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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017574
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】バッテリの暖機システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/617 20140101AFI20240201BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20240201BHJP
   F25B 39/04 20060101ALI20240201BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20240201BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240201BHJP
   H01M 10/6569 20140101ALI20240201BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20240201BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20240201BHJP
【FI】
H01M10/617
F25B1/00 321J
F25B39/04 Z
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/6569
H01M10/6556
H01M10/651
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120299
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横井 佑樹
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031HH08
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】冷凍サイクルを用いてバッテリを昇温する暖機システムにおいて、バッテリの温度分布が不均一になることを抑制する。
【解決手段】冷凍サイクルの冷媒の凝縮熱によってバッテリを暖機する熱交換器50において、上流側に配置した入口多穴管56の熱交換面積を、他の多穴管57の各々の熱交換面積より小さくする。入口多穴管56を流れる冷媒にガス領域が発生し、他の多穴管57より高温になっても、入口多穴管56の放熱量が小さいので、バッテリの温度分布が不均一になることを抑制できる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍サイクルにおける凝縮熱を用いてバッテリを暖機する、バッテリの暖機システムであって、
前記バッテリと熱交換を行う熱交換器は、
前記冷凍サイクルの冷媒が前記熱交換器に流入する入口ヘッダと、
前記冷媒が前記熱交換器から流出する出口ヘッダと、
前記冷媒の流路において、前記入口ヘッダと前記出口ヘッダとの間に配置されるとともに前記冷媒の流れ方向を反転するための、複数の中間ヘッダと、
前記入口ヘッダと前記中間ヘッダに接続され、前記入口ヘッダに流入した前記冷媒を流通するとともに前記バッテリと熱交換を行う入口多穴管と、
複数の前記中間ヘッダの間に配置され、前記冷媒を流通するとともに前記バッテリと熱交換を行う中間多穴管と、
前記入口多穴管に接続されない前記中間ヘッダと前記出口ヘッダに接続され、前記冷媒を流通するとともに前記バッテリと熱交換を行う出口多穴管と、を備え、
多穴管の単位長さ当たりの熱交換面積を単位熱交換面積としたとき、前記入口多穴管を少なくとも含む上流側の多穴管の単位熱交換面積である上流単位熱交換面積、あるいは、前記出口多穴管を少なくとも含む下流側の多穴管の単位熱交換面積である下流側単位熱交換面積の少なくとも一方が、他の多穴管の単位熱交換面積より小さくされている、バッテリの暖機システム。
【請求項2】
冷凍サイクルにおける凝縮熱を用いてバッテリを暖機する、バッテリの暖機システムであって、
前記バッテリと熱交換を行う熱交換器は、
前記冷凍サイクルの冷媒が前記熱交換器に流入する入口ヘッダと、
前記冷媒が前記熱交換器から流出する出口ヘッダと、
前記冷媒の流路において、前記入口ヘッダと前記出口ヘッダとの間に配置されるとともに前記冷媒の流れ方向を反転するための、複数の中間ヘッダと、
前記入口ヘッダと前記中間ヘッダに接続され、前記入口ヘッダに流入した前記冷媒を流通するとともに前記バッテリと熱交換を行う入口多穴管と、
複数の前記中間ヘッダの間に配置され、前記冷媒を流通するとともに前記バッテリと熱交換を行う中間多穴管と、
前記入口他穴管に接続されない前記中間ヘッダと前記出口ヘッダに接続され、前記冷媒を流通するとともに前記バッテリと熱交換を行う出口多穴管と、を備え、
前記入口多穴管を少なくとも含む上流側の多穴管と前記バッテリとの間の熱抵抗、あるいは、前記出口多穴管を少なくとも含む下流側の多穴管と前記バッテリとの間の熱抵抗の少なくとも一方が、他の多穴管と前記バッテリとの間の熱抵抗より大きくされている、バッテリの暖機システム。
【請求項3】
前記バッテリと前記熱交換器との間には、熱伝導シートが設けられており、
前記入口多穴管を少なくとも含む上流側の多穴管と前記バッテリとの間、あるいは、前記出口多穴管を少なくとも含む下流側の多穴管と前記バッテリとの間の前記熱伝導シートの熱伝導率が、他の多穴管と前記バッテリとの間の前記熱伝導シートの熱伝導率よりも小さい、請求項2に記載のバッテリの暖機システム。
【請求項4】
前記他の多穴管を流通する前記冷媒は、気液二相状態である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のバッテリの暖機システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バッテリの暖機システムに関し、特に、冷凍サイクルを用いてバッテリを昇温する暖機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)やハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)に搭載された、バッテリの温度調整を行うため、冷凍サイクルを用いることが知られている。たとえば、特開2013-60066号公報(特許文献1)には、自動車用温調装置では、バッテリの温度が所定温度以下のとき、冷凍サイクルの凝縮熱(放熱)を用いて、バッテリの暖機を図ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-60066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷凍サイクルを用いてバッテリの暖機を行うには、バッテリの熱交換面と熱的に接続する熱交換器内を流通する冷媒の凝縮熱(放熱)によって、バッテリの昇温を行う。熱交換器は、冷凍サイクルにおける凝縮器に相当し、熱交換器内を流通する冷媒が凝縮する際に発生する凝縮熱(放熱)を、熱交換器の熱交換面からバッテリの熱交換面に伝導して、バッテリが昇温される。
【0005】
熱交換器を流通する冷媒が、熱交換器内のすべての流路において気液二相状態であれば、熱交換器の熱交換面の温度は、ほぼ一定である。しかし、冷凍サイクルの圧縮機から熱交換器(凝縮器)までの流路長、周囲温度、流路や熱交換器からの放熱量等によって、熱交換器内の流路において、冷媒が気体状態であるガス領域、あるいは、冷媒が液体状態である液領域が生じる。熱交換器において、ガス領域にある熱交換面は、気液二相状態にある熱交換面より高温であり、液領域にある熱交換面は、気液二相状態にある熱交換面より低温である。
【0006】
熱交換器の熱交換面に温度差があると、暖機された(昇温された)バッテリの温度分布が不均一になるおそれがある。
【0007】
本開示の目的は、冷凍サイクルを用いてバッテリを昇温する暖機システムにおいて、バッテリの温度分布が不均一になることを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のバッテリの暖機システムは、冷凍サイクルにおける凝縮熱を用いてバッテリを暖機する。暖機システムにおいて、バッテリと熱交換を行う熱交換器は、冷凍サイクルの冷媒が熱交換器に流入する入口ヘッダと、冷媒が熱交換器から流出する出口ヘッダと、冷媒の流路において、入口ヘッダと出口ヘッダとの間に配置されるとともに冷媒の流れ方向を反転するための複数の中間ヘッダと、入口ヘッダと中間ヘッダに接続され、入口ヘッダに流入した冷媒を流通するとともにバッテリと熱交換を行う入口多穴管と、複数の中間ヘッダの間に配置され、冷媒を流通するとともにバッテリと熱交換を行う中間多穴管と、入口多穴管に接続されない中間ヘッダと出口ヘッダに接続され、冷媒を流通するとともにバッテリと熱交換を行う出口多穴管と、を備える。多穴管の単位長さ当たりの熱交換面積を単位熱交換面積としたとき、入口多穴管を少なくとも含む上流側の多穴管の単位熱交換面積である上流側単位熱交換面積、あるいは、出口多穴管を少なくとも含む下流側の多穴管の単位熱交換面積である下流側熱単位交換面積の少なくとも一方が、他の多穴管の単位熱交換面積より小さくされている。
【0009】
この構成によれば、バッテリの暖機システムにおいて、バッテリと熱交換を行う熱交換器は、冷凍サイクルの冷媒が前記熱交換器に流入する入口ヘッダと、冷媒が熱交換器から流出する出口ヘッダと、冷媒の流路において、入口ヘッダと出口ヘッダとの間に配置されるとともに冷媒の流れ方向を反転させるための複数の中間ヘッダとを備える。入口ヘッダに流入した冷媒を流通するとともにバッテリと熱交換を行う入口多穴管が、入口ヘッダと中間ヘッダに接続される。冷媒を流通するとともにバッテリと熱交換を行う中間多穴管が、複数の中間ヘッダの間に配置される。冷媒を流通するとともにバッテリと熱交換を行う出口多穴管が、中間ヘッダと出口ヘッダに接続される。
【0010】
入口ヘッダに流入した冷媒は、入口多穴管を流れ中間ヘッダに流入し、その流れ方向を反転して中間多穴管を流れる。中間多穴管を流れた冷媒は、出口多穴管を流れ出口ヘッダに流入し、熱交換器から流出する。入口多穴管、中間多穴管、および、出口多穴管を流れる冷媒とバッテリとの間で熱交換を行うことにより、バッテリの暖機(昇温)が行われる。冷媒の流れ方向において、入口多穴管が上流側であり、出口多穴管が下流側である。
【0011】
多穴管の単位長さ当たりの熱交換面積を単位熱交換面積としたとき、入口多穴管を少なくとも含む上流側の多穴管の単位熱交換面積である上流側単位熱交換面積、あるいは、出口多穴管を少なくとも含む下流側の多穴管の単位熱交換面積である下流側単位熱交換面積の少なくとも一方が、他の多穴管の単位熱交換面積より小さくされている。
【0012】
冷媒流路の上流側を流れる冷媒が高温である場合であっても、たとえば、入口多穴管を含む上流側の多穴管を流れる冷媒がガス領域である場合であっても、ガス領域である上流側の多穴管の熱交換面積とバッテリとが熱交換を行う面積である上流側単位熱交換面積が、他の多穴管の単位熱交換面積(上流側以外の中間多穴管の単位熱交換面積、および、出口多穴管の単位熱交換面積)より小さくされているので、上流側の多穴管を流れる冷媒からバッテリへ伝達する熱量を相対的に小さくすることができ、バッテリの温度分布が不均一になることを抑制できる。
【0013】
出口多穴管を含む下流側の多穴管において、上流側と下流側で温度差が大きい場合であっても、たとえば、出口多穴管を含む下流側の多穴管を流れる冷媒が、多穴管の途中で液領域になった場合であっても、液領域の下流側の多穴管とバッテリとが熱交換を行う面積である下流側単位熱交換面積が、他の多穴管の単位熱交換面積(下流側以外の中間多穴管の単位熱交換面積、および、入口多穴管の単位熱交換面積)より小さくされているので、下流側の多穴管を流れる冷媒からバッテリへ伝達する熱量を相対的に小さくすることができ、バッテリの温度分布が不均一になることを抑制できる。
【0014】
入口多穴管を含む上流側の多穴管を流れる冷媒が高温であり、かつ、出口多穴管を含む下流側の多穴管において上流側と下流側で温度差が大きい場合であっても、高温である上流側の多穴管とバッテリとが熱交換を行う面積である上流側単位熱交換面積と、温度差の大きな下流側の多穴管とバッテリとが熱交換を行う面積である下流側単位熱交換面積とが、他の多穴管の単位熱交換面積(上流側と下流側に含まれない中間多穴管の単位熱交換面積)より小さくされているので、上流側の多穴管を流れる冷媒からバッテリへ伝達する熱量を相対的に小さくすることができ、かつ、下流側の多穴管を流れる冷媒からバッテリへ伝達する熱量を相対的に小さくすることができ、バッテリの温度分布が不均一になることを抑制できる。
【0015】
本開示のバッテリの暖機システムは、冷凍サイクルにおける凝縮熱を用いてバッテリを暖機する。暖機システムにおいて、バッテリと熱交換を行う熱交換器は、冷凍サイクルの冷媒が熱交換器に流入する入口ヘッダと、冷媒が熱交換器から流出する出口ヘッダと、冷媒の流路において、入口ヘッダと出口ヘッダとの間に配置されるとともに冷媒の流れ方向を反転するための複数の中間ヘッダと、入口ヘッダと中間ヘッダに接続され、入口ヘッダに流入した冷媒を流通するとともに前記バッテリと熱交換を行う入口多穴管と、複数の中間ヘッダの間に配置され、冷媒を流通するとともにバッテリと熱交換を行う中間多穴管と、入口多穴管に接続されない中間ヘッダと出口ヘッダに接続され、冷媒を流通するとともにバッテリと熱交換を行う出口多穴管と、を備える。入口多穴管を少なくとも含む上流側の多穴管とバッテリとの間の熱抵抗、あるいは、出口多穴管を少なくとも含む下流側の多穴管とバッテリとの間の熱抵抗の少なくとも一方が、他の多穴管とバッテリとの間の熱抵抗より大きくされている。
【0016】
この構成によれば、入口ヘッダに流入した冷媒は、入口多穴管を流れ中間ヘッダに流入し、その流れ方向を反転して中間多穴管を流れる。中間多穴管を流れた冷媒は、出口多穴管を流れ出口ヘッダに流入し、熱交換器から流出する。入口多穴管、中間多穴管、および、出口多穴管を流れる冷媒とバッテリとの間で熱交換を行うことにより、バッテリの暖機(昇温)が行われる。冷媒の流れ方向において、入口多穴管が上流側であり、出口多穴管が下流側である。
【0017】
入口多穴管を少なくとも含む上流側の多穴管とバッテリとの間の熱抵抗、あるいは、出口多穴管を少なくとも含む下流側の多穴管とバッテリとの間の熱抵抗の少なくとも一方が、他の多穴管とバッテリとの間の熱抵抗より大きくされている。
【0018】
冷媒流路の上流側を流れる冷媒が高温である場合であっても、たとえば、入口多穴管を含む上流側の多穴管を流れる冷媒がガス領域である場合であっても、ガス領域の上流側の多穴管とバッテリとの間の熱抵抗が、他の多穴管(上流側以外の中間多穴管および出口多穴管)とバッテリとの間の熱抵抗よりより大きくされているので、上流側の多穴管を流れる冷媒からバッテリへ伝達する熱量を相対的に小さくすることができ、バッテリの温度分布が不均一になることを抑制できる。
【0019】
出口多穴管を含む下流側の多穴管において、上流側と下流側で温度差が大きい場合であっても、たとえば、出口多穴管を含む下流側の多穴管を流れる冷媒が、多穴管の途中で液領域になった場合であっても、液領域である下流側の多穴管とバッテリとの間の熱抵抗が、他の多穴管(下流側以外の中間多穴管および入口多穴管)とバッテリとの間の熱抵抗より大きくされているので、下流側の多穴管を流れる冷媒からバッテリへ伝達する熱量を相対的に小さくすることができ、バッテリの温度分布が不均一になることを抑制できる。
【0020】
入口多穴管を含む上流側の多穴管を流れる冷媒が高温であり、かつ、出口多穴管を含む下流側の多穴管において上流側と下流側で温度差が大きい場合であっても、入口多穴管を含む上流側の多穴管とバッテリとの間の熱抵抗と出口多穴管を含む下流側の多穴管とバッテリとの間の熱抵抗が、他の他穴管(上流側と下流側に含まれない中間他穴管)とバッテリとの間の熱抵抗より大きくされているので、上流側の多穴管を流れる冷媒からバッテリへ伝達する熱量を相対的に小さくすることができ、かつ、下流側の多穴管を流れる冷媒からバッテリへ伝達する熱量を相対的に小さくすることができ、バッテリの温度分布が不均一になることを抑制できる。
【0021】
好ましくは、バッテリと熱交換器との間には、熱伝導シートが設けられており、入口多穴管を少なくとも含む上流側の多穴管とバッテリとの間、あるいは、出口多穴管を少なくとも含む下流側の多穴管とバッテリとの間の熱伝導シートの熱伝導率が、他の多穴管とバッテリとの間の熱伝導シートの熱伝導率よりも小さくなるようにしてもよい。
【0022】
この構成によれば、入口多穴管を少なくとも含む上流側の多穴管とバッテリとの間、あるいは、出口多穴管を少なくとも含む下流側の多穴管とバッテリとの間の熱伝導シートの熱伝導率を、他の多穴管とバッテリとの間の熱伝導シートの熱伝導率よりも小さくしているので、入口多穴管を少なくとも含む上流側の多穴管とバッテリとの間の熱抵抗、あるいは、出口多穴管を少なくとも含む下流側の多穴管とバッテリとの間の熱抵抗を、他の多穴管とバッテリとの間の熱抵抗より大きくすることができる。
【0023】
好ましくは、他の多穴管を流通する冷媒は、気液二相状態である。
【0024】
多穴管を流れる冷媒が、気液二相状態であれば、多穴管の熱交換面の温度は、ほぼ一定である。この構成によれば、他の多穴管を流れる冷媒が気液二相状態であるので、相対的に単位熱交換面積の大きい、あるいは、バッテリとの間の熱抵抗が相対的に小さい他の多穴管の熱交換面の温度は、ほぼ一定であり、バッテリの温度分布をより均一にすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本開示によれば、冷凍サイクルを用いてバッテリを昇温する暖機システムにおいて、バッテリの温度分布が不均一になることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施の形態1に係る暖機システムの全体構成を示す図である。
図2】実施の形態1における熱交換器の上面視である。
図3】入口多穴管と他の多穴管の断面図である。
図4】比較例における熱交換器の上面視である。
図5】実施の形態1において、冷媒のガス領域の状態を示す図である。
図6】比較例の熱交換器において、冷媒の液領域が生じた例を示している。
図7】実施の形態2における熱交換器の上面視である。
図8】実施の形態3における熱交換器の上面視である。
図9】実施の形態4における熱交換器の上面視である。
図10】実施の形態5における熱交換器の上面視である。
図11】実施の形態6における熱交換器の上面視である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施の形態について説明する。以下の説明では、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない場合がある。
【0028】
(実施の形態1)
図1は、本開示の実施の形態1に係る暖機システム1の全体構成を示す図である。暖機システム1は、冷凍サイクル10とバッテリ30と熱交換器50とを備える。
【0029】
本実施の形態において、バッテリ30は組電池であり、複数の単電池(角形電池)31をその厚み方向に並べた組電池である。単電池は、たとえば、リチウムイオン電池であってよく、ニッケル水素電池であってもよい。バッテリ30は、たとえば、BEVやHEV等、電動車両の動力源として、車両に搭載されるバッテリである。
【0030】
本実施の形態において、バッテリ30は、絶縁性の熱伝導シート40を介して、熱交換器50の熱交換面に載置される。熱伝導シート40は、絶縁性および熱伝導性に優れた材料から形成され、弾性を有する。熱伝導シート40は、バッテリ30と熱交換器50との間の絶縁性を維持しつつ、バッテリ30の熱交換面と熱交換器50の熱交換面に密着することにより、バッテリ30と熱交換器50との間の熱抵抗を低減している。
【0031】
冷凍サイクル10は、冷媒流路20に配設された、圧縮機11、凝縮器12、膨張弁(オリフィス)13、蒸発器(コンデンサ)14、および、気液分離器(アキュムレータ)15から構成される。冷凍サイクル10の冷媒は、圧縮機11で圧縮され高温高圧のガス(気体)になり、凝縮器12でバッテリ30と熱交換を行い、熱(凝縮熱)を放出して液化する。なお、凝縮器12は、バッテリ30と熱交換を行う熱交換器50であり、以下、熱交換器50として説明を行う。熱交換器50でバッテリ30と熱交換を行い、凝縮熱を放出して液化した冷媒は、膨張弁13で減圧されると、その圧力の飽和温度まで低下し、一部が気化して蒸発器14に流入する。冷媒は、蒸発器14で大気から熱を吸収して気化し、圧縮機11へ戻る。気液分離器15は、蒸発器14で冷媒が完全に気化できなかった場合に、圧縮機11に液体の冷媒が吸入されるのを抑止するものである。
【0032】
このように、本実施の形態のバッテリ30の暖機システム1は、冷凍サイクル10の凝縮熱を用いて、バッテリ30を暖機(昇温)する。
【0033】
図2は、実施の形態1における熱交換器50(凝縮器12)の上面視である。熱交換器50は、入口ヘッダ51、第1中間ヘッダ52、第2中間ヘッダ53、第3中間ヘッダ54、出口ヘッダ55、入口多穴管56、および、他の多穴管57(第1中間多穴管57a、第2中間多穴管57b、出口多穴管57c)を備える。
【0034】
入口ヘッダ51は、冷凍サイクル10の圧縮機11で圧縮された高温高圧の冷媒を、入口多穴管56に設けた複数の冷媒流路に分岐する。入口多穴管56は、入口ヘッダ51と第1中間ヘッダ52に接続されている。入口多穴管56の複数の冷媒流路から流出した冷媒は、第1中間ヘッダ52で集合し、第1中間多穴管57aに設けた複数の冷媒流路に流入する。第1中間多穴管57aは、第1中間ヘッダ52と第2中間ヘッダ53に接続されている。第1中間多穴管57aの複数の冷媒流路から流出した冷媒は、第2中間ヘッダ53で集合し、第2中間多穴管57bに設けた複数の冷媒流路に流入する。
【0035】
第2中間多穴管57bは、第2中間ヘッダ53と第3中間ヘッダ54に接続されている。第2中間多穴管57bの複数の冷媒流路から流出した冷媒は、第3中間ヘッダ54で集合し、出口多穴管57cに設けた複数の冷媒流路に流入する。出口多穴管57cの複数の冷媒流路から流出した冷媒は、出口ヘッダ55で集合し、熱交換器50から流出し、膨張弁13で減圧され、蒸発器14へ流入する。このように、熱交換器50に流入した冷媒は、第1中間ヘッダ52、第2中間ヘッダ53、および第3中間ヘッダ54に集合し分岐することによって、その流れ方向が反転し、バッテリ30(単電池31)との熱交換を効率的に行う。なお、図2において、矢印は冷媒の流れを示している。入口他穴管56は、冷媒の流れの最も上流側に位置し、出口他穴管57cは、最も下流側に位置する。
【0036】
本実施の形態において、入口多穴管56の熱交換面積は、他の多穴管57(第1中間多穴管57a、第2中間多穴管57b、出口多穴管57c)の熱交換面積より小さくされている。各多穴管の熱交換面積は、バッテリ30と熱交換を行う面積である。図3は、入口多穴管56と他の多穴管57の断面図である。図3(A)は、入口多穴管56の断面であり、図3(B)は、他の多穴管57(第1中間多穴管57a、第2中間多穴管57b、出口多穴管57c)の断面を示している。入口多穴管56および他の多穴管57は、たとえば、アルミニウムあるいはアルミニウム合金からなり、押し出し成形を用いて製造されてよい。
【0037】
図3に示すように、入口多穴管56の幅はW1であり、たとえば、冷媒流路Chが5個形成されている。他の多穴管57の幅はW2であり、たとえば、冷媒流路Chが10個形成されている。幅W1は幅W2より短く、たとえば、幅W1は幅W2の約1/2である。入口多穴管56の幅W1が、他の多穴管57(第1中間多穴管57a、第2中間多穴管57b、出口多穴管57c)の幅W2より短いので、入口多穴管56の単位長さ当たりの熱交換面積(以下、単位長さ当たりの熱交換面積を、単位熱交換面積とも称する)が、他の多穴管57の単位熱交換面積より小さい。これにより、入口多穴管56の熱交換面積は、他の多穴管57(第1中間多穴管57a、第2中間多穴管57b、出口多穴管57c)の熱交換面積より小さくされている。入口多穴管56の冷媒流路Chの数、および、他の多穴管57の冷媒流路Chの数は、任意であってよい。また、幅W1と幅W2の比も任意であってよく、幅W1が幅W2より短ければよい。
【0038】
図4は、比較例における熱交換器60の上面視である。熱交換器60は、入口ヘッダ61、第1中間ヘッダ62、第2中間ヘッダ63、第3中間ヘッダ64、および、出口ヘッダ65を備える。各ヘッダの間には、多穴管68が接続されている。多穴管68の幅は、たとえば、W1より大きくW2より小さくされており、冷媒流路が9個形成されていてよい。入口ヘッダ61に接続される上流側の多穴管68の冷媒流路を流れる冷媒の一部が、気体状態である場合がある。これは、圧縮機11から熱交換器50(凝縮器12)までの流路長、周囲温度(放熱量)等によって、圧縮機11で圧縮された冷媒が、高温高圧のガスの状態のまま上流側の多穴管68に流入するためである。冷媒がガス状態であるガス領域にある熱交換面は、冷媒が気液二相状態にある熱交換面より高温である。このため、バッテリ30(単電池31)において、ガス領域にある熱交換面と熱交換を行う部分の温度が、他の部分より高温になり、バッテリ30の温度分布が不均一になる可能性がある。なお、冷媒が気液二相状態にある熱交換面の温度は、ほぼ一定である。
【0039】
本実施の形態では、入口ヘッダ51に接続される上流側の多穴管である入口多穴管56の単位熱交換面積(上流側単位熱交換面積)が、他の多穴管57(第1中間多穴管57a、第2中間多穴管57b、出口多穴管57c)の単位熱交換面積より小さくされており、入口多穴管56の熱交換面積が、他の多穴管57の各々の熱交換面積より小さくなっている。このため、入口多穴管56からバッテリ30(単電池31)へ伝達する熱量が、入口多穴管56の熱交換面積が他の多穴管57の各々の熱交換面積と等しい場合に比較して、少なくなる。したがって、入口多穴管56を流れる冷媒にガス領域があっても、バッテリ30の温度分布が不均一になることを、抑制できる。図5は、実施の形態1において、冷媒のガス領域の状態を示す図である。入口多穴管56の熱交換面積が(比較例の多穴管68の熱交換面積より)小さいので、入口多穴管56の冷媒流路Chを流れる冷媒の放熱量が小さくなる。このため、図5に示すように、入口多穴管56において、(図4の比較例に対して)ガス領域の範囲が拡大する。(比較例に対して)入口多穴管56の温度分布も比較的均一になるので、これによっても、バッテリ30の温度分布が不均一になることを抑制できる。
【0040】
本実施の形態では、入口多穴管56の単位熱交換面積(上流側単位熱交換面積)が、他の多穴管57(第1中間多穴管57a、第2中間多穴管57b、出口多穴管57c)の単位熱交換面積より小さくされている。しかし、熱交換器50において、圧縮機11で圧縮された冷媒が、入口多穴管56を経て、高温高圧のガスの状態のまま第1中間多穴管57aの冷媒流路Chを流れる場合は、入口多穴管56に加えて、第1中間多穴管57aの単位熱交換面積(上流側熱交換面積)を、他の多穴管(第2中間多穴管57b、出口多穴管57c)の単位熱交換面積より小さくしてもよい。この場合、第2中間多穴管57bおよび出口多穴管57cが、本開示の「他の多穴管」に相当する。
【0041】
(実施の形態2)
図6は、比較例の熱交換器60において、冷媒の液領域が生じた例を示している。圧縮機11で圧縮された冷媒が、気液二相状態で熱交換器60に流入した場合、熱交換器60からの放熱量(バッテリ30との熱交換料)によっては、図6に示すように、下流の多穴管68において、冷媒が液体状態である液領域が発生することがある。多穴管68において、液領域が発生すると、液領域の熱交換面の温度は、気液二相状態の熱交換面の温度より低くなる。このため、液領域が発生した多穴管68の上下流において、バッテリ30(単電池31)の温度分布が不均一になる可能性がある。
【0042】
図7は、実施の形態2における熱交換器70の上面視である。なお、実施の形態2において、冷凍サイクル10およびバッテリ30は、実施の形態1と同様である。熱交換器70は、入口ヘッダ71、第1中間ヘッダ72、第2中間ヘッダ73、第3中間ヘッダ74、出口ヘッダ75、出口多穴管76、および、他の多穴管77(入口多穴管77a、第1中間多穴管77b、第2中間多穴管77c)を備える。各ヘッダと各多穴管の接続、および、冷媒の流れは、実施の形態1と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0043】
図7において、出口多穴管76の単位熱交換面積は、他の多穴管77(入口多穴管77a、第1中間多穴管77b、第2中間多穴管77c)の単位熱交換面積より小さくされている。たとえば、出口多穴管76は、図3(A)に示した、入口多穴管56と同じ構成であり、他の多穴管77(入口多穴管77a、第1中間多穴管77b、第2中間多穴管77c)は、図3(B)に示した、他の多穴管57と同じ構成であってよい。
【0044】
この実施の形態2では、出口ヘッダ75に接続される下流側の多穴管である出口多穴管76の単位熱交換面積(下流側単位熱交換面積)が、他の多穴管77(入口多穴管77a、第1中間多穴管77b、第2中間多穴管77c)の単位熱交換面積より小さくされている。このため、出口多穴管76からバッテリ30(単電池31)へ伝達する熱量が、出口多穴管76の熱交換面積が他の多穴管77の熱交換面積と等しい場合に比較して、少なくなる。したがって、出口多穴管76を流れる冷媒に液領域があっても、出口多穴管76から伝達する熱量を小さくでき、バッテリ30の温度分布が不均一になることを、抑制できる。
【0045】
なお、熱交換器70において、第2中間多穴管77cの冷媒流路を流れる冷媒に液領域が発生する場合には、出口多穴管76に加えて、第2中間多穴管77cの単位熱交換面積(下側熱単位交換面積)を、他の多穴管(入口多穴管77a、第1中間多穴管77b)の単位熱交換面積より小さくしてもよい。この場合、入口多穴管77aおよび第1中間多穴管77bが、本開示の「他の多穴管」に相当する。
【0046】
(実施の形態3)
図8は、実施の形態3における熱交換器80の上面視である。なお、実施の形態3において、冷凍サイクル10およびバッテリ30は、実施の形態1と同様である。熱交換器80は、入口ヘッダ81、第1中間ヘッダ82、第2中間ヘッダ83、第3中間ヘッダ84、出口ヘッダ85、入口多穴管86、出口多穴管88、および、他の多穴管87(第1中間多穴管87a、第2中間多穴管87b)を備える。各ヘッダと各多穴管の接続、および、冷媒の流れは、実施の形態1と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0047】
図8において、入口多穴管86、および、出口多穴管88の単位熱交換面積は、他の多穴管87(第1中間多穴管87a、第2中間多穴管87b)の単位熱交換面積より小さくされている。たとえば、入口多穴管86、および、出口多穴管88は、図3(A)に示した、入口多穴管56と同じ構成であり、他の多穴管87(第1中間多穴管87a、第2中間多穴管87b)は、図3(B)に示した、他の多穴管57と同じ構成であってよい。
【0048】
この実施の形態3では、入口ヘッダ81に接続される上流側の多穴管である入口多穴管86の単位熱交換面積(上流側単位熱交換面積)、および、出口ヘッダ85に接続される下流側の多穴管である出口多穴管88の単位熱交換面積(下流側単位熱交換面積)が、他の多穴管87(第1中間多穴管87a、第2中間多穴管88b)の単位熱交換面積より小さくされている。このため、入口多穴管86、および、出口多穴管88からバッテリ30(単電池31)へ伝達する熱量が、他の多穴管87の単位熱交換面積と等しい場合に比較して、少なくなる。したがって、入口多穴管86を流れる冷媒にガス領域があり、かつ、出口多穴管88を流れる冷媒に液領域があっても、バッテリ30の温度分布が不均一になることを、抑制できる。
【0049】
なお、熱交換器80の冷媒流路を流れる冷媒のガス領域あるいは液領域の発生状態に応じて、実施の形態1および実施の形態2と同様に、入口多穴管86あるいは出口多穴管88に加えて、第1中間多穴管87aあるいは第2中間多穴管87bの単位熱交換面積を小さくするようにしてもよい。
【0050】
(実施の形態4)
図9は、実施の形態4における熱交換器90の上面視である。なお、実施の形態4において、冷凍サイクル10およびバッテリ30は、実施の形態1と同様である。熱交換器90は、入口ヘッダ91、第1中間ヘッダ92、第2中間ヘッダ93、第3中間ヘッダ94、出口ヘッダ95、入口多穴管96、および、他の多穴管97(第1中間多穴管97a、第2中間多穴管97b、出口多穴管97c)を備える。各ヘッダと各多穴管の接続、および、冷媒の流れは、実施の形態1と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0051】
実施の形態4において、入口多穴管96、および、他の多穴管97(第1中間多穴管97a、第2中間多穴管97b、出口多穴管97c)の構造は、比較例(図4)における多穴管68と同様な構成であってよく、その幅は、たとえば、W1より大きくW2より小さくされており、冷媒流路が9個形成されていてよい。
【0052】
実施の形態4では、バッテリ30の熱交換面と熱交換器90の熱交換面に密着する熱伝導シートに特徴がある。図9に示すように、入口多穴管96とバッテリ30の間には、熱伝導シート41が設けられ、他の多穴管97(第1中間多穴管97a、第2中間多穴管97b、出口多穴管97c)とバッテリ30の間には、熱伝導シート42が設けられる。熱伝導シート41の熱伝導率は、熱伝導シート42の熱伝導率より小さくされている。これにより、バッテリ30と入口多穴管96と間の熱抵抗が、バッテリ30と他の多穴管97(第1中間多穴管97a、第2中間多穴管97b、出口多穴管97c)との間の熱抵抗よりも大きくされている。
【0053】
この実施の形態4では、入口ヘッダ91に接続される上流側の多穴管である入口多穴管96とバッテリ30との間の熱抵抗が、他の多穴管97(第1中間多穴管97a、第2中間多穴管97b、出口多穴管97c)とバッテリ30との熱抵抗より大きくされている。このため、入口多穴管96からバッテリ30(単電池31)へ伝達する熱量が、他の多穴管97(第1中間多穴管97a、第2中間多穴管97b、出口多穴管97c)の個々からバッテリ30へ伝達する熱量より、小さくなる。したがって、実施の形態1と同様に、入口多穴管96を流れる冷媒にガス領域があっても、バッテリ30の温度分布が不均一になることを、抑制できる。また、実施の形態1と同様に、入口多穴管96の冷媒流路Chを流れる冷媒の放熱量が小さくなるので、入口多穴管96において、(図4の比較例に対して)ガス領域の範囲が拡大する。(比較例に対して)入口多穴管96の温度分布も比較的均一になるので、これによっても、バッテリ30の温度分布が不均一になることを抑制できる。
【0054】
この実施の形態4では、熱伝導シート41の熱伝導率は、熱伝導シート42の熱伝導率より小さくすることにより、バッテリ30と入口多穴管96と間の熱抵抗を、バッテリ30と他の多穴管97(第1中間多穴管97a、第2中間多穴管97b、出口多穴管97c)との間の熱抵抗よりも大きくしていた。しかし、この構成に代えて、あるいは、加えて、入口多穴管96と他の多穴管97(第1中間多穴管97a、第2中間多穴管97b、出口多穴管97c)の材質を異ならせ、入口多穴管96の熱伝導率が、他の多穴管97の熱伝導率より小さくなるようにしてもよい。
【0055】
熱交換器90において、圧縮機11で圧縮された冷媒が、入口多穴管96を経て、高温高圧のガスの状態のまま第1中間多穴管97aの冷媒流路を流れる場合は、入口多穴管96に加えて、第1中間多穴管97aとバッテリ30との間の熱抵抗を、バッテリ30と他の多穴管(第2中間多穴管97b、出口多穴管97c)との間の熱抵抗より大きくしてもよい。この場合、第2中間多穴管97bおよび出口多穴管97cが、本開示の「他の多穴管」に相当する。
【0056】
(実施の形態5)
図10は、実施の形態5における熱交換器90の上面視である。なお、実施の形態5において、冷凍サイクル10およびバッテリ30は、実施の形態1と同様である。熱交換器90は、実施の形態4と同様であるが、実施の形態5の説明の便宜上、実施の形態4における入口多穴管96の符号を変更し、入口多穴管97dとして説明し、実施の形態4における出口多穴管97cの符号を変更し、出口多穴管98として説明する。
【0057】
実施の形態5では、バッテリ30の熱交換面と熱交換器90の熱交換面に密着する熱伝導シートに特徴がある。図10に示すように、出口多穴管98とバッテリ30の間には、熱伝導シート43が設けられ、他の多穴管97(第1中間多穴管97a、第2中間多穴管97b、入口多穴管97d)とバッテリ30の間には、熱伝導シート44が設けられる。熱伝導シート43の熱伝導率は、熱伝導シート44の熱伝導率より小さくされている。これにより、バッテリ30と出口多穴管98と間の熱抵抗が、バッテリ30と他の多穴管97(第1中間多穴管97a、第2中間多穴管97b、入口多穴管97d)との間の熱抵抗よりも大きくされている。
【0058】
この実施の形態5では、出口ヘッダ95に接続される下流側の多穴管である出口多穴管98とバッテリ30との間の熱抵抗が、他の多穴管97(第1中間多穴管97a、第2中間多穴管97b、入口多穴管97d)とバッテリ30との熱抵抗より大きくされている。このため、出口多穴管98からバッテリ30(単電池31)へ伝達する熱量が、他の多穴管97(第1中間多穴管97a、第2中間多穴管97b、入口多穴管97d)の個々からバッテリ30へ伝達する熱量より、小さくなる。したがって、出口多穴管98を流れる冷媒に液領域があっても、出口多穴管98から伝達される熱量を小さくでき、実施の形態2と同様に、バッテリ30の温度分布が不均一になることを、抑制できる。
【0059】
なお、出口多穴管98と他の多穴管97(第1中間多穴管97a、第2中間多穴管97b、入口多穴管97d)の材質を異ならせ、出口多穴管98の熱伝導率を、他の多穴管97の熱伝導率より小さくして、出口多穴管98とバッテリ30との間の熱抵抗が、他の多穴管97(第1中間多穴管97a、第2中間多穴管97b、入口多穴管97d)とバッテリ30との熱抵抗より大きくなるようにしてもよい。
【0060】
実施の形態5の熱交換器90において、第2中間多穴管97bの冷媒流路を流れる冷媒に液領域が発生する場合には、出口多穴管98に加えて、第2中間多穴管97bとバッテリ30との間の熱抵抗を、バッテリ30と他の多穴管(第1中間多穴管97a、入口多穴管97d)との間の熱抵抗より大きくしてもよい。この場合、第1中間多穴管97aおよび入口多穴管97dが、本開示の「他の多穴管」に相当する。
【0061】
(実施の形態6)
図11は、実施の形態6における熱交換器90の上面視である。なお、実施の形態6において、冷凍サイクル10およびバッテリ30は、実施の形態1と同様である。熱交換器90は、実施の形態4と同様であるが、実施の形態6の説明の便宜上、実施の形態4における出口多穴管97cの符号を変更し、出口多穴管98として説明する。
【0062】
実施の形態6では、バッテリ30の熱交換面と熱交換器90の熱交換面に密着する熱伝導シートに特徴がある。図11に示すように、入口多穴管96とバッテリ30の間、および、出口多穴管98とバッテリ30の間には、熱伝導シート45が設けられ、他の多穴管97(第1中間多穴管97a、第2中間多穴管97b)とバッテリ30の間には、熱伝導シート46が設けられる。熱伝導シート45の熱伝導率は、熱伝導シート46の熱伝導率より小さくされている。これにより、バッテリ30と入口多穴管96と間の熱抵抗、および、バッテリ30と出口多穴管98との間の熱抵抗が、バッテリ30と他の多穴管97(第1中間多穴管97a、第2中間多穴管97b)との間の熱抵抗よりも大きくされている。
【0063】
この実施の形態6では、入口ヘッダ91に接続される上流側の多穴管である入口多穴管96とバッテリ30の間の熱抵抗、および、出口ヘッダ95に接続される下流側の多穴管である出口多穴管98とバッテリ30との間の熱抵抗が、他の多穴管97(第1中間多穴管97a、第2中間多穴管97b)とバッテリ30との熱抵抗より大きくされている。このため、入口多穴管96からバッテリ30へ伝達する熱量、および、出口多穴管98からバッテリ30へ伝達する熱量が、他の多穴管97(第1中間多穴管97a、第2中間多穴管97b)の個々からバッテリ30へ伝達する熱量より、小さくなる。したがって、入口多穴管96を流れる冷媒にガス領域があり、かつ、出口多穴管98を流れる冷媒に液領域があっても、実施の形態3と同様に、バッテリ30の温度分布が不均一になることを、抑制できる。
【0064】
なお、入口多穴管96および出口多穴管98と、他の多穴管97(第1中間多穴管97a、第2中間多穴管97b)の材質を異ならせ、入口多穴管96および出口多穴管98の熱伝導率を、他の多穴管97の熱伝導率より小さくして、入口多穴管96とバッテリとの間の熱抵抗、および、出口多穴管98とバッテリ30との間の熱抵抗が、他の多穴管97(第1中間多穴管97a、第2中間多穴管97b)とバッテリ30との熱抵抗より大きくなるようにしてもよい。
【0065】
実施の形態6において、熱交換器90の冷媒流路を流れる冷媒のガス領域あるいは液領域の発生状態に応じて、実施の形態4および実施の形態5と同様に、入口多穴管96あるいは出口多穴管98に加えて、第1中間多穴管97aあるいは第2中間多穴管97bとバッテリ30との間の熱抵抗を大きくするようにしてもよい。
【0066】
上記実施の形態では、中間ヘッダを3個設けた例を説明したが、中間ヘッダの数は、2個であってよく、また、4個以上であってもよい。また、熱交換器をバッテリ30の側面、あるいは、上面に配置してもよい。
【0067】
本開示における実施態様を例示すると、次のような態様を例示できる。
【0068】
1)冷凍サイクル(10)における凝縮熱を用いてバッテリ(30)を暖機する、バッテリの暖機システムであって、バッテリ(30)と熱交換を行う熱交換器(50等)は、冷凍サイクル(10)の冷媒が熱交換器(50等)に流入する入口ヘッダ(51等)と、冷媒が熱交換器(50等)から流出する出口ヘッダ(55等)と、冷媒の流路において、入口ヘッダ(51等)と出口ヘッダ(55等)との間に配置されるとともに冷媒の流れ方向を反転するための、複数の中間ヘッダ(52、53等)と、入口ヘッダ(51)と中間ヘッダ(52、53等)に接続され、入口ヘッダ(51)に流入した冷媒を流通するとともにバッテリ(30)と熱交換を行う入口多穴管(56等)と、複数の中間ヘッダ(52、53等)の間に配置され、冷媒を流通するとともにバッテリ(30)と熱交換を行う中間多穴管(57a、57b等)と、中間ヘッダ(52、53等)と出口ヘッダ(55等)に接続され、冷媒を流通するとともにバッテリ(30)と熱交換を行う出口多穴管(57c等)と、を備え、冷媒がガス領域である多穴管の単位熱交換面積、あるいは、冷媒が液領域である多穴管の単位熱交換面積が、冷媒が気液二相状態である領域の多穴管の単位熱交換面積より小さい、バッテリの暖機システム。
【0069】
2)冷凍サイクル(10)における凝縮熱を用いてバッテリ(30)を暖機する、バッテリの暖機システムであって、バッテリ(30)と熱交換を行う熱交換器(50等)は、冷凍サイクル(10)の冷媒が熱交換器(90)に流入する入口ヘッダ(91)と、冷媒が熱交換器(90)から流出する出口ヘッダ(95)と、冷媒の流路において、入口ヘッダ(91)と出口ヘッダ(95)との間に配置されるとともに冷媒の流れ方向を反転するための、複数の中間ヘッダ(92、93等)と、入口ヘッダ(91)と中間ヘッダ(92、93等)に接続され、入口ヘッダ(91)に流入した冷媒を流通するとともにバッテリ(30)と熱交換を行う入口多穴管(96等)と、複数の中間ヘッダ(92、93等)の間に配置され、冷媒を流通するとともにバッテリ(30)と熱交換を行う中間多穴管(97a、97b)と、中間ヘッダ(92、93等)と出口ヘッダ(95)に接続され、冷媒を流通するとともにバッテリ(30)と熱交換を行う出口多穴管(98等)と、を備え、冷媒がガス領域である多穴管とバッテリ(30)との間の熱抵抗、あるいは、冷媒が液領域である多穴管とバッテリ(30)との間の熱抵抗が、冷媒が気液二相状態である領域の多穴管とバッテリ(30)との間の熱抵抗より大きい、バッテリの暖機システム。
【0070】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0071】
1 暖機システム、10 冷凍サイクル、11 圧縮機、12 凝縮器、13 膨張弁、14 蒸発器、15 気液分離器、20 冷媒流路、30 バッテリ(組電池)、31 単電池、40,41,42,43,44,45,46 熱伝導シート、50,60,70,80,90 熱交換器、51,61,71,81,91 入口ヘッダ、52,62,72,82,92 第1中間ヘッダ、53,63,73,83,93 第2中間ヘッダ、54,64,74,84,94 第3中間ヘッダ、55,65,75,85,95 出口ヘッダ、56,86,96 入口多穴管、76,88,98 出口多穴管、57,77,87,97 他の多穴管。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11