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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175740
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】燃料ガス充填装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20241212BHJP
   F17C 5/06 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
F17C13/00 301Z
F17C5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093694
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000110099
【氏名又は名称】トキコシステムソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田邊 稔
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB13
3E172BB17
3E172BD03
3E172BD05
3E172EA12
3E172EA13
3E172EA14
3E172EA22
3E172EA23
3E172EA24
3E172EA35
3E172EA45
3E172EA48
3E172JA08
(57)【要約】
【課題】充填ノズルをそれぞれ支持する複数の吊りアームの干渉を防止する。
【解決手段】燃料ガス充填装置1は、ガス供給管路4と、ガス供給管路4に接続された充填ホース5A,5Bにそれぞれ取付けられる充填ノズル6A,6Bと、ノズル吊り装置27とを備え、ノズル吊り装置27は、ディスペンサ筐体3に対して回転しつつ充填ノズル6A,6Bをそれぞれロープ36,38を介して吊り下げる下側吊りアーム31,上側吊りアーム35を有し、これら下側吊りアーム31および上側吊りアーム35は、上下方向に重なり合う状態で同一の中心軸Aを中心として個別に回転する。これにより、接近した位置に2つの接続口105A,105Bが設けられた燃料タンク105に対し、2つの充填ノズル6A,6Bを用いて水素ガスの充填作業を行う場合に、下側吊りアーム31と上側吊りアーム35とが干渉するのを防止できる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスペンサ筐体内に設けられ、ガス蓄圧器に貯留された燃料ガスが供給される一又は複数のガス供給管路と、
前記一又は複数のガス供給管路に接続された複数の充填ホースにそれぞれ取付けられ、燃料タンクに接続される複数の充填ノズルと、
前記ディスペンサ筐体の上部に設けられ、前記ディスペンサ筐体に対して回転しつつ前記複数の充填ノズルをそれぞれ索具を介して吊り下げる複数の吊りアームを有するノズル吊り装置とを備え、
前記ノズル吊り装置の前記複数の吊りアームは、上下方向に重なり合う状態で同一の中心軸を中心として個別に回転する構成としたことを特徴とする燃料ガス充填装置。
【請求項2】
前記複数の吊りアームのうち上下方向の上側に配置された吊りアームは、上下方向の下側に配置された吊りアームよりも長さ寸法が大きく設定されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料ガス充填装置。
【請求項3】
前記ディスペンサ筐体には、前記ディスペンサ筐体に対して前記複数の吊りアームが回転可能な範囲を規制するアーム回転規制部材が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料ガス充填装置。
【請求項4】
ディスペンサ筐体内に設けられ、ガス蓄圧器に貯留された燃料ガスが供給される一又は複数のガス供給管路と、
前記一又は複数のガス供給管路に接続された複数の充填ホースにそれぞれ取付けられ、燃料タンクに接続される複数の充填ノズルと、
前記ディスペンサ筐体の上部に設けられ、前記ディスペンサ筐体に対して回転しつつ前記複数の充填ノズルをそれぞれ索具を介して吊り下げる複数の吊りアームを有するノズル吊り装置とを備え、
前記ディスペンサ筐体の上部には、前記ディスペンサ筐体の上面に沿って回転するベース部材が設けられ、
前記複数の吊りアームは、互いに異なる中心軸を中心として前記ベース部材にそれぞれ回転可能に取付けられていることを特徴とする燃料ガス充填装置。
【請求項5】
前記ノズル吊り装置の前記複数の吊りアームは、長さ方向に伸縮可能に構成されていることを特徴とする請求項4に記載の燃料ガス充填装置。
【請求項6】
前記ディスペンサ筐体には、前記ディスペンサ筐体に対して前記ベース部材が回転可能な範囲を規制するベース回転規制部材が設けられ、
前記ベース部材には、前記複数の吊りアームが回転可能な範囲を規制するアーム回転規制部材が設けられていることを特徴とする請求項4または5に記載の燃料ガス充填装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば水素ガス等の燃料ガスを車両の燃料タンクに充填するのに好適に用いられる燃料ガス充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、水素ガス等の高圧な燃料ガスを被燃料供給体(4輪自動車等の車両に搭載した燃料タンク)に充填・供給するようにした燃料ガス充填装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。従来技術による燃料ガス充填装置は、ディスペンサ筐体内に設けられ、ガス蓄圧器に貯留された燃料ガスが供給されるガス供給管路と、前記ガス供給管路に接続された充填ホースに取付けられ、燃料タンクの接続口に接続される充填ノズルと、前記充填ノズルを吊り下げて支持するノズル吊り装置とを備えている。
【0003】
ノズル吊り装置は、一端側がディスペンサ筐体に回転可能に取付けられた吊りアームを有し、充填ノズルは吊りアームの他端側に索具を介して支持されている。これにより、燃料ガスの充填作業時に燃料タンクの接続口に対して充填ノズルを取付け、取外しするときに、誤って充填ノズルが落下してしまうのを防止できる。これにより、充填ノズルが地面等に衝突して損傷するのを抑え、燃料ガス充填装置の操作性、信頼性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-133825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、燃料ガス充填装置を構成するディスペンサ筺体に、2つの充填ノズルと2つのノズル吊り装置を設けることが考えられている。このような燃料ガス充填装置によれば、2台の車両にそれぞれ搭載された燃料タンク、1台の車両に搭載された2つの燃料タンク、あるいは2つの接続口を有する1個の燃料タンクに対し、2つの吊りアームにそれぞれ支持された2つの充填ノズルを用いて燃料ガスを充填することができ、燃料ガスの充填作業を効率良く行うことができる。
【0006】
しかし、例えば2つの接続口を有する1個の燃料タンクに対し、2つの充填ノズルから燃料ガスを充填する場合には、2つの吊りアームの先端が1個の燃料タンクに向かうことになり、吊りアーム同士が互いに接触して損傷する可能性がある。
【0007】
本発明の一実施形態の目的は、充填ノズルをそれぞれ支持する複数の吊りアームが干渉するのを防止できる燃料ガス充填装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態による燃料ガス充填装置は、ディスペンサ筐体内に設けられ、ガス蓄圧器に貯留された燃料ガスが供給される一又は複数のガス供給管路と、前記一又は複数のガス供給管路に接続された複数の充填ホースにそれぞれ取付けられ、燃料タンクに接続される複数の充填ノズルと、前記ディスペンサ筐体の上部に設けられ、前記ディスペンサ筐体に対して回転しつつ前記複数の充填ノズルをそれぞれ索具を介して吊り下げる複数の吊りアームを有するノズル吊り装置とを備え、前記ノズル吊り装置の前記複数の吊りアームは、上下方向に重なり合う状態で同一の中心軸を中心として個別に回転する構成としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、複数の吊りアームが、上下方向に重なり合う状態で同一の中心軸を中心として個別に回転するので、複数の充填ノズルを用いて燃料ガスの充填作業を行うときに、複数の吊りアームが干渉するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態による燃料ガス充填装置を模式的に示す全体構成図である。
図2】第1の実施形態による燃料ガス充填装置を示す正面図である。
図3】燃料ガス充填装置を左側方から見た左側面図である。
図4】2台の車両に搭載された燃料タンクに対し、2つの充填ノズルを用いて燃料ガスを充填する状態を示す平面図である。
図5】車両に搭載された1個の燃料タンクに設けられた2つの接続口に対し、2つの充填ノズルを用いて燃料ガスを充填する状態を示す平面図である。
図6】第1の実施形態によるノズル吊り装置を示す分解斜視図である。
図7】ディスペンサ筺体に対する下側吊りアームおよび上側吊りアームの取付け構造を、図5中の矢示VII-VII方向から見た断面図である。
図8】第2の実施形態による燃料ガス充填装置を左側方から見た左側面図である。
図9】第2の実施形態によるノズル吊り装置を示す斜視図である。
図10】ベース部材、ベースストッパ等を示す斜視図である。
図11】ディスペンサ筺体にベース部材を取付けた状態を示す平面図である。
図12】ベース部材の可動範囲を示す平面図である。
図13】ベース部材に第1吊りアーム、第2吊りアームを取付けた状態を示す平面図である。
図14】2台の車両に搭載された燃料タンクに対し、2つの充填ノズルを用いて燃料ガスを充填する状態を示す平面図である。
図15】車両に搭載された1個の燃料タンクに設けられた2つの接続口に対し、2つの充填ノズルを用いて燃料ガスを充填する状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態による燃料ガス充填装置を、水素ガス充填装置に適用した場合を例に挙げ、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1ないし図7は第1の実施形態を示している。
【0012】
図1において、燃料ガス充填装置1は、例えば車両に搭載された燃料タンクに対し、加圧された圧縮状態の燃料ガス(例えば、水素ガス)を充填する装置であり、一般にガス供給ステーションまたは水素ステーションと呼ばれる設備(ガス充填所)等に設置されている。燃料ガス充填装置1は、後述するディスペンサ筐体3内に設けられたガス供給管路4と、ガス供給管路4に接続された充填ホース5A,5Bに取付けられた充填ノズル6A,6Bと、ディスペンサ筐体3に対して回転しつつ充填ノズル6A,6Bをロープ36,38を介して吊り下げるノズル吊り装置27とを含んで構成されている。
【0013】
燃料ガス充填装置1は、後述するガス蓄圧器20からの水素ガスを車両の燃料タンクに充填するディスペンサユニット2を有している。ディスペンサユニット2の外殻を構成するディスペンサ筐体3には、後述するガス供給管路4、流量調整弁8、遮断弁9、熱交換器11、圧力センサ14、温度センサ15、制御装置18等が収容されている。
【0014】
ディスペンサ筐体3は、ディスペンサユニット2の外殻をなす建屋を構成するもので、図2に示すように、上下方向に長尺な直方体状に形成されている。ディスペンサ筐体3は、前面板3A、左側面板3B、右側面板3C、上面板3Dおよび後面板3E等によって囲まれたボックス状に形成されている。ディスペンサ筐体3の前面板3Aには、後述の表示部19が設けられ、左側面板3Bの外側には、ディスペンサ筐体3の一部をなす後述の収納庫21が設けられている。
【0015】
ガス供給管路4は、ディスペンサ筐体3内に配設され、加圧状態の水素ガスをガス蓄圧器20から充填ホース5A,5Bに向けて供給する。ガス供給管路4の一端側は、ディスペンサ筐体3の外部に配置されたガス蓄圧器20に接続されている。ガス供給管路4の他端側には、二又状に分岐した分岐管路4A,4Bが設けられている。一方の分岐管路4Aは、後述する緊急離脱カップリング24を介して充填ホース5Aに接続され、他方の分岐管路4Bは、緊急離脱カップリング24を介して充填ホース5Bに接続されている。即ち、水素ガスの流れ方向に対して下流側となるガス供給管路4の他端(下流端)には、分岐管路4A,4Bを介して2本の充填ホース5A,5Bが並列に接続されている。
【0016】
なお、本実施形態においては、上述のように、一つのガス供給管路4の他端側に二又状に分岐させた分岐管路4A,4Bを設けることにより、二つの充填ノズル6A,6Bそれぞれから水素ガスを燃料とする車両の燃料タンクに水素ガスを充填できるように構成されている。しかし、二つの充填ノズル6A,6Bそれぞれから水素ガスを供給するための構成は、一つのガス供給管路4の他端側に二又状に分岐させた分岐管路4A,4Bを設けたものに限定されるものではない。例えば、一つのガス供給管路4ではなく、ガス蓄圧器20から充填ノズル6A,6B(充填ホース5A,5B)に至るガス供給管路(本実施形態におけるガス供給管路4)を並列に2系統(複数)設け、これら2系統のガス供給管路それぞれに充填ノズル6A,6B(充填ホース5A,5B)を接続するようにしてもよい。この場合、2系統のガス供給管路には、本実施形態のガス供給管路4に設けられた流量計13等の機器がそれぞれ設けられ、制御装置18による水素ガスの充填制御は、2系統のガス供給管路毎に独立して行われる。
【0017】
充填ホース5A,5Bは、可撓性を有する耐圧ホースにより形成され、ディスペンサ筐体3の外部へと延びている。充填ホース5Aの基端側は、分岐管路4Aの下流端に接続され、充填ホース5Aの先端側には充填ノズル6Aが接続されている。充填ホース5Bの基端側は、分岐管路4Bの下流端に接続され、充填ホース5Bの先端側には充填ノズル6Bが接続されている。
【0018】
充填ノズル6Aは、一方の充填ホース5Aの先端側に気密状態で接続され、充填ノズル6Bは、他方の充填ホース5Bの先端側に気密状態で接続されている。これら充填ノズル6A,6Bは、先端側に設けられた充填口を開閉する弁(いずれも図示せず)を内蔵している。例えば図4に示すように、充填ノズル6Aの充填口は、水素ガスを燃料とする車両100の燃料タンク101に設けられた接続口101Aに気密状態で着脱可能に接続される。充填ノズル6Bの充填口は、水素ガスを燃料とする車両102の燃料タンク103に設けられた接続口103Aに気密状態で着脱可能に接続される。
【0019】
また、充填ノズル6Aは、燃料タンク101の接続口101Aに対して係脱可能にロックされるロック機構を備え、充填ノズル6Bは、燃料タンク103の接続口103Aに対して係脱可能にロックされるロック機構を備えている。そして、充填ノズル6Aの充填口が燃料タンク101の接続口101Aに接続された状態において、ガス蓄圧器20内の高圧な水素ガスが、ガス供給管路4、充填ホース5Aおよび充填ノズル6Aを通じて燃料タンク101に充填される。同様に、充填ノズル6Bの充填口が燃料タンク103の接続口103Aに接続された状態において、ガス蓄圧器20内の高圧な水素ガスが、ガス供給管路4、充填ホース5Bおよび充填ノズル6Bを通じて燃料タンク103に充填される。
【0020】
ガス供給管路4の途中には、入口弁7と、入口弁7よりも下流側に配置された流量調整弁8と、流量調整弁8よりも下流側に配置された遮断弁9とが設けられ、入口弁7と流量調整弁8との間には流量計13が設けられている。なお、流量計13、流量調整弁8、遮断弁9の配置(取付けの順番)は、図1中に示した順番に限定されるものではない。
【0021】
入口弁7は、ガス供給管路4の一端側(上流側)に設けられ、例えば手動操作によってガス供給管路4を開閉する。なお、入口弁7は、必要に応じて取付けられるものであり、不要であればこれを除いてもよい。流量調整弁8および遮断弁9は、ガス供給管路4を流れる水素ガスの流量及び圧力を制御する制御機器を構成している。流量計13、圧力センサ14および温度センサ15は、ガス供給管路4を流れる水素ガスの流量、圧力および温度を計測する計測機器を構成している。
【0022】
流量調整弁8は、入口弁7よりも下流側に設けられている。流量調整弁8は、後述する制御装置18の制御プログラムに基づく指令により任意の弁開度に制御され、ガス供給管路4内を流れる水素ガスの流量、水素ガス圧を可変に制御する。
【0023】
遮断弁9は、流量調整弁8よりも下流側に設けられている。遮断弁9は、制御装置18からの制御信号で開閉されることにより、ガス供給管路4内で水素ガス(燃料)の流通、遮断を制御する。即ち、制御装置18は、流量調整弁8および遮断弁9の開閉弁を制御することにより、車両100の燃料タンク101、および車両102の燃料タンク103に対する水素ガスの充填作業を制御する。
【0024】
冷却器10は、ガス供給管路4内を流れる水素ガスを冷却する。冷却器10は、ガス供給管路4の途中部位に設けられた熱交換器11と、該熱交換器11に冷媒管路10A,10Bを介して接続されたチラーユニット12とを含んで構成されている。チラーユニット12は、冷媒管路10A,10Bを介して熱交換器11との間に冷媒を循環させる。これにより、冷却器10の熱交換器11は、ガス供給管路4内を流れる水素ガスと前記冷媒との間で熱交換を行い、充填ホース5A,5Bに向けて供給される水素ガスの温度を規定温度(例えば、-33~-40℃)まで低下させる。
【0025】
流量計13は、入口弁7と流量調整弁8との間に位置してガス供給管路4の途中に設けられている。流量計13は、入口弁7と流量調整弁8との間でガス供給管路4内を流れる水素ガスの流量(質量流量)を計測し、計測結果を制御装置18へと出力する。これにより、制御装置18は、車両100の燃料タンク101、あるいは車両102の燃料タンク103に対する水素ガスの充填量を演算により求め、水素ガスの払出し量(給油量に相当)を表示部19によって表示する。
【0026】
圧力センサ14は、遮断弁9よりも下流側に位置してガス供給管路4の途中に設けられている。圧力センサ14は、ガス蓄圧器20から供給される水素ガスの圧力を検知する。圧力センサ14は、充填ノズル6A,6Bの近傍でガス供給管路4内の圧力を測定し、測定した圧力に応じた検出信号を制御装置18へと出力する。
【0027】
温度センサ15は、遮断弁9と圧力センサ14との間に位置してガス供給管路4の途中に設けられている。温度センサ15は、ガス供給管路4内を流れる水素ガスの温度を検出し、その検出結果を制御装置18へと出力する。なお、温度センサ15と圧力センサ14との配置関係は、図1に示す配置に限るものではなく、例えば互いに逆となる配置にしてもよい。
【0028】
ガス供給管路4の遮断弁9よりも下流側には、脱圧管路16が分岐して設けられている。脱圧管路16は、例えば充填ホース5A,5B側からガス圧力を脱圧するもので、脱圧管路16の途中には脱圧弁17が設けられている。脱圧弁17は、充填ノズル6A,6Bを用いた水素ガスの充填作業が完了して遮断弁9が閉弁したときに、制御装置18からの信号により開弁制御される。
【0029】
充填ノズル6Aの充填口を燃料タンク101の接続口101Aから取外す場合、あるいは充填ノズル6Bの充填口を燃料タンク103の接続口103Aから取外す場合には、充填ホース5A,5B内の圧力を大気圧レベルまで減圧する必要がある。このため、ガス充填作業の完了時には、脱圧弁17を一時的に開弁して脱圧管路16の先端側を大気に開放させる。これにより、充填ホース5A,5B内の水素ガスが外部に放出され、充填ホース5A,5B内の圧力が大気圧レベルまで減圧される。この結果、充填ノズル6Aの充填口を燃料タンク101の接続口101Aから取外すことができ、充填ノズル6Bの充填口を燃料タンク103の接続口103Aから取外すことができる。
【0030】
制御装置18は、流量調整弁8、遮断弁9、脱圧弁17等を制御することにより、燃料タンク101,103への水素ガス(燃料ガス)の供給を制御する。制御装置18の入力側には、流量計13、圧力センサ14、温度センサ15、後述のノズル検出器23、充填開始スイッチ25、充填停止スイッチ26等が接続されている。一方、制御装置18の出力側には、流量調整弁8、遮断弁9、脱圧弁17、表示部19等が接続されている。制御装置18は、メモリ18Aを有している。メモリ18Aには、例えば充填ノズル6A,6Bを用いた水素ガスの充填制御を行う制御処理用のプログラム等が更新可能に格納されている。
【0031】
表示部19は、ディスペンサ筐体3の前面板3Aに設けられている。表示部19は、水素ガスの充填作業を行う作業者が視認し易い高さ位置に配置され、水素ガスの充填作業に必要な情報表示等を行う。なお、表示部19は、ディスペンサ筐体3の前面板3A以外の場所に設ける構成としてもよく、ディスペンサ筐体3から離間した特定の位置に設ける構成としてもよい。
【0032】
ガス蓄圧器20は、ディスペンサユニット2と共に燃料ガス充填装置1を構成している。ガス蓄圧器20は、ガス供給管路4の上流側で、高圧に圧縮された水素ガスを貯蔵するガス貯蔵部を構成し、水素ガスの供給源となっている。
【0033】
収納庫21は、ディスペンサ筐体3の左側面板3Bの外側に設けられ、ディスペンサ筐体3の一部を構成している。図2および図3に示すように、収納庫21は、左側面板3Bから左側方へと張り出す上下の張出し部21A,21Bと、前後方向で対面しつつ張出し部21A,21B間を連結する前後の縦板部21C,21Dとを有している。前後の縦板部21C,21D間は、張出し部21A,21B間を上下方向に延びる開口部21Eとなり、開口部21Eは扉(図示せず)により開閉可能に覆われている。収納庫21の内側には後述のノズル掛け22が設けられ、収納庫21には、ノズル掛け22に掛止めされた充填ノズル6A,6Bおよび充填ホース5A,5B等が収納されている。
【0034】
ノズル掛け22は、収納庫21の内側(奥部)に配置され、ディスペンサ筐体3の左側面板3Bに固定されている。ノズル掛け22には、収納庫21内に開口部21E側から挿入された2つの充填ノズル6A,6Bが、それぞれ取付け、取外し可能に掛止めされる。また、ノズル掛け22には、充填ノズル6A,6Bが掛止めされたか否かを検出するノズル検出器23(図1参照)が設けられている。ノズル検出器23は、充填ノズル6A,6Bがノズル掛け22に掛止めされているか否かを検出し、検出結果に応じた検出信号を制御装置18に出力する。
【0035】
ここで、図3に示すように、ディスペンサ筐体3の収納庫21内に配置された一方の分岐管路4Aと一方の充填ホース5Aとの接続部、および他方の分岐管路4Bと他方の充填ホース5Bとの接続部には、それぞれ安全装置としての緊急離脱カップリング24が設けられている。例えば燃料タンク101に対する水素ガスの充填時に車両100が誤発進した場合、あるいは燃料タンク103に対する水素ガスの充填時に車両102が誤発進した場合には、緊急離脱カップリング24が分離する。これにより、充填ノズル6A,6B、充填ホース5A,5B等の損傷が防止できると共に、ガス供給管路4、充填ホース5A,5B内の水素ガスが外部に放出されるのを防止できる。
【0036】
また、図1に示すように、ディスペンサユニット2の操作部には、充填開始スイッチ25と充填停止スイッチ26とが設けられている。充填開始スイッチ25は、例えば水素ガスの充填作業を行うときに作業者によって手動操作される。充填停止スイッチ26は、水素ガスの充填を停止するときに作業者によって手動操作される。充填開始スイッチ25と充填停止スイッチ26は、それぞれ操作状態に応じた信号を制御装置18に出力し、制御装置18は、これらの信号に応じて遮断弁9を開弁または閉弁させる。
【0037】
次に、本実施形態に用いられるノズル吊り装置27について説明する。
【0038】
ノズル吊り装置27は、ディスペンサ筐体3の上部(収納庫21の張出し部21A)に設けられている。ノズル吊り装置27は、充填ホース5Aに接続された充填ノズル6A、および充填ホース5Bに接続された充填ノズル6Bを、それぞれ後述のロープ36,38等を介して個別に吊り下げて支持する。ノズル吊り装置27は、後述する下側支持機構28と、下側吊りアーム31と、上側支持機構32と、上側吊りアーム35と、ロープ36,38と、アームストッパ40とを含んで構成されている。
【0039】
下側支持機構28は、収納庫21の張出し部21Aと下側吊りアーム31との間に設けられ、下側吊りアーム31を、ディスペンサ筐体3に対して水平方向に回転可能に支持している。図6および図7に示すように、下側支持機構28は、張出し部21Aの上面に設けられた軸受ユニット29と、軸受ユニット29に回転可能に支持された下アーム取付台30とを含んで構成されている。
【0040】
軸受ユニット29は、内周側が軸受嵌合穴29Aとなり上下方向に延びる鍔付き円筒状のケーシング29Bと、ケーシング29Bの軸受嵌合穴29Aに上下方向に隣接して嵌合された2つの軸受29Cとを有している。ケーシング29Bの上端には大径な円板状の鍔部29Dが設けられている。ケーシング29Bは、張出し部21Aの上面に形成された取付穴21Fに嵌合され、鍔部29Dは、張出し部21Aの上面に当接する。これにより、軸受ユニット29は、収納庫21の張出し部21Aに固定されている。
【0041】
下アーム取付台30は、上下方向に延びる円柱状の回転軸30Aと、回転軸30Aの上端に固定された円板30Bとを有している。円板30Bは、回転軸30Aよりも大径な円板状をなし、上下方向(板厚方向)に延びる複数(例えば4個)のボルト穴(雌ねじ穴)30Cが設けられている。下アーム取付台30の回転軸30Aは、軸受ユニット29の軸受29C(内輪)の内周側に挿嵌され、下アーム取付台30は、張出し部21Aの上面に対して直交する中心軸Aを中心として回転する。
【0042】
下側吊りアーム31は、軸受ユニット33を介して下側支持機構28の下アーム取付台30に取付けられている。下側吊りアーム31は、上下方向で対面する下板31A,上板31Bを有する直方体の角筒体からなり、水平方向に延びている。下側吊りアーム31の長さ方向の一端側(基端側)に位置する下板31Aには、下アーム取付台30のボルト穴30Cに対応する4個のボルト挿通穴31Cが設けられている。また、下側吊りアーム31の基端側に位置する上板31Bには、四角形の角穴31Dが形成され、角穴31Dを通じて上側支持機構32が下側吊りアーム31内に配置される構成となっている。一方、下側吊りアーム31の先端31E側には、ロープ36の一端が取付けられている(図3参照)。
【0043】
上側支持機構32は、下アーム取付台30と上側吊りアーム35との間に設けられ、上側吊りアーム35を、下アーム取付台30に対して水平方向に回転可能に支持している。上側支持機構32は、下側吊りアーム31内に設けられた軸受ユニット33と、軸受ユニット33に回転可能に支持された上アーム取付台34とを含んで構成されている。
【0044】
軸受ユニット33は、内周側が軸受嵌合穴33Aとなり上下方向に延びる円筒状のケーシング33Bと、ケーシング33Bの軸受嵌合穴33Aに上下方向に隣接して嵌合された2つの軸受33Cとを有している。ケーシング33Bのうち軸受嵌合穴33Aの外周側には、下アーム取付台30のボルト穴30Cに対応する4個のボルト挿通穴33Dが設けられている。ケーシング33Bのボルト挿通穴33Dにはボルト33Eが挿通され、ボルト33Eは、下側吊りアーム31のボルト挿通穴31Cを通じて、下アーム取付台30のボルト穴30Cに螺着される。従って、軸受ユニット33は、下側吊りアーム31と一体的に下アーム取付台30に取付けられる。これにより、下側吊りアーム31は、軸受ユニット29に支持された状態で、ディスペンサ筐体3に対して中心軸Aを中心として回転可能となっている。
【0045】
上アーム取付台34は、上下方向に延びる円柱状の回転軸34Aと、回転軸34Aの上端に固定された円板34Bとを有している。円板34Bは、回転軸34Aよりも大径な円板状をなし、上下方向(板厚方向)に延びる複数(例えば4個)のボルト穴(雌ねじ穴)34Cが設けられている。上アーム取付台34の回転軸34Aは、軸受ユニット33の軸受33C(内輪)の内周側に挿嵌され、上アーム取付台34は、下アーム取付台30と同一の中心軸Aを中心として回転する。
【0046】
上側吊りアーム35は、上側支持機構32の上アーム取付台34に取付けられている。上側吊りアーム35は、上下方向で対面する下板35A,上板35Bを有する直方体の角筒体からなり、水平方向に延びている。上側吊りアーム35の長さ寸法は、下側吊りアーム31よりも大きく設定されている。上側吊りアーム35の長さ方向の一端側(基端側)に位置する下板35Aには、上アーム取付台34のボルト穴34Cに対応する4個のボルト挿通穴35Cが設けられている。ボルト挿通穴35Cにはボルト35Dが挿通され、ボルト35Dは、上アーム取付台34のボルト穴34Cに螺着される。これにより、上側吊りアーム35は、軸受ユニット33に支持された上アーム取付台34に固定される。なお、上側吊りアーム35の上板35Bには、ボルト挿通穴35Cと上下方向で対向する4個の貫通穴35Eが形成され、貫通穴35Eの穴径は、ボルト35Dの頭部の外径よりも大きく設定されている。一方、上側吊りアーム35の先端35F側には、ロープ38の一端が取付けられている(図3参照)。
【0047】
このように、軸受ユニット29によって支持された下側吊りアーム31と、軸受ユニット33によって支持された上側吊りアーム35とは、上下方向に重なり合う状態で、同一の中心軸Aを中心として個別に(互いに独立して)回転することができる。この場合、上側吊りアーム35の長さ寸法は、下側吊りアーム31よりも大きく設定されている。このため、図4に示すように、上側吊りアーム35の先端35Fから中心軸Aまでの長さL1は、下側吊りアーム31の先端31Eから中心軸Aまでの長さL2よりも大きく設定されている(L1>L2)。
【0048】
下側吊りアーム31の先端31E側には、ワイヤロープからなる索具としてのロープ36が取付けられている。ロープ36の一端は、連結具37を介して下側吊りアーム31の下板31Aに取付けられ、ロープ36の他端は、充填ノズル6Aに取付けられている。ロープ36の長さは、充填ノズル6Aを下側吊りアーム31の先端31Eから吊り下げた状態で、充填ノズル6Aが地面に接触しない寸法に設定されている。また、連結具37は、合成樹脂材料等の脆弱性を有する部材を用いて形成され、ロープ36に吊り下げられた充填ノズル6Aに所定以上の過大な外力が作用した場合には優先的に破断する構成となっている。なお、充填ノズル6Aに所定以上の過大な外力が作用した場合に優先的に破断する連結具37としては、合成樹脂材料等を用いた脆弱性を有する部材の他、例えば、所定以上の過大な外力が作用した場合に破断するシェアピン(shear pin)を用いてもよい。
【0049】
上側吊りアーム35の先端35F側には、ワイヤロープからなる索具としてのロープ38が取付けられている。ロープ38の一端は、連結具39を介して上側吊りアーム35の下板35Aに取付けられ、ロープ38の他端は、充填ノズル6Bに取付けられている。ロープ38の長さは、充填ノズル6Bを上側吊りアーム35の先端35Fから吊り下げた状態で、充填ノズル6Bが地面に接触しない寸法に設定されている。また、連結具39は、脆弱性を有する部材を用いて形成され、ロープ38に吊り下げられた充填ノズル6Bに所定以上の過大な外力が作用した場合には優先的に破断する構成となっている。なお、脆弱性を有する部材としては、前述の連結具37と同様に合成樹脂材料等やシェアピンを用いるようにしてもよい。
【0050】
ここで、上側吊りアーム35の先端35Fから中心軸Aまでの長さL1は、下側吊りアーム31の先端31Eから中心軸Aまでの長さL2よりも大きく設定されている。このため、例えば図5に示すように、下側吊りアーム31と上側吊りアーム35とが、上下方向で完全に重なり合った場合でも、連結具37と連結具39との間には十分な間隔が確保される。これにより、連結具37を介して下側吊りアーム31の先端31E側から吊り下げられたロープ36と、連結具39を介して上側吊りアーム35の先端35F側から吊り下げられたロープ38とが絡み合うのを防止できる構成となっている。
【0051】
アーム回転規制部材としての2つのアームストッパ40は、ディスペンサ筐体3を構成する収納庫21の張出し部21Aに設けられている。図4および図5に示すように、2つのアームストッパ40は、中心軸Aを挟んで対称となる2箇所に配置され、中心軸Aを中心として回転する下側吊りアーム31あるいは上側吊りアーム35が当接する。これにより、下側吊りアーム31および上側吊りアーム35が回転可能な範囲が規制(制限)される。具体的には、下側吊りアーム31および上側吊りアーム35が回転可能な範囲は、中心軸Aを中心とした角度θ(例えば180°)に制限されている。これにより、例えば下側吊りアーム31の先端31Eが、不用意にディスペンサ筐体3の上面板3Dの上方まで移動するのを禁止し、ロープ36とディスペンサ筐体3との接触による損傷を防止できる構成となっている。
【0052】
図6に示すように、アームストッパ40は、張出し部21Aの上面に固定され鉛直上方に立ち上がるL字型のブラケット40Aと、ブラケット40Aに固定された板状のマグネット40Bと、マグネット40Bの表面に取付けられた板状の緩衝材40Cとを有している。緩衝材40Cは、下側吊りアーム31あるいは上側吊りアーム35がアームストッパ40に当接したときの衝撃を緩和する。マグネット40Bは、アームストッパ40に当接した下側吊りアーム31および上側吊りアーム35を吸着して保持することにより、下側吊りアーム31および上側吊りアーム35が、風力によってアームストッパ40から離脱してばたつくのを防止する。
【0053】
本実施形態による燃料ガス充填装置1は、上述の如き構成を有するもので、次に、燃料ガス充填装置1による水素ガスの充填作業について説明する。
【0054】
本実施形態による燃料ガス充填装置1は、ガス供給管路4に接続された2本の充填ホース5A,5Bを有している。これにより、図4に示すように、燃料ガス充填装置1を挟んで2台の車両100,102が停車した場合には、ロープ36を介して下側吊りアーム31に吊り下げられた充填ノズル6Aを、車両100に搭載された燃料タンク101の接続口101Aに接続し、ロープ38を介して上側吊りアーム35に吊り下げられた充填ノズル6Bを、他の車両102に搭載された燃料タンク103の接続口103Aに接続することにより、2つの燃料タンク101,103に対して水素ガスを効率良く充填することができる。
【0055】
即ち、燃料タンク101に水素ガスを充填するときには、作業者は、ディスペンサ筐体3の収納庫21に収納された充填ノズル6Aをノズル掛け22から取外し、ロープ36を介して下側吊りアーム31に吊り下げられた充填ノズル6Aを、燃料タンク101の近傍へと持ち運んで接続口101Aに接続する。次に、作業者は、充填ノズル6Bをノズル掛け22から取外し、ロープ38を介して上側吊りアーム35に吊り下げられた充填ノズル6Bを、燃料タンク103の近傍へと持ち運んで接続口103Aに接続する。このように、充填ノズル6Aを燃料タンク101の接続口101Aに接続し、充填ノズル6Bを燃料タンク103の接続口103Aに接続した状態で、作業者は、充填開始スイッチ25を操作して燃料ガス充填装置1を作動させる。これにより、ガス蓄圧器20内の水素ガスが、ガス供給管路4、分岐管路4A、充填ホース5Aおよび充填ノズル6Aを通じて車両100の燃料タンク101に充填されると共に、ガス供給管路4、分岐管路4B、充填ホース5Bおよび充填ノズル6Bを通じて車両102の燃料タンク103に充填される。
【0056】
そして、燃料タンク101への水素ガスの充填作業が終了した後には、作業者は、充填ノズル6Aを燃料タンク101の接続口101Aから取外し、ディスペンサ筐体3の収納庫21へと充填ノズル6Aを持ち運んだ後、充填ノズル6Aをノズル掛け22に掛止めする。同様に、燃料タンク103への水素ガスの充填作業が終了した後には、作業者は、充填ノズル6Bを燃料タンク103の接続口103Aから取外し、ディスペンサ筐体3の収納庫21へと充填ノズル6Bを持ち運んだ後、充填ノズル6Bをノズル掛け22に掛止めする。
【0057】
ここで、車両100の燃料タンク101に対する水素ガスの充填時に、作業者が充填ノズル6Aを持ち運ぶ場合には、下側吊りアーム31は、中心軸Aを中心として回転することにより、ロープ36を充填ノズル6Aの移動に追従させる。これにより、作業者が誤って充填ノズル6Aを落としたとしても、ロープ36によって吊り下げられた充填ノズル6Aが地面に落下するのを防止することができる。同様に、車両102の燃料タンク103に対する水素ガスの充填時に、作業者が充填ノズル6Bを持ち運ぶ場合には、上側吊りアーム35は、中心軸Aを中心として回転することにより、ロープ38を充填ノズル6Bの移動に追従させる。これにより、作業者が誤って充填ノズル6Bを落としたとしても、ロープ38によって吊り下げられた充填ノズル6Bが地面に落下するのを防止することができる。
【0058】
次に、図5に示すように、水素ガスを燃料とする車両104の燃料タンク105に、2つの接続口105A,105Bが設けられている場合がある。この場合には、作業者は、ロープ36を介して下側吊りアーム31に吊り下げられた一方の充填ノズル6Aを、燃料タンク105の近傍まで持ち運んで一方の接続口105Aに接続する。次に、作業者は、ロープ38を介して上側吊りアーム35に吊り下げられた他方の充填ノズル6Bを、燃料タンク105の近傍まで持ち運んで他方の接続口105Bに接続する。この状態で、燃料ガス充填装置1を作動させる。これにより、ガス蓄圧器20内の水素ガスが、充填ホース5Aおよび充填ノズル6Aから接続口105Aを通じて燃料タンク105に充填されると共に、充填ホース5Bおよび充填ノズル6Bから接続口105Bを通じて燃料タンク105に充填される。この結果、燃料タンク105に対する水素ガスの充填を短時間で効率良く行うことができる。
【0059】
本実施形態によるノズル吊り装置27は、ディスペンサ筐体3の上部(収納庫21の張出し部21A)に設けられた下側吊りアーム31と上側吊りアーム35とが、上下方向に重なり合う状態で、同一の中心線A-Aを中心として個別に回転可能となっている。このため、上述した燃料タンク105に対する水素ガスの充填作業のように、燃料タンク105の接続口105A,105Bが接近して配置されていても、充填ノズル6A,6Bを接続口105A,105Bに対して取付け、取外しするときに、ロープ36を介して充填ノズル6Aを吊り下げる下側吊りアーム31と、ロープ38を介して充填ノズル6Bを吊り下げる上側吊りアーム35とが互いに干渉するのを防止できる。
【0060】
また、上側吊りアーム35の先端35Fから中心軸Aまでの長さL1は、下側吊りアーム31の先端31Eから中心軸Aまでの長さL2よりも大きく設定されている。このため、例えば図5に示すように、下側吊りアーム31と上側吊りアーム35とが、上下方向で完全に重なり合った場合でも、連結具37と連結具39との間には十分な間隔が確保される。これにより、連結具37を介して下側吊りアーム31の先端31E側から吊り下げられたロープ36と、連結具39を介して上側吊りアーム35の先端35F側から吊り下げられたロープ38とが絡み合うのを防止できる。
【0061】
また、ディスペンサ筐体3を構成する収納庫21の張出し部21Aには、2つのアームストッパ40が設けられ、このアームストッパ40により、下側吊りアーム31および上側吊りアーム35が回転可能な範囲は、中心軸Aを中心とした角度θ(例えば180°)に制限されている。これにより、下側吊りアーム31の先端31Eが、不用意にディスペンサ筐体3の上面板3Dの上方まで移動したり、上側吊りアーム35の先端35Fが、不用意にディスペンサ筐体3の上面板3Dの上方まで移動するのを禁止することができる。この結果、ロープ36,38が、ディスペンサ筐体3と接触するのを防止でき、ロープ36,38あるいはディスペンサ筐体3の損傷を防止することができる。
【0062】
かくして、本実施形態による燃料ガス充填装置1は、ガス供給管路4と、ガス供給管路4に接続された充填ホース5A,5Bにそれぞれ取付けられる充填ノズル6A,6Bと、ディスペンサ筐体3の上部に設けられ、ディスペンサ筐体3に対して回転しつつ充填ノズル6A,6Bをそれぞれロープ36,38を介して吊り下げる下側吊りアーム31,上側吊りアーム35を有するノズル吊り装置27とを備え、下側吊りアーム31および上側吊りアーム35は、上下方向に重なり合う状態で同一の中心軸Aを中心として個別に回転する構成としている。この構成によれば、接近した位置に2つの接続口105A,105Bが設けられた燃料タンク105に対し、2つの充填ノズル6A,6Bを用いて水素ガスの充填作業を行う場合に、充填ノズル6Aを吊り下げる下側吊りアーム31と充填ノズル6Bを吊り下げる上側吊りアーム35とが互いに干渉するのを防止できる。
【0063】
実施形態では、上下方向の上側に配置された上側吊りアーム35は、上下方向の下側に配置された下側吊りアーム31よりも長さ寸法が大きく設定されている。この構成によれば、下側吊りアーム31と上側吊りアーム35とが中心軸Aを中心として個別に回転するときに、連結具37を介して下側吊りアーム31の先端31E側から吊り下げられたロープ36と、連結具39を介して上側吊りアーム35の先端35F側から吊り下げられたロープ38とが絡み合うのを防止できる。
【0064】
実施形態では、ディスペンサ筐体3には、ディスペンサ筐体3に対して下側吊りアーム31および上側吊りアーム35が回転可能な範囲を規制するアームストッパ40が設けられている。この構成によれば、下側吊りアーム31の先端31Eあるいは上側吊りアーム35の先端35Fが、不用意にディスペンサ筐体3の上面板3Dの上方まで移動するのを禁止し、ロープ36,38が、ディスペンサ筐体3と接触して両者が損傷するのを防止することができる。
【0065】
次に、図8ないし図15は本発明の第2の実施形態を示している。本実施形態の特徴は、ディスペンサ筐体の上部にベース部材が回転可能に設けられ、ベース部材には、複数の吊りアームが互いに異なる中心軸を中心として回転可能に取付けられることにある。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明は省略する。
【0066】
図中、燃料ガス充填装置41は、第1の実施形態による燃料ガス充填装置1と同様に、ディスペンサ筐体3内に設けられたガス供給管路4と、充填ホース5A,5Bに取付けられた充填ノズル6A,6Bと、後述するノズル吊り装置42とを含んで構成されている。しかし、ノズル吊り装置42の構成が、第1の実施形態によるノズル吊り装置27とは異なっている。
【0067】
ノズル吊り装置42は、ディスペンサ筐体3の上部(収納庫21の張出し部21A)に設けられている。ノズル吊り装置42は、充填ホース5Aに接続された充填ノズル6A、および充填ホース5Bに接続された充填ノズル6Bを、それぞれロープ36,38等を介して個別に吊り下げて支持する。ノズル吊り装置42は、後述するベース部材43と、ベースストッパ45と、第1吊りアーム46と、第2吊りアーム48と、ロープ36,38と、アームストッパ50とを含んで構成されている。
【0068】
ベース部材43は、ディスペンサ筐体3を構成する収納庫21の張出し部21Aに設けられている。図10ないし図12に示すように、ベース部材43は、長方形の板体により構成されている。ベース部材43の長さ方向の中央部と張出し部21Aの上面との間には、ベース部材43を回転可能に支持する軸受44が設けられている。これにより、ベース部材43は、上下方向に延びる中心軸Bを中心として、収納庫21の張出し部21Aの上面に沿って回転可能となっている。
【0069】
ベース部材43の長さ方向の一端43A側および他端43B側には、中心軸Bを挟んで対称となる位置に軸受嵌合穴43Cがそれぞれ形成されている。これら軸受嵌合穴43Cには、後述する軸受47,49が嵌合する。ベース部材43の中央部の上面側には、ストッパ取付板43Dが複数のボルト43Eを用いて固定されている。また、ベース部材43の一端43Aおよび他端43Bの下面側には、それぞれ軸受嵌合穴43Cに隣接して板状の突出片43Fが固定されている。これら2つの突出片43Fは、ベース部材43の下面から下方に突出し、張出し部21Aの上面との間に隙間を保った状態でベース部材43と一体に回転することにより、後述するベースストッパ45の当接板45Cに当接する(図12参照)。
【0070】
ベースストッパ45は、軸受44の近傍に位置して収納庫21の張出し部21Aに設けられ、ディスペンサ筐体3に対してベース部材43が回転可能な範囲を規制している。ベースストッパ45は、張出し部21Aの上面にボルト45Aを用いて固定された基板45Bと、基板45Bの長さ方向の両端に設けられ基板45Bから上方に突出した2枚の当接板45Cとを有している。ベース部材43が、中心軸Bを中心として回転できる範囲は、ベース部材43の突出片43Fがベースストッパ45の当接板45Cに当接する範囲に規制される。具体的には、ベース部材43が回転可能な範囲は、中心軸Bを中心とした角度α(例えば300°)に規制されている(図12参照)。
【0071】
第1吊りアーム46は、ベース部材43の一端43A側に設けられている。ベース部材43の一端43A側に設けられた軸受嵌合穴43Cには、軸受47が嵌合され、第1吊りアーム46は軸受47に支持されている。これにより、第1吊りアーム46は、ベース部材43に対し、中心軸C1を中心として回転可能となっている。第1吊りアーム46は、軸受47に取付けられたアーム本体46Aと、アーム本体46Aに沿って移動可能となった繰出しアーム46Bとを含んで構成されている。これにより、第1吊りアーム46は、図8中に実線で示す姿勢と二点鎖線で示す姿勢との間で長さ方向に伸縮可能となっている。繰出しアーム46Bの先端46C側には、連結具37を介してロープ36の一端が取付けられている。ロープ36の他端には、充填ノズル6Aが取付けられている。なお、第1吊りアーム46の伸縮機構等の構成は、特開2020-133825号公報に記載されたノズル吊り装置と同様である。
【0072】
第2吊りアーム48は、ベース部材43の他端43B側に設けられている。ベース部材43の他端43B側に設けられた軸受嵌合穴43Cには、軸受49が嵌合され、第2吊りアーム48は軸受49に支持されている。これにより、第2吊りアーム48は、ベース部材43に対し、中心軸C2を中心として回転可能となっている。第2吊りアーム48は、第1吊りアーム46と同一の構成を有し、軸受49に取付けられたアーム本体48Aと、アーム本体48Aに沿って移動可能となった繰出しアーム48Bとを含んで構成されている。これにより、第2吊りアーム48は、図8中に実線で示す姿勢と二点鎖線で示す姿勢との間で長さ方向に伸縮可能となっている。繰出しアーム48Bの先端48C側には、連結具39を介してロープ38の一端が取付けられている。ロープ38の他端には、充填ノズル6Bが取付けられている。
【0073】
このように、本実施形態では、第1吊りアーム46と第2吊りアーム48とは、ベース部材43の上面側に中心軸Bを挟んで並列に配置され、互いに異なる中心軸C1(第1吊りアーム46の中心軸)および中心軸C2(第2吊りアーム48の中心軸)を中心として、ベース部材43に対し同一平面内で回転する構成となっている。
【0074】
アーム回転規制部材としてのアームストッパ50は、ベース部材43に設けられている。アームストッパ50は、ベース部材43に対して第1吊りアーム46および第2吊りアーム48が回転可能な範囲を規制している。図10に示すように、アームストッパ50は、ベース部材43のストッパ取付板43Dに取付けられた中央ストッパ51と、ベース部材43の一端43Aに取付けられた一端側ストッパ52と、ベース部材43の他端43Bに取付けられた他端側ストッパ53とを有している。
【0075】
中央ストッパ51は、長さ方向の両端側が上向きに立上がるU字型のブラケット51Aと、ブラケット51Aの両端側にそれぞれ設けられた板状の緩衝材51B,51Cとを有している。ブラケット51Aは、ベース部材43のストッパ取付板43Dにボルトを用いて固定されている。図13中の実線で示すように、第1吊りアーム46は、ベース部材43と直交する位置まで回転したときに緩衝材51Bに当接することにより、それ以上の回転が規制される。同様に、第2吊りアーム48は、ベース部材43と直交する位置まで回転したときに緩衝材51Cに当接することにより、それ以上の回転が規制される。ブラケット51Aと緩衝材51Bとの間、およびブラケット51Aと緩衝材51Cとの間には、それぞれマグネット(図示せず)が配置されている。緩衝材51Bに当接した第1吊りアーム46は、マグネットに吸着されることにより緩衝材51Bに当接した位置を保持し、緩衝材51Cに当接した第2吊りアーム48は、マグネットに吸着されることにより緩衝材51Cに当接した位置を保持する。マグネットの吸着力は、緩衝材51Bに当接した第1吊りアーム46および緩衝材51Cに当接した第2吊りアーム48が、風力によって緩衝材51B,51Cから離脱しない程度に設定されている。
【0076】
一端側ストッパ52は、ベース部材43の一端43Aに設けられている。一端側ストッパ52は、ベース部材43の上面に固定され鉛直上方に立ち上がるブラケット52Aと、ブラケット52Aに取付けられた板状の緩衝材52Bとを有し、ブラケット52Aと緩衝材52Bとの間には、マグネット(図示せず)が配置されている。図13中の二点鎖線で示すように、第1吊りアーム46は、ベース部材43と平行する位置まで回転したときに緩衝材52Bに当接することにより、それ以上の回転が規制される。緩衝材52Bに当接した第1吊りアーム46は、マグネットに吸着されることにより、風力によって離脱することなく緩衝材52Bに当接した位置を保持する。
【0077】
他端側ストッパ53は、ベース部材43の他端43Bに設けられている。他端側ストッパ53は、ベース部材43の上面に固定され鉛直上方に立ち上がるブラケット53Aと、ブラケット53Aに取付けられた板状の緩衝材53Bとを有し、ブラケット53Aと緩衝材53Bとの間には、マグネット(図示せず)が配置されている。図13中の二点鎖線で示すように、第2吊りアーム48は、ベース部材43と平行する位置まで回転したときに緩衝材53Bに当接することにより、それ以上の回転が規制される。緩衝材53Bに当接した第2吊りアーム48は、マグネットに吸着されることにより、風力によって離脱することなく緩衝材53Bに当接した位置を保持する。
【0078】
このように、第1吊りアーム46が、ベース部材43に対して中心軸C1を中心として回転できる範囲は、中央ストッパ51の緩衝材51Bおよび一端側ストッパ52の緩衝材52Bに当接する範囲に規制される。具体的には、第1吊りアーム46が回転可能な範囲は、中心軸C1を中心とした角度β1(例えば90°)に制限されている。一方、第2吊りアーム48が、ベース部材43に対して中心軸C2を中心として回転できる範囲は、中央ストッパ51の緩衝材51Cおよび他端側ストッパ53の緩衝材53Bに当接する範囲に規制される。具体的には、第2吊りアーム48が回転可能な範囲は、中心軸C2を中心とした角度β2(例えば90°)に制限されている。このように、ベース部材43は、ベースストッパ45によって回転可能な範囲が規制され、第1吊りアーム46および第2吊りアーム48は、アームストッパ50によって回転可能な範囲が規制される。これにより、第1吊りアーム46の先端46Cあるいは第2吊りアーム48の先端48Cが、不用意にディスペンサ筐体3の上面板3Dの上方まで移動するのを禁止し、ロープ36,38が、ディスペンサ筐体3と接触して両者が損傷するのを防止することができる。
【0079】
第2の実施形態による燃料ガス充填装置41は、上述の如きノズル吊り装置42を有するもので、図14に示すように、燃料ガス充填装置41を挟んで2台の車両100,102が停車した場合には、ロープ36を介して第1吊りアーム46に吊り下げられた充填ノズル6Aを、車両100に搭載された燃料タンク101の接続口101Aに接続し、ロープ38を介して第2吊りアーム48に吊り下げられた充填ノズル6Bを、他の車両102に搭載された燃料タンク103の接続口103Aに接続する。これにより、2つの燃料タンク101,103に水素ガスを効率良く充填することができる。
【0080】
ここで、車両100の燃料タンク101に対する水素ガスの充填時に、作業者が充填ノズル6Aを持ち運ぶ場合には、第1吊りアーム46は、中心軸C1を中心として回転することにより、ロープ36を充填ノズル6Aの移動に追従させる。同様に、車両102の燃料タンク103に対する水素ガスの充填時に、作業者が充填ノズル6Bを持ち運ぶ場合には、第2吊りアーム48は、中心軸C2を中心として回転することにより、ロープ38を充填ノズル6Bの移動に追従させる。これにより、作業者が誤って充填ノズル6A,6Bを落としたとしても、ロープ36,38によって吊り下げられた充填ノズル6A,6Bが地面に落下して損傷するのを防止することができる。
【0081】
しかも、第1吊りアーム46および第2吊りアーム48は、それぞれ長さ方向に伸縮可能に構成されている。このため、図14に示すように、第1吊りアーム46(繰出しアーム46B)を二点鎖線で示す伸長姿勢とし、第2吊りアーム48(繰出しアーム48B)を二点鎖線で示す伸長姿勢とすることにより、車両100,102が燃料ガス充填装置41から離れた場所に停車した場合でも、充填ノズル6A,6Bを用いて燃料タンク101,103に対して安全に水素ガスを充填することができる。この結果、充填ノズル6A,6Bを用いて水素ガスの充填作業を行うことができる範囲を拡大することができる。換言すれば、燃料ガス充填装置41に対する車両100,102の停車位置の制限を緩和することができる。
【0082】
次に、図15に示すように、車両104の燃料タンク105に、2つの接続口105A,105Bが設けられている場合には、作業者は、ロープ36を介して第1吊りアーム46に吊り下げられた充填ノズル6Aを、燃料タンク105の近傍まで持ち運ぶ。このとき、ベース部材43は、中心軸Bを中心として、突出片43Fとベースストッパ45の当接板45Cとが当接する位置まで回転する。また、第1吊りアーム46は、中心軸C1を中心として車両104側へと回転する。これにより、ロープ36を介して第1吊りアーム46に吊り下げられた充填ノズル6Aを、燃料タンク105の一方の接続口105Aに接続することができる。次に、作業者は、ロープ38を介して第2吊りアーム48に吊り下げられた充填ノズル6Bを、燃料タンク105の近傍まで持ち運ぶ。このとき、第2吊りアーム48は、中心軸C2を中心として、中央ストッパ51の緩衝材51Cに当接する位置まで回転する。これにより、ロープ38を介して第2吊りアーム48に吊り下げられた充填ノズル6Bを、燃料タンク105の接続口105Bに接続することができる。この状態で、燃料ガス充填装置41を作動させることにより、充填ノズル6Aから接続口105Aを通じて燃料タンク105に水素ガスが充填されると共に、充填ノズル6Bから接続口105Bを通じて燃料タンク105に充填される。この結果、燃料タンク105に対する水素ガスの充填を短時間で効率良く行うことができる。
【0083】
この場合、ベース部材43は、ディスペンサ筐体3に対して中心軸Bを中心として回転可能となり、第1吊りアーム46および第2吊りアーム48は、ベース部材43に対し、互いに異なる中心軸C1および中心軸C2を中心として回転可能となっている。このため、上述した燃料タンク105に対する水素ガスの充填作業のように、燃料タンク105の接続口105A,105Bが接近して配置されていても、充填ノズル6A,6Bを接続口105A,105Bに対して取付け、取外しするときに、ロープ36を介して充填ノズル6Aを吊り下げる第1吊りアーム46と、ロープ38を介して充填ノズル6Bを吊り下げる第2吊りアーム48とが互いに干渉するのを防止できる。
【0084】
かくして、本実施形態による燃料ガス充填装置41は、ガス供給管路4と、ガス供給管路4に接続された充填ホース5A,5Bにそれぞれ取付けられる充填ノズル6A,6Bと、ディスペンサ筐体3の上部に設けられ、ディスペンサ筐体3に対して回転しつつ充填ノズル6A,6Bをそれぞれロープ36,38を介して吊り下げる第1吊りアーム46,第2吊りアーム48を有するノズル吊り装置42とを備え、ディスペンサ筐体3の上部には、収納庫21の張出し部21Aの上面に沿って回転するベース部材43が設けられ、第1吊りアーム46および第2吊りアーム48は、互いに異なる中心軸C1および中心軸C2を中心としてベース部材43にそれぞれ回転可能に取付けられている。
【0085】
この構成によれば、接近した位置に2つの接続口105A,105Bが設けられた燃料タンク105に対し、2つの充填ノズル6A,6Bを用いて水素ガスの充填作業を行う場合に、充填ノズル6Aを吊り下げる第1吊りアーム46と充填ノズル6Bを吊り下げる第2吊りアーム48とが干渉するのを防止できる。しかも、第1吊りアーム46と第2吊りアーム48とは、ベース部材43の上面側に並列に配置され、中心軸C1および中心軸C2を中心として、ベース部材43に対し同一平面内で回転する。このため、第1吊りアーム46および第2吊りアーム48の、収納庫21の張出し部21Aからの突出長さを抑え、燃料ガス充填装置41全体の高さ寸法を抑えることができる。
【0086】
実施形態では、ノズル吊り装置42の第1吊りアーム46および第2吊りアーム48は、長さ方向に伸縮可能に構成されている。この構成によれば、第1吊りアーム46および第2吊りアーム48を伸長させることにより、例えば燃料ガス充填装置41から離れた場所に複数の車両が停車した場合でも、これら複数の車両に搭載された燃料タンクに対し、充填ノズル6A,6Bを用いて安全に水素ガスを充填することができる。この結果、充填ノズル6A,6Bを用いて水素ガスの充填作業を行うことができる範囲を拡大することができる。
【0087】
実施形態では、ディスペンサ筐体3には、ディスペンサ筐体3に対してベース部材43が回転可能な範囲を規制するベースストッパ45が設けられ、ベース部材43には、第1吊りアーム46および第2吊りアーム48が回転可能な範囲を規制するアームストッパ50が設けられている。この構成によれば、第1吊りアーム46の先端46Cあるいは第2吊りアーム48の先端48Cが、不用意にディスペンサ筐体3の上面板3Dの上方まで移動するのを禁止し、ロープ36,38が、ディスペンサ筐体3と接触して両者が損傷するのを防止することができる。
【0088】
なお、第1の実施形態では、下側吊りアーム31および上側吊りアーム35、それぞれ一定の長さ寸法に設定された場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば第2の実施形態による第1吊りアーム46のように、長さ方向に伸縮可能に構成してもよい。この場合には、上側吊りアーム35の長さ寸法を、常に下側吊りアーム31の長さ寸法よりも大きく保つことが望ましい。
【0089】
また、第1の実施形態では、下側吊りアーム31および上側吊りアーム35を備えた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば3つ以上の吊りアームを備える構成としてもよい。このことは、第2の実施形態についても同様である。
【符号の説明】
【0090】
1,41 燃料ガス充填装置
3 ディスペンサ筐体
4 ガス供給管路
5A,5B 充填ホース
6A,6B 充填ノズル
20 ガス蓄圧器
27,42 ノズル吊り装置
31 下側吊りアーム(吊りアーム)
35 上側吊りアーム(吊りアーム)
36,38 ロープ(索具)
40,50 アームストッパ(アーム回転規制部材)
43 ベース部材
45 ベースストッパ(ベース回転規制部材)
46 第1吊りアーム(吊りアーム)
48 第2吊りアーム(吊りアーム)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15