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  • 特開-ラメ糸及びそれを含む織編物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175736
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ラメ糸及びそれを含む織編物
(51)【国際特許分類】
   D02G 3/12 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
D02G3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093686
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 香太郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 喜昭
【テーマコード(参考)】
4L036
【Fターム(参考)】
4L036MA04
4L036MA20
4L036PA21
4L036UA12
(57)【要約】
【課題】
やわらかく、肌面への刺激感が軽減されるソフトな表面タッチ感と、細かなところまで精密な高精細外観を有するラメ糸及び織編物を提供する。
【解決手段】
金属光沢糸とフィラメントとを含むラメ糸であって、前記金属光沢糸の幅Lが50μmm以上130μm以下であり、前記フィラメントの強度が5.5cN/dtex以上であり、前記ラメ糸の総繊度が10dtex以上50dtex以下であり、前記金属光沢糸の幅Lに対する前記金属光沢糸の幅Lと前記フィラメントの直径Dとの差(L-D)の比((L-D)/L)が0.70以下であるラメ糸。

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属光沢糸とフィラメントとを含むラメ糸であって、前記金属光沢糸の幅Lが50μm以上130μm以下であり、前記フィラメントの強度が5.5cN/dtex以上であり、前記ラメ糸の総繊度が10dtex以上50dtex以下であり、前記金属光沢糸の幅Lに対する前記金属光沢糸の幅Lと前記フィラメントの直径Dとの差(L-D)の比((L-D)/L)が0.70以下であるラメ糸。
【請求項2】
前記フィラメントが熱可塑性合成繊維である請求項1に記載のラメ糸。
【請求項3】
前記フィラメントが異形断面形状を有している請求項1または2に記載のラメ糸。
【請求項4】
前記フィラメントが酸化チタンを含む請求項1または2に記載のラメ糸。
【請求項5】
前記酸化チタンの濃度がフィラメントに対し0.1質量%以上15.0質量%以下である、請求項4に記載のラメ糸。
【請求項6】
請求項1または2に記載のラメ糸を含む織編物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラメ糸及びそれを含む織編物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、メタリックな光沢を持つ金銀糸は、高級感やきらびやかさから、女性向けファッションとして、プリント地や無地のニット地などの素材に多用されてきた。また、華やかなラメ糸としてカ-テンなどインテリア繊維製品にも多用されている。
【0003】
例えば、金属蒸着フィルムをマイクロスリットして得られるスリット光沢糸と他糸とを含むラメ糸が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
また、ラメ糸を用いた織編物の柔軟性を改善するため、金銀糸用フィルムとフィラメントからなる複合金銀糸芯糸において、フィルムの長手方向にランダムに捻れさせ、フィラメントの単糸と交絡した収束部を有した複合金銀糸が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
さらに、ラメ糸を用いた布帛の肌触りを改善するため、基材と金属薄膜層とからなる積層体をスリットして得られる金属光沢糸を芯糸とし、短繊維群を鞘糸とすることを特徴とする精紡交撚糸が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6400868号公報
【特許文献2】特開2012-207343号公報
【特許文献3】特開平11-217738号公報
【特許文献4】特開2000-54234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般にラメ糸は上述したように外観を重視した加飾性を目的とするものであるから、フィルムを用いた光沢糸には一定の幅が必要とされている。例えば、特許文献1に記載の基材フィルムの片面に金属蒸着層と金属蒸着保護層を積層してなる金属蒸着フィルムをマイクロスリットして得られるスリットラメ糸の幅は、0.15mm以上が好ましいことが記載されている。しかしながら、幅が広いと高精細な外観を得ることができなかった。また、特許文献1ではスリットラメ糸と他糸とを撚糸しているが、他糸は強度の観点からラメ糸の幅が狭くなるほど強度のために太くする必要があり、これも理由として高精細な外観を得ることが困難であった。また、金属光沢糸の幅が広い場合や他糸が太い場合、柔軟性や肌触りにも劣るものであった。
【0008】
一方、特許文献3に記載の複合金銀糸では、フィルムの長手方向にランダムに捻れた特異な構造により優れた柔軟性が得られるとされている。しかし、柔軟性を得るためには特異な構造に限定されてしまうことに加え、光沢糸の幅が太く、複合するフィラメントの繊度も太いため、やはり高精細な外観を得ることができなかった。
【0009】
また、特許文献4に記載の技術では、精紡交撚糸とすることで肌触りを改善しているが、上記同様特異な構造に限定されるほか、高精細な外観や優れた柔軟性を得ることができなかった。
【0010】
本発明者らは、高精細な外観が得られていない理由を検討した結果、従来のラメ糸は、光沢糸の幅を狭くすると強度が低下し、他糸を太くせざるを得ないこと、そして、このような構成にするとラメ糸における他糸の比率が相対的に増加し光沢糸の比率が低下するため、ラメ糸の加飾性が低下すること、がわかった。すなわち、従来のラメ糸は、高精細な外観や、柔軟性、肌触りなどの風合い、が得られないという課題を見出した。
【0011】
本発明は、細かなところまで精密な高精細外観と、優れた柔軟性や肌触りを有するラメ糸及びそれを含む織編物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記課題を解決するために、次の構成を有する。
(1)金属光沢糸とフィラメントとを含むラメ糸であって、前記金属光沢糸の幅Lが50μm以上130μm以下であり、前記フィラメントの強度が5.5cN/dtex以上であり、前記ラメ糸の総繊度が10dtex以上50dtex以下であり、前記金属光沢糸の幅Lに対する前記金属光沢糸の幅Lと前記フィラメントの直径Dとの差(L-D)の比((L-D)/L)が0.70以下であるラメ糸。
(2)前記フィラメントが熱可塑性合成繊維である上記(1)に記載のラメ糸。
(3)前記フィラメントが異形断面形状を有している上記(1)または(2)に記載のラメ糸。
(4)前記フィラメントが酸化チタンを含む上記(1)~(3)のいずれかに記載のラメ糸。
(5)前記酸化チタンの濃度がフィラメントに対し0.1質量%以上15.0質量%以下である、上記(4)に記載のラメ糸。
(6)上記(1)~(5)のいずれかに記載のラメ糸を含む織編物。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高精細な外観と、やわらかく、肌面への刺激感が軽減されたソフトな表面タッチ感、を有するラメ糸およびそれを含む織編物得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明におけるラメ糸の実施態様の一例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明におけるラメ糸とは、金属光沢糸とフィラメントとを含む糸をいう。金属光沢糸としては、金属を蒸着等することにより金属調の光沢を有するフィルムに必要に応じて着色を施しこれをスリット状に裁断した糸が例示できるが、本発明においては金属調の光沢を有するものであれば必ずしも金属を含む必要はなく、例えば干渉発色等により金属調の光沢を有するフィルムをスリットして得られる糸であってもよい。コストや簡便性の点では、金属蒸着フィルムを用いた金属光沢糸であることが好ましい。金属蒸着フィルムとしては特に制限はなく、公知の製法で得られるすべてのものを用いることができる。例えば、ポリエステル、ポリアミドや塩化ビニ-ル等の各種フィルムに、金、銀、アルミニウム、ニッケル、錫等の金属、合金または金属化合物の金属層を、蒸着、スパッタリング、イオンビーム、イオンプレーティングやコーティングなどの公知の方法で形成させることができる。また、着色することで任意の色彩の金属光沢とすることもできる。さらに、金属層を保護するために、ポリマーコーティングや各種フィルムをラミネ-ト加工することもできる。得られた金属光沢フィルムはスリットして金属光沢糸とすることができる。
【0016】
本発明における金属光沢糸の幅Lは130μm以下である。幅Lは110μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。前記範囲を超えると、精細な外観が得られず、風合いも硬く肌触りも悪くなる。また、幅Lは50μm以上である。80μm以上が好ましい。前記範囲未満であると、光沢外観が乏しくなり、また毛羽立ち等により品位が低下しやすくなる。なお、金属光沢糸の幅Lは、繊維軸方向に垂直な横断面において最も長い部分をいい、必ずしもスリット幅とは一致しなくてもよい。測定方法は後述する実施例に記載のとおりである。また、金属光沢糸の厚みは特に限定されないが、一般には1~30μmである。
【0017】
本発明のラメ糸に含まれるフィラメントとしては特に限定されず、天然繊維、化学繊維、合成繊維など適宜使用することができるが、強度やコストの点で合成繊維が好ましい。合成繊維を構成するポリマーとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリフェニレンサルファイドなどのポリマーおよびそれらの共重合体の1種または複数の混合物が挙げられる。中でも、熱可塑性ポリマーを用いた熱可塑性合成繊維であることが好ましい。表面タッチのソフト感が向上する点で、共重合体を少なくとも一部に用いることは、本発明の好ましい態様である。
【0018】
本発明におけるフィラメントの強度は、5.5cN/dtex以上とする。6.0cN/dtex以上であることが好ましい。一般的なフィラメントの強度は5.0cN/dtex以下であるが、強度が上記した本発明の範囲未満であると、ラメ糸強度を上げるために金属光沢糸の幅を広くする必要が生じ高精細な外観が得られない場合や、幅を狭くすると強度が低下して毛羽立ちや、編成、製織時に糸切れが発生する懸念も生じる場合がある。上限は特に限定されないが、風合いの点で10.0cN/dtex以下が好ましく、7.0cN/dtex以下がより好ましい。上記範囲となるフィラメントの製造方法としては特に限定されないが、高重合度ポリマーを用い、低紡糸速度で溶融紡糸した未延伸糸に、複数の加熱ローラを用いて多段延伸を施す製法が例示できる。
【0019】
また、フィラメントの総繊度は15dtex以下であることが好ましく、12dtex以下であることがより好ましい。総繊度が前記範囲であると、高精細な外観や柔軟な風合い、なめらかな肌触りを得る点で好ましい。また、5dtex以上であることが好ましく、8dtex以上であることがより好ましい。総繊度が前記範囲であると、毛羽の発生が抑制され、良好な肌触りとなる点で好ましい。
【0020】
フィラメントの直径Dは45μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがより好ましい。フィラメント直径が前記範囲であると、高精細な外観や柔軟な風合い、なめらかな肌触りを得る点で好ましい。また、20μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましい。フィラメント直径Dが前記範囲であると、良好な肌触りとなる点で好ましい。本発明でいうフィラメントの直径Dは、フィラメントの総繊度を真円断面のモノフィラメントに換算して求めた値を用い、具体的には後述する実施例の方法で測定した値を用いる。本発明におけるフィラメントはマルチフィラメントでもモノフィラメントでもよいが、直径Dの値はフィラメント本数によらず総繊度から換算した値を用いる。
【0021】
上記フィラメントの長さ方向に垂直な方向に切ったときの横断面形状は特に限定されず、真円断面形状、異形断面形状、のいずれでもよい。異形断面形状としては扁平断面、三角形、四角形、六角形、八角形などの多角形断面、一部に凹凸部を持ったダルマ断面、Y型断面、星型断面等の様々な断面形状をとることができる。本発明においては光沢の点で異形断面形状であることが好ましく、三角形断面であることがより好ましい。
【0022】
本発明においてフィラメントが、酸化チタン、シリカ、酸化バリウムなどの無機質、カーボンブラック、染料や顔料などの着色剤、難燃剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、あるいは紫外線吸収剤などの各種添加剤を含むことが好ましい。本発明においては、特に酸化チタンを含むことが、高精細な外観に自然な色調を与え、耐候性、耐変色性に優れ、また、表面タッチ感の点で好ましい。酸化チタンの濃度は、それを含むフィラメントに対し0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましい。酸化チタンが前記範囲以上含むと、糸表面の突起が増加し、生地にした際のタッチ感がより向上する。また、酸化チタンが15.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以下であることがより好ましく、3.0質量%以下であることがさらに好ましい。酸化チタン濃度を上記範囲以下とすることで、糸表面の突起を適度に制御し、ソフトな表面タッチ感を得られやすい。酸化チタン濃度は後述する実施例に記載の方法で測定した値を用いる。
【0023】
本発明のラメ糸は金属光沢糸とフィラメントとを含むが、その形態は特に限定されない。撚糸、仮撚交絡複合、エアー加工、などが例示できるが、撚糸であることが落ち着いた外観や滑らかな肌触りに点で好ましい。撚糸形態は丸撚、蛇腹、タスキ、ブリヤン、羽衣、など特に限定されないが、タスキであるとソフトな表面タッチ感をもつ優れた風合いと、従来のラメ糸では得られなかった細かなところまで精密な高精細外観を得られる点で好ましい。例えば、図1は、金属光沢糸(1)にフィラメント(2)がタスキ形態で撚糸されたラメ糸(3)の一態様である。また、製造方法についても特に限定されず、スリット状に裁断した金属光沢糸を芯糸に、フィラメントなどを例えばたすき状に撚り合わせるなど、従来公知の方法を採用することができる。
【0024】
本発明のラメ糸において、金属光沢糸の幅L(μm)に対する上記金属光沢糸の幅Lと上記フィラメントの直径D(μm)との差(L-D)の比((L-D)/L)(以下、この比を「外観指数」と称する場合がある)が0.70以下である。0.70以下であると、生地にした際、隣り合う糸の空隙で生地表面に微細な凹凸感が生まれ、上品な光の光沢、高繊細な見え方となる。数字が小さいほど視覚的に繊細さが増すということではなく、0.70以下であればよい。上記理由により外観指数の下限は特に限定されないが、製造しやすい点で0.50以上であることが好ましい。一方、外観指数が上記範囲未満であると、高精細な外観が得られず、またソフト感、表面タッチ感も悪化する。本発明においては、この外観指数の範囲とともに、金属光沢糸の幅Lの範囲やフィラメントの強度を上述した本発明の範囲とする。
【0025】
本発明のラメ糸の総繊度は50dtex以下である。45dtex以下が好ましく、40dtex以下がより好ましい。上記範囲を超えると、精細な外観が得られにくく、風合いも硬くなる。また、総繊度は10dtex以上であり、20dtex以上が好ましく、30dtex以上がより好ましい。総繊度が上記範囲未満であると、光沢外観が乏しくなり、また毛羽立ち等により品位が低下しやすくなる。
【0026】
本発明の織編物は、本発明のラメ糸を含むものであれば特に限定されない。織編物の組織も特に限定されず、織物の場合、その組織は使用される用途によって平組織、綾組織、朱子組織やそれらの変化組織などいずれであっても構わない。また編物の場合、その組織は使用される用途によって丸編地の天竺組織、インターロック組織、スムース組織、経編み地のハーフ組織、サテン組織、ジャカード組織やそれらの変化組織などいずれであっても構わない。これら織編物を製造する方法も、公知の織機や編機を用いることができ、特段特殊な方法を必要とするものではない。なお、本発明において織編物とは、織物、編物、織物と編物、を含む総称である。
【実施例0027】
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。また、本文中または実施例に記載の各物性値は以下の測定方法によるものである。
【0028】
[マルチフィラメント、ラメ糸の総繊度]
JIS L1013 8.3(2010) A法 に準じ算出し、JIS Z8401の規則B(四捨五入法)によって整数に丸めた値を総繊度とした。
【0029】
[マルチフィラメントの強度]
JIS L1013 8.5.1(2010)引張強さ に準じて測定した。
【0030】
つかみ間隔は200mm、引っ張り速度は200mm/分として、引っ張り試験機(株式会社島津製作所製)で荷重-伸長曲線を求め、破断時の荷重値を初期繊度で割り、それを引張強さとした。なお、本発明においては、少数2桁目を四捨五入して、少数1桁とした数字を用いた。
【0031】
[酸化チタン濃度]
JIS L1013 8.26(2010)酸化チタンに準じて測定し、2回の平均値をJIS Z8401の規則B(四捨五入法)によって小数点以下1けたに丸めた値を酸化チタン濃度とした。
【0032】
[フィラメント直径D]
上記で求めたマルチフィラメントの総繊度と樹脂の密度から下式により、真円モノフィラメントとした場合の直径を換算した値を直径D(μm)とした。
D(μm)=11.9×√((9/10)×繊度(dtex))/(ρ)
ここで密度ρは、以下の実施例においてポリエステルの場合1.38、ポリアミドの場合1.14の値を用いた。密度ρは、JIS K7112(1999)A法により得られた値を用い算出した。
【0033】
[金属光沢糸の幅L]
JIS B7507に規定する最小読取値0.02mmのノギスを用い、長さ300mmの試験糸を取り、長さ方向に、ほぼ等間隔に3カ所を測定し、各測定点におけるもっとも長い幅を測定し、その平均値をμm単位としてL(μm)とした。
【0034】
[外観指数]
上記した方法で求めたマルチフィラメントの直径D(μm)、金属光沢糸の幅L(μm)を用いて、下記式にて少数第3位を四捨五入して第2位として求めた。
・外観指数=(L-D)/L。
【0035】
[高精細外観]
高精細な外観評価については、目視によって熟練者10名により、次の3段階判定法で評価した。◎、○を合格とした。
◎:細かなところまで精密であり、高精細外観が強い。
○:細かなところまで精密であり、高精細外観がある。
×:細かなところが粗雑であり、高精細外観が弱い。
【0036】
[風合い]
ソフト感の評価については、熟練者10名により、次の4段階判定法で評価した。◎、○を合格とした。
◎:手で触った際のソフト感を特に強く感じる風合い。
○:手で触った際のソフト感を感じる風合い。
△:手で触った際のソフト感を少し感じる風合い。
×:手で触った際のソフト感を感じない風合い。
【0037】
[編成性]
編成性の評価については、編成糸切れがない場合は○とし、編成糸切れが発生した場合を×とした。
【0038】
[実施例1]
ポリエステルフィルムに銀を蒸着した幅100μmの金属光沢糸と、8デシテックス1フィラメント、直径30μm、強度6.4cN/dtex、酸化チタン含有量0.3質量%、三角形断面のポリアミドフィラメントとをタスキ撚して撚糸しラメ糸を得た。得られたラメ糸は総繊度34デシテックス、外観指数は0.70であった。
【0039】
得られたラメ糸を32ゲージの丸編機でスムース組織を編成した後、丸編地を開反し、リラックス精錬(温度95℃)、プレセット(温度190℃)、酸性染料による染色加工(温度95℃)、ファイナルセット(温度170℃)を行なった。得られた編物は、ソフトな表面タッチ感をもつ、優れた風合いと、細かなところまで精密な高精細外観が得られた。
【0040】
[実施例2]
ポリアミドフィルムに銀を蒸着した幅100μmの金属光沢糸と、11デシテックス5フィラメント、直径35μm、強度6.1cN/dtex、酸化チタン含有量0.3質量%、三角形断面のポリアミドフィラメントとをタスキ撚して撚糸しラメ糸を得た。得られたラメ糸は総繊度37デシテックス、外観指数は0.65であった。
【0041】
得られたラメ糸を32ゲージの丸編機でスムース組織を編成した後、丸編地を開反し、リラックス精錬(温度95℃)、プレセット(温度190℃)、酸性染料による染色加工(温度95℃)、ファイナルセット(温度170℃)を行なった。得られた編物は、ソフトな表面タッチ感をもつ、優れた風合いと、細かなところまで精密な高精細外観が得られた。
【0042】
[実施例3]
ポリエステルフィルムに銀を蒸着した幅80μmの金属光沢糸と、12デシテックス1フィラメント、直径33μm、強度6.2cN/dtex、酸化チタン含有量0.3質量%、三角形断面のポリエステルフィラメントとをタスキ撚して撚糸しラメ糸を得た。得られたラメ糸は総繊度35デシテックス、外観指数は0.58であった。
【0043】
得られたラメ糸を32ゲージの丸編機でスムース組織を編成した後、丸編地を開反し、リラックス精錬(温度95℃)、プレセット(温度185℃)、分散染料による染色(温度130℃)、ファイナルセット(温度150℃)を行なった。得られた編物は、ソフトな表面タッチ感をもつ、優れた風合いと、細かなところまで精密な高精細外観が得られた。
【0044】
[実施例4]
ポリエステルフィルムに銀を蒸着した幅80μmの金属光沢糸と、16デシテックス5フィラメント、直径38μm、強度6.3cN/dtex、酸化チタン含有量0.3質量%、三角形断面のポリエステルフィラメントとをタスキ撚して撚糸しラメ糸を得た。得られたラメ糸は総繊度39デシテックス、外観指数は0.52であった。
【0045】
得られたラメ糸を32ゲージの丸編機でスムース組織を編成した後、丸編地を開反し、リラックス精錬(温度95℃)、プレセット(温度185℃)、分散染料による染色(温度130℃)、ファイナルセット(温度150℃)を行なった。得られた編物は、ソフトな表面タッチ感をもつ、優れた風合いと、細かなところまで精密な高精細外観が得られた。
【0046】
[実施例5]
ポリアミドフィルムに銀を蒸着した幅100μmの金属光沢糸と、11デシテックス5フィラメント、直径35μm、強度6.1cN/dtex、酸化チタン含有量0.3質量%、真円断面のポリアミドフィラメントとをタスキ撚して撚糸しラメ糸を得た。得られたラメ糸は総繊度37デシテックス、外観指数は0.65であった。
【0047】
得られたラメ糸を32ゲージの丸編機でスムース組織を編成した後、丸編地を開反し、リラックス精錬(温度95℃)、プレセット(温度190℃)、酸性染料による染色加工(温度95℃)、ファイナルセット(温度170℃)を行なった。得られた編物は、ソフトな表面タッチ感をもつ、風合いと、高精細外観が得られた。
【0048】
[実施例6]
ポリアミドフィルムに銀を蒸着した幅100μmの金属光沢糸と、11デシテックス5フィラメント、直径35μm、強度6.1cN/dtex、酸化チタン含有量0質量%、三角形断面のポリアミドフィラメントとをタスキ撚して撚糸しラメ糸を得た。得られたラメ糸は総繊度37デシテックス、外観指数は0.65であった。
【0049】
得られたラメ糸を32ゲージの丸編機でスムース組織を編成した後、丸編地を開反し、リラックス精錬(温度95℃)、プレセット(温度190℃)、酸性染料による染色加工(温度95℃)、ファイナルセット(温度170℃)を行なった。得られた編物は、ソフトな表面タッチ感をもつ、風合いと、高精細外観が得られた。また、実施例5と比較してドレープが美しい上品で自然な光沢感に優れていた。
【0050】
[比較例1]
ポリエステルフィルムに銀を蒸着した幅100μmの金属光沢糸と、33デシテックス6フィラメント、直径61μm、強度6.1cN/dtex、酸化チタン含有量0.3質量%、三角形断面のポリアミドフィラメントとをタスキ撚して撚糸しラメ糸を得た。得られたラメ糸は総繊度59デシテックス、外観指数は0.39であった。
【0051】
得られたラメ糸を32ゲージの丸編機でスムース組織を編成した後、丸編地を開反し、リラックス精錬(温度95℃)、プレセット(温度190℃)、酸性染料による染色加工(温度95℃)、ファイナルセット(温度170℃)を行なった。得られた編物は、風合いが固く、高精細な外観も得られなかった。
【0052】
[比較例2]
ポリアミドフィルムに銀を蒸着した幅200μmの金属光沢糸と、167デシテックス48フィラメント、直径124μm、強度4.6cN/dtex、酸化チタン含有量0.3質量%、三角形断面のポリアミドフィラメントとをタスキ撚して撚糸しラメ糸を得た。得られたラメ糸は総繊度176デシテックス、外観指数は0.38であった。
【0053】
得られたラメ糸を32ゲージの丸編機でスムース組織を編成した後、丸編地を開反し、リラックス精錬(温度95℃)、プレセット(温度185℃)、分散染料による染色加工(温度130℃)、ファイナルセット(温度150℃)を行なった。得られた編物は、風合いが固く、高精細な外観も得られなかった。
【0054】
[比較例3]
ポリエステルフィルムに銀を蒸着した幅100μmの金属光沢糸と、15デシテックス8フィラメント、直径41μm、強度5.1cN/dtex、酸化チタン含有量0.3質量%、三角形断面のポリアミドフィラメントとをタスキ撚して撚糸しラメ糸を得た。得られたラメ糸は総繊度38デシテックス、外観指数は0.59であった。
【0055】
得られたラメ糸を32ゲージの丸編機でスムース組織を編成したが糸切れが発生し編成することは出来なかった。
【0056】
【表1】
【符号の説明】
【0057】
1:金属光沢糸
2:フィラメント
3:ラメ糸
図1