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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175741
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】情報コード、情報記録媒体及び物品
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/06 20060101AFI20241212BHJP
   C09D 5/33 20060101ALI20241212BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20241212BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20241212BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20241212BHJP
【FI】
G06K19/06 140
C09D5/33
C09D7/61
C09D201/00
B32B7/023
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093701
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】300075348
【氏名又は名称】日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】張 貴博
(72)【発明者】
【氏名】西岡 晋司
【テーマコード(参考)】
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AA37B
4F100AH00B
4F100AK01B
4F100AK25B
4F100AK41B
4F100AK51B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA42B
4F100CA13B
4F100CC00B
4F100JD10B
4F100JN02B
4F100JN06B
4J038CG141
4J038DG262
4J038HA026
4J038KA03
4J038KA08
4J038MA13
4J038MA14
4J038NA19
4J038PB05
4J038PB07
(57)【要約】
【課題】本開示は、基材の意匠性に影響を与えることなく情報を付与でき、且つ、赤外線による検出感度の高い情報コードを提供することを目的とする。
【解決手段】赤外線照射により読み取り可能な情報が記録される情報コードであって、
前記情報コードは、赤外線反射部及び赤外線吸収部を有し、
前記赤外線反射部及び前記赤外線吸収部の色相が同系色であり、且つ、
前記赤外線反射部及び前記赤外線吸収部は、可視光不透過性である、
情報コード。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線照射により読み取り可能な情報が記録される情報コードであって、
前記情報コードは、赤外線反射部及び赤外線吸収部を有し、
前記赤外線反射部及び前記赤外線吸収部の色相が同系色であり、且つ、
前記赤外線反射部及び前記赤外線吸収部は、可視光不透過性である、
情報コード。
【請求項2】
前記赤外線反射部と前記赤外線吸収部の色差(ΔE)は、5.0以下である、請求項1に記載の情報コード。
【請求項3】
前記赤外線反射部における赤外線反射率(RR)は、50%以上であり、
前記赤外線吸収部における赤外線反射率(RA)は、50%未満である、請求項1に記載の情報コード。
【請求項4】
前記赤外線反射部における赤外線反射率(RR)と、前記赤外線吸収部における赤外線反射率(RA)との比(RR/RA)は、1.5以上である、請求項1に記載の情報コード。
【請求項5】
前記赤外線反射率は、波長780~2,500nmの範囲における平均分光反射率、波長830~915nmの範囲における平均分光反射率、並びに、波長905nm及び/又は波長1,550nmにおける分光反射率からなる群より選ばれる1種である、請求項3又は4に記載の情報コード。
【請求項6】
基材と、前記基材上に配置される情報コードとを備え、
前記情報コードは、請求項1~4のいずれか1項に記載の情報コードであり、
前記基材と前記赤外線反射部との色差(ΔE)が5.0以下であるか、及び/又は前記基材と前記赤外線吸収部との色差(ΔE)が5.0以下である、物品。
【請求項7】
前記赤外線反射部は、赤外線反射性塗料組成物から形成され、
前記赤外線反射性塗料組成物は、
塗膜形成樹脂(A)及び着色顔料(B)を含み、
前記着色顔料(B)は、近赤外線を反射しうる顔料(B1)を含み、
800~2,500nmの波長域における反射率を近赤外線反射率としたとき、
前記顔料(B1)は、近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料、近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔料、及び近赤外線反射率が30%以上である黒色系顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものであって、
且つ、近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料及び近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔料から選ばれる1種を含み、
前記顔料(B1)は、有機顔料を含み、該有機顔料の含有率は、前記顔料(B1)の総量中、3質量%以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の情報コード。
【請求項8】
前記着色顔料(B)は、波長905nm及び/又は1,550nmにおける分光反射率が70%以上である白色系顔料、
前記波長における分光反射率が50%以上である有機赤色系顔料、
前記波長における分光反射率が20%以上である無機赤色系顔料、
前記波長における分光反射率が60%以上である有機黄色系顔料、
前記波長における分光反射率が20%以上である無機黄色系顔料、
前記波長における分光反射率が40%以上である青色系顔料、
前記波長における分光反射率が30%以上である有機黒色系顔料、並びに、
前記波長における分光反射率が15%以上である無機黒色系顔料
からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項7に記載の情報コード。
【請求項9】
前記着色顔料(B)におけるカーボン顔料の含有率は、前記着色顔料(B)の総量100質量%中、0.2質量%未満である、請求項7に記載の情報コード。
【請求項10】
前記赤外線吸収部は、赤外線吸収性塗料組成物から形成され、
前記赤外線吸収性塗料組成物は、
塗膜形成樹脂及び着色顔料を含み、
前記着色顔料は、カーボン顔料を含み、
該カーボン顔料の含有率は、前記着色顔料の総量100質量%中、0.2質量%以上50質量%以下である、請求項7に記載の情報コード。
【請求項11】
請求項1~4のいずれか1項に記載の情報コードを有する、情報記録媒体。
【請求項12】
路車協調通信システム用である、請求項1~4のいずれか1項に記載の情報コード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報コード、情報記録媒体及び物品に関する。
【背景技術】
【0002】
光を用いたリモートセンシング技術の一つに、対象物に対して近赤外光、可視光及び/又は紫外光を照射し、それらが対象物で反射及び/又は散乱した光を測定することにより、照射位置から対象物までの距離や方位を検出するLiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)がある。LiDAR技術は、例えば、車両において、障害物を検知して自動でブレーキをかけたり、周辺車両の速度や車間距離を測定して自車の速度や車間距離を制御したりする自動運転システムに必要不可欠な技術である。
【0003】
他方、光学的に読み取り可能な情報が記録された情報コードは、例えば、商品管理、生産管理、流通管理、偽造防止管理等、様々な分野で広く用いられている。この技術を、前記自動運転システムに応用できれば、車両の位置制御ばかりでなく、規制、指示等の道路標識的な情報、路面の情報等も記録することができ、より高度な自動運転システムを構築することが可能である。
【0004】
近年においては、赤外線照射に読み取り可能な情報が記録された情報コードを、車両運転支援、先進運転支援、自動運転技術等における路車協調通信システムで用いる検討も行われつつある。情報コードは、代表的には、目視で視認可能なパターン(特に白黒2色からなるパターン)であり、一般に、レーザーマーキング又はインキマーキング技術により書き込まれることが多い。しかしながら、目視で視認可能なパターンは、情報コードが付される物品の意匠性を低下させてしまう場合がある。また、路面上に白黒2色の情報コードを付すと、既存の白線等と誤認する恐れがある。誤認を防ぐため、情報コードの存在が目立たないような大きさとすると、検出感度が低下してしまう恐れがある。
【0005】
意匠性を考慮した情報コードとして、特許文献1には、透明微小球が整列配置された微小球固定層と;透明微小球の露出面の反対側に設けられた、透明微小球透過光を反射する反射層と、透明樹脂層とを備え、透明微小球へ入射した光の少なくとも一部を略入射方向へ再帰反射させるように反射層は透明微小球の略焦点位置に設けられ、透明樹脂層にて透明微小球の露出面が覆われていることで、その透明微小球の焦点位置を反射層の位置からずらして再帰反射率を低下させ、透明樹脂層が設けられた部分と設けられていない部分との再帰反射率の違いにより情報が記録されている情報を記録した積層材料が記載されている。
【0006】
特許文献2には、光学的に読み取り可能な情報コード10を有する基材20と、基材20のうちの情報コード10が配置されている領域上に存在し、且つ再帰反射条件において再帰反射を示す再帰反射層30と、を有し、再帰反射層30は、平均粒径yの透明球状体を有する透明球状体層31を有し、情報コード10は、第1の明色領域及び第1の暗色領域から構成され、且つ第1の明色領域が幅4y未満の部分を含む、第1の位置検出パターンと、第2の明色領域及び第2の暗色領域から構成され、且つ第2の暗色領域が幅4y未満の部分を含む、第2の位置検出パターンとの組合せを有し、且つ非再帰反射条件において再帰反射層30を通して情報コード10を光学的に読み取り可能である、情報媒体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-192883号公報
【特許文献2】特開2019-40231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来から知られる特許文献1又は2に記載の情報コードは、製造工程が複雑であり、且つ情報コードを形成する材料が透明であるため、十分な強度の反射光を得ることが困難であった。また、反射光の強度を高めるためには、高価な材料を使用する必要があった
【0009】
本開示は、基材の意匠性に影響を与えることなく情報を付与でき、且つ、赤外線による検出感度の高い情報コードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、以下の態様を提供する。
[1]
赤外線照射により読み取り可能な情報が記録される情報コードであって、
前記情報コードは、赤外線反射部及び赤外線吸収部を有し、
前記赤外線反射部及び前記赤外線吸収部の色相が同系色であり、且つ、
前記赤外線反射部及び前記赤外線吸収部は、可視光不透過性である、
情報コード。
[2]
前記赤外線反射部と前記赤外線吸収部の色差(ΔE)は、5.0以下である、[1]に記載の情報コード。
[3]
前記赤外線反射部における赤外線反射率(RR)は、50%以上であり、
前記赤外線吸収部における赤外線反射率(RA)は、50%未満である、[1]又は[2]に記載の情報コード。
[4]
前記赤外線反射部における赤外線反射率(RR)と、前記赤外線吸収部における赤外線反射率(RA)との比(RR/RA)は、1.5以上である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の情報コード。
[5]
前記赤外線反射率は、波長780~2,500nmの範囲における平均分光反射率、波長830~915nmの範囲における平均分光反射率、並びに、波長905nm及び/又は波長1,550nmにおける分光反射率からなる群より選ばれる1種である、[3]又は[4]に記載の情報コード。
[6]
基材と、前記基材上に配置される情報コードとを備え、
前記情報コードは、請求項1~4のいずれか1項に記載の情報コードであり、
前記基材と前記赤外線反射部との色差(ΔE)が5.0以下であるか、及び/又は前記基材と前記赤外線吸収部との色差(ΔE)が5.0以下である、物品。
[7]
前記赤外線反射部は、赤外線反射性塗料組成物から形成され、
前記赤外線反射性塗料組成物は、
塗膜形成樹脂(A)及び着色顔料(B)を含み、
前記着色顔料(B)は、近赤外線を反射しうる顔料(B1)を含み、
800~2,500nmの波長域における反射率を近赤外線反射率としたとき、
前記顔料(B1)は、近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料、近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔料、及び近赤外線反射率が30%以上である黒色系顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものであって、
且つ、近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料及び近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔料から選ばれる1種を含み、
前記顔料(B1)は、有機顔料を含み、該有機顔料の含有率は、前記顔料(B1)の総量中、3質量%以上である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の情報コード。
[8]
前記着色顔料(B)は、波長905nm及び/又は1,550nmにおける分光反射率が70%以上である白色系顔料、
前記波長における分光反射率が50%以上である有機赤色系顔料、
前記波長における分光反射率が20%以上である無機赤色系顔料、
前記波長における分光反射率が60%以上である有機黄色系顔料、
前記波長における分光反射率が20%以上である無機黄色系顔料、
前記波長における分光反射率が40%以上である青色系顔料、
前記波長における分光反射率が30%以上である有機黒色系顔料、並びに、
前記波長における分光反射率が15%以上である無機黒色系顔料
からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、[7]に記載の情報コード。
[9]
前記着色顔料(B)におけるカーボン顔料の含有率は、前記着色顔料(B)の総量100質量%中、0.2質量%未満である、[7]又は[8]に記載の情報コード。
[10]
前記赤外線吸収部は、赤外線吸収性塗料組成物から形成され、
前記赤外線吸収性塗料組成物は、
塗膜形成樹脂及び着色顔料を含み、
前記着色顔料は、カーボン顔料を含み、
該カーボン顔料の含有率は、前記着色顔料の総量100質量%中、0.2質量%以上50質量%以下である、[7]~[9]のいずれか1つに記載の情報コード。
[11]
[1]~[4]のいずれか1つに記載の情報コードを有する、情報記録媒体。
[12]
路車協調通信システム用である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の情報コード。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、基材の意匠性に影響を与えることなく情報を付与でき、且つ、赤外線による検出感度の高い情報コードを提供し得る。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の情報コードは、
赤外線照射により読み取り可能な情報が記録される情報コードであって、
前記情報コードは、赤外線反射部及び赤外線吸収部を有し、
前記赤外線反射部及び前記赤外線吸収部の色相が同系色であり、且つ、
前記赤外線反射部及び前記赤外線吸収部は、可視光不透過性である。
【0013】
本開示の情報コードは、意匠性に影響を与えることなく情報を付与でき、且つ、赤外線検出感度が高い。本開示は、特定の理論に限定して解釈されるべきではないが、本開示の情報コードがかかる効果を奏し得る理由は、以下のように考えられる。
【0014】
すなわち、本開示の情報コードでは、赤外線反射部及び赤外線吸収部の色相が同系色であり、且つそれらは被塗物と同系色に設計できるため、赤外線反射部及び赤外線吸収部のいずれもが可視光不透過性であっても、物品の意匠性への影響が低減されている。そして、赤外線反射部及び赤外線吸収部はいずれも可視光不透過性であり、物品の意匠性への影響を低減しつつも赤外線による検出感度を高めることが可能になると考えられる。更に、赤外線吸収部と赤外線反射部の両方を備えることで、基材の赤外線反射特性によらず、情報コードを提供できる利点もある。
【0015】
一態様において、ある色と他の色とが同系色であることは、例えば、前記2色の色差(ΔE)が、好ましくは5.0以下であることを意味し得る。かかる色差(ΔE)は、より好ましくは0以上4.0以下、更に好ましくは0以上3.5以下、いっそう好ましくは0以上3.0以下であり得る。
【0016】
一態様において、可視光不透過性とは、好ましくは、波長380~780nmの平均光線透過率が30%未満であることを意味し得る。波長380~780nmの平均光線透過率は、好ましくは0%以上25%以下、更に好ましくは0%以上20%以下であり得る。
【0017】
別の態様において、可視光不透過性とは、好ましくは、JIS K 5600-4-1に準拠して測定した隠蔽率が70%以上であることを意味し得る。かかる隠蔽率は、好ましくは、75%以上100%以下、より好ましくは80%以上100%以下であり得る。
【0018】
前記情報コードにおいて、赤外線反射部と赤外線吸収部とは、情報が含まれるパターンを形成するように配置される。かかる情報コードは、一方向に赤外線反射部及び赤外線吸収部を縞状に配列した1次元コード(1次元シンボル)であってもよく、互いに直交する2方向(例えば、縦方向及び横方向)に赤外線反射部及び赤外線吸収部を配置した2次元コード(2次元シンボル)であってもよい。かかる2次元コードとして、例えば、QRコード(登録商標)が挙げられる。
【0019】
前記情報コードは、リモートセンシング技術に適用され得る。前記センシングは、具体的には、リモートセンシング技術であり得、検出対象物に近赤外線を照射し、照射された位置からの反射光及び/又は散乱光を検出して、近赤外線の発射位置から照射位置までの距離や方位を特定する技術でありうる。
【0020】
前記センシングに用いられる近赤外光の波長は、好ましくは800nm以上、より好ましくは900nm以上であり、好ましくは2,500nm以下、より好ましくは2,000nm以下、更に好ましくは1,600nm以下である。近赤外光は、波長が短いほど直進性が高く、波長が長いほど太陽光の影響を排除することが容易である。現在、センシングにおいて用いられている波長は、主に905nm及び/又は1,550nmである。
【0021】
前記赤外線反射部における赤外線反射率(RR)は、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは65%以上であり、上限は、例えば100%以下、更に90%以下であってもよい。赤外線反射部における赤外線反射率(RR)がかかる範囲にあることで、赤外線による検出感度を高めることが容易になり得る。
【0022】
前記赤外線吸収部における赤外線反射率(RA)は、好ましくは50%未満、より好ましくは40%以下、更に好ましくは30%以下であり、下限は、例えば0%以上、更に10%以上であってもよい。赤外線吸収部における赤外線反射率(RA)がかかる範囲にあることで、赤外線による検出感度を高めることが容易になり得る。
【0023】
前記赤外線反射部における赤外線反射率(RR)と、前記赤外線吸収部における赤外線反射率(RA)との比(RR/RA)は、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.8以上、更に好ましくは2.0以上であり、例えば10以下、更に8以下であってよい。前記比(RR/RA)がかかる範囲にあることで、赤外線による検出感度を高めることが容易になり得る。
【0024】
本開示において、前記赤外線反射率は、波長780~2,500nmの範囲における平均分光反射率、波長830~915nmの範囲における平均分光反射率、並びに、波長905nm及び/又は波長1,550nmにおける分光反射率からなる群より選ばれる1種であり得る。一態様において、前記赤外線反射率は、波長780~2,500nmの範囲における平均分光反射率であり得、別の態様において、前記赤外線反射率は、波長830~915nmの範囲における平均分光反射率であり得、更に別の態様において、前記赤外線反射率は、波長905nm及び/又は波長1,550nmにおける分光反射率であり得る。
【0025】
本開示において、赤外線反射率は、分光光度計を用い、JIS K 5602:2008に準拠して測定できる。具体的に、波長780~2,500nmの範囲における平均分光反射率は、分光光度計を用い、JIS K 5602:2008に準拠して、780~2,500nmの波長域において分光反射率を測定し、得られた分光反射率を算術平均することにより算出できる。また、波長830~915nmの範囲における平均分光反射率は、分光光度計を用い、JIS K 5602:2008に準拠して、830~915nmの波長域において分光反射率を測定し、得られた分光反射率を算術平均することにより算出できる。波長905nm及び/又は波長1,550nmにおける分光反射率は、分光光度計を用い、JIS K 5602:2008に準拠して測定できる。前記分光光度計としては、例えば、分光光度計(島津製作所製、SHIMADZU-UV3600等)を用いることができる。
【0026】
前記赤外線反射部の明度(L*値)は、例えば80以下更に70以下であってよく、例えば5以上、更に15以上であってよい。
【0027】
前記赤外線吸収部の明度(L*値)は、例えば80以下更に70以下であってよく、例えば5以上、更に15以上であってよい。
【0028】
前記赤外線反射部及び前記赤外線吸収部の明度は、例えば、JIS K 5600-4-4の3.2及びJIS K 5600-4-5に準拠して、色彩色差計を用いて測定することができる。色彩色差計としては、例えば、CM-600d(コニカミノルタ社製)を用いて測定することができる。
【0029】
前記赤外線反射部の厚さは、好ましくは10~3,000μm、より好ましくは10~2,000μm、更に好ましくは10~1,500μmとすることができる。
【0030】
また、前記赤外線吸収部の厚さは、好ましくは10~3,000μm、より好ましくは10~2,000μm、更に好ましくは10~1,500μmとすることができる。
【0031】
(赤外線反射部)
前記赤外線反射部は、任意の材料で構成され得、好ましくは、赤外線反射性塗料組成物から形成される。
【0032】
前記赤外線反射性塗料組成物は、好ましくは、
塗膜形成樹脂(A)及び着色顔料(B)を含み、
前記着色顔料(B)は、800~2,500nmの波長域における反射率を近赤外線反射率としたとき、近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料、近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔料、及び、近赤外線反射率が30%以上である黒色系顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。
【0033】
前記赤外線反射性塗料組成物によれば、路面に形成した場合においても白線と誤認することなく、高い再帰反射性(特に、高入射角における再帰反射性)を示す表示を実現し得る。本開示は、特定の理論に限定して解釈されるべきではないが、前記赤外線反射性塗料組成物がかかる効果を奏し得る原因は、以下のように考えられる。前記赤外線反射性塗料組成物は、着色顔料として、特定の近赤外線反射率を有する顔料を用いているため、得られる塗膜は、近赤外線を反射し得、高い再帰反射性を発揮することができると考えられる。
【0034】
[塗膜形成樹脂(A)]
前記塗膜形成樹脂(A)は、塗膜を形成しうる樹脂であり、塗料分野で通常用いられる樹脂を用いることができる。前記塗膜形成樹脂(A)としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキド樹脂、ポリエーテル樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂又はウレア樹脂等の熱硬化性樹脂、常温硬化性樹脂又は光硬化性樹脂等が挙げられ、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂及びウレア樹脂から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。また、前記塗膜形成樹脂(A)は、該塗膜形成樹脂(A)単独で塗膜を形成するものであってもよく、後述する架橋剤(C)の作用により塗膜を形成するものであってよい。前記塗膜形成樹脂(A)としては、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
前記アクリル樹脂は、(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する単位を有する重合体を表し、前記(メタ)アクリロイル基を有する単量体を含む単量体混合物を重合することにより調製することができる。前記単量体混合物は、更に、前記(メタ)アクリロイル基を有する単量体以外の、エチレン性不飽和結合を有する単量体を含んでいてもよい。本明細書において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸を表すものとする。
【0036】
前記(メタ)アクリロイル基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸;炭素数1~20の直鎖状又は分岐鎖状態のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル単量体;前記ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル単量体のラクトン付加物;(メタ)アクリロニトリル;等が挙げられる。
【0037】
エチレン性不飽和基を有する単量体としては、前記(メタ)アクリロイル基を有する単量体の他、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸等のカルボキシ基を有する単量体;前記カルボキシ基を有する単量体の無水物;スチレン等のビニル単量体;等が挙げられる。
【0038】
前記ポリエステル樹脂は、複数のエステル結合を主鎖に有する重合体を表し、ポリオールとポリカルボン酸との反応物;環状エステルの付加重合物;前記ポリオール及びポリカルボン酸の反応物と、環状エステルとの反応物;等として得ることができる。
【0039】
前記ポリオールは、1分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ヘキサンジオール等の脂肪族ポリオール;水添ビスフェノールA、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ポリオール;ビスフェノールA、ヒドロキシアルキル化ビスフェノールA等の芳香族ポリオール;グリセリン、アンニトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の3官能以上のポリオール;ソルビトール等の糖アルコール;トリス(ヒドロキシエチル)イソシアネート;N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ジメチルヒダントイン;等が挙げられる。
【0040】
前記ポリオールに含まれるヒドロキシ基は、1分子中、好ましくは2個以上であり、3個以上であってもよく、好ましくは6個以下、より好ましくは4個以下である。
【0041】
前記ポリオールとしては、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
前記ポリカルボン酸は、1分子中に2個以上のカルボキシ基を有する化合物を意味する。前記ポリカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族ポリカルボン酸;テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸等の脂環式ポリカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アジピン酸、畔ライン酸、セバシン酸、コハク酸、ドデセニルコハク酸等の脂肪族ポリカルボン酸;乳酸糖のヒドロキシ酸;前記芳香族ポリカルボン酸、前記脂環式ポリカルボン酸、前記脂肪族ポリカルボン酸の無水物;等が挙げられる。前記ポリカルボン酸としては、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
前記環状エステルとしては、ε-カプロラクトン等が挙げられる。
【0044】
前記ポリエステル樹脂には、前記したポリエステル樹脂の変性物も含まれる。樹脂の変性は、該樹脂を構成する主鎖の末端に変性剤を反応させることで行うことができる。前記変性剤としては、イソシアネート基、ヒドロキシ基、カルボキシ基等の反応性基や、シリコーン骨格等を有する化合物が挙げられる。前記ポリエステル樹脂の変性物としては、ウレタン変性ポリエステル樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、シリコーン変性ポリエステル樹脂等を挙げることができる。
【0045】
前記ウレタン樹脂は、ポリオールとポリイソシアネートとの反応物;該反応物と、必要に応じて用いる鎖伸長剤との反応物;等が挙げられる。
【0046】
前記ポリオールは、1分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する化合物を意味する。前記ポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール等の脂肪族ポリオール;水添ビスフェノールA、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ポリオール;ビスフェノールA、ヒドロキシアルキル化ビスフェノールA(特に、ビスフェノールヒドロキシプロピルエーテル)等の芳香族ポリオール;グリセリン、アンニトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の3官能以上のポリオール;ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール等の高分子量のポリオール(例えば、重量平均分子量800以上のポリオール)等が挙げられる。前記ポリオールとしては、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
前記ポリオールに含まれるヒドロキシ基の個数は、2個以上であり、3個以上であってもよく、好ましくは6個以下、より好ましくは4個以下である。
【0048】
前記ポリイソシアネートは、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物を意味する。前記ポリイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,4-ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、1,2-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートメチル、水素化キシリレンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;1,4-トリレンジイソシアネート、1,6-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;前記脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートのビウレット体、イソシアヌレート体、ウレトジン体、アロファネート体等の多量体等が挙げられる。前記ポリイソシアネートとしては、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
前記鎖伸長剤は、1分子中に、1個以上の活性水素原子を有する化合物を意味し、水又はアミン化合物を用いることができる。前記アミン化合物としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族ポリアミン;トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ポリアミン;ジアミノシクロヘキシルメタン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン等の脂環式ポリアミン;ヒドラジン、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物:ヒドロキシエチルジエチレントリアミン、2-[(2-アミノエチル)アミノ]エタノール、3-アミノプロパンジオール等のアルカノールアミン;等が挙げられる。
【0050】
一実施態様において、ウレタン樹脂として、エステル系ウレタン樹脂、エーテル系ウレタン樹脂及びカーボネート系ウレタン樹脂を用いることができる。
【0051】
前記エポキシ樹脂としては、例えば、1分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂が挙げられる。具体的には、グリシジルエステル樹脂;ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの縮合反応物、ビスフェノールFとエピクロロヒドリンとの縮合反応物等の、グリシジルエーテル型樹脂;及び、脂環式エポキシ樹脂、直鎖状脂肪族エポキシ樹脂、含ブロムエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;等が挙げられる。
【0052】
前記ウレア樹脂としては、ポリアミン化合物とポリイソシアネート化合物との反応物等が挙げられる。前記ポリアミン化合物とポリイソシアネート化合物は、それぞれを別々に配合する二液形の塗料組成物としてもよい。
ポリアミン化合物は、2以上のアミノ基を有する化合物である。ポリアミン化合物は、脂肪族ポリアミン化合物、脂環式ポリアミン化合物及び芳香族ポリアミン化合物から選ばれる少なくとも1種を含み、好ましくは、脂肪族ポリアミン化合物及び脂環式ポリアミン化合物から選ばれる少なくとも1種を含む。
【0053】
前記アミノ基は、第1級又は第2級アミノ基であることが好ましい。前記アミノ基は、一態様において、前記ポリアミン化合物の分子鎖中に存在してもよく、分子末端に存在してもよい。前記ポリアミン化合物は、例えば、R12HN-R11-NHR12(式中、Rは、2価のC1-30炭化水素基を表し、R11に含まれる-CH-は、-O-、-CO-又は-NR12-に置換されていてもよく、R12は、1価のC1-30炭化水素基又は水素原子を表す。)で表され得る。前記C1-30炭化水素基としては、C1-30脂肪族炭化水素基、C3-30脂環式炭化水素基及びC6-30芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0054】
前記脂肪族ポリアミン化合物は、分子構造中に環構造を有しないポリアミン化合物を意味する。かかる脂肪族ポリアミン化合物としては、例えば、アルキレンポリアミン化合物、ポリアルキレンポリアミン化合物、その他の脂肪族ポリアミン化合物等が挙げられる。
【0055】
アルキレンポリアミン化合物としては、例えば、メチレンジアミン、エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン等が挙げられる。
ポリアルキレンポリアミン化合物として、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンテトラミン等が挙げられる。
その他の脂肪族ポリアミン化合物としては、例えば、テトラキス(2-アミノエチルアミノメチル)メタン、1,3-ビス(2’-アミノエチルアミノ)プロパン、トリエチレン-ビス(トリメチレン)ヘキサミン、ビス(3-アミノエチル)アミン、ビスヘキサメチレントリアミン等が挙げられる。
【0056】
脂環式ポリアミン化合物は、分子構造中に脂環構造を有するポリアミン化合物を意味する。
【0057】
前記脂環式ポリアミン化合物としては、例えば、1,4-シクロヘキサンジアミン、4,4’-メチレンビスシクロヘキシルアミン、4,4’-イソプロピリデンビスシクロヘキシルアミン、2,5(2,6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(例えば、ノルボルナジアミン)、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ジアミノジシクロヘキシルメタン(例えば、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン等)、イソホロンジアミン、メンセンジアミン(MDA)、1,4-ビス-(8-アミノプロピル)-ピペラジン、ピペラジン-1,4-ジアザシクロヘプタン、1-(2’-アミノエチルピペラジン)、1-[2’-(2’’-アミノエチルアミノ)エチル]ピペラジン、1,11-ジアザシクロエイコサン、1,15-ジアザシクロオクタコサン等が挙げられる。
【0058】
芳香族ポリアミン化合物は、分子構造中に芳香族環を有するポリアミン化合物をお意味する。芳香族ポリアミン化合物としては、例えば、ビス(シアノエチル)ジエチレントリアミン、o-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン(MXDA)、p-キシリレンジアミン、フェニレンジアミン、ナフチレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジエチルフェニルメタン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,4’-ジアミノビフェニル、2,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、ビス(アミノメチル)ナフタレン、ビス(アミノエチル)ナフタレン、ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエート等が挙げられる。
【0059】
ポリアミン化合物としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
前記ポリイソシアネートは、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物を意味する。前記ポリイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,4-ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、1,2-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートメチル、水素化キシリレンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;1,4-トリレンジイソシアネート、1,6-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;前記脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートのビウレット体、イソシアヌレート体、ウレトジン体、アロファネート体等の多量体等が挙げられる。前記ポリイソシアネートとしては、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
前記ポリイソシアネート化合物の有するイソシアネート基と、前記ポリアミン化合物の有するアミノ基との当量比(例えば、2級アミンの場合、NCO/NH)は、好ましくは0.5~2.0、より好ましくは0.8~1.2である。なお、上記当量比の計算に用いるアミノ基は、ポリイソシアネートとの反応に関与するアミノ基(例えば、分子末端に存在するアミノ基)を示す。当量比が上記の範囲内にあることにより、形成される塗膜の耐水性等が良好になるという利点がある。
【0062】
前記塗膜形成樹脂(A)は、アニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基等の親水性基を有していてもよい。前記アニオン性基としては、カルボキシ基、スルホン酸基等が挙げられ、前記カチオン性基としては、アミノ基、第4級アンモニウム基等が挙げられる。ノニオン性基としては、ポリオキシアルキレン単位等が挙げられる。前記親水性基は、前記塗膜形成樹脂(A)の原料として、親水性基を有する化合物を用いること等により導入することができる。
【0063】
前記塗膜形成樹脂(A)が、アニオン性基を有する場合、前記赤外線反射性塗料組成物は、該アニオン性基を中和しうる塩基性化合物を含んでいてもよく、前記塗膜形成樹脂(A)が、カチオン性基を有する場合、前記赤外線反射性塗料組成物は、該カチオン性基を中和しうる酸性化合物を含んでいてもよい。
【0064】
前記塗膜形成樹脂(A)がアニオン性基を有する場合、前記塗膜形成樹脂(A)の酸価は、好ましくは5mgKOH/g以上50mgKOH/g以下、より好ましくは5mgKOH/g以上30mgKOH/g以下である。
【0065】
前記塗膜形成樹脂(A)がカチオン性基を有する場合、前記塗膜形成樹脂(A)のアミン価は、好ましくは5mgKOH/g以上50mgKOH/g以下、より好ましくは5mgKOH/g以上30mgKOH/g以下である。
【0066】
前記塗膜形成樹脂(A)は、ヒドロキシ基を有していてもよい。前記塗膜形成樹脂(A)がヒドロキシ基を有する場合、前記塗膜形成樹脂(A)の水酸基価は、好ましくは5mgKOH/g以上35mgKOH/g以下、より好ましくは7mgKOH/g以上30mgKOH/g以下、更に好ましくは10mgKOH/g以上25mgKOH/g以下である。
【0067】
前記酸価及び水酸基価は、いずれも固形分基準であり、JIS K 0070:1999に準拠して測定することができる。また、前記アミン価は、固形分基準であり、JIS
K 7237に準拠して測定することができる。
【0068】
前記塗膜形成樹脂(A)は、後述する有機溶剤に溶解しうる樹脂であってもよく、水性樹脂であってよい。前記水性樹脂としては、水性媒体に溶解しうる水溶性樹脂;コロイダルディスパージョン型、エマルション型(乳化重合型、強制乳化型)等の水性媒体に分散しうる水分散性樹脂等が挙げられる。
【0069】
前記塗膜形成樹脂(A)の重量平均分子量は、例えば、2,000以上10,000,000以下であってよく、10,000以上2,000,000以下であってよく、50,000以上2,000,000以下であってよい。
前記塗膜形成樹脂(A)の重量平均分子量は、前記エマルション型水分散性樹脂の場合、例えば、50,000以上10,000,000以下であってよく、100,000以上2,000,000以下であってよく、150,000以上500,000以下であってよい。
前記水性媒体又は有機溶剤に溶解しうる樹脂の場合、前記塗膜形成樹脂(A)の重量平均分子量は、例えば、2,000以上100,000以下であってよく、10,000以上80,000以下であってよく、50,000以上80,000以下であってよい。
なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィによる測定値をポリスチレン換算した値である。
【0070】
前記塗膜形成樹脂(A)の含有率は、前記赤外線反射性塗料組成物の固形分100質量%中、好ましくは15質量%以上95質量%以下、より好ましくは20質量%以上93質量%以下、更に好ましくは30質量%以上90質量%以下である。
【0071】
本明細書において、樹脂の固形分量は、塗膜形成樹脂(A)と必要に応じて用いる後述する架橋剤(C)の固形分の合計を意味し、JIS K 5601-1-2(2008)に準拠し、加熱残分(105℃で60分間加熱した後の残渣の質量)を測定することによって求めることができる。
【0072】
前記赤外線反射性塗料組成物は、形成される塗膜物性に影響を及ぼさない範囲で、塗膜形成樹脂(A)に加えて、熱可塑性樹脂を用いることもできる。前記熱可塑性樹脂として、例えば、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化オレフィン系樹脂;塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニリデン等をモノマー成分とする単独重合体又は共重合体;セルロース系樹脂;アセタール樹脂;アルキド樹脂;塩化ゴム系樹脂;変性ポリプロピレン樹脂(酸無水物変性ポリプロピレン樹脂等);フッ素樹脂(例えば、フッ化ビニリデン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ素化オレフィンとビニルエーテルとの共重合体、フッ素化オレフィンとビニルエステルとの共重合体)等を挙げることができる。前記熱可塑性樹脂は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。熱可塑性樹脂を併用することで、形成される塗膜の塗膜物性を目的に応じ調整することが容易となる。
【0073】
[着色顔料(B)]
前記着色顔料(B)は、有彩色、無彩色等の色を有する顔料であり、近赤外線を反射しうる顔料(B1)を含む。前記顔料(B1)の近赤外線反射率は、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上であり、100%以下、90%以下、80%以下であることも許容される。前記顔料(B1)を含むことで、近赤外線を照射した場合に、照射光が高強度で反射及び/又は散乱され、LiDAR技術における検出精度の向上に寄与することができる。
【0074】
本明細書において、近赤外線反射率は、800~2,500nmの波長域において、JIS K 5602:2008に準拠し測定した分光反射率の算術平均値を意味する。前記分光反射率は、分光光度計を用いて測定することができる。
【0075】
本明細書において、顔料の近赤外線反射率は、該顔料を含む塗膜を形成し、該塗膜の反射率として測定することができる。詳細には、後述する顔料の近赤外線反射率及び分光反射率の測定例1に記載する顔料、樹脂及び溶媒を、以下の式に示す顔料質量濃度(PWCともいう)が3~50質量%となるように混合し、回転数1,800rpmで60分間、分散機を用いて分散し分散体とした後、下地として白黒隠ぺい率試験紙(日本テストパネル社製)を使用し、8milのドクターブレードを用いて、乾燥後の厚さが約50μmとなるように塗布し、60℃で20分間乾燥させて乾燥塗膜とする。JIS K 5602:2008に準拠し、分光光度計を用いて、前記乾燥塗膜の下地が白色の部分の分光反射率を800~2,500nmの波長域で測定し、その算術平均値を前記顔料の近赤外線反射率とする。また、後述する波長905nm及び1,550nmにおける分光反射率も、前記の分光反射率を測定する方法に準拠して測定することができる。前記分光光度計としては、例えば、分光光度計(島津製作所製、SHIMADZU-UV3600等)を用いて測定することができる。
顔料質量濃度(PWC:質量%)=(顔料の固形分量)/(顔料の固形分量+樹脂の固形分量)×100
【0076】
また、近赤外反射率及び分光反射率の測定の際、前記各顔料の顔料質量濃度は、前記白黒隠ぺい率試験紙に乾燥塗膜を形成させたとき、下地の白色及び黒色が透けて見えない状態となる濃度以上とする。本明細書中において、前記各顔料の顔料質量濃度は、有機赤色系顔料については25質量%、無機赤色系顔料については30質量%、有機黄色系顔料については25質量%、無機黄色系顔料については30質量%、青色系顔料については20質量%、白色系顔料については45質量%、有機黒色系顔料については3質量%、無機黒色系顔料については50質量%とする。
【0077】
前記顔料(B1)は、有彩色顔料及び無彩色顔料からなる群より選択される顔料を含むことが好ましい。前記有彩色顔料には、彩度が0を超える色の顔料がいずれも含まれるものとし、例えば、赤色系顔料、緑色系顔料、青色系顔料、黄色系顔料等が挙げられ、赤色系顔料、青色系顔料及び黄色系顔料からなる群より選択される1種以上を含むことが好ましく、赤色系顔料、青色系顔料及び黄色系顔料からなる群より選択される1種以上を含むことがより好ましい。
【0078】
また、前記顔料(B1)としては、有機顔料及び/又は無機顔料を用いることができる。前記有機顔料は、高い彩度や高い近赤外線反射率を有する傾向があり、無機顔料は、高い耐候性を有する傾向がある。
前記顔料(B1)の合計100質量%中、有機顔料の含有率は、0質量%以上100質量%以下であってよく、0.3質量%以上70質量%以下であってよく、0.5質量%以上15質量%以下であってよく、0.5質量%以上8質量%以下であってよい。
前記顔料(B1)の合計100質量%中、無機顔料の含有率は、0質量%以上100質量%以下であってよく、5質量%以上99質量%以下であってよく、10質量%以上50質量%以下であってよく、10質量%以上20質量%以下であってよい。
【0079】
前記顔料(B1)としての赤色系顔料の近赤外線反射率は、例えば、好ましくは40%以上、より好ましくは45%以上、更に好ましくは50%以上、一層好ましくは55%以上であり、例えば、80%以下、更には70%以下であることも許容される。
前記赤色系顔料の波長905nm及び/又は1,550nmにおける分光反射率は、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、更に好ましくは30%以上、一層好ましくは35%以上であり、例えば、90%以下、更には85%以下であることも許容される。
【0080】
前記赤色系顔料としては、有機顔料及び/又は無機顔料を用いることができる。前記有機顔料の含有率は、前記赤色系顔料中、0質量%であってよく、1質量%以上100質量%以下であってよく、20質量%以上50質量%以下であってよい。
【0081】
前記有機赤色系顔料の近赤外線反射率は、好ましくは40%以上、より好ましくは45%以上、更に好ましくは50%以上、一層好ましくは55%以上であり、例えば、80%以下、更には70%以下であることも許容される。
【0082】
前記有機赤色系顔料の波長905nm及び/又は1,550nmにおける分光反射率は、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは55%以上、一層好ましくは60%以上であり、例えば、90%以下、更には85%以下であることも許容される。
【0083】
前記無機赤色系顔料の近赤外線反射率は、好ましくは40%以上、より好ましくは45%以上であり、例えば、80%以下、更には70%以下であることも許容される。
【0084】
前記無機赤色系顔料の波長905nm及び/又は1,550nmにおける分光反射率は、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、例えば、90%以下、更には85%以下であることも許容される。
【0085】
前記顔料(B1)としての赤色系顔料としては、例えば、有機赤色系顔料として、Fastogen Super Magenta RH、Fastogen Red 7100Y、Fastogen Super Red 500RG、Fastogen Super Red ATY、Fastogen Super Blue Violet RVS、ルビクロンレッド 400RG、ルビクロンレッド 500RG(いずれもDIC社製)、CINILEX DPP RED SR1C(CINIC chemicals社製)、無機赤色系顔料として、トダカラー 120ED(戸田工業社製)、BAYFERROX 130M(ランクセス社製)等を挙げることができる。
【0086】
顔料(B1)としての青色系顔料の近赤外線反射率は、好ましくは40%以上、より好ましくは45%以上であり、例えば、80%以下、更には70%以下であることも許容される。
【0087】
前記青色系顔料の波長905nm及び/又は1,550nmにおける分光反射率は、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上であり、例えば、90%以下、更には85%以下であることも許容される。
【0088】
前記青色系顔料としては、例えば、ダイピロキサイドカラー ブルー 9453(大日精化工業社製)、FastogenBlue 9453、Fastogen Blue RS、Fastogen Blue 5380、Fastogen Super Blue 6070S(いずれもDIC社製)、シアニンブルー5240KB、シアニンブルー5050(いずれも大日精化工業社製)、HELIOGEN BLUE L7460(BASF社製)、ダイピロキサイドカラー グリーン 9310(大日精化工業社製)、FastogenGreen2 YK、FastogenGreen MY(いずれもDIC社製)、リオノールグリーン6YKP-N(トーヨーカラー社製)等を挙げることができる。
【0089】
前記黄色系顔料の近赤外線反射率は、好ましくは40%以上、より好ましくは45%以上、更に好ましくは50%以上、一層好ましくは55%以上であり、例えば、90%以下、更には85%以下であることも許容される。
【0090】
前記黄色系顔料の波長905nm及び/又は1,550nmにおける分光反射率は、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは25%以上、一層好ましくは30%以上であり、例えば、95%以下、更には90%以下であることも許容される。
【0091】
前記黄色系顔料としては、有機顔料及び/又は無機顔料を用いることができる。前記有機顔料の含有率は、前記黄色系顔料中、0質量%であってよく、1質量%以上であってよく、10質量%以上であってよい。また、50質量%以下であってよく、上限は100質量%である。
【0092】
前記有機黄色系顔料の近赤外線反射率は、好ましくは40%以上、より好ましくは45%以上、更に好ましくは50%以上、一層好ましくは55%以上であり、例えば、90%以下、更には85%以下であることも許容される。
【0093】
前記有機黄色系顔料の波長905nm及び/又は1,550nmにおける分光反射率は、好ましくは40%以上、より好ましくは45%以上、更に好ましくは50%以上、一層好ましくは55%以上であり、例えば、95%以下、更には90%以下であることも許容される。
【0094】
前記無機黄色系顔料の近赤外線反射率は、好ましくは40%以上、より好ましくは45%以上、更に好ましくは50%以上、一層好ましくは55%以上であり、例えば、90%以下、更には85%以下であることも許容される。
【0095】
前記無機黄色系顔料の波長905nm及び/又は1,550nmにおける分光反射率は、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上であり、例えば、90%以下、更には85%以下であることも許容される。
【0096】
前記黄色系顔料としては、例えば、有機黄色系顔料として、Symuler Fast
Yellow 4192(DIC社製)、HOSTAPERM YELLOW H3G(クラリアントジャパン社製)等を挙げることができる。例えば、無機黄色顔料として、シコパールイエロー L-1110、シコパールイエロー L-1100(いずれもBASF社製)、TAROX 合成酸化鉄 YM1100(チタン工業社製)等を挙げることができる。
【0097】
前記顔料(B1)としての有彩色顔料としては、赤色系顔料、青色系顔料及び黄色系顔料を含むことが好ましい。例えば、黄色系顔料としてのSymuler Fast Yellow 4192(DIC社製)と、赤色系顔料としてのFastogen Red 7100Y(DIC社製)と、青色系顔料としてのリオノールブルー FG7980(トーヨーカラー社製)とを混合したもの等を挙げることができる。
【0098】
前記赤色系顔料、青色系顔料及び黄色系顔料の合計の含有率は、前記有彩色顔料中、例えば、20質量%以上、好ましくは30質量%以上であり、上限は100質量%である。
【0099】
前記有彩色顔料の含有率は、前記顔料(B1)中、例えば、0質量%以上であってよく、1質量%以上であってよく、5質量%以上であってよい。また、例えば、100質量%以下であってよく、70質量%以下であってよく、50質量%以下であってよく、25質量%以下であってよく、20質量%以下であってよく、18質量%以下であってよい。
【0100】
前記無彩色顔料は、彩度が0である顔料がいずれも含まれる。前記無彩色顔料としては、白色系顔料、灰色系顔料、黒色系顔料を挙げることができ、白色系顔料及び黒色系顔料を含む。
【0101】
前記顔料(B1)としての白色系顔料の近赤外線反射率は、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上、更に好ましくは70%以上、一層好ましくは75質量%以上であり、例えば、99%以下、更には90%以下であることも許容される。
【0102】
前記白色系顔料としては、例えば、酸化チタンであるTIPAQUE CR-97、TIPAQUE CR-95(いずれも石原産業社製)、タイピュアR-902(デュポン社製)等を挙げることができる。
【0103】
前記白色系顔料の波長905nm及び/又は1,550nmにおける分光反射率は、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上、更に好ましくは70%以上、一層好ましくは75質量%以上であり、例えば、99%以下、更には90%以下であることも許容される。
【0104】
前記白色系顔料の含有率は、前記顔料(B1)中、例えば、0質量%以上であってよく、1質量%以上であってよく、3質量%以上であってよい。また、100質量%以下であり、99質量%以下であってよく、90質量%以下であってよく、例えば、60質量%以下であってよく、55質量%以下であってよく、50質量%以下であってよい。
【0105】
前記顔料(B1)としての黒色系顔料の近赤外線反射率は、好ましくは5%以上、より好ましくは8%以上、更に好ましくは10%以上、一層好ましくは15%以上であり、例えば、90%以下、更には85%以下であることも許容される。
【0106】
前記黒色系顔料の波長905nm及び/又は1,550nmにおける分光反射率は、好ましくは5%以上、より好ましくは8%以上、更に好ましくは10%以上、一層好ましくは15%以上であり、例えば、90%以下、更には85%以下であることも許容される。
【0107】
前記黒色系顔料としては、有機顔料及び/又は無機顔料を用いることができる。前記有機顔料の含有率は、前記黒色系顔料中、0質量%であってよく、1質量%以上であってよく、20質量%以上であってよい、また、50質量%以下であってよく、上限は100質量%である。
【0108】
前記有機黒色系顔料の近赤外線反射率は、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは35%以上、一層好ましくは40%以上であり、例えば、80%以下、更には70%以下であることも許容される。
【0109】
前記有機黒色系顔料の波長905nm及び/又は1,550nmにおける分光反射率は、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは55%以上、一層好ましくは60%以上であり、例えば、90%以下、更には85%以下であることも許容される。
【0110】
前記無機黒色系顔料の近赤外線反射率は、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上であり、例えば、80%以下、更には70%以下であることも許容される。
【0111】
前記無機黒色系顔料の波長905nm及び/又は1,550nmにおける分光反射率は、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、例えば、85%以下、更には80%以下であることも許容される。
【0112】
前記黒色系顔料としては、例えば、無機黒色系顔料として、ダイピロキサイドカラー ブラック 9590、ダイピロキサイドカラー ブラウン 9290、ダイピロキサイドカラー ブラウン 9211(いずれも大日精化工業社製)、Black 411(The Shepherd Color Company社製)、ブラック 6350(アサヒ化成工業)、有機黒色系顔料として、クロモファインブラックAー1103(大日精化工業社製)、Fastogen Super Black MX(DIC社製)、パリオゲン ブラック S0084、パリオトール ブラック L0080(いずれもBASF社製)、ホスターパームブラウン HFR-01(クラリアントジャパン社製)等を挙げることができる。
【0113】
前記黒色系顔料の含有率は、前記顔料(B1)中、0質量%以上であってよく、1質量%以上であってよく、5質量%以上であってよい。また、例えば、50質量%以下であってよく、45質量%以下であってよく、40質量%以下であってよい。
【0114】
前記白色系顔料及び黒色系顔料の合計の含有率は、前記無彩色顔料中、例えば、50質量%以上、好ましくは60質量%以上であり、上限は100質量%である。
【0115】
前記無彩色顔料の含有量は、前記有彩色顔料100質量部に対して、0質量部以上であってよく、10質量部以上であってよく、50質量部以上であってよい。また、例えば、20,000質量部以下であってよく、10,000質量部以下であってよく、5,000質量部以下であってよく、2,500質量部以下であってよい。
【0116】
前記顔料(B1)としては、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0117】
一実施態様において、前記顔料(B1)は、近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料、近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔料、及び、近赤外線反射率が5%以上である黒色系顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。前記顔料(B1)が、これらの顔料を含むことで、得られる塗膜のLiDAR技術における近赤外線の検出精度を高めることが可能であり、好ましくは、低明度でありながら、LiDAR技術における近赤外線の検出精度を高めることが可能である。
【0118】
前記顔料(B1)は、近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料、近赤外線反射率が50%以上である青色系顔料、近赤外線反射率が50%以上である赤色系顔料、近赤外線反射率が50%以上である黄色系顔料及び近赤外線反射率が30%以上である黒色系顔料からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく;波長905nm及び/又は1,550nmにおける分光反射率が70%以上である白色系顔料、波長905nm及び/又は1,550nmにおける分光反射率が50%以上である有機赤色系顔料、波長905nm及び/又は1,550nmにおける分光反射率が20%以上である無機赤色系顔料、波長905nm及び/又は1,550nmにおける分光反射率が60%以上である有機黄色系顔料、波長905nm及び/又は1,550nmにおける分光反射率が20%以上である無機黄色系顔料、波長905nm及び/又は1,550nmにおける分光反射率が40%以上である青色系顔料、波長905nm及び/又は1,550nmにおける分光反射率が50%以上である有機黒色系顔料、並びに、波長905nm及び/又は1,550nmにおける分光反射率が15%以上である無機黒色系顔料からなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0119】
前記顔料(B1)の合計の含有率は、前記着色顔料(B)中、20質量%以上であってよく、30質量%以上であってよく、50質量%以上であってよい。また、例えば、100質量%以下であってよく、98質量%以下であってよく、95質量%以下であってよい。
【0120】
前記着色顔料(B)は、前記赤外線反射性塗料組成物から得られる塗膜の近赤外反射率及び分光反射率に影響を及ぼさない範囲で、前記顔料(B1)以外の着色顔料(b)を含んでいてもよい。前記着色顔料(b)としては、カラーインデックスでピグメントに分類される化合物のうち、前記顔料(B1)以外のものをいずれも用いることができる。前記着色顔料(b)としては、例えば、無機系黒色顔料等が挙げられ、該無機系黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック等のカーボン顔料が挙げられる。前記着色顔料(b)の含有率(顔料質量濃度)は、前記着色顔料(B)中、1質量%以下であってよく、0.5質量%以下であってよく、0.1質量%以下であってよい。前記着色顔料(b)の含有率がかかる範囲にあることで、赤外線反射部において赤外線吸収が抑制され得、赤外線による検出感度をよりいっそう高めることができる。
【0121】
また、前記着色顔料(B)におけるカーボン顔料の含有率は、前記着色顔料(B)の総量100質量%中、好ましくは0.2質量%未満、より好ましくは0.08質量%未満であり、下限は0質量%であってよい。カーボン顔料の含有率がかかる範囲にあることで、赤外線反射部において赤外線吸収が抑制され得、赤外線による検出感度をよりいっそう高めることができる。
【0122】
前記着色顔料(B)の平均一次粒子径(D50)は、好ましくは1nm以上500nm以下、より好ましくは5nm以上300nm以下であり得る。着色顔料(B)の平均一次粒子径(D50)は、レーザードップラー式粒度分析計(例えば、マイクロトラックUPA150(日機装社製)等)を用いて測定することができる。
【0123】
有機顔料の含有率は、前記顔料(B)の合計100質量%中、0質量%以上100質量%以下であってよく、0.3質量%以上であってよく70質量%以下、0.5質量%以上10質量%以下であってよく、3質量%以上8質量%以下であってよい。
また、無機顔料の含有率は、前記顔料(B)の合計100質量%中、0質量%以上100質量%以下であってよく、5質量%以上99質量%以下であってよく、10質量%以上50質量%以下であってよく、10質量%以上20質量%以下であってよい。
【0124】
前記顔料(B)の含有率(顔料質量濃度)は、前記塗膜形成樹脂(A)及び前記顔料(B)と、必要に応じて用いる後述する架橋剤(C)との固形分の合計100質量%中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下である。
【0125】
前記顔料(B1)の含有率(顔料質量濃度)は、前記塗膜形成樹脂(A)及び前記顔料(B)と、必要に応じて用いる後述する架橋剤(C)との固形分の合計100質量%中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下である。
【0126】
前記赤外線反射性塗料組成物により得られる塗膜の明度(L*値)が80以下であることが好ましく、例えば、5以上であってよい。また、例えば、70以下であってよく、15以上であってよい。前記赤外線反射性塗料組成物を用いることで、塗膜の明度(L*値)が低い場合でも、LiDAR技術における視認性を維持できる。なお塗膜の明度(L*値)は、塗膜の厚さ(膜厚)により変化する場合がある。
【0127】
本明細書において、塗膜の明度は、前記顔料を含む塗膜の明度と同様の方法で測定することができる。詳細には、後述する顔料の近赤外反射率及び分光反射率の測定例1に記載する前記顔料、樹脂及び溶媒を、顔料質量濃度が3~50質量%となるように混合し、回転数1,800rpmで60分間、分散機を用いて分散し分散体とした後、下地として白黒隠ぺい率試験紙(日本テストパネル社製)を使用し、乾燥後の厚さが約100μmとなるように塗布し、60℃で20分間乾燥させて乾燥塗膜とする。得られた塗膜について、JIS K 5600-4-4の3.2及びJIS K 5600-4-5に準拠して得られた乾燥塗膜の下地が白色部分の明度を測定し、前記の明度とすることができる。前記明度は、例えば、色彩色差計CM-600d(コニカミノルタ社製)を用いて測定することができる。
【0128】
目的とする前記塗膜の明度をL*としたとき、前記L*と前記各顔料の顔料質量濃度との範囲の関係は次式で表される。すなわち、前記各顔料の顔料質量濃度は、以下の式を充足する範囲であってよい。また、L*は、塗膜の明度として前記した範囲の値を取り得る。
L*=0.7(W)-0.6(IR)-5.5(OR)+0.4(IY)-3.2(OY)-5.7(OB)-0.2(IBL)-0.3(OBL)+48.5 …式(1)
ここで、(W)は白色系顔料の顔料質量濃度(質量%)、(IR)は無機赤色系顔料の顔料質量濃度(質量%)、(OR)は有機赤色系顔料の顔料質量濃度(質量%)、(IY)は無機黄色系顔料の顔料質量濃度(質量%)、(OY)は有機黄色系顔料の顔料質量濃度(質量%)、(OB)は青色系顔料の顔料質量濃度(質量%)、(IBL)は無機黒色系顔料の顔料質量濃度(質量%)、(OBL)は有機黒色系顔料の顔料質量濃度(質量%)である。
【0129】
目的とする塗膜の近赤外反射率をX(%)としたとき、前記X(%)と前記各顔料の顔料質量濃度との関係は次式で表される。すなわち、前記各顔料の顔料質量濃度は、以下の式を充足する範囲であってよい。また、X(%)は、塗膜の近赤外線反射率として前記した範囲の値を取り得る。
=0.5(W)-1.4(IR)+0.1(OR)-0.6(IY)-1.8(OY)-3.1(OB)-0.2(IBL)-13.2(OBL)+61.0 …式(2)
【0130】
目的とする塗膜の波長905nmにおける分光反射率をY(%)としたとき、と前記各顔料の顔料質量濃度との関係は次式で表される。すなわち、前記各顔料の顔料質量濃度は、以下の式を充足する範囲であってよい。また、Y(%)は、塗膜の波長905nmにおける分光反射率として前記した範囲の値を取り得る。
=0.6(W)-2.9(IR)+3.5(OR)-1.2(IY)-0.9(OY)-3.0(OB)-0.8(IBL)-1.2(OBL)+68.0 …式(3)
【0131】
目的とする塗膜の波長1,550nmにおける分光反射率をZ(%)としたとき、前記Z(%)と前記各顔料の顔料質量濃度との関係は次式で表される。すなわち、前記各顔料の顔料質量濃度は、以下の式を充足する範囲であってよい。また、Z(%)は、塗膜の波長905nmにおける分光反射率として前記した範囲の値を取り得る。
=0.3(W)-0.2(IR)-2.4(OR)-0.2(IY)-1.4(OY)-2.0(OB)+0.1(IBL)-8.5(OBL)+68.0 …式(4)
【0132】
前記塗膜の明度は、80以下であってよい。その際の各顔料質量濃度の組み合わせは式(1)によって種々計算される。その組み合わせのうち、式(2)~式(4)により、近赤外線反射率、波長905nmにおける分光反射率及び波長1,550nmにおける分光反射率を所望の値以上(例えば、15%以上)とする各顔料濃度の組み合わせを算出することができる。
【0133】
[架橋剤(C)]
前記赤外線反射性塗料組成物は、前記塗膜形成樹脂(A)及び前記顔料(B)に加えて、架橋剤(C)を含んでいてもよい。前記架橋剤(C)は、化学結合及び/又は物理結合を形成することにより、塗膜形成樹脂(A)中に架橋構造を形成しうる化合物であり、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基等の活性水素原子を有する基を1分子中に2個以上有する化合物;或いは、前記活性水素原子を有する基と反応しうる基を1分子中に2個以上有する化合物;等を挙げることができる。前記塗膜形成樹脂(A)に、活性水素原子を有する基又は前記活性水素原子を有する基と反応しうる基を有する場合、架橋剤(C)と反応して、塗膜形成樹脂(A)中に、架橋構造が形成されうる。
【0134】
前記架橋剤(C)としては、ポリイソシアネート化合物;ブロックポリイソシアネート化合物;アミノ樹脂;フェノール樹脂;ポリカルボン酸等を挙げることができる。これらは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0135】
前記ポリイソシアネート化合物は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物を意味する。前記ポリイソシアネートとしては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、及びその混合物、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、及びその混合物、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;へキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート等を挙げることができる。
【0136】
前記ブロックポリイソシアネート化合物(以下、「BI」ということもある)は、前記イソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック化剤でブロックした化合物を意味する。
【0137】
前記ブロック化剤は、活性水素含有化合物を有する化合物であればよく、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール等のフェノール化合物;ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム等のラクタム化合物;メタノール、エタノール、n-,i-又はt-ブチルアルコール等の脂肪族アルコール化合物;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル化合物;ベンジルアルコール等の芳香族アルコール化合物;ホルムアミドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム化合物;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等の活性メチレン化合物等を用いることができる。前記ポリイソシアネート化合物と前記ブロック化剤とを混合することで、前記ポリイソシアネート化合物のフリーのイソシアネート基をブロックすることができる。
【0138】
前記アミノ樹脂は、アミノ基を有する化合物にアルデヒドを付加重合することにより得られる樹脂を意味する。前記アミノ樹脂は、前記塗膜形成樹脂(A)との架橋反応性に優れ、特に無触媒下においても前記塗膜形成樹脂(A)との架橋反応性に優れており好ましい。
【0139】
前記アミノ樹脂としては、メラミン樹脂、尿素樹脂等を挙げることができ、メラミン樹脂が好ましい。
【0140】
前記メラミン樹脂は、メラミンとアルデヒドから合成される熱硬化性の樹脂を意味する。前記メラミン樹脂は、トリアジン核とトリアジン核1つあたり3つの反応性官能基(-NX)を有する。前記メラミン樹脂としては、反応性官能基として-N(CHOR)〔Rは炭素数1以上8以下のアルキル基を示す、以下同じ〕のみを含む完全アルキル化型;反応性官能基として-N(CHOR)(CHOH)を含むメチロール基型;反応性官能基として-N(CHOR)(H)を含むイミノ基型;反応性官能基として、-N(CHOR)(CHOH)と-N(CHOR)(H)とを含む、あるいは-N(CHOH)(H)を含むメチロール/イミノ基型の4種類が挙げられる。前記メラミン樹脂としては、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記架橋剤(C)として前記メラミン樹脂と前記ポリイソシアネート化合物を併用してもよい。また、必要に応じて、錫化合物、チタン化合物等の金属触媒を用いてもよい。
【0141】
前記フェノール化合物としては、例えば、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの縮合反応物、ビスフェノールFとエピクロロヒドリンとの縮合反応物等のグリシジルエーテル型樹脂;脂環式エポキシ樹脂、直鎖状脂肪族エポキシ樹脂、含ブロムエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;等を挙げることができる。
【0142】
前記ポリカルボン酸は、1分子中に2個以上のカルボキシ基を有する化合物を意味する。前記ポリカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族ポリカルボン酸;テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸等の脂環式ポリカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、ドデセニルコハク酸等の脂肪族ポリカルボン酸;乳酸糖のヒドロキシ酸;前記芳香族ポリカルボン酸、前記脂環式ポリカルボン酸、前記脂肪族ポリカルボン酸の無水物;等が挙げられる。
【0143】
一実施態様において、前記架橋剤(C)としては、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物及びアミノ樹脂からなる群より選択される1種以上が好ましい。
【0144】
前記架橋剤(C)の含有量は、前記塗膜形成樹脂(A)100質量部と前記架橋剤(C)の合計100質量部中、例えば、3質量部以上であってよく、5質量部以上であってよく、7質量部以上であってよく、10質量部以上であってよい。また、例えば、50質量部以下であってよく、40質量部以下であってよく、35質量部以下であってよく、30質量部以下であってよい。
【0145】
前記塗膜形成樹脂(A)と前記架橋剤(C)の合計の含有率は、前記赤外線反射性塗料組成物の固形分中、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは45質量%以上であり、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下である。
【0146】
[溶媒(D)]
前記赤外線反射性塗料組成物は、更に、溶媒(D)を含んでいてもよい。前記溶媒(D)は、水性媒体(D1)及び/又は有機溶剤(D2)を含むことが好ましい。
【0147】
前記水性媒体(D1)としては、水、親水性溶媒及び水と親水性溶媒との混合物が挙げられる。
【0148】
前記親水性溶媒としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤;エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤;アセトン等のケトン系溶剤;並びに、N-メチル-2-ピロリドン等を挙げることができる。このような親水性溶媒を用いることで、得られる赤外線反射性塗料組成物の基材との濡れ性が良好になるという利点がある。
【0149】
前記有機溶剤(D2)としては、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;3-メトキシブチルアセテート、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶剤;並びに、トルエン、T-SOL 100、T-SOL 150(いずれもエクソン化学社製)等の芳香族炭化水素系溶剤;ペンタン、iso-ペンタン、ヘキサン、iso-ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶剤;ソルベントナフサ、ミネラルスピリット等の鉱油を挙げることができる。これらは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0150】
前記赤外線反射性塗料組成物は、溶媒(D)として主に水性媒体(D1)を含む水性塗料組成物であってもよく、溶媒(D)として主に有機溶剤(D2)を含む溶剤系塗料組成物であってよい。前記赤外線反射性塗料組成物が水性塗料組成物である場合、前記水性媒体(D1)の含有率は、前記溶媒(D)中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。前記赤外線反射性塗料組成物が溶剤系塗料組成物である場合、前記有機溶剤(D2)の含有率は、前記溶媒(D)中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0151】
前記溶媒(D)の含有率は、前記赤外線反射性塗料組成物中、好ましくは0質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
【0152】
前記赤外線反射性塗料組成物は、水系塗料であってもよく、有機溶剤系の塗料であってもよく、無溶剤系、例えば、粉体塗料であってよい。
【0153】
[骨材(E)]
前記赤外線反射性塗料組成物は、骨材(E)を更に含んでいてもよい。本開示において、骨材(E)は、不定形状の粒状物であり、顔料(B)とは異なる。前記赤外線反射性塗料組成物が骨材(E)を含むことで、再帰反射性が高められ得、特に、LiDARのような赤外線レーザーを用いた場合の情報コード検出性を更に高めることが容易になり得る。
【0154】
前記骨材(E1)を構成する材料としては、例えば、SiO、TiO、Al、Cr、ZrO、FeO、Fe、CaP、CrO、Al・SiO、3Al・2SiO、ケイ酸ジルコニア、セラミックビーズ等の微粒子及びこれらの混合物等を挙げることができる。また、前記微粒子状とは、粒子状、球状又は中空球状であることを表す。
【0155】
前記骨材(E)の平均粒子径は、好ましくは50μm以上、より好ましくは50μm以上3,000μm以下、更に好ましくは70μm以上2,500μm以下、一層好ましくは100μm以上2,000μm以下、より一層好ましくは150μm以上2,000μm以下、更に一層好ましくは200μm以上2,000μm以下であり得る。
なお、骨材(E)の平均粒子径は、体積平均粒子径(D50)を意味し、ふるいわけ法(例えば、JIS試験用ふるい(飯田製作所製)等)等を用いて測定することができる。篩としては、例えば、目開き径が106μm以上3,360μm以下の篩を用いることができ、具体的には、目開き径が150μm、180μm、212μm、250μm、300μm、425μm、500μm、710μm、1,000μm及び1,700μmの篩を用いることができる。
【0156】
なお、本開示において、前記骨材(E)の平均粒子径は、目開き径の異なる篩を3以上用い、全ての篩を通過した骨材の平均粒子径を、目開き径が最も小さい篩の目開きの半分の値、目開き径が最も大きい篩を通過しなかった骨材(残分)の平均粒子径を、該目開き径が最も大きい篩の目開きとし、それ以外の篩上の残分の平均粒子径を、該篩の目開き径と、該篩より一段階目開き径が小さい篩の目開き径との平均値として、前記平均値とそれぞれの篩上の残分の量(ふるい残分:質量%)を加重平均した値を意味する。
【0157】
前記骨材(E)としては、市販品を用いてもよい。該市販品としては、セラサンドHR-C、セラサンドHR-S、セラサンドHR-B(美洲興産社製)、ホワイトシリカ(山森土本鉱業所製)等が挙げられる。
【0158】
骨材(E)の含有率は、前記塗膜形成樹脂(A)、前記顔料(B)、前記骨材(E)及び必要に応じて用いる前記架橋剤(C)の固形分合計100質量%中、好ましくは5質量%以上85質量%以下、より好ましくは10質量%以上70質量%以下、更に好ましくは30質量%以上60質量%以下である。本開示において、前記塗膜形成樹脂(A)、前記顔料(B)、前記骨材(E)及び必要に応じて用いる前記架橋剤(C)の固形分合計100質量%中の骨材(E)の含有率を、骨材(E)の質量濃度ともいう。
【0159】
前記赤外線反射性塗料組成物は、更に、その他の添加剤を含んでいてもよい。前記その他の添加剤としては、例えば、表面調整剤;体質顔料;染料等の着色剤;ワックス;光輝性顔料;充填剤(骨材(E)とは異なり、特に、微粒子状の充填剤等を含み得る);紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系紫外線吸収剤等);酸化防止剤(フェノール系、スルフォイド系、ヒンダードアミン系酸化防止剤等);可塑剤;カップリング剤(シラン系、チタン系、ジルコニウム系カップリング剤等);タレ止め剤;増粘剤;顔料分散剤;顔料湿潤剤;レベリング剤;色分かれ防止剤;沈殿防止剤;消泡剤;凍結防止剤;乳化剤;防腐剤;防かび剤;抗菌剤;安定剤等がある。これらの添加剤は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0160】
前記光輝性顔料としては、例えば、マイカ、アルミニウム箔、スズ箔、金箔、銀箔、チタン金箔、ステンレススチール箔、ニッケル・銅等の金属箔等を挙げることができる。
【0161】
一態様において、前記赤外線反射性塗料組成物は、好ましくは、
前記塗膜形成樹脂(A)及び前記着色顔料(B)を含み、
前記着色顔料(B)は、近赤外線を反射しうる顔料(B1)を含み、
800~2,500nmの波長域における反射率を近赤外線反射率としたとき、
前記顔料(B1)は、近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料、近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔料、及び近赤外線反射率が30%以上である黒色系顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものであって、
且つ、近赤外線反射率が60%以上である白色系顔料及び近赤外線反射率が50%以上である有彩色顔料から選ばれる1種を含み、
前記顔料(B1)は、有機顔料を含み、該有機顔料の含有率は、前記顔料(B1)の総量中、3質量%以上である。
【0162】
前記赤外線反射性塗料組成物は、前記塗膜形成樹脂(A)及び前記顔料(B)並びに必要に応じて用いる骨材(E)、架橋剤(C)及びその他の添加剤を、必要に応じて用いる前記溶媒(D)中に溶解又は分散させることによって調製することができる。また、用いる各種材料の混合順序は特に限定されず、例えば、前記顔料(B)及び/又は骨材(E)と前記塗膜形成樹脂(A)の一部とを予め混合し顔料ペーストとした後、残りの成分及び必要に応じて用いるそれ以外の成分と混合して赤外線反射性塗料組成物を製造してもよい。前記赤外線反射性塗料組成物は、例えば、サンドグラインドミル、ボールミル、ブレンダー、ペイントシェーカー又はディスパー等の混合機、分散機、混練機等を選択して使用し、各成分を混合することにより、調製することができる。
【0163】
本開示では、前記塗膜形成樹脂(A)及び顔料(B)並びに必要に応じて用いる架橋剤(C)及びその他の添加剤を用いて予備的な塗料組成物とし、該予備的な塗料組成物を塗装した塗装膜上に骨材(E)を散布した状態のもの、或いは、該塗装膜上に骨材(E)を散布し、その上に更に前記予備的な塗料組成物を塗装した状態のものも、前記赤外線反射性塗料組成物の技術的範囲に含まれるものとする。
【0164】
前記赤外線反射性塗料組成物を用いて赤外線反射部を製造する方法は、特に限定されないが、一の態様において、
基材上に、前記赤外線反射性塗料組成物を塗布して、塗装膜を得ること、及び、
前記塗装膜を乾燥して、赤外線反射部を得ること、を含む製造方法により製造され得る(第1の製造方法)。
【0165】
前記塗装膜は、ウェット塗装膜の厚さが、好ましくは10μm以上3,000μm以下、より好ましくは20μm以上2,500μm以下、更に好ましくは30μm以上2,000μm以下となるように塗装することが好ましい。
前記塗装は、例えば、スプレー塗装法、バーコーター塗装法、エアナイフ塗装法、グラビア塗装法、ハケ塗り法、エアーガン塗装法、エアー静電ガン塗装法、ディップ塗装法、ローラー塗装法等の塗装方法によって実施することができる。
【0166】
前記塗装膜を乾燥させる際の乾燥条件は、特に限定されず、自然乾燥であってもよく、乾燥機等を用いた強制乾燥でもよい。乾燥温度は、好ましくは20℃以上200℃以下、より好ましくは70℃以上180℃以下、更に好ましくは80℃以上140℃以下であり得る。また、乾燥時間は、好ましくは10分以上24時間以下、より好ましくは10分以上60分以下、更に好ましくは15分以上45分以下であり得る。加熱手段としては、熱風加熱、赤外線加熱、誘導加熱等を採用することができる。
【0167】
(赤外線吸収部)
前記赤外線吸収部は、任意の材料で構成され得、基材そのものであってもよく、赤外線吸収性塗料組成物から形成されるものであってもよく、好ましくは、赤外線吸収性塗料組成物から形成される。
【0168】
前記赤外線吸収性塗料組成物は、好ましくは、
塗膜形成樹脂及び着色顔料を含み、
前記着色顔料は、カーボン顔料を含み、
該カーボン顔料の含有率は、前記着色顔料の総量100質量%中、0.2質量%以上50質量%以下である。
【0169】
前記赤外線吸収性塗料組成物は、カーボン顔料を含み、赤外線を吸収し得る。そのため、かかる赤外線吸収性塗料組成物を用いることで、赤外線による検出感度がより高められ得る。
【0170】
前記赤外線吸収性塗料組成物における塗膜形成樹脂としては、前記赤外線反射性塗料組成物における塗膜形成樹脂(A)と同様の樹脂を用いることができる。
【0171】
具体的に、前記赤外線吸収性塗料組成物における塗膜形成樹脂としては、前記アクリル樹脂、前記ポリエステル樹脂、前記ポリウレタン樹脂、前記アルキド樹脂、前記ポリエーテル樹脂、前記フッ素樹脂、前記エポキシ樹脂、前記シリコーン樹脂又は前記ウレア樹脂等の熱硬化性樹脂、常温硬化性樹脂又は光硬化性樹脂等が挙げられ、前記アクリル樹脂、前記ポリエステル樹脂、前記ポリウレタン樹脂及び前記ウレア樹脂から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。また、該塗膜形成樹脂は、該塗膜形成樹脂(A)単独で塗膜を形成するものであってもよく、架橋剤の作用により塗膜を形成するものであってよい。前記塗膜形成樹脂としては、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0172】
前記赤外線吸収性塗料組成物において、前記塗膜形成樹脂は、アニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基等の親水性基を有していてもよい。前記アニオン性基としては、カルボキシ基、スルホン酸基等が挙げられ、前記カチオン性基としては、アミノ基、第4級アンモニウム基等が挙げられる。ノニオン性基としては、ポリオキシアルキレン単位等が挙げられる。前記親水性基は、前記塗膜形成樹脂の原料として、親水性基を有する化合物を用いること等により導入することができる。
【0173】
前記塗膜形成樹脂が、アニオン性基を有する場合、前記赤外線吸収性塗料組成物は、該アニオン性基を中和しうる塩基性化合物を含んでいてもよく、前記塗膜形成樹脂が、カチオン性基を有する場合、前記赤外線吸収性塗料組成物は、該カチオン性基を中和しうる酸性化合物を含んでいてもよい。
【0174】
前記赤外線吸収性塗料組成物において、前記塗膜形成樹脂がアニオン性基を有する場合、前記塗膜形成樹脂の酸価は、好ましくは5mgKOH/g以上50mgKOH/g以下、より好ましくは5mgKOH/g以上30mgKOH/g以下である。
【0175】
前記赤外線吸収性塗料組成物において、前記塗膜形成樹脂がカチオン性基を有する場合、前記塗膜形成樹脂(A)のアミン価は、好ましくは5mgKOH/g以上50mgKOH/g以下、より好ましくは5mgKOH/g以上30mgKOH/g以下である。
【0176】
前記赤外線吸収性塗料組成物において、前記塗膜形成樹脂は、ヒドロキシ基を有していてもよい。前記塗膜形成樹脂がヒドロキシ基を有する場合、前記塗膜形成樹脂の水酸基価は、好ましくは5mgKOH/g以上35mgKOH/g以下、より好ましくは7mgKOH/g以上30mgKOH/g以下、更に好ましくは10mgKOH/g以上25mgKOH/g以下である。
【0177】
前記赤外線吸収性塗料組成物において、前記塗膜形成樹脂は、後述する有機溶剤に溶解しうる樹脂であってもよく、水性樹脂であってよい。前記水性樹脂としては、水性媒体に溶解しうる水溶性樹脂;コロイダルディスパージョン型、エマルション型(乳化重合型、強制乳化型)等の水性媒体に分散しうる水分散性樹脂等が挙げられる。
【0178】
前記赤外線吸収性塗料組成物において、前記塗膜形成樹脂の重量平均分子量は、例えば、2,000以上10,000,000以下であってよく、10,000以上2,000,000以下であってよく、50,000以上2,000,000以下であってよい。
前記赤外線吸収性塗料組成物において、前記塗膜形成樹脂の重量平均分子量は、前記エマルション型水分散性樹脂の場合、例えば、50,000以上10,000,000以下であってよく、100,000以上2,000,000以下であってよく、150,000以上500,000以下であってよい。
前記水性媒体又は有機溶剤に溶解しうる樹脂の場合、前記塗膜形成樹脂の重量平均分子量は、例えば、2,000以上100,000以下であってよく、10,000以上80,000以下であってよく、50,000以上80,000以下であってよい。
なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィによる測定値をポリスチレン換算した値である。
【0179】
前記塗膜形成樹脂の含有率は、前記赤外線吸収性塗料組成物の固形分100質量%中、好ましくは15質量%以上90質量%以下、より好ましくは20質量%以上85質量%以下、更に好ましくは30質量%以上75質量%以下である。
【0180】
本明細書において、前記赤外線吸収性塗料組成物の固形分は、前記赤外線吸収性塗料組成物の全成分から、後述する溶媒(D)を除いた部分を意味するものとする。
【0181】
前記赤外線吸収性塗料組成物は、形成される塗膜物性に影響を及ぼさない範囲で、塗膜形成樹脂(A)に加えて、熱可塑性樹脂を用いることもできる。前記熱可塑性樹脂として、例えば、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化オレフィン系樹脂;塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニリデン等をモノマー成分とする単独重合体又は共重合体;セルロース系樹脂;アセタール樹脂;アルキド樹脂;塩化ゴム系樹脂;変性ポリプロピレン樹脂(酸無水物変性ポリプロピレン樹脂等);フッ素樹脂(例えば、フッ化ビニリデン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ素化オレフィンとビニルエーテルとの共重合体、フッ素化オレフィンとビニルエステルとの共重合体)等を挙げることができる。前記熱可塑性樹脂は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。熱可塑性樹脂を併用することで、形成される塗膜の塗膜物性を目的に応じ調整することが容易となる。
【0182】
前記赤外線吸収性塗料組成物における着色顔料としては、カラーインデックスでピグメントに分類される化合物をいずれも用いることができる。具体的には、前記顔料としては、例えば、アゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、モノアゾ系顔料、ジスアゾ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ系顔料、チオインジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ナフトール系顔料、ピラゾロン系顔料、アントラキノン系顔料、アンソラピリミジン系顔料、金属錯体顔料等の有機系着色顔料;黄鉛、黄色酸化鉄、酸化クロム、モリブデートオレンジ、ベンガラ、チタンイエロー、亜鉛華、カーボンブラック、二酸化チタン、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、群青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、コバルトバイオレット等の無機系着色顔料等を挙げることができる。
【0183】
前記着色顔料は、カーボン顔料を含むことが好ましい。カーボン顔料を含むことで、赤外線吸収性が向上し、得られる情報コードにおいて、赤外線による検出感度を高めることがより容易になり得る。
【0184】
前記カーボン顔料の含有率は、前記着色顔料の総量100質量%中、好ましくは0.2質量%以上50質量%以下、より好ましくは1質量%以上40質量%以下、更に好ましくは1質量%以上35質量%以下である。カーボン顔料の含有率が、かかる範囲にあることで、赤外線による検出感度がさらに高められ得る。
【0185】
前記赤外線吸収性塗料組成物は、可視光透過性赤外線吸収顔料を更に含んでいてもよい。本開示において、「可視光透過性」とは、可視光不透過性でないことを意味し得る。可視光透過性赤外線吸収顔料としては、スズドープ酸化インジウム(ITO)やアンチモンドープ酸化スズ(ATO)、セシウムドープ酸化タングステン(CWO)、六ほう化ランタン(LaB6)等の微細粉体があげられる。これらを含むことにより外観に影響を及ぼさず、赤外線吸収性能を高めることがより容易になり得る。
【0186】
前記赤外線吸収性塗料組成物は、架橋剤を含んでいてもよい。かかる架橋剤としては、前記赤外線吸収性塗料組成物における架橋剤(C)として挙げた化合物と同様の化合物を用いることができる。具体的には、該架橋剤としては、前記ポリイソシアネート化合物;前記ブロックポリイソシアネート化合物;前記アミノ樹脂;前記フェノール樹脂;前記ポリカルボン酸等を挙げることができる。これらは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0187】
前記赤外線吸収性化合物において、前記架橋剤の含有量は、前記塗膜形成樹脂100質量部と前記架橋剤の合計100質量部中、例えば、3質量部以上であってよく、7質量部以上であってよく、10質量部以上であってよく、20質量部以上であってよい。また、例えば、50質量部以下であってよく、40質量部以下であってよく、35質量部以下であってよく、30質量部以下であってよい。
【0188】
前記赤外線吸収性化合物において、前記塗膜形成樹脂と前記架橋剤の合計の含有率は、前記赤外線吸収性塗料組成物の固形分中、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは45質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。
【0189】
前記赤外線吸収性塗料組成物は、更に、溶媒を含んでいてもよい。かかる溶媒としては、赤外線反射性塗料組成物における溶媒(D)として例示した化合物をいずれも用いることができる。前記溶媒は、前記水性媒体(D1)及び/又は前記有機溶剤(D2)を含むことが好ましい。
【0190】
前記赤外線吸収性塗料組成物は、溶媒として主に前記水性媒体(D1)を含む水性塗料組成物であってもよく、溶媒(D)として主に前記有機溶剤(D2)を含む溶剤系塗料組成物であってよい。前記赤外線吸収性塗料組成物が水性塗料組成物である場合、前記水性媒体(D1)の含有率は、前記溶媒中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。前記赤外線吸収性塗料組成物が溶剤系塗料組成物である場合、前記有機溶剤(D2)の含有率は、前記溶媒中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0191】
前記溶媒の含有率は、前記赤外線吸収性塗料組成物中、好ましくは0質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
【0192】
前記赤外線吸収性塗料組成物は、水系塗料であってもよく、有機溶剤系の塗料であってもよく、無溶剤系、例えば、粉体塗料であってよい。
【0193】
前記赤外線吸収性塗料組成物は、更に、その他の添加剤を含んでいてもよい。前記その他の添加剤としては、例えば、表面調整剤;体質顔料;染料等の着色剤;ワックス;前記光輝性顔料;充填剤(骨材(E)とは異なり、特に、微粒子状の充填剤等を含み得る);紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系紫外線吸収剤等);酸化防止剤(フェノール系、スルフォイド系、ヒンダードアミン系酸化防止剤等);可塑剤;カップリング剤(シラン系、チタン系、ジルコニウム系カップリング剤等);タレ止め剤;増粘剤;顔料分散剤;顔料湿潤剤;レベリング剤;色分かれ防止剤;沈殿防止剤;消泡剤;凍結防止剤;乳化剤;防腐剤;防かび剤;抗菌剤;安定剤等がある。これらの添加剤は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0194】
赤外線吸収性塗料組成物を用いて赤外線吸収部を形成する方法は、特に限定されないが、一の態様において、前記赤外線反射部を製造する第1の製造方法と同様の方法により製造することができる。具体的には、
基材上に、前記赤外線吸収性塗料組成物を塗布して、塗装膜を得ること、及び、
前記塗装膜を乾燥して、赤外線吸収部を得ること、を含む製造方法により製造され得る。
【0195】
前記塗装膜は、ウェット塗装膜の厚さが、好ましくは10μm以上3,000μm以下、より好ましくは20μm以上2,500μm以下、更に好ましくは30μm以上2,000μm以下となるように塗装することが好ましい。
前記塗装は、例えば、スプレー塗装法、バーコーター塗装法、エアナイフ塗装法、グラビア塗装法、ハケ塗り法、エアーガン塗装法、エアー静電ガン塗装法、ディップ塗装法、ローラー塗装法等の塗装方法によって実施することができる。
【0196】
前記塗装膜を乾燥させる際の乾燥条件は、特に限定されず、自然乾燥であってもよく、乾燥機等を用いた強制乾燥でもよい。乾燥温度は、好ましくは20℃以上200℃以下、より好ましくは70℃以上180℃以下、更に好ましくは80℃以上140℃以下であり得る。また、乾燥時間は、好ましくは10分以上24時間以下、より好ましくは10分以上60分以下、更に好ましくは15以上45分以下であり得る。加熱手段としては、熱風加熱、赤外線加熱、誘導加熱等を採用することができる。
【0197】
基材と、前記基材上に配置される本開示の情報コードとを備え、前記基材と前記赤外線反射部との色差(ΔE)が5.0以下であるか、及び/又は前記基材と前記赤外線吸収部との色差(ΔE)が5.0以下である、物品も、本開示の技術的範囲に含まれる。
本開示において、かかる基材と赤外線反射部及び/又は赤外線吸収部の色差(ΔE)は、赤外線反射部、赤外線吸収部及び基材の1以上の色相を変化させることにより制御され得、赤外線反射部及び/又は赤外線吸収部の色相を変化させることにより制御してもよく、基材の色相を変化することにより制御してもよい。代表的には、前記色差(ΔE)は、赤外線反射部及び/又は赤外線吸収部の色相を変化することにより制御され得る。
【0198】
前記基材と前記赤外線反射部との色差(ΔE)は、5.0以下であり、好ましくは0以上4.0以下、より好ましくは0以上3.0以下であり得る。
【0199】
また、前記基材と前記赤外線吸収部との色差(ΔE)は、5.0以下であり、好ましくは0以上4.0以下、より好ましくは0以上3.0以下であり得る。
【0200】
前記基材(「被塗物」ともいう)としては、金属板及び金属板からなる部材並びにプラスチック部材、無機材料部材、木質部材、道路面等の舗装体等が挙げられる。
【0201】
前記金属板としては、例えば、溶融法又は電解法等により製造される亜鉛めっき鋼板、亜鉛-アルミニウム合金めっき鋼板、アルミニウム合金めっき鋼板、溶融亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金めっき鋼板、ステンレス鋼板、冷延鋼板等の金属板が挙げられる。また、これら鋼板又はめっき鋼板以外に、アルミニウム板(アルミニウム合金板を含む)等の金属板も塗装対象とすることができる。前記金属板は、表面処理されていることが好ましい。具体的には、前記金属板は、アルカリ脱脂処理、湯洗処理、水洗処理等の前処理が施された後に、化成処理が施されていることが好ましい。化成処理は公知の方法で行ってよく、その例にはクロメート処理、リン酸亜鉛処理等の非クロメート処理等が含まれる。前記表面処理としては、使用する鋼板に応じて適宜選択することができるが、重金属を含まない処理が好ましい。
【0202】
前記プラスチック部材としては、例えば、アクリル板、ポリ塩化ビニル板、ポリカーボネート板、ABS板、ポリエチレンテレフタレート板、ポリオレフィン板等を挙げることができる。
【0203】
前記無機質部材としては、例えば、JIS A 5422、JIS A 5430等に記載された窯業建材、ガラス基材等を挙げることができ、例えば、珪カル板、パルプセメント板、スラグ石膏板、炭酸マグネシウム板、石綿パーライト板、木片セメント板、硬質木質セメント板、コンクリート板、軽量気泡コンクリート板、コンクリート構造物等を挙げることができる。
【0204】
前記木質部材としては、例えば、製材、集成材、合板、パーティクルボード、ファイバーボード、改良木材、薬剤処理木材、床板等を挙げることができる。
【0205】
前記道路面等の舗装体としては、例えば、アスファルト舗装、コンクリート舗装、レンガ舗装等を挙げることができる。
【0206】
本開示の情報コードを適用することができる物品の具体例として、例えば、販売される各種商品、走行路、道路構造物(例えば、舗装、路面標示、歩道、横断歩道、排水施設、平面交差構造、橋梁、土工、トンネル、待避所、交通安全施設(例えば、立体横断施設、ガードレール、防護柵、照明施設、視線誘導標、道路反射鏡等)、交通島、停留所、駐車帯、駐車場等)、各種建築構造物およびその内部設備、鉄道構造物、各種防護施設、各種車両およびその付属物、歩行者着用物、電柱、各建築構造物の内壁等が挙げられる。
【実施例0207】
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0208】
<顔料の近赤外線反射率及び分光反射率の測定例1>
無機黄色系顔料の近赤外線反射率、波長905nm及び/又は1,550nmにおける分光反射率の測定例
塗膜形成樹脂として(A-1)アロセット5534-SB60 21.0質量部、溶媒として(D2-1)T-SOL 100(エクソン化学社製)6.0質量部、無機黄色系顔料として(B1-3)シコパールイエローL-1110 22.0質量部を混合後、SGミル(媒体:ガラスビーズ)を用いて、顔料の分散粒度が10μm以下になるまで分散した。次に、(A-1)を51.0質量部加え、ディスパーを用いてかくはんしながら混合し、主剤を得た。
【0209】
架橋剤として(C-1)デュラネートTSA-100 62.0質量部及び溶媒(D2-1)としてT-SOL 100(エクソン化学社製)38.0質量部を、ディスパーでかくはんしながら混合し、硬化剤を得た。
【0210】
前記で得られた主剤及び硬化剤を、質量比9:1で混合し、塗料組成物を得た(顔料質量濃度:30.0質量%)。得られた塗料組成物を白黒隠ぺい率試験紙(日本テストパネル社製)上に、8milドクターブレードを用いて、乾燥膜厚が50μmとなるように塗装し、60℃で20分乾燥後、常温で1日静置し、塗膜を得た。
得られた塗膜について、下地が白色の部分について、分光光度計(島津製作所製、SHIMADZU-UV3600)を用いて、JIS K 5602に準拠した方法で800~2,500nmの波長域における反射率を波長2nm毎に測定した。得られた各波長における反射率の算術平均値を無機赤色顔料の近赤外線反射率とした。また、905及び1,550nmの近赤外反射率は、各波長におけるそれぞれの分光反射率の値である。
【0211】
その他の顔料の近赤外線反射率は、各顔料の種類及び顔料質量濃度を表1に記載の量とした以外は、前記顔料の近赤外線反射率及び分光反射率の測定例1と同様にして、各顔料の近赤外線反射率及び分光反射率を測定した。
【0212】
【表1】
【0213】
<製造例1>
白色系顔料ペーストの製造例
塗膜形成樹脂として(A-1)アロセット5534-SB60 22.0質量部と、溶媒として(D2-1)T-SOL 100(エクソン化学社製) 7.0質量部、白色系顔料として(B1-1)TIPAQUE CR-97 34.0質量部を混合後、SGミル(媒体:ガラスビーズ)を用いて、顔料の分散粒度が10μm以下になるまで分散した。
次に、(A-1)を37.0質量部加え、ディスパーを用いてかくはんしながら混合し、白色系顔料ペースト(P-1)を得た。
【0214】
各色顔料ペーストの製造例
用いる顔料の種類及び量を表2に記載のように変更したこと以外は、前記製造例1と同様にして、各顔料の顔料ペースト(P-2~P-6)を得た。
【0215】
【表2】
【0216】
調整用クリヤーの製造例
塗膜形成樹脂として(A-1)アロセット5534-SB60 26.0質量部と、溶媒として(D2-1)T-SOL 100(エクソン化学社製) 8.0質量部、体質顔料として(B2-1)N重炭(丸尾カルシウム社製) 21.0質量部を混合後、SGミル(媒体:ガラスビーズ)を用いて、顔料の分散粒度が50μm以下になるまで分散した。
次に、(A-1)を45.0質量部加え、ディスパーを用いてかくはんしながら混合し、調整用クリヤー(W-1)を得た。
【0217】
<実施例1>
前記白色系顔料ペースト(P-1) 41.8質量部、前記赤色系顔料ペースト(P-2) 9.4質量部、前記黄色系顔料ペースト(P-3) 27.0質量部、前記青色系顔料ペースト(P-5) 2.5質量部、前記調整用クリヤー(W-1) 203.4質量部を、ディスパーでかくはんしながら混合し、主剤(S1-1)を得た。
また、架橋剤としてデュラネートTSA-100(C-1) 62.0質量部に、T-SOL 100(エクソン化学社製) 38.0質量部を、ディスパーでかくはんしながら混合し、硬化剤(K-1)を得た。
前記で得られた主剤(S1-1) 284.1質量部及び硬化剤(K-1) 34.6質量部をディスパーでかくはんしながら混合し、赤外線反射性塗料組成物(XR-1)を得た。なお、配合は、主剤(S1-1)及び硬化剤(K-1)を質量比で9:1となるようにした。
【0218】
赤外線吸収性塗料組成物の製造例
前記白色系顔料ペースト(P-1) 64.3質量部、前記赤色系顔料ペースト(P-2) 4.5質量部、前記黄色系顔料ペースト(P-3) 27.8質量部、前記カーボン系顔料ペースト(P-6) 7.5質量部、前記調整用クリヤー(W-1) 172.3質量部を、ディスパーでかくはんしながら混合し、主剤(S2-1)を得た。
また、架橋剤としてデュラネートTSA-100(C-1) 62.0質量部にT-SOL 100(エクソン化学社製) 38.0質量部を、ディスパーでかくはんしながら混合し、硬化剤(K-1)を得た。
前記で得られた主剤(S2-1) 276.5質量部及び硬化剤(K-1) 30.7質量部をディスパーでかくはんしながら混合し、赤外線吸収性塗料組成物(XA-1)を得た。なお、配合は、主剤(S2-1)及び硬化剤(K-1)を質量比で9:1となるようにした。
【0219】
<実施例2~7、比較例1~2>
用いる顔料ペースト、調整用クリヤー、架橋剤及び溶剤の種類及び量を表3に記載のように示す通りに変更したこと以外は、前記塗膜(試験片)の製造例1と同様にして、各塗膜(試験片)を得た。
なお、塗料組成物としてその他の材料を含む場合、その他の材料は、前記主剤を製造する際に、各種顔料ペースト及び調整用クリヤーと共に混合し、主剤を調製した。
【0220】
実施例、比較例に用いた下記表中に示される各成分の詳細は以下のとおりである。
塗膜形成樹脂(A)
(A-1)アロセット5534-SB60(アクリルポリオール樹脂、日本触媒社製):重量平均分子量:50,000、酸価:10mgKOH/g、水酸基価:38mgKOH/g、固形分濃度:60質量%
体質顔料(B2)
(B2-1)N重炭(重質炭酸カルシウム、丸尾カルシウム社製)
架橋剤(C)
(C-1)デュラネートTSA-100(HDIイソシアヌレート型ポリイソシアネート、旭化成社製);NCO含有量:20.6%、固形分濃度:100質量%
溶媒(D)
(D2-1)T-SOL 100(芳香族炭化水素系溶剤、エクソン化学社製)
【0221】
【表3】
【0222】
<2次元情報コードの作製例>
後述する被塗物(70cm×70cm)の中央部50cm×50cm角の部分が露出するよう、マスキングテープにより被塗物周辺をマスキングした。その露出部に、前記で得られた赤外線吸収性塗料組成物を、乾燥膜厚が100μmとなるようスプレー塗装し、常温で1日静置し、赤外線吸収部を得た。
次に、得られた赤外線吸収部の上に、所定の2次元情報コードが得られるよう開口部を設けた型紙を設置し、その開口部に、前記で得られた赤外線反射性塗料組成物を、乾燥膜厚が100μmとなるようスプレー塗装し、常温で1日静置し、赤外線吸収部と赤外線反射部が隣接する2次元情報コードを得た。
【0223】
比較例1
後述する被塗物3(70cm×70cm)の中央部50cm×50cm角の部分が露出するよう、マスキングテープにより被塗物周辺をマスキングした。その露出部に、所定の2次元情報コードが得られるよう開口部を設けた型紙を設置し、それに、前記実施例2で用いた赤外線反射性塗料組成物(XR-2)を、乾燥膜厚が100μmとなるようスプレー塗装し、常温で1日静置し、赤外線反射部のみからなる2次元情報コードを得た。
【0224】
比較例2
後述する被塗物1(70cm×70cm)の中央部50cm×50cm角の部分が露出するよう、マスキングテープにより被塗物周辺をマスキングした。その露出部に、所定の2次元情報コードが得られるよう開口部を設けた型紙を設置し、それに、前記実施例2で用いた赤外線吸収性塗料組成物(XA-2)を、乾燥膜厚が100μmとなるようスプレー塗装し、常温で1日静置し、赤外線吸収部のみからなる2次元情報コードを得た
【0225】
被塗物として、以下の3種類を用いた。
被塗物1:
ブリキ板(TP技研社製)に、ニッペ ファインウレタンU-100 ダークブラウン色(日本ペイント社製)を、乾燥膜厚が100μmとなるように、スプレー塗装し、常温で1日硬化・乾燥させ、被塗物1(L*=28.8、a*=1.1、b*=2.9)を得た。
被塗物2:
ブリキ板(TP技研社製)に、ニッペ ファインウレタンU-100 グレーベージュ色(日本ペイント社製)を、乾燥膜厚が100μmとなるように、スプレー塗装し、常温で1日硬化・乾燥させ、被塗物2(L*=51.9、a*=2.2、b*=6.9)を得た。
被塗物3:
スレート板(TP技研社製、70×70×0.5cm)をそのまま用いた(L*=72.0、a*=-1.7、b*=4.2)。
【0226】
<評価方法>
1)色差(ΔE)
実施例及び比較例で得られた赤外線反射部、赤外線吸収部及び被塗物の色相(L*値、a*値、b*値)並びにそれらの色差(ΔE)を、JIS K 5600-4-4の3.2及びJIS K 5600-4-5に準拠し、色彩色差計CM-600d(コニカミノルタ社製)を用いて測定した。
【0227】
2)近赤外反射率及び分光反射率
実施例及び比較例で得られた試験片について、分光光度計(島津製作所製、SHIMADZU-UV3600)を用いて、JIS K 5602に準拠した方法で800~2,500nmの波長域における反射率を波長2nm毎に測定した。得られた各波長における反射率の算術平均値を塗膜の近赤外線反射率とした。また、905及び1,550nmの近赤外反射率は、各波長におけるそれぞれの分光反射率の値である。
【0228】
作製した情報コードを評価者より5m離れた位置に正対して設置し、目視にて評価を実施した。評点1以上を合格とした。
3:近づいて見てもほぼ認識できない
2:一見すると認識できないが、近づいて見ると認識できる
1:一見すると認識できないが、焦点を合わせるとはっきりと認識できる
0:焦点を合わせなくてもはっきりと認識できる
【0229】
4)情報コード読み取り性
実施例および比較例で得られた2次元情報コードについて、ナイトビジョンカメラSP868A(SIGHTRON社製)で撮影を行った。
その後、その画像を白紙に印刷し、iPhone(登録商標)SE(第3世代)のQRコード(登録商標)読み取り機能を用いて、読み取り可能か否かを評価した。評価基準は以下のとおりとした。評点2以上を合格とした。
5:10回中9回以上読み取ることができる
4:10回中7回以上8回以下読み取ることができる
3:10回中5回以上6回以下読み取ることができる
2:10回中3回以上4回以下読み取ることができる
1:10回中1回以上2回以下読み取ることができる
0:10回中1回も読み取ることができない
【0230】
【表4】
【0231】
実施例1~7は、本発明の実施例であり、作成した情報コードの目視による赤外線反射部と赤外線吸収部の差および被塗物との差が目立ちにくく、かつ、情報コードの読み取りが可能であった。
比較例1は、赤外線吸収部を設けず、赤外線反射部のみにて情報コードを作成した例である。この例では、情報コードと被塗物の色差が大きく、その差が目立ち易いにも係わらず、情報コードの読み取りが困難であった。
比較例2は、赤外線反射部を設けず、赤外線吸収部のみにて情報コードを作成した例である。この例では、情報コードと被塗物の差は目立ちにくいものであったが、情報コードの読み取りが困難であった。
【産業上の利用可能性】
【0232】
本開示の情報コードは、基材の意匠性に影響を与えることなく情報を付与でき、且つ、赤外線による検出感度が高い。そのため、本開示の情報コードは、販売される各種商品、走行路、道路構造物(例えば、舗装、路面標示、歩道、横断歩道、排水施設、平面交差構造、橋梁、土工、トンネル、待避所、交通安全施設(例えば、立体横断施設、ガードレール、防護柵、照明施設、視線誘導標、道路反射鏡等)、交通島、停留所、駐車帯、駐車場等)、各種建築構造物およびその内部設備、鉄道構造物、各種防護施設、各種車両およびその付属物、歩行者着用物、電柱、各建築構造物の内壁等に好適に利用できる。