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特開2024-175735シーラントフィルム、二次電池用外装材、二次電池、電動デバイス
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  • 特開-シーラントフィルム、二次電池用外装材、二次電池、電動デバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175735
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】シーラントフィルム、二次電池用外装材、二次電池、電動デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/129 20210101AFI20241212BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20241212BHJP
   H01M 50/131 20210101ALI20241212BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20241212BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20241212BHJP
【FI】
H01M50/129
H01M50/121
H01M50/131
H01M10/0562
H01M50/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093684
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田邨 奈穂子
(72)【発明者】
【氏名】大倉 正寿
(72)【発明者】
【氏名】坂本 光隆
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼▲崎▼ 莉沙
【テーマコード(参考)】
5H011
5H029
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011AA10
5H011FF02
5H011GG01
5H011HH02
5H011KK00
5H011KK01
5H011KK02
5H011KK04
5H029AJ15
5H029AM12
5H029DJ02
5H029EJ01
5H029EJ12
5H029HJ00
5H029HJ01
5H029HJ14
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、高温でのシール性、水蒸気バリア性、成形性に優れた外装材用のシーラントフィルムを提供することにある。
【解決手段】少なくともA層、B層、C層を直接この順に有するシーラントフィルムであって、A層は融点が135℃以上、かつポリプロピレン系樹脂を含有し、少なくともB層およびC層が環状オレフィン系樹脂を含有し、各層に含まれる環状オレフィン系樹脂の含有量が、C層、B層、A層の順に多い、シーラントフィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともA層、B層、C層を直接この順に有するシーラントフィルムであって、A層は融点が135℃以上、かつポリプロピレン系樹脂を含有し、少なくともB層およびC層が環状オレフィン系樹脂を含有し、各層に含まれる環状オレフィン系樹脂の含有量が、C層、B層、A層の順に多い、シーラントフィルム。
【請求項2】
少なくともA層、B層、C層を直接この順に有するシーラントフィルムであって、B層は環状オレフィン系樹脂とその他の樹脂からなる共連続構造を有し、A層はA層の全質量を100質量%としたとき、環状オレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂以外のオレフィン系樹脂より選ばれる樹脂を合計で60質量%以上含み、かつC層はC層の全質量を100質量%としたとき、環状オレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂以外のオレフィン系樹脂より選ばれる樹脂を合計で60質量%以上含む、シーラントフィルム。
【請求項3】
B層がB層の全質量100質量%に対して環状オレフィン系樹脂を30質量%以上70%質量以下含有する、請求項1または2に記載のシーラントフィルム。
【請求項4】
B層が環状オレフィン系樹脂とポリプロピレン系樹脂との相溶化剤を含有する、請求項3に記載のシーラントフィルム。
【請求項5】
C層がC層の全質量100質量%に対して環状オレフィン系樹脂を60質量%以上含有する、請求項1または2に記載のシーラントフィルム。
【請求項6】
A層、B層、C層、B層、A層の順に直接5層が積層されてなる、請求項1または2に記載のシーラントフィルム。
【請求項7】
少なくとも一方の表面同士の静摩擦係数が0.5以下であり、かつ該表面の十点平均粗さが2.0μm以上である、請求項1または2に記載のシーラントフィルム。
【請求項8】
60℃、90%RHでの水蒸気透過率が3g・mm/m/day以下である、請求項1または2に記載のシーラントフィルム。
【請求項9】
A層同士をヒートシールした後の100℃雰囲気下における剥離強度が10N/15mm以上である、請求項1または2に記載のシーラントフィルム。
【請求項10】
絞り深さ5mm以上の成形体に用いられる、請求項1または2に記載のシーラントフィルム。
【請求項11】
全固体電池の外装材に用いられる、請求項1または2に記載の外装材用シーラントフィルム。
【請求項12】
請求項1または2に記載のシーラントフィルムを備える、二次電池用外装材。
【請求項13】
請求項12に記載の外装材を備える、二次電池。
【請求項14】
請求項13に記載の二次電池を有する、電動デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温でのシール性、水蒸気バリア性、成形性に優れるシーラントフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、他の二次電池と比較して高いエネルギー密度を有し、電気自動車用や電力貯蔵用の電池として使用されている。
【0003】
従来使用されてきた非水電解液を用いるリチウム二次電池は、電解液として6フッ化リン酸リチウム溶液が用いられているが、安全性の観点で60℃未満での使用が必要であった。また、前記電解質は水分と反応してフッ酸を生成し、このフッ酸が前記積層体の内層を透過し、金属箔と内層との接着を低下させて剥離を生じさせ、電池寿命を短いものにするという問題があり、水分侵入を抑制するために種々検討がなされてきた(特許文献1~3)。
【0004】
また、近年注目を浴びている全固体リチウム二次電池(以下全固体電池と記載)は、従来の非水電解質で多用されている電解液ではなく、固体電解質が用いられている。全固体電池は、電池内に有機溶媒を用いないことから、安全性が高く、作動温度範囲が広いといった利点を有しており、また60℃以上で高効率化しやすいことから、全固体電池の外装材に使用されるシーラントフィルムについても60℃以上の高温で使用される可能性を踏まえて設計する必要がある。
【0005】
また、全固体電池に硫化物固体電解質を用いた場合、電池内に水分が侵入すると、固体電解質と水分とが反応して硫黄系ガスが発生することが問題となっている。具体的には、長期間電池を使用した場合に、硫黄系ガスが蓄積して、電池外装材が膨張したり、破袋したりすることが懸念されている。
【0006】
高温では特に外装材を構成するシーラントフィルムの水蒸気バリア性が低下するため、従来提案されてきた水蒸気バリア性の改善方法では十分な効果が得られない場合があり、更なる水蒸気バリア性の改善方法として、無機系吸収剤をシーラントフィルムに用いる方法などが提案されている(特許文献4)。
【0007】
また、特許文献5では、高温でのシール性を改善する方法としてシーラントフィルムに融点あるいはガラス転移点が高い樹脂を用いる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015-38881号公報
【特許文献2】特開2008-293909号公報
【特許文献3】特開2007-26682号公報
【特許文献4】特開2021-57231号公報
【特許文献5】特開2021-108263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献4に記載してあるような無機系吸収剤をシーラントに用いた場合、パウチ状に成形する際に、シーラントフィルムにボイドなどの欠損を生じてしまう懸念があった。また、特許文献5に記載されたシーラントフィルムは高温でのシール性と成形性との両立が不十分となることが懸念される。
【0010】
そこで本発明の課題は、高温でのシール性、水蒸気バリア性、成形性に優れた外装材用のシーラントフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の好ましい態様は以下のとおりである。
(1)少なくともA層、B層、C層を直接この順に有するシーラントフィルムであって、A層は融点が135℃以上、かつポリプロピレン系樹脂を含有し、少なくともB層およびC層が環状オレフィン系樹脂を含有し、各層に含まれる環状オレフィン系樹脂の含有量が、C層、B層、A層の順に多い、シーラントフィルム。
(2)少なくともA層、B層、C層を直接この順に有するシーラントフィルムであって、B層は環状オレフィン系樹脂とその他の樹脂からなる共連続構造を有し、A層はA層の全質量を100質量%としたとき、環状オレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂以外のオレフィン系樹脂より選ばれる樹脂を合計で60質量%以上含み、かつC層はC層の全質量を100質量%としたとき、環状オレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂以外のオレフィン系樹脂より選ばれる樹脂を合計で60質量%以上含む、シーラントフィルム。
(3)B層がB層の全質量100質量%に対して環状オレフィン系樹脂を30質量%以上70%質量以下含有する、(1)または(2)に記載のシーラントフィルム。
(4)B層が環状オレフィン系樹脂とポリプロピレン系樹脂との相溶化剤を含有する、(3)に記載のシーラントフィルム。
(5)C層がC層の全質量100質量%に対して環状オレフィン系樹脂を60質量%以上含有する、(1)または(2)に記載のシーラントフィルム。
(6)A層、B層、C層、B層、A層の順に直接5層が積層されてなる、(1)または(2)に記載のシーラントフィルム。
(7)少なくとも一方の表面同士の静摩擦係数が0.5以下であり、かつ該表面の十点平均粗さが2.0μm以上である、(1)または(2)に記載のシーラントフィルム。
(8)60℃、90%RHでの水蒸気透過率が3g・mm/m/day以下である、(1)または(2)に記載のシーラントフィルム。
(9)A層同士をヒートシールした後の100℃雰囲気下における剥離強度が10N/15mm以上である、(1)または(2)に記載のシーラントフィルム。
(10)絞り深さ5mm以上の成形体に用いられる、(1)または(2)に記載のシーラントフィルム。
(11)全固体電池の外装材に用いられる、(1)または(2)に記載の外装材用シーラントフィルム。
(12)(1)または(2)に記載のシーラントフィルムを備える、二次電池用外装材。
(13)(12)に記載の外装材を備える、二次電池。
(14)(13)に記載の二次電池を有する、電動デバイス。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高温でのシール強度、水蒸気バリア性、成形性に優れたシーラントフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】断面観察した際に海島構造を取っている層の一例における模式図。
図2】断面観察した際に共連続構造を取っている層の一例における模式図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態の好ましい態様について説明する。
【0015】
本発明の好ましい態様の一つめとして、少なくともA層、B層、C層を直接この順に有するシーラントフィルムであって、A層は融点が135℃以上、かつポリプロピレン系樹脂を含有し、少なくともB層およびC層が環状オレフィン系樹脂を含有し、各層に含まれる環状オレフィン系樹脂の含有量が、C層、B層、A層の順に多い、シーラントフィルムが挙げられる。
【0016】
また、本発明の好ましい態様の二つめとして、少なくともA層、B層、C層を直接この順に有するシーラントフィルムであって、B層は環状オレフィン系樹脂とその他の樹脂からなる共連続構造を有し、A層はA層の全質量を100質量%としたとき、環状オレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂以外のオレフィン系樹脂より選ばれる樹脂を合計で60質量%以上含み、かつC層はC層の全質量を100質量%としたとき、環状オレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂以外のオレフィン系樹脂より選ばれる樹脂を合計で60質量%以上含む、シーラントフィルムが挙げられる。
【0017】
本発明のシーラントフィルムを構成するA層は、高温でのシール強度を向上させる観点で融点が135℃以上であることが好ましい。A層の融点は高温でのシール強度を向上させる観点で、140℃以上が好ましく、145℃以上がより好ましく、成形性や低温シール性を向上させる観点では170℃以下が好ましい。なお、融点の測定方法は後述するが、融点が二つ以上ある場合には、高い方の融点が135℃以上であることが好ましい。
【0018】
また、本発明のシーラントフィルムを構成するA層には、高温でのシール強度と成形性、水蒸気バリア性を両立する観点でポリプロピレン系樹脂を含有することが好ましい。A層中のポリプロピレン系樹脂の含有量は、A層全体を100質量%としたとき、高温でのシール強度と成形性を向上させる観点で、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましい。A層中のポリプロピレン系樹脂の含有量の上限は、B層との密着性向上の観点で90質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましい。
【0019】
本発明のシーラントフィルムのA層に用いるポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン、プロピレンとエチレンおよび/またはブテン-1とのランダムコポリマー、ホモポリプロピレンおよびエチレン-プロピレンコポリマーを含有するブロックコポリマーより選ばれる1種以上のポリプロピレン系樹脂を用いることが好ましい。
【0020】
A層に用いるポリプロピレン系樹脂の融点は、A層の融点を135℃以上に制御し、高温でのシール強度を向上させる観点や高温での水蒸気バリア性を向上させる観点で、135℃以上が好ましく、140℃以上がより好ましく、145℃以上がさらに好ましい。ポリプロピレン系樹脂の融点の上限は実質的には170℃以下である。
【0021】
ポリプロピレン系樹脂の230℃、21.18N荷重で測定したメルトフローレート(MFR)は、製膜性、A層中の環状ポリオレフィン系樹脂、他の樹脂との分散性、A層同士をヒートシールする場合のシール性の観点で、1.0g/10分以上が好ましく、2.0g/10分以上がより好ましい。ポリプロピレン系樹脂のMFRの上限はシール強度や成形性、製膜性、環状ポリオレフィン系樹脂やその他の樹脂との分散性を好ましく制御する観点で、15g/10分以下が好ましく、10g/10分以下がより好ましい。
【0022】
本発明のA層には前述のポリプロピレン系樹脂以外に、本発明の目的を損なわない範囲で、環状オレフィン系樹脂やこれら以外の熱可塑性樹脂、添加剤を含有してもよい。本発明のA層中に環状オレフィン系樹脂を含有する場合、その含有量はB層との密着性向上や水蒸気バリア性向上の観点で5質量%以上が好ましく、A層同士をヒートシールする場合のシール強度向上の観点で30質量%以下が好ましい。ポリプロピレン系樹脂および環状オレフィン系樹脂以外の熱可塑性樹脂をA層中に含有させる場合、所望の物性に応じて適宜添加量を調整すればよいが、高温でのシール強度、水蒸気バリア性、成形性のバランスの観点で、2質量%以上が好ましく、30質量%以下が好ましい。
【0023】
前記した環状オレフィン系樹脂とは、モノマーたる環状オレフィンから重合して得られる、ポリマーの主鎖に脂環構造を有する樹脂であり、該環状オレフィン系樹脂の重合体100質量%中において、環状オレフィンモノマー由来成分(構成単位)の合計量が50質量%を超えて100質量%以下である態様の重合体を意味する。
【0024】
環状オレフィンモノマーとしては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロペンタジエン、1,3-シクロヘキサジエンといった単環式オレフィン、ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-エン、5-メチル-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタ-2-エン、5,5-ジメチル-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-エン、5-エチル-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-エン、5-ブチル-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-エン、5-エチリデン-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-エン、5-ヘキシル-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-エン、5-オクチル-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-エン、5-オクタデシル-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-エン、5-メチリデン- ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-エン、5-ビニル-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-エン、5-プロペニル-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-エンといった二環式オレフィン、トリシクロ〔4.3.0.12,5〕デカ-3,7-ジエン、トリシクロ〔4.3.0.12,5〕デカ-3-エン、トリシクロ〔4.3.0.12,5〕ウンデカ-3,7-ジエン、トリシクロ〔4.3.0.12,5〕ウンデカ-3,8-ジエン、トリシクロ〔4.3.0.12,5〕ウンデカ-3-エン、5-シクロペンチル-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-エン、5-シクロヘキシル-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-エン、5-シクロヘキセニルビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-エン、5-フェニル-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタ-2-エンといった三環式オレフィン、テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ-3-エン、8-メチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ-3-エン、8-エチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ-3-エン、8-メチリデンテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ-3-エン、8-エチリデンテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ-3-エン、8-ビニルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ-3-エン、8-プロペニル-テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ-3-エンといった四環式オレフィン、および8-シクロペンチル-テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ-3-エン、8-シクロヘキシル-テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ-3-エン、8-シクロヘキセニル-テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ-3-エン、8-フェニル-シクロペンチル-テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ-3-エン、テトラシクロ〔7.4.13,6.01,9.02,7〕テトラデカ-4.9.11.13-テトラエン、テトラシクロ〔8.4.14,7.01,10.03,8〕ペンタデカ-5.10.12.14-テトラエン、ペンタシクロ〔6.6.13,6.02,7.09,14〕-4-ヘキサデセン、ペンタシクロ〔6.5.1.13,6.02,7.09,13〕-4-ペンタデセン、ペンタシクロ〔7.4.0.02,7.13,6.110,13〕-4-ペンタデセン、ヘプタシクロ〔8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16〕-5-エイコセン、ヘプタシクロ〔8.7.0.12,9.03,8.14,7.012,17.113,16〕-14-エイコセン、シクロペンタジエンといった四量体等の多環式オレフィンなどが挙げられる。これらの環状オレフィンモノマーは、それぞれ単独であるいは2種以上組合せて用いることができる。
【0025】
環状オレフィンモノマーとしては、上記した中でも、生産性などの観点から、ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト-2-エン(以下、ノルボルネンとする)、トリシクロ〔4.3.0.12,5〕デカ-3-エンなどの炭素数10の三環式オレフィン(以下、トリシクロデセンとする)、テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ-3-エンなどの炭素数12の四環式オレフィン(以下、テトラシクロドデセンとする)、シクロペンタジエン、または1,3-シクロヘキサジエンが好ましく用いられる。
【0026】
環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィン系樹脂の重合体100質量%中に、環状オレフィンモノマー由来成分の合計が50質量%を超えて100質量%以下であれば、上記環状オレフィンモノマーのみを重合させた樹脂(以下、COPということがある)や、上記環状オレフィンモノマーと鎖状オレフィンモノマーとを共重合させた樹脂(以下、COCということがある)のいずれの樹脂でも構わない。
【0027】
COPの製造方法としては、環状オレフィンモノマーの付加重合、あるいは開環重合などの公知の方法が挙げられ、例えば、ノルボルネン、トリシクロデセン、テトラシクロデセン、およびその誘導体を開環メタセシス重合させた後に水素化させる方法、ノルボルネンおよびその誘導体を付加重合させる方法、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンを1,2-、1,4-付加重合させた後に水素化させる方法などが挙げられる。これらの中でも、生産性、成形性の観点から、ノルボルネン、トリシクロデセン、テトラシクロデセン、およびその誘導体を開環メタセシス重合させた後に水素化させた樹脂が最も好ましい。
【0028】
COCの場合、好ましい鎖状オレフィンモノマーとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-へキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-へキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-へキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が挙げられる。これらの中でも、生産性、コストの観点から、エチレンが特に好ましく用いることができる。また、環状オレフィンモノマーと鎖状オレフィンモノマーとを共重合させた樹脂の製造方法としては、環状オレフィンモノマーと鎖状オレフィンモノマーの付加重合などの公知の方法が挙げられ、例えば、ノルボルネンおよびその誘導体とエチレンを付加重合させる方法などが挙げられる。中でも、生産性、成形性の観点から、ノルボルネンとエチレンの共重合体が最も好ましい。
【0029】
また、本発明のシーラントフィルムには、上記した環状オレフィン系樹脂のうち、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
環状オレフィン系樹脂のガラス転移点は、水蒸気バリア性を向上させる観点で60℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、100℃以上がさらに好ましい。また、本発明の環状オレフィン系樹脂のガラス転移点の上限は、成形性を向上させる観点で200℃が好ましく、150℃がより好ましく、130℃がさらに好ましい。
【0031】
本発明の環状オレフィン系樹脂のガラス転移点を制御する方法としては、例えば、COCとして、ノルボルネンとエチレンの共重合体を使用する場合、COC中のノルボルネンの含有量を増加させていくとガラス転移点を高温化することができる。さらに、ノルボルネンの含有量の異なり、かつ相溶する2種類のCOCをブレンドさせることによっても、ガラス転移点を調整することが可能である。また、例えば、COPとして、ノルボルネン、トリシクロデセン、テトラシクロドデセン、およびこれらの誘導体を開環メタセシス重合させた後に水素化させた樹脂を使用する場合、重合する環状オレフィン(ノルボルネン、トリシクロデセン、テトラシクロドデセン、およびこれらの誘導体)の分子量を大きくする、あるいは、環の数を多くして剛直な構造にすることにより、ガラス転移点を高温化することが可能である。さらに、ガラス転移点の異なり、かつ相溶する2種類のCOPをブレンドさせることによっても本発明の環状オレフィン系樹脂のガラス転移点を調整することが可能である。
【0032】
環状オレフィン系樹脂の230℃、せん断速度121s-1で測定した溶融粘度は、シーラントフィルムを溶融押出する際の製膜性や、ポリプロピレン系樹脂やそれ以外の熱可塑性樹脂とブレンドして使用する場合の分散性の観点で、300Pa・s以上が好ましく、同様の観点で2000Pa・s以下が好ましく、1000Pa・s以下がより好ましい。
【0033】
A層中にポリプロピレン系樹脂および環状オレフィン系樹脂以外の熱可塑性樹脂を添加する場合、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などのポリエチレン系樹脂、エチレン・α-オレフィンコポリマー、プロピレン・α-オレフィンコポリマー、エチレン系コポリマー、4-メチル-1-ペンテン系コポリマー、エチレンプロピレンジエンゴム、オレフィン系熱可塑性エラストマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン・ブタン酸ビニル共重合体等のエチレンとカルボン酸ビニルとの共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン・ブチルアクリレート共重合体(EBA)、エチレン・メチルメタクリレート共重合体(EMMA)等のエチレンとα、β-不飽和カルボン酸アルキルエステルとの共重合体やポリブチレンテレフタレートフィルム、これらに無水マレイン酸を共重合した樹脂より選ばれる1種以上の熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0034】
ポリプロピレン系樹脂および環状オレフィン系樹脂以外の熱可塑性樹脂の230℃、21.18N荷重で測定したメルトフローレート(MFR)は、製膜性や、A層中のポリプロピレン系樹脂等との分散性、A層同士をヒートシールする場合のシール性の観点で、1.0g/10分以上が好ましく、2.0g/10分以上がより好ましい。前記熱可塑性樹脂のMFRの上限はシール強度や成形性、製膜性、ポリプロピレン系樹脂等との分散性の観点で、30g/10分以下が好ましい。
【0035】
本発明のシーラントフィルムのB層やC層は環状オレフィン系フィルムを含有することが好ましく、上記した環状オレフィン系樹脂と同様の樹脂を好ましく用いることができる。また、本発明のシーラントフィルムの高温でのシール性と水蒸気バリア性と成形性のバランスを好ましく制御する観点で、シーラントフィルムの各層に用いられる環状オレフィン系樹脂の含有量は、C層、B層、A層の順に多いことが好ましい。つまり、シーラントフィルムの各層に用いられる環状オレフィン系樹脂の含有量はC層が最も多く、A層が最も少ない。
【0036】
各層の全質量をそれぞれ100質量%としたとき、C層中の環状オレフィン系樹脂の含有量はB層中の環状オレフィン系樹脂の含有量よりも5質量%以上多いことが好ましく、10質量%以上多いことがより好ましい。また、B層中の環状オレフィン系樹脂の含有量はA層中の環状オレフィン系樹脂の含有量よりも10質量%以上多いことが好ましく、20質量%以上多いことが好ましい。
【0037】
B層中の環状オレフィン系樹脂の含有量は、B層の全質量100質量%に対して、C層との密着性向上や水蒸気バリア性向上、成形性向上の観点で30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、A層との密着性向上や成形性向上の観点で70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。
【0038】
また、本発明のシーラントフィルムのB層には、環状オレフィン系樹脂以外に、環状オレフィン系樹脂とポリプロピレン系樹脂との相溶化剤(以下、相溶化剤と記載することがある)を含有することが好ましい。これによりA層およびC層との密着性を向上させたり、B層にさらにポリプロピレン系樹脂が含まれる場合にB層中の樹脂の分散状態を好ましく制御し、水蒸気バリア性や成形性を向上させることができる。
【0039】
相溶化剤の含有量は、A層およびC層との密着性や、B層中の環状オレフィン系樹脂とその他の樹脂との分散状態を好ましく制御する観点で、B層の全質量100質量%に対して、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。また、B層中の相溶化剤の含有量の上限は、水蒸気バリア性向上の観点で20%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。
【0040】
前記相溶化剤としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン・プロピレンコポリマー、エチレン・1-ブテンコポリマー、エチレン・1-ペンテンコポリマー、エチレン・1-ヘキセンコポリマー、エチレン・1-オクテンコポリマー、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体、もしくは、スチレン系共重合樹脂(スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体)、プロピレン・α-オレフィンコポリマー、4-メチル-1-ペンテン系コポリマー、エチレンプロピレンジエンゴム、オレフィン系熱可塑性エラストマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン・ブタン酸ビニル共重合体等のエチレンとカルボン酸ビニルとの共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン・ブチルアクリレート共重合体(EBA)、エチレン・メチルメタクリレート共重合体(EMMA)等のエチレンとα、β-不飽和カルボン酸アルキルエステルとの共重合体より選ばれる1種以上の相溶化剤を用いることが好ましい。
【0041】
前記相溶化剤の230℃、21.18N荷重で測定したメルトフローレート(MFR)は、製膜性や、環状ポリオレフィン系樹脂やその他の樹脂との分散性の観点で、1.0g/10分以上が好ましく、2.0g/10分以上がより好ましい。
【0042】
本発明のシーラントフィルムのB層には、環状オレフィン系樹脂や相溶化剤以外の熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。該熱可塑性樹脂としては、前記したA層に好適なポリプロピレン系樹脂や、A層に好適な熱可塑性樹脂が挙げられ、なかでもA層との密着性を向上させる観点や、高温での高温でのシール強度と水蒸気バリア性と成形性を両立させる観点で、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0043】
B層に好適な環状オレフィン系樹脂や相溶化剤以外の熱可塑性樹脂の含有量は、B層全体を100質量%としたとき、A層との密着性や高温でのシール強度、成形性を両立させる観点で、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましい。また、該熱可塑性樹脂の含有量は、A層やC層との密着性や、水蒸気バリア性を両立する観点で、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。
【0044】
また、本発明のシーラントフィルムは少なくともA層、B層、C層を直接この順に有するシーラントフィルムであるが、B層は環状オレフィン系樹脂とその他の樹脂からなる共連続構造を有することが好ましく、A層とC層はA層、C層の全質量をそれぞれ100質量%としたとき、環状オレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂以外のオレフィン系樹脂より選ばれる樹脂を合計で60質量%以上含むことが好ましい。つまり、A層はA層の全質量を100質量%としたとき、環状オレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂以外のオレフィン系樹脂より選ばれる樹脂を合計で60質量%以上含み、かつC層はC層の全質量を100質量%としたとき、環状オレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂以外のオレフィン系樹脂より選ばれる樹脂を合計で60質量%以上含むことが好ましい。ここでいう各層に含有する環状オレフィン系樹脂としては、前記したA層に好適な環状オレフィン系樹脂を好ましく用いることができる。また、B層に含有するその他の樹脂としては、前記したB層に好適な相溶化剤、B層に好適な環状オレフィン系樹脂や相溶化剤以外の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0045】
A層およびC層に含有する環状オレフィン系樹脂以外のオレフィン系樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン・プロピレンコポリマー、エチレン・1-ブテンコポリマー、エチレン・1-ペンテンコポリマー、エチレン・1-ヘキセンコポリマー、エチレン・1-オクテンコポリマー、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体、ホモポリプロピレン、プロピレンとエチレンおよび/またはブテン-1とのランダムコポリマー、ホモポリプロピレンおよびエチレン-プロピレンコポリマーを含有するブロックコポリマー、プロピレン・α-オレフィンコポリマー、4-メチル-1-ペンテン系コポリマー、エチレンプロピレンジエンゴム、オレフィン系熱可塑性エラストマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン・ブタン酸ビニル共重合体等のエチレンとカルボン酸ビニルとの共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン・ブチルアクリレート共重合体(EBA)、エチレン・メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、等のエチレンとα、β-不飽和カルボン酸アルキルエステルとの共重合体より選ばれる1種以上のオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。これらの環状オレフィン系樹脂以外のオレフィン系樹脂の中でも、A層にはホモポリプロピレン、プロピレンとエチレンおよび/またはブテン-1とのランダムコポリマー、ホモポリプロピレンおよびエチレン-プロピレンコポリマーを含有するブロックコポリマーより選ばれる1種以上のポリプロピレン系樹脂を用いることがより好ましい。
【0046】
本発明で定義する共連続構造については、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡でシーラントフィルムの幅方向(シーラントフィルム製膜時の機械方向に対して垂直の方向)-厚み方向の断面を観察することで、評価することができる。具体的には2,000倍、3,000倍、4,000倍、5,000倍、7,500倍、10,000倍、15,000倍、20,000倍で観察した場合に、いずれの倍率においても図1に示すように円状もしくは楕円状のドメインがマトリックス中に点在している場合は海島構造を形成していると判断することができる。また、同様に2,000倍、3,000倍、4,000倍、5,000倍、7,500倍、10,000倍、15,000倍、20,000倍の倍率で観察し、少なくともいずれかの倍率において、図2に示すようにB層を構成する二種以上の樹脂の界面の長さが分散径の最大値に対して10倍以上であり、かつ不定形な構造を少なくとも有する場合を共連続構造と定義した。また、B層に二種以上の非相溶な樹脂を使用しているのにもかかわらず、海島構造あるいは共連続構造が確認できない場合は、染色や元素マッピングにより分散状態を確認することが好ましい。
【0047】
本発明のシーラントフィルムのC層には環状オレフィン系樹脂を含有することが好ましく、C層中の環状オレフィン系樹脂の含有量は、C層の全質量100質量%に対して、水蒸気バリア性向上の観点で60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。また、C層中の環状オレフィン系樹脂の含有量は、成形性向上やB層との密着性向上の観点で90質量%以下が好ましい。
【0048】
また、本発明のC層には、B層との密着性向上や成形性向上の観点で、環状オレフィン系樹脂以外の熱可塑性樹脂を含有させてもよく、該熱可塑性樹脂としては、B層に好適に用いられる相溶化剤や、B層に好適に用いられる環状オレフィン系樹脂や相溶化剤以外の熱可塑性樹脂が好ましい。
【0049】
本発明のシーラントフィルムは、A層、B層、C層の3層を直接この順に有することが好ましい。A層、B層、C層の3層を直接この順に有するとは、A層とB層、B層とC層が、それぞれ間に他の層を介さず直接接することをいう。また、目的に応じて前記したA層および/またはC層にさらに別の層を積層し、4層以上の積層構成としてもよい。例えば、成形向上の観点では、A層、B層、C層、B層を直接この順に有する4層構成とすることが好ましく、A層、B層、C層、B層、A層をこの順に有する5層構成とすることがより好ましい。なお、本発明のシーラントフィルムが2層以上のA層を含む場合、同一の組成、厚みからなる1種類のA層を2層以上含む構成であってもよいし、本発明の構成要件を満たす範囲で組成や厚みなどが異なる2種類以上のA層を含む構成でもよい。本発明のシーラントフィルムが2層以上のB層や2層以上のC層を含む場合も同様で、1種のB層やC層を含む構成でもよいし、2種以上のB層やC層を含む構成でもよい。
【0050】
本発明のシーラントフィルムは、A層、B層、C層以外にも、例えば後述するバリア層との接着性を向上させるための層や耐熱性、水蒸気バリア性、成形性、柔軟性等をさらに向上させるための機能層を設けてもよいが、高温下での十分なシール強度を発現させる観点で、シーラントフィルムの少なくとも一方の表面がA層で構成されていることが好ましい。また、本発明のシーラントフィルムを外装材に用いる場合は、A層が外装材の表層側になるように積層することがより好ましい。
【0051】
本発明のシーラントフィルムは、少なくとも一方の表面同士の静摩擦係数が0.5以下であることが好ましく、0.4以下がより好ましく、0.3以下がさらに好ましい。本発明のシーラントフィルムは前述した通り、少なくとも一方の表面がA層で構成されていることが好ましく、該A層の表面同士の静摩擦係数が上記好ましい範囲であることが好ましく、これにより、本発明のシーラントフィルムをパウチ状に成形する際に滑り性が付与され、成形性が向上する。
【0052】
本発明のシーラントフィルムは、滑り性を高め、少なくとも一方の表面同士の静摩擦係数を0.5以下とするために、シーラントフィルムの少なくとも一方の表面に位置するA層が滑剤を含有することが好ましい。前記滑剤としては、特に限定されるものではないが、脂肪酸アミド、金属石鹸、フッ素系ポリマー、シリコーン系滑剤、脂肪酸、植物油などを用いることができ、熱可塑性性樹脂層への溶解性の観点から脂肪酸アミドが好適に用いられる。前記脂肪酸アミドとしては、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、置換アミド、メチロールアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、脂肪酸エステルアミド、芳香族系ビスアミドより選ばれる1種以上の脂肪酸アミドを用いることが好ましい。
【0053】
前記飽和脂肪酸アミドとしては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミドがより選ばれる1種異常の飽和脂肪酸アミドが好ましく、また、前記不飽和脂肪酸アミドとしては、オレイン酸アミドおよび/またはエルカ酸アミドが好ましい。
【0054】
前記置換アミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、N-オレイルパルミチン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド等が挙げられる。また、前記メチロールアミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、メチロールステアリン酸アミド等が挙げられる。
【0055】
前記飽和脂肪酸ビスアミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミド等が挙げられる。
【0056】
前記不飽和脂肪酸ビスアミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミド等が挙げられる。
【0057】
前記脂肪酸エステルアミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ステアロアミドエチルステアレート等が挙げられる。前記芳香族系ビスアミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、m-キシリレンビスステアリン酸アミド、m-キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-システアリルイソフタル酸アミド等が挙げられる。
【0058】
これらの滑剤をシーラントフィルムの少なくとも一方の表面に位置するA層に含有させる方法としては、A層を構成する材料にあらかじめ滑剤を含有させておいてもよいし、例えばB層やC層などのA層以外の層を構成する材料に滑剤を含有させてシーラントフィルムを形成した後に加熱エージング処理等を施すことでA層に滑剤を移行させてもよい。
【0059】
滑剤の含有量は特に限定されるものではないが、シーラントフィルム全体の質量を100質量%としたときに、下限は100質量ppmであることが好ましく、上限は10,000質量ppmであることが好ましく、3,000質量ppmであることがより好ましい。滑剤の含有量が100質量ppmより少ないとシーラントフィルムの表面への滑剤の析出量が不足して滑り性が不十分になる場合があり、10,000質量ppmより多いと表面へ滑剤が過剰に析出して白粉となる場合がある。
【0060】
本発明のシーラントフィルムは、少なくとも一方の表面の十点平均粗さが2.0μm以上であることが好ましく、3.0μm以上がより好ましい。本発明のシーラントフィルムは前述した通り、少なくとも一方の表面がA層で構成されていることが好ましく、該A層表面の十点平均粗さが上記好ましい範囲であることが好ましく、さらには静摩擦係数が0.5以下である該A層表面の十点平均粗さが上記好ましい範囲であることがより好ましい。これにより、本発明のシーラントフィルムをパウチ状に成形する際に滑り性が付与され、成形性が向上する。
【0061】
本発明のシーラントフィルムは、少なくとも一方の表面の十点平均粗さを2.0μm以上とし、滑り性を高めるために、少なくとも一方の表面に位置するA層に粒子を含有させることが好ましい。前記粒子としては、無機粒子や樹脂粒子が挙げられ、前記無機粒子としては、無機酸化物粒子(シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化チタン粒子等)、無機炭酸塩粒子(炭酸カルシウム粒子、炭酸バリウム粒子等)、無機ケイ酸塩粒子(ケイ酸アルミニウム粒子、タルク粒子、カオリン粒子等)より選ばれる1種以上の無機粒子を用いることが好ましい。また、前記樹脂粒子としては、アクリル樹脂粒子、ポリオレフィン樹脂粒子(ポリエチレン樹脂粒子、ポリプロピレン樹脂粒子)、ポリスチレン樹脂粒子より選ばれる1種以上の樹脂粒子を用いることが好ましい。
【0062】
前記粒子としては、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合には平均粒子径の異なる2種以上の粒子を用いるのが好ましく、この場合には表面の粗さの分布を均一にするのが容易になるという効果が得られる。また、前記粒子としては、比重が3以下であるものを用いるのが好ましく、この場合には非相溶粒子を容易に層内で均一に分散できるという効果が得られる。
【0063】
本発明のシーラントフィルムの各層には、前記した以外の添加剤等を含有してもよい。例えば、各層を構成する樹脂の分散性や界面強度を高めるための前記した以外の相溶化剤や各層の層間密着力を向上させるための添加剤、酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、防かび剤、着色剤(顔料、染料等)、帯電防止剤、防さび剤、吸湿剤、酸素吸収剤等が挙げられる。
【0064】
本発明のシーラントフィルムの60℃、90%RHでの水蒸気透過率は、3g・mm/m/day以下が好ましく、2g・mm/m/day以下がより好ましく、1.5g・mm/m/day以下がさらに好ましい。前記水蒸気透過率を3g・mm/m/day以下とすることで、本発明のシーラントフィルムを二次電池用の外装材用フィルムとして用いた場合にも水分侵入を抑制し、外装材の内圧の上昇や、膨張、破裂を抑制したり、電池の劣化を抑制することができる。
【0065】
シーラントフィルムの水蒸気透過率を前記好ましい範囲に制御し、シーラントフィルムの水蒸気バリア性を向上させる方法としては、前記した方法等を用いることができ、例えばC層の全質量100質量%に対してC層中の環状オレフィン系樹脂を60質量%以上とする方法や、さらにB層の全質量100質量%に対してB層中の環状オレフィン系樹脂を30質量%以上とする方法、さらにB層やC層の環状オレフィン系樹脂以外の構成成分をポリプロピレン系樹脂とする方法などが挙げられる。
【0066】
本発明のシーラントフィルムは、高温下で使用された場合のヒートシール箇所の開封を抑制する観点で、A層同士をヒートシールした後の100℃雰囲気下における剥離強度が10N/15mm以上であることが好ましく、15N/15mm以上がより好ましい。剥離強度を10N/15mm以上とする方法としては、前述した高温シール性を向上させる方法を好ましく用いることができる。なお、剥離強度は後述の実施例に記載の方法で評価するものとする。
【0067】
本発明のシーラントフィルムの厚みは特に限定されるものではないが、下限は10μmであることが好ましく、30μmであることがより好ましく、上限は500μmであることが好ましく、300μm以下であることがより好ましく、200μm以下であることがさらに好ましく、120μm以下であることが最も好ましい。シーラントフィルムの厚みが10μmより薄くなると、本発明のシーラントフィルムを用いた外装材をヒートシールしたときに十分なシール強度が得られない場合がある。シーラントフィルムの厚みが500μmより厚くなると、剛性が高すぎて巻き体にできない場合がある。
【0068】
本発明のシーラントフィルムは、高温でのシール強度と水蒸気バリア性、成形性に優れるため、二次電池用の外装材に好ましく用いることができ、特に従来電池よりも高温環境で使用される全固体電池用の外装材としてより好ましく用いることができる。シーラントフィルム以外に外装材を構成する部材としては、公知のものが用いられ、例えば、耐熱基材層、バリア層、接着剤層が挙げられる。
【0069】
耐熱基材層を有することで、絶縁性を十分に確保することや外装材の物理的強度および耐衝撃性を向上させることができる。耐熱基材層を形成する材料については公知のものが用いることができるが、例えば、ナイロンフィルム等のポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等が挙げられ、これらの延伸フィルムが好ましく用いられる。なかでも、二軸延伸ナイロンフィルム等の二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムまたは二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用いるのが特に好ましい。前記ナイロンフィルムとしては、特に限定されるものではないが、例えば、6ナイロンフィルム、6,6ナイロンフィルム、MXDナイロンフィルム等が挙げられる。なお、前記耐熱基材層は、単層で形成されていてもよいし、例えばポリエステルフィルム/ポリアミドフィルムからなる複層(PETフィルム/ナイロンフィルムからなる複層等)で形成されていてもよい。
【0070】
耐熱基材層の厚みは、2μm~200μmであるのが好ましい。耐熱基材層の厚みの上限は、100μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましい。また耐熱基材層の厚みの下限は5μm以上がより好ましい。上記好適な下限値以上に設定することで外装材として十分な強度の確保が容易となると共に、上記好適上限値以下に設定することで張り出し成形、絞り成形等の成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることが容易となる。
【0071】
前記バリア層は、前記外装材に酸素や水分の侵入を阻止するバリア性を付与する役割を担うものである。バリア層としては、公知のものを使用することができ、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム箔、SUS箔(ステンレス箔)、銅箔等が挙げられ、なかでも、アルミニウム箔、SUS箔(ステンレス箔)を用いるのが好ましい。前記バリア層の厚みは、5μm~120μmであるのが好ましい。5μm以上であることでバリア層を製造する際の圧延時のピンホール発生の防止が容易となると共に、120μm以下であることで張り出し成形、絞り成形等の成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることが容易となる。中でも、前記バリア層の厚みは、10μm~80μmであることがより好ましい。
【0072】
本発明の外装材は、例えば基材層とバリア層との間に、これらの層間の接着性を高めることなどを目的として、必要に応じて接着剤層を有していてもよい。また、同様にバリア層とシーラントフィルムとの間に必要に応じて接着層を有していてもよい。さらに本発明の効果を損なわない範囲でその他の機能層を付与してもよい。接着層については公知のものを使用することができる。
【0073】
本発明のシーラントフィルムを用いた外装材の構成としては、例えば耐熱基材層/接着剤層/バリア層/接着剤層/シーラントフィルムとすることができ、この場合、本発明のシーラントフィルムと耐熱基材層/接着剤層/バリア層は接着剤層を介して積層することができる(ドライラミネート法)。また、他の方法としては、耐熱基材層/接着剤層/バリア層からなる積層体の上にシーラントフィルムを構成する樹脂を溶融押し出しして、前記積層体の上に直接積層することもできる(熱ラミネート法)。
【0074】
本発明のシーラントフィルムを用いた外装材の合計厚みとしては、特に制限されないが、コスト削減、エネルギー密度向上等の観点からは、好ましくは1000μm以下、より好ましくは800μm以下、更に好ましくは500μm以下が挙げられ、電池素子を保護するという外装材の機能を維持する観点からは、好ましくは50μm以上、より好ましくは80μm以上、更に好ましくは100μm以上が挙げられる。
【0075】
本発明のシーラントフィルムは、外装材に用いる際、シーラントフィルムのA層が外装材の表層側になるように積層することが好ましいが、外装材をパウチ状に成形する際の成形温度が高すぎると、A層に用いた樹脂が成形機に融着してしまい、生産性が低下してしまう場合がある。また、A層に成形性向上のために滑剤などを添加している場合、成形温度が高すぎると滑剤がA層の表面に過剰に析出して成形機を汚染して生産性が低下してしまう場合がある。また、成形温度が高すぎると、A層やシーラントフィルムの他の層から、滑剤以外の添加剤やオリゴマーなどの低分子量成分がA層表面に過剰に析出してしまう場合もある。前記した滑剤やその他の添加剤、低分子量成分が過剰に析出している場合、本発明の外装材のA層同士をヒートシールする際に十分なヒートシール強度が得られない場合がある。このような場合、本発明の外装材を硫化物系の全固体電池に用いる際に、パウチ端面のシール部から水蒸気が侵入しやすく、有害物質である硫化水素が発生してパウチの内圧が上昇してしまったり、電極や後述するバリア層を腐食してしまったり等、電池が劣化してしまう場合がある。このため、外装材をパウチ状に成形する際の成形温度は100℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましい。
【0076】
前記成形温度を制御する方法としては、本発明のシーラントフィルムの各層を構成する材料の種類や含有量、本発明のシーラントフィルムに用いる環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度、本発明のシーラントフィルムの一方の面同士の静摩擦係数、本発明のシーラントフィルムの一方の面の十点平均粗さを好ましく制御する方法等が挙げられる。
【0077】
本発明のシーラントフィルムを用いた外装材は、非水電解質を用いたリチウムイオン電池や全固体リチウム二次電池などの二次電池用の外装材として好ましく用いられるが、高温でのシール強度と水蒸気バリア性、成形性に優れるため、特に全固体電池用の外装材として好ましく用いることができる。また、本発明のシーラントフィルムは成形性に優れるため、本発明のシーラントフィルムを用いた外装材は、特に絞り深さ5mm以上の成形体の成形に好適に用いることができる。
【0078】
さらに、本発明のシーラントフィルムを用いた二次電池は、電動自動車、電動航空機等の電動デバイスの用の二次電池として好ましく用いることができる。
【実施例0079】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0080】
(1)メルトフローレート(MFR)
東洋精機製作所製メルトインデクサを用い、JIS K7210-1997に準拠し、荷重21.18Nで実施例または比較例に使用した原料のMFRを測定した。なお、測定温度はPEは190℃、PP、CEBCは230℃で測定した。
【0081】
(2)溶融粘度
東洋精機製作所製キャピログラフ(1D)を用い、温度230℃、せん断速度121s-1で環状オレフィン系樹脂の溶融粘度を測定した。
【0082】
(3)融点
実施例または比較例のA層に用いたPP、PE、CEBCについて、5mgをアルミニウム製パンに採取し、示差走査熱量計(セイコーインスツル製EXSTAR DSC6220)を用いて、窒素雰囲気下で、室温から250℃まで昇温した後250℃で5分間保持、その後250℃から25℃まで降温した後25℃で5分間保持、その後再度250℃まで昇温した際の吸熱ピークの温度を各樹脂の融点とし、A層に使用した原料の融点のうち、最も高い融点をA層の融点とした。なお、吸熱ピークが2つ以上ある場合は、高温側のピークを原料の融点とした。また、昇温速度、降温速度は20℃/分で測定した。
【0083】
(4)ガラス転移点
ISO11357-1(2016)、ISO11357-2(2020)に準拠し、実施例または比較例で用いたCOC1、COC2について、5mgをアルミニウム製パンに採取し、示差走査熱量計(セイコーインスツル製EXSTAR DSC6220)を用いて、窒素雰囲気下で、室温から250℃まで10℃/minで昇温し、環状オレフィン系樹脂のガラス転移点を評価した。
【0084】
(5)各層の厚み
シーラントフィルムの各層の厚みは、ミクロトーム法を用い、シーラントフィルムの幅方向(シーラントフィルム製膜時の機械方向に対して垂直の方向)-厚み方向に断面を有する幅5mmの断面片を作製し、該断面に白金コートをして観察試料とした。次に、日立製作所製電界放射走差電子顕微鏡(S-4800)を用いて、シーラントフィルム断面を任意の倍率で観察し、各層について観察画像の任意の箇所10点の厚みを測定し、その平均値を各層の厚みとした。
【0085】
(6)B層の分散状態
(5)で作成した観察試料を用い、日立製作所製電界放射走差電子顕微鏡(S-4800)でシーラントフィルムのB層を含む領域を2,000倍、3,000倍、4,000倍、5,000倍、7,500倍、10,000倍、15,000倍、20,000倍で観察し、以下の基準で分散状態を評価した。なお、シーラントフィルム中にB層が二層ある場合は両方のB層を観察して評価したが、今回評価した実施例、比較例については、二層のB層は同様の分散状態を示した。
共連続:界面の長さが分散径に対して10倍以上である不定形構造が一つ以上みられた
海島:いずれの観察倍率においても円状もしくは楕円状のドメインのみがマトリックス中に点在していた
一様:B層に使用している樹脂は一種であり、分散構造は観察されなかった。
【0086】
(7)静摩擦係数
JIS K7125-1985に準じた装置を用いて、試料面に対し荷重100g、移動速度20cm/分で、キャスト成形時に冷却ロールに非接触であった方のA層の表面同士の静摩擦係数を測定した。
【0087】
(8)十点平均粗さ
十点平均粗さRzは、小坂研究所製の高精度微細形状測定器(SURFCORDER ET4000A)を用い、JIS B0601-1994に準拠し、キャスト成形時に冷却ロールに非接触であった方のA層の表面について、下記測定条件にて測定を行った。なお、1種類のシーラントフィルムにつき各方向3回測定を行い、合計6回測定した算術平均値を用いた。
測定範囲:機械方向(MD)0.2mm、幅方向(TD)2mm
測定ピッチ:機械方向(MD)10μm、幅方向(TD)0.2μm
触針:先端半径2.0μmのダイヤモンド針
荷重:100μN
カットオフ:0.8mm。
【0088】
(9)水蒸気透過率
実施例および比較例で作成したシーラントフィルムを用いて、JIS Z0208-1976(カップ法)に準拠して60℃、相対湿度90%、24時間の条件で測定し、1mm厚みあたりの値に換算して水蒸気透過率を求めた。なお、シーラントフィルムはキャスト成形時に冷却ロールに非接触であった方のA層がカップ側になるようにセットした。
【0089】
(10)外装材の作成
市販のアルミ箔(40μm)の片面に、市販の接着剤(DIC製、商品名「LX500/KO55」)を介して市販のナイロン(厚み25μm、片面コロナ処理)を、該ナイロンのコロナ処理面に接着剤が塗布されるようにしてドライラミネートした後、アルミ箔の、ナイロンをラミネートしなかった方の面に、市販の接着剤(エポキシ系接着剤)を介してシーラントフィルムのキャスト成形時に冷却ロールに非接触であった方のA層が外装材の表面になるようにドライラミネートした。なお、シーラントフィルムはアルミ箔との接着面側を予めコロナ処理しておき、コロナ処理面に接着剤が塗布されるようにドライラミネートを行った。その後、40℃のオーブンで5日間加熱したものを外装材として用いた。
【0090】
(11)A層同士をヒートシールした後の100℃雰囲気下における剥離強度(シール強度)
100mm×15mmの外装材2枚を、A層の表面が内面になるようにして、15mm幅の平板ヒ-トシーラーを使用し、上下のシールバー温度を200℃、シール圧力0.3MPa、シール時間4秒の条件でヒートシールしてサンプルを作成した(サンプル中のヒートシール箇所のサイズ;幅15mm、長さ15mm)。なお、サンプルは、長手方向が外装材の機械方向(MD)であるものと、長手方向が外装材の幅方向(TD)であるものの二種類作成した。その後、引張試験機(オリエンテック製万能試験機“テンシロン”(登録商標))を用い、100℃雰囲気下で外装材の機械方向(MD)及び幅方向(TD)にそれぞれ5回、剥離角度180度、速度300mm/分で剥離した。剥離開始箇所を起点として5mm~10mmの範囲の剥離荷重の算術平均値を各サンプルのシール強度とし、機械方向(MD)、幅方向(TD)各5回のシール強度の算術平均値(合計10回分の平均値)を外装材のシール強度とし、10N/15mm以上を高温でのシール性が良好なものとして判断した。
【0091】
(12)成形性
株式会社JMT製の深絞り成形装置を用いて、100mm×150mmにカットした外装材の熱可塑性樹脂層A側の表面が成形体の収容凹部の内側に来るように下記成形条件で外装材に深さ8mmの直方体形状に深絞り成形を行い、以下A~Cの基準で評価した。
【0092】
<成形条件>
成形型雄型:89mm×54mm、R=2mm
成形型雌型:118mm×175mm、R=2mm
しわ抑え圧:0.5MPa(エア源圧力)
材質:ステンレス鋼。
成形温度:50℃から100℃まで10℃ごとに温度を上げて成形し、得られた成形体の収容凹部の内側の表面を目視により観察し、クラック等の破損がなく、成形可能な温度のうち、一番低い温度を外装材の成形温度とした。
【0093】
<評価基準>
A:成形温度が50℃
B:成形温度が60℃~100℃
C:100℃で外装材が破損した。
【0094】
実施例および比較例のシーラントフィルムを構成する原料を以下に示す。
COC1;三井化学製のCOC(APEL(商標)APL6509T)、ガラス転移点:80℃、溶融粘度:600Pa・s
COC2;三井化学製のCOC(APEL(商標)APL6011T)、ガラス転移点:105℃、溶融粘度:740Pa・s
PP;融点:138℃、MFR3g/10分(230℃で測定)の市販のエチレンプロピレンランダム共重合体
CEBC;JSR製のオレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロックコポリマー(ダイナロン(登録商標)6200P)、融点97℃、MFR2.5g/10分(230℃で測定)
PE;融点:113℃、MFR3.8g/10分(190℃で測定)の市販の直鎖状低密度ポリエチレン
PE粒子MB;平均粒子径10μmのポリエチレン粒子(三井化学製“ミペロン”(登録商標)PM-200)を10質量%と前記PPを90質量%からなるマスターバッチ
EBSA;市販のエチレンビスステアリン酸アミド
(実施例1)
表1に示すA層、B層、C層それぞれの原料を予め250℃で二軸押出機にて溶融混練したものを、A層、B層、C層の原料として用いた。A層が10μm、B層が5μm、C層が50μm、B層が5μm、A層が10μmとなるように、Tダイを用いて250℃でA層、B層、C層、B層、A層の順に積層された五層共押出し、40℃の冷却ロール上でキャスト成形し、厚さ80μmの五層構成のシーラントフィルムを得た後、各種評価を実施した。
【0095】
(実施例2~5、比較例1)
A層、B層、C層の原料を表1の通りとした以外は、実施例1と同様にした。
【0096】
(比較例2)
A層、B層、C層の原料を表1の通りとし、A層が5μm、B層が5μm、C層が60μm、B層が5μm、A層が5μmとなるように、この順番で五層共押出ししたことが以外は、実施例1と同様にした。
【0097】
(比較例3)
A層、C層の原料を表1の通りとし、A層が20μm、C層が40μm、A層が20μmとなるように、この順番でTダイを用いて250℃で三層共押出し、厚さ80μmの三層構成のシーラントフィルムを得たこと以外は、実施例1と同様にした。
【0098】
実施例1~5のシーラントフィルムおよびこれらを用いた外装材は高温でのシール性、水蒸気バリア性および成形性に優れ、なかでも実施例1および実施例2は高温でのシール性、水蒸気バリア性、成形性のバランスに特に優れるものであった。一方、比較例1~3は高温でのシール性、水蒸気バリア性、成形性に劣るものであった。
【0099】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の外装材用シーラントフィルムは、高温でのシール性、水蒸気バリア性および成形性に優れるため、二次電池用の外装材用シーラントフィルム、特に全固体電池用の外装材用シーラントフィルムとして好ましく用いることができる。
図1
図2