電極体4の間、或いは、封口缶3の平面部31及び電極体4の間のいずれか一方に配置される。本実施形態において、環状集電体5は、外装缶2の底部21及び電極体4の間、並びに、封口缶3の平面部31及び電極体4の間の両方に配置されている。環状集電体5は、平面視において中央に貫通する開口を有する簡易な形状のリング体である。このように、環状集電体5は、環状の簡易な形状を有するため、環状集電体5の加工時にバリの発生を抑制することができる。これにより、バリが脱落することによる異常な電圧低下を抑制することができる。
【0027】
図2に示すように、外装缶2の環状集電体5は、その一部が環状集電体5の厚み方向において正極集電箔412を介して絶縁シート44に埋設されている。すなわち、外装缶2の底部21と電極体4との間に配置された環状集電体5の一部は、電極体4に埋設されている。また、
図3に示すように、封口缶3の平面部31と電極体4との間に配置された環状集電体5は、その一部が環状集電体5の厚み方向において負極集電箔422を介して平面部31に最も近い負極42に埋設される。すなわち、封口缶3の平面部31と電極体4との間に配置された環状集電体5の一部は、電極体4に埋設されている。このように環状集電体5の一部を電極体4に埋設することにより、集電面積が増加する。これにより、効果的に集電することができる。なお、底部21と電極体4との間に配置された環状集電体5が電極体4に埋設される深さd1、及び、平面部31と電極体4との間に配置された環状集電体5が電極体に4に埋設される深さd2については後述する。
【0028】
また、
図4に示すように、環状集電体5は、平面視において、電極体4の直径D1に対して40%~85%の外径D2と、30%~75%の内径D3とを有する。平面視における電極体4の直径D1は、電極体4の主面の直径である。すなわち、底部21と電極体4との間に配置された環状集電体5において、電極体4の直径D1は、底部21に対向する電極体4の一方の主面の直径である。平面部31と電極体4との間に配置された環状集電体5において、電極体4の直径D1は、平面部31に対応する電極体4の他方の主面の直径である。これにより、効果的に集電することができる。効果的な集電という観点から、外径D2は、電極体4の直径D1に対して40%以上、好ましくは45%以上、より好ましくは50%以上とするのがよく、85%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは75%以下とするのがよい。また、内径D3は、電極体4の直径D1に対して30%以上、好ましくは35%以上、より好ましくは40%以上とするのがよく、75%以下、好ましくは70%以下、より好ましくは65%以下とするのがよい。なお、電極体4は、
図4に示す平面視において、正極リード411及び負極リード421(
図1を参照。)をケース内に収容するために円形状の一部を直線状に切欠いた形状をしている。電極体4の直径D1は、当該円形状の直径と言うことができる。
【0029】
このように、扁平形電池1によれば、環状集電体5の一部を電極体4に埋設させ、かつ、平面視における電極体の直径D1、環状集電体5の外径D2及び内径D3の関係を適切に設定したことにより、簡易な形状の環状集電体5を用いながら、効果的に集電することができる。
【0030】
図5に示すように、環状集電体5は、厚み方向に貫通した開口51を有する。環状集電体5は、平面視において65%以上の開口率を有する。これにより、環状集電体5は、その加工時にバリの発生を抑制しながら、より効果的に集電することができる。開口率は、環状集電体5の加工時にバリの発生を抑制するという観点から、65%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上とするのがよく、環状集電体5がある程度の幅を有し、より効果的に集電するという観点から、90%以下、好ましくは、85%以下、より好ましくは80%以下とするのがよい。
開口率Rは、以下の式により算出される。
R=A1/(A1+A2)×100
式において、A1は開口51の平面視における開口面積を示し、A2は平面視における環状集電体5の面積を示す。
【0031】
また、
図2に示すように、外装缶2の底部21側に配置された環状集電体5は、その一部が電極体4(正極集電箔412及び絶縁シート44)に埋設された深さd1を有する。深さd1は、50μm以上である。これにより、環状集電体5は、さらに効果的に集電することができる。なお、効果的な集電という観点から、深さd1は、50μm以上、好ましくは55μm以上、より好ましくは60μm以上とするのがよい。なお、深さd1の上限は、特に限定されるものではないが、環状集電体5の厚みに応じて環状集電体5の一部が電極体4の一方の主面から突出するように決定されればよい。例えば、深さd1は、80μm以下とするのがよい。
【0032】
環状集電体5が埋設される深さd1は、以下のように測定することができる。扁平形電池1を組み立てて初回の充放電をする。その後、扁平形電池1を分解し、環状集電体5を電極体4から取り除く。その際、電極体4の主面には環状集電体5を取り除いた形跡である溝状の凹部が形成されている。そして、凹部をワンショット3D形状測定機(株式会社キーエンス製、VRシリーズ型番VR3100)を用いて観察し、開口面、すなわち、開口端部を結んだ仮想線から垂直方向に凹部の最底部までの距離を計測する。このように計測された距離を深さd1とすることができる。
【0033】
図3に示すように、封口缶3の平面部31側に配置された環状集電体5は、その一部が電極体4(負極集電箔422及び負極42)に埋設された深さd2を有する。深さd2及び深さd2の測定方法は、上述の深さd1と同様であるため、具体的な説明は省略する。
【0034】
ガスケット6は、ポリプロピレン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂及びPFA樹脂などの水分低透過性樹脂によって形成されている。ガスケット6は、外装缶2の周壁部22の内周面に沿う筒状に形成され、外装缶2の周壁部22と封口缶3の周壁部32との間に配置されている。ガスケット6は、外装缶2と封口缶3とを絶縁できれば、特に限定されるものではないが、例えばポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン樹脂のほか、ポリフェニレンエーテル(PEE)、ポリスルフォン(PSF)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの樹脂や、あるいはテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)などのフッ素樹脂によって構成することができる。特に、PPのほか、水分透過性や耐熱性の点から、ポリフェニレンサルファイド樹脂、あるいはPFA樹脂などのフッ素樹脂が好ましく用いられる。
【0035】
次に、第2実施形態の扁平形電池1について、
図6を用いて具体的に説明する。なお、第1実施形態の扁平形電池1と同じ構成については説明を省略し、基本的には第1実施形態の扁平形電池1と異なる構成について具体的に説明する。第2実施形態の扁平形電池1は、全固体二次電池である。
【0036】
扁平形電池1は、外装缶2と封口缶3との間に収容された電極体4を有する。
【0037】
電極体4は、外装缶2側に配置された正極41と、封口缶3側に配置された負極42と、正極41及び負極42の間に配置された隔離層(固体電解質層)45とを有する。すなわち、電極体4は、正極41の層と、負極42の層と、隔離層45とを積層して形成される。
【0038】
正極41は、正極活物質として、コバルト酸リチウムと、硫化物系固体電解質と、導電助剤であるグラフェンとを質量比で65:30:5の割合で含有した正極合剤を円柱形状に成形した正極ペレットである。なお、正極41の正極活物質は、正極層として機能することができれば、特に限定されるものではなく、例えば、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、オリビン型複合酸化物等であってもよく、これらを適宜混合したものであってもよい。
【0039】
負極42は、リチウムイオン二次電池に用いられる負極活物質として、LTO(Li4Ti5O12、チタン酸リチウム)と、硫化物系固体電解質と、グラフェンとを重量比で50:40:10の割合で含有した負極合剤を円柱形状に成形した負極ペレットである。なお、負極42の負極活物質は、負極層として機能することができれば、特に限定されるものではなく、例えば、金属リチウム、リチウム合金のほか、黒鉛、低結晶カーボンなどの炭素材料や、SiOなどの酸化物等であってもよく、これらを適宜混合したものであってもよい。他の構成材や割合についても、特に限定されるものではない。
【0040】
隔離層(固体電解質層)45は、硫化物系固体電解質を含む。隔離層45は、円柱形状に成形されている。なお、正極41、負極42及び隔離層45に含まれる固体電解質は、特に限定はされないが、イオン伝導性の点から硫化物系固体電解質、特にアルジロダイト型の硫化物系固体電解質が好ましく用いられる。硫化物系固体電解質を用いる場合には、正極活物質との反応を防ぐために、正極活物質の表面をニオブ酸化物などのリチウムイオン伝導性材料で被覆することが好ましい。また、隔離層45、正極41及び負極42に含まれる固体電解質は、水素化物系固体電解質や酸化物系固体電解質等であってもよい。
【0041】
環状集電体5は、外装缶2の底部21及び電極体4の正極41の間、或いは、封口缶3の平面部31及び電極体4の負極42の間のいずれか一方に配置される。本実施形態において、環状集電体5は、外装缶2の底部21及び電極体4の正極41の間、並びに、封口缶3の平面部31及び電極体4の負極42の間の両方に配置されている。
【0042】
外装缶2側に配置された環状集電体5の一部は、正極41の主面、すなわち、外装缶2の底部21に対向する電極体4の一方の主面に埋設される。封口缶3側に配置された環状集電体5の一部は、負極42の主面、すなわち、封口缶3の平面部31に対向する電極体4の他方の主面に埋設される。環状集電体5の深さd1及びd2、並びに、深さの測定方法は上述の第1実施形態の扁平形電池1と同様である。
【0043】
このような全固体二次電池においても、外装缶2の底部21及び電極体4の正極41の間、或いは、封口缶3の平面部31及び電極体4の負極42の間のいずれか一方に環状集電体5を配置することにより、簡易な形状の集電体を用いながら、効果的に集電することができる。
【0044】
なお、第1及び第2実施形態の扁平形電池1において、正極と負極とを入れ替えた構成としてもよく、また、第2実施形態の扁平形電池1において、電極体4を複数直列に接続したバイポーラ型の扁平形電池1としてもよい。また、第2実施形態の扁平形電池1において、隔離層45をセパレータに置き換えてケース内に電解液を収容することにより、扁平形電池1をリチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ及び電気二重層キャパシタ等とすることができる。この場合、セパレータ及び電解液は、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ又は電気二重層キャパシタ等で通常に用いられるものである。また、正極41と負極42は、各種の扁平形電池1で通常に用いられる正極及び負極の合剤層に置き換えればよい。
【0045】
なお、本発明によれば、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の目標7「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的なエネルギーへのアクセスを確保する」および目標12「持続可能な消費生産形態を確保する」に寄与することができる。
【0046】
以上、実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【実施例0047】
図1に示す電極体4を有する実施例1~5及び比較例1~5の扁平形電池(外径:6.8mm、高さ:4.0mm)を各々作製し、各々の扁平形電池に収容される集電体の平面視形状等を変えて、サイクルノイズの発生を評価した。また、集電体のバリの発生率を評価した。
【0048】
【0049】
(サイクルノイズ評価)
通常、効果的に集電することができる扁平形電池において、放電容量は、充放電サイクルを繰り返すことによって緩やかに減少する傾向にある。一方、集電が安定しない扁平形電池において、放電容量は、充放電サイクルを繰り返すことによって極端に増減する現象が見受けられる。そのため、nサイクル目のIC放電容量とn-1サイクル目のIC放電容量とを比べたとき、nサイクル目のIC放電容量がn-1サイクル目のIC放電容量よりも2%以上減少した場合、又は、1%以上増加した場合、nサイクル目を「ノイズ」が発生したポイントした。なお、環境温度の変動によっても放電容量が増減するため、1%までの増加と、2%までの減少とを正常な許容範囲とした。充放電を500サイクル繰り返し、そのうち「ノイズ」が発生した割合(サイクルノイズ発生率)に基づき、効果的に集電できたか否かを評価した。評価方法は以下の通りである。
サイクルノイズ発生率 0% :A
0%超、20%以下 :B
20%超、50%以下:C
50%以上 :D
【0050】
(バリの発生率)
実施例及び比較例の各々について100個の集電体の外観を観察し、バリが発生している集電体の発生率を求めた。
【0051】
(評価結果)
実施例1~5において、サイクルノイズの発生率は20%以下であり、効果的に集電することができた。また、実施例1~5では、バリの発生している集電体は0%であった。また、実施例1~3と実施例4とを比べると、開口率が65%を下回るとサイクルノイズの発生率が「B」の評価となった。開口率が65%以上とすれば、効果的に集電できる傾向にあると推察される。また、実施例1~5と比較例5とを対比すると、比較例5では電極体の直径に対する外径の割合が85%よりも大きく、かつ、電極体の直径に対する内径の割合が75%よりも大きいものの、開口率を80%以下にするのがよいと推察される。さらに、実施例1~3と実施例5とを比べると、集電体の埋設される深さd1及びd2が50μmを下回るとサイクルノイズの発生率が「B」の評価となった。そのため、深さd1及びd2を50μm以上とすれば、効果的に集電できる傾向にあると推察される。
【0052】
比較例1は、サイクルノイズの発生率は「B」の評価であったが、バリの発生している集電体が1%存在した。
【0053】
比較例2及び3は、サイクルノイズが比較的多く発生し、集電体による集電が安定しなかった。また、バリの発生している集電体が1%存在した。
【0054】
比較例4及び5は、環状の集電体を用いたが、電極体の直径に対する外径の割合が40%~85%の範囲を外れ、かつ、電極体の直径に対する内径の割合が35%~75%の範囲を外れた場合には、効果的な集電をすることができなかった。
【0055】
このように、簡易な形状を有する環状集電体を電極体に埋設させ、かつ、電極体の直径に対する外径及び内径の割合を適切に設定すれば、効果的な集電を得ることができた。
【0056】
なお、実施例1~5の環状集電体は、電極体に埋設し易かった。そのため、電極体と電極体に埋設された環状集電体との総厚みが小さくなる。すなわち、その分だけ電極体の厚みを大きくできるため、実施例1~5の環状集電体は、扁平形電池1の電池容量の向上に寄与するものと推察される。
1 扁平形電池、2 外装缶、3 封口缶、4 電極体、5 環状集電体、6 ガスケット、D1 直径、D2 外径、D3 内径、d1 深さ、d2 深さ